とある彼等の想起事変__All stories eye color Talks__

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Re: とある彼等の想起事変__All stories eye color Talks__

投稿 by ヒーステイル on Sun Dec 06, 2015 7:06 pm

COUNT 11th








 子猫の頃から勝ち気な少女だった。

 暖かい子猫部屋でぬくぬくと丸まる子猫たちの中で、彼女だけは短い四肢を震わせながら踏ん張り、まだ灰色だった目を爛々と輝かせていた。

 その頃から怠け者で効率的だった(可愛げがないとも言う)ダスクキットを叩き、「何を言っている!貴様もだぞ。そこに座ってないでシャンとしろ!働いたら負けだとでも思ってるのか!?」と怒っていたっけ。

 だが、それはもう遠い昔のことだ。

 感傷に浸る価値すらない。

 だってあれは、ルビーが星のもとから攫ってきた、記憶。

 子猫を星から攫い、子猫たちの前世の幸せだったころの幼い記憶を、そのまま生まれ変わりの体に植えつけたものだ。

 星で出来た記憶は、以前のぼくらのモノ。

 ぼくらが、僕が、真っ白だったころのモノ。

 本物の、今のぼくらのモノじゃあない。

 だってこの一族には、母猫なんかいないのだ。年長の雌は、今は亡きあの黄金色の彼女しか、いなかったのだ。

 だから、もう「僕」は、なんの情も抱かない。

 あるのは、美しく鮮やかな、彼等の瞳への憎悪だけだ。誇り高き、偉大な感情。



 「何でだっ!!」

 甲高い悲鳴が耳をつんざく。僕は顔を顰めながら、戸惑い慌てながら足を滑らし族長部屋を出ようとするマローアイに跳びかかった。

 どんっと突き飛ばされた白黒の雌猫は、小さく悲鳴を上げながら倒れこむ。僕は爪を立てて背中を押さえつけた。

 「何でかって?教えてあげようか?」

 僕はマローアイの耳元に口を寄せて薄ら笑った。

 「それはね、 僕は裏の目だからだ」

 きらっと彼女の菫色の瞳が恐怖に瞬いた。僕の囁きの意味を知ったようだ。彼女の信頼する「俺」は表の目。今の僕は、唯一見せたルビーをも殺した、誰も見たことない裏の目なのだ。

 「やめろ・・・一体何がしたいんだ、貴様は。なぜ、ルビーを殺した!」

 マローアイは僕を下から睨めつけた。今にも泣き出しそうな顔だ。だが、誇り高きこの戦士は僕の前でそう簡単に取り乱したりしないだろう。

 それは僕が一番知ってる。

 「簡単だよ。ルビーは僕を怒らした。言ってはいけないことを言ったんだ。そんな猫には、罰を与えなければいけないだろう」

 僕は優しく言う。また騒がれては困るので、マローアイの顔を地面に押し付けて強く塞いだ。

 「それに、彼女は俺らを騙してたんだ。君は、どうして自分がこの部族で殺しをしているのか考えたことはあるかい?ルビーはね、とても優しいんだ。昔、そう僕らが一昔前を別の姿で歩いていた頃、僕らは酷い目にあった」

 マローアイの目が驚きと困惑で大きく見開かれる。

 僕の声は冷たかった。それだけに真実味が増したのだろう。だって真実を語っているのだ。まあ、その君らを苦しませていたのは、優秀な僕であったのだけれど。

 「ルビーは僕らを呼び寄せ、己の手で自分たちを苦しませた猫を殺させたんだよ。昨日首を掻き切った黒い雄猫__あれはね、君の耳を引き裂いて笑っていた雄猫の、現世の姿なんだ」

 だから俺達は殺しを続けていた。自分の中にある、仕返しへの快感を、どこかで感じ取っていたのかもしれない。

 「でも、だからって__なんでお前が、私達を殺す必要がある!?」

 マローアイが唸る。

 いい加減気づけよ。僕はチッと舌打ちをして、マローアイの耳を強く噛んだ。鈍い血の味が口に広がる。雌猫は悲鳴を上げた。

 「決まってるだろ。君も、君たちも、僕を怒らしたんだよ。君は美しい目を持っているじゃないか。僕にはないものを、持っているじゃないか!」

 ガッと勢い良くマローアイの首に噛み付いた。ぐっと力を込めると、首が締まっていく感覚。血が滲む感覚。マローアイが身をよじって声にならない叫びを上げた。

 前世のマローアイは、酷くみすぼらしい少女だった。もつれて艶のないブチの毛皮に、垂れ下がった皮、浮き出て見える肋骨。

 なのに、目だけは妖艶に光っていて美しかった。それは、力強さだけではない。野に咲く菫のような、深く濃い紫の目。

 僕は黒。色のうつらない黒。ルビーの言葉がガンガンと僕を殴り続けている。僕は僕?なんだよそれ。僕は、僕は___!!

 

 「君たちの瞳が、愛おしくて大嫌いなんだ」





 ぐじゅり、と嫌な音を立てて紫の瞳が鉤爪に突き刺さる。そのまま前足を払うと、顔に黒くくぼんだ空間が出来ていた。

 血が、赤く黒い血が、辺りを染める。

 マローアイが悲鳴をあげる前に、僕は首を書ききった。白黒の彼女の体は激しく震え、やがてくたっとなった。最期に彼女が呟いた言葉を、僕は知っている。




 「ベインアイ、大好きよ」







 馬鹿だね。彼も、僕が殺すのに。





 

 「なんの声だ?」

 不意に間抜けな声がして、僕は振り返った。いつの間にか、雨がしとしとと降っていた。外に出ると毛皮が濡れていく。彼の毛も濡れて濃くなっていて、最初は誰だか分からなかった。

 「なんでもないよ、スターアイ。ちょっとふざけて取っ組み合ってただけだ」

 そう微笑んで尻尾を振ると、スターアイはそっかーと納得したようにオーバーに頷いた。

 「じゃあ俺ダスクアイと殺してくるから!お土産に頭蓋骨の欠片でも持ってきてやるよ!」

 駆け出そうとした彼を呼び止める。

 「じゃあそれ終わったらでいいから、また後で来てくれないかな?最高に面白いショーを披露するよ。ハリネズミが空を飛ぶより、ずっとね」

 僕はとことこと彼に近付いて囁く。興奮で背中の毛が逆立ったが、すぐに雨で寝た。

 「君を救ったのは僕だよ、スター」




 

 菫色の眼球は丁寧に雨で洗って族長部屋に並べた。2つの死体が転がっているからか、死臭がいっぱいに広がっている。

 僕は再び雨の振る外へ出ると、帰ってきたパトロールの一団を笑顔で出迎えた。一団と言ってもたった2匹だが、スターアイよりずっとしっかりしている猫たちだから、問題ない。

 
 「おかえり、ティアーアイ、オーシャンアイ!」


 灰色の雲が空を覆う。色のない世界。僕は、この手で全てを終わらすのだ。
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Re: とある彼等の想起事変__All stories eye color Talks__

投稿 by ヒーステイル on Wed Dec 23, 2015 5:04 pm

COUNT 12th








 
 「なー、ダスクアイ」

 厚塗されたような空は暗い。その中で暗がりに異様に映える黄色い一対の目が2.3回瞬いた。

 「なんだよ」

 バリバリと木で爪を研ぐ音に紛れ、怠そうな声がスターアイに返った。スターアイは牙で自分の舌の先を少し噛む。口から滴った真っ赤な血が、彼の足元の草を染めた。

 「俺達を救ったのは、フロントアイらしいぜ?」

 スターアイが自分の血を見つめながら言うと、ダスクアイが上で鋭く息を飲んだ音がした。

 ダスクアイは身をかがめ、木の上から親友を見下ろす。スターアイは真っ赤に染まった草を前足で弄んでいた。とてもこれから通る戦士たちを殺しに行く猫とは思えない。

 昔からそうだ。ずっと昔から、こいつは何を考えているかわからない。ダスクアイはそのことに少なからず恐怖を感じていた。

 一番単純で、心の奥底の真意がまったく見えない。

 今だってそうだ。ダスクアイは耳鳴りがし始めた耳を寝かせる。痛い、割れそうだ。耳鳴りはいつの間にか頭痛に変わっていて、ダスクアイは荒く息をした。

 「スターアイ・・・」

 呼びかけると、スターアイは不思議そうに目を見開いてダスクアイを見上げた。

 「フロントアイ・・・あいつは、本当にそう言っていたのか」

 スターアイは大きく頷き、自分の血で染まった口周りを拭った。

 いよいよ痛みが増してきた。ダスクアイは樹皮に爪を立て、ぐっと堪える。

 痛む頭の中では、あるものが出来上がりつつあった。今まで断片的に思い出してきたものが、形になる。その中心には、あの長毛の白猫がいた。

 聡明なダスクアイとパワータイプのスターアイにかかれば命を奪うことなど容易い、あの白猫。

 まさか。

 ダスクアイの橙色の瞳には、ある記憶が蘇っていた。

 ころころとまだ幼く、興奮に毛を逆立てている雄の子猫。どこかスターアイに似ている。もしかしたら彼なのかもしれない。ダスクアイは彼のあとを必死で追っている。何かが、後ろから追い上げてきている、恐怖。

 その恐怖が増した。前を駆ける親友の影が真っ赤に染まった気がして、ダスクアイは小さく悲鳴を上げた__が、実際は声1つ上げていない。

 走る子猫たちの前を、誰かが遮る。

 その誰か、とは、彼の言うことが真実ならば、そこに立っているのはあの軟弱な白猫___もしくはそいつと同じ顔をした猫の筈なのだ。

 ダスクアイは息を呑む。

 そこに立っていたのは、








 


 ベインアイは木々の間を縫うように駆けていた。目と鼻の先を死にものぐるいで走る対象を追って。対象も相当速いが、ベインアイの逞しい脚には敵わない。ベインアイは石を踏み台にして、対象に勢い良く跳びかかった。

 腹を横殴りにされた対象が坂を転がる。

 ベインアイがゆっくりと歩み寄ることには、対象は地面に横たわってぜーぜーと息をしていた。

 「逃げても無駄だよ?」ベインアイがにこやかに言うと、対象の顔が泣きそうに歪んだ。淡い緑の目は憎しみと悔しさに満ちている。「さすが戦士。その誇り高さは敬服するよ」

 「放してよっ・・・」もう金切り声さえでないのか、対象がかすれた声で唸る。「どうして私を殺そうとするの?」

 「殺そうとするんじゃない」

 ベインアイは唐突に対象の耳に口を寄せた。言葉を、1つ1つ丁寧に、告げる。

 「殺すんだよ」

 口元が裂くくらいに笑う。もう相手の目しか見えなくなっていた。

 「えげつないね、相変わらず」

 この場に似合わない穏やかな声に、少しだけ振り向くと、フォッグアイが立っていた。彼女の足元に転がるのは恐らく猫の体だろう。黒っぽい虎柄の体がズタズタになっているのが分かる。

 「フォッグアイがそれ言うかなあ」とベインアイは苦笑した。

 「ちょっと反抗されたからね。正当防衛正当防衛」ひょいっと肩を竦めてフォッグアイが言う。「なんだか弱いと思われたみたいでムカついちゃった。確かにパワーはないけどさ、戦略ならこっちの方が臨機応変なのにね」

 ベインアイの下で対象が激しく身を震わせた。フォッグアイの足元で悍ましいものと化した、もう一匹の対象は、以前サンダー族を荒らした元族長で現浮浪猫だった猫のようだ。

 「私を殺しても、シャドウ族の戦士たちが貴方達を滅ぼすわ」

 震える声で、それでも強く言うと、ベインアイとフォッグアイの目が同時にこちらをむいた。鮮やかなグリーンとシルヴァーの瞳が細まる。

 まるで蔑まれてるようだった。

 「それは・・・困るなあ」

 ベインアイが呟き、鉤爪を剥きだした前足を大きく振りかざした。

 一瞬間を置いて__対象の体に激痛が走る。鋭い鉤爪で内臓をかき乱された。心臓が爆発しそうだ。血が動くたびにブシュッとあふれだす感覚。鈍い匂いに鼻が曲がりそうになる。

 「ああぁぁぁあああああああああああああああああああああああああああああっ!!!」

 対象は力の限り叫び、ベインアイが見下ろした頃には、すでに事切れていた。


 「どうして殺すのって、そりゃあ」

 溜息をついた同僚の言葉を、フォッグアイが継ぐ。


 

 「後輩たちを苦しめた今世の猫だからだよ」
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Re: とある彼等の想起事変__All stories eye color Talks__

投稿 by ヒーステイル on Mon Jan 11, 2016 8:10 pm

COUNT 13th








 「まさか。また”アレ” が出たのか?」

 「そうだとも。今は幽閉されている」

 「ああ、口に出すのも悍ましい!あんなのがこの村にいると思うと、全身の毛が逆立つよ」

 「でも本当にあ奴は天の猫に背き子なのか?」

 「お前、長を疑うのか!」

 「あのお方が言うのだぞ!真実に決まっているではないか!」

 「なにより長が毛嫌いしている。何よりの証拠だろう。天に選ばれし彼が嫌うのだ、当たり前だろう」

 「ああ、早く消えてはくれないか」

 「狼にでも差し出してしまおうか?」

 「阿呆、そんなことをしたら我々が毛皮を剥がれてしまうぞ。判断は長に任せるのが一番良い」

 「そうだそうだ。きっとゆっくりじっくり煮るように、苦しみを与えてくれるだろう」

 「それこそ、牙を抜かれるようなな!」





 ___ふざけるな。



 「フロントアイ!!」

 ティアーアイは咆哮を上げて踏み切った。

 目の前で毛足の長い白い毛をなびかせる雄猫。余裕綽々の笑みで向かってくるティアーアイを見据えている。

 昔からこいつは食えない奴だった。

 どんだけ腹を抱えて笑っていても、オーシャンアイを優しくからかっていても、敵をおびき寄せるために走っていても、こいつは決して無邪気ではなかった。

 昔から、ずっと。

 「お前はいつからだったんだ!?}

 ティアーアイはフロントアイの喉を目掛けて鉤爪を振るった。自分は持久戦には向いていない。できることなら一発で仕留めたいのだ。

 しかしフロントアイはそれをかわすと、爪をひっこめた前足で軽くティアーアイの脇腹を押した。

 ティアーアイは砂埃を立てて倒れる。

 ああ、舐められてる。実感して涙が出た。砂埃と交じる汚い涙を通して、戦士部屋の前で蹲って動かない黒猫を見る。

 またか。

 またこれか。

 また僕は親友を救えないのか。

 「いつからって?ずっとに決まってるでしょ」

 憎んでも憎みきれない白猫は芝居がかった動きでくるくる回る。

 抑えにこないのがまた腹ただしく、実際必要ないのが悔しい。

 「そりゃあ忘れたりしたさ。でもね、僕は感じてたよ。君が憎い。君たちが怖い。だから排除するんだ。僕は僕の僕だけのための世界をつくる」

 「ハッ、それだと君はこの世界の猫__いや生物全てを殺さなきゃいけないね」

 口を引きつらせて嘲笑う。脚に力が入らない。口の中が苦い。

 「そうだね。それもいいかもしれない」

 フロントアイは笑う。細まった黒い瞳に吸い込まれる。

 ティアーアイはぐっと背中を反らせながら立った。後ろ右足が折れている。血を吐きながら、ティアーアイは叫んだ。

 「黒は何にも染まらない!!お前が描く理想郷はこの先ずっと訪れないぞ。無駄な努力はお前をだめにするだけだ。せいぜい泣きながら滅びるが良い!!」

 フロントアイの白い毛が逆立つ。

 ティアーアイはニヒルな笑いを浮かべて爪を構えた。覚悟はとうに出来ている。

 「お前は僕の親友を2度も苦しませた。僕は今、病を患ってなどいない。充分楽しませてあげるよ!」

 「笑わせる!」

 フロントアイが大声であざ笑って跳びかかってきた。

 ティアーアイはぎゃっと叫んで後ろに吹っ飛んだ。喉が裂け、血が飛び散った。痛みで爆発しそうな頭を振りながら、ティアーアイはよろよろ立ち上がった。

 後ろ足に柔らかい毛がふわりと振れる。

 ___今度は守りぬくと決めた。

 「くたばれ、ティアーアイ。ここは君が生きていていい場所じゃないんだ」

 フロントアイが微笑んだ。恐ろしいほど優しい笑み。ティアーアイは首の毛が逆立つのを感じた。怯えているようで自分が憎い。

 「僕には君を倒す力は残っていない」

 「元からないだろう?見栄を張りなさんな」

 「だから足掻くのは時間の無駄だ。僕は君より容量がいいからね」

 ティアーアイは無視して白猫の目を真っ直ぐ見つめた。今頃彼の腸は煮えくり返っているだろう。涼しい顔の裏は黒く濁っているだろう、とティアーアイは唸るように笑った。

 「やってみなよ」

 フロントアイが顎を突き出して歯を剥いた。

 ティアーアイはやってやる、と彼を睨み、走ってくるフロントアイの耳に殴りかかった。

 当然のように彼はかわす。が、ティアーアイは突き出しかけた前足を曲げて、そのピンクの鼻を強打した。

 ぎゃっという悲鳴。フロントアイがのけぞって後退った。

 「___オーシャンアイ!」

 ティアーアイは振り返ろうとして、どさりと倒れこんだ。それでもなんとかオーシャンアイと目を合わせようとするも、

 親友の美しい瞳は、固く閉じられていた。

 

 
 __僕の親友は、こんなにも小さかったのか。



 遠い昔では見ることの出来なかった動かない黒い体に身を寄せると、ティアーアイは深く息を吸い込んだ。

 フロントアイはのそりと頭を起こして激しく唸った。

 フロントアイが睨めつけたかつての仲間の戦士たちは、すでに絶命していた。



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