正×正=悪のケモノ方程式  [第一部、完結]

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Re: 正×正=悪のケモノ方程式  [第一部、完結]

投稿 by レパードクロー on Sat Jan 16, 2016 7:04 pm

第10章_赤の魔女





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ライオンシャドウの足元には何粒かのベリーが転がっている。もちろん、自分は看護猫でもなんでもない。
そしてくわえた太ったネズミを落とす。何をしようとしているのかはもう明らかだ。

トゲと小枝も一緒に持ってきた。あと、ケシの実も。

看護部屋からちょっと盗んできたが、少量なのでバレはしないだろう。第一自分は優秀なのだ!へまはしない!
自分に酔いしれること数分。ようやく我に返り、作業を開始した。

まず、ネズミの口をこじ開けてベリーを小枝で詰め込む。くれぐれも自分の前足につかないように慎重に。
ネズミの腹にたっぷりとベリーを詰め込んで、次はトゲとケシの実を詰める。この二つは早く毒が回るようにするためだ。


できたのは毒入りネズミ。


これを、あの飼い猫に食べさせるのだ。


自分を指導者に選ばなかったあいつに。



ライオンシャドウは気付かない。
一組の目が、彼を食い入るように見つめていたことに。その猫は、虎猫だった。

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ネズミをくわえてキャンプに戻ると、すでにキャンプの中では夕食が始まっていた。
それぞれが好きなものを食べており非常にリラックスしている。そんな猫たちの食べている獲物を横目で見ながら妹を探す。

レパードアイはハイーナペルトとブラックポーとパトロールに行っていたようだ。入り口からするりと入ってきて、駆け足で空き地へと下りてくる。


「レパードアイ!ちょっと来てくれ!」


ネズミをくわえたままだったのでくぐもったおかしな声にはなったが、ちゃんと妹を呼べた。
黄金色の耳をピクリと動かしてこちらへのんびりと歩いてくるレパードアイは夕日を受けてまぶしく輝いていた。


「なあ、これを族長に届けてくれないか?」

「ええ。いいわよ。」


妹は疑いもせずに尻尾をビュンッと振るとネズミをくわえてハイレッジへと歩き出した。
だが、途中で足を止め、振り返る。

「ねぇこのネズミ病気じゃない?嫌なにおいがするわ。甘酸っぱい香りが。」

くそう。このときばかりは妹の天才的な嗅覚を恨んだ。わからないだろうと思っていた自分がバカだった.....。

「そうか?じゃあ捨てろよ。」

やむなく、ネズミを諦める。レパードアイはわかったと言ってゴミ捨て場へと向かっていく。
ライオンシャドウは深いため息をついて戦士部屋へと入っていった。






彼の知らないところで運命は交差する。虎猫はそっとレパードアイに話しかけた。

「そのネズミをどうするんだい?」

「え?ああ、捨てるの。病気だから。」

「僕がしておこう。」

「ありがと!ラッキー!」

虎猫はネズミをくわえ上げた。

瞳が光を反射してきらりと耀き、いつの間にか消えてしまった忠誠心を懐かしむような表情をしていた。
空はもう暗い。





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Re: 正×正=悪のケモノ方程式  [第一部、完結]

投稿 by レパードクロー on Mon Jan 18, 2016 5:30 pm

第11章_貴方とあと少しだけ狩りをしたかった








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周りの空気は暖かいのに、なぜ自分の心はこんなにも冷え切ってしまったのだろうか?僕はもう、ただの戦士ではなくてこれから血をかぶらねばいけないのだ。
それが、父の教えなんだ。リズミカルに自分の胸にネズミの尻尾があたる。ダメだよ、考え直して、やめようよ。風のささやきはそういってくれている気がする。
猫の血を見た時の父の顔が目の前にちらつく。不気味に笑った口元の端からは美しいほど白く輝く牙がのぞいていた。


体中に煮えたぎるこの怒りをどうしてくれようか。


そよ風に問いかけてみたが、返事は無い。返事の変わりに甘い囁きだけを僕の耳に残して過ぎ去っていった気分屋たち。
迷いは徐々に怒りへと変わっていく。すっと心の中に鉄の重石が入ったような気分になる。

自分の能力に酔いしれ、ただ訓練をして技を磨いていただけの、一族に尽くそうとやっきになっていただけの見習い時代はどこかへと去っていった。
戦士になり、部族猫大移動をして得たものは野心だった。いつからか周りの猫たちが、仲間が邪魔になってくるように感じた。


戦士を殺すことで優越感を得てしまう自分はもう、ただの人殺しとなってしまった。


マウスファーを川へと突き落としたときのあの気分はそう簡単には忘れられまい。


族長の部屋へとつながる岩棚に足をかける。今ならまだ間に合う。遅くは無い。この毒入りネズミを捨てればいいんだ。
でも、善の声は僕にはもう届かない。
足元を滑らせないように一歩一歩、砂利を踏みしめて確実に登っていく。目はらんらんと輝きながら夕焼けの色を映し出していた。



「ファイヤスター?僕です。入りますよ。」


「ああ。入れ。」


族長はいつもと変わらずにコケとシダの寝床でうずくまっていた。わずかな光しか届かない部屋は薄暗く、族長のモスグリーンの瞳は美しい輝きを放っていた。
その視線は僕の体を貫き、一瞬体全部が固まってしまった。

「食事か?ちょうどパトロールのあとで腹が減っているんだ。」

「どうぞ。太っていておいしいですよ。」

「ありがとう。」


ファイヤスターは口をあけてネズミの匂いを嗅ぎ取ると、前足を伸ばして獲物を引き寄せた。細く長いかぎ爪がきらりと光る。
口を大きく開けてネズミの腹にかぶりつく。たらりと一筋血が流れ出て、部屋には森の匂いとわずかな死臭が漂い始めた。

ネズミがあと一口と言うところでファイヤスターはいきなり苦しみだした。最初は頬が痙攣するだけだったが、いきなり血を吐いて、倒れた。
白目をむき、ゼイゼイという不気味な音を立てながらファイヤスターはもだえている。尻尾を床にぴしゃぴしゃと打ちつけ、鼻からは泡が吹き出ている。
口を開いて喋ろうとするが、声が出ないらしくあえいでいる。

じっくりと瀕死の族長を眺めているといきなり脇腹をつかまれた。ファイヤスターだ。死に掛けているとは思えないほどの力で毛を引っ張る。

「なッ........何を....した?」

「貴方がスター族のもとへと旅立つ日を少し早めにしただけですよ。」

「あ.....あ........」


血を吐いてファイヤスターは倒れた。ベリーはファイヤスターの命をすべてさらって行った。一つ残らず。

哀れみと悲しみの目をちらりとファイヤスターに向ける。モスグリーンの瞳はもはやただのガラス玉に成り下がっていた。
家主を失った部屋はいっそう薄暗く見えた。にやりと僕は笑う。

その瞳はもはや猫のものではなく、権力に飢えた一匹の獣だった。もう、そよ風は甘い囁きさえも残して行ってはくれない。
 
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Re: 正×正=悪のケモノ方程式  [第一部、完結]

投稿 by レパードクロー on Mon Jan 18, 2016 8:56 pm

第12章_湧き上がる疑惑






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私は父親の遺体からそっと顔を上げた。空はすでに日が昇っており、小鳥がさえずっていた。ついうとうとしてしまったらしい。体の右半分だけ寝癖がぐしゃぐしゃとついていた。
シンダーペルトも眠ってしまったらしく、灰色のわき腹がゆっくりと上下していた。

真夜中に突然私たちはベリーポーに起こされて、空き地へと出て行った。そこには父親の体を嗅いでいるブランブルクローの姿があった。
父親は血を吐いて死んでいた。中毒死。私たちはそう判断した。彼が毒物を自ら進んで食べるわけが無い。ということは他殺だとシンダーペルトは言い切った。

元指導者の死を認めるのは誰よりもつらいだろうとシンダーペルトの横顔をちらりと見ると、思った通り乾いてはいたが涙のあとがあった。

リーフプールはのびをして父親の遺体をなめはじめた。

毛並みに沿ってゆっくりと。腕も足も背中も。


(え?)


リーフプールが見つけたものは焦げ茶色の毛の束だった。さっと背筋に寒気が走った。焦げ茶色の虎猫は二匹しかいない。そのうちの一匹は私の治療を受けて看護部屋で眠っていたはず....。じゃああの猫が?誠実そうに見えるあの猫が?嘘でしょ?
遺体を運ぶときとかにとれたのかもしれない。もしかして皮膚病だったとか?

そんなはずがないとうことはリーフプールにもわかっていた。彼は見るからに健康だし、皮膚病でもなんでもない。

思わず指導者に目をやるとまだ彼女は眠ったままだった。

毛の束をそっと持ち上げ、小走りで看護部屋の自分の寝床へと走る。ついでに薬草置き場からオークの葉とツタをつかみとる。
オークの葉の上に毛の束をのせ、ツタで慎重にくるんでいく。出来上がった包みは寝床のコケをはりつけて、岩の割れ目へと隠した。自分しか知らない秘密の倉庫に。

コケを貼り付けたのはそうしていれば見習いが見つけてもコケのクズだと勘違いするからだ。


「リーフプール!看護部屋にいるの?遺体を埋葬するわよ!」


シンダーペルトが目を覚ましたらしく、大きな声で叫んでいた。シダのカーテンをくぐって外に出ると、シンダーペルトとブランブルクロー、そして長老がファイヤスターの遺体の側にかがんでいた。母猫たちは遠くからそっと見守り、ひそひそ話をしている。

シンダーペルトが弔いの言葉を唱え、長老達が遺体を埋葬してくると、さっそくブランブルクローはハイレッジへと飛び乗った。


「みんな!昨夜ファイヤスターが亡くなるというショッキングな出来事が起きた。が、サンダー族は栄光を保ち続けるんだ!」


戦士たちはその言葉に沸き立ち、それぞれが叫び始めた。誰もが興奮し、新しい族長へ歓声を浴びせた。
ブラクンファーが静かにというように尻尾をふっても騒ぎは中々収まらず、ブランブルクローは何度も声を張り上げた。


「俺は明日シンダーペルトと一緒に月の池へといってくる。だがその前に一つ聞きたい事がある。」



「なぜファイヤスターは死んでしまったんだ?中毒死で毒は誰が食べさせたんだ?誰か知っているものは?」


一族は急に静まり、誰もが顔を見合わせた。そんなことを言われても誰が殺してしまったんだろうか?心当たりなんぞあるわけがない。
クラウドテイルが尻尾をあげて発言の許可を求めた。ブランブルクローが頷くと白猫は立ち上がった。


「シャドウ族の戦士じゃないか?あいつらならやりかねない!」

「よく考えてくれ。真夜中に堂々とキャンプに忍び込むやつがいるか?そんなことはアナグマの子でさえも知っている!」


クラウドテイルは納得のいかない表情をしていたが、しぶしぶと言った感じで座った。
その時はじかれるようにレパードアイが立ち上がった。エメラルドの瞳は怒りに燃え、クラウドテイルを睨み付けながら怒鳴った。


「先輩はバカですか!?なんでシャドウ族を疑うんです?」

「落ち着けレパードアイ。なんでそう興奮しているんだ?」


ブランブルクローの問いかけももっともである。

すると猫が一匹立ち上がった。朝日を浴びてきらきらと黄金色に輝く毛を持ったたくましい雄猫が。


「僕は知っている!誰がファイヤスターを殺したかを!」


全員の瞳がレパードアイとライオンシャドウへと集まった。おろおろするレパードアイに変わって彼はとても落ち着いていた。

「レパードアイが族長を殺したんだ。」

彼女への好奇の眼差しは疑いの眼差しへと徐々に変わっていった。
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Re: 正×正=悪のケモノ方程式  [第一部、完結]

投稿 by ラッキークロー@LC on Mon Jan 18, 2016 9:25 pm

投稿が早くてとても嬉しいです!今か今かと待ってました(^-^)v

 フ、ファイヤスタアアアアアア!!まさか、彼が殺されるとは......!そして焦げ茶の虎猫...レパードアイに罪を被せようとたくらむ人物......。
 おいまさか、あの猫が......!?

 登場人物の心情がストレートに書いてあり、物語の展開がとてもつかみやすいです!「読ませる文章」というのは、このような文のことを言うのだろうと思います(^-^)v一話一話もちょうどよい長さで、飽きさせないスタイルです。いつも感動しています。

 続きを心からお待ちしています!
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Re: 正×正=悪のケモノ方程式  [第一部、完結]

投稿 by レパードクロー on Sat Jan 23, 2016 7:55 pm

ラッキークローs>
コメントありがとうございます!
とうとう族長を殺してしまいましたよ虎猫さん......レパードアイごめんなんかこんな役にしちゃってと反省しておりますw
まさかあの猫がっ!?あの猫がっ!?(((

彼らのそれぞれの思いと行動にご期待あれとかかっこいいこと言いたいなぁ.....
一話一話がちょうどよい長さというよりも短いだけだとか思ってませんよ!ええ!思ってませんよ!((

いつも応援ありがとうございます!
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Re: 正×正=悪のケモノ方程式  [第一部、完結]

投稿 by レパードクロー on Sat Jan 23, 2016 8:19 pm

第13章_エメラルドのゆらめく炎





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「レパードアイが殺したんだ。」


頭の中が真っ白になるのがわかった。口の中がカラカラに乾いてしまって、喉と喉が張り付いてしまったのではないかというぐらい喉が引きつっていた。
みんなの瞳が好奇の目から疑いへと変わっていくのを全身で感じる。ああ、やっぱり自分たち兄弟は信用されていないんだと改めて思い知る。


「ちょっと待ってよ_どういうことなのよ兄さん。なんで_」

「どういうことだ、ライオンシャドウ?」


ブランブルクローがあたしの声をさえぎって続きを促した。尻尾がふわりと膨らんだのを感じた。気のせいだろうか。ハイレッジに立つブランブルクローの瞳はおもしろそうに輝いているのは。
風が吹いて茂みがカサカサと音を立てて揺れ、足元の砂が舞い上がった。

ライオンシャドウは早口で説明しだす。昨日の夕方、病気のネズミを捨てるように頼んだこと。そのネズミは族長にあげる予定だったこと。
すべてを。やってもないことを。いい加減な戯言を。


ちょっと待ってよ。あたしたち兄弟じゃなかったの?ゴールデンフラワーから産まれた三匹の血の繋がった兄弟のはずでしょう?なのに、なんで_。
なんであたしを陥れようとするのよ?


「本当なのかレパードアイ?」


「違う!あたしはやってないわ!」


「じゃあなんでシャドウ族をかばった?大集会の時だってシャドウ族といつも一緒にいるじゃないか!兄弟よりも一族よりもあっちに忠実なのか?」

たたみかけるようにライオンシャドウは怒鳴った。


そんなことないよ。

言いたかったけれど、いえなかった。いつから兄はこんな風になってしまったのかは全然わからない。

みんなおかしいよ。なんでしてもないことを信じちゃうの?ブランブルクローも何か言ってよ。疑うような目をするだけじゃなくてあたしを庇いなさいよ。兄でしょう?
タイガーストライプだって何で黙っているのよ?ハイーナペルト?貴方は?友達でしょう?ねぇ____。

兄たちの目はぎらぎらと輝いている。あたしはその目の『奥』にあるものがはっきり読み取れた。

この人たちはもう取り返しがつかないことになっているって気付いたら、あとは簡単だ。


「なんでそうやってみんなはそんな目で見るのよ?父親がタイガースターってだけで!」

「本当にお前が殺したのか?裏切り者なのか?」戦士たちが顔色を変えて聞いてくる。


でもあたしはもう聞かない。誰も信じない。あんたたちなんか信じない。


「もういいわ。」

「は?」

ブランブルクローが怪訝そうな顔をした。一族も困ったように顔を見合わせる。ライオンシャドウだけが勝ち誇った笑みを浮かべていた。

「あたしは知っているの。誰がファイヤスターを殺したかを。」

「誰なんだ、それは?」


ダストペルトが立ち上がって怒鳴った。

「教えないわよ。あたしを裏切り者扱いするあんたたちなんかには。」

言い出したら止まらない。口を開けばこれまでの思いが飛び出てくる。もう止まれない。言えば一族にいられなくなるのがわかっているけれど___。
もう止まれないし、止まらないから。

「いつもそうだったわ。皆偏見をもった見方をしていたの。もううんざり。」

「おい....」


「気をつけなさい。本当の裏切り者はこのなかにいるのよ。」


一言つぶやいていきなり走り出した。一族がよける暇も無く群れを突っ切り、戦士を突き飛ばし、ハリエニシダのトンネルへと無我夢中で走っていった。
ブラックポーの悲しみに満ちた突き刺すような視線が背中に刺さる。彼女だけは待って、行かないでと訴えてくれているみたいだ。
ごめんね、こんな指導者で。

森に飛び出て、小川を渡り、境界線を越える。

きっとあたしが座っていた場所には透明な雫が数滴落ちていることだろう。
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Re: 正×正=悪のケモノ方程式  [第一部、完結]

投稿 by レパードクロー on Sun Jan 24, 2016 2:05 pm

第14章_タイガーアテンション





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荒い息をしながら立ち上がった。鼻の中に砂埃が入ってきてむずがゆい。肩には浅いが、パックリと割れて血のにじみ出る傷がついていた。
ちらりと前にいる弟子を見ると困ったような顔をしていた。「お怪我をさせてしまいましたか?」恐る恐るたずねてくるのはきっと、新しい技に自信が無かったからだろう。
だが、自分だってロビンポーの毛を何束かむしりとってしまっているので見習いを誤らせる気にはなれなかった。

「なんでもないよ。しかしいい技だった。実戦で使えるようになるまで自分で練習するんだ。あと、最後のジャンプはもう少し低めに。着地が遅くなって相手に気付かれる。」


ロビンポーも肩で息をしながら立ち上がった。肉球を切ったらしく、しきりに砂をなめて落としている。
痛みを隠すために尻尾をビュンッと振って、立ち上がる。もう呼吸は落ち着いていた。

「よし、後一回やろう。僕に飛び掛って来い。ただし爪は出すな。」


ロビンポーはぐっと目を細め、じりじりと腹が地面につきそうなほど身をかがめて近づいてくる。一見どこを狙っているのかはわからないほど、タイガーストライプの目を真っ直ぐ見つめているが、よく見ると指導者の目より少し下の喉下を狙っているのがわかった。攻撃範囲まで来たとき、ロビンポーはいきなり体を起こして飛び掛ってきた。
一瞬その速さに目を疑ったが、大きくジャンプしすぎなので考える時間はたっぷりあった。

まず、さっと仰向けに転がって見習いから逃げるとくるりと向きを変えて前足でロビンポーの鼻ずらを__もちろん手加減して__二回叩いた。ひるんだロビンポーは後ろへ大きく飛びのいたが、タイガーストライプが突進してくるのを見ると再び地面に身をかがめて光のような速さで指導者の腹の下にもぐりこんで頭突きをくらわせた。

これはきく。空き地に大の字に吹っ飛ばされたタイガーストライプは自分の弟子がここまで成長していたと知り、誇らしくなった。

急いで立ち上がり、今度はこちらから仕掛ける。後ろ足で立ち上がり、前足を前に突き出すと突進してきたロビンポーはぎょっとした表情でブレーキをかける。
が、どすんとぶつかって目を回してしまった。その隙に今度はこちらが彼の上に覆いかぶさり、甘噛みだが鋭い牙をふわふわした毛皮が覆う彼の首筋に突き立てようとした。ロビンポーはふっと力を抜く。おかげでこちらはどすんと地面にしりもちをついた。ロビンポーはくるりと転がって逆に指導者の上に乗っかった。

タイガーストライプは手足をジタバタさせて、「重い!退いてくれ!」と叫んだ。ロビンポーは満足そうに唸って毛皮をつかんでいたかぎ爪の力を抜いた。


「どうでしたか?」

期待と誇らしげな表情をを隠そうともせずに聞いてくる。その熱心さにはいつも感心させられる。
タイガーストライプはしばらく考え込んだ。うまい言葉が見つからない。

「まず、お前には脚力がありすぎる。だからはじめのジャンプも大きすぎてこっちは考える暇が十分あった。力をコントロールしろ。」

「はい。」

「それから一瞬たりとも気を抜くな。戦いの最中は常にまわりに目を光らせろ。いつ不意打ちが来るかはわからないんだからな。」

「はい、気をつけますタイガーストライプ。」

「よし。じゃあキャンプに戻ろう。今日はここまで」


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キャンプに戻るとじろりとダストペルトから睨まれた。なんで、お前がここにいる、裏切り者の兄のくせに。その目はそんな気持ちをかたっていた。
ロビンポーに肩をすくめてみせ、獲物置き場からモリバトをひったくる。ハトはまだ温かくて、捕ってきたばかりのようだった。
戦士部屋の前の隅にハトを置き、まずは乱れた毛を整えようと肩のあたりをなめ始める。

「一緒に食べない?」

顔を上げると灰色の顔があった。ハイーナペルトだ。

「ああ。」

彼女は持ってきたスズメをぽとりと落として空を見上げた。その横顔に太陽の光が当たって、美しいなぁと実感する。
実は彼女、かなりの美人で毛の色を覗けばあとはすべてが整っていた。

スズメの足をもぎとり、肉を噛み千切り始めた彼女に習い、僕もハトを食べ始める。うーん、脂が乗っており実にうまい。
口の端から灰色の羽が出ているのに僕はもごもごとハイーナペルトに喋りかける。

「ふぁあ、ふぃみはふぁれがあふぁふぁすぃふふぼうにふぁるとふぉふぉふ?」

「なあに?飲み込んでその羽を捨ててから喋りなさいよ。は行ばかりで聞き取りにくいわ。」

ゴクリとハトの肉片を飲み込んでもう一度彼女に「なあ、君は誰が新しい副長になると思う?」と聞いてみた。
彼女はうーんと唸り、食べ終えたスズメの骨の山を尻尾で引き寄せた。

「そうねぇ。ブラクンファーとかダストペルト?あ、クラウドテイルとかサンドストームもいるわね。」

「僕はアッシュファーとかも怪しいと思っている。彼、スクワーレルフライトとラブラブだし?」

「あの二匹は絶対に子供つくるわね。わー、ブランブルクローかわいそー!」

最後の発言には苦笑いしておいた。
だってブランブルクローが燃えるような目で僕らとスクワーレルフライトたちを見つめていたから。
片目ずつ違う光景を見ようとするの、けっこう難しいと思うんだけどな。すごいよ。
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Re: 正×正=悪のケモノ方程式  [第一部、完結]

投稿 by レパードクロー on Sat Jan 30, 2016 2:47 pm

第15章_闇に沈む罪悪感





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小さな茨道を小走りに通ると、カサカサと葉が音を立てて揺れた。トゲが毛皮にからみつき、ひっかかってついてくる。くそう。あとで毛づくろいしなきゃな。
森はしんと静まり返っており、おしゃべりな小鳥でさえ夢の世界に浸っている。
今晩は星は無くて、いつもよりか光が少なくて、夜の闇がいつもよりも巨大に思える。赤い実をつけた茨は、互いに絡み合って複雑な形をつくっていた。

昼間、ロビンポーとブラックポーが鳩を捕まえた場所までやってきた。鳩の羽が一面に散らばり、少しだけだが鮮やかな血も地面についていた。
さっきの赤い実よりも鮮やかで、美しい赤色は、タイガーストライプを深く惹きつけた。
タイガースターやブラッド族が猫を殺すことに楽しみを覚えるのも、少しだけだがわかる気がする。
不思議にもそんな気持ちがふつふつと湧き上がってきた。

スカイツリーを通り過ぎ、小川を渡り、ウィンド族の縄張りを駆け抜ける。ちらっとウサギの匂いがしていたが、今は捕まえる気にはなれなかった。


大集会の島へとついた時は月は空高く上っていた。

声を押し殺してそっと彼女の名前を呼ぶ。「ウールフラワー!」


茂みが二つに分かれて、青白い猫が現れた。ふんわりとヒースの香りを身にまとい、サファイヤブルーの瞳は月光を反射して淡く輝いていた。
口には丸々と太った魚をくわえており、何か持ってくれば良かったと今更だが後悔した。
やはりあのウサギを捕まえるべきだった.......。そこまで考えてはっと気付く。あそこはウィンド族の縄張りじゃないか!

腹の底には静かにねっとりとまとわりつく罪悪感が満ちてくる。

「タイガーストライプ!無事に抜け出せた?」

「ああ。君こそ大丈夫かい?」


ウールフラワーはにこりと笑って言った。「私は副長の娘よ。大丈夫に決まっているじゃない。」そういってタイガーストライプの桃色の鼻を尻尾でピンとはじいた。
二匹は尻尾を絡めあい、グルニャーオ、ニャオウと喉を鳴らす。一族の仲間に隠れてこんなことをするという罪悪感の裏には、若い猫には魅力的な興奮と何とも言えないものがあった。同じ部族間でつがっても、こんな気持ちは経験できないだろう。

そういえば父さんも浮浪猫とつがったっけ.........?

そんな思いがふと脳裏をよぎる。だが、考え事は彼女の発言でシャットアウトされた。


「魚、とってきたの。食べましょ」

「ありがとう!」


ウールフラワーが鋭い銀色のかぎ爪で魚の腹を撫でた。白くぬめりと光沢していた魚の腹はパックリと割れ、中から鮮血が吹き出した。
彼女はなれた手つきで切れた腹にかぎ爪を入れ、とろりとした脂をすくだして口に入れた。見よう見まねで僕もしてみる。
口に入れた脂は舌に乗るか乗らないかのところでくずれ、濃厚な甘みとコクが口いっぱいに広がる。

すくっては食べ、すくっては食べ、やっとのことで脂をなめ終えると彼女はもっと大きく魚の腹を切り裂いた。そして魚を半分に分けると、一つをタイガーストライプのほうへと押し出した。

魚の肉はネズミに比べると柔らかいが、独特のうまさがあった。まず、脂同様に舌の上でほろりとくずれる。だが噛み締めていくとだんだん味が出てきて、飲み込んだときにはネズミほど口の中に後味が残らず、サッパリとしていた。
ただ、彼女が魚を切り分けるスピードが速いのには驚いた。かぎ爪を腹に入れたかと思えば次の瞬間には内臓と骨を引きずり出し、魚を切り分ける。尾びれと背びれと胸鰭もあっというまにとり、エラはひとすくいではずした。

「そんなにリヴァー族は魚を食べるのが速いのかい?」

サンダー族では大きな前足の雄猫たちはミズハタネズミの骨をとるのでさえ、四苦八苦しているというのに。


「ううん。雄猫は普通よ。というか速さは戦士それぞれで、母猫たちは子猫に魚を食べさせるから速いのよ。私は元々そこまで遅くは無いから。」


たわいもない話をしているとき、僕らは気付かなかった。
マスタードイエローの瞳が僕らを見つめていることに。
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Re: 正×正=悪のケモノ方程式  [第一部、完結]

投稿 by レパードクロー on Sat Jan 30, 2016 8:51 pm

第16章_獅子と獅子と野心と



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横腹ににぶい痛みが走った。隣に寝ているソーンクローに蹴り飛ばされたのかと思ったが、そうではなかった。すでに自分は夢の中に入っており、横腹を蹴り飛ばしたのは見慣れた大きな金色のケモノだった。「痛いじゃないか!」ぶつぶつ文句を言いながら立ち上がる。あたりを見回すと、いつものヒースの丘ではなくて、もっと暗い、さびしい岩山だった。灰色の岩は先端がとがっており、猫の体ぐらいやすやすと貫けそうだった。

「何だよ。わざわざ夢に呼び出しておいて蹴るかよ普通。」

ライオンは目をぐっと細め、何か言いたげな表情をしていた。鬣はいつもより逆立っていて、毛の一本一本に張り詰めた気持ちが浮き出ていた。
ライオンシャドウはそんなことは関係ないと言わんばかりにすっくと立ち上がると、ライオンの顔を真正面から睨み付けた。


「僕の何が気にくわないのか?」

「お前は掟を破った。正々堂々とリーダーの座を勝ち取るはずが、お前は楽なほうへと逃げた!」

憎々しげな口調でライオンは吐き捨てるように怒鳴った。モスグリーンの瞳の中にはあからさまな憎悪と怒りが混じった炎が湧き上がっており、銀色の爪を出したり引っ込めたりしていた。

「仕方が無かったんだ!レパードアイはなぜかみんなに人気だし、副長になるためにはこれしかないと思って......」

「ならばもっと一族に貢献すべきだったんだ!お前はそれをしなかった!」

「うるさい!」


二匹の怒鳴り声は大地を揺るがし、猫が三匹ほどつみあがっても届かないような灰色の岩がバキンと音を立てて割れた。
まるでこれまで師弟の関係だった二匹の仲が壊れていったのをあらわすように。そして、これからの出来事が不安に満ちたものになるのを予言するかのように。
小さなかけらがコロコロと斜面を転がり落ちていった。遠くのほうで何か大きな凶暴な鳥の鳴き声を利いた気がした。

見えない何かが音を立てて崩れ落ちていく。


「俺の努力が水の泡になった。お前を子猫の時から育て上げてきたのに!」

「黙れよ!僕はそんなことを頼んでもいない。お前が勝手にしてきただけだ。」


この一言でライオンは怒り狂った。牙をむき出しにしてライオンシャドウへと飛び掛る。だが、ライオンシャドウは慌てずにひらりと身をかわすと、逆にライオンの尻尾に噛み付いた。鋭い牙が深く尻尾に食い込み、ライオンは怒りと屈辱と痛みの混じった吼え声をあげた。
すかさずライオンシャドウはパッと後ろに飛びのいた。だが、ライオンのほうが速かった。鼻ずらを大きな前足で思いっきり叩いた。
空き地のはしまでライオンシャドウは吹っ飛んだ。起き上がった彼の鼻はおかしな方向へと曲がっており、血がダラダラと垂れていた。

ライオンは再び飛び掛ってきた。大きな体からは想像できないほどの脚力でキツネ三匹分をやすやすと飛び越える。
そして勢いを止めずに、ふらついていたライオンシャドウの肩に牙を立てるとぶんぶんと振り回した。

ライオンシャドウは激痛で声にならない悲鳴を上げた。だが、機転を利かせ、大きなケモノの両目に爪を立てた。

今度はライオンが叫び声を挙げる番だった。両目を押さえてうずくまる。口の端からは声にならない苦悶の叫び声がもれ続けていた。
間髪いれずにケモノの懐へとライオンシャドウは飛び込んだ。爪をむき出しにして胸へとさす。ズブリと君の悪い音を立ててかぎ爪はケモノの肉を突き破り、骨に届き、心臓をえぐった。


ライオンの体がちりとなって消えた。



☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★


うめき声をあけて飛び起きた。鼻と肩に激痛が走る。前足で触ってみると、べっとりとした赤い血がついていた。「嘘だろう。」低い声でつぶやいた。
まさか夢でのケガが現実になるなんて。鼻からはひっきりなしに血が溢れ出てきており、スッパリと切れた肩の傷は動くと激痛が走った。
一晩寝ていたとは思えないほどの疲労感で体がぐったりとしており、まるで戦ってきたようだった。
悪夢を見た時の様に体中に汗を掻いていて、寝床はグシャグシャだった。

「何だ、お前。どうした?」


ダストペルトが起き上がった。眠そうに目をこすり、血のにおいにむっと顔をしかめる。

「お前、何したんだ?寝てる間に戦ってきたか?」


ええ、まあ、あのう、と言葉を濁し、質問をかわそうとする。よほど眠かったらしく、ダストペルトは騒ぎ出そうとはせずに顔をしかめたまま「早く看護部屋に行って来い。どうしたらそんなものがつくんだよいったい。」とぼやいたまま寝床に倒れこんだ。
ああ、そういえば今日ウィンド族とひともんちゃくあったんだっけと思い出しながら、ライオンシャドウは看護部屋へと向かった。
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Re: 正×正=悪のケモノ方程式  [第一部、完結]

投稿 by レパードクロー on Sat Feb 06, 2016 3:49 pm

第17章_彼女と彼女





☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★


彼女の瞳から火花がバチバチと飛び出ていた。タイガーストライプは先ほどウールフラワーに告げられた知らせで幸せの絶頂にあったのに、彼女の登場によっていきなり現実に引き戻された気がした。わき腹が大きく波打った。

「どうしてここにいるんだ?」

震える低い声で尋ねる。なさけないほどの小さなかすれた声しか出てこなかった。ハイーナペルトは答えずに首を振って冷めた目をこちらに向けた。

「もう、やめてほしいのよ。」

「いつから知っている?」

「あなたたちが付き合い始めた時からよ。いつもいつも悲しく思っていた。見習いのころの関係は取り戻せないのかなって思って。」

そういえばそうだったっけ_____。

見習いのときはウールフラワーじゃなくていつもハイーナペルトに励まされていたんだっけ?ちょっとだけ付き合っていたときもあった。
でも、結局離れたりくっついたりで____。


「..........」


ウールフラワーは何もいわずに下を向いている。ただ、かたく結んだ唇がふるふると震えていた。銀色の毛は逆立ち、尻尾は膨れ上がっていた。

「本当にさっきの話は本当なのね?」

「ええ__。」

「一つお願いがあるの。」

「何?」

灰色と黒のブチ模様の頭がすっと上に上がった。風が吹いてシダの茂みがガサリとゆれ、木の葉がはらはらと舞い上がった。
しばらくの間をおいてから彼女は口を開いた。月明かりで口元から覗く牙がキラリと光る。その黄色の瞳には決心したような表情が浮かび上がっていた。
しばらくの間、だれも口を開けなかった。


☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★


看護部屋に入るとふわりと薬草の匂いがした。シダのカーテンをかき分けると、静かに上下するリーフプールの薄茶色のわき腹が見えた。
白い前足に小さな頭を乗せ、苔の寝床にうずくまっている。シンダーペルトを起こさないように気をつけながらそっと部屋へと足を踏み入れた。

ほっそりとしたわき腹を前足でつつくとリーフプールはすぐに目をあけた。そしてライオンシャドウの肩から漂ってくる血の匂いにむっと顔をしかめた。
そしてのびをして立ち上がると、身長に肩の傷を嗅いだ。

「何をしてきたのよライオンシャドウ。夢の中で誰かと戦ってきたの?」

本当のことをズバリと言い当てられ、内心あせったが何とか首筋の逆立った毛を無理やり寝かせて小さな声で囁いた。

「あー、狩りに行ってきたんだ。でも、根っこに躓いてこけて木の枝で切っちゃったんだよ。」

「おかしいわね。私はつい三十分くらい前まで薬草採りをしていたんだけど、あなたのにおいを嗅がなかったわよ?」

「それは....僕はシャドウ族との境界線あたりで狩をしていたんだ。そのう.......あそこなら大きな獲物がいるかなって思ってさ。」


リーフプールはまだ疑わしそうな表情をしていたが、そう、と頷いて奥の部屋へと走っていった。そして口いっぱいに薬草をくわえて戻ってくると、苔にふくませた水を持ってきた。そしてライオンシャドウは言われるがままに苔の寝床に横たわると、リーフプールの診察を受けた。

「あらら...。スッパリ切れているけどそれほど深くは無いみたい。本当に気をつけて。ただでさえ今は部族間でピリピリしたモードに入っているから!」


ああ、わかっているよ、と言葉を濁す。

マリーゴールドをつぶした薬を貼られた時は痛くて体がビクンと動いたが、なんとか耐えた。ツーンと鼻の奥まで漂ってくる薬草の慣れない匂いに思わず顔をしかめる。
クモの巣をベタベタとはられ、リーフプールの小言をくらい、部屋に戻ったときにはすでに夜明けだった。
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Re: 正×正=悪のケモノ方程式  [第一部、完結]

投稿 by ラッキークロー@LC on Sat Feb 06, 2016 4:40 pm

 不穏な感情を隠すブランブルクロー、ウールフラワーと密会を続ける(まさか彼女......もしかして......)タイガーストライプ、嫉妬に支配されたライオンシャドウ、追放されたレパードアイ。

 さらにハイーナペルトもこの黒々した人間関係に加わって、思わぬ展開になっていきますね。

 更新がいつも本当に楽しみです。繊細な感情の動きを描くこの物語、いったいどんなラストになるのか。待ちきれません!
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Re: 正×正=悪のケモノ方程式  [第一部、完結]

投稿 by レパードクロー on Sun Feb 07, 2016 7:21 pm

ラッキークローs>
コメントありがとうございます!

まさかの予想が当たっているかどうかはもうちょっと先でわかります!
ハイーナペルトは思っていたよりも出番が少ない......ごめん......
ブランブルクローは何を隠しているのか........そこにも注目していただければ幸いですw

あと少しで終わりますが、彼らの運命はいかに!(((
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Re: 正×正=悪のケモノ方程式  [第一部、完結]

投稿 by レパードクロー on Sun Feb 07, 2016 8:05 pm

第18章_副長の座と新たな罪



☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

あくびを噛み殺して小走りにブラクンファーのあとを追いかけていく。なるべく傷ついた肩に負担がかからないように、片側に体重をかけながら。
朝露の光るシダの茂みをかき分けて、深い渓谷がそびえるシャドウ族との境界線へと飛び出る。そこには体中の毛をふわりと逆立てたホワイトポーと、同じように唸っているダストペルトとタイガーストライプがいた。

「ラシットファー!お前のところの見習いはどうなっているんだ?なぜ境界線を越した?」ダストペルトが怒鳴った。


黄褐色の雌猫は慌てることも無く、前足に尻尾をかけてえらそうに座っていた。そばにはオーク色の猫と灰色の虎猫も落ちつかなげに行ったりきたりしていて、その後ろではこげ茶色の見習いがリスをくわえてたっていた。

「あら。それを言うならおたくの白猫さんはどうなのよ?彼女、うちのスコーチポーを追いかけて縄張りに入ってきたじゃない。」

「それはお前らがリスを捕ったからだろう!」

「ふん。証拠はどこよ?」

「獲物泥棒め!」ブラクンファーは吐き捨てるように言うと、ダストペルトの横に並んでたった。タイガーストライプとライオンシャドウもその後ろに並び、最後にホワイトポーとヘーゼルポーとマウスポーが並んだ。両者の間には見えない火花が飛び散り、今すぐにでも戦いが起きそうだった。応援部隊の登場にラシットファーは顔を歪め、目をグッと細めた。

音を立てて何かが走ってきた。オークの木々の間から現れたのは、シャドウ族のスノウバードとロウワンクローとスネークポー、そしてそれを率いているのは美しいビロードのような黄金色の毛皮を持ったしなやかな雌猫だった。エメラルドグリーンの瞳は怒りに燃え、ラシットファーの横に並ぶ。毛艶はシャドウ族の誰よりもよく、脇腹は大きく波打っている。

見間違えるはずもない、そこには追放されたはずの妹の姿があった。

「レパードアイ!!!」

ブラクンファーが叫んだ。サンダー族は唖然とし、ちらりと隣を見るとタイガーストライプの瞳は大きく見開かれていた。何かを言いたげだが、口をパクパクさせるだけで言葉が出てこないようだ。

「何でお前がいるんだ?」

同様の混じった声でダストペルトがたずねた。するとレパードアイは挑発するように尻尾を揺らしながら答えた。


「理由は簡単よ。あたしは半分シャドウ族の血も引いている。彼らは快く私を受け入れてくれたの。私は今ではシャドウ族よ。」

「裏切り者じゃないか!」タイガーストライプは叫んだ!顔からは血の気がうせている。

レパードアイはぎろりと兄をにらみながら「あたしを裏切り者扱いしたのは誰よ!」と叫び返した。
やり取りを黙って見つめていたラシットファーは立ち上がると鋭い爪をむき出しにした。耳を寝かせ、威嚇の体制をとり続ける。


「シャドウ族は子猫もいっぱい生まれて、戦士も豊富。だからよけいに獲物が必要なの。」

「だからといって境界線を広げる理由にはならない!」


するとさっきまでずっと下を向いていたスネークポーが、謎が晴れたかのようにパッと顔を輝かせて叫んだ。

「思い出した!僕、実戦は初めてだけど、どこかであのライオンシャドウ見たことがあるなって思ったら、彼が何か暗褐色の猫を川に誘いこんでいたところを見たんだ!」

「おだまり!」ラシットファーが怒ってぴしゃりとスネークポーの耳をはたいた。


ライオンシャドウは自分の顔が青ざめていくのをはっきりと感じた。ブラクンファーがくるりと向き直る。
「マウスファーのことだよな。お前、何を知っている?」

「シャドウ族、いきなさい!」


突然ラシットファーが叫んだ。どっとシャドウ族の猫たちが襲い掛かってくる。ダストペルトはラシットファーを殴ろうとしたが、ロウワンクローがひらりと躍り出て殴り返すのが見えた。自分も戦おうと横を向くと、小柄な雄猫がかぎ爪をむき出しにして殴ろうと構えているところだった。とっさに雄猫の耳をつかんでこちらにひきよせると肩に噛み付いた。雄猫はぎゃあぎゃあとわめいてもがくが、ライオンシャドウはしっかりと顎に力を入れているのでよけいに牙が食い込むだけだった。

焦げ茶色のスコーチポーが後ろから体当たりしてきた。体格の差が激しいのでそこまで衝撃は来なかったが、ぐらりとよろめいてしまった。その隙に雄猫は身をくねらせて抜け出すと、自分の縄張りへとはしって逃げていった。

スコーチポーの脇腹の毛を一掴みむしりとると、間髪入れずに後ろ足で蹴り上げた。小さな見習いは茂みに大の字に落ちた。

肩の傷が開いてズキズキと痛む。何かが転がってくる音がして慌てて横に飛びのくと、スネークポーとヘーゼルポーが取っ組み合いながら転がっていった。
ダストペルトはまだロウワンクローと殴り合っており、タイガーストライプはスノウバードと、ブラクンファーはレパードアイと噛み付き合っていて、マウスポーとホワイトポーは二匹でシーダーハートと睨みあっていた。


ガツンと頭を殴られ、後ろを振り向くとラシットファーが口から血を滴らせながら、もう一発殴ろうと前足を振りかざしているところだった。さっと身をかがめて相手の胸元に飛び込むと、柔らかい白い腹をかきむしった。

ラシットファーは怒りの声を上げて思いっきり首に噛み付いてきた。

さすがは一部族の副長なだけあって、噛み付くと離れない。引き剥がそうにも顎の力が強すぎる。このまま無理して離れたらきっと首の肉が食いちぎられる、そう判断したライオンシャドウは相手にくっつくと、頬のあたりに爪を立てた。

噛み付いたり引っかいたりしながらゴロゴロと転がっていくと、いつのまにか渓谷のふちまで来ていた。耳の奥で血がごうごうと鳴り、下に流れる荒れ狂う川の水の音さえもが心地よく感じた。ヒュウヒュウとしたから突風が吹き上げてきて、首筋の毛がサッと波打った。


レパードアイが友達のピンチを助けようとしてこちらへ走り寄ってくるのが見えた。妹の顔を見た瞬間、レパードアイの悲壮感に満ち溢れた顔を見たい、そしてあざ笑いたいという思いがふつふつとわきあがってきた。もう、自分ではどうしようもなかった。

思いっきり腹を蹴り上げてラシットファーを谷底に落とそうとした。だが、前足で岩にしがみついている。目の前はラシットファーの前足しか見えていなくて、気がついたらその前足を引っかいて彼女を突き落としていた。

敵の首を取ったという満足感に満ち溢れて、仲間を振り返るとそこには怒りで顔が真っ赤になったブラクンファーがいた。

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Re: 正×正=悪のケモノ方程式  [第一部、完結]

投稿 by ティアーミスト on Mon Feb 08, 2016 8:31 pm


ら、ライオンシャドウ…!あかん……!!←


一気読みでテスト勉強の疲れがふきとびましたああ!((鼻血  ありがとうございます!笑笑

一話一話が目の離せない展開で、本当に楽しませてもらってます(*´>ω<`*)

いよいよ山場、という感じがします。 あと少しでラストを迎えるとは…一体どうなるんだろう?わくわくですw

更新、楽しみにしてます!執筆ガンバです~
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Re: 正×正=悪のケモノ方程式  [第一部、完結]

投稿 by レパードクロー on Thu Feb 11, 2016 3:30 pm

霧涙s>
あ、あかん..........鼻血出したらあかん.......

こちらこそ霧sのコメントでテスト勉強の疲れ(とかいいつつやってないけど)が吹き飛びましたぁぁ!!!
いよいよ山場なのですwあとは2、3章くらいなのです。

霧sこそ執筆ガンバですー!
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Re: 正×正=悪のケモノ方程式  [第一部、完結]

投稿 by レパードクロー on Thu Feb 11, 2016 3:57 pm

第19章_追放





☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★


レパードアイが「シャドウ族撤退!」と叫んだ。戦場は急に静まり返り、誰もが無言だった。決断を下したのはダストペルトだった。

「ライオンシャドウ......マウスファーのことについて色々積もる話がありそうだな?え?」

弟は何も言わなかった。

★☆★


空き地には一族全員が集まっていた。みんなソワソワと落ちつかなげに尻尾を動かし、ひそひそと囁き合いながらときおりこちらを見ていた。
空き地の中央にはライオンシャドウが座っており、細めた瞳を空へと向けていた。
岩棚の下にある族長部屋からひらりとブランブルスターが飛び出てきた。首筋の毛は逆立っている。ハイレッジによじ登ると、ブランブルスターはたっぷりと息を吸った。

「これからライオンシャドウについて集会を行う。ライオンシャドウはシャドウ族のラシットファーを必要がなかったのに崖から突き落とした。」

そして焦げ茶色の尻尾をヒュンッと振った。琥珀色の瞳はじっとライオンシャドウを見つめており、何を思っているのかはここからでは読み取れなかった。


「そしてマウスファーを川に誘い込んでいるとの情報がある。さあ、お前の思うことをいってみろ。」

はじめてライオンシャドウがブランブルスターの瞳を見つめた。挑戦的に顎を高く上げ、兄を小馬鹿にしたような態度をとる。
ブランブルスターはイライラと足踏みしながら「どうなんだ?」と言った。

「敵の首を取って何が悪い。一族に貢献したんだ。」

「底までする必要は無かっただろう!マウスファーだって、お前が殺したんじゃないのか?ファイヤスターだって。レパードアイは言っていた。裏切り者がいる、と。」

「僕じゃない!誰なのかは兄貴が一番よく知っているはずだ!」

「嘘付け!」


ザワザワと木が揺れた。ライオンシャドウは短く「フッ」と唸ると立ち上がった。瞳は怒りに燃えており、黄金色の毛が日光を浴びて場違いなほど光り輝いていた。
ブランブルスターは不愉快そうに叫んだ。「裏切り者!」

これにはライオンシャドウはショックを受けたようで呆然としていた。大きく目を見開いており、その瞳はわなわなと震えていた。そして小さくつぶやいた。

「兄貴を信じていたのに......」

「もういい、ライオンシャドウ。お前は追放だ。二度と戻ってくるな。」

族長は吐き捨てるように怒鳴った。族長がクイッと顎で指し示すと、ダストペルトやソーンクロー、スパイダーレッグなどのたくましい戦士たちが一族を守るように一列に並び、ライオンシャドウに向かって爪をむき出し、喉の奥から唸り声を上げていた。

仲間だった猫が自分を追い出そうとしているのに気付いたライオンシャドウは本気で傷ついたような顔をし、うつむくと、一気に駆け出した。

★☆★

数日後、ライオンシャドウの死体が湖から上がってきた。喉には大きく噛み裂かれた後があり、瞳は大きく見開かれていた。
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Re: 正×正=悪のケモノ方程式  [第一部、完結]

投稿 by レパードクロー on Thu Feb 11, 2016 5:43 pm

第20章_狼の牙







☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

気持ちの良いくらいの夜だった。耳を澄ませばたくさんの猫の足音が聞こえ、森のざわめきが耳を通り抜けていった。今夜は満月で、月の優しい光が心地よかった。
必ずいるであろう妹の姿を探す。だが今夜に限って中々その姿を見つけられなかった。

手伝いを頼んだブラックポーとロビンポーが戻ってきた。

無言で丘のほうを指し示す。

見上げると黄金色の猫がたくさんの戦士を率いて丘を駆け下りてくるところだった。早口で見習いたちにお礼を言い、急いで雌猫のもとへと駆け寄った。

「レパードアイ、久しぶり。」

「ああ、兄さんね。」

淡々とレパードアイはあいさつを返してきた。冷ややかだが自信に満ち溢れている眼差しは相変わらずで、艶やかな毛並みも変わってなかった。
いいにくそうに前足を動かしながら視線を合わせずに話しかける。

「あのさ.....ライオンシャドウのことなんだけど......。」

「兄さんがどうかした?」

「死んだんだ。追放された三日後に。湖に死体が浮いていたんだ。もう、数週間も前のことだけど。」

「そう。」


レパードアイの緑色の瞳はここではないどこかを見つめていた。そしてゆっくりとまぶたを下ろすと、深く息をついた。
やはり、心の奥では兄の死が悲しいのかもしれない。

「ああ、そういえばね。敬語を使いなさいよ。」

「は?」

「私と兄さんは立場が違うでしょう?」

「いや同じ戦士だろう?」

「いいえ。私は副長よ。ラシットファーの後任。もう弟子もいるのよ。」

さほど驚きはしなかった。カリスマ性のある妹のことだから近いうちに重要な役職につくことなんてわかりきっていた。

「ほら......アイヴィーポーよ。あそこにいる。見える?」

「ああ。すごいな。」

耳元で風がゴウゴウとなり、小さなかぼそい、だが美しい声がした。

狼の牙の戦士が現れる。その戦士は真実を暴く。あなたの秘密も____

「え?」

レパードアイも不思議そうな顔をしている。きっとあの声が聞こえたんだろう。どうやら聞き取れたのは僕たちだけのようだ。あなたの秘密も__ということは、あの秘密が?
ブランブルスターが大集会の開始の合図を出した。

星空がいつもよりかどんよりとしているようにも見えた。







 
                                                      第一部、完

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Re: 正×正=悪のケモノ方程式  [第一部、完結]

投稿 by ラッキークロー@LC on Fri Feb 12, 2016 10:31 pm

 圧巻のラストでしたね。一部完結、お疲れさまでした。

 族長になってしまったことですこし歪んだ価値観になってしまったように思えるブランブルスター、そして謎に包まれた最後を遂げたライオンシャドウに驚きを隠せませんでした。
 まだ最後まで明かされていない伏線、第二部へと引き継がれていくのでしょうか......楽しみです!

 そしてウールフラワーとタイガーストライプはどうなったのか......。今後も目が離せません!

 執筆お疲れさまでした!
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Re: 正×正=悪のケモノ方程式  [第一部、完結]

投稿 by レパードクロー on Sat Feb 13, 2016 8:21 pm

LC@書きたい物も描きたい物もありすぎる wrote: 圧巻のラストでしたね。一部完結、お疲れさまでした。

 族長になってしまったことですこし歪んだ価値観になってしまったように思えるブランブルスター、そして謎に包まれた最後を遂げたライオンシャドウに驚きを隠せませんでした。
 まだ最後まで明かされていない伏線、第二部へと引き継がれていくのでしょうか......楽しみです!

 そしてウールフラワーとタイガーストライプはどうなったのか......。今後も目が離せません!

 執筆お疲れさまでした!


コメントありがとうございます!

ラストは少々手抜きだったかなーと今更反省しておりますwライオンシャドウの死は第二部で明らかになります!
もう少し続けようかと思ったんですが、それだと二部が内容スカスカになってしまうのでやめておきました(^^)
ウールsとタイガーsの関係とタイガーsの秘密も第二部で.....(しつこい

応援ありがとうございました!
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Re: 正×正=悪のケモノ方程式  [第一部、完結]

投稿 by モノクロサテン on Sat Feb 13, 2016 10:09 pm

こんばんは、モノクロサテンです!
実はちょこちょこ読ませてもらっていましたが、今回完結なされたという事でお祝いコメントさせて頂きます♪
それにしてもやっぱり豹爪さんの文才に圧倒されました…!一気にラストまで惹き込まれるこの言葉のセンス、分けて頂きたいくらいです!
また、祝・完結という事で、ファンアートでライオンシャドウくん描かせて頂きました!お気に召せば光栄です!
第二部の方も頑張ってください!!
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Re: 正×正=悪のケモノ方程式  [第一部、完結]

投稿 by レパードクロー on Sun Feb 14, 2016 7:32 pm

モノクロサテン wrote:こんばんは、モノクロサテンです!
実はちょこちょこ読ませてもらっていましたが、今回完結なされたという事でお祝いコメントさせて頂きます♪
それにしてもやっぱり豹爪さんの文才に圧倒されました…!一気にラストまで惹き込まれるこの言葉のセンス、分けて頂きたいくらいです!
また、祝・完結という事で、ファンアートでライオンシャドウくん描かせて頂きました!お気に召せば光栄です!
第二部の方も頑張ってください!!
 


コメントありがとうございます!

ちょこちょこ読まれていたのですね....恥ずかしや...((なぜに?
分けますよーこんな文才なら掃いて捨てるほどありますのでーでももらってもあまり意味ないですよー^^
ファ、ファンアートとなっっっ!!!嬉しすぎてひっくりかえりそうですっ!ありがたくいただきます!また今度お礼絵送りますねー!
第二部のほうも頑張りますのでよろしくお願いします!
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Re: 正×正=悪のケモノ方程式  [第一部、完結]

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