神話~Future to the desire
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WARRIORS BBS :: 小説投稿フォーラム :: 完全オリジナル猫小説
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神話~Future to the desire
これは、報われなかったものたちの物語。これは、世界を呪う悪魔達の、叛逆の物語。
・ラプラス
主人公。スラリとした体躯に美しい黒い毛を持つ雌猫・・・だが言動は完全に雄猫のそれである。目の下に赤い縦線が血の涙を思わせる。
戦闘時は翼を生やし、竜の幻影を生み出し戦う。
・ゲノム
黒い毛に黄緑の縞を持つ雌猫。悪魔の中では常識人。戦闘時は自身の尻尾を延長するように悪魔の尻尾が生え、塩基配列を模した形状の触手で相手を操る
・レヴィ
紫の毛を持つ雌猫。悪魔の中では最も幼く残酷でもある。趣味は読書。戦闘時は角が生え、針装束を纏う認識や記憶を操作する力を持つ。
・ナハト
ダークブルーの毛を持つ雌猫。狂気的ながら実力はラプラスに次ぐ。戦闘時は瞳が地獄の業火とばかりに燃え上がる。武器はフォーク。
・神
円の神、リング、アインとさまざまな呼ばれ方をする。悪魔達の敵
・光る猫
かつていた存在。今は何の力もない。
・ラプラス
主人公。スラリとした体躯に美しい黒い毛を持つ雌猫・・・だが言動は完全に雄猫のそれである。目の下に赤い縦線が血の涙を思わせる。
戦闘時は翼を生やし、竜の幻影を生み出し戦う。
・ゲノム
黒い毛に黄緑の縞を持つ雌猫。悪魔の中では常識人。戦闘時は自身の尻尾を延長するように悪魔の尻尾が生え、塩基配列を模した形状の触手で相手を操る
・レヴィ
紫の毛を持つ雌猫。悪魔の中では最も幼く残酷でもある。趣味は読書。戦闘時は角が生え、針装束を纏う認識や記憶を操作する力を持つ。
・ナハト
ダークブルーの毛を持つ雌猫。狂気的ながら実力はラプラスに次ぐ。戦闘時は瞳が地獄の業火とばかりに燃え上がる。武器はフォーク。
・神
円の神、リング、アインとさまざまな呼ばれ方をする。悪魔達の敵
・光る猫
かつていた存在。今は何の力もない。
DCD- 未登録ユーザー
開演
「かつて、この星に"光る猫"と呼ばれるものがいました。」
暗がりの中スポットライトに照らされて紫の猫が語りだす。
「光る猫はたくさんの女の子の望みをたった一つだけかなえました。」
「願いをかなえた女のおは魔法の猫"ケットシー”として世界のために魔物と戦う運命にありました。」
「だけどみんな最後は絶望して死んでしまいます。なぜなら―。」
「「その魔物こそ、彼女達の成れの果て。」」
ライトがもうひとつ付き、ダークブルーの猫を映し出す。紫の猫に変わって今度は彼女が話し始める。
「力を使い果たしたもの、絶望につぶれたもの、どんな願いも裏目に出る。そこに待つのは呪いの運命。」
「光る猫は何も思わない。だって彼らのハートは空っぽ。心が無いなら痛みもない。」
「女の子から魔物を作ってその変換過程で搾取きるエネルギーが世界を生かす。」
「「ボクと君は友達さ。世界を生かすために死んでくれ。友達としてそうしてくれると嬉しいな。」」
黒い毛に緑の縞を持つ猫が舞台に現れる。
「その残酷な運命から、いくつも物語が生まれた。」
「あるとき一人の女の子が魔物と戦い死んだ友達を救うために光る猫と契約した。」
「時を越え、再開した友との穏やかな時間はそう長くは続かなかった。」
「繰り返すたびに残酷に変わってゆく物語は彼女を大きく変えて行った。」
「魔物に変わりつつある友を介錯し、必ず救うと誓いを立てたのだ。」
「「「たとえ何を犠牲にしてでも」」」
「長き戦いは過酷だった。知人の死、愛するものを守りきれない悔しさ、何度矢っても変わらぬ運命。」
「昨日の友が今日の敵になり、繰り返すときは一生分に届いた。」
「数え切れない悲劇の中、出口のない迷路を走り続ける。」
「「繰り返す、何度でも。約束を果たすまで。」」
最後のライトが黒い猫を写す
「女の子の味方は自分の魔法で生み出した一匹の竜だけだった。」
「そして竜とともに戦い、ついに運命の日は超えられた。」
「-彼女の死によって。」
「女の子の友達は運命を変えるため光る猫に願い、神となった。」
「そこでやっとすれ違い続けたと物思いを知り、この世から消えることを彼女に詫びた。」
「そして歴史の中で泣いてきた女の子達、みんなの救うために旅立った。」
「新しい世界では女の子が魔物になる運命は神となった彼女が天国へ導くことで回避された。」
「残された女の子は新たな世界で目を覚ました。そこにはもう、女の子の友達も、役目を終えた竜もいなかった。」
「しかし救おうと戦い続けた彼女にだけが友達の存在を覚えていた。」
「「「「だが、それは神の過ち。」」」
「新たな世界は穏やかだった。だがそうであるほど女の子の心は締め付けられた。」
「「「「だって愛する人がいないのだから。」」」」
「孤独な彼女は光る猫に全てを話してしまった。」
「そして邪魔な神を捕らえるエサとして彼女は光る猫につかまった。」
「神は天使とともに女の子を救った。」
「だが女の子は・・・悪魔になった。」
「神を二つに分け、再び人生を歩めるようにケットシーたちの希望である神の、その断片を持ち去ったのだ。」
「しかし新たな世界を天使達は認めようとしなかった。」
「悪魔は天使に打ち倒され、世界には希望が戻りました。めでたし、めでたし。」
「女の子の中に溶け込んでいた竜は嘆き悲しんだ。」
「そして同じように。」
「神の世界になじめぬ異端者と共に。」
「神に戦いを挑むことにした。」
「「「「さあ、復讐の時だ!!」」」」
暗がりの中スポットライトに照らされて紫の猫が語りだす。
「光る猫はたくさんの女の子の望みをたった一つだけかなえました。」
「願いをかなえた女のおは魔法の猫"ケットシー”として世界のために魔物と戦う運命にありました。」
「だけどみんな最後は絶望して死んでしまいます。なぜなら―。」
「「その魔物こそ、彼女達の成れの果て。」」
ライトがもうひとつ付き、ダークブルーの猫を映し出す。紫の猫に変わって今度は彼女が話し始める。
「力を使い果たしたもの、絶望につぶれたもの、どんな願いも裏目に出る。そこに待つのは呪いの運命。」
「光る猫は何も思わない。だって彼らのハートは空っぽ。心が無いなら痛みもない。」
「女の子から魔物を作ってその変換過程で搾取きるエネルギーが世界を生かす。」
「「ボクと君は友達さ。世界を生かすために死んでくれ。友達としてそうしてくれると嬉しいな。」」
黒い毛に緑の縞を持つ猫が舞台に現れる。
「その残酷な運命から、いくつも物語が生まれた。」
「あるとき一人の女の子が魔物と戦い死んだ友達を救うために光る猫と契約した。」
「時を越え、再開した友との穏やかな時間はそう長くは続かなかった。」
「繰り返すたびに残酷に変わってゆく物語は彼女を大きく変えて行った。」
「魔物に変わりつつある友を介錯し、必ず救うと誓いを立てたのだ。」
「「「たとえ何を犠牲にしてでも」」」
「長き戦いは過酷だった。知人の死、愛するものを守りきれない悔しさ、何度矢っても変わらぬ運命。」
「昨日の友が今日の敵になり、繰り返すときは一生分に届いた。」
「数え切れない悲劇の中、出口のない迷路を走り続ける。」
「「繰り返す、何度でも。約束を果たすまで。」」
最後のライトが黒い猫を写す
「女の子の味方は自分の魔法で生み出した一匹の竜だけだった。」
「そして竜とともに戦い、ついに運命の日は超えられた。」
「-彼女の死によって。」
「女の子の友達は運命を変えるため光る猫に願い、神となった。」
「そこでやっとすれ違い続けたと物思いを知り、この世から消えることを彼女に詫びた。」
「そして歴史の中で泣いてきた女の子達、みんなの救うために旅立った。」
「新しい世界では女の子が魔物になる運命は神となった彼女が天国へ導くことで回避された。」
「残された女の子は新たな世界で目を覚ました。そこにはもう、女の子の友達も、役目を終えた竜もいなかった。」
「しかし救おうと戦い続けた彼女にだけが友達の存在を覚えていた。」
「「「「だが、それは神の過ち。」」」
「新たな世界は穏やかだった。だがそうであるほど女の子の心は締め付けられた。」
「「「「だって愛する人がいないのだから。」」」」
「孤独な彼女は光る猫に全てを話してしまった。」
「そして邪魔な神を捕らえるエサとして彼女は光る猫につかまった。」
「神は天使とともに女の子を救った。」
「だが女の子は・・・悪魔になった。」
「神を二つに分け、再び人生を歩めるようにケットシーたちの希望である神の、その断片を持ち去ったのだ。」
「しかし新たな世界を天使達は認めようとしなかった。」
「悪魔は天使に打ち倒され、世界には希望が戻りました。めでたし、めでたし。」
「女の子の中に溶け込んでいた竜は嘆き悲しんだ。」
「そして同じように。」
「神の世界になじめぬ異端者と共に。」
「神に戦いを挑むことにした。」
「「「「さあ、復讐の時だ!!」」」」
DCD- 未登録ユーザー
1話
夜の摩天楼を飛び交う影があった
「・・・強い、なんてものじゃない!!」
そのケットシーは苦戦していた。自分の得意とするライフル捕獲魔法をことごとく見切られていた。
ビルからビルへとスパイダーマンのように移動しながら銃撃戦を繰り広げるがこの黒い毛に緑縞の悪魔にことごとくかわされた。
(この相手はどうやら自分と同じタイプの魔法のようだ)
しかも力は相手のほうが上、空中戦の技量も卓越としている。なら、
(罠を張れば良い!!)
「!!」
体制を崩したように見せかけて悪魔を捕らえた。ぐるぐる巻きに拘束したこれはもがくほど強く締まる。
「確かに強いけど、残念だったわね。」
警戒は解かずに近づく。聞き出さねばならないことが山ほどあるのだ
「ああ。もう十分だ。」
「!?」
ズドンッ!!
ケットシーは自らの両足を銃弾で貫いた。体が勝手に動いたようだった。
「残念だったな。勝敗は戦う前から決していたんだ。なぜなら―。」
拘束をやすやすと破った悪魔が語る
「君とは戦う前からすでに”接続済み”だったから。」
悪魔の長い尻尾の先から今までは不可視だった触手が現れる。塩基配列のようなデザインのそれは確かに自分とつながっていた。
「ただ少し試してみたかったのさ。君から"コピー”した魔法がどんなものかをね。」
「じゃあね。グッバイ。」
ゲノムの尻尾がケットシーの急所を貫いた。
「オリジナルもすぐに始末する。ニセモノだってホンモノに勝てることを教えてやる・・・。」
ゲノムはガラスに映った自分を眺めてつぶやき・・・それを割った。
二匹のケットシーが壮絶なつばぜり合いをしている。悪魔、レヴィはその光景を文字通り高みの見物していた。
「あはは♪やってる、やってる。」
今眼下で戦っている二匹は自分を倒しに来たのだ。もっとも、認識を操る彼女の前では二対一という状況は不利にはならない。
「さぁてどっちが勝つかな?どんな顔で死ぬんだろ?」
施した認識操作は簡易的なもの、冷静ならすぐ気づく程度のものだ。まあ―散々煽ったから頭に血が上っているんだろう。気づくそぶりもない。
お、決着が付いた。
あは、驚いてる。今まさに相棒を自分の手で殺したんだもん。当然だよね。死んだほうは・・・あはは!!信じられない、どうしてって顔だ!!面白い。
レヴィは勝ったほうのケットシーの背後に降り立つ。まあ、相手に自分の位置を悟ることはできないが。
背後からぬるりと抱きついた。底なし沼のような気味の悪い体温と、棘装束の針が突き刺さり、血と苦悶の声を吐き出す。
「はい、そこまで♪やっぱこの手が一番楽だね~。」
敗北を悟った相手が苦々しくつぶやく
「あんた・・・本当に悪魔だな。」
「うん♪」
ケットシーは体の中から貫かれて死んだ。レヴィが”針千本飲ました”ことによって。
「まっててねカメリア。すぐにあなたが選んだ大事な二人も・・・壊してあげるからさ。」
頭に生えた角以上にレヴィの心はねじくれていた。
「アハハハハ!!」
一匹のケットシー、いや天使が痛めつけられていた。毛並みと同じ青いドレスに、ピエロのような帽子をかぶった悪魔はサーカスのテントのような空間に相手を閉じ込めていた。
「よわっちぃねぇ!ありきたりだねぇ!! 取るに足らないよねぇ!!十把一把だよねぇ!!」
哀れな獲物は空中ブランコやトランポリンを駆使して変幻自在に宙を舞い攻撃してくる相手に翻弄されるまま地面に倒れ付していた。
「そうそう、そうやって無様に這いつくばってぇ、しょげかえってろよ。アハハハ!!」
空中ブランコから逆さづりの状態で相手を見下す悪魔の瞳は赫焉のごとく燃え盛っていた。
「うぅ・・・どうしてあなたほどの人が・・・。」
その天使は何故この悪魔―ナハトが悪魔になったか分からないようだった。
「世界は変わる。そのショーには君は出れないよ。」
悪魔が投げつけたフォークが天使を貫いた。
別の場所でも天使が悪魔と退治していた
「いつまでこんなことを繰り返すつもり?世界をめちゃくちゃにして!!」
天使の持つサーベルを黒い悪魔は難なくいなした。
「お前達が滅ぶまでだ。」
悪魔の右腕が竜の頭の幻影をまとい、サーベルの刀身を噛み砕いた。
「っ!!」
そのままの勢いで顔を殴りつける
「あんたの気持ちは分かるけど・・・秩序を乱して、世界の希望を奪って言い訳がない!」
「秩序だと?くだらん!!」
悪魔が天使の首を締め上げる。
「お前達の神はケットシーのために世界を書き換えた。俺達が俺達のために世界を変えることと何が違う?何が悪い?」
「天使のお前は殺しても神のものと戻るだけ・・・奴に伝えろ。」
悪魔が天使を放り投げる
「貴様の作った世界、吐き気がするほど嫌いだってな!!」
竜の頭が火を吐き、天使を焼却処分した。
「・・・神、待っていろ。お前の愛したこの世界・・・・・・ブッ壊してやる。」
ラプラスは神のものへ向かう天使の魂を見ながらつぶやいた。
「・・・強い、なんてものじゃない!!」
そのケットシーは苦戦していた。自分の得意とするライフル捕獲魔法をことごとく見切られていた。
ビルからビルへとスパイダーマンのように移動しながら銃撃戦を繰り広げるがこの黒い毛に緑縞の悪魔にことごとくかわされた。
(この相手はどうやら自分と同じタイプの魔法のようだ)
しかも力は相手のほうが上、空中戦の技量も卓越としている。なら、
(罠を張れば良い!!)
「!!」
体制を崩したように見せかけて悪魔を捕らえた。ぐるぐる巻きに拘束したこれはもがくほど強く締まる。
「確かに強いけど、残念だったわね。」
警戒は解かずに近づく。聞き出さねばならないことが山ほどあるのだ
「ああ。もう十分だ。」
「!?」
ズドンッ!!
ケットシーは自らの両足を銃弾で貫いた。体が勝手に動いたようだった。
「残念だったな。勝敗は戦う前から決していたんだ。なぜなら―。」
拘束をやすやすと破った悪魔が語る
「君とは戦う前からすでに”接続済み”だったから。」
悪魔の長い尻尾の先から今までは不可視だった触手が現れる。塩基配列のようなデザインのそれは確かに自分とつながっていた。
「ただ少し試してみたかったのさ。君から"コピー”した魔法がどんなものかをね。」
「じゃあね。グッバイ。」
ゲノムの尻尾がケットシーの急所を貫いた。
「オリジナルもすぐに始末する。ニセモノだってホンモノに勝てることを教えてやる・・・。」
ゲノムはガラスに映った自分を眺めてつぶやき・・・それを割った。
二匹のケットシーが壮絶なつばぜり合いをしている。悪魔、レヴィはその光景を文字通り高みの見物していた。
「あはは♪やってる、やってる。」
今眼下で戦っている二匹は自分を倒しに来たのだ。もっとも、認識を操る彼女の前では二対一という状況は不利にはならない。
「さぁてどっちが勝つかな?どんな顔で死ぬんだろ?」
施した認識操作は簡易的なもの、冷静ならすぐ気づく程度のものだ。まあ―散々煽ったから頭に血が上っているんだろう。気づくそぶりもない。
お、決着が付いた。
あは、驚いてる。今まさに相棒を自分の手で殺したんだもん。当然だよね。死んだほうは・・・あはは!!信じられない、どうしてって顔だ!!面白い。
レヴィは勝ったほうのケットシーの背後に降り立つ。まあ、相手に自分の位置を悟ることはできないが。
背後からぬるりと抱きついた。底なし沼のような気味の悪い体温と、棘装束の針が突き刺さり、血と苦悶の声を吐き出す。
「はい、そこまで♪やっぱこの手が一番楽だね~。」
敗北を悟った相手が苦々しくつぶやく
「あんた・・・本当に悪魔だな。」
「うん♪」
ケットシーは体の中から貫かれて死んだ。レヴィが”針千本飲ました”ことによって。
「まっててねカメリア。すぐにあなたが選んだ大事な二人も・・・壊してあげるからさ。」
頭に生えた角以上にレヴィの心はねじくれていた。
「アハハハハ!!」
一匹のケットシー、いや天使が痛めつけられていた。毛並みと同じ青いドレスに、ピエロのような帽子をかぶった悪魔はサーカスのテントのような空間に相手を閉じ込めていた。
「よわっちぃねぇ!ありきたりだねぇ!! 取るに足らないよねぇ!!十把一把だよねぇ!!」
哀れな獲物は空中ブランコやトランポリンを駆使して変幻自在に宙を舞い攻撃してくる相手に翻弄されるまま地面に倒れ付していた。
「そうそう、そうやって無様に這いつくばってぇ、しょげかえってろよ。アハハハ!!」
空中ブランコから逆さづりの状態で相手を見下す悪魔の瞳は赫焉のごとく燃え盛っていた。
「うぅ・・・どうしてあなたほどの人が・・・。」
その天使は何故この悪魔―ナハトが悪魔になったか分からないようだった。
「世界は変わる。そのショーには君は出れないよ。」
悪魔が投げつけたフォークが天使を貫いた。
別の場所でも天使が悪魔と退治していた
「いつまでこんなことを繰り返すつもり?世界をめちゃくちゃにして!!」
天使の持つサーベルを黒い悪魔は難なくいなした。
「お前達が滅ぶまでだ。」
悪魔の右腕が竜の頭の幻影をまとい、サーベルの刀身を噛み砕いた。
「っ!!」
そのままの勢いで顔を殴りつける
「あんたの気持ちは分かるけど・・・秩序を乱して、世界の希望を奪って言い訳がない!」
「秩序だと?くだらん!!」
悪魔が天使の首を締め上げる。
「お前達の神はケットシーのために世界を書き換えた。俺達が俺達のために世界を変えることと何が違う?何が悪い?」
「天使のお前は殺しても神のものと戻るだけ・・・奴に伝えろ。」
悪魔が天使を放り投げる
「貴様の作った世界、吐き気がするほど嫌いだってな!!」
竜の頭が火を吐き、天使を焼却処分した。
「・・・神、待っていろ。お前の愛したこの世界・・・・・・ブッ壊してやる。」
ラプラスは神のものへ向かう天使の魂を見ながらつぶやいた。
DCD- 未登録ユーザー
Re: 神話~Future to the desire
DCDさんの新作が来てる…!ということで興奮気味のティアーです!笑
新小説おめでとうございます♪ 謎めいた、ドラマチックなプロローグにあっという間に引きこまれました。
そしてこのかっこいい戦闘シーン…たまらんですっっ(*≧∀≦*)
執筆ガンバです!
ティアーミスト- 年長戦士
- 投稿数 : 135
Join date : 2015/05/17
Age : 22
所在地 : Love the life you live. Live the life you love.
Re: 神話~Future to the desire
新小説おめでとうございます!
まるでドラマをみているかのような神秘的なプロローグに、エネルギーがみなぎってくるような独特の世界観! 再び引き込まれました!
更新楽しみにしています!
まるでドラマをみているかのような神秘的なプロローグに、エネルギーがみなぎってくるような独特の世界観! 再び引き込まれました!
更新楽しみにしています!
ラッキークロー- 副長
- 投稿数 : 226
Join date : 2015/05/20
所在地 : 小説について何かご質問、ご意見等ありましたらお気軽にPMやTwitterの方へメッセージどうぞ!
2話
「・・・。」
天使とケットシーたちを倒したラプラスは、自分達の家に戻っていた。
かつてこの世界にあふれていた魔物と同じように悪魔もまた独自の法則を持った自分の世界を持っている。本来なら完全なプライベート空間だが、現在は四人で同居だ。
「あ、ラプちゃんおかえり~。」
本を読んでいたレヴィが振り返る。
「戻っていたか。・・・全員無事のようだな。」
「アハハ!あんな連中にやられてんじゃ悪魔はやってられないね。」
頭上から声がする。ナハトだ。勝手に天井に追加した空中ブランコから逆さづりで見下ろしている。
「・・・ナハト。お前は降りて話せ。」
「なんで?」
「首が疲れる。」
「あぁ・・・失礼!」
(降りてこないのかよ・・・。)
あきれたラプラスは視線をゲノムに移す。情報端末をいじっていた。
「やあ、ラプラス。君のパソコンの中を見させてもらったがつまらないね。趣味的なものや恥ずかしい写真でもあればと思ったが。」
この女、さらりと恐ろしいことを言う。これでも他二人よりまともなほうだが・・・。
「それとパスワードはもっと複雑なほうがいいと思うよ。」
「お前の魔法は電子機器にも接続できるからな。パスワードが意味を成さない。」
「それもそうか。」
「ゲノちゃん、人のもの勝手にあさるなんていっけないんだー。」
レヴィ面白そうに口を挟む。
「人の頭の中までいじくれる気味ほどじゃないさ。レヴィ。」
「アハハ!!レヴィちゃんに隠し事はできないもんねー!!」
「・・・。」
ラプラスは騒ぐ彼女達を尻目に自室へ入っていく。
あんなのりだがみんな世界をしっかり呪っているのだ。
レヴィは彼女いわく”ウソツキ”への復讐のため。
ゲノムは自分が生きていても良い世界を作るため。
ナハトは世界を”良く”するため。
「そしておれは―。」
ラプラスは自分の原点を思い返す。
「うオォォォォォォォああああああああああ!!!!」
宇宙を貫くほど悲痛な叫びがあがった。その源に事切れた少女の亡骸を抱き叫ぶ竜がいた。
「-!!-!!」
竜は少女の名を呼び続けた。しかしもう二度とその目が開くことはない。
(なぜだ!!なぜこうなる!?彼女が、彼女が救われなければ何の意味もない・・・!!)
かつて世界が書き換えられたとき、今頭上で取り乱し、狼狽しているあの神が生まれたとき、竜は激怒した。
こんな結末のために命がけで戦ったわけではない。俺達が何のために戦ってきたと思っている!!と。
竜が怒りを納めたのは、神が作る新世界で、彼女がなくした笑顔を取り戻せる日が来る。そう信じたからこそ、また彼女の中に戻り、消えることができたのだ。
だが、
しかし、
だというのに、
それがなんだこれは!?
彼女の亡骸は消滅し始めていた。”悪魔”という概念でありながら猫として活動していた世界の矛盾が、その生命活動が停止したことで解消されようとしているのだ。そしてそれは彼女から生まれた存在である竜もまた同じ。
竜は天を睨む。天を多い尽くすほどの天使の群れの中心その一転を見据えて。流す涙は血の色に変わっていた。
(神ッ!!奴さえ、奴さえいなければ・・・!!)
腕の中の少女が悪魔に身を落としてでも幸せになってほしかった存在。-彼女に呪いをかけた存在。
繰り返すときの中で、残酷な真実と強大な敵によってぼろぼろになった彼女に対し奴は約束をした。
「光る猫にだまされる前のバカな自分を助けて欲しい」「大切なものがたくさんある世界を壊したくない。魔物になる前に殺して欲しい」
おぞましい呪いだ。奴からすれば絶望でつぶれかかっていた彼女を生かすため”良かれと思って”やったことだろうが―。
「だがそれは、彼女の心を殺すことだッ・・・!!」
そして繰り返すときの中で奴は何度も自分から取り付けた約束を破った。”憶えていないから””そうしなければならなかった”
という無神経な理由や、
”こちらにどんな都合があれ、決定権は私にある”
などとクソみたいな理屈を盾に、彼女の心を踏みにじり続けたのだ。
そしてその願いはいずれも他者への善意、こちらの反論を封殺してしまう。
こんな裏切りを何度も繰り返されても、彼女は奴を愛し、守り続けた。そしてその思いを貫くために悪魔となったのだ。
「たった一度の裏切り、それで何故殺されなきゃならない!?何度も、何度も俺達の夢を、希望を奪い続け、裏切り続けた貴様が!!」
竜の慟哭にいまだ悪魔の死を受け入れられずうろたえる神はビクリとその身を震わせる。
「ちがっ・・・わっ、わたしは・・・!!」
うろたえる神を見かねた一匹の天使が神を静止し、代わりに口を開いた
「そもそも彼女が光る猫に我々リングの秘密を話したのが原因だ。全ては彼女の心の弱さが招いたことだ。」
心の弱さが原因・・・?ふざけるな・・・!
誰も理解者のいない世界で、あれほどの業を背負ってでも生きていて欲しかった人のいない世界で、たった一人、その存在を覚えている。
あの世界で、彼女は感情を持たない光る猫しか話しかけ易い相手がいなかった。
夢、妄想と言われても否定できる証拠もない、そんな世界で、命がけの戦いを続けて、死の間際に会えればそれでいいって言うのか?弱み一つ見せちゃいけないってのか?
貴様の救済は、この子を苦しめてまでやるほど立派なものなのか?名も知らない大勢のために、自分のために人生を投げ出した友を犠牲にするのが、正しいって言うのか!?
もしそれが正しいって言うなら、何故彼女は覚えていた?お前が消えるのを恐れたからじゃないか。散々彼女を置いて行った癖に。
「るな・・・
「呪ってやる!!貴様も、貴様の世界も、全てを呪ってやる!!」
竜の体も消えかかっていた。だがその呪いがあるものを引き寄せた。
「この反応はっ!!」
天使の一匹が叫ぶと同時に竜の周りに無数の陰が出現した。
「ビースト!!」
ビースト―神が書き換えた世界で、魔物に変わるケットシーたちの敵である。こいつらを倒すことで、光る猫はエネルギーを得ていた。悪魔ノシによって彼女が押さえ込み内包していた呪いが解放されそれを求めて集まってきたのだ。
「消えんっ!!消えてなるものか!!」
竜は残っていた口でビーストに噛り付く。
呪いを取り込んだ竜の体が魔力の大爆発を起こした。
気づいたとき、竜は何もないクレーターの中心にいた。神も、天使も、彼女の遺体も、何も無かった。
自分の姿は変わり果てていた。雄雄しかった肉体は大量の呪いを取り込んだ所為か黒いヘドロのように腐り落ち、羽はボロボロになり目だけが不気味に発光していた。
さすがにこの姿では目立つな・・・。幸い自分は魔力の・・・今は呪いの塊。姿なんてどうとでもなる。
竜は愛した少女の姿をとった。彼女の姿を忘れないように。これから対峙する敵に、彼奴等の業を忘れさせないために。
「彼女は俺の全てだった。それを奪った罪は、お前の全てで償ってもらう・・・!!」
愛した少女の体は完璧に再現していた。その美しい毛並みも。
細い体躯も。
青い瞳も。
こうして世界を呪う叛逆の悪魔―ラプラスは誕生した。
―だが、目の下にできた赤い血の涙の跡だけは、どうしても消せなかった。
天使とケットシーたちを倒したラプラスは、自分達の家に戻っていた。
かつてこの世界にあふれていた魔物と同じように悪魔もまた独自の法則を持った自分の世界を持っている。本来なら完全なプライベート空間だが、現在は四人で同居だ。
「あ、ラプちゃんおかえり~。」
本を読んでいたレヴィが振り返る。
「戻っていたか。・・・全員無事のようだな。」
「アハハ!あんな連中にやられてんじゃ悪魔はやってられないね。」
頭上から声がする。ナハトだ。勝手に天井に追加した空中ブランコから逆さづりで見下ろしている。
「・・・ナハト。お前は降りて話せ。」
「なんで?」
「首が疲れる。」
「あぁ・・・失礼!」
(降りてこないのかよ・・・。)
あきれたラプラスは視線をゲノムに移す。情報端末をいじっていた。
「やあ、ラプラス。君のパソコンの中を見させてもらったがつまらないね。趣味的なものや恥ずかしい写真でもあればと思ったが。」
この女、さらりと恐ろしいことを言う。これでも他二人よりまともなほうだが・・・。
「それとパスワードはもっと複雑なほうがいいと思うよ。」
「お前の魔法は電子機器にも接続できるからな。パスワードが意味を成さない。」
「それもそうか。」
「ゲノちゃん、人のもの勝手にあさるなんていっけないんだー。」
レヴィ面白そうに口を挟む。
「人の頭の中までいじくれる気味ほどじゃないさ。レヴィ。」
「アハハ!!レヴィちゃんに隠し事はできないもんねー!!」
「・・・。」
ラプラスは騒ぐ彼女達を尻目に自室へ入っていく。
あんなのりだがみんな世界をしっかり呪っているのだ。
レヴィは彼女いわく”ウソツキ”への復讐のため。
ゲノムは自分が生きていても良い世界を作るため。
ナハトは世界を”良く”するため。
「そしておれは―。」
ラプラスは自分の原点を思い返す。
「うオォォォォォォォああああああああああ!!!!」
宇宙を貫くほど悲痛な叫びがあがった。その源に事切れた少女の亡骸を抱き叫ぶ竜がいた。
「-!!-!!」
竜は少女の名を呼び続けた。しかしもう二度とその目が開くことはない。
(なぜだ!!なぜこうなる!?彼女が、彼女が救われなければ何の意味もない・・・!!)
かつて世界が書き換えられたとき、今頭上で取り乱し、狼狽しているあの神が生まれたとき、竜は激怒した。
こんな結末のために命がけで戦ったわけではない。俺達が何のために戦ってきたと思っている!!と。
竜が怒りを納めたのは、神が作る新世界で、彼女がなくした笑顔を取り戻せる日が来る。そう信じたからこそ、また彼女の中に戻り、消えることができたのだ。
だが、
しかし、
だというのに、
それがなんだこれは!?
彼女の亡骸は消滅し始めていた。”悪魔”という概念でありながら猫として活動していた世界の矛盾が、その生命活動が停止したことで解消されようとしているのだ。そしてそれは彼女から生まれた存在である竜もまた同じ。
竜は天を睨む。天を多い尽くすほどの天使の群れの中心その一転を見据えて。流す涙は血の色に変わっていた。
(神ッ!!奴さえ、奴さえいなければ・・・!!)
腕の中の少女が悪魔に身を落としてでも幸せになってほしかった存在。-彼女に呪いをかけた存在。
繰り返すときの中で、残酷な真実と強大な敵によってぼろぼろになった彼女に対し奴は約束をした。
「光る猫にだまされる前のバカな自分を助けて欲しい」「大切なものがたくさんある世界を壊したくない。魔物になる前に殺して欲しい」
おぞましい呪いだ。奴からすれば絶望でつぶれかかっていた彼女を生かすため”良かれと思って”やったことだろうが―。
「だがそれは、彼女の心を殺すことだッ・・・!!」
そして繰り返すときの中で奴は何度も自分から取り付けた約束を破った。”憶えていないから””そうしなければならなかった”
という無神経な理由や、
”こちらにどんな都合があれ、決定権は私にある”
などとクソみたいな理屈を盾に、彼女の心を踏みにじり続けたのだ。
そしてその願いはいずれも他者への善意、こちらの反論を封殺してしまう。
こんな裏切りを何度も繰り返されても、彼女は奴を愛し、守り続けた。そしてその思いを貫くために悪魔となったのだ。
「たった一度の裏切り、それで何故殺されなきゃならない!?何度も、何度も俺達の夢を、希望を奪い続け、裏切り続けた貴様が!!」
竜の慟哭にいまだ悪魔の死を受け入れられずうろたえる神はビクリとその身を震わせる。
「ちがっ・・・わっ、わたしは・・・!!」
うろたえる神を見かねた一匹の天使が神を静止し、代わりに口を開いた
「そもそも彼女が光る猫に我々リングの秘密を話したのが原因だ。全ては彼女の心の弱さが招いたことだ。」
心の弱さが原因・・・?ふざけるな・・・!
誰も理解者のいない世界で、あれほどの業を背負ってでも生きていて欲しかった人のいない世界で、たった一人、その存在を覚えている。
あの世界で、彼女は感情を持たない光る猫しか話しかけ易い相手がいなかった。
夢、妄想と言われても否定できる証拠もない、そんな世界で、命がけの戦いを続けて、死の間際に会えればそれでいいって言うのか?弱み一つ見せちゃいけないってのか?
貴様の救済は、この子を苦しめてまでやるほど立派なものなのか?名も知らない大勢のために、自分のために人生を投げ出した友を犠牲にするのが、正しいって言うのか!?
もしそれが正しいって言うなら、何故彼女は覚えていた?お前が消えるのを恐れたからじゃないか。散々彼女を置いて行った癖に。
「るな・・・
ふ・ざ・け・る・な!!
」「呪ってやる!!貴様も、貴様の世界も、全てを呪ってやる!!」
竜の体も消えかかっていた。だがその呪いがあるものを引き寄せた。
「この反応はっ!!」
天使の一匹が叫ぶと同時に竜の周りに無数の陰が出現した。
「ビースト!!」
ビースト―神が書き換えた世界で、魔物に変わるケットシーたちの敵である。こいつらを倒すことで、光る猫はエネルギーを得ていた。悪魔ノシによって彼女が押さえ込み内包していた呪いが解放されそれを求めて集まってきたのだ。
「消えんっ!!消えてなるものか!!」
竜は残っていた口でビーストに噛り付く。
「呪いを取り込み、世界に根を張り、生き延びてくれる!!神ッ!!貴様を滅ぼすその日まで!!」
呪いを取り込んだ竜の体が魔力の大爆発を起こした。
気づいたとき、竜は何もないクレーターの中心にいた。神も、天使も、彼女の遺体も、何も無かった。
自分の姿は変わり果てていた。雄雄しかった肉体は大量の呪いを取り込んだ所為か黒いヘドロのように腐り落ち、羽はボロボロになり目だけが不気味に発光していた。
さすがにこの姿では目立つな・・・。幸い自分は魔力の・・・今は呪いの塊。姿なんてどうとでもなる。
竜は愛した少女の姿をとった。彼女の姿を忘れないように。これから対峙する敵に、彼奴等の業を忘れさせないために。
「彼女は俺の全てだった。それを奪った罪は、お前の全てで償ってもらう・・・!!」
愛した少女の体は完璧に再現していた。その美しい毛並みも。
細い体躯も。
青い瞳も。
こうして世界を呪う叛逆の悪魔―ラプラスは誕生した。
―だが、目の下にできた赤い血の涙の跡だけは、どうしても消せなかった。
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3話
濃い瘴気に覆われた夜の町に異形の影がそびえ立つ。ビーストだ。
かつて神が書き換えたこの世界で、彼らは魔物に代わるケットシーたちの敵として、あてがわれていた。それを摩天楼より見下ろす影あり。
「やれやれ、この町のケットシーどもを消したからビースト退治するものがいなくなっちゃったか。ま、いいけどね。」
ゲノムは眼下でビーストたちの様子を観察していた。死んだ目をした猫が吸う引きふらふらとビーストによっていくのが見える。
(あぁ、廃人確定だな。アレ)
ビーストは一般人には見えない。われわれのように魔力を持つものか、その素質があれば別だが・・・。奴らは襲った相手の相手の感情を吸い取る。
吸い取ったそれは体内で”感情石”という黒いキューブ上の物体に変換される。当然、吸われた相手は廃人化したり、植物状態になったりする。
ケットシーたちはそれを防ぐために戦っている。
ケットシーとはそもそも光る猫達との契約によって魔法を使えるように体を改造されたものたちだ。魔力を行使し、ビーストを狩り、世界の安寧を裏から守る。
それが彼女達の使命である。そして倒したビーストから得られる感情石によって失った魔力を回復させる。魔力は感情と密接に関係しているからだ。
個人差はあれどケットシーたちの使える魔力は有限である。また感情の浮き沈みによってその出力は変わる。
使い終えた感情石は光る猫達が自身の目的である宇宙の延命のため回収する。
魔力が全て尽きたとき、それは彼女達の最期だ。降臨した神によってその魂を天国へ導かれる。死体も残さず、跡形も無く。何の悔いも残さず。希望を抱いたまま、あるいは救われたような幸せそうな顔で。
だが、ラプラスから聞いた話によるとこの世界は元はもっと違う形だったらしい。
いわく、前の世界ではビーストはおらず、魔物と戦っていたという。
複数で現れ、統率力のある軍隊のようなビーストと違い、魔物はたとえるなら独自の美学を持ったシリアルキラー。単体での戦闘力はビーストより高く、独自の法則によって作られた”領域”に隠れており、外部へ魔力的な精神干渉をして精神的に弱っているもの・・・病人や自殺志願者など・・・を引き込み、食べる。
そして何よりその正体は魔力を使い果たした、あるいは絶望したケットシーの成れの果てだというのだ。
いわく、前の世界ではケットシーは今より数が多かったという。今と違って”産めよ増やせよ”だったから。
光る猫。彼らは宇宙延命の手段を探る宇宙からの来訪者。
光る猫達は今のビーストのように感情をエネルギー変換する術を持っている。魔物に変化する瞬間、走馬灯的に流れる記憶と感情の濁流が発生し、それを得るのを目的としていたのだ。魔物はその搾りカス。廃棄物に過ぎない。
いわく、前の世界での光る猫いまより胡散臭かったという。魔物になるなどの事実を伏せ、奇跡や魔法に浮かれる子供を利用していたのだ。
最も、感情の無い彼らからすればだますという概念は理解できないらしい。彼らからすれば二つ返事で契約に応じること自体不思議でならないとか。
例えるならそう、携帯電話を買うとき、機種やサービスをいろいろ調べ、実際に店に行って見たりもする。なぜそうしないのだ?と。
最も真実を隠蔽した上で契約を迫るのはこの星では詐欺という。宇宙延命という大義名分でごまかせるようなことではない。事実多くの嘆きと呪いが世にはびこった。
「まあ、悪魔の私が言えたことではないがね。」
そして世界を書き換え、現在のものにしたのが”神”われわれの敵である。元々彼女も平凡でどこにでもいるただの猫で、ただのケットシーであった。
それが何故世界を変えるなどというとてつもない願いをかなえられたか、それはラプラスの生みの親、”最初の悪魔”のためだという。
その悪魔がまだケットシーであったころ、後の神となったその少女を強大な魔物に殺される運命から救うべく何度も時を自身の魔法で繰り返したという。
しかし、それは完全に同じ時間を縦に移動するのではなく、違う可能性を持った並行世界への斜め移動だったという。
その斜め移動は、原理は良く分からなかったが、その守るべき少女に平行世界の”因果”を巻きつけ、より巨大な素質を持つ、最強のケットシー候補=最強の魔物候補へと育て上げたしまった。
願いが裏目に出ることで魔物になる。多くのケットシーたちと同じように彼女の能力も自らの首を絞めていたのだ。感情を持たない奴らにも打算込みの無意識の悪意があるのかもしれない。あえてそういう能力にしたのだろう。
神は契約によって世界のあり方を変えることで絶望による円環を断ち切った。
「もっとも、何故光る猫を消さなかったのかは分からないな・・・。」
強いて言うならわれわれ猫がここまで発展し、この星で最も栄えた種族になっているのはケットシーの願いが歴史の裏にあったからだろうか?
「そんなの気にせず消してくれればよかったのに・・・少なくとも今みたいな戦争状態にはなっていなかっただろう。」
改変後の世界で最初の悪魔から以前の世界の存在を知った光る猫は魔物の復活をもくろんだ。ビーストの感情石から取れる出がらしのようなエネルギーより効率も量も多いからだ。さらには神を捕獲してその力を利用し、より効率的に魔物を作る算段だった。
この計画は神と神によって天国に言ったケットシー=天使に阻まれたが、元雄と天使達の能力の大本は光る猫も把握している。支配されるのは時間の問題だったといえる。
そして光る猫達にとって想定外の事態が起きた。”悪魔”という概念の誕生だ。感情の”極み”にいたったことで魔物か寸前の呪いを制御し、神の力を奪って誕生したその存在に、彼らにとって”わけのわからない”存在であるそれに彼らは”恐怖”したのだ。
そしてそこからはひとたびの平穏と、天使達による神復活のための悪魔討伐、いや”処刑”が起こった。
そして悪魔という概念は滅び、消えて世界は元に戻るはずだった。
それを阻止したのがラプラスとナハトの存在だった。阿野にh期がこの世界に悪魔という概念を残し、世界の変化を防いだ。
「そして今は・・・。」
ケットシーの末路に新たな可能性ができた。呪いを溜め込み、呪いをねじ伏せ、呪いを願う。そういった”悪”のケットシーがたどり着く存在。
それが今の”悪魔”である。
存在そのものが呪われているというべき悪魔の存在は、人の世の呪いを増大させ、ビーストの出現率を増加させた。
光る猫達は理解不能の悪魔、それを生み出す”心”に恐怖し、この星から撤退した。使用済みで呪いの溜まった感情石を廃棄できなくなったケットシーたちはやむ終えず破壊処理していたが吹き出した呪いは巡り巡ってどこかでビースト発生の呼び水となるだろう。
だからこそ神と天使は悪魔という概念を消すべく、襲ってくる。世界を守るために。
「そうはさせないけど・・・ね!」
ゲノムは倒したビーストたちから感情石を回収した。あとでまとめて砕いてやろう。
正直言うとゲノムは悪魔達の中でやっていけるのか不安になることがある。同志たちはみんなイカレてる。どいつもこいつもクレイジーだ。
みんな他人を何だと思ってるんだ。
視界にちらりとビーストによって廃人化した猫が映る。今まさにビーストの”エサ”にして”見捨てた”連中だ。
「・・・なんだ、結局私も悪魔だったのか。」
自分はニセモノでイブツ。ホンモノであるこいつらがどうなろうが知ったことではない。
それに悪魔もそこまで悪くは無い。イカレていようと年下と同士であるレヴィは何だかんだでかわいいものだ。ラプラスは神が絡まない話ならまだ普通だ。
ナハトは-・・・まあ、あの強さは頼りになる。うん。
この世界の全てがニセモノやイブツに変わればきっとニセモノの私も生きていていいはずだ。現にイブツだらけのラプラスの家は居心地がいいんだから。
かつて神が書き換えたこの世界で、彼らは魔物に代わるケットシーたちの敵として、あてがわれていた。それを摩天楼より見下ろす影あり。
「やれやれ、この町のケットシーどもを消したからビースト退治するものがいなくなっちゃったか。ま、いいけどね。」
ゲノムは眼下でビーストたちの様子を観察していた。死んだ目をした猫が吸う引きふらふらとビーストによっていくのが見える。
(あぁ、廃人確定だな。アレ)
ビーストは一般人には見えない。われわれのように魔力を持つものか、その素質があれば別だが・・・。奴らは襲った相手の相手の感情を吸い取る。
吸い取ったそれは体内で”感情石”という黒いキューブ上の物体に変換される。当然、吸われた相手は廃人化したり、植物状態になったりする。
ケットシーたちはそれを防ぐために戦っている。
ケットシーとはそもそも光る猫達との契約によって魔法を使えるように体を改造されたものたちだ。魔力を行使し、ビーストを狩り、世界の安寧を裏から守る。
それが彼女達の使命である。そして倒したビーストから得られる感情石によって失った魔力を回復させる。魔力は感情と密接に関係しているからだ。
個人差はあれどケットシーたちの使える魔力は有限である。また感情の浮き沈みによってその出力は変わる。
使い終えた感情石は光る猫達が自身の目的である宇宙の延命のため回収する。
魔力が全て尽きたとき、それは彼女達の最期だ。降臨した神によってその魂を天国へ導かれる。死体も残さず、跡形も無く。何の悔いも残さず。希望を抱いたまま、あるいは救われたような幸せそうな顔で。
だが、ラプラスから聞いた話によるとこの世界は元はもっと違う形だったらしい。
いわく、前の世界ではビーストはおらず、魔物と戦っていたという。
複数で現れ、統率力のある軍隊のようなビーストと違い、魔物はたとえるなら独自の美学を持ったシリアルキラー。単体での戦闘力はビーストより高く、独自の法則によって作られた”領域”に隠れており、外部へ魔力的な精神干渉をして精神的に弱っているもの・・・病人や自殺志願者など・・・を引き込み、食べる。
そして何よりその正体は魔力を使い果たした、あるいは絶望したケットシーの成れの果てだというのだ。
いわく、前の世界ではケットシーは今より数が多かったという。今と違って”産めよ増やせよ”だったから。
光る猫。彼らは宇宙延命の手段を探る宇宙からの来訪者。
光る猫達は今のビーストのように感情をエネルギー変換する術を持っている。魔物に変化する瞬間、走馬灯的に流れる記憶と感情の濁流が発生し、それを得るのを目的としていたのだ。魔物はその搾りカス。廃棄物に過ぎない。
いわく、前の世界での光る猫いまより胡散臭かったという。魔物になるなどの事実を伏せ、奇跡や魔法に浮かれる子供を利用していたのだ。
最も、感情の無い彼らからすればだますという概念は理解できないらしい。彼らからすれば二つ返事で契約に応じること自体不思議でならないとか。
例えるならそう、携帯電話を買うとき、機種やサービスをいろいろ調べ、実際に店に行って見たりもする。なぜそうしないのだ?と。
最も真実を隠蔽した上で契約を迫るのはこの星では詐欺という。宇宙延命という大義名分でごまかせるようなことではない。事実多くの嘆きと呪いが世にはびこった。
「まあ、悪魔の私が言えたことではないがね。」
そして世界を書き換え、現在のものにしたのが”神”われわれの敵である。元々彼女も平凡でどこにでもいるただの猫で、ただのケットシーであった。
それが何故世界を変えるなどというとてつもない願いをかなえられたか、それはラプラスの生みの親、”最初の悪魔”のためだという。
その悪魔がまだケットシーであったころ、後の神となったその少女を強大な魔物に殺される運命から救うべく何度も時を自身の魔法で繰り返したという。
しかし、それは完全に同じ時間を縦に移動するのではなく、違う可能性を持った並行世界への斜め移動だったという。
その斜め移動は、原理は良く分からなかったが、その守るべき少女に平行世界の”因果”を巻きつけ、より巨大な素質を持つ、最強のケットシー候補=最強の魔物候補へと育て上げたしまった。
願いが裏目に出ることで魔物になる。多くのケットシーたちと同じように彼女の能力も自らの首を絞めていたのだ。感情を持たない奴らにも打算込みの無意識の悪意があるのかもしれない。あえてそういう能力にしたのだろう。
神は契約によって世界のあり方を変えることで絶望による円環を断ち切った。
「もっとも、何故光る猫を消さなかったのかは分からないな・・・。」
強いて言うならわれわれ猫がここまで発展し、この星で最も栄えた種族になっているのはケットシーの願いが歴史の裏にあったからだろうか?
「そんなの気にせず消してくれればよかったのに・・・少なくとも今みたいな戦争状態にはなっていなかっただろう。」
改変後の世界で最初の悪魔から以前の世界の存在を知った光る猫は魔物の復活をもくろんだ。ビーストの感情石から取れる出がらしのようなエネルギーより効率も量も多いからだ。さらには神を捕獲してその力を利用し、より効率的に魔物を作る算段だった。
この計画は神と神によって天国に言ったケットシー=天使に阻まれたが、元雄と天使達の能力の大本は光る猫も把握している。支配されるのは時間の問題だったといえる。
そして光る猫達にとって想定外の事態が起きた。”悪魔”という概念の誕生だ。感情の”極み”にいたったことで魔物か寸前の呪いを制御し、神の力を奪って誕生したその存在に、彼らにとって”わけのわからない”存在であるそれに彼らは”恐怖”したのだ。
そしてそこからはひとたびの平穏と、天使達による神復活のための悪魔討伐、いや”処刑”が起こった。
そして悪魔という概念は滅び、消えて世界は元に戻るはずだった。
それを阻止したのがラプラスとナハトの存在だった。阿野にh期がこの世界に悪魔という概念を残し、世界の変化を防いだ。
「そして今は・・・。」
ケットシーの末路に新たな可能性ができた。呪いを溜め込み、呪いをねじ伏せ、呪いを願う。そういった”悪”のケットシーがたどり着く存在。
それが今の”悪魔”である。
存在そのものが呪われているというべき悪魔の存在は、人の世の呪いを増大させ、ビーストの出現率を増加させた。
光る猫達は理解不能の悪魔、それを生み出す”心”に恐怖し、この星から撤退した。使用済みで呪いの溜まった感情石を廃棄できなくなったケットシーたちはやむ終えず破壊処理していたが吹き出した呪いは巡り巡ってどこかでビースト発生の呼び水となるだろう。
だからこそ神と天使は悪魔という概念を消すべく、襲ってくる。世界を守るために。
「そうはさせないけど・・・ね!」
ゲノムは倒したビーストたちから感情石を回収した。あとでまとめて砕いてやろう。
正直言うとゲノムは悪魔達の中でやっていけるのか不安になることがある。同志たちはみんなイカレてる。どいつもこいつもクレイジーだ。
みんな他人を何だと思ってるんだ。
視界にちらりとビーストによって廃人化した猫が映る。今まさにビーストの”エサ”にして”見捨てた”連中だ。
「・・・なんだ、結局私も悪魔だったのか。」
自分はニセモノでイブツ。ホンモノであるこいつらがどうなろうが知ったことではない。
それに悪魔もそこまで悪くは無い。イカレていようと年下と同士であるレヴィは何だかんだでかわいいものだ。ラプラスは神が絡まない話ならまだ普通だ。
ナハトは-・・・まあ、あの強さは頼りになる。うん。
この世界の全てがニセモノやイブツに変わればきっとニセモノの私も生きていていいはずだ。現にイブツだらけのラプラスの家は居心地がいいんだから。
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4話
光る猫達がいなくなったことに違和感と危機感を抱いているケットシーたちは少なくなかった。とはいえビースト出現率が跳ね上がったため、危機感を覚えつつもどの町でも防衛が手一杯で余裕がなかった。
神と天使・・・総称としてリングと呼ぶが・・・もまた手をこまねいていた。何度か天使を悪魔討伐に派遣しているものの、悪魔達の戦闘能力はビーストや魔物の比ではなかった。加えてそう多くの数を送り込むことはできない。
なぜなら天使達はこの世の理から外れた存在。”死んだはず”の存在だからである。いもしないはずの存在が世界に下りることは大きなゆがみを産み、のろいを発生させ、ビーストを呼ぶからだ。
かつて、最初の悪魔との戦いでは多くの天使が下界に降りた。神を取り戻すことを最優先したからだ。神さえ戻り、悪魔を消せば世界のゆがみも修正されるはずだったからである。
結果としてラプラスとナハトによって悪魔という概念が世界に残ったため、ゆがみは修正されることは無かったのだが。
さて、悪魔達の潜伏先である町の二つ隣の町で二匹のケットシーが活動している。
一匹は銀色の毛に赤い眼をしたロングコート姿のケットシー、鈴蘭と、若葉色のケットシー、ジャスミンである。
彼女達も今回の事態に焦りを覚えていた。幸い、この町は人口は少ないためビーストの出現率も低かったが、近くの町で活動していたはずのケットシー達が消えた噂が届いていた。
「スズちゃん、やっぱり調べたほうがいいと思うんだ。」
「確かにこれはまずいと思う。いったい何が起きているのかしら・・・。」
鈴蘭は不安そうな面持ちで自分の武器である剣を見る。彼女の力は「戦った相手の魔法を受け継ぐ」というもの。
他人の魔法を使えるという意味ではゲノムと同じだが、ゲノムの”接続”が”模倣”であり、”奪取”であるのに対し、彼女のそれは敵や共に戦った相手の力を”受け継ぐ”というものである。
今、彼女がその剣に宿し受け継いでいる魔法は自身の育ての親にして師匠、カメリアの火炎魔法である。
ビーストによって親を失い、天涯孤独となった彼女を救ってくれたのがカメリアだった。当時まだ小さかった彼女は親代わりの彼女を良く慕い、憧れた。
だから願ってしまったのだ「カメリアのようにかっこいい正義の味方になりたい」と。
未熟な彼女をかばいながら、カメリアは町を守っていた。かつての自分を鈴蘭に重ねていたのだ。あるいは巻き込んでしまった罪悪感かも知れない。
それもジャスミンというケットシーの友達が弟子にできたこと出終わった。生きることへの執着が、燃え尽きた。
安らかに、穏やかで・・・全てに満足したように、導かれていったのだった。
「大丈夫だよ。」
ジャスミンが励ますように笑顔で言った。
「カメリアもきっと見ていてくれる。守ってくれるよ。」
ジャスミンは優しい子だった。元々もうも下った彼女は、周囲に助けてもらいながら生きていた。だからこそ受けた愛情に精一杯恩返ししようと誰にでも優しくするようになったのだ。
そして契約で視力を手にした今は今度は誰かを助けようと生きている。
彼女もまた神と同様、世界に希望など無いという悪魔達とは、対極の存在であった。
鈴蘭の不安は吹っ切れたようだった。
「他の町のケットシーたちとも連絡を取ろう。そして突き止めよう。何が起きているのか。」
二人の友情は固かった。
「・・・・・・!!」
「?」
ラプラスは突然本から顔を上げたレヴィを不審に思い視線を移した。
「へぇ、・・・くるんだ、あの二人。思ったより早かったね。」
「どうした?」
なにやらニヤニヤとほくそ笑んでいる。よからぬことでも企んでいるって顔だ。
「・・・ラプちゃん。近いうち何匹かケットシーがこの町を調べにくるみたい。その中で二匹、私に任せて欲しい子がいるんだぁ・・・。」
振り返ったレヴィはニッコリ笑っていた。彼女の性格や本性を知らなければかわいい笑顔だった。
「確かに何匹かすでにかぎまわっているようだが・・・。さては、知り合いか?そいつら。」
「うん♪私が、悪魔になったのはあの子達を殺すためでもあるから。」
はしゃいだ様子で答える。まるで遠足前日のルンルン気分な子供だ。
「いってなかったけ?あの子達はね、私から”お母さん”を奪ったんだ。」
レヴィは笑顔のままだった。その裏に激しくも深く、ドロドロした炎が燃えているのをラプラスは知っていた。
神と天使・・・総称としてリングと呼ぶが・・・もまた手をこまねいていた。何度か天使を悪魔討伐に派遣しているものの、悪魔達の戦闘能力はビーストや魔物の比ではなかった。加えてそう多くの数を送り込むことはできない。
なぜなら天使達はこの世の理から外れた存在。”死んだはず”の存在だからである。いもしないはずの存在が世界に下りることは大きなゆがみを産み、のろいを発生させ、ビーストを呼ぶからだ。
かつて、最初の悪魔との戦いでは多くの天使が下界に降りた。神を取り戻すことを最優先したからだ。神さえ戻り、悪魔を消せば世界のゆがみも修正されるはずだったからである。
結果としてラプラスとナハトによって悪魔という概念が世界に残ったため、ゆがみは修正されることは無かったのだが。
さて、悪魔達の潜伏先である町の二つ隣の町で二匹のケットシーが活動している。
一匹は銀色の毛に赤い眼をしたロングコート姿のケットシー、鈴蘭と、若葉色のケットシー、ジャスミンである。
彼女達も今回の事態に焦りを覚えていた。幸い、この町は人口は少ないためビーストの出現率も低かったが、近くの町で活動していたはずのケットシー達が消えた噂が届いていた。
「スズちゃん、やっぱり調べたほうがいいと思うんだ。」
「確かにこれはまずいと思う。いったい何が起きているのかしら・・・。」
鈴蘭は不安そうな面持ちで自分の武器である剣を見る。彼女の力は「戦った相手の魔法を受け継ぐ」というもの。
他人の魔法を使えるという意味ではゲノムと同じだが、ゲノムの”接続”が”模倣”であり、”奪取”であるのに対し、彼女のそれは敵や共に戦った相手の力を”受け継ぐ”というものである。
今、彼女がその剣に宿し受け継いでいる魔法は自身の育ての親にして師匠、カメリアの火炎魔法である。
ビーストによって親を失い、天涯孤独となった彼女を救ってくれたのがカメリアだった。当時まだ小さかった彼女は親代わりの彼女を良く慕い、憧れた。
だから願ってしまったのだ「カメリアのようにかっこいい正義の味方になりたい」と。
未熟な彼女をかばいながら、カメリアは町を守っていた。かつての自分を鈴蘭に重ねていたのだ。あるいは巻き込んでしまった罪悪感かも知れない。
それもジャスミンというケットシーの友達が弟子にできたこと出終わった。生きることへの執着が、燃え尽きた。
安らかに、穏やかで・・・全てに満足したように、導かれていったのだった。
「大丈夫だよ。」
ジャスミンが励ますように笑顔で言った。
「カメリアもきっと見ていてくれる。守ってくれるよ。」
ジャスミンは優しい子だった。元々もうも下った彼女は、周囲に助けてもらいながら生きていた。だからこそ受けた愛情に精一杯恩返ししようと誰にでも優しくするようになったのだ。
そして契約で視力を手にした今は今度は誰かを助けようと生きている。
彼女もまた神と同様、世界に希望など無いという悪魔達とは、対極の存在であった。
鈴蘭の不安は吹っ切れたようだった。
「他の町のケットシーたちとも連絡を取ろう。そして突き止めよう。何が起きているのか。」
二人の友情は固かった。
「・・・・・・!!」
「?」
ラプラスは突然本から顔を上げたレヴィを不審に思い視線を移した。
「へぇ、・・・くるんだ、あの二人。思ったより早かったね。」
「どうした?」
なにやらニヤニヤとほくそ笑んでいる。よからぬことでも企んでいるって顔だ。
「・・・ラプちゃん。近いうち何匹かケットシーがこの町を調べにくるみたい。その中で二匹、私に任せて欲しい子がいるんだぁ・・・。」
振り返ったレヴィはニッコリ笑っていた。彼女の性格や本性を知らなければかわいい笑顔だった。
「確かに何匹かすでにかぎまわっているようだが・・・。さては、知り合いか?そいつら。」
「うん♪私が、悪魔になったのはあの子達を殺すためでもあるから。」
はしゃいだ様子で答える。まるで遠足前日のルンルン気分な子供だ。
「いってなかったけ?あの子達はね、私から”お母さん”を奪ったんだ。」
レヴィは笑顔のままだった。その裏に激しくも深く、ドロドロした炎が燃えているのをラプラスは知っていた。
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5話
悪魔という概念がこの世界に残留したのは、最初の悪魔の残骸とでもいうべきラプラスがビーストを捕食し、世界の一部と深くつながったことだけではない。
レヴィやゲノムといった、ケットシーから変異した後天的な悪魔が誕生するように世界の理を書き換えた存在がいたからだ。
「ナハト、リビングでトランポリンをするのはやめろ。ほこりが立つ。」
「えー、逆さづりがダメならこれくらい許してくれてもいいじゃないか。」
ラプラスは似合いもしないむくれ顔を見せるナハトをげんなりした表情で見返した。この女の趣味はつくづく分からない。
高いところから逆さ釣りになっているのを好むのは相手を見下ろすのが好きだからだという。なら単に高いところに上るだけでいいじゃないかといえば逆様の状態がいいんだと妙なこだわりを見せた。貧血なんだろうか?
「部屋を割り振っただろう?せめてそこでやれ。いやなら自分で領域を作れ。」
「しかたないなぁ・・・。」
しぶしぶといった具合でトランポリンを片付け、自分の部屋、空中ブランコにぶら下がったをサソリのマークが描かれたドアに入っていく。
「全く、悪魔とはいえ好き勝手しすぎだ・・・。」
とはいえ感謝はしている。この女がいなければ今の状況は無かっただろう。こいつはかつて、神に導かれた天使たちの中でも最強の地位にいた。
しかし、俺の誕生とともに反旗を翻し、神にも迫るその力を持って世界を改竄し、今の状況へと変えた。ゲノムやレヴィも彼女が連れてきたのだ。
「悪魔だからね。欲望のため好き勝手するのは当然・・・そういうことだろう?」
情報端末を弄っていたゲノムが話しかけてくる。ひと段落着いたようだ。
「ゲノム、レヴィが行っていたかぎまわっている奴らの目星は付いたか?」
「ああ。それとこの件は私とレヴィに任せてくれ。諜報や暗殺は私達のほうが向いているからね。」
(それに”オリジナル”もいるようだし・・・ね。)
ゲノムは半年前のことを思い出す。
そのころの自分はどこにでもいる、ありきたりな猫だった。あのおぞましい真実を知るまでは。
その日、私は偶然ビーストに襲われテイル猫を目撃した。そして知ったのだ。ケットシーの存在を。
そして―
そのときいたケットシーが自分と瓜二つだったのだ。ドッペルゲンガーにでも合ったようなショックを受けたが、その疑問に答えた光る猫の言葉のほうがっショックは大きかった。
いわく、私のオリジナルは神の救済によってこの世から消える自分を憂い、自分の全てを移植したクローンを望んだという。
自分の持っているものの全てが、記憶も名前も、持ち物も、その何もかもが奴からの移植。私の世界を打ち崩すには十分すぎる衝撃だった。
奴は自分のためにそうしたクローンを何体も生み出したのだ。しかしまだ試作段階。寿命は短く、一定の時間が過ぎれば糸が切れたマリオネットのようにプッツリと死ぬ。奴は限界が来れば影で処分し、新しいものと入れ替えた。
自身は作成とビースト退治に没頭するため家族の前から姿を消し、クローンと入れ替わった。そしてやがて本当に自分の意識全てを移植することに成功したら、自分は永遠に生きていくことができる。そう信じていたのだ。
そんな勝手で生み出された存在だと知って正気を保てるものがどれほどいるだろう?私には無理だった。
見るもの聞くもの全てに違和感を覚えざるを得なかった。なぜなら自分はイブツ。この世のものではないツクリモノ。
耐え難い違和感と孤独感で気が狂いそうだった。そして私もまたクローンであるということは、これまでの”私達”のようにいつか処分されるということ。
ふざけるな。こんな勝手な理由で生み出されて、勝手に殺されるなんて・・・そんな理不尽があってたまるか!!
私は奴と戦うためにケットシーの契約を結ぶつもりだった。だが、そのときにはすでに光る猫はこの星から撤退しておりできなかった。
八方塞。違和感しか感じないプラスチックのような家族は私を心配していたが、それも私にとっては嫌悪感を煽るものだった。
自分の姿を鏡で見るたびにオリジナルへの恐怖と憎悪を感じ叩き割った。
絶望。あぁ、どうして、どうしてこんな目にあわねばならないんだ。空っぽのまま、生きることさえ許されず・・・。
「こんな世界、・・・大嫌いだ・・・!!」
(この孤独を、違和感を、恐怖を!!消してくれるなら、オリジナルを消せるなら、この世界を壊せるなら!!)
私は心のそこからそう思った。理不尽な世界を壊して、私が生きていても良い世界を心から望んだ。
―望みは、聞き入れられた―
「世界が嫌いなんだって?」
「悪魔になってもかまわない。世界を壊したい。本気でそう願うなら、呪いと欲望で世界を塗り潰すと言うのなら、俺達が叶えてやろう。」
気がつくと私の周囲には、黒い羽が降っていた。
視線を上げればそこにはどこから伸びているか分からない空中ブランコから逆さ釣りでこっちを見下ろす悪魔。
そして私と同じ、荒涼として、呪いに満ちた目をしたボロボロの羽の黒い悪魔がいた。
彼女達もまたイブツ。
そうだホンモノだらけのこの世界に、我々の居場所が無いのなら、世界の全てをニセモノで埋め尽くせばきっと私も生きていていいはずだ。
彼女の足元に悪魔の紋章が現れる。塩基配列と、糸を断ち切ってなお立ち続けるマリオネット。自らの存在を認めてくれる新世界を望む、自己愛の悪魔、ゲノムの誕生だった。
「契約成立―だね。アハハハ!!よろしくね、ゲノム。」
「これでお前の魂が天国にたどり着くことは無いだろう。おめでとうゲノム。今日からお前は、悪魔だ。」
黒と青の悪魔が新たな同胞の誕生を祝福した。
そして今、
「ゲノちゃ~ん?どうしたの?あんまり無視するとチューするよ?」
気づくと支度を済ませたらしいレヴィが顔を間近に寄せていた。
「フッ・・・。」
「痛ぁーい!!なんてことするのよー!!」
ゲノムの裏拳を眉間に食らってレヴィが盛大にぶっ倒れて悶絶している。元気なものだ。
「ああ、行こうレヴィ・・・全てのケットシーを滅ぼすために・・・。」
(私は世界を壊す。そして新たな世界を作る。オリジナルを倒して、私という存在を確立する。)
塩基配列を模した触手が翼を織り成し、ゲノムは飛び立つ。
レヴィやゲノムといった、ケットシーから変異した後天的な悪魔が誕生するように世界の理を書き換えた存在がいたからだ。
「ナハト、リビングでトランポリンをするのはやめろ。ほこりが立つ。」
「えー、逆さづりがダメならこれくらい許してくれてもいいじゃないか。」
ラプラスは似合いもしないむくれ顔を見せるナハトをげんなりした表情で見返した。この女の趣味はつくづく分からない。
高いところから逆さ釣りになっているのを好むのは相手を見下ろすのが好きだからだという。なら単に高いところに上るだけでいいじゃないかといえば逆様の状態がいいんだと妙なこだわりを見せた。貧血なんだろうか?
「部屋を割り振っただろう?せめてそこでやれ。いやなら自分で領域を作れ。」
「しかたないなぁ・・・。」
しぶしぶといった具合でトランポリンを片付け、自分の部屋、空中ブランコにぶら下がったをサソリのマークが描かれたドアに入っていく。
「全く、悪魔とはいえ好き勝手しすぎだ・・・。」
とはいえ感謝はしている。この女がいなければ今の状況は無かっただろう。こいつはかつて、神に導かれた天使たちの中でも最強の地位にいた。
しかし、俺の誕生とともに反旗を翻し、神にも迫るその力を持って世界を改竄し、今の状況へと変えた。ゲノムやレヴィも彼女が連れてきたのだ。
「悪魔だからね。欲望のため好き勝手するのは当然・・・そういうことだろう?」
情報端末を弄っていたゲノムが話しかけてくる。ひと段落着いたようだ。
「ゲノム、レヴィが行っていたかぎまわっている奴らの目星は付いたか?」
「ああ。それとこの件は私とレヴィに任せてくれ。諜報や暗殺は私達のほうが向いているからね。」
(それに”オリジナル”もいるようだし・・・ね。)
ゲノムは半年前のことを思い出す。
そのころの自分はどこにでもいる、ありきたりな猫だった。あのおぞましい真実を知るまでは。
その日、私は偶然ビーストに襲われテイル猫を目撃した。そして知ったのだ。ケットシーの存在を。
そして―
自分が魔法で作られたニセモノであると。
そのときいたケットシーが自分と瓜二つだったのだ。ドッペルゲンガーにでも合ったようなショックを受けたが、その疑問に答えた光る猫の言葉のほうがっショックは大きかった。
いわく、私のオリジナルは神の救済によってこの世から消える自分を憂い、自分の全てを移植したクローンを望んだという。
自分の持っているものの全てが、記憶も名前も、持ち物も、その何もかもが奴からの移植。私の世界を打ち崩すには十分すぎる衝撃だった。
奴は自分のためにそうしたクローンを何体も生み出したのだ。しかしまだ試作段階。寿命は短く、一定の時間が過ぎれば糸が切れたマリオネットのようにプッツリと死ぬ。奴は限界が来れば影で処分し、新しいものと入れ替えた。
自身は作成とビースト退治に没頭するため家族の前から姿を消し、クローンと入れ替わった。そしてやがて本当に自分の意識全てを移植することに成功したら、自分は永遠に生きていくことができる。そう信じていたのだ。
そんな勝手で生み出された存在だと知って正気を保てるものがどれほどいるだろう?私には無理だった。
見るもの聞くもの全てに違和感を覚えざるを得なかった。なぜなら自分はイブツ。この世のものではないツクリモノ。
耐え難い違和感と孤独感で気が狂いそうだった。そして私もまたクローンであるということは、これまでの”私達”のようにいつか処分されるということ。
ふざけるな。こんな勝手な理由で生み出されて、勝手に殺されるなんて・・・そんな理不尽があってたまるか!!
私は奴と戦うためにケットシーの契約を結ぶつもりだった。だが、そのときにはすでに光る猫はこの星から撤退しておりできなかった。
八方塞。違和感しか感じないプラスチックのような家族は私を心配していたが、それも私にとっては嫌悪感を煽るものだった。
自分の姿を鏡で見るたびにオリジナルへの恐怖と憎悪を感じ叩き割った。
絶望。あぁ、どうして、どうしてこんな目にあわねばならないんだ。空っぽのまま、生きることさえ許されず・・・。
「こんな世界、・・・大嫌いだ・・・!!」
(この孤独を、違和感を、恐怖を!!消してくれるなら、オリジナルを消せるなら、この世界を壊せるなら!!)
「私は、悪魔になってもかまわない・・・!!」
私は心のそこからそう思った。理不尽な世界を壊して、私が生きていても良い世界を心から望んだ。
―望みは、聞き入れられた―
「世界が嫌いなんだって?」
「悪魔になってもかまわない。世界を壊したい。本気でそう願うなら、呪いと欲望で世界を塗り潰すと言うのなら、俺達が叶えてやろう。」
気がつくと私の周囲には、黒い羽が降っていた。
視線を上げればそこにはどこから伸びているか分からない空中ブランコから逆さ釣りでこっちを見下ろす悪魔。
そして私と同じ、荒涼として、呪いに満ちた目をしたボロボロの羽の黒い悪魔がいた。
彼女達もまたイブツ。
そうだホンモノだらけのこの世界に、我々の居場所が無いのなら、世界の全てをニセモノで埋め尽くせばきっと私も生きていていいはずだ。
彼女の足元に悪魔の紋章が現れる。塩基配列と、糸を断ち切ってなお立ち続けるマリオネット。自らの存在を認めてくれる新世界を望む、自己愛の悪魔、ゲノムの誕生だった。
「契約成立―だね。アハハハ!!よろしくね、ゲノム。」
「これでお前の魂が天国にたどり着くことは無いだろう。おめでとうゲノム。今日からお前は、悪魔だ。」
黒と青の悪魔が新たな同胞の誕生を祝福した。
そして今、
「ゲノちゃ~ん?どうしたの?あんまり無視するとチューするよ?」
気づくと支度を済ませたらしいレヴィが顔を間近に寄せていた。
「フッ・・・。」
バキィッ!!
「痛ぁーい!!なんてことするのよー!!」
ゲノムの裏拳を眉間に食らってレヴィが盛大にぶっ倒れて悶絶している。元気なものだ。
「ああ、行こうレヴィ・・・全てのケットシーを滅ぼすために・・・。」
(私は世界を壊す。そして新たな世界を作る。オリジナルを倒して、私という存在を確立する。)
塩基配列を模した触手が翼を織り成し、ゲノムは飛び立つ。
DCD- 未登録ユーザー
6話
数ヶ月前、風霧市―悪魔達の潜伏先であるアスノ町より二つとなりの町である。
「アハハハハハ!!死んじゃえよ!!」
満月輝く月夜にに赤い炎が走る。炎のリングに焼かれてビーストが断末魔を上げ、解け落ちていく。
どこからか伸びているか分からない空中ブランコにぶら下がり、ナハトは笑っていた。他愛ない。こんなやつらは逆さまでも十分倒せる。お、他の二人も終わったようだ。
「やあ、お疲れ。ゲノムのだいぶ戦い慣れてきたね。」
「あぁナハト・・・今日は外れだな。ほとんど感情石を落とさなかった。」
「うんにゃ、そうでもないよ。廃人化した連中の家族から呪いが出るだろうし、将来的には無駄じゃあないさ。」
ナハトの言葉にゲノムは複雑そうな顔をしていた。あれほど世界に違和感、孤独感、疎外感を感じていて、”普通”の存在を憎悪していたくせに一般人を恋に見捨てるのに抵抗があるらしい。面白い矛盾だ。
まあ、結局見捨てているあたりは彼女もしっかり悪魔なんだが。
「最初からもっと巨大な呪いを持っている奴でもいれば悪魔にして即戦力になるんだがな・・・。」
ラプラスが回収した感情石をジャラジャラと弄びながら合流した。我々悪魔にも準備期間が要る。もっともっと感情石やビーストからのろいを吸収し、パワーアップせねば。こっちは少数で圧倒的数の神と戦うのだ。この世を裏から少しづつ、呪いに染めていかねば勝てない。
「そうだね、まさにこの世の異端者とでも言うべき呪いの爆弾みたいな子がいれば話は早・・・・・・?」
「・・・!!」
ナハトが言葉を切った。ゲノムも気づいたようだ。
「・・・どうやらいたようだな。その爆弾娘。」
視界の果ての一軒家、電気も付いていない暗室に蹲る紫の毛の少女を悪魔達は見出した。
現在
何匹かのケットシーが集まっていた。ジーンという黒毛に緑縞のケットシー・・・言うまでも無くゲノムのオリジナルである・・・と、自分の町を鈴蘭に任せてこの集まりに参加したジャスミン。
他にこの集まりを開いたスフィアという白いケットシーと、彼女の仲間である赤いの毛のケットシー、ネブラがいた。
スフィアとネブラはこの半年間の急激なビースト増加と光る猫の消失、隣町のケットシーたちの消失といった異変、さらににわかには信じがたいが行方不明になった猫―おそらく救済で消えたはずの猫が隣町で目撃されたという事件について調査をしていた。
そして知ったのだ。事態が思っていたよりずっと深刻であることを。
今分かっているのは3つ。
まず、隣町のケットシーたちが消えたのはビーストに敗れたわけでも、限界が来て救済を迎えたわけでもない。殺されたのだ。
現に葬式が執り行われていた。救済では死体は残らないし、ビーストに敗れたならやはり死体は食われているはずだった。
次に敵は複数だろうこと。一度に複数の、かなり距離が離れた範囲でビースト反応が消失するのを確認した。ケットシーとは異質の、ビーストのそれに近い異様な魔力を感じた。
最後に敵は意識を操作できるということ。これだけ甚大なビースト被害が出ていてもパニックが起きていない。何事もないように社会が回っているのだ。
「本当に何が起きているんだ・・・世界の何かとんでもない何かが外れてしまったようだ。」
隣に立つ赤い相棒が調べるほど深まる謎に舌を巻いていた。
「ネブラ・・・私はこの町を未知の脅威から守りたい。半年前からビーストの増加や光る猫が姿を見せなくなった。そして私は見たの。」
自身の魔法によって見たおぞましい未来のビジョン。あれは絶対に防がねばならない。
壊滅し、崩れ去った町、割れてマグマを吹き出す大地。暗雲立ち込め、わずかな光も遮られた空。そしてその地獄の中で、無数の光の玉とそれに対峙するおぞましく、形容しがたい地を多い尽くすほど怪物の群れ、そしてその中心で光を睨みつける黒い翼の猫・・・。
(あれが未来だなんて・・・あのおぞましき存在を世に放ってはならない・・・!)
そのために仲間がいるのだ。
「いったい何が起きているんだろう・・・。」
「ふむ・・・意識操作・・・か。」
「・・・ひとつずつ説明していきます。」
その前に、と区切り
「はじめまして、私はスフィア。この町を守っているケットシーです。」
まとめて配布した資料に目を通しながら頭を悩ませる一同にスフィアは軽く自己紹介を始めた。
一呼吸を置いて自身の手の内を話す
「私の魔法は『予知』ゆえに少しだけ、耳ざとい。」
「私はネブラ。スフィアと組んでから長い。魔法は『守護』まあ強力なバリアが張れると思ってくれればいい。」
「あ、私はジャスミンです。もうひとつ向こうの、風霧市でケットシーをやっています。魔法は『探知』。一度みた相手を見つけるのに役立てると思います。」
ジャスミンがこれに習った。
「・・・私はジーン。星見町のケットシーだ。魔法は”複製”まあ、武器や物を増やせる・・・と思ってくれ。」
ジーンは少し近づきがたい印象だが、予知では問題ないと判断できた。きわめて冷静だからだ。
しかし、慎重に進めたはずのこの会議は最初から敵に筒抜けだった。
「私はレヴィ。悪魔だよ。」
一同が自己紹介を終えたところで、タイミングを計ったかのように、悪魔は現れたのだ。
「え・・・?」
「なっ!?」
「・・・!」
「よろしくね?」
レヴィはゆっくりとティーカップ揺らし、にっこり微笑んだ。
砦はすでに陥落済みだったのだ。あまりにも唐突な乱入者の登場に皆がざわめき、うろたえた。
「悪魔!?・・・ということはあなたが・・・!!」
「こっ、こいついつのまに・・・!?」
ネブラとスフィアが驚愕する。
「レヴィ・・・っ!!」
「いや、・・・違う・・・ぞ。」
一番落ち着いていたのはジーンだ。いや、確かに度肝を抜かれてはいたが、他のようにうろたえてはいなかった。
「驚いたな・・・”いつから”いたんだい?」
そう、驚くべきなのはそこである。なぜならこの会議に出席しているのは4人。しかし用意された席は5人分。つまりそれは、
「”最初から”だね。」
レヴィの口角が釣りあがる。
そう、最初から。最初から彼女はこのスフィアの家に上がり、最初から席に着き、最初から自己紹介を聞いていたのだ。誰も気づかなかった。
「こそこそ嗅ぎ回ってるのには気づいてたよ。メーワクなんだよね。ま、これは意趣返しってことで。」
スフィアは臨戦態勢を取ろうとしたが、ネブラは完全に意表を付かれている。ジーンは冷静だが出方のわからない敵に警戒しているようだ。
軽く予知魔法を使った・・・ダメだッ!映像に砂嵐のようなノイズが入っている。おそらくあの悪魔を名乗る少女にジャミングされている。
ジャスミンは表情を引きつらせていた。
「レヴィっ・・・お姉ちゃん!!どうして・・・!?」
「『どうして』?その『どうして』は何に対しての『どうして』なのかな?ジャスミン。」
「お姉ちゃん!?」
「どういうことだ・・・!?」
うろたえるギャラリーを尻目にレヴィは妹に問う。自分に対して何を思っているか・・・と。
「どうして、何もいわずに出て言っちゃったの・・・?パパ、心配してたよ・・・。」
「あはっ、ジャスミン・・・あなたがそれ言っちゃうんだぁ・・・私にも、パパにも何も言わずにケットシーになったのは誰だっけ?」
「っ!!」
「まあ、分かるよ。ずっと目が見えるようになりたかったもんね?いろいろ見れて楽しかった?」
でもさ、とレヴィの声からトーンが下がっていく。
「目が見えるようになって、いろんなものを見る夢がかなったジャスミンはいつ消えちゃおうが満足かもしれないけどさぁ・・・。」
「それで残されたパパはどう思うんだろーね。カワイソーにね。」
妹は絶句していた。
「それと、パパは私の心配なんかしないよ。親としての最低限の体裁を守りたいだけ。アンタの前ではね。」
「そんな・・・。」
「親って言うのは、自分のことを一番に思ってくれる人のことをいうんだよ?パパは”お父さん”にふさわしくは無い。・・・少なくても私にとってはね。」
「・・・。」
うつむく妹に対しレヴィは発条がイカレた人形のように首をカタカタ鳴らし笑った。
「あなた、いったい・・・。」
そしてひとしきり笑い終えるとさて、と周囲を見回したレヴィはあらためて口を開く。
「何が目的だって?いいよ。教えたげる。」
「復讐。全てのケットシーへの復讐だよ。」
「復讐!?」
ジャスミンは半ばパニックになっていた。ジーンがいさめる
「あいにく君にうらまれるような覚えは無いが?」
「『私には』でしょ?・・・それにさぁあなた達はみんな業を背負ってるんだよ。」
「『業』・・・?」
「そう、みんな悔い無く満足に消えていって、さも幸せそーだけどさぁ・・・残された人達の人生はどうなると思う?シミを残さずにすむと思う?」
「いい?大好きな人がいなくなっちゃうこと以上の悲しみなんてあるわけ無いんだよ。」
「『自分を大切にしなかった』。こんな分かり易い業はないでしょ?」
「「「「!!」」」」
悪魔の思想が鎌首をもたげて、ケットシーたちを見下ろしていた。
「アハハハハハ!!死んじゃえよ!!」
満月輝く月夜にに赤い炎が走る。炎のリングに焼かれてビーストが断末魔を上げ、解け落ちていく。
どこからか伸びているか分からない空中ブランコにぶら下がり、ナハトは笑っていた。他愛ない。こんなやつらは逆さまでも十分倒せる。お、他の二人も終わったようだ。
「やあ、お疲れ。ゲノムのだいぶ戦い慣れてきたね。」
「あぁナハト・・・今日は外れだな。ほとんど感情石を落とさなかった。」
「うんにゃ、そうでもないよ。廃人化した連中の家族から呪いが出るだろうし、将来的には無駄じゃあないさ。」
ナハトの言葉にゲノムは複雑そうな顔をしていた。あれほど世界に違和感、孤独感、疎外感を感じていて、”普通”の存在を憎悪していたくせに一般人を恋に見捨てるのに抵抗があるらしい。面白い矛盾だ。
まあ、結局見捨てているあたりは彼女もしっかり悪魔なんだが。
「最初からもっと巨大な呪いを持っている奴でもいれば悪魔にして即戦力になるんだがな・・・。」
ラプラスが回収した感情石をジャラジャラと弄びながら合流した。我々悪魔にも準備期間が要る。もっともっと感情石やビーストからのろいを吸収し、パワーアップせねば。こっちは少数で圧倒的数の神と戦うのだ。この世を裏から少しづつ、呪いに染めていかねば勝てない。
「そうだね、まさにこの世の異端者とでも言うべき呪いの爆弾みたいな子がいれば話は早・・・・・・?」
「・・・!!」
ナハトが言葉を切った。ゲノムも気づいたようだ。
「・・・どうやらいたようだな。その爆弾娘。」
視界の果ての一軒家、電気も付いていない暗室に蹲る紫の毛の少女を悪魔達は見出した。
現在
何匹かのケットシーが集まっていた。ジーンという黒毛に緑縞のケットシー・・・言うまでも無くゲノムのオリジナルである・・・と、自分の町を鈴蘭に任せてこの集まりに参加したジャスミン。
他にこの集まりを開いたスフィアという白いケットシーと、彼女の仲間である赤いの毛のケットシー、ネブラがいた。
スフィアとネブラはこの半年間の急激なビースト増加と光る猫の消失、隣町のケットシーたちの消失といった異変、さらににわかには信じがたいが行方不明になった猫―おそらく救済で消えたはずの猫が隣町で目撃されたという事件について調査をしていた。
そして知ったのだ。事態が思っていたよりずっと深刻であることを。
今分かっているのは3つ。
まず、隣町のケットシーたちが消えたのはビーストに敗れたわけでも、限界が来て救済を迎えたわけでもない。殺されたのだ。
現に葬式が執り行われていた。救済では死体は残らないし、ビーストに敗れたならやはり死体は食われているはずだった。
次に敵は複数だろうこと。一度に複数の、かなり距離が離れた範囲でビースト反応が消失するのを確認した。ケットシーとは異質の、ビーストのそれに近い異様な魔力を感じた。
最後に敵は意識を操作できるということ。これだけ甚大なビースト被害が出ていてもパニックが起きていない。何事もないように社会が回っているのだ。
「本当に何が起きているんだ・・・世界の何かとんでもない何かが外れてしまったようだ。」
隣に立つ赤い相棒が調べるほど深まる謎に舌を巻いていた。
「ネブラ・・・私はこの町を未知の脅威から守りたい。半年前からビーストの増加や光る猫が姿を見せなくなった。そして私は見たの。」
自身の魔法によって見たおぞましい未来のビジョン。あれは絶対に防がねばならない。
壊滅し、崩れ去った町、割れてマグマを吹き出す大地。暗雲立ち込め、わずかな光も遮られた空。そしてその地獄の中で、無数の光の玉とそれに対峙するおぞましく、形容しがたい地を多い尽くすほど怪物の群れ、そしてその中心で光を睨みつける黒い翼の猫・・・。
(あれが未来だなんて・・・あのおぞましき存在を世に放ってはならない・・・!)
そのために仲間がいるのだ。
「いったい何が起きているんだろう・・・。」
「ふむ・・・意識操作・・・か。」
「・・・ひとつずつ説明していきます。」
その前に、と区切り
「はじめまして、私はスフィア。この町を守っているケットシーです。」
まとめて配布した資料に目を通しながら頭を悩ませる一同にスフィアは軽く自己紹介を始めた。
一呼吸を置いて自身の手の内を話す
「私の魔法は『予知』ゆえに少しだけ、耳ざとい。」
「私はネブラ。スフィアと組んでから長い。魔法は『守護』まあ強力なバリアが張れると思ってくれればいい。」
「あ、私はジャスミンです。もうひとつ向こうの、風霧市でケットシーをやっています。魔法は『探知』。一度みた相手を見つけるのに役立てると思います。」
ジャスミンがこれに習った。
「・・・私はジーン。星見町のケットシーだ。魔法は”複製”まあ、武器や物を増やせる・・・と思ってくれ。」
ジーンは少し近づきがたい印象だが、予知では問題ないと判断できた。きわめて冷静だからだ。
しかし、慎重に進めたはずのこの会議は最初から敵に筒抜けだった。
「私はレヴィ。悪魔だよ。」
一同が自己紹介を終えたところで、タイミングを計ったかのように、悪魔は現れたのだ。
「え・・・?」
「なっ!?」
「・・・!」
「よろしくね?」
レヴィはゆっくりとティーカップ揺らし、にっこり微笑んだ。
砦はすでに陥落済みだったのだ。あまりにも唐突な乱入者の登場に皆がざわめき、うろたえた。
「悪魔!?・・・ということはあなたが・・・!!」
「こっ、こいついつのまに・・・!?」
ネブラとスフィアが驚愕する。
「レヴィ・・・っ!!」
「いや、・・・違う・・・ぞ。」
一番落ち着いていたのはジーンだ。いや、確かに度肝を抜かれてはいたが、他のようにうろたえてはいなかった。
「驚いたな・・・”いつから”いたんだい?」
そう、驚くべきなのはそこである。なぜならこの会議に出席しているのは4人。しかし用意された席は5人分。つまりそれは、
「”最初から”だね。」
レヴィの口角が釣りあがる。
そう、最初から。最初から彼女はこのスフィアの家に上がり、最初から席に着き、最初から自己紹介を聞いていたのだ。誰も気づかなかった。
「こそこそ嗅ぎ回ってるのには気づいてたよ。メーワクなんだよね。ま、これは意趣返しってことで。」
スフィアは臨戦態勢を取ろうとしたが、ネブラは完全に意表を付かれている。ジーンは冷静だが出方のわからない敵に警戒しているようだ。
軽く予知魔法を使った・・・ダメだッ!映像に砂嵐のようなノイズが入っている。おそらくあの悪魔を名乗る少女にジャミングされている。
ジャスミンは表情を引きつらせていた。
「レヴィっ・・・お姉ちゃん!!どうして・・・!?」
「『どうして』?その『どうして』は何に対しての『どうして』なのかな?ジャスミン。」
「お姉ちゃん!?」
「どういうことだ・・・!?」
うろたえるギャラリーを尻目にレヴィは妹に問う。自分に対して何を思っているか・・・と。
「どうして、何もいわずに出て言っちゃったの・・・?パパ、心配してたよ・・・。」
「あはっ、ジャスミン・・・あなたがそれ言っちゃうんだぁ・・・私にも、パパにも何も言わずにケットシーになったのは誰だっけ?」
「っ!!」
「まあ、分かるよ。ずっと目が見えるようになりたかったもんね?いろいろ見れて楽しかった?」
でもさ、とレヴィの声からトーンが下がっていく。
「目が見えるようになって、いろんなものを見る夢がかなったジャスミンはいつ消えちゃおうが満足かもしれないけどさぁ・・・。」
「それで残されたパパはどう思うんだろーね。カワイソーにね。」
妹は絶句していた。
「それと、パパは私の心配なんかしないよ。親としての最低限の体裁を守りたいだけ。アンタの前ではね。」
「そんな・・・。」
「親って言うのは、自分のことを一番に思ってくれる人のことをいうんだよ?パパは”お父さん”にふさわしくは無い。・・・少なくても私にとってはね。」
「・・・。」
うつむく妹に対しレヴィは発条がイカレた人形のように首をカタカタ鳴らし笑った。
「あなた、いったい・・・。」
そしてひとしきり笑い終えるとさて、と周囲を見回したレヴィはあらためて口を開く。
「何が目的だって?いいよ。教えたげる。」
「復讐。全てのケットシーへの復讐だよ。」
「復讐!?」
ジャスミンは半ばパニックになっていた。ジーンがいさめる
「あいにく君にうらまれるような覚えは無いが?」
「『私には』でしょ?・・・それにさぁあなた達はみんな業を背負ってるんだよ。」
「『業』・・・?」
「そう、みんな悔い無く満足に消えていって、さも幸せそーだけどさぁ・・・残された人達の人生はどうなると思う?シミを残さずにすむと思う?」
「いい?大好きな人がいなくなっちゃうこと以上の悲しみなんてあるわけ無いんだよ。」
「『自分を大切にしなかった』。こんな分かり易い業はないでしょ?」
「「「「!!」」」」
悪魔の思想が鎌首をもたげて、ケットシーたちを見下ろしていた。
DCD- 未登録ユーザー
7話
『業』という言葉にケットシーたちは動揺していた。いい気味だ。そう、この業こそが、私を、ラプちゃんを、ラプちゃんが守りたかった人を悪魔にしたのだ。
レヴィは思い返す。自分が悪魔になるまでの軌跡を。
ママが死んだ。交通事故だった。誰が悪いわけでもない。買い物から帰る途中、雪で車の車輪を滑らせたのだ。
その事実を突然知らされたとき、私は、とても空虚な気持ちになった。
まあと私は別に仲良しってわけじゃあなかった。
生前のママは、私の双子の妹であるジャスミンにことさら深い愛情を注いでいた。
妹は、生まれつき目が見えない、親にとって実に手のかかる子供だった。そして、誰の目から見ても、純粋に良い子だった。 ・・・私は違った。
彼女は、笑顔がそう、本当に素敵で朗らかな子供だった。 ・・・私は違った。
彼女に面と向かって笑われると「笑顔なんて見たことないはずなのに……」と大人たちは感動するか、痛ましい顔になるかする。
これは、私以外知らないはずのことだけど、彼女の笑顔は、私が笑ってるとき、ほっぺを触らせてあげたりして生まれたものなのだ。
ジャスミン本人も、きっと知らない。私が彼女に笑顔を教えてあげたのは、私たちが凄く小さいころだった。だから、覚えてない。知らない。
私は、別に妹のことが嫌いなわけではなかったむしろ、そう妹のことは可愛いと思っていた。妹として、大好きだと思っていた。良い子だと思っていた。だけれども、妬んでもいた。
なんて不幸な子供。両親はそういう素振りを見せつつ、せめて私たちは、と彼女ばかりを一生懸命甘やかすのだ。
当たり前のことだとは思う。・・・そう、私はお姉ちゃんだから、我慢しなくちゃ。
私は昔から本を読むのが好きだった。目を使うことでしか妹に勝る部分が無かったからだ。
音楽とか、料理を食べるとか・・・そういう感覚ではあの子は目が見えないなりに必死だったから。私の努力では追いつけなかった。
それになにより、私は妹のようにやさしくはない。”良い子”では私は絶対に彼女には勝てなかったから。私は年の割りにませて・・・捻くれた性格だった。
ママが死んで思ったことは、ああ・・・これで妹に永遠に勝てなかったことがひとつできたんだなってことだった。
『大切な誰かに、一番に思われる。』
それが私の望みだった。・・・ママにとって一番大事なのはいつだってジャスミンだった。きっと最後に思ったのも彼女のほうが先だっただろう。
ママが死んでしばらくたってからのことだ。パパがお手伝いさんを雇った。名をカメリア。
ママにそっくりな人だった。写真で見ていた若い頃のママに。・・・まさかこの人と再婚する気じゃないかと疑ったが、どうやら考えすぎだったらしい。
パパはあまり家庭を顧みるタイプじゃない、ドライな人だった。いや、妹には優しくしていたか。・・・そうした評判があったほうが仕事に有利だから。
ママに似たカメリアを雇ったのも、結局、子育てという厄介事から逃れて、・・・ママの代わりにするつもりだったのかもしれない。
最初は警戒してたけどカメリアはいい人だった。
買い物に行ったとき、私は欲しいものがあっても妹に気を使って我慢することが多かった。彼女はそれに気づいて、・・・こっそり買ってくれた。
私達二人の名前を呼ぶとき、私の名前を最初に読んでくれた。
そんなことと思うかもしれないが、私にとっては初めてのことだったのだ。
カメリアは妹を冷遇するわけでもなかった。優先準備でいっつも上ってわけではないけど、うん。平等に愛情を注いでくれていた。
私も精一杯それに答えてきたつもりだった。
私は、幸せだった。
あの日が来るまでは。
ちょうど一年ほど前だ。私はケットシーの存在を知った。
カメリアは成人するまで生き延びていた、珍しいケットシーだった。そして、私達姉妹にも同じ素質があると光る猫は言ったのだ。
契約によって目が見えるようになるかもしれない。ジャスミンははしゃいでた。私も本の中のものだと思っていた魔法や、かげながら世界を守る正義の味方がいて、それが大好きなカメリアだと知って確かに興奮した。
でも彼女は喜んでなかった。
「今度、しっかり話し合いましょう・・・。」
どう見ても仲間ができることを喜んではいなかった。
数日後、カメリアと私と、ジャスミン。光る猫。そしてあの子・・・鈴蘭。
光る猫は全てを話してくれた。ケットシーのこと、ビーストのこと、最後にはどうなってしまうか。
興奮した様子で身を乗り出して、ケットシーになりたがる妹を、カメリアは強い口調でいさめた。
「ケットシーにならなくても幸せになる方法なんていくらでも有ります。 あなた達はこんな辛い運命を、自ら進んで背負うべきではありません。」
妹はひるんで口をつぐんだ。私はそれを横目にフォローを入れてやった。
「私、戦いは良くわかんないけど、一人で戦うのって大変なことじゃないの?カメリアは一人で戦っていて、さびしくないの?」
「一緒に戦ってくれる仲間は、欲しくないの?」
妹はどんなに辛い条件でも契約しようとする。目が見えるようになることは、この子の夢で、そして妹は私が知る限りでは一番”良い子”だから、きっとビーストからみんなを守ろうとするだろう。なんとなく分かっていたからだ。
「大丈夫ですよ。私にはこの子がいますから。」
カメリアは隣に座っていた子をなでた。カメリアが助けた子で、彼女もケットシーらしい。
撫でられて少し驚いた後、ふにゃりと表情を蕩す彼女を見て、私は胸の奥がチクリと針で刺された様な気がした。
ああ、そうか。この子は彼女の生きがいなんだ・・・。
まだ未練がありそうな妹に、カメリアはちょっとズルイ言い方をした。
「良いですか。約束してください。私のことを好いていてくれるのなら、ケットシーにはならないでください。」
・・・遠い。すぐ向かいに座っているはずなのに。彼女との距離がずいぶん離れてしまった気がする。隣の子は、ぴったり彼女にくっついていた。
私の入る隙間は、なさそうだった。
「わかった。でも、私達がケットシーにならなくても、カメリアは傍にいてくれるよね?友達でいて、くれるよね?」
「もちろんです。」
彼女の柔らかい笑顔を見て、私はもう何もいえなかった。
(悔しいな・・・私じゃダメだったんだ・・・でも、約束だから・・・我慢しなゃ。)
約束―それは私を信用してくれえいるという証なんだ。だから、・・・私はそれに答えないと。
―どうして?どうしてなの・・・?
きっかけは妹の抜け駆けだった。彼女は言いつけを破り、契約したのだ。それは良い。きっとそうなると思っていた。問題はそこじゃない。
「カメリア・・・ジャスミンが契約したのに何でうれしそうなの?・・・なんでそんなに笑ってるの?」
今になって思えば、カメリアはもう疲れてたのかもしれない。だから自分がいなくなっても大切なあのこと一緒にいてくれる友達ができたことを喜んだのだ。
目が見えるようになって、ジャスミンはますます人から好かれるようになった。カメリアや鈴蘭と一緒に、ビーストと戦って・・・大変そうだけど、楽しそうだった。見たことが無いくらい、生き生きとしていた。
私は、ひとりになった。
カメリアも、妬ましいけど可愛いと思っていた妹も、ずっと先に行ってしまった。私も契約して、輪に加えてもらえばいいんだろうか?
(でも、約束だから・・・。)
私は、我慢した。
私はひとりで本を読むことが多くなった。
「昔はジャスミンに読み聞かせてあげてたのにな・・・。」
ひょっとしたら私は心のどこかで永遠に妹の目が見えなければいいと思っていたのかもしれない。・・・最低だ。
「あの子とあってから・・・ずいぶん寂しくなったな・・・。」
あの子・・・鈴蘭ちゃんと。あの子と会ってから、全てが変わってしまった。
「そんなのはただの逆恨みだ。」という自分と、「あいつさえいなければ。」という自分。私の中で二つの思いが渦巻いていた。
(そう、こんなのただの逆恨み・・・私が悪い子だからこんな事思うんだ・・・。)
どうしてこうなったんだろう・・・?どうしていつも妹ばかり・・・!
楽しそうにビースト退治の話をする妹を見るたびに長年押し殺してきた感情がふつふつわいてくるのを感じた。
カメリアが死んだ。珍しく大量に出現したビーストとの戦いで己を燃やし尽くしたのだ。
光る猫に聞いた私はその死に目に間に合うことができた。
きれいな顔だった。何の悔いも無い、満足しきった顔だった。
ブツンッ!!
私の中で、決定的な何かが切れた。
カメリアにとって、レヴィは自分がいなくても大丈夫な子だったのだ。だから身寄りの無い鈴蘭や、幼いジャスミンを、ケットシーの仲間を優先してしまった。
これは神の改変したこの世界でよく見られる、ケットシーと一般人の価値観の差による、ケットシーたちの思い上がりだった。
少なくとも幼いレヴィにとって自分のことを何の気にも留めずに悔いなく消えて逝ったカメリアの死に目は、耐え難い裏切り行為だった。
「なんで自分じゃダメだったんだろう?」
「どうして自分を選んでくれなかったんだろう?」
「何が悪かったんだろう? どうすれば良かったんだろう?」
「あの時約束を破って契約すればよかった?大切な約束なのに?」
「本当は私のことが嫌いだったんだろうか?」
答えの出ない永遠の問いが、出口の見えない堂々巡りが、幼い彼女の心を腐らせていく。
「あなただけは、あなただけが私も、ジャスミンも平等に愛してくれていたのに・・・!!」
「あなただけは違うと思っていたのに・・・どうして?どうしてなの・・・”お母さん”!!」
・・・カメリアはウソツキだった。彼女は鈴蘭ちゃんと、ジャスミンを選んだ。
そう、私はいつも、誰も選んではくれない。・・・誰にも愛されてはいない。
大人は私をみんな愛しているという。パパもママもカメリアも。
ウソツキ。みんなウソツキだ。
穏やかで全てに満足したようなカメリアの死に顔が、ただただ恨めしかった。
カメリアに選ばれた二人が、ただただ妬ましかった。
周りを置いてきぼりにして、自分だけハッピーエンドで終わるケットシーの物語がひたすら憎かった。
(あぁ・・・私の中の愛情が、大切でかけがえないものだと思ってた全てがドロドロに解けて黒く染まっていく。)
「そうか、・・・お前も同じなんだな。」
気づくと暗室に蹲っていた私の前に黒い羽が振ってきた。
「誰・・・?どこから入ったの?光る猫とは違うみたいだけど。」
「俺は悪魔。世界を、ケットシーを、神を憎むもの・・・。孤独と裏切りの辛さを知るもの。」
ボロボロの黒い羽に血の涙を流しているかのような顔をした彼女に私は少しだけ親近感を覚えた。
「ふぅん・・・ねぇ、悪魔さん。」
そうだ、願おう。光る猫なんかじゃなく悪魔に。
「私を、あなたの仲間にしてよ。この世界を壊しちゃえるほどの、悪魔にしてよ。」
私は机の上の本を閉じた。
(私は主人公にはなれない。私は愛されない。私はいつだって悪役だ・・・・。)
(だからいいよね。悪役らしく、悪い奴になってもさ・・・。)
シクラメンと王冠をかぶった海蛇の紋章が現れる。愛憎の悪魔、レヴィが生れ落ちた。
現在の少し前
「これが私が悪魔になった理由だよ。」
二人がこっちに来ると知って私は無償に誰かに話したい気分になってラプちゃんに全てを話した。
「あははは!つまり私は逆恨みヤローってわけ。でもさ、許せないんだよね。どうしても。勝手に思い込んで勝手に消えて、勝手に現れて、勝手に奪っていって・・・。本当、私って何なんだろうね?ひょっとしたら生まれてかなったほうがよかっ―。」
ブスリッ!!ブスブスブスブスブスブスブスブスブスブスブスブスブスブスブスッ!!
ラプちゃんが後ろから私を抱きしめた。驚いて変身した私の棘装束の針が次々と突き刺さって、血がべっとりかかって暖かい。
「なにしてんの?」
ラプちゃんを心配しているんじゃない。本当にわけが分からなかったんだ。
「俺の大切な人も、同じだった。約束をずっと守って、ずっと寂しいのを我慢して、辛いのを堪えて・・・壊れちまった。」
「俺は守りたかった。傍にいてやりたかったのに・・・。できなかった。」
「ラプちゃん。私はその人じゃないんだよ?その人の代わりにしようってんならメーワクなんだけど?」
「そんな偽りの愛を私に向けるならあなたもウソツキと同じ。針千本飲ませるよ?」
「・・・そうだな。俺が勝手にやってるだけだ。おれ自身の心の安定のために、お前を使ってるだけだ。」
「サイテー。」
「・・・ああ。悪魔だからな。」
これだけ針が刺さってるのにちっとも緩める気配がしない。・・・振りほどくことはしなかった。
そして現在。
「あなた達は業をあがなわなければならない。」
レヴィは自身の武器の針を構える。
ケットシーたちは戦う覚悟を決めたようだ。
「悪いが私は契約しなければ死んでいたんだ・・・自身で家を潰されてね・・・それしか道が無かったんだ。」
ネブラが変身し、斧を構える。
「私はそこまで高尚な願いではありません。ただ言い知れぬ明日への不安で契約したのです。」
「しかし、それのせいでとやかく言われる覚えはありません。」
スフィアが変身し、エネルギー球を生成する。
「ケットシーの最後には思うところがある。それは同感だ。君がどう償わせたいかは知らないが・・・お断りするよ。私はまだ生きていたいんでね。」
ジーンがゆっくり席を立つ。
「お姉ちゃん・・・もうやめよう?一緒に帰ろうよ。ね?」
妹はもう迷いはないようだ。
「ふーん。そっかそっか・・・。」
レヴィはゆっくりうなづく。結局こいつらも周りの不幸など気にも留めない。私達悪魔と何が違うというんだ?・・・やっぱりこの世界は壊さないと。
「ならさ・・・。」
「好き勝手な希望を抱いたまま。」
「何の悔いも無く」
「跡形も残さず。」
「死ぬがいい。」
足元にレヴィの紋章が出現する。
「!?」
「あっ・・・!」
「なにっ!?」
「いけない!!」
もう遅い。すでに彼女の領域へご招待だ。ケットシーたちが引き釣り込まれていく
「ウェルカム、マイ・ワールド。」
「楽しみだな・・・。どんな顔で死ぬの?ジャスミン・・・。」
レヴィは思い返す。自分が悪魔になるまでの軌跡を。
ママが死んだ。交通事故だった。誰が悪いわけでもない。買い物から帰る途中、雪で車の車輪を滑らせたのだ。
その事実を突然知らされたとき、私は、とても空虚な気持ちになった。
まあと私は別に仲良しってわけじゃあなかった。
生前のママは、私の双子の妹であるジャスミンにことさら深い愛情を注いでいた。
妹は、生まれつき目が見えない、親にとって実に手のかかる子供だった。そして、誰の目から見ても、純粋に良い子だった。 ・・・私は違った。
彼女は、笑顔がそう、本当に素敵で朗らかな子供だった。 ・・・私は違った。
彼女に面と向かって笑われると「笑顔なんて見たことないはずなのに……」と大人たちは感動するか、痛ましい顔になるかする。
これは、私以外知らないはずのことだけど、彼女の笑顔は、私が笑ってるとき、ほっぺを触らせてあげたりして生まれたものなのだ。
ジャスミン本人も、きっと知らない。私が彼女に笑顔を教えてあげたのは、私たちが凄く小さいころだった。だから、覚えてない。知らない。
私は、別に妹のことが嫌いなわけではなかったむしろ、そう妹のことは可愛いと思っていた。妹として、大好きだと思っていた。良い子だと思っていた。だけれども、妬んでもいた。
なんて不幸な子供。両親はそういう素振りを見せつつ、せめて私たちは、と彼女ばかりを一生懸命甘やかすのだ。
当たり前のことだとは思う。・・・そう、私はお姉ちゃんだから、我慢しなくちゃ。
私は昔から本を読むのが好きだった。目を使うことでしか妹に勝る部分が無かったからだ。
音楽とか、料理を食べるとか・・・そういう感覚ではあの子は目が見えないなりに必死だったから。私の努力では追いつけなかった。
それになにより、私は妹のようにやさしくはない。”良い子”では私は絶対に彼女には勝てなかったから。私は年の割りにませて・・・捻くれた性格だった。
ママが死んで思ったことは、ああ・・・これで妹に永遠に勝てなかったことがひとつできたんだなってことだった。
『大切な誰かに、一番に思われる。』
それが私の望みだった。・・・ママにとって一番大事なのはいつだってジャスミンだった。きっと最後に思ったのも彼女のほうが先だっただろう。
ママが死んでしばらくたってからのことだ。パパがお手伝いさんを雇った。名をカメリア。
ママにそっくりな人だった。写真で見ていた若い頃のママに。・・・まさかこの人と再婚する気じゃないかと疑ったが、どうやら考えすぎだったらしい。
パパはあまり家庭を顧みるタイプじゃない、ドライな人だった。いや、妹には優しくしていたか。・・・そうした評判があったほうが仕事に有利だから。
ママに似たカメリアを雇ったのも、結局、子育てという厄介事から逃れて、・・・ママの代わりにするつもりだったのかもしれない。
最初は警戒してたけどカメリアはいい人だった。
買い物に行ったとき、私は欲しいものがあっても妹に気を使って我慢することが多かった。彼女はそれに気づいて、・・・こっそり買ってくれた。
私達二人の名前を呼ぶとき、私の名前を最初に読んでくれた。
そんなことと思うかもしれないが、私にとっては初めてのことだったのだ。
カメリアは妹を冷遇するわけでもなかった。優先準備でいっつも上ってわけではないけど、うん。平等に愛情を注いでくれていた。
私も精一杯それに答えてきたつもりだった。
私は、幸せだった。
あの日が来るまでは。
ちょうど一年ほど前だ。私はケットシーの存在を知った。
カメリアは成人するまで生き延びていた、珍しいケットシーだった。そして、私達姉妹にも同じ素質があると光る猫は言ったのだ。
契約によって目が見えるようになるかもしれない。ジャスミンははしゃいでた。私も本の中のものだと思っていた魔法や、かげながら世界を守る正義の味方がいて、それが大好きなカメリアだと知って確かに興奮した。
でも彼女は喜んでなかった。
「今度、しっかり話し合いましょう・・・。」
どう見ても仲間ができることを喜んではいなかった。
数日後、カメリアと私と、ジャスミン。光る猫。そしてあの子・・・鈴蘭。
光る猫は全てを話してくれた。ケットシーのこと、ビーストのこと、最後にはどうなってしまうか。
興奮した様子で身を乗り出して、ケットシーになりたがる妹を、カメリアは強い口調でいさめた。
「ケットシーにならなくても幸せになる方法なんていくらでも有ります。 あなた達はこんな辛い運命を、自ら進んで背負うべきではありません。」
妹はひるんで口をつぐんだ。私はそれを横目にフォローを入れてやった。
「私、戦いは良くわかんないけど、一人で戦うのって大変なことじゃないの?カメリアは一人で戦っていて、さびしくないの?」
「一緒に戦ってくれる仲間は、欲しくないの?」
妹はどんなに辛い条件でも契約しようとする。目が見えるようになることは、この子の夢で、そして妹は私が知る限りでは一番”良い子”だから、きっとビーストからみんなを守ろうとするだろう。なんとなく分かっていたからだ。
「大丈夫ですよ。私にはこの子がいますから。」
カメリアは隣に座っていた子をなでた。カメリアが助けた子で、彼女もケットシーらしい。
撫でられて少し驚いた後、ふにゃりと表情を蕩す彼女を見て、私は胸の奥がチクリと針で刺された様な気がした。
ああ、そうか。この子は彼女の生きがいなんだ・・・。
まだ未練がありそうな妹に、カメリアはちょっとズルイ言い方をした。
「良いですか。約束してください。私のことを好いていてくれるのなら、ケットシーにはならないでください。」
・・・遠い。すぐ向かいに座っているはずなのに。彼女との距離がずいぶん離れてしまった気がする。隣の子は、ぴったり彼女にくっついていた。
私の入る隙間は、なさそうだった。
「わかった。でも、私達がケットシーにならなくても、カメリアは傍にいてくれるよね?友達でいて、くれるよね?」
「もちろんです。」
彼女の柔らかい笑顔を見て、私はもう何もいえなかった。
(悔しいな・・・私じゃダメだったんだ・・・でも、約束だから・・・我慢しなゃ。)
約束―それは私を信用してくれえいるという証なんだ。だから、・・・私はそれに答えないと。
―どうして?どうしてなの・・・?
きっかけは妹の抜け駆けだった。彼女は言いつけを破り、契約したのだ。それは良い。きっとそうなると思っていた。問題はそこじゃない。
「カメリア・・・ジャスミンが契約したのに何でうれしそうなの?・・・なんでそんなに笑ってるの?」
今になって思えば、カメリアはもう疲れてたのかもしれない。だから自分がいなくなっても大切なあのこと一緒にいてくれる友達ができたことを喜んだのだ。
目が見えるようになって、ジャスミンはますます人から好かれるようになった。カメリアや鈴蘭と一緒に、ビーストと戦って・・・大変そうだけど、楽しそうだった。見たことが無いくらい、生き生きとしていた。
私は、ひとりになった。
カメリアも、妬ましいけど可愛いと思っていた妹も、ずっと先に行ってしまった。私も契約して、輪に加えてもらえばいいんだろうか?
(でも、約束だから・・・。)
私は、我慢した。
私はひとりで本を読むことが多くなった。
「昔はジャスミンに読み聞かせてあげてたのにな・・・。」
ひょっとしたら私は心のどこかで永遠に妹の目が見えなければいいと思っていたのかもしれない。・・・最低だ。
「あの子とあってから・・・ずいぶん寂しくなったな・・・。」
あの子・・・鈴蘭ちゃんと。あの子と会ってから、全てが変わってしまった。
「そんなのはただの逆恨みだ。」という自分と、「あいつさえいなければ。」という自分。私の中で二つの思いが渦巻いていた。
(そう、こんなのただの逆恨み・・・私が悪い子だからこんな事思うんだ・・・。)
どうしてこうなったんだろう・・・?どうしていつも妹ばかり・・・!
楽しそうにビースト退治の話をする妹を見るたびに長年押し殺してきた感情がふつふつわいてくるのを感じた。
カメリアが死んだ。珍しく大量に出現したビーストとの戦いで己を燃やし尽くしたのだ。
光る猫に聞いた私はその死に目に間に合うことができた。
きれいな顔だった。何の悔いも無い、満足しきった顔だった。
ブツンッ!!
私の中で、決定的な何かが切れた。
カメリアにとって、レヴィは自分がいなくても大丈夫な子だったのだ。だから身寄りの無い鈴蘭や、幼いジャスミンを、ケットシーの仲間を優先してしまった。
これは神の改変したこの世界でよく見られる、ケットシーと一般人の価値観の差による、ケットシーたちの思い上がりだった。
少なくとも幼いレヴィにとって自分のことを何の気にも留めずに悔いなく消えて逝ったカメリアの死に目は、耐え難い裏切り行為だった。
「なんで自分じゃダメだったんだろう?」
「どうして自分を選んでくれなかったんだろう?」
「何が悪かったんだろう? どうすれば良かったんだろう?」
「あの時約束を破って契約すればよかった?大切な約束なのに?」
「本当は私のことが嫌いだったんだろうか?」
答えの出ない永遠の問いが、出口の見えない堂々巡りが、幼い彼女の心を腐らせていく。
「あなただけは、あなただけが私も、ジャスミンも平等に愛してくれていたのに・・・!!」
「あなただけは違うと思っていたのに・・・どうして?どうしてなの・・・”お母さん”!!」
・・・カメリアはウソツキだった。彼女は鈴蘭ちゃんと、ジャスミンを選んだ。
そう、私はいつも、誰も選んではくれない。・・・誰にも愛されてはいない。
大人は私をみんな愛しているという。パパもママもカメリアも。
ウソツキ。みんなウソツキだ。
穏やかで全てに満足したようなカメリアの死に顔が、ただただ恨めしかった。
カメリアに選ばれた二人が、ただただ妬ましかった。
周りを置いてきぼりにして、自分だけハッピーエンドで終わるケットシーの物語がひたすら憎かった。
(あぁ・・・私の中の愛情が、大切でかけがえないものだと思ってた全てがドロドロに解けて黒く染まっていく。)
「そうか、・・・お前も同じなんだな。」
気づくと暗室に蹲っていた私の前に黒い羽が振ってきた。
「誰・・・?どこから入ったの?光る猫とは違うみたいだけど。」
「俺は悪魔。世界を、ケットシーを、神を憎むもの・・・。孤独と裏切りの辛さを知るもの。」
ボロボロの黒い羽に血の涙を流しているかのような顔をした彼女に私は少しだけ親近感を覚えた。
「ふぅん・・・ねぇ、悪魔さん。」
そうだ、願おう。光る猫なんかじゃなく悪魔に。
「私を、あなたの仲間にしてよ。この世界を壊しちゃえるほどの、悪魔にしてよ。」
私は机の上の本を閉じた。
(私は主人公にはなれない。私は愛されない。私はいつだって悪役だ・・・・。)
(だからいいよね。悪役らしく、悪い奴になってもさ・・・。)
シクラメンと王冠をかぶった海蛇の紋章が現れる。愛憎の悪魔、レヴィが生れ落ちた。
現在の少し前
「これが私が悪魔になった理由だよ。」
二人がこっちに来ると知って私は無償に誰かに話したい気分になってラプちゃんに全てを話した。
「あははは!つまり私は逆恨みヤローってわけ。でもさ、許せないんだよね。どうしても。勝手に思い込んで勝手に消えて、勝手に現れて、勝手に奪っていって・・・。本当、私って何なんだろうね?ひょっとしたら生まれてかなったほうがよかっ―。」
ブスリッ!!ブスブスブスブスブスブスブスブスブスブスブスブスブスブスブスッ!!
ラプちゃんが後ろから私を抱きしめた。驚いて変身した私の棘装束の針が次々と突き刺さって、血がべっとりかかって暖かい。
「なにしてんの?」
ラプちゃんを心配しているんじゃない。本当にわけが分からなかったんだ。
「俺の大切な人も、同じだった。約束をずっと守って、ずっと寂しいのを我慢して、辛いのを堪えて・・・壊れちまった。」
「俺は守りたかった。傍にいてやりたかったのに・・・。できなかった。」
「ラプちゃん。私はその人じゃないんだよ?その人の代わりにしようってんならメーワクなんだけど?」
「そんな偽りの愛を私に向けるならあなたもウソツキと同じ。針千本飲ませるよ?」
「・・・そうだな。俺が勝手にやってるだけだ。おれ自身の心の安定のために、お前を使ってるだけだ。」
「サイテー。」
「・・・ああ。悪魔だからな。」
これだけ針が刺さってるのにちっとも緩める気配がしない。・・・振りほどくことはしなかった。
そして現在。
「あなた達は業をあがなわなければならない。」
レヴィは自身の武器の針を構える。
ケットシーたちは戦う覚悟を決めたようだ。
「悪いが私は契約しなければ死んでいたんだ・・・自身で家を潰されてね・・・それしか道が無かったんだ。」
ネブラが変身し、斧を構える。
「私はそこまで高尚な願いではありません。ただ言い知れぬ明日への不安で契約したのです。」
「しかし、それのせいでとやかく言われる覚えはありません。」
スフィアが変身し、エネルギー球を生成する。
「ケットシーの最後には思うところがある。それは同感だ。君がどう償わせたいかは知らないが・・・お断りするよ。私はまだ生きていたいんでね。」
ジーンがゆっくり席を立つ。
「お姉ちゃん・・・もうやめよう?一緒に帰ろうよ。ね?」
妹はもう迷いはないようだ。
「ふーん。そっかそっか・・・。」
レヴィはゆっくりうなづく。結局こいつらも周りの不幸など気にも留めない。私達悪魔と何が違うというんだ?・・・やっぱりこの世界は壊さないと。
「ならさ・・・。」
「好き勝手な希望を抱いたまま。」
「何の悔いも無く」
「跡形も残さず。」
「死ぬがいい。」
足元にレヴィの紋章が出現する。
「!?」
「あっ・・・!」
「なにっ!?」
「いけない!!」
もう遅い。すでに彼女の領域へご招待だ。ケットシーたちが引き釣り込まれていく
「ウェルカム、マイ・ワールド。」
「楽しみだな・・・。どんな顔で死ぬの?ジャスミン・・・。」
DCD- 未登録ユーザー
8話
”領域”とは魔力によって作られた自分の世界を、下敷きを被せる様に世界に上書きする悪魔達の能力だ。
ラプラスのそれは完全に生活スペースと変わり果ててしまって見るも無残だが、レヴィたちのは違う。
自分の法則によって支配された異空間。完全に自分が勝つための世界なのだ。
「THE WORLD私だけの世界だぜ!!・・・なんてね。」
レヴィは領域に引き釣り込んだ獲物たちを高台から順繰りに見て回る。
スフィア、あいつはすぐ殺したほうがいいね。予知能力は私には効かないけど野放しにしとく理由も無い。
ネブラ、こいつは優先度低いかな。完全に戦闘特化だし。
ジーン、あれはゲノちゃんにまかせよう。
そして・・・ジャスミン!!・・・さぁて、どうしようかな。ただ殺すのもつまらない・・・ここにいない鈴蘭ちゃんのことも考えてゆっくり壊してあげよう
スフィアたちは混乱していた。足元に魔法陣が現れたと思えば、いつのまにか景色ががらりと変わっていたのだ。
まるで御伽噺の絵本の中に閉じ込められたような妙な空間だ
「そんな・・・空間を書き換えた!?」
「瞬間移動とか、テレポートの類じゃない!悪魔・・・アイツは本当に悪魔なのか!?」
「お姉ちゃん・・・。」
「混乱してる場合じゃない。来るぞ。」
ドドドッ!!
危ない・・・ジーンの言葉でとっさに反応して攻撃をかわせた。足元に針が刺さっている。
「-!スフィアさん、後ろ!!」
「うっ・・・!?」
生成したエネルギー球を背後に飛ばした
ガキンッ!!
悪魔が逆手に持った片手剣でそれを切り払う。
「チッ・・・!」
「いつの間に後ろへ・・・!」
「あはっ♪とっくにご存知でしょ?私が意識操作できるってことくらいさぁ―!!」
悪魔の姿がまた消える。
「どこへ・・・!」
予知が封殺されている所為で戦いづらい・・・!
と、ここでジャスミンが動いた。両腕のガントレッドで何も無いところを殴りつける。
ガキッ!バキッ!!ガンッ!!
悪魔の姿が現れた。
「もうやめておねえちゃん!!」
「ジャスミン・・・!本当にいっつも邪魔するんだね・・・!!」
ガントレットマニピュレーターの指が剣を掴む
「放して!!」
悪魔が蹴りを入れてそれを引き剥がす。ジャスミンもあきらめずにまた組み付こうとしたがそれより早く敵の回転切りを食らってしまった。
「ッ・・・!」
「そうか、彼女の探知能力ならアイツの意識操作を破れる!!」
ジーンが加勢に入ろうと拳銃を向けるが発砲するより早く叩き落された。
「くっ・・・!?」
ジーンの腕に何かが刺さっている。でかい針だ。投げナイフのようにそれを投げつけてきたのだ。
「うおおお!!」
ネブラが自分の武器であるハンマーつきのポールアックスを振り下ろす。
「はっ!!そんなデカイだけの武器当たらないよ!!」
空振り、アックスの刃が地面にめり込む。
「うぐぁ!!」
素早い。この一瞬にすでに三発の斬撃をネブラに浴びせていた。
「みんな下がって!!」
スフィアがエネルギー球を複数飛ばして全方位から攻める。放たれるレーザーや玉自体の突撃を悪魔は難なくかわし針と剣を持って打ち落とした。
「あはは!!遅い遅い。ダンスにもならないよ!!」
「ならこれなら・・・!!」
時間差攻撃でダメなら取り囲んでからの同時攻撃だ。全エネルギー球を突撃させる。
「!!」
爆発。爆煙で姿が隠れたが、ジャスミンの探知で位置は分かるはず。来い・・・!
「ははは!!」
爆煙を突っ切って悪魔が突撃してくる。ジャスミンがいち早く動いて迎え撃つ。
両手のガントレットにエネルギーを流して強化し、悪魔の剣と針に対抗する。
「レヴィ!!どうして、どうして悪魔なんかに・・・!」
「あはっ!分からないんだ!!そうだよね。あなたたちケットシーに分かるはずないもんね!!」
ネブラも加勢に入って二人係で接近戦を挑むが、やはり手数では勝てない!すぐに援護を・・・!!
スフィアがエネルギー球に指令を出そうとしたときだった。
(えっ!?)
突如エネルギー球が暴走をしだしたのだ。勝手に動き回り、レーザーで私や銃で援護射撃をしていたジーンを攻撃した。
「グフッ・・・!?」
「あっ・・・どうして!?」
「それはすでに君と”接続済み”だからさ。」
背後で声がした、と同時にスフィアは大きく背中を切られた。
「なっ・・・!?」
「・・・君は!!」
ジーンが二人いる!?いや、この魔力は・・・!
「ゲノちゃん、余計なことしなくてもいいのに?」
ネブラとジャスミンを棘装束の針を伸ばして吹き飛ばしたレヴィが笑いかける。
「悪いね。私にも少し分けてもらうよ。」
ゲノムがジーンに向き直る。
「会いたかったよ。オリジナル。」
「そうか・・・行方不明になったあの・・・!目を放した隙にビーストに食われたとばかり・・・!」
「ふん・・・自分の器になるかもしれないって言うのにずいぶんぞんざいな扱いだね。まあ、黙ってお前に殺されてやる義理もないから悪魔になったのさ。」
「外道から外道が生まれた。それだけの話だ。何も疑問に思うことは無いだろう?」
ゲノムが触手で拘束したジーンに語りかける。
「本当なら真っ先に殺してやるが・・・まずはこっちだ!!」
ゲノムの手にジーンと同じ銃が現れ、スフィアを打ち抜いた。
「がっ!?」
「スフィア!!」
「予知が使えない今の君に教えてあげよう。ここに入った時点で君の死の確定していたのさ。君と接続して得た予知で見えていた。」
「スフィア、これでお前は・・・死んだ!!」
心臓を打ち抜かれたスフィアが倒れる。ネブラが駆け寄ろうとするが・・・
「伏せてろ。」
ネブラが頭から地面に突っ伏した。接続された以上、体の自由ももうゲノムの支配下だ。
「私の半径20m内の相手は全て私の意のままになる。残念だったね。」
「あはは!やっぱえっげつないよねぇゲノちゃん能力。」
レヴィが笑う。足元ではすでに切り伏せられ、針を体中にさされたジャスミンが踏みつけられている。
「さて、オリジナル。次は君だ。私はこの日を・・・心待ちにしていたよ!!」
今度はネブラと同じ斧を生成し、引きずりながらジーンに近づく。
「・・・ふふふ、ツケが回ってきたか・・・。」
ゲノムが斧を振り上げたそのときだった。
ズビィィィィ!!
「うおっ!?」
「な・・・なに!?」
魔力光線だ。
「・・・悪魔。永遠にして魔法なる理の元、われわれリングが貴様らを裁く。」
白いマントのケットシーがいた。手には槍。体は騎士のような甲冑。
「・・・天使か。」
「へぇ・・・。」
ゲノムとレヴィが武器を構えなおす。
「・・・スフィアめ。急所を打ち抜いたつもりだったが、微妙に位置をずらして即死を防いだな。」
死んだケットシーは救済されない。神が救えるのは魔物になる条件に当てはまってしまったものだ。つまり、魔力を使い果たすか、絶望するか。
「さぁ、いきなさい。われらの神の身元へ・・・ここは私が受け持ちます。」
スフィアは敗北必死と見て即死を回避し、全力の魔力光線で領域の壁に穴を開けたのだ。だから天使がやってきた。
「ゲノちゃん?」
「・・・予知した。勝てない相手じゃあない。・・・邪魔したことを後悔させてやるよ。」
「へへ・・・天使なら少しは楽しめるかな?」
ゲノムが触手を指から生成し、レヴィが左手に4本の針を持つ。天使対悪魔。ケットシーたちの運命がかかっていた。
ラプラスのそれは完全に生活スペースと変わり果ててしまって見るも無残だが、レヴィたちのは違う。
自分の法則によって支配された異空間。完全に自分が勝つための世界なのだ。
「THE WORLD私だけの世界だぜ!!・・・なんてね。」
レヴィは領域に引き釣り込んだ獲物たちを高台から順繰りに見て回る。
スフィア、あいつはすぐ殺したほうがいいね。予知能力は私には効かないけど野放しにしとく理由も無い。
ネブラ、こいつは優先度低いかな。完全に戦闘特化だし。
ジーン、あれはゲノちゃんにまかせよう。
そして・・・ジャスミン!!・・・さぁて、どうしようかな。ただ殺すのもつまらない・・・ここにいない鈴蘭ちゃんのことも考えてゆっくり壊してあげよう
スフィアたちは混乱していた。足元に魔法陣が現れたと思えば、いつのまにか景色ががらりと変わっていたのだ。
まるで御伽噺の絵本の中に閉じ込められたような妙な空間だ
「そんな・・・空間を書き換えた!?」
「瞬間移動とか、テレポートの類じゃない!悪魔・・・アイツは本当に悪魔なのか!?」
「お姉ちゃん・・・。」
「混乱してる場合じゃない。来るぞ。」
ドドドッ!!
危ない・・・ジーンの言葉でとっさに反応して攻撃をかわせた。足元に針が刺さっている。
「-!スフィアさん、後ろ!!」
「うっ・・・!?」
生成したエネルギー球を背後に飛ばした
ガキンッ!!
悪魔が逆手に持った片手剣でそれを切り払う。
「チッ・・・!」
「いつの間に後ろへ・・・!」
「あはっ♪とっくにご存知でしょ?私が意識操作できるってことくらいさぁ―!!」
悪魔の姿がまた消える。
「どこへ・・・!」
予知が封殺されている所為で戦いづらい・・・!
と、ここでジャスミンが動いた。両腕のガントレッドで何も無いところを殴りつける。
ガキッ!バキッ!!ガンッ!!
悪魔の姿が現れた。
「もうやめておねえちゃん!!」
「ジャスミン・・・!本当にいっつも邪魔するんだね・・・!!」
ガントレットマニピュレーターの指が剣を掴む
「放して!!」
悪魔が蹴りを入れてそれを引き剥がす。ジャスミンもあきらめずにまた組み付こうとしたがそれより早く敵の回転切りを食らってしまった。
「ッ・・・!」
「そうか、彼女の探知能力ならアイツの意識操作を破れる!!」
ジーンが加勢に入ろうと拳銃を向けるが発砲するより早く叩き落された。
「くっ・・・!?」
ジーンの腕に何かが刺さっている。でかい針だ。投げナイフのようにそれを投げつけてきたのだ。
「うおおお!!」
ネブラが自分の武器であるハンマーつきのポールアックスを振り下ろす。
「はっ!!そんなデカイだけの武器当たらないよ!!」
空振り、アックスの刃が地面にめり込む。
「うぐぁ!!」
素早い。この一瞬にすでに三発の斬撃をネブラに浴びせていた。
「みんな下がって!!」
スフィアがエネルギー球を複数飛ばして全方位から攻める。放たれるレーザーや玉自体の突撃を悪魔は難なくかわし針と剣を持って打ち落とした。
「あはは!!遅い遅い。ダンスにもならないよ!!」
「ならこれなら・・・!!」
時間差攻撃でダメなら取り囲んでからの同時攻撃だ。全エネルギー球を突撃させる。
「!!」
爆発。爆煙で姿が隠れたが、ジャスミンの探知で位置は分かるはず。来い・・・!
「ははは!!」
爆煙を突っ切って悪魔が突撃してくる。ジャスミンがいち早く動いて迎え撃つ。
両手のガントレットにエネルギーを流して強化し、悪魔の剣と針に対抗する。
「レヴィ!!どうして、どうして悪魔なんかに・・・!」
「あはっ!分からないんだ!!そうだよね。あなたたちケットシーに分かるはずないもんね!!」
ネブラも加勢に入って二人係で接近戦を挑むが、やはり手数では勝てない!すぐに援護を・・・!!
スフィアがエネルギー球に指令を出そうとしたときだった。
(えっ!?)
突如エネルギー球が暴走をしだしたのだ。勝手に動き回り、レーザーで私や銃で援護射撃をしていたジーンを攻撃した。
「グフッ・・・!?」
「あっ・・・どうして!?」
「それはすでに君と”接続済み”だからさ。」
背後で声がした、と同時にスフィアは大きく背中を切られた。
「なっ・・・!?」
「・・・君は!!」
ジーンが二人いる!?いや、この魔力は・・・!
「ゲノちゃん、余計なことしなくてもいいのに?」
ネブラとジャスミンを棘装束の針を伸ばして吹き飛ばしたレヴィが笑いかける。
「悪いね。私にも少し分けてもらうよ。」
ゲノムがジーンに向き直る。
「会いたかったよ。オリジナル。」
「そうか・・・行方不明になったあの・・・!目を放した隙にビーストに食われたとばかり・・・!」
「ふん・・・自分の器になるかもしれないって言うのにずいぶんぞんざいな扱いだね。まあ、黙ってお前に殺されてやる義理もないから悪魔になったのさ。」
「外道から外道が生まれた。それだけの話だ。何も疑問に思うことは無いだろう?」
ゲノムが触手で拘束したジーンに語りかける。
「本当なら真っ先に殺してやるが・・・まずはこっちだ!!」
ゲノムの手にジーンと同じ銃が現れ、スフィアを打ち抜いた。
「がっ!?」
「スフィア!!」
「予知が使えない今の君に教えてあげよう。ここに入った時点で君の死の確定していたのさ。君と接続して得た予知で見えていた。」
「スフィア、これでお前は・・・死んだ!!」
心臓を打ち抜かれたスフィアが倒れる。ネブラが駆け寄ろうとするが・・・
「伏せてろ。」
ネブラが頭から地面に突っ伏した。接続された以上、体の自由ももうゲノムの支配下だ。
「私の半径20m内の相手は全て私の意のままになる。残念だったね。」
「あはは!やっぱえっげつないよねぇゲノちゃん能力。」
レヴィが笑う。足元ではすでに切り伏せられ、針を体中にさされたジャスミンが踏みつけられている。
「さて、オリジナル。次は君だ。私はこの日を・・・心待ちにしていたよ!!」
今度はネブラと同じ斧を生成し、引きずりながらジーンに近づく。
「・・・ふふふ、ツケが回ってきたか・・・。」
ゲノムが斧を振り上げたそのときだった。
ズビィィィィ!!
「うおっ!?」
「な・・・なに!?」
魔力光線だ。
「・・・悪魔。永遠にして魔法なる理の元、われわれリングが貴様らを裁く。」
白いマントのケットシーがいた。手には槍。体は騎士のような甲冑。
「・・・天使か。」
「へぇ・・・。」
ゲノムとレヴィが武器を構えなおす。
「・・・スフィアめ。急所を打ち抜いたつもりだったが、微妙に位置をずらして即死を防いだな。」
死んだケットシーは救済されない。神が救えるのは魔物になる条件に当てはまってしまったものだ。つまり、魔力を使い果たすか、絶望するか。
「さぁ、いきなさい。われらの神の身元へ・・・ここは私が受け持ちます。」
スフィアは敗北必死と見て即死を回避し、全力の魔力光線で領域の壁に穴を開けたのだ。だから天使がやってきた。
「ゲノちゃん?」
「・・・予知した。勝てない相手じゃあない。・・・邪魔したことを後悔させてやるよ。」
「へへ・・・天使なら少しは楽しめるかな?」
ゲノムが触手を指から生成し、レヴィが左手に4本の針を持つ。天使対悪魔。ケットシーたちの運命がかかっていた。
DCD- 未登録ユーザー
9話
半年前
「死ね!!死ね!!死ね!!」
黒い悪魔が四体の天使を相手に戦っていた。一体はマントにサーベルの青い天使。一体は鉄鎖鞭を持った赤い天使。大砲を担いだ天使。そして最後に槍を持ち、甲冑に身を包んだ白い天使。
「悪魔の残骸。世界の安定のため、貴様を殺す。」
甲冑の天使が悪魔に死刑宣告を言い渡す。
「・・・フゥゥゥウ!!貴様らは、一匹残さず、俺が殺す。神も殺す。この世界は・・・俺が壊す!!」
黒い悪魔のほうは狂気の宿った目で天使を睨みつける。ボロボロの羽を開き、天に煌く光の玉達に敵意を示す。
「ふっ!」
サーベルを持った青い天使が切りかかる。悪魔はその刀身に対し竜の腕を右手にまとわせて対抗した。
「うおおおお!!」
鋭い鍵爪を供えた竜の手と天使のサーベルが激突する。
ギリッ・・・ギシッ・・・ギチ・・・!!
切り結ぶこと数回、刀身を掴んだ天使の突きを受け止めた悪魔の腕がサーベルの刃をへし折ろうとする。
「くっ・・・!!」
このままでは刀身が砕かれる。サーベル持ちの天使はやむ終えずグリップのトリガーを引き、刀身を射出した。
ズガァァァァ・・・ンッ!!
吹っ飛ばされた悪魔が地面に激突し、ダメ押しとばかりに刀身を爆発させる。
「っ!うわぁぁぁぁぁぁ!!」
直後、爆煙から炎が噴出し、天使を火達磨にして撃墜した。右腕を竜の頭に換装した悪魔が翼で黒煙を吹き払う。
「チィッ!!」
赤い天使の鉄鎖鞭が襲い掛かる。あたるより先に間合いに飛び込み、顔面を殴って地面に叩きつける。
「このっ・・・!!」
大砲を担いでいた天使が散弾を発射してくる。
「・・・!!」
悪魔は体を黒い羽に分解して回避。逆にまとわりついて呪いを流し込んでダメージを与えた。
「-!!」
次は貴様だ!とでもいう様な眼差しで悪魔がミカを睨む。
「この世界の安定のため、貴様は不要!死ね!!」
突っ込んできた悪魔に甲冑の天使は聖杯を翳し、その輝きを持って悪魔を弾き飛ばした。
「くっ・・・!!」
「答えろ・・・!お前らの神はケットシーたちの祈りを肯定し、無かったことにはしない・・・。理解することで救済する。ならば何故、あいつの願いは尊重されなかった?」
悪魔の問いに甲冑の天使は答える。
「尊重していたさ。神は、全てを救うことで彼女の頑張りに報いる気だったのだ。」
「それで自分を消したら意味が無い。そんなこと、・・・あいつが望むわけねぇだろうが・・・。」
「願いが望む形にならなかったからといってなんだというんだ?理想どおりの生き方ができたケットシーがどれだけいると思う?現実との差に絶望し、魔物となるものがほとんどだった。神はそんな私たちの願いを肯定し、最後のよりどころをくれた。お前はそれを壊そうとしているんだ。」
それに、と甲冑の天使が付け加える。
「良かったじゃないか。大儀のための礎となれて。彼女がいなければ神は生まれなかったわけだからな。叛逆などしなければ敬意を示していただろう。」
「大勢のためになら小さな自分など捨てるべきだ。私たちこそが、”正義”だ。」
礎?正義?・・・冗談じゃない。
「なるほど。よくわかった。」
黒い悪魔がゆっくり首をうなづく
「確かに貴様らは正義だ。だが、俺は”悪”だ!!吐き気のする正義も、穴だらけの救済もいらん!!」
「俺の大事な人の願いを踏みにじり、命まで奪ってできた世界の平和などクソ食らえ!!」
「俺は悪魔だ!!神が好き勝手に世界を書き換え、おのれの独善を押し通すなら、俺もそうさせてもらう。」
そのために!
「消えろ!!偽善者!!」
悪魔の背中からその本来の姿である竜の幻影、その全身が姿を現し、火炎を吐きかける。
「死に損ないめっ!!」
甲冑の天使が聖杯を槍の石突と合体させ、強烈な光線を発射する。
「やはり呪いに器を与えてはならない・・・!貴様は消えろ!!」
「それは神を殺してからだっ!!」
悪魔の炎が出力を上げた。無限にわきあがる神への憎しみが、亡き主人への慕情が、甲冑の天使の光線を打ち破った。
「おのれっ!・・・。」
爆発。天使は左半身を吹き飛ばされていた。
「・・・今は、負けを認めよう。だが悪魔の存在はゆるさな・・・ハッ!」
「-!!」
甲冑の天使の背後に何者かが現れた。
振り向いた甲冑の天使の目に映ったのは逆様の顔、赤く燃え盛る原始の炎。
ボオッ!!
燃える瞳に見つめられた甲冑の天使の体が燃え上がった。
「なっ・・・な、ぜ・・・?」
甲冑の天使は驚愕したかのように言葉をつないだあと、燃え尽きた。また天国にリスポーンしているのだろう。
「お前・・・一体?」
「同業者だよ。よろしくねラプラス。」
逆様の状態で天に留まるダークブルーの悪魔がそこにいた。
そして現在
「天使・・・にしてはかなり強そうだね。魔力の反応で分かるよ。」
ゲノムが甲冑の天使に話しかける
「そうやって接続の隙を狙っても無駄ですよ。」
天使は手に持った槍でゲノムの触手を切り払った。
「っ!・・・・・・驚いたな。完全に不可視だし、魔力的サーチにも引っかからないようにしたつもりだが。」
「私は『強化』の魔法使い。感覚を強化すれば空気のわずかな流れで動きぐらい読めます。」
「面白い・・・!その魔法、使ってみたくなった!!」
ゲノムが二丁拳銃を生成し、発砲しながら接近する。
「甘い。」
甲冑の天使が槍を回転させて弾を弾く。
「そっちもね!!」
しかしすでに回りこんだレヴィが背後から首めがけて剣を付きたてようとする。
「気づいてますよ!!」
天使の背中のマントが生き物のように動き、刀身を絡め取った。
「ふんっ!」
槍の石突がレヴィの腹にめり込む。
「お゛っ!?」
レヴィが腹を抑える。
「うっぐ・・・女の子の鳩尾に入れるなんてサイテーね。」
毒づきながらも針を投げつけてゲノムにチャンスを作った。
「いただく!!」
ゲノムの左腕から伸びた5本の触手が一斉に襲い掛かる。
「ちぃ!」
甲冑の天使は上空に逃れる。
「バカめ!!空中では逃げられまい!!」
「さっきの分を返してあげるよ。」
ゲノムの拳銃による射撃とレヴィの針が襲い掛かる。
バチンッ!!
「!!」
「弾かれたっ!?」
魔法障壁だ。いや、これはあの天使のものじゃない!
「そっちに注意が向いてる隙に抜け出せた!スフィアの仇!!」
いつの間にか触手を切断したネブラが斧を振り上げゲノムに振り下ろそうとしていた。
とっさに銃を交差させて受け止めたが、両腕がふさがった。加えて力比べの格好は分が悪い。
「ゲノちゃん!」
「あなたの相手は私です!!」
レヴィの剣と天使の槍が打ち合う。
「このまま押し切ってやる・・・!!」
ネブラが体重をかける。
「ガッデム・・・!!油断したよ。自分の魔法を過信しすぎるのはよくないね。」
「だが残念だ・・・。」
「君は彼女には会えない。」
ドスッ!!
「ガハッ!?」
「ネブラ!!」
「ネブラさん!!」
「だって君も今死んだんだから。」
ゲノムの悪魔の尾がネブラを背後から突き刺した。
「おのれっ卑怯な!!」
激昂した天使が力任せにレヴィを跳ね飛ばし突進してくる。すぐにレヴィが追いつくが、マントを被せて動きを封じた。
「これでっ・・・!!」
天使が聖杯を取り出し、光線を発射した。
「早速使わせてもらおうか。」
しかしネブラからコピーした防御壁に阻まれる。
「まだまだ!!」
しかし天使は強化魔法で出力を上げる。
「オイオイ・・・力づくかよ・・・。」
障壁にひびが入り始めた。
(あっ、ちょっとマズイなこれ。)
突破される。しかし脱出しようにも距離が無さ過ぎる。
ピキ、ピキ、・・・ピシ、ビシ・・・!!
光線が障壁を突破する寸前のことだ。
グルンッ!!
世界が書き換わった。
絵本の中のような風景から、サーカスのテントのような空間へと。
ステージには空中ブランコにぶら下がる王冠付きのサソリの紋章。
「アハハハハ!!苦戦してるみたいだから助けに来たよ。」
そして頭上には逆さづりの悪魔。
「ナハト!・・・だが予知では勝っていた!!」
レヴィの領域にさらに被せる形でナハトが領域を展開したのだ。今ここにいるのは主であるナハトと、天使、ゲノムの三名。残りはまだレヴィの領域にいる。
「そうかい。まあ、勝利がより確実な勝利になっただけさ。」
「そう怒るなよゲノム。私も少し遊びたくなったんだ。天使長さんとね。」
「天使長・・・?」
ゲノムは甲冑の天使を見やる。
「ナハト・・・今はそう名乗っているのですね。」
天使が声を低くしてナハトを睨む
「アハハ!まさかお前ごときが私の後釜なんてね!!天使長のポストは楽しいかい?エヴァ。」
「リリス、何故裏切ったのです!?この星で最初にして、神を除けば最強のケットシーであったあなたが何故悪魔の味方を!?あの方の右腕といっていい実力を持っていたのに!!」
「”世界を良くする為”さ。」
「・・・!?」
「神の救済は不完全だ。だから取りこぼしの無い完璧な救済をもたらす。」
「ふざけたことを!それで何故世界を壊すのに加担する!?」
「”大儀のためなら犠牲は仕方ない”それが神のもたらした正義はそういうことでしょ?」
だ・か・らと、言葉をきりながらナハトはほそくそえむ。
「世界救済のために一度世界を壊して作り直しても、それは仕方ない犠牲だよね?」
「叛逆の悪魔」ラプラスが魔王サタンだとするならば、この「救済の悪魔」ナハトは堕天使ルシファー。
世界のために世界を滅ぼす、羊水まで腐った暗黒の聖母。
「死ね!!死ね!!死ね!!」
黒い悪魔が四体の天使を相手に戦っていた。一体はマントにサーベルの青い天使。一体は鉄鎖鞭を持った赤い天使。大砲を担いだ天使。そして最後に槍を持ち、甲冑に身を包んだ白い天使。
「悪魔の残骸。世界の安定のため、貴様を殺す。」
甲冑の天使が悪魔に死刑宣告を言い渡す。
「・・・フゥゥゥウ!!貴様らは、一匹残さず、俺が殺す。神も殺す。この世界は・・・俺が壊す!!」
黒い悪魔のほうは狂気の宿った目で天使を睨みつける。ボロボロの羽を開き、天に煌く光の玉達に敵意を示す。
「ふっ!」
サーベルを持った青い天使が切りかかる。悪魔はその刀身に対し竜の腕を右手にまとわせて対抗した。
「うおおおお!!」
鋭い鍵爪を供えた竜の手と天使のサーベルが激突する。
ギリッ・・・ギシッ・・・ギチ・・・!!
切り結ぶこと数回、刀身を掴んだ天使の突きを受け止めた悪魔の腕がサーベルの刃をへし折ろうとする。
「くっ・・・!!」
このままでは刀身が砕かれる。サーベル持ちの天使はやむ終えずグリップのトリガーを引き、刀身を射出した。
ズガァァァァ・・・ンッ!!
吹っ飛ばされた悪魔が地面に激突し、ダメ押しとばかりに刀身を爆発させる。
「っ!うわぁぁぁぁぁぁ!!」
直後、爆煙から炎が噴出し、天使を火達磨にして撃墜した。右腕を竜の頭に換装した悪魔が翼で黒煙を吹き払う。
「チィッ!!」
赤い天使の鉄鎖鞭が襲い掛かる。あたるより先に間合いに飛び込み、顔面を殴って地面に叩きつける。
「このっ・・・!!」
大砲を担いでいた天使が散弾を発射してくる。
「・・・!!」
悪魔は体を黒い羽に分解して回避。逆にまとわりついて呪いを流し込んでダメージを与えた。
「-!!」
次は貴様だ!とでもいう様な眼差しで悪魔がミカを睨む。
「この世界の安定のため、貴様は不要!死ね!!」
突っ込んできた悪魔に甲冑の天使は聖杯を翳し、その輝きを持って悪魔を弾き飛ばした。
「くっ・・・!!」
「答えろ・・・!お前らの神はケットシーたちの祈りを肯定し、無かったことにはしない・・・。理解することで救済する。ならば何故、あいつの願いは尊重されなかった?」
悪魔の問いに甲冑の天使は答える。
「尊重していたさ。神は、全てを救うことで彼女の頑張りに報いる気だったのだ。」
「それで自分を消したら意味が無い。そんなこと、・・・あいつが望むわけねぇだろうが・・・。」
「願いが望む形にならなかったからといってなんだというんだ?理想どおりの生き方ができたケットシーがどれだけいると思う?現実との差に絶望し、魔物となるものがほとんどだった。神はそんな私たちの願いを肯定し、最後のよりどころをくれた。お前はそれを壊そうとしているんだ。」
それに、と甲冑の天使が付け加える。
「良かったじゃないか。大儀のための礎となれて。彼女がいなければ神は生まれなかったわけだからな。叛逆などしなければ敬意を示していただろう。」
「大勢のためになら小さな自分など捨てるべきだ。私たちこそが、”正義”だ。」
礎?正義?・・・冗談じゃない。
「なるほど。よくわかった。」
黒い悪魔がゆっくり首をうなづく
「確かに貴様らは正義だ。だが、俺は”悪”だ!!吐き気のする正義も、穴だらけの救済もいらん!!」
「俺の大事な人の願いを踏みにじり、命まで奪ってできた世界の平和などクソ食らえ!!」
「俺は悪魔だ!!神が好き勝手に世界を書き換え、おのれの独善を押し通すなら、俺もそうさせてもらう。」
「俺は悪魔だっ!好き勝手に世界をぶっ壊し、好き勝手に世界を作る!!」
そのために!
「消えろ!!偽善者!!」
悪魔の背中からその本来の姿である竜の幻影、その全身が姿を現し、火炎を吐きかける。
「死に損ないめっ!!」
甲冑の天使が聖杯を槍の石突と合体させ、強烈な光線を発射する。
「やはり呪いに器を与えてはならない・・・!貴様は消えろ!!」
「それは神を殺してからだっ!!」
悪魔の炎が出力を上げた。無限にわきあがる神への憎しみが、亡き主人への慕情が、甲冑の天使の光線を打ち破った。
「おのれっ!・・・。」
爆発。天使は左半身を吹き飛ばされていた。
「・・・今は、負けを認めよう。だが悪魔の存在はゆるさな・・・ハッ!」
「-!!」
甲冑の天使の背後に何者かが現れた。
「アハハハハハハハ!!残念だけど、悪魔は殺させないよ?」
振り向いた甲冑の天使の目に映ったのは逆様の顔、赤く燃え盛る原始の炎。
ボオッ!!
燃える瞳に見つめられた甲冑の天使の体が燃え上がった。
「なっ・・・な、ぜ・・・?」
甲冑の天使は驚愕したかのように言葉をつないだあと、燃え尽きた。また天国にリスポーンしているのだろう。
「お前・・・一体?」
「同業者だよ。よろしくねラプラス。」
逆様の状態で天に留まるダークブルーの悪魔がそこにいた。
そして現在
「天使・・・にしてはかなり強そうだね。魔力の反応で分かるよ。」
ゲノムが甲冑の天使に話しかける
「そうやって接続の隙を狙っても無駄ですよ。」
天使は手に持った槍でゲノムの触手を切り払った。
「っ!・・・・・・驚いたな。完全に不可視だし、魔力的サーチにも引っかからないようにしたつもりだが。」
「私は『強化』の魔法使い。感覚を強化すれば空気のわずかな流れで動きぐらい読めます。」
「面白い・・・!その魔法、使ってみたくなった!!」
ゲノムが二丁拳銃を生成し、発砲しながら接近する。
「甘い。」
甲冑の天使が槍を回転させて弾を弾く。
「そっちもね!!」
しかしすでに回りこんだレヴィが背後から首めがけて剣を付きたてようとする。
「気づいてますよ!!」
天使の背中のマントが生き物のように動き、刀身を絡め取った。
「ふんっ!」
槍の石突がレヴィの腹にめり込む。
「お゛っ!?」
レヴィが腹を抑える。
「うっぐ・・・女の子の鳩尾に入れるなんてサイテーね。」
毒づきながらも針を投げつけてゲノムにチャンスを作った。
「いただく!!」
ゲノムの左腕から伸びた5本の触手が一斉に襲い掛かる。
「ちぃ!」
甲冑の天使は上空に逃れる。
「バカめ!!空中では逃げられまい!!」
「さっきの分を返してあげるよ。」
ゲノムの拳銃による射撃とレヴィの針が襲い掛かる。
バチンッ!!
「!!」
「弾かれたっ!?」
魔法障壁だ。いや、これはあの天使のものじゃない!
「そっちに注意が向いてる隙に抜け出せた!スフィアの仇!!」
いつの間にか触手を切断したネブラが斧を振り上げゲノムに振り下ろそうとしていた。
とっさに銃を交差させて受け止めたが、両腕がふさがった。加えて力比べの格好は分が悪い。
「ゲノちゃん!」
「あなたの相手は私です!!」
レヴィの剣と天使の槍が打ち合う。
「このまま押し切ってやる・・・!!」
ネブラが体重をかける。
「ガッデム・・・!!油断したよ。自分の魔法を過信しすぎるのはよくないね。」
「だが残念だ・・・。」
「君は彼女には会えない。」
ドスッ!!
「ガハッ!?」
「ネブラ!!」
「ネブラさん!!」
「だって君も今死んだんだから。」
ゲノムの悪魔の尾がネブラを背後から突き刺した。
「おのれっ卑怯な!!」
激昂した天使が力任せにレヴィを跳ね飛ばし突進してくる。すぐにレヴィが追いつくが、マントを被せて動きを封じた。
「これでっ・・・!!」
天使が聖杯を取り出し、光線を発射した。
「早速使わせてもらおうか。」
しかしネブラからコピーした防御壁に阻まれる。
「まだまだ!!」
しかし天使は強化魔法で出力を上げる。
「オイオイ・・・力づくかよ・・・。」
障壁にひびが入り始めた。
(あっ、ちょっとマズイなこれ。)
突破される。しかし脱出しようにも距離が無さ過ぎる。
ピキ、ピキ、・・・ピシ、ビシ・・・!!
光線が障壁を突破する寸前のことだ。
グルンッ!!
世界が書き換わった。
絵本の中のような風景から、サーカスのテントのような空間へと。
ステージには空中ブランコにぶら下がる王冠付きのサソリの紋章。
「アハハハハ!!苦戦してるみたいだから助けに来たよ。」
そして頭上には逆さづりの悪魔。
「ナハト!・・・だが予知では勝っていた!!」
レヴィの領域にさらに被せる形でナハトが領域を展開したのだ。今ここにいるのは主であるナハトと、天使、ゲノムの三名。残りはまだレヴィの領域にいる。
「そうかい。まあ、勝利がより確実な勝利になっただけさ。」
「そう怒るなよゲノム。私も少し遊びたくなったんだ。天使長さんとね。」
「天使長・・・?」
ゲノムは甲冑の天使を見やる。
「ナハト・・・今はそう名乗っているのですね。」
天使が声を低くしてナハトを睨む
「アハハ!まさかお前ごときが私の後釜なんてね!!天使長のポストは楽しいかい?エヴァ。」
「リリス、何故裏切ったのです!?この星で最初にして、神を除けば最強のケットシーであったあなたが何故悪魔の味方を!?あの方の右腕といっていい実力を持っていたのに!!」
「”世界を良くする為”さ。」
「・・・!?」
「神の救済は不完全だ。だから取りこぼしの無い完璧な救済をもたらす。」
「ふざけたことを!それで何故世界を壊すのに加担する!?」
「”大儀のためなら犠牲は仕方ない”それが神のもたらした正義はそういうことでしょ?」
だ・か・らと、言葉をきりながらナハトはほそくそえむ。
「世界救済のために一度世界を壊して作り直しても、それは仕方ない犠牲だよね?」
「叛逆の悪魔」ラプラスが魔王サタンだとするならば、この「救済の悪魔」ナハトは堕天使ルシファー。
世界のために世界を滅ぼす、羊水まで腐った暗黒の聖母。
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悪魔図鑑
・叛逆の悪魔ラプラス
容姿:スラリとした体躯に美しい黒い毛、青い瞳を持ち、血涙のような赤い線が顔に入っている。戦闘時に現れる翼は銀河が写り込むが、ボロボロに破れている。他と違ってケットシーから変異した悪魔ではないため戦闘時に衣装を着ることは無い。
固有魔法:不明。
現時点にいたるまで一度も使っていない。そもそもあるのかも分からない。余談だが、彼女の生みの親は時間操作魔法の使い手だった。
紋章:歯車を抱いた王冠をかぶった黒い竜
領域:悪魔達の生活スペースと化してしまったため戦闘では役に立たない。自室は白く無機質な空間に彼岸花が咲き誇り、過ぎ去った主の記憶が映し出されては流れ、消えるを繰り返す。奥には良く整理された主人の墓がある。
武器:自身の正体である竜の幻影を生み出し、その一部を装着、あるいは幻影そのものと連携し戦う。また体を黒い羽に分解することもできる。
目的:神の抹殺と既存世界の破壊
かつて最初の悪魔と呼ばれた少女の願いの残骸。唯一無二の親友を救うため、繰り返す時中で味方を欲した彼女が魔法で作った使い魔が元であり、かつてはもっと雄雄しい姿だった。今の姿はかつての主人の姿を写したもの。しかし流した血涙の跡は消せない。
神による改変後は主人の心の一部に戻っていた。なお眠った状態に近いが意識自体はあった模様。
完全に主人のみに味方であり、害悪と判断すれば彼女の目的の少女にも牙を向く危険性があったため、悪魔になった主人は天使に追い詰められてもラプラスを再び産み落とすことは無かったが、彼女の死により開放された。
報われない主人の幸せ願い、その夢を叶える為に命を懸けて強大な魔物と戦い相打った。新世界での主人の幸せを信じていたからこそ神の理をしぶしぶ受け入れたがそれは裏切られた。愛する人が自分の記憶以外に存在しない孤独は主人の心を蝕み、悪魔となった。神に人として人生を生きる喜びを思い出させるために叛逆した主人は神を奪い返しに着た心無い天使達に殺された。
概念の死は存在の消滅。自身の死は主人が存在したという事実の消滅。だから負けない、負けられない。神を滅ぼすその日まで。
味方にはわりと友好的で常識的。オフの時はいつも何かしらのいたずらを仕掛けられている。烏合の衆に近い悪魔達がまとまっていられるのはラプラスの寛容さの影響もある。戦闘能力は非常に高く、単純な破壊力と戦闘センスなら悪魔中トップ
・救済の悪魔ナハト
容姿:ダークブルーの毛に同じ色のドレスとピエロ風の帽子をを着用。燃え盛るオレンジの瞳を持つ。
固有魔法:「反転」
あらゆる事象を真逆の結果に改竄できる。ただし、反転できる真実には限りがある。使わなくても十分すぎるほど強い。
紋章:空中ブランコに尻尾でぶら下がった王冠をかぶったサソリ
領域:サーカスのテントを模した空間。空中ブランコやトランポリンで飛び回りながら相手を強襲する。
武器:身の丈ほどもあるフォーク(トライデント)また口から火の輪を吐く。
目的:救済を完全なものにすること。世界の破壊はその前段階。
かつてはこの星で最初のケットシーにして、神を除けば史上最強の存在だった。全ての猫は彼女の子孫。契約時の願いは「猫をこの星で最も栄えた種族にして欲しい。」
魔物化した後は伝説にして最強の魔物としてラプラスの主人の前に立ちふさがった。救済後はその実力から天使長の座を得る。
悪魔誕生後は「悪魔を生み出してしまった」という神の救済を不完全なものと感じ、自ら離反。真の救済のために世界に灰をばら撒く悪魔となった。
元は神に次ぐ地位だったため、因果律にわずかながら干渉できる。これを利用し、呪いと”世界を壊したくなるほど強いある感情”を待った相手を擬似的にケットシーにしてから悪魔にする。
趣味は逆さづりの状態から相手を見下ろすこと。
目的達成のために一切のためらいも無く堂々と相手を犠牲にし、一切の後悔も無い。
そうした姿勢から容赦の無さとえげつ無さで悪魔中トップ。
・自己愛の悪魔ゲノム
容姿:黒に黄緑のストライプ。瞳は濃いグリーン。肩が露出したデザインのロングコートに尻尾の露出したズボンを着用。緑に赤い線といった毒々しい柄の塩基配列が衣装にも描かれている。
固有魔法:「接続」
相手を操る魔法。塩基配列を燃した触手を爪や尻尾、背中から生やし、相手に接続する。この状態では不可視であり、魔力による探知にも引っかからない。射程距離は半径20m。接続対象の魔法をコピーしたり、体を操ることができる。一度に複数の相手にも接続でき、一度コピーした魔法は接続を解除しても使える。しかし、集中していないと束縛が弱まる欠点がある。
紋章:糸が切れてもなお立つ王冠を被ったマリオネットと塩基配列
領域:電子的な数字と文字の並んだ空間。接続魔法を強化することで得た魔法を分析するためのもので戦闘で使用する意味は薄い。
武器:緑に赤線の毒々しい色をした塩基配列状の触手。しかし接続対象の武器もコピーできるため実質なんでも。
目的:自分が生きていてもいい世界を作ること。そのためにホンモノや自分のオリジナルを潰すこと。
複製の魔法で作られたクローン。かつてはジーンと名乗っていたが、それは消滅による救済に疑問を持った”本物の”ジーンから移植された記憶だった。
真実を知り、オリジナルへの憎悪とやがて訪れる不完全ゆえの寿命、世界への孤独感と違和感、疎外感で悪魔になった。
半年前までは普通に暮らしていたため微妙に倫理感が残っているフシがある。しかし結局従わないあたりは彼女もやはり悪魔である。
自分の姿が映るものを嫌うため鏡やガラスといった映るものを部屋には置いていない。また食器も木製や陶器を使用している。
ヒマなときは得た魔法の分析か情報端末をいじっていることが多い。また固有魔法の関係でハッキングも得意である。
同じ魔法の被造物であるラプラスには他の仲間よりは友情に近いものを感じているため、ラプラスへのいたずらの主犯は主に彼女。
固有魔法の持つ無限の拡張性、応用力から能力の凶悪さは悪魔一。
・愛憎の悪魔レヴィ
容姿:紫の毛に同じく紫の目を持つ。戦闘時にまとう衣装はシクラメンの花びらをイメージしたデザインの赤いドレスをまとい、腰背部にはリボンが付く。この花びらの内側には棘が仕込まれており、伸ばす、抱きつくなどで相手にダメージを与える。また、頭部にはヤギのようにねじくれた角が生える。
固有魔法:「認識、意識、記憶操作」
認識や記憶を操作して同士討ちをさせたり、記憶を改竄したり、幻覚を見せたりできる。また意識を操作することで認識されない状態になり、諜報活動を行う。その性質上人の頭の中を覗くことができる趣味の悪い能力。自分にもかけれる。戦闘では位置情報を操作して死角に潜り込む等常に有利なポジション取りができる。
なお、探知魔法の使い手である妹とは相性が悪い。
紋章:シクラメンと王冠を被った海蛇。レヴィアタン。
領域:絵本の中のような不可思議な空間。入った相手を幻惑する。
武器:衣装自体の棘と片刃の片手剣。主に逆手で使用する。最大の武器は針。投げナイフのように投擲するタイプと相手に打ち込み、体内で炸裂させる「針千本飲ます」タイプの二種類がある。
目的:ウソツキへの復讐
かつては幼いながら複雑な想いを抱えた子だった。
しかし、母の死、姉としての年相応の甘えが許されない立場、母代わりのカメリアの自分のことを気にも留めない最期、彼女に選ばれたジャスミンと鈴蘭への嫉妬、自分のように周囲を悲しませていることにも気づかず自分達だけハッピーエンドを手にするケットシー達への憎しみ。
いくつもの無情な現実と価値観の相違からくるすれ違いが、ケットシー達が忘れている『業』が彼女を悪魔にした。
妬みながらも愛していた妹や、慕っていたカメリアへの想いも今はねじくれた角と化し、全ての愛情は触れるもの全てを突き刺す棘となった。
裏切りと偽りの愛を許さない。そんなものを向けるウソツキは針千本飲ませる。アイアンメイデンにしがみつく覚悟でもない限り彼女の信頼は勝ち取れない。
趣味は読書。平時はたいていそうしている。また画才もあり、部屋には宿敵である鈴蘭とジャスミンの絵が飾られている。
悪魔になる際に自分は悪に徹すると決めているためゲノムのような良心の呵責はない。仲間内ではなんだかんだで可愛がられている。
呪いの爆弾と称されるほど内に秘めた呪いは途方も無い。悪魔にとって呪いは使える魔力の貯蓄量でもあるため、彼女の継戦能力は悪魔中トップ。
容姿:スラリとした体躯に美しい黒い毛、青い瞳を持ち、血涙のような赤い線が顔に入っている。戦闘時に現れる翼は銀河が写り込むが、ボロボロに破れている。他と違ってケットシーから変異した悪魔ではないため戦闘時に衣装を着ることは無い。
固有魔法:不明。
現時点にいたるまで一度も使っていない。そもそもあるのかも分からない。余談だが、彼女の生みの親は時間操作魔法の使い手だった。
紋章:歯車を抱いた王冠をかぶった黒い竜
領域:悪魔達の生活スペースと化してしまったため戦闘では役に立たない。自室は白く無機質な空間に彼岸花が咲き誇り、過ぎ去った主の記憶が映し出されては流れ、消えるを繰り返す。奥には良く整理された主人の墓がある。
武器:自身の正体である竜の幻影を生み出し、その一部を装着、あるいは幻影そのものと連携し戦う。また体を黒い羽に分解することもできる。
目的:神の抹殺と既存世界の破壊
かつて最初の悪魔と呼ばれた少女の願いの残骸。唯一無二の親友を救うため、繰り返す時中で味方を欲した彼女が魔法で作った使い魔が元であり、かつてはもっと雄雄しい姿だった。今の姿はかつての主人の姿を写したもの。しかし流した血涙の跡は消せない。
神による改変後は主人の心の一部に戻っていた。なお眠った状態に近いが意識自体はあった模様。
完全に主人のみに味方であり、害悪と判断すれば彼女の目的の少女にも牙を向く危険性があったため、悪魔になった主人は天使に追い詰められてもラプラスを再び産み落とすことは無かったが、彼女の死により開放された。
報われない主人の幸せ願い、その夢を叶える為に命を懸けて強大な魔物と戦い相打った。新世界での主人の幸せを信じていたからこそ神の理をしぶしぶ受け入れたがそれは裏切られた。愛する人が自分の記憶以外に存在しない孤独は主人の心を蝕み、悪魔となった。神に人として人生を生きる喜びを思い出させるために叛逆した主人は神を奪い返しに着た心無い天使達に殺された。
概念の死は存在の消滅。自身の死は主人が存在したという事実の消滅。だから負けない、負けられない。神を滅ぼすその日まで。
味方にはわりと友好的で常識的。オフの時はいつも何かしらのいたずらを仕掛けられている。烏合の衆に近い悪魔達がまとまっていられるのはラプラスの寛容さの影響もある。戦闘能力は非常に高く、単純な破壊力と戦闘センスなら悪魔中トップ
・救済の悪魔ナハト
容姿:ダークブルーの毛に同じ色のドレスとピエロ風の帽子をを着用。燃え盛るオレンジの瞳を持つ。
固有魔法:「反転」
あらゆる事象を真逆の結果に改竄できる。ただし、反転できる真実には限りがある。使わなくても十分すぎるほど強い。
紋章:空中ブランコに尻尾でぶら下がった王冠をかぶったサソリ
領域:サーカスのテントを模した空間。空中ブランコやトランポリンで飛び回りながら相手を強襲する。
武器:身の丈ほどもあるフォーク(トライデント)また口から火の輪を吐く。
目的:救済を完全なものにすること。世界の破壊はその前段階。
かつてはこの星で最初のケットシーにして、神を除けば史上最強の存在だった。全ての猫は彼女の子孫。契約時の願いは「猫をこの星で最も栄えた種族にして欲しい。」
魔物化した後は伝説にして最強の魔物としてラプラスの主人の前に立ちふさがった。救済後はその実力から天使長の座を得る。
悪魔誕生後は「悪魔を生み出してしまった」という神の救済を不完全なものと感じ、自ら離反。真の救済のために世界に灰をばら撒く悪魔となった。
元は神に次ぐ地位だったため、因果律にわずかながら干渉できる。これを利用し、呪いと”世界を壊したくなるほど強いある感情”を待った相手を擬似的にケットシーにしてから悪魔にする。
趣味は逆さづりの状態から相手を見下ろすこと。
目的達成のために一切のためらいも無く堂々と相手を犠牲にし、一切の後悔も無い。
そうした姿勢から容赦の無さとえげつ無さで悪魔中トップ。
・自己愛の悪魔ゲノム
容姿:黒に黄緑のストライプ。瞳は濃いグリーン。肩が露出したデザインのロングコートに尻尾の露出したズボンを着用。緑に赤い線といった毒々しい柄の塩基配列が衣装にも描かれている。
固有魔法:「接続」
相手を操る魔法。塩基配列を燃した触手を爪や尻尾、背中から生やし、相手に接続する。この状態では不可視であり、魔力による探知にも引っかからない。射程距離は半径20m。接続対象の魔法をコピーしたり、体を操ることができる。一度に複数の相手にも接続でき、一度コピーした魔法は接続を解除しても使える。しかし、集中していないと束縛が弱まる欠点がある。
紋章:糸が切れてもなお立つ王冠を被ったマリオネットと塩基配列
領域:電子的な数字と文字の並んだ空間。接続魔法を強化することで得た魔法を分析するためのもので戦闘で使用する意味は薄い。
武器:緑に赤線の毒々しい色をした塩基配列状の触手。しかし接続対象の武器もコピーできるため実質なんでも。
目的:自分が生きていてもいい世界を作ること。そのためにホンモノや自分のオリジナルを潰すこと。
複製の魔法で作られたクローン。かつてはジーンと名乗っていたが、それは消滅による救済に疑問を持った”本物の”ジーンから移植された記憶だった。
真実を知り、オリジナルへの憎悪とやがて訪れる不完全ゆえの寿命、世界への孤独感と違和感、疎外感で悪魔になった。
半年前までは普通に暮らしていたため微妙に倫理感が残っているフシがある。しかし結局従わないあたりは彼女もやはり悪魔である。
自分の姿が映るものを嫌うため鏡やガラスといった映るものを部屋には置いていない。また食器も木製や陶器を使用している。
ヒマなときは得た魔法の分析か情報端末をいじっていることが多い。また固有魔法の関係でハッキングも得意である。
同じ魔法の被造物であるラプラスには他の仲間よりは友情に近いものを感じているため、ラプラスへのいたずらの主犯は主に彼女。
固有魔法の持つ無限の拡張性、応用力から能力の凶悪さは悪魔一。
・愛憎の悪魔レヴィ
容姿:紫の毛に同じく紫の目を持つ。戦闘時にまとう衣装はシクラメンの花びらをイメージしたデザインの赤いドレスをまとい、腰背部にはリボンが付く。この花びらの内側には棘が仕込まれており、伸ばす、抱きつくなどで相手にダメージを与える。また、頭部にはヤギのようにねじくれた角が生える。
固有魔法:「認識、意識、記憶操作」
認識や記憶を操作して同士討ちをさせたり、記憶を改竄したり、幻覚を見せたりできる。また意識を操作することで認識されない状態になり、諜報活動を行う。その性質上人の頭の中を覗くことができる趣味の悪い能力。自分にもかけれる。戦闘では位置情報を操作して死角に潜り込む等常に有利なポジション取りができる。
なお、探知魔法の使い手である妹とは相性が悪い。
紋章:シクラメンと王冠を被った海蛇。レヴィアタン。
領域:絵本の中のような不可思議な空間。入った相手を幻惑する。
武器:衣装自体の棘と片刃の片手剣。主に逆手で使用する。最大の武器は針。投げナイフのように投擲するタイプと相手に打ち込み、体内で炸裂させる「針千本飲ます」タイプの二種類がある。
目的:ウソツキへの復讐
かつては幼いながら複雑な想いを抱えた子だった。
しかし、母の死、姉としての年相応の甘えが許されない立場、母代わりのカメリアの自分のことを気にも留めない最期、彼女に選ばれたジャスミンと鈴蘭への嫉妬、自分のように周囲を悲しませていることにも気づかず自分達だけハッピーエンドを手にするケットシー達への憎しみ。
いくつもの無情な現実と価値観の相違からくるすれ違いが、ケットシー達が忘れている『業』が彼女を悪魔にした。
妬みながらも愛していた妹や、慕っていたカメリアへの想いも今はねじくれた角と化し、全ての愛情は触れるもの全てを突き刺す棘となった。
裏切りと偽りの愛を許さない。そんなものを向けるウソツキは針千本飲ませる。アイアンメイデンにしがみつく覚悟でもない限り彼女の信頼は勝ち取れない。
趣味は読書。平時はたいていそうしている。また画才もあり、部屋には宿敵である鈴蘭とジャスミンの絵が飾られている。
悪魔になる際に自分は悪に徹すると決めているためゲノムのような良心の呵責はない。仲間内ではなんだかんだで可愛がられている。
呪いの爆弾と称されるほど内に秘めた呪いは途方も無い。悪魔にとって呪いは使える魔力の貯蓄量でもあるため、彼女の継戦能力は悪魔中トップ。
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10話
ナハトが領域を展開したのとほぼ同時刻、
「あ~あ。横取りされちゃったよ。」
天使の被せたマントから逃れたレヴィがむくれたように言う。
「興ざめってやつだね。・・・あなた達も逃がしてあげるよ。」
レヴィは動けないジャスミンとジーンのほうへゆっくり歩み寄る。
「少しの間だけ命を上げる。お友達の鈴蘭ちゃんにも伝えるといいよ。」
「レヴィっ!!」
「じゃーね。時が来たら、壊してあげるよ。その時まで、バイバイ。」
ジャスミンとジーンはスフィアの家に戻っていた。領域から締め出されたのだ。悪魔は、どうやらあの謎めいた空間と一緒に去って行ったらしい。
「レヴィッ・・・!何で、何で悪魔なんかに・・・。」
「・・・いまは、ネブラの遺体を埋葬してあげよう。」
涙を流すジャスミンをジーンはなだめた。しかし彼女の頭も混乱でいっぱいだった。
(・・・ロストしたあの子が悪魔になっていたとは・・・生命を冒涜したツケがこれかッ!!)
「私自身の手で決着を付くなければならない・・・か。」
ガキッ!ガキッ!ガキッ!ガキッ!!ガキッ!ガキッ!ガキッ!ガキンッ!!
天使の槍と悪魔のフォークが激突を繰り返す。天使の槍捌きは凄まじい物であったが、ナハトはこれを前にしても逆さづりの姿勢を変えることは無かった。
「アハハハハ!!いいよいいよ!ずいぶん槍捌きがうまくなったもんだ!天国で教えてやったときよりはるかに上達してるよ!!けどね!!」
悪魔は空中ブランコを利用して反転、突きをかわされて体制を崩しかけた相手の後頭部に石突をお見舞いした。
「まだまだ甘いね。角砂糖ぐらい甘いよ。アハハ!!」
「くっ!」
天使が振り返りざまに槍をなぎ払ってくるが悪魔は上体を起こすことでこれを回避、むしろ振り切った相手の槍をトライデントで地面に縫い付けてしまった。
「フッ!!」
ナハトが口から火を吐き出す。食らってはひとたまりも無い。天使は槍を放し、横に転がって火炎から逃れる。
天使は聖杯を取り出し、それを剣に変化させた。
「うわああああ!!」
「アハ!無駄なんだよ!!」
ナハトが空中ブランコから飛び上がる。天使が即座に反応し追いかけるが青い悪魔は空中ブランコやいあたるところから出現するトランポリンを駆使して空中を自在に駆け回り攻撃の隙を与えない。天使の斬撃は空しく空を切るばかりでその隙に悪魔はいつの間にか回収したトライデントで剣を弾き、とび蹴りで天使を地面に撃墜した。一方のナハトはまた空中ブランコにつかまり、逆さづりの姿勢に戻っていく。
「まだまだ私には遠く及ばないねエヴァ。ああ、仲間内じゃあミカって呼ばれてるんだっけ?ミカエル気取りならもっと強くなってくれないと。この悪魔を倒せるようにさぁ!天使長の名が泣いてるよ?アハハ!!」
「う、・・・くっ!!」
天使は憎憎しげに頭上の悪魔を睨む。
「-!」
叩き落されていた自分の槍が目の前に落ちている。拾おうと手を伸ばすが、
ドスッ!!
「ッァァァァ!!」
悪魔の投げつけたトライデントが天使の右腕を貫き、縫いつけた。
「ずいぶん拾い安そうな位置に落としてやったろ?お見通しなんだよ。アハハ!!」
「あぁ、それと・・・。」
―私だけに意識をやってて良いのかな?-
「しまっ―!!」
プスリ!
「”接続”完了。お前の魔法、確かにもらったぞ。」
これまで観戦していたゲノムが背後から近づき、接続を済ませた。
「くっ・・・そっ・・・!!」
完敗だ。こうなってはもう何の抵抗もできない。
「アハハ!!安心しなよエヴァ。」
空中ブランコのワイヤーを伸ばし、エヴァと呼ばれた天使の目線の高さまでナハトは降りてきた。
「新世界でまた生んであげるよ。私の娘。」
ボオッ!!
ナハトの火炎がエヴァを焼き尽くした。天国へ強制送還だ。
「ふぅ、ビースト相手よりは楽しかったな。」
ナハトがぶら下がったまま伸びをする。
「『予知』『守護』『探知』『複製』『強化』か・・・。中々面白い能力だ。解析し、応用すればもっといろんなことができるだろう。」
ゲノムは今回の戦闘で入手した魔法をひとつずつ述べながらひとりうなづく。
「しかし、驚いたな。」
「?」
「さっきの天使、キミの娘だったのか。」
「そうだよ?この星の猫はみんな私の子孫。みんな私の子供達さ。」
「私とラプラスは違うぞ?」
ナハトがくるりとまわり、ブランコに腰掛ける。逆様でないこいつを見るのは食事時以外だと初めてだ。
「そうだね。そういうことならキミ達は私の数少ない友達ってことだね。」
「では友情の証に握手と行こうじゃないか!」
「・・・・・・そうか。」
正直こいつのことは苦手だ。最もクレイジーだ。だが、こうして正位置状態で話すということは真剣なんだろう。ゲノムは苦笑いしながらも彼女の握手に応じた。
この語、オリジナルをレヴィの領域に置いてきた為仕留め損なった事に気づくのにもう少しかかる。
「あ~あ。横取りされちゃったよ。」
天使の被せたマントから逃れたレヴィがむくれたように言う。
「興ざめってやつだね。・・・あなた達も逃がしてあげるよ。」
レヴィは動けないジャスミンとジーンのほうへゆっくり歩み寄る。
「少しの間だけ命を上げる。お友達の鈴蘭ちゃんにも伝えるといいよ。」
「レヴィっ!!」
「じゃーね。時が来たら、壊してあげるよ。その時まで、バイバイ。」
ジャスミンとジーンはスフィアの家に戻っていた。領域から締め出されたのだ。悪魔は、どうやらあの謎めいた空間と一緒に去って行ったらしい。
「レヴィッ・・・!何で、何で悪魔なんかに・・・。」
「・・・いまは、ネブラの遺体を埋葬してあげよう。」
涙を流すジャスミンをジーンはなだめた。しかし彼女の頭も混乱でいっぱいだった。
(・・・ロストしたあの子が悪魔になっていたとは・・・生命を冒涜したツケがこれかッ!!)
「私自身の手で決着を付くなければならない・・・か。」
ガキッ!ガキッ!ガキッ!ガキッ!!ガキッ!ガキッ!ガキッ!ガキンッ!!
天使の槍と悪魔のフォークが激突を繰り返す。天使の槍捌きは凄まじい物であったが、ナハトはこれを前にしても逆さづりの姿勢を変えることは無かった。
「アハハハハ!!いいよいいよ!ずいぶん槍捌きがうまくなったもんだ!天国で教えてやったときよりはるかに上達してるよ!!けどね!!」
悪魔は空中ブランコを利用して反転、突きをかわされて体制を崩しかけた相手の後頭部に石突をお見舞いした。
「まだまだ甘いね。角砂糖ぐらい甘いよ。アハハ!!」
「くっ!」
天使が振り返りざまに槍をなぎ払ってくるが悪魔は上体を起こすことでこれを回避、むしろ振り切った相手の槍をトライデントで地面に縫い付けてしまった。
「フッ!!」
ナハトが口から火を吐き出す。食らってはひとたまりも無い。天使は槍を放し、横に転がって火炎から逃れる。
天使は聖杯を取り出し、それを剣に変化させた。
「うわああああ!!」
「アハ!無駄なんだよ!!」
ナハトが空中ブランコから飛び上がる。天使が即座に反応し追いかけるが青い悪魔は空中ブランコやいあたるところから出現するトランポリンを駆使して空中を自在に駆け回り攻撃の隙を与えない。天使の斬撃は空しく空を切るばかりでその隙に悪魔はいつの間にか回収したトライデントで剣を弾き、とび蹴りで天使を地面に撃墜した。一方のナハトはまた空中ブランコにつかまり、逆さづりの姿勢に戻っていく。
「まだまだ私には遠く及ばないねエヴァ。ああ、仲間内じゃあミカって呼ばれてるんだっけ?ミカエル気取りならもっと強くなってくれないと。この悪魔を倒せるようにさぁ!天使長の名が泣いてるよ?アハハ!!」
「う、・・・くっ!!」
天使は憎憎しげに頭上の悪魔を睨む。
「-!」
叩き落されていた自分の槍が目の前に落ちている。拾おうと手を伸ばすが、
ドスッ!!
「ッァァァァ!!」
悪魔の投げつけたトライデントが天使の右腕を貫き、縫いつけた。
「ずいぶん拾い安そうな位置に落としてやったろ?お見通しなんだよ。アハハ!!」
「あぁ、それと・・・。」
―私だけに意識をやってて良いのかな?-
「しまっ―!!」
プスリ!
「”接続”完了。お前の魔法、確かにもらったぞ。」
これまで観戦していたゲノムが背後から近づき、接続を済ませた。
「くっ・・・そっ・・・!!」
完敗だ。こうなってはもう何の抵抗もできない。
「アハハ!!安心しなよエヴァ。」
空中ブランコのワイヤーを伸ばし、エヴァと呼ばれた天使の目線の高さまでナハトは降りてきた。
「新世界でまた生んであげるよ。私の娘。」
ボオッ!!
ナハトの火炎がエヴァを焼き尽くした。天国へ強制送還だ。
「ふぅ、ビースト相手よりは楽しかったな。」
ナハトがぶら下がったまま伸びをする。
「『予知』『守護』『探知』『複製』『強化』か・・・。中々面白い能力だ。解析し、応用すればもっといろんなことができるだろう。」
ゲノムは今回の戦闘で入手した魔法をひとつずつ述べながらひとりうなづく。
「しかし、驚いたな。」
「?」
「さっきの天使、キミの娘だったのか。」
「そうだよ?この星の猫はみんな私の子孫。みんな私の子供達さ。」
「私とラプラスは違うぞ?」
ナハトがくるりとまわり、ブランコに腰掛ける。逆様でないこいつを見るのは食事時以外だと初めてだ。
「そうだね。そういうことならキミ達は私の数少ない友達ってことだね。」
「では友情の証に握手と行こうじゃないか!」
「・・・・・・そうか。」
正直こいつのことは苦手だ。最もクレイジーだ。だが、こうして正位置状態で話すということは真剣なんだろう。ゲノムは苦笑いしながらも彼女の握手に応じた。
この語、オリジナルをレヴィの領域に置いてきた為仕留め損なった事に気づくのにもう少しかかる。
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11話
ザシュ!ザシュッ!!
「ふ~んふ~ふふ~ん♪」
レザーアーマーを中心に一部に無骨な金属のアーマーを装着した、狩人じみた外見の豹柄のケットシーが武器に何かを彫っていた。
「MIKIっと。よしよし、これで99本目~♪」
名前と思われるそれを彫り終わったそのケットシーは近くの地面に落ちていたナイフを拾い、先ほどまで名前を彫っていた大剣を担ぐ。
「さぁーて、そろそろ次の町に行こうかな。」
ケットシーは鼻歌交じりにバイクに跨り、その場を後にした。・・・・・・無残に切り殺されたケットシーの死体を置いて。
「「「マッド・ブローム?」」」
ナハトの口から出たその名前にラプラス達は首をかしげる。
「かなり無理矢理で強引に訳せば狂い咲き・・・確かに変わった通称だがそいつがどうしたんだい?」
情報端末をいじっていたゲノムが顔を上げる。
「まだ私が天国にいたころからあることで有名なケットシーでね。」
「もったいぶってないで早く教えろ。その狂い咲きがなんだ?」
「まあまあ、あせるなよラプラス。そいつは十年以上生き延びてる超ベテランのケットシーさ。有象無象の雑魚天使よりよっぽど強いだろうねぇ。」
「超ベテラン・・・か。そいつがこっちに向かってるのか?」
「ああ、そのことでレヴィやゲノムにはいっておいたほうがいいかと思って。」
「?」
「どういう意味だ?」
「そいつが有名なのは長生きだからじゃない・・・・・・奴はね、コレクターなんだ。」
「マニア?」
ますます要領を得ないといった様子の同胞達にナハトは話す。
「あいつはケットシー狩りをしてるのさ。もう、10年近くあっちこっちを放浪して、何匹も殺しては生き延びてるよ。」
「へぇ・・・私が言うのもなんだけど狂ってるんじゃない?ソイツ。」
「積極的にケットシーを殺して回ってるって事か・・・ん?だがケットシー狩りが目的ならコレクターというより殺人マニアでは?」
「いや、あってるよ。アイツは殺した相手の武器を持ち帰ってコレクションするのさ。ついでに自分の獲物に殺した相手の名前を彫る。」
「悪魔になっていうのもなんだが、ジーザス。なんて野郎だ・・・。」
「あはっ♪なにそれ、シリアルサイコキラーって奴?そんなアッブナイ奴でも天国いけるのかなぁ?」
ドン引きといった具合のゲノムと楽しそうにはしゃぐレヴィ。
「・・・・・・行けるだろうな。神はそういう奴だ。」
ラプラスは言う。そう、神はそういう奴だ。・・・天使共は知らんがな。
「それでナッちゃん。ソイツと私やゲノちゃんがどう関係してるの?」
「言っただろう?近くに来てるって。ツバ付けたエモノを横取りされたくは無いでしょ?二人とも。」
「「・・・・・・!!」」
―星見町、某所―
「・・・アディオス。私の未来。」
ジーンはこれまでの研究データを全て廃棄していた。クローンを作ることはもう二度とない。
彼女は元々余命いくばくも無い命だった。心臓に大きな爆弾を抱えていたのだ。しかし、ドナーが見つからなかった。彼女の願い事は「病気の完治」
しかし、ケットシーの寿命も決して長いわけではない。だから延命の道を模索したのだ。それが倫理に反するものだと知ってはいたが。
「どうあがいても”死”からは逃れられない・・・か。」
神の書き換えた世界で、ケットシーの多くはやむにやまれぬ事情とか、願ったことを後悔しないと絶対に言い切れるような強い子以外は、契約することは少なくなっていた。だからこそ多くのケットシーは人生に悔いを残さないように、精一杯生きようとする・・・俗に言う『太く短く』な生き方をするものが多かった。
だが、誰もがそうあれる訳ではない。消滅による救済などいらない・・・ただ生きていたかったのだ。
「だが、・・・。」
その結果が悪魔となったもう一人の自分。あの時現れた天使と呼ばれる存在が円の神の使者ならば、悪魔とはその名の通り世界に害悪をもたらすだろう。
「私があの子を倒さなければ・・・生み出したものの責任として、そして彼女と私自身を救うために・・・。」
―風霧市内、ジャスミン宅―
「そう、レヴィ・・・あなたのお姉さんが・・・。」
鈴蘭はジャスミンにスフィア宅襲撃の一軒を聞き終えたところだった。
「うん・・・。レヴィ・・・どうして・・・。」
明るさが命の親友はひどく落ち込んでいた。確かに、双子の姉が悪魔を名乗り、明らかに異質な力を振るって、仲間を殺し、自分に攻撃を仕掛け、あまつさえ全てのケットシーに復讐するなどと言い出したのだ。無理も無い。
「悪魔・・・それに天使・・・円の神様を巡って何かが起きているってことよね?あなたのお姉さんは、だまされてるのかも。うん・・・きっとそうよ。」
鈴蘭はレヴィのことは詳しくはしらない。カメリアが存命だったころ、ジャスミンとカメリアから話で時々聞くくらいで、実際に一度会ってからも、なんと言うか、避けられている様な気はしていたから、あまり話すことは無かったのだ。
「でも、レヴィ・・・すごく悲しそうで、すごく私のこと、憎んでいるみたいだった・・・。」
「・・・ジャスミン。私はあなたのお姉さんのことは良く知らないけど・・・。姉妹で争うなんて・・・私も力を貸すわ。なんとか、お姉さんを元に戻そう。」
「だから、教えて。あなたのお姉さんのこと・・・。」
「うん・・・!」
―風霧市内、某所―
「ふ~ん、へ~・・・なるほど、なるほど・・・。」
ジャスミンの家から少し離れた場所に一台のバイクが止まっていた。それに跨っていた。豹柄の猫は手にして双眼鏡で中の様子を見ていた。
「この町のケットシーはあの子達か・・・。ふふ、さあ狩りを始めよう・・・!!」
「ふ~んふ~ふふ~ん♪」
レザーアーマーを中心に一部に無骨な金属のアーマーを装着した、狩人じみた外見の豹柄のケットシーが武器に何かを彫っていた。
「MIKIっと。よしよし、これで99本目~♪」
名前と思われるそれを彫り終わったそのケットシーは近くの地面に落ちていたナイフを拾い、先ほどまで名前を彫っていた大剣を担ぐ。
「さぁーて、そろそろ次の町に行こうかな。」
ケットシーは鼻歌交じりにバイクに跨り、その場を後にした。・・・・・・無残に切り殺されたケットシーの死体を置いて。
「「「マッド・ブローム?」」」
ナハトの口から出たその名前にラプラス達は首をかしげる。
「かなり無理矢理で強引に訳せば狂い咲き・・・確かに変わった通称だがそいつがどうしたんだい?」
情報端末をいじっていたゲノムが顔を上げる。
「まだ私が天国にいたころからあることで有名なケットシーでね。」
「もったいぶってないで早く教えろ。その狂い咲きがなんだ?」
「まあまあ、あせるなよラプラス。そいつは十年以上生き延びてる超ベテランのケットシーさ。有象無象の雑魚天使よりよっぽど強いだろうねぇ。」
「超ベテラン・・・か。そいつがこっちに向かってるのか?」
「ああ、そのことでレヴィやゲノムにはいっておいたほうがいいかと思って。」
「?」
「どういう意味だ?」
「そいつが有名なのは長生きだからじゃない・・・・・・奴はね、コレクターなんだ。」
「マニア?」
ますます要領を得ないといった様子の同胞達にナハトは話す。
「あいつはケットシー狩りをしてるのさ。もう、10年近くあっちこっちを放浪して、何匹も殺しては生き延びてるよ。」
「へぇ・・・私が言うのもなんだけど狂ってるんじゃない?ソイツ。」
「積極的にケットシーを殺して回ってるって事か・・・ん?だがケットシー狩りが目的ならコレクターというより殺人マニアでは?」
「いや、あってるよ。アイツは殺した相手の武器を持ち帰ってコレクションするのさ。ついでに自分の獲物に殺した相手の名前を彫る。」
「悪魔になっていうのもなんだが、ジーザス。なんて野郎だ・・・。」
「あはっ♪なにそれ、シリアルサイコキラーって奴?そんなアッブナイ奴でも天国いけるのかなぁ?」
ドン引きといった具合のゲノムと楽しそうにはしゃぐレヴィ。
「・・・・・・行けるだろうな。神はそういう奴だ。」
ラプラスは言う。そう、神はそういう奴だ。・・・天使共は知らんがな。
「それでナッちゃん。ソイツと私やゲノちゃんがどう関係してるの?」
「言っただろう?近くに来てるって。ツバ付けたエモノを横取りされたくは無いでしょ?二人とも。」
「「・・・・・・!!」」
―星見町、某所―
「・・・アディオス。私の未来。」
ジーンはこれまでの研究データを全て廃棄していた。クローンを作ることはもう二度とない。
彼女は元々余命いくばくも無い命だった。心臓に大きな爆弾を抱えていたのだ。しかし、ドナーが見つからなかった。彼女の願い事は「病気の完治」
しかし、ケットシーの寿命も決して長いわけではない。だから延命の道を模索したのだ。それが倫理に反するものだと知ってはいたが。
「どうあがいても”死”からは逃れられない・・・か。」
神の書き換えた世界で、ケットシーの多くはやむにやまれぬ事情とか、願ったことを後悔しないと絶対に言い切れるような強い子以外は、契約することは少なくなっていた。だからこそ多くのケットシーは人生に悔いを残さないように、精一杯生きようとする・・・俗に言う『太く短く』な生き方をするものが多かった。
だが、誰もがそうあれる訳ではない。消滅による救済などいらない・・・ただ生きていたかったのだ。
「だが、・・・。」
その結果が悪魔となったもう一人の自分。あの時現れた天使と呼ばれる存在が円の神の使者ならば、悪魔とはその名の通り世界に害悪をもたらすだろう。
「私があの子を倒さなければ・・・生み出したものの責任として、そして彼女と私自身を救うために・・・。」
―風霧市内、ジャスミン宅―
「そう、レヴィ・・・あなたのお姉さんが・・・。」
鈴蘭はジャスミンにスフィア宅襲撃の一軒を聞き終えたところだった。
「うん・・・。レヴィ・・・どうして・・・。」
明るさが命の親友はひどく落ち込んでいた。確かに、双子の姉が悪魔を名乗り、明らかに異質な力を振るって、仲間を殺し、自分に攻撃を仕掛け、あまつさえ全てのケットシーに復讐するなどと言い出したのだ。無理も無い。
「悪魔・・・それに天使・・・円の神様を巡って何かが起きているってことよね?あなたのお姉さんは、だまされてるのかも。うん・・・きっとそうよ。」
鈴蘭はレヴィのことは詳しくはしらない。カメリアが存命だったころ、ジャスミンとカメリアから話で時々聞くくらいで、実際に一度会ってからも、なんと言うか、避けられている様な気はしていたから、あまり話すことは無かったのだ。
「でも、レヴィ・・・すごく悲しそうで、すごく私のこと、憎んでいるみたいだった・・・。」
「・・・ジャスミン。私はあなたのお姉さんのことは良く知らないけど・・・。姉妹で争うなんて・・・私も力を貸すわ。なんとか、お姉さんを元に戻そう。」
「だから、教えて。あなたのお姉さんのこと・・・。」
「うん・・・!」
―風霧市内、某所―
「ふ~ん、へ~・・・なるほど、なるほど・・・。」
ジャスミンの家から少し離れた場所に一台のバイクが止まっていた。それに跨っていた。豹柄の猫は手にして双眼鏡で中の様子を見ていた。
「この町のケットシーはあの子達か・・・。ふふ、さあ狩りを始めよう・・・!!」
DCD- 未登録ユーザー
12話
―風霧市、ジャスミン宅―
「私の笑顔は、お姉ちゃんがくれたんだ。」
「笑顔を?」
「うん。本当にちっちゃかったころ、目の見えない私に顔を触らせて、笑顔の仕方を教えてくれたんだ。」
「そうなんだ・・・大事にしてくれてたのね。」
「うん・・・目の見えない私のために良く本を読んでくれてた。・・・レヴィはいつも助けてくれた。大好きだった。」
(本当に姉が好きだったのね。)
鈴蘭は思う。
(いつも助けてくれた・・・か。)
私もカメリアに助けられてばかりだった。一年と少し前。私はビーストに家族ぐるみで襲われた。親は殺され、私も死ぬんだと思った。
それを助けてくれたのがカメリアだった。優しくてかっこいい彼女のあこがれて、私はケットシーになった。でも、カメリアにとってそれは、うれしいことじゃなかったみたい。
「それにカメリアにもすっごく懐いてた。ママが死んで、レヴィは悲しそうだったから・・・。」
「カメリア・・・。」
私達にとって師であり、親といっても良い、特別で、神聖な存在。彼女もカメリアに懐いていたのか。
鈴蘭の中にはひとつ、後ろめたいことがあった。
今になって分かるが、ジャスミンが加わるまで、カメリアは戦いのときはいつも私をかばっていた。感情石も私に優先的に使っていたし・・・。私が甘えすぎていたから、カメリアの死は早まったのだろうか・・・?彼女の優しさに甘えるばかりに、いびつな螺旋を生んでいたのかもしれない。そんな後悔である。
「それが・・・今は悪魔に?」
もしかしたら、彼女を悪魔にしたのは・・・。いや、そんなはずは―!
「・・・レヴィが助けてくれたから、私は笑っていられるの。あんな悲しそうなレヴィ、ほうっておけないよ。」
そうだ・・・そうだとしてもだ。だからこそ彼女を救うのが、私の贖罪かもしれない。
(それに、ジャスミン。この子がこんなに弱ってるのは始めて見たわ・・・。)
「そうだね。カメリアも、きっとそうして欲しいはずだよ。」
「お姉さんを助けよう。そして・・・全てが終わったら、私も友達になりたい・・・。」
「うん。そうしよう・・・みんなで仲良く。それが一番だもん・・・。」
―アスノ町内、ラプラスの領域―
「でさぁ、結局そのマッド・ブロームとかいうやつは今どこにいるの?ゲノちゃん、こないだ予知魔法奪ったでしょ?それで見えないの?」
私は少しイラついたような声で聞く。あの子達に手は出させない。例えラプちゃんたちでも。
「あぁ、あれか・・・・・・解析してみたらなんというか・・・いうほど便利な能力じゃなかったな。」
こないだ戦ったスフィアとか言う奴の予知なら見つかるかもしれない。でもゲノちゃんは期待してなさそうだった。
「どういうこと?」
「あの魔法は、遠くの未来ほど正確さがなくなるんだ。変わる要素が増える所為だろうね。」
ゲノムは軽く予知を発動させる
「逆に近い未来なら分かり易い。例えば、・・・そう、今からナハトがくしゃみをして、暴発した火炎でラプラスの頭が燃える・・・とか。」
「何っ!?」
「ヘックション!!」
ボォッ!!
「このようにね。」
「・・・・・・。」
「あはっ♪本当にそうなった!ラプちゃん黒コゲ~!!」
「アハハ!ごめんごめん。」
「・・・・・・あとで覚えてろ。」
ラプちゃんがナッちゃんを睨む。
「と、まあ戦闘時に奇襲を防ぐくらいしか役立たないかな。ああでも、探知と組み合わせれば強いかもしれない。幸い私たち悪魔の魔力は無限にあるしね。」
肩をすくめて言うゲノちゃん。でも少し楽しそう。ラプちゃんへのいたずらのバリエーションはこれからも増えるんだろうなぁ・・・。
「それで本題に戻るけど、そのシリアルサイコキラーの居場所は分からないの?」
「残念ながら。探知魔法も射程はそう長くないからね。隠れてる奴や敵の配置を目を使わずに知れるのはいいけど。」
「目を使わずに・・・ね。」
目が見えるようになるのを願ったのに使わなくても知れる・・・か。まあいいや。
「・・・?まあ、とにかく奴の情報は魔法じゃなくこっちで調べてみるよ。」
ゲノちゃんが情報端末をちらつかせる。ネットから画像検索でもするのか・・・いや、ゲノちゃんのことだから衛星にハッキングでも仕掛けて見つけ出す気かな?
(まあ、あの子達のところに来ればすぐ分かるんだけどね。)
レヴィは自分の角をつつく。
私の魔法は精神干渉系。このねじくれた角は私の魔法とリンクしていて、意識を集中すれば鈴蘭ちゃんとジャスミンのことがぼんやりとだが分かる。
何を考えてるのかとか、気分が良いか悪いかとか本当にぼんやりとだけど。
あの二人だけは特別だ。あの子達を壊すのは私。それを誰にも邪魔させない。
(・・・・・・!へぇ・・・。)
どうやら私のことを話してるらしい。ふぅーん。笑顔を教えてあげたこと、覚えてたんだ。ジャスミン。・・・私が悲しそう?・・・やっぱり何も分かってないんだなぁ・・・。
鈴蘭ちゃんは・・・妹と、ついでに私を心配してるのか。ふぅん・・・妹よりはこっち側に近い子だよね。前から思ってたけど。憎くて仕方ない相手の癖に、妹より私の考えが少しだけ理解できてるなんて・・・やっぱりキライだわ。
・・・贖罪?・・・あはっ♪いまさら何言ってんだろこの子。・・・でも、本当に妹を心配してるなぁ・・・私よりずっと仲良さそう。生意気。
友達になりたい?私と鈴蘭ちゃんが?・・・・・・ありえないね。
(私は物語の”悪役”あの子達は”主人公”。私の友達は悪魔だけ。串刺しになってでも私と友達になりたい奴なんて、正気の人たちの中にいるはず無いもの。)
レヴィは愛憎の悪魔。悪魔になってもその深い愛は変わらないが、その棘に刺されることを厭わぬ者にしか心を開かない。
ラプちゃんは私を抱きしめてくれた。まあ、一番に思ってくれてるわけじゃあないから愛する人にはならない。でも、だからこそ、”友達”だといえる。それくらいがちょうどいい。
ゲノちゃんはなんだかんだで気にかけてはくれる。
ナッちゃんはイカレてるけど、良く遊んでくれるから嫌いじゃない。
そう、悪魔になったことに後悔など無い。あのまま黒く腐り果てていたら、私はビーストのエサになっていただろう。いや、そうでなくてもあのまま生きるのなんてゴメンだ。
(私は悪に徹する。そう、どこまでも・・・ね。)
「・・・分かったぞ!」
ゲノちゃんが情報端末から顔を上げた。
「レヴィ、奴の狙いはキミの妹とそのお友達のようだね。」
「・・・!」
その言葉に私は立つ。
「・・・・・・行くのか?」
腕組みをしながらラプちゃんが尋ねてくる。
「あいつらを、助けるのか?」
「・・・とめないで。」
(私は悪に徹する。あの子達を壊していいのは私だけ。それを邪魔するなら、あの子達に手を出すのなら、誰であろうと許さない。)
私はラプちゃんの領域を飛び出し、風霧市に向かった。
「・・・ゲノム。念のためだ。こっそり付いて行け。」
飛び出していったレヴィを見送り、ラプラスはゲノムにそう告げる。
「彼女の実力なら問題ないと思うが?」
「・・・向こうが悪魔討伐を優先して手を組むことだってありうる。」
「素直に心配だといえばいいのに。・・・わかったよ。」
悪魔達は神の理を蹂躙し、世界を呪いで満たし、やがて滅ぼす。それは、歴史の中で流されてきた全ての人々と、ケットシーの涙、そして彼女達が願いにかけてきた思いを踏みにじる背徳。
だが、
本来、己が欲望のまま動く烏合の衆ではある悪魔達にも”結束”確かには生まれていた。他者から見れば傷の舐め合いだと揶揄されるかもしれないが・・・これだけは、悪魔達をつなぐこの”絆”だけは、誰にも覆せない”真実”であった。
「私の笑顔は、お姉ちゃんがくれたんだ。」
「笑顔を?」
「うん。本当にちっちゃかったころ、目の見えない私に顔を触らせて、笑顔の仕方を教えてくれたんだ。」
「そうなんだ・・・大事にしてくれてたのね。」
「うん・・・目の見えない私のために良く本を読んでくれてた。・・・レヴィはいつも助けてくれた。大好きだった。」
(本当に姉が好きだったのね。)
鈴蘭は思う。
(いつも助けてくれた・・・か。)
私もカメリアに助けられてばかりだった。一年と少し前。私はビーストに家族ぐるみで襲われた。親は殺され、私も死ぬんだと思った。
それを助けてくれたのがカメリアだった。優しくてかっこいい彼女のあこがれて、私はケットシーになった。でも、カメリアにとってそれは、うれしいことじゃなかったみたい。
「それにカメリアにもすっごく懐いてた。ママが死んで、レヴィは悲しそうだったから・・・。」
「カメリア・・・。」
私達にとって師であり、親といっても良い、特別で、神聖な存在。彼女もカメリアに懐いていたのか。
鈴蘭の中にはひとつ、後ろめたいことがあった。
今になって分かるが、ジャスミンが加わるまで、カメリアは戦いのときはいつも私をかばっていた。感情石も私に優先的に使っていたし・・・。私が甘えすぎていたから、カメリアの死は早まったのだろうか・・・?彼女の優しさに甘えるばかりに、いびつな螺旋を生んでいたのかもしれない。そんな後悔である。
「それが・・・今は悪魔に?」
もしかしたら、彼女を悪魔にしたのは・・・。いや、そんなはずは―!
「・・・レヴィが助けてくれたから、私は笑っていられるの。あんな悲しそうなレヴィ、ほうっておけないよ。」
そうだ・・・そうだとしてもだ。だからこそ彼女を救うのが、私の贖罪かもしれない。
(それに、ジャスミン。この子がこんなに弱ってるのは始めて見たわ・・・。)
「そうだね。カメリアも、きっとそうして欲しいはずだよ。」
「お姉さんを助けよう。そして・・・全てが終わったら、私も友達になりたい・・・。」
「うん。そうしよう・・・みんなで仲良く。それが一番だもん・・・。」
―アスノ町内、ラプラスの領域―
「でさぁ、結局そのマッド・ブロームとかいうやつは今どこにいるの?ゲノちゃん、こないだ予知魔法奪ったでしょ?それで見えないの?」
私は少しイラついたような声で聞く。あの子達に手は出させない。例えラプちゃんたちでも。
「あぁ、あれか・・・・・・解析してみたらなんというか・・・いうほど便利な能力じゃなかったな。」
こないだ戦ったスフィアとか言う奴の予知なら見つかるかもしれない。でもゲノちゃんは期待してなさそうだった。
「どういうこと?」
「あの魔法は、遠くの未来ほど正確さがなくなるんだ。変わる要素が増える所為だろうね。」
ゲノムは軽く予知を発動させる
「逆に近い未来なら分かり易い。例えば、・・・そう、今からナハトがくしゃみをして、暴発した火炎でラプラスの頭が燃える・・・とか。」
「何っ!?」
「ヘックション!!」
ボォッ!!
「このようにね。」
「・・・・・・。」
「あはっ♪本当にそうなった!ラプちゃん黒コゲ~!!」
「アハハ!ごめんごめん。」
「・・・・・・あとで覚えてろ。」
ラプちゃんがナッちゃんを睨む。
「と、まあ戦闘時に奇襲を防ぐくらいしか役立たないかな。ああでも、探知と組み合わせれば強いかもしれない。幸い私たち悪魔の魔力は無限にあるしね。」
肩をすくめて言うゲノちゃん。でも少し楽しそう。ラプちゃんへのいたずらのバリエーションはこれからも増えるんだろうなぁ・・・。
「それで本題に戻るけど、そのシリアルサイコキラーの居場所は分からないの?」
「残念ながら。探知魔法も射程はそう長くないからね。隠れてる奴や敵の配置を目を使わずに知れるのはいいけど。」
「目を使わずに・・・ね。」
目が見えるようになるのを願ったのに使わなくても知れる・・・か。まあいいや。
「・・・?まあ、とにかく奴の情報は魔法じゃなくこっちで調べてみるよ。」
ゲノちゃんが情報端末をちらつかせる。ネットから画像検索でもするのか・・・いや、ゲノちゃんのことだから衛星にハッキングでも仕掛けて見つけ出す気かな?
(まあ、あの子達のところに来ればすぐ分かるんだけどね。)
レヴィは自分の角をつつく。
私の魔法は精神干渉系。このねじくれた角は私の魔法とリンクしていて、意識を集中すれば鈴蘭ちゃんとジャスミンのことがぼんやりとだが分かる。
何を考えてるのかとか、気分が良いか悪いかとか本当にぼんやりとだけど。
あの二人だけは特別だ。あの子達を壊すのは私。それを誰にも邪魔させない。
(・・・・・・!へぇ・・・。)
どうやら私のことを話してるらしい。ふぅーん。笑顔を教えてあげたこと、覚えてたんだ。ジャスミン。・・・私が悲しそう?・・・やっぱり何も分かってないんだなぁ・・・。
鈴蘭ちゃんは・・・妹と、ついでに私を心配してるのか。ふぅん・・・妹よりはこっち側に近い子だよね。前から思ってたけど。憎くて仕方ない相手の癖に、妹より私の考えが少しだけ理解できてるなんて・・・やっぱりキライだわ。
・・・贖罪?・・・あはっ♪いまさら何言ってんだろこの子。・・・でも、本当に妹を心配してるなぁ・・・私よりずっと仲良さそう。生意気。
友達になりたい?私と鈴蘭ちゃんが?・・・・・・ありえないね。
(私は物語の”悪役”あの子達は”主人公”。私の友達は悪魔だけ。串刺しになってでも私と友達になりたい奴なんて、正気の人たちの中にいるはず無いもの。)
レヴィは愛憎の悪魔。悪魔になってもその深い愛は変わらないが、その棘に刺されることを厭わぬ者にしか心を開かない。
ラプちゃんは私を抱きしめてくれた。まあ、一番に思ってくれてるわけじゃあないから愛する人にはならない。でも、だからこそ、”友達”だといえる。それくらいがちょうどいい。
ゲノちゃんはなんだかんだで気にかけてはくれる。
ナッちゃんはイカレてるけど、良く遊んでくれるから嫌いじゃない。
そう、悪魔になったことに後悔など無い。あのまま黒く腐り果てていたら、私はビーストのエサになっていただろう。いや、そうでなくてもあのまま生きるのなんてゴメンだ。
(私は悪に徹する。そう、どこまでも・・・ね。)
「・・・分かったぞ!」
ゲノちゃんが情報端末から顔を上げた。
「レヴィ、奴の狙いはキミの妹とそのお友達のようだね。」
「・・・!」
その言葉に私は立つ。
「・・・・・・行くのか?」
腕組みをしながらラプちゃんが尋ねてくる。
「あいつらを、助けるのか?」
「・・・とめないで。」
(私は悪に徹する。あの子達を壊していいのは私だけ。それを邪魔するなら、あの子達に手を出すのなら、誰であろうと許さない。)
私はラプちゃんの領域を飛び出し、風霧市に向かった。
「・・・ゲノム。念のためだ。こっそり付いて行け。」
飛び出していったレヴィを見送り、ラプラスはゲノムにそう告げる。
「彼女の実力なら問題ないと思うが?」
「・・・向こうが悪魔討伐を優先して手を組むことだってありうる。」
「素直に心配だといえばいいのに。・・・わかったよ。」
悪魔達は神の理を蹂躙し、世界を呪いで満たし、やがて滅ぼす。それは、歴史の中で流されてきた全ての人々と、ケットシーの涙、そして彼女達が願いにかけてきた思いを踏みにじる背徳。
だが、
本来、己が欲望のまま動く烏合の衆ではある悪魔達にも”結束”確かには生まれていた。他者から見れば傷の舐め合いだと揶揄されるかもしれないが・・・これだけは、悪魔達をつなぐこの”絆”だけは、誰にも覆せない”真実”であった。
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13話
「悪魔・・・か。」
ジャスミンの家を後にした鈴蘭は思う。
「ジャスミン曰く、悪魔はレヴィ以外にもいるらしいけど・・・光る猫以外に猫に魔法を与える存在がいるというの・・・?」
あるいは最近光る猫を見かけないのはそいつらに契約する能力を奪われたのだろうか・・・?
結論から言えばこの考察は誤りである。悪魔はナハトが因果律に少し干渉する・・・正確にはケットシーになっていた並行世界の情報を相手に組み込み、擬似的にケットシーに変える。その後、彼女達自身の呪いによってケットシーを、魔物を超越し、悪魔となるのだ。
そんなことを鈴蘭は知る由もない。そしてケットシーの敵はビーストや悪魔だけではない。
(・・・・・・!)
鈴蘭は気づいた。バイクのエンジン音。さっきからそれはずっとこっちをつけて来ている。それにこれは・・・魔力反応!?
鈴蘭はすぐに後を振り返り、身構える。
「やあ、お嬢ちゃん。この町のケットシーはキミだね?」
驚いた。思っていたよりずっと大人だ。ということは、こいつはカメリア同様成人まで生きていたケットシー、またはジャスミンが行っていた悪魔!?
「ねえ、君の名前・・・教えてよ。」
「誰だか知らないけど、まずは自分が名乗るものじゃない・・・?」
「へぇ・・・これは失礼。」
バイクに乗っていた豹柄の猫が下りるなり丁寧にお辞儀をする。
「私はブローム。その道で名の知れた”殺し屋”さ。」
頭を上げた猫が変身する。レザーアーマーに無骨な金属アーマーを装着した狩人風の外見だ。背中には身の丈ほどもあるバスターソードを背負っている。
「趣味はケットシー狩り。」
「っ!!」
鈴蘭は変身した。灰色のロングコートにカッターのような薄く軽い刀身を持つ剣は炎をまとって赤熱化する。
「君を殺せば武器コレクションは100個になる。」
ブロームが背負っていたバスターソードを抜く。
「・・・!その剣は―!」
バスターソードの刀身はおびただしい数の文字が刻まれていた。さっきこいつは武器をコレクションしているといっていた。そして、この刀身の文字はまさか!
「ああ、だから名前を聞いたのさ。倒した相手の武器はもらう。まあ、答えないなら仕方ない。斬って、殺してから改めて調べさせてもらうよ。」
バスターソードを担いで突進してくる。速い―!!
「ほらっ!!」
ズガァァン!!
「うっ・・・!」
振り下ろされた刃を横にそれて回避するが、恐るべき衝撃だ。食らったら一撃で死んでしまうだろう。
「やるしか・・・ない!!」
鈴蘭の剣が相手の肩口に振り下ろされるが、相手は体をずらして金属アーマー部分でそれを受け止めた。
「ふん!」
相手はそのまま刀身を受け流し、左手でパンチを入れる。
「ぐっ!?」
「そぉぉれっ!!」
「うあぁ!?」
敵が力任せに大剣を振り上げた。鈴蘭は何とかとめたが弾き飛ばされ、塀に叩きつけられる。
「う・・ぐっ・・・。」
「力比べじゃ私には勝てないよ?」
バスターソードを肩に担ぎなおし、ブロームが迫る。
「なら・・・!」
「!!」
しかし鈴蘭も負けてはいない。複数の炎の剣を形成し、いっせいに打ち出す。敵がバスターソードの刀身を盾代わりに構えるが、その好きに鈴蘭は距離をつめた。
「いかに力があってもその大きな得物じゃあこの距離では満足に振れないでしょ?」
「へぇ・・・若い割りにちゃんと分かってるじゃないか。お嬢ちゃん!」
ブロームのバスターソードは巨大ゆえに密着状態では威力を発揮できない。そして鈴蘭は斬る事ができなくても熱でダメージを与えることができる。
「あっついなぁ・・・!けどね・・・!」
熱にジリジリと毛がこげていたブロームがにやりと笑う。
「私に魔法は効かないのさ!!」
「えっ!?」
燃えていた刀身から突如炎が消えた。いや、消えたのではない!最初から炎など発していなかったかのようにかき消された。
「オラ!!」
「うっ・・・!?」
ブロームが刀身ごと鈴蘭を塀に押し込む。
「どうして・・・!?」
「私はケットシーハンター!!固有魔法への対策はバッチリなのさ!!」
ブロームがバスターソードを持つ手をひねり、鈴蘭の剣を弾いた。そのまま左腕で首を捕まえる
「ぐぐ・・・!」
「最後にもう一度聞こう。君の名前は?」
「教え・・・ない!!」
ゴォッ!!
つるしあげられる状態になった鈴蘭だが、足に炎をまとわせて蹴りを放ち、拘束から逃れた。
「あっつ、あっつ!!クソ・・・やってくれたね!」
ブロームは毛に引火した火を地面を転がることで何とか消した。
「なら、これはどうかな・・・!」
ブロームがバスターソードを地面に突き立てる。
(武器を捨てた・・・?)
「私の58番目のコレクションだ!」
ブロームの手に鞭が現れる。サメの歯のようなエッジが付いた凶悪なものだ。
襲い掛かる鞭を鈴蘭は切り落とそうとしたが、逆に刀身を絡め取られてしまった。
鈴蘭は刀身を発火させて焼ききろうとしたが。それをするより先に敵は次の武器を出していた。
「29番目だ!」
マシンピストルだ。照準がこちらに向けられる。
タラララ!!タララララ!!
リズミカルな音とともに魔法弾が連射される。
「スズちゃん!!」
しかし、弾丸が鈴蘭に命中することは無かった。ジャスミンだ。彼女がガントレットマニピュレーターでブロームの腕を掴み、銃口をそらしたのだ。
「おや、嗅ぎ付けて来たか。」
ブロームが鞭を離してジャスミンを殴り飛ばす。
「あうっ!」
「ジャスミン!こいつは危険よ!!」
何とか鞭から刀身を開放した鈴蘭が助け起こす。
「スズちゃん・・!魔力反応があったからもしかしてって・・・。あの人も悪魔なの?」
「いいえ。違うわ。あいつはケットシー狩り・・・!シリアルキラーよ!!」
「ああ、そういえばそっちの若葉色の子は探知の魔法が使えるんだっけ?どうにで早いわけだ。」
「そして、キミはジャスミンというのか。そのガントレット、気に入った。必ずもらう!!」
ブロームは興奮した面持ちでバスターソードを掴み、片手で地面から引っこ抜く。左手のマシンピストルで攻撃の手も緩めない。
ジャスミンはガントレットの手のひらからバリアを発生させて銃撃をとめていたが、打ちながら接近してきた相手に今度は鈴蘭が切りかかる。
「やらせない!」
「おっと!」
鈴蘭の剣撃は早いが、敵は10年以上もケットシーを狩り続けたシリアルキラー。重いバスターソードを片手で操り受け止めた。
「えい!」
今度はジャスミンが掴みかかり、魔力を流したガントレットで左手のマシンピストルを破壊した。
「-!!コイツ・・・!よくもっ!!」
しかし、それはコレクションを破壊されたことでこの殺人鬼の怒りに火をつけてしまった。
「このっ・・・ガキィ!!」
マシンピストルの爆発に巻き込まれてダメージを負っているはずの左手でバスターソードの柄を掴み、両手持ちの状態で強引に振り抜く。
「うあっ!?」
「きゃあ!!」
二人はまとめて弾き飛ばされた。かろうじて武器でガードできたが、間に合わなければ胴を剛断されていただろう。
「まったく・・・私の大事なコレクションをよくも・・・!」
振り上げたバスターソードが怪しく発光を始める。
「やばい・・・!」
ありったけの魔力を注いで、空間に無数の魔法陣が出現する。そこから無数の剣、槍、銃、ハンマーや鋸に布団たたきなんかもある。これまで殺した相手から奪ってきた全ての武器だ。
「これがマッド・ブロームの名の由来”狂い咲き”さ!!さあ、思い切り・・・!!」
「死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
全ての銃口が火を噴き、全ての武器が標的を切り裂こう、打ち据えよう、射抜こう、溶かそう、痺れさせよう、凍えさせよう、飲み込もうと襲い掛かる。バスターソードからも解放されたエネルギーが地面を砕きながら二人に向かってくる。完全な面攻撃だ。
「避けられない!!」
「スズちゃん!!」
ジャスミンがかばおうと前に出る。だが、
「”領域”。」
バシッィィン!!
「何!?」
「えっ・・・?ここは!?」
「あ、・・・ああ!!」
「全く。そんなに大事ならしまっとけばいーじゃん。それにさぁ・・・メーワクなんだよね。」
シクラメンと王冠を被った海蛇の紋章が描かれた防御壁が二人を守っていた。周囲は絵本の中のような不可思議ない空間へと変わっていた。
「お前は・・・おかしいな。この町のケットシーは二匹のはず。」
「そのこ達をいじめていいのは私だけ。壊していいのも私だけ。」
シクラメンのような赤いドレスに身を包んだ悪魔が現れる。
「ケットシーハンターだかシリアルサイコキラーだか狂い咲きだか知らないけどさぁ・・・。」
レヴィが針を構えて殺人鬼に対峙した。
「私のおもちゃを取ろうっていうなら・・・針千本飲ますよ?」
ジャスミンの家を後にした鈴蘭は思う。
「ジャスミン曰く、悪魔はレヴィ以外にもいるらしいけど・・・光る猫以外に猫に魔法を与える存在がいるというの・・・?」
あるいは最近光る猫を見かけないのはそいつらに契約する能力を奪われたのだろうか・・・?
結論から言えばこの考察は誤りである。悪魔はナハトが因果律に少し干渉する・・・正確にはケットシーになっていた並行世界の情報を相手に組み込み、擬似的にケットシーに変える。その後、彼女達自身の呪いによってケットシーを、魔物を超越し、悪魔となるのだ。
そんなことを鈴蘭は知る由もない。そしてケットシーの敵はビーストや悪魔だけではない。
(・・・・・・!)
鈴蘭は気づいた。バイクのエンジン音。さっきからそれはずっとこっちをつけて来ている。それにこれは・・・魔力反応!?
鈴蘭はすぐに後を振り返り、身構える。
「やあ、お嬢ちゃん。この町のケットシーはキミだね?」
驚いた。思っていたよりずっと大人だ。ということは、こいつはカメリア同様成人まで生きていたケットシー、またはジャスミンが行っていた悪魔!?
「ねえ、君の名前・・・教えてよ。」
「誰だか知らないけど、まずは自分が名乗るものじゃない・・・?」
「へぇ・・・これは失礼。」
バイクに乗っていた豹柄の猫が下りるなり丁寧にお辞儀をする。
「私はブローム。その道で名の知れた”殺し屋”さ。」
頭を上げた猫が変身する。レザーアーマーに無骨な金属アーマーを装着した狩人風の外見だ。背中には身の丈ほどもあるバスターソードを背負っている。
「趣味はケットシー狩り。」
「っ!!」
鈴蘭は変身した。灰色のロングコートにカッターのような薄く軽い刀身を持つ剣は炎をまとって赤熱化する。
「君を殺せば武器コレクションは100個になる。」
ブロームが背負っていたバスターソードを抜く。
「・・・!その剣は―!」
バスターソードの刀身はおびただしい数の文字が刻まれていた。さっきこいつは武器をコレクションしているといっていた。そして、この刀身の文字はまさか!
「ああ、だから名前を聞いたのさ。倒した相手の武器はもらう。まあ、答えないなら仕方ない。斬って、殺してから改めて調べさせてもらうよ。」
バスターソードを担いで突進してくる。速い―!!
「ほらっ!!」
ズガァァン!!
「うっ・・・!」
振り下ろされた刃を横にそれて回避するが、恐るべき衝撃だ。食らったら一撃で死んでしまうだろう。
「やるしか・・・ない!!」
鈴蘭の剣が相手の肩口に振り下ろされるが、相手は体をずらして金属アーマー部分でそれを受け止めた。
「ふん!」
相手はそのまま刀身を受け流し、左手でパンチを入れる。
「ぐっ!?」
「そぉぉれっ!!」
「うあぁ!?」
敵が力任せに大剣を振り上げた。鈴蘭は何とかとめたが弾き飛ばされ、塀に叩きつけられる。
「う・・ぐっ・・・。」
「力比べじゃ私には勝てないよ?」
バスターソードを肩に担ぎなおし、ブロームが迫る。
「なら・・・!」
「!!」
しかし鈴蘭も負けてはいない。複数の炎の剣を形成し、いっせいに打ち出す。敵がバスターソードの刀身を盾代わりに構えるが、その好きに鈴蘭は距離をつめた。
「いかに力があってもその大きな得物じゃあこの距離では満足に振れないでしょ?」
「へぇ・・・若い割りにちゃんと分かってるじゃないか。お嬢ちゃん!」
ブロームのバスターソードは巨大ゆえに密着状態では威力を発揮できない。そして鈴蘭は斬る事ができなくても熱でダメージを与えることができる。
「あっついなぁ・・・!けどね・・・!」
熱にジリジリと毛がこげていたブロームがにやりと笑う。
「私に魔法は効かないのさ!!」
「えっ!?」
燃えていた刀身から突如炎が消えた。いや、消えたのではない!最初から炎など発していなかったかのようにかき消された。
「オラ!!」
「うっ・・・!?」
ブロームが刀身ごと鈴蘭を塀に押し込む。
「どうして・・・!?」
「私はケットシーハンター!!固有魔法への対策はバッチリなのさ!!」
ブロームがバスターソードを持つ手をひねり、鈴蘭の剣を弾いた。そのまま左腕で首を捕まえる
「ぐぐ・・・!」
「最後にもう一度聞こう。君の名前は?」
「教え・・・ない!!」
ゴォッ!!
つるしあげられる状態になった鈴蘭だが、足に炎をまとわせて蹴りを放ち、拘束から逃れた。
「あっつ、あっつ!!クソ・・・やってくれたね!」
ブロームは毛に引火した火を地面を転がることで何とか消した。
「なら、これはどうかな・・・!」
ブロームがバスターソードを地面に突き立てる。
(武器を捨てた・・・?)
「私の58番目のコレクションだ!」
ブロームの手に鞭が現れる。サメの歯のようなエッジが付いた凶悪なものだ。
襲い掛かる鞭を鈴蘭は切り落とそうとしたが、逆に刀身を絡め取られてしまった。
鈴蘭は刀身を発火させて焼ききろうとしたが。それをするより先に敵は次の武器を出していた。
「29番目だ!」
マシンピストルだ。照準がこちらに向けられる。
タラララ!!タララララ!!
リズミカルな音とともに魔法弾が連射される。
「スズちゃん!!」
しかし、弾丸が鈴蘭に命中することは無かった。ジャスミンだ。彼女がガントレットマニピュレーターでブロームの腕を掴み、銃口をそらしたのだ。
「おや、嗅ぎ付けて来たか。」
ブロームが鞭を離してジャスミンを殴り飛ばす。
「あうっ!」
「ジャスミン!こいつは危険よ!!」
何とか鞭から刀身を開放した鈴蘭が助け起こす。
「スズちゃん・・!魔力反応があったからもしかしてって・・・。あの人も悪魔なの?」
「いいえ。違うわ。あいつはケットシー狩り・・・!シリアルキラーよ!!」
「ああ、そういえばそっちの若葉色の子は探知の魔法が使えるんだっけ?どうにで早いわけだ。」
「そして、キミはジャスミンというのか。そのガントレット、気に入った。必ずもらう!!」
ブロームは興奮した面持ちでバスターソードを掴み、片手で地面から引っこ抜く。左手のマシンピストルで攻撃の手も緩めない。
ジャスミンはガントレットの手のひらからバリアを発生させて銃撃をとめていたが、打ちながら接近してきた相手に今度は鈴蘭が切りかかる。
「やらせない!」
「おっと!」
鈴蘭の剣撃は早いが、敵は10年以上もケットシーを狩り続けたシリアルキラー。重いバスターソードを片手で操り受け止めた。
「えい!」
今度はジャスミンが掴みかかり、魔力を流したガントレットで左手のマシンピストルを破壊した。
「-!!コイツ・・・!よくもっ!!」
しかし、それはコレクションを破壊されたことでこの殺人鬼の怒りに火をつけてしまった。
「このっ・・・ガキィ!!」
マシンピストルの爆発に巻き込まれてダメージを負っているはずの左手でバスターソードの柄を掴み、両手持ちの状態で強引に振り抜く。
「うあっ!?」
「きゃあ!!」
二人はまとめて弾き飛ばされた。かろうじて武器でガードできたが、間に合わなければ胴を剛断されていただろう。
「まったく・・・私の大事なコレクションをよくも・・・!」
振り上げたバスターソードが怪しく発光を始める。
「やばい・・・!」
ありったけの魔力を注いで、空間に無数の魔法陣が出現する。そこから無数の剣、槍、銃、ハンマーや鋸に布団たたきなんかもある。これまで殺した相手から奪ってきた全ての武器だ。
「これがマッド・ブロームの名の由来”狂い咲き”さ!!さあ、思い切り・・・!!」
「死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
全ての銃口が火を噴き、全ての武器が標的を切り裂こう、打ち据えよう、射抜こう、溶かそう、痺れさせよう、凍えさせよう、飲み込もうと襲い掛かる。バスターソードからも解放されたエネルギーが地面を砕きながら二人に向かってくる。完全な面攻撃だ。
「避けられない!!」
「スズちゃん!!」
ジャスミンがかばおうと前に出る。だが、
「”領域”。」
バシッィィン!!
「何!?」
「えっ・・・?ここは!?」
「あ、・・・ああ!!」
「全く。そんなに大事ならしまっとけばいーじゃん。それにさぁ・・・メーワクなんだよね。」
シクラメンと王冠を被った海蛇の紋章が描かれた防御壁が二人を守っていた。周囲は絵本の中のような不可思議ない空間へと変わっていた。
「お前は・・・おかしいな。この町のケットシーは二匹のはず。」
「そのこ達をいじめていいのは私だけ。壊していいのも私だけ。」
シクラメンのような赤いドレスに身を包んだ悪魔が現れる。
「ケットシーハンターだかシリアルサイコキラーだか狂い咲きだか知らないけどさぁ・・・。」
レヴィが針を構えて殺人鬼に対峙した。
「私のおもちゃを取ろうっていうなら・・・針千本飲ますよ?」
DCD- 未登録ユーザー
14話
針千本飲ませる。そう宣言した悪魔の登場に鈴蘭とジャスミンは驚いた。
「レヴィ!!」
「あなた・・・!」
レヴィは二匹を一瞥し、そっけなく答えた。
「ジャスミン、こないだぶり。鈴蘭ちゃんは久しぶりね。」
「レヴィ!お姉ちゃん!!やっぱりあなた―!!」
ザクッ!!
「-っ!」
姉が助けに来てくれた。やっぱり姉は悪魔なんかじゃない。きっとこの前は何か理由があったんだ。そんな希望に満ちた面持ちでジャスミンは身を乗り出したが、それはレヴィの投げつけた針が足もとに刺さったことで遮られる。
「あーあ。何勘違いしてるの?言ったでしょ。あなた達は私のおもちゃ。人のものを勝手に壊そうとするバカがいるから殺しに来た。それだけよ。」
レヴィは冷淡な表情で妹を黙らせたあと、同じくらい冷たい表情でブロームを睨む。
「魔力で作った空間・・・か。キミは中々強そうだね。だが・・・ケットシーじゃないな?噂に聞く悪魔とはキミかい?」
ブロームがバスターソードを構えながらレヴィに問う。
「言ってどうするの?あなたはこれから死ぬんだよ?」
レヴィは片手剣と針を構え、ゆっくり歩を進める。
「おー怖い。・・・・・・やってみろよ。このガキ。」
ブロームがバスターソードを構えて突進してくる。
レヴィもほぼ同時にダッシュを始めた。
(とらえた!)
ブロームのバスターソードが振り下ろされる。リーチではこちらのほうが有利だ。
「残念。はずれ~。」
しかし、確かに相手を両断したはずのバスターソードに手ごたえは無かった。
むしろ背後に回りこんでいた敵がすでに攻撃を振り下ろしていた。
(-!精神干渉系魔法!!)
「もう、遅いよ。」
レヴィがブロームの背中に針を突き刺す。
「いっつ!?」
ささった針はどんどん体内に吸収されていく。
「言ったでしょ?針千本飲ませるって。それは体内で炸裂する。サボテンみたいになって死んじゃえ。」
勝負は決まった。後1秒で針は弾ける。
「・・・・・・えっ?」
ガッキィィン!!
レヴィはとっさに片手剣でガードした。確実に死ぬはずの敵がバスターソードを振り上げて襲い掛かってきたからだ。
「どうして・・・!?」
「武器の転移魔法の応用さ。ギリギリだったが、体外に排出させてもらった。」
「ちっ・・・!」
(そういうことか・・・!迂闊だった。こいつは何匹も殺してきたベテラン。こういう事態も経験済みってわけね・・・!)
レヴィは大剣の刃を受け流し、位置情報を操作して再び死角に入ろうとする。
ギィィン!!
「!!」
ガードされた。位置がバレている!?
「うそ、何で位置が・・・!?」
「私の固有魔法、それは”魔法効果の解除”!!タイミングさえ誤らなければいかな魔法も効かない!!それが私の力だ!!」
「なるほど・・・!小細工は効かないってことか・・・なら直接ブッ潰す!!」
レヴィはヒット&アウェイの要領で素早く動き、針と剣で攻撃を仕掛ける。対する相手も武器を軽量なはんどがんとナイフにも誓えて対抗する。
針を弾く。弾丸を切り払う。刃を交える。拮抗していた戦況は横から崩された。
ドンッ!!
「うおっ!?」
火炎弾だ。鈴蘭が火炎弾を飛ばしたのだ。
「!!」
レヴィがすかさず相手に足にナイフ大まで延長した針を突き刺し、地面に縫い付けた。
「がぁぁっ!?こいつ・・・!」
すぐさま引き抜こうとするが、返しが形成されてうまくいかない。
その好きにレヴィはハンドガンを剣で弾き飛ばし、さらに接近した鈴蘭が首に炎の剣を突きつけた。
「そこまでよ!」
トンッ
さらに背中に何かが押し当てられる。
「・・・!!」
「動かないでください!」
ジャスミンがガントレットを握りこぶしを作った状態で押し当てていた。少しでも動けばこれを撃ち出し、胴体に風穴を開けるだろう。
「ふん・・・!なめるなよ!!」
「-!!ジャスミン!こっちに!!」
ゴゴゴゴゴ・・・グツグツグツ・・・・・・
ズッドォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォン!!
しかし相手は10年以上生きた殺人鬼。そうやすやすとは行かない。地面に魔力を流して爆発させたのだ。
「・・・ちっ、地面ごと吹っ飛ばして拘束から逃れたうえに領域に穴を開けて逃げたわね・・・。」
私は爆発の一瞬前にはとっさにジャスミンを引き寄せ、鈴蘭ちゃんともども魔法壁で爆発から身を守った。
私が領域を解除すると奴が載ってきたバイクがなくなっていた。だけど魔力はだいぶ消耗してるはず・・・
「まだそう遠くにはいけてない・・・逃がさない!」
私が追撃を開始しようとするが、ジャスミンが手を掴んでそれを止める。
「待ってレヴィ!」
「離してッ!!」
それを振りほどく。
「レヴィ・・・何があったの?私が何かしちゃったの?」
なにかしちゃった・・・?ええ、したとも。しましたよーだ。私の気も知らずに楽しそうにビースト退治の話なんか聞かせて。
「ああ、めんどくさい・・・。ホントお邪魔虫だよね。少し黙ってて。」
レヴィがジャスミンの額に手を翳すと同時にガクリと崩れ落ちる。
「ジャスミン!!」
鈴蘭がそれを支える。
「あなた・・・!」
「大丈夫。眠らせただけだから。」
憎いあの子が私の睨んでくる。・・・きれいな顔。クール系な美人だね。スタイルも細くて銀色の毛もきれいだし。・・・ホント、嫌いだわ。
「・・・?」
「妹とは、ずいぶん仲良くしてくれてるみたいね。」
「レヴィ、あなたに何があったというの・・・?悪魔っていったい・・・。」
「そのまんまの意味だよ。ケットシーを殺して、世界を呪いで満たして、円の神アインと彼女に導かれた魂・・・天使達からなる理、リングを破壊する。それが悪魔。」
「なぜ、そんなことを!?向こうにはカメリアだっているのに・・・!」
「だからだよ・・・。」
「えっ?」
「まあ、あなたならなんとなく分かってるんじゃない?この角で感じ取れるよ。あなたの中の”後悔”がね。」
「-っ!!」
あはっ♪唖然としてるね。いいよその顔。ゾクゾクする。
「さて、ここで殺してあげてもいいけど・・・。」
消耗してるこの子達を殺してもつまらない。楽しみは後にしなきゃ。ジャスミンも寝てるしね。
「それはまた今度にしておいてあげるよ。せいぜい怯えて過ごすのね。」
私は手を振りながらその場を立ち去ろうとする。
「・・・ら。」
「?」
「ならっ!どうして助けてくれたの?」
私は首だけ振り返る。
「そんなの決まってるじゃん。わたしはカメリアや、ジャスミン。なにより鈴蘭ちゃん。あなたに復讐するのが目的なの。そのために悪魔になったのよ。」
「勝手に殺されちゃメーワクなんだよね。もちろん、勝手に死ぬことも許可しないわ。」
「じゃーね。次にあったら、そのときは殺しあうときだよ。楽しみにしててね?」
レヴィは消えた。認識操作で姿を消したのだ。
「復讐・・・私がいなければ、こうはならなかったの?教えて・・・カメリア・・・。」
残された鈴蘭は呆然とつぶやくことしかできなかった。
「レヴィ!!」
「あなた・・・!」
レヴィは二匹を一瞥し、そっけなく答えた。
「ジャスミン、こないだぶり。鈴蘭ちゃんは久しぶりね。」
「レヴィ!お姉ちゃん!!やっぱりあなた―!!」
ザクッ!!
「-っ!」
姉が助けに来てくれた。やっぱり姉は悪魔なんかじゃない。きっとこの前は何か理由があったんだ。そんな希望に満ちた面持ちでジャスミンは身を乗り出したが、それはレヴィの投げつけた針が足もとに刺さったことで遮られる。
「あーあ。何勘違いしてるの?言ったでしょ。あなた達は私のおもちゃ。人のものを勝手に壊そうとするバカがいるから殺しに来た。それだけよ。」
レヴィは冷淡な表情で妹を黙らせたあと、同じくらい冷たい表情でブロームを睨む。
「魔力で作った空間・・・か。キミは中々強そうだね。だが・・・ケットシーじゃないな?噂に聞く悪魔とはキミかい?」
ブロームがバスターソードを構えながらレヴィに問う。
「言ってどうするの?あなたはこれから死ぬんだよ?」
レヴィは片手剣と針を構え、ゆっくり歩を進める。
「おー怖い。・・・・・・やってみろよ。このガキ。」
ブロームがバスターソードを構えて突進してくる。
レヴィもほぼ同時にダッシュを始めた。
(とらえた!)
ブロームのバスターソードが振り下ろされる。リーチではこちらのほうが有利だ。
「残念。はずれ~。」
しかし、確かに相手を両断したはずのバスターソードに手ごたえは無かった。
むしろ背後に回りこんでいた敵がすでに攻撃を振り下ろしていた。
(-!精神干渉系魔法!!)
「もう、遅いよ。」
レヴィがブロームの背中に針を突き刺す。
「いっつ!?」
ささった針はどんどん体内に吸収されていく。
「言ったでしょ?針千本飲ませるって。それは体内で炸裂する。サボテンみたいになって死んじゃえ。」
勝負は決まった。後1秒で針は弾ける。
「・・・・・・えっ?」
ガッキィィン!!
レヴィはとっさに片手剣でガードした。確実に死ぬはずの敵がバスターソードを振り上げて襲い掛かってきたからだ。
「どうして・・・!?」
「武器の転移魔法の応用さ。ギリギリだったが、体外に排出させてもらった。」
「ちっ・・・!」
(そういうことか・・・!迂闊だった。こいつは何匹も殺してきたベテラン。こういう事態も経験済みってわけね・・・!)
レヴィは大剣の刃を受け流し、位置情報を操作して再び死角に入ろうとする。
ギィィン!!
「!!」
ガードされた。位置がバレている!?
「うそ、何で位置が・・・!?」
「私の固有魔法、それは”魔法効果の解除”!!タイミングさえ誤らなければいかな魔法も効かない!!それが私の力だ!!」
「なるほど・・・!小細工は効かないってことか・・・なら直接ブッ潰す!!」
レヴィはヒット&アウェイの要領で素早く動き、針と剣で攻撃を仕掛ける。対する相手も武器を軽量なはんどがんとナイフにも誓えて対抗する。
針を弾く。弾丸を切り払う。刃を交える。拮抗していた戦況は横から崩された。
ドンッ!!
「うおっ!?」
火炎弾だ。鈴蘭が火炎弾を飛ばしたのだ。
「!!」
レヴィがすかさず相手に足にナイフ大まで延長した針を突き刺し、地面に縫い付けた。
「がぁぁっ!?こいつ・・・!」
すぐさま引き抜こうとするが、返しが形成されてうまくいかない。
その好きにレヴィはハンドガンを剣で弾き飛ばし、さらに接近した鈴蘭が首に炎の剣を突きつけた。
「そこまでよ!」
トンッ
さらに背中に何かが押し当てられる。
「・・・!!」
「動かないでください!」
ジャスミンがガントレットを握りこぶしを作った状態で押し当てていた。少しでも動けばこれを撃ち出し、胴体に風穴を開けるだろう。
「ふん・・・!なめるなよ!!」
「-!!ジャスミン!こっちに!!」
ゴゴゴゴゴ・・・グツグツグツ・・・・・・
ズッドォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォン!!
しかし相手は10年以上生きた殺人鬼。そうやすやすとは行かない。地面に魔力を流して爆発させたのだ。
「・・・ちっ、地面ごと吹っ飛ばして拘束から逃れたうえに領域に穴を開けて逃げたわね・・・。」
私は爆発の一瞬前にはとっさにジャスミンを引き寄せ、鈴蘭ちゃんともども魔法壁で爆発から身を守った。
私が領域を解除すると奴が載ってきたバイクがなくなっていた。だけど魔力はだいぶ消耗してるはず・・・
「まだそう遠くにはいけてない・・・逃がさない!」
私が追撃を開始しようとするが、ジャスミンが手を掴んでそれを止める。
「待ってレヴィ!」
「離してッ!!」
それを振りほどく。
「レヴィ・・・何があったの?私が何かしちゃったの?」
なにかしちゃった・・・?ええ、したとも。しましたよーだ。私の気も知らずに楽しそうにビースト退治の話なんか聞かせて。
「ああ、めんどくさい・・・。ホントお邪魔虫だよね。少し黙ってて。」
レヴィがジャスミンの額に手を翳すと同時にガクリと崩れ落ちる。
「ジャスミン!!」
鈴蘭がそれを支える。
「あなた・・・!」
「大丈夫。眠らせただけだから。」
憎いあの子が私の睨んでくる。・・・きれいな顔。クール系な美人だね。スタイルも細くて銀色の毛もきれいだし。・・・ホント、嫌いだわ。
「・・・?」
「妹とは、ずいぶん仲良くしてくれてるみたいね。」
「レヴィ、あなたに何があったというの・・・?悪魔っていったい・・・。」
「そのまんまの意味だよ。ケットシーを殺して、世界を呪いで満たして、円の神アインと彼女に導かれた魂・・・天使達からなる理、リングを破壊する。それが悪魔。」
「なぜ、そんなことを!?向こうにはカメリアだっているのに・・・!」
「だからだよ・・・。」
「えっ?」
「まあ、あなたならなんとなく分かってるんじゃない?この角で感じ取れるよ。あなたの中の”後悔”がね。」
「-っ!!」
あはっ♪唖然としてるね。いいよその顔。ゾクゾクする。
「さて、ここで殺してあげてもいいけど・・・。」
消耗してるこの子達を殺してもつまらない。楽しみは後にしなきゃ。ジャスミンも寝てるしね。
「それはまた今度にしておいてあげるよ。せいぜい怯えて過ごすのね。」
私は手を振りながらその場を立ち去ろうとする。
「・・・ら。」
「?」
「ならっ!どうして助けてくれたの?」
私は首だけ振り返る。
「そんなの決まってるじゃん。わたしはカメリアや、ジャスミン。なにより鈴蘭ちゃん。あなたに復讐するのが目的なの。そのために悪魔になったのよ。」
「勝手に殺されちゃメーワクなんだよね。もちろん、勝手に死ぬことも許可しないわ。」
「じゃーね。次にあったら、そのときは殺しあうときだよ。楽しみにしててね?」
レヴィは消えた。認識操作で姿を消したのだ。
「復讐・・・私がいなければ、こうはならなかったの?教えて・・・カメリア・・・。」
残された鈴蘭は呆然とつぶやくことしかできなかった。
DCD- 未登録ユーザー
15話
「はぁ、・・・はぁ・・・くそ!・・・魔力を使いすぎたな。」
ブロームがバイクを止める。隣町まで逃げてきた。追ってきてはいないようだ。
「悪魔か・・・あの二匹に助けられたな。」
あのケットシー二人が乱入してくれて助かった。もしあのまま続けていたら魔力切れでやられていただろう。
「まずは魔力を回復させないとね・・・。感情石は・・・ん?」
ビースト反応か。・・・好都合。
「さて、まずは腹ごしらえと行こう。」
「クソ、・・・逃がしたか。」
レヴィは悪態を付いた。あーもう、これもあの二匹と、ていうか鈴蘭ちゃんと話しこんでたせいだ!!全く、やっぱりあの子嫌いだわ。
「本当にもう嫌になっちゃうよね!本当にあの子嫌いだよ。全く・・・。」
「・・・で、そろそろでてきたらゲノちゃん?」
レヴィが首だけ振り返る。
「気づいてたか。」
触手を翼代わりにして飛んでいたゲノムが降りてくる。
「どーせ、ラプちゃんあたりに言われたんでしょ?あの子、心配性だし。」
「ああ。個人的にも気になってたしね。君の宿敵・・・鈴蘭とかいったか?」
「えっ?鈴蘭ちゃん?」
レヴィが意外といった風に驚く。ゲノムが話題に出すならたいてい次に接続したい相手のこと。しかし鈴蘭の魔法は正直言って彼女の下位互換といっていい。そんな相手に興味を持ったのが意外だったのだ。
「ああ、だって君、嫌いという割りにずいぶん執着してるらしいから。」
「・・・・・・・・・・・・・・・嫌いだからだよ。私からお母さんと妹を奪った。読んで字のごとく泥棒猫だもん。」
「部屋に絵まで描いてるのに?」
「ジャスミンのもあったでしょ。」
「まあ、たしかにそうだが・・・。いや、やめておこう。」
レヴィが針を出したのを見てゲノムは追求をやめた。レヴィも針を一瞥した後、つまらなそうに投げ捨てる。
「そういうゲノちゃんだって、ジーンとかいうあの子に憎しみ以外のものも抱いてるよね?」
「・・・・・・。」
レヴィはそういうとまた認識操作で消えた。多分ラプラスのところに帰ったのだろう。
「・・・やれやれ、全部お見通しってわけか。」
ゲノムは頭をかいた。あとを追って帰ってもいいが少し気不味いかな?
「そうだ、予知と探知のあわせ技をやってみよう。対象を固定した分精度が上がるはずだ。」
ゲノムはスフィアの予知とジャスミンの探知を同時発動する。レヴィほど燃費が良くないせいで少々魔力は喰うが問題ない。悪魔の魔力は無限。時間を少し置けば消費分は回復する。
「・・・・・・ガッデム!!あのババア!今度は星見町に!!」
予知でオリジナルとあの殺人鬼がやり合っているのが見えた。
「レヴィ・・・どうやら私にもお前の気持ちが分かったよ。」
ゲノムは背中から6本の触手を生成し翼の代わりにして飛翔する。
「私はホンモノになる。オリジナルを抹消し、”ジーンのニセモノ”から”ゲノム”として存在を確立する!!どこの馬の骨とも分からん奴に邪魔されて溜まるか!!」
夜天の空に半透明の翼を翻し舞う姿は幻想的で美しくも、禍々しかった。
ブロームがバイクを止める。隣町まで逃げてきた。追ってきてはいないようだ。
「悪魔か・・・あの二匹に助けられたな。」
あのケットシー二人が乱入してくれて助かった。もしあのまま続けていたら魔力切れでやられていただろう。
「まずは魔力を回復させないとね・・・。感情石は・・・ん?」
ビースト反応か。・・・好都合。
「さて、まずは腹ごしらえと行こう。」
「クソ、・・・逃がしたか。」
レヴィは悪態を付いた。あーもう、これもあの二匹と、ていうか鈴蘭ちゃんと話しこんでたせいだ!!全く、やっぱりあの子嫌いだわ。
「本当にもう嫌になっちゃうよね!本当にあの子嫌いだよ。全く・・・。」
「・・・で、そろそろでてきたらゲノちゃん?」
レヴィが首だけ振り返る。
「気づいてたか。」
触手を翼代わりにして飛んでいたゲノムが降りてくる。
「どーせ、ラプちゃんあたりに言われたんでしょ?あの子、心配性だし。」
「ああ。個人的にも気になってたしね。君の宿敵・・・鈴蘭とかいったか?」
「えっ?鈴蘭ちゃん?」
レヴィが意外といった風に驚く。ゲノムが話題に出すならたいてい次に接続したい相手のこと。しかし鈴蘭の魔法は正直言って彼女の下位互換といっていい。そんな相手に興味を持ったのが意外だったのだ。
「ああ、だって君、嫌いという割りにずいぶん執着してるらしいから。」
「・・・・・・・・・・・・・・・嫌いだからだよ。私からお母さんと妹を奪った。読んで字のごとく泥棒猫だもん。」
「部屋に絵まで描いてるのに?」
「ジャスミンのもあったでしょ。」
「まあ、たしかにそうだが・・・。いや、やめておこう。」
レヴィが針を出したのを見てゲノムは追求をやめた。レヴィも針を一瞥した後、つまらなそうに投げ捨てる。
「そういうゲノちゃんだって、ジーンとかいうあの子に憎しみ以外のものも抱いてるよね?」
「・・・・・・。」
レヴィはそういうとまた認識操作で消えた。多分ラプラスのところに帰ったのだろう。
「・・・やれやれ、全部お見通しってわけか。」
ゲノムは頭をかいた。あとを追って帰ってもいいが少し気不味いかな?
「そうだ、予知と探知のあわせ技をやってみよう。対象を固定した分精度が上がるはずだ。」
ゲノムはスフィアの予知とジャスミンの探知を同時発動する。レヴィほど燃費が良くないせいで少々魔力は喰うが問題ない。悪魔の魔力は無限。時間を少し置けば消費分は回復する。
「・・・・・・ガッデム!!あのババア!今度は星見町に!!」
予知でオリジナルとあの殺人鬼がやり合っているのが見えた。
「レヴィ・・・どうやら私にもお前の気持ちが分かったよ。」
ゲノムは背中から6本の触手を生成し翼の代わりにして飛翔する。
「私はホンモノになる。オリジナルを抹消し、”ジーンのニセモノ”から”ゲノム”として存在を確立する!!どこの馬の骨とも分からん奴に邪魔されて溜まるか!!」
夜天の空に半透明の翼を翻し舞う姿は幻想的で美しくも、禍々しかった。
DCD- 未登録ユーザー
16話
「ふぅ・・・・・・。」
ブロームは剣をおろす。ビーストから感情石を回収し、魔力を回復できた。これでまたしばらく生き延びられる。
「さて、それで・・・・・・わざわざ回復まで待っていてくれるなんて余裕だねぇ? 」
ブロームの声に物陰から一匹、ケットシーが出てくる。
「マッド・ブローム。噂には聞いていたよ。私はジーン。この町のケットシーだ。」
黒毛に緑のストライプのケットシー、ジーンが武器も構えず現れる。
「へぇ・・・・・・君が複製魔法の使い手の・・・・・・私の噂を知ってるならこれから君をどうするかも分かっているよね? 」
ブロームがバスターソードの切っ先をジーンに向ける。
「Wait。ちょっと待ちなよ。君も悪魔については聞いたことがあるだろう? 」
ジーンが静止を訴える。悪魔という単語にブロームも剣を下げる。
「君は殺し屋なんだろう?その腕を買ってひとつ、私とともに悪魔と戦ってはくれないかい?」
「はっはっは!! こいつは傑作だ。ケットシーとしても殺し屋としても長くやっているが、ケットシーに依頼されるのは初めてだ。」
ブロームは片手で腹を抱えながら笑った。
「だがダメだね!!」
「っ!! 」
バスターソードがジーンのほうを掠める。ひげが少し切れた。
「だまそうったってそうは行かない。私が何年ケットシーやってると思っている?君からはビーストに近い呪いを感じる。君自身が悪魔だろう?」
「・・・・・・ふぅ。ここでだまし討ちにできていれば楽だったんだが・・・・・・仕方ないな。」
ジーン、いやゲノムの手から触手が伸びる。黒いロングコートにズボンを着用し、尻尾を延長するように毛のない、先端のとがった悪魔の尻尾が生える。
「私はゲノム。さっき行っていた複製魔法のジーンは私のエモノだ。よって早急に君には死んでもらいたい。」
「やれやれ・・・・・・今日は厄日だね。一日に二度も悪魔に出くわすとは。」
愚痴を言いつつもブロームはゲノムの触手を見切っていた。すぐさま魔法効果解除によって接続による支配を逃れる。
「紫のお仲間ちゃんから聞いてない?私に小細工は効かないんだよ。」
「フッ・・・・・・もとより、そのつもりさ!! 」
ゲノムはハンマー付きのポールアックスを生成する。こいつの破壊力は敵のバスターソードにも当たり負けしない。
鈍重な鉄塊同士が激突し、金属音が鳴り響く。
「へぇ・・・・・・中々いい武器持ってるじゃないか!! 」
ブロームが目を輝かせる。どうやら重量級の武器が特に好きらしい。
「そらっ!!」
「くっ・・・!」
敵が大型の刃を器用に動かしてこちらの刃を跳ね上げる。斧刃の後方に付いたハンマーの所為でバランスを取りにくい。すかさず相手がなぎ払いを放ってきた。柄の部分でガードするも弾き飛ばされた。
「はっはっは! どうしたどうしたぁ!? 」
「チッ!! 」
笑う敵がバスターソードを肩に担いで悠然と歩み寄る。ゲノムは刃を反し、ハンマー部分で打ちかかる。
ゴォォン!!
鈍い金属音が響く。刀身を盾にしてとめたようだが、衝撃までは防ぎきれまい。そのままハンマーアックスを振り抜いて大剣を手からもぎ取る。と同時に―
「食らえ!! 」
「-っ!! 」
顔面めがけてゲノムの尻尾が襲い掛かる。槍のような先端がこれまでのように相手を貫こうとしていた。
「うぐっ、あっ・・・・・・!! 」
ブロームが顔をそらして避ける。尻尾は首の毛をそぎ落とし、皮を切るにとどまった。
「だが、これで! 」
ブロームがゲノムの尻尾を掴む。
「避けられないだろう? 」
すぐさま自分の17番目のコレクションであるソードオフショットガンを呼び出す。
炸裂音とともに散弾が発射される。
衝撃で相手がぶっ飛んでいく。至近距離からの直撃だ。
「ぐふっ・・・結構、痛いものだね。」
だが、ゲノムは大して効いてはいなさそうだった。
「防弾使用か。」
「当然。」
ゲノムのロングコートに描かれた毒々しい色の塩基配列の模様はただの趣味の悪いデザインではない。それ自体が魔力を帯び、緊急時に硬化して体へのダメージを減らすのだ。
「他の夢見がちなケットシーたちと違ってただのオシャレでこんな格好をしてるわけではないさ!」
ゲノムは二丁拳銃を生成し、それを十字架のように構える。敵もショットガンに加え、サブマシンガンを出した。
「「さあ、第二ラウンドだ!! 」」
ブロームは剣をおろす。ビーストから感情石を回収し、魔力を回復できた。これでまたしばらく生き延びられる。
「さて、それで・・・・・・わざわざ回復まで待っていてくれるなんて余裕だねぇ? 」
ブロームの声に物陰から一匹、ケットシーが出てくる。
「マッド・ブローム。噂には聞いていたよ。私はジーン。この町のケットシーだ。」
黒毛に緑のストライプのケットシー、ジーンが武器も構えず現れる。
「へぇ・・・・・・君が複製魔法の使い手の・・・・・・私の噂を知ってるならこれから君をどうするかも分かっているよね? 」
ブロームがバスターソードの切っ先をジーンに向ける。
「Wait。ちょっと待ちなよ。君も悪魔については聞いたことがあるだろう? 」
ジーンが静止を訴える。悪魔という単語にブロームも剣を下げる。
「君は殺し屋なんだろう?その腕を買ってひとつ、私とともに悪魔と戦ってはくれないかい?」
「はっはっは!! こいつは傑作だ。ケットシーとしても殺し屋としても長くやっているが、ケットシーに依頼されるのは初めてだ。」
ブロームは片手で腹を抱えながら笑った。
「だがダメだね!!」
「っ!! 」
バスターソードがジーンのほうを掠める。ひげが少し切れた。
「だまそうったってそうは行かない。私が何年ケットシーやってると思っている?君からはビーストに近い呪いを感じる。君自身が悪魔だろう?」
「・・・・・・ふぅ。ここでだまし討ちにできていれば楽だったんだが・・・・・・仕方ないな。」
ジーン、いやゲノムの手から触手が伸びる。黒いロングコートにズボンを着用し、尻尾を延長するように毛のない、先端のとがった悪魔の尻尾が生える。
「私はゲノム。さっき行っていた複製魔法のジーンは私のエモノだ。よって早急に君には死んでもらいたい。」
「やれやれ・・・・・・今日は厄日だね。一日に二度も悪魔に出くわすとは。」
愚痴を言いつつもブロームはゲノムの触手を見切っていた。すぐさま魔法効果解除によって接続による支配を逃れる。
「紫のお仲間ちゃんから聞いてない?私に小細工は効かないんだよ。」
「フッ・・・・・・もとより、そのつもりさ!! 」
ゲノムはハンマー付きのポールアックスを生成する。こいつの破壊力は敵のバスターソードにも当たり負けしない。
鈍重な鉄塊同士が激突し、金属音が鳴り響く。
「へぇ・・・・・・中々いい武器持ってるじゃないか!! 」
ブロームが目を輝かせる。どうやら重量級の武器が特に好きらしい。
「そらっ!!」
「くっ・・・!」
敵が大型の刃を器用に動かしてこちらの刃を跳ね上げる。斧刃の後方に付いたハンマーの所為でバランスを取りにくい。すかさず相手がなぎ払いを放ってきた。柄の部分でガードするも弾き飛ばされた。
「はっはっは! どうしたどうしたぁ!? 」
「チッ!! 」
笑う敵がバスターソードを肩に担いで悠然と歩み寄る。ゲノムは刃を反し、ハンマー部分で打ちかかる。
ゴォォン!!
鈍い金属音が響く。刀身を盾にしてとめたようだが、衝撃までは防ぎきれまい。そのままハンマーアックスを振り抜いて大剣を手からもぎ取る。と同時に―
「食らえ!! 」
「-っ!! 」
顔面めがけてゲノムの尻尾が襲い掛かる。槍のような先端がこれまでのように相手を貫こうとしていた。
「うぐっ、あっ・・・・・・!! 」
ブロームが顔をそらして避ける。尻尾は首の毛をそぎ落とし、皮を切るにとどまった。
「だが、これで! 」
ブロームがゲノムの尻尾を掴む。
「避けられないだろう? 」
すぐさま自分の17番目のコレクションであるソードオフショットガンを呼び出す。
炸裂音とともに散弾が発射される。
衝撃で相手がぶっ飛んでいく。至近距離からの直撃だ。
「ぐふっ・・・結構、痛いものだね。」
だが、ゲノムは大して効いてはいなさそうだった。
「防弾使用か。」
「当然。」
ゲノムのロングコートに描かれた毒々しい色の塩基配列の模様はただの趣味の悪いデザインではない。それ自体が魔力を帯び、緊急時に硬化して体へのダメージを減らすのだ。
「他の夢見がちなケットシーたちと違ってただのオシャレでこんな格好をしてるわけではないさ!」
ゲノムは二丁拳銃を生成し、それを十字架のように構える。敵もショットガンに加え、サブマシンガンを出した。
「「さあ、第二ラウンドだ!! 」」
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17話
「「さあ、第二ラウンドだ!! 」」
ブロームのサブマシンガンが火を噴く。ゲノムはそれを右に左へと素早く回避し、距離をつめる。
バンッ!!
発砲。顔面を狙った右の銃はしかしブロームの右手のショットガンで銃身を払われ脇に飛んでいく。
ダンッ!ダンッ!ダンッ!!
銃身を払った勢いで構えられた左手のマシンガンがなぎ払うように掃射される。ゲノムはジャンプすることでこれをかわし、
ババババババッ!!
敵の背後を取るように飛び上がった勢いで空中から背後から両手の銃を連射する。ブロームもそれを読んでおり、マシンガンをうったまま横に回転するように移動し、射線から逃れる。
ブロームが振り返りざまにショットガンを構えるが、ゲノムは尻尾から触手を出してこれを絡め取る。
「チッ!! 」
間髪いれずにゲノムが撃つ。ブロームは横に転がって避け、弾かれたバスターソードを拾う。
「ふんっ!」
即座に地面に突き刺し、弾除けとしつつ、マシンガンで接近を防ぐ。と、同時に右手には新たに爆弾を呼び出し、投げつける。
「-!! 」
ゲノムが触手でこれを弾き返す。空中で爆発したそちらに注意がそれた。その隙に腕に双剣を持たせて踊りかかる。
ゲノムも即座に銃を構えるが遅い。ここまで接近しては剣のほうが早い。
「ふっ!」
「ぬぅ・・・!」
ゲノムはグリップエンドで刃を受け止めた。左の刃が来る。今度も止める。
「おらっ!」
「うぐっ!?」
両腕のふさがったこう着状態から逃れようとゲノムは尻尾で相手を突き刺そうとしたが、先に頭突きを食らってしまう。
「シャァァァ!!」
首を切断しようと両側から挟みこむように剣が襲い掛かる。だが、
ガシィ!!
刃が掴まれる。ジャスミンからコピーしたガントレット・マニュピレーターが空中に出現し、遠隔操作でブロームの双剣を掴んだのだ。
「残念だったね。」
すでにスフィアからコピーしたエネルギー球も配置してある。ゲノムは銃身に魔方陣を通し、エネルギー球との同時攻撃でビームを放った。
光の本流がブロームを飲み込もうとする。
対するブロームも持ちうる全ての武器を召喚してそれを打ち落とす。
すさまじい閃光と破壊音が乱舞する。その爆煙の内より、
エンジン音が響き、バイクに乗ったブロームが突進してくる。ウィリー走行で前輪を叩きつけるつもりだ。
「オラァッ!!」
「-!」
すぐにかわす。だが敵の目的は前輪を当てることではない。そのまま車体をひねって後輪をぶつけてきた。さすがに避けきれずに当たってしまう。
「ぐっ・・・・・・はっ!? 」
受身を取ったゲノムの前に複数の爆弾が投げつけられる。
(防御を―!! )
爆発。そして、煙幕が晴れる。悪魔の姿は無かった。
「終わったか。」
ブロームがつぶやく。恐るべき奴だ。どうやら悪魔と事構えるのは得策じゃあない。武器ハントは名残惜しいがまた機会を見てからだ。
「やれやれ、ここまでてこずるとは、この町と周辺にはしばらく近づかないほうがいいようだ。」
ブロームはバイクを反転させて走り去る。
その後、
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
空間が歪み、電子的な数字と文字がならんだ空間が開く。
「ふう・・・戦闘では役に立たないと思っていたが、とっさに飛び込んで正解だったな。」
ゲノムが爆発の瞬間、自分の領域を展開し、異空間に隠れることで爆発をやり過ごしたのだ。
「探知魔法・・・。」
敵の逃げた方角を特定し、追撃するのだ。
「・・・・・・見つけた。-ん? 」
(もうひとつ魔力反応。これは・・・・・・)
背後から何かをむけられる音がした。
「チッ!観察してたってわけか・・・・・・オリジナル?」
ゲノムは恨めしそうに自分に銃を突きつける存在、ジーンを睨む。
「彼女には悪いが君の能力を測るために利用させてもらった。倒させてもらうよ?生み出したものとしての責任だ。」
「はっ!やってみろ・・・!!」
「ふう、アスノ町中心には近づかないほうがいいな。」
「しかし、悪魔か・・・光る猫がいなくなった代わりに出てきたみたいだが、いったい何なんだ・・・?」
ブロームが地図を眺めながらつぶやいたそのときだった。
「知りたいのか? 」
感じたのは圧倒的なプレッシャー。背後に感じるのはビーストに似た、だがもっともっと恐ろしい呪い。いつの間にか周囲には黒い羽が舞い落ちていた。
「・・・やれやれ。本当に厄日のようだ。」
ブロームが振り返ったそこには、
「・・・・・・・・・。」
叛逆の黒い悪魔がそこにいた。
ブロームのサブマシンガンが火を噴く。ゲノムはそれを右に左へと素早く回避し、距離をつめる。
バンッ!!
発砲。顔面を狙った右の銃はしかしブロームの右手のショットガンで銃身を払われ脇に飛んでいく。
ダンッ!ダンッ!ダンッ!!
銃身を払った勢いで構えられた左手のマシンガンがなぎ払うように掃射される。ゲノムはジャンプすることでこれをかわし、
ババババババッ!!
敵の背後を取るように飛び上がった勢いで空中から背後から両手の銃を連射する。ブロームもそれを読んでおり、マシンガンをうったまま横に回転するように移動し、射線から逃れる。
ブロームが振り返りざまにショットガンを構えるが、ゲノムは尻尾から触手を出してこれを絡め取る。
「チッ!! 」
間髪いれずにゲノムが撃つ。ブロームは横に転がって避け、弾かれたバスターソードを拾う。
「ふんっ!」
即座に地面に突き刺し、弾除けとしつつ、マシンガンで接近を防ぐ。と、同時に右手には新たに爆弾を呼び出し、投げつける。
「-!! 」
ゲノムが触手でこれを弾き返す。空中で爆発したそちらに注意がそれた。その隙に腕に双剣を持たせて踊りかかる。
ゲノムも即座に銃を構えるが遅い。ここまで接近しては剣のほうが早い。
「ふっ!」
「ぬぅ・・・!」
ゲノムはグリップエンドで刃を受け止めた。左の刃が来る。今度も止める。
「おらっ!」
「うぐっ!?」
両腕のふさがったこう着状態から逃れようとゲノムは尻尾で相手を突き刺そうとしたが、先に頭突きを食らってしまう。
「シャァァァ!!」
首を切断しようと両側から挟みこむように剣が襲い掛かる。だが、
ガシィ!!
刃が掴まれる。ジャスミンからコピーしたガントレット・マニュピレーターが空中に出現し、遠隔操作でブロームの双剣を掴んだのだ。
「残念だったね。」
すでにスフィアからコピーしたエネルギー球も配置してある。ゲノムは銃身に魔方陣を通し、エネルギー球との同時攻撃でビームを放った。
「フルシュートだ!消えてなくなれ!! 」
光の本流がブロームを飲み込もうとする。
「”狂い咲き”!! 」
対するブロームも持ちうる全ての武器を召喚してそれを打ち落とす。
すさまじい閃光と破壊音が乱舞する。その爆煙の内より、
ブォォォォォ!!
エンジン音が響き、バイクに乗ったブロームが突進してくる。ウィリー走行で前輪を叩きつけるつもりだ。
「オラァッ!!」
「-!」
すぐにかわす。だが敵の目的は前輪を当てることではない。そのまま車体をひねって後輪をぶつけてきた。さすがに避けきれずに当たってしまう。
「ぐっ・・・・・・はっ!? 」
受身を取ったゲノムの前に複数の爆弾が投げつけられる。
(防御を―!! )
爆発。そして、煙幕が晴れる。悪魔の姿は無かった。
「終わったか。」
ブロームがつぶやく。恐るべき奴だ。どうやら悪魔と事構えるのは得策じゃあない。武器ハントは名残惜しいがまた機会を見てからだ。
「やれやれ、ここまでてこずるとは、この町と周辺にはしばらく近づかないほうがいいようだ。」
ブロームはバイクを反転させて走り去る。
その後、
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
空間が歪み、電子的な数字と文字がならんだ空間が開く。
「ふう・・・戦闘では役に立たないと思っていたが、とっさに飛び込んで正解だったな。」
ゲノムが爆発の瞬間、自分の領域を展開し、異空間に隠れることで爆発をやり過ごしたのだ。
「探知魔法・・・。」
敵の逃げた方角を特定し、追撃するのだ。
「・・・・・・見つけた。-ん? 」
(もうひとつ魔力反応。これは・・・・・・)
ガチャッ!
背後から何かをむけられる音がした。
「チッ!観察してたってわけか・・・・・・オリジナル?」
ゲノムは恨めしそうに自分に銃を突きつける存在、ジーンを睨む。
「彼女には悪いが君の能力を測るために利用させてもらった。倒させてもらうよ?生み出したものとしての責任だ。」
「はっ!やってみろ・・・!!」
「ふう、アスノ町中心には近づかないほうがいいな。」
「しかし、悪魔か・・・光る猫がいなくなった代わりに出てきたみたいだが、いったい何なんだ・・・?」
ブロームが地図を眺めながらつぶやいたそのときだった。
「知りたいのか? 」
感じたのは圧倒的なプレッシャー。背後に感じるのはビーストに似た、だがもっともっと恐ろしい呪い。いつの間にか周囲には黒い羽が舞い落ちていた。
「・・・やれやれ。本当に厄日のようだ。」
ブロームが振り返ったそこには、
「・・・・・・・・・。」
叛逆の黒い悪魔がそこにいた。
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18話
―過去、星見町―
バンッ!!
乾いた銃声がひとつ、響く。倒れた黒い毛に緑縞の猫を見下ろすのはこれもまた黒毛に緑縞の猫だった。
「また、だめだったか・・・・・・。」
白衣を纏い、周期表の書かれたズボンを着用し、額にはルーペ付きのゴーグルを着用したその猫の手にはいまだ煙を上げるハンドガンが握られていた。
彼女はケットシー、ジーンである。
こうして自分で自分を殺すのは何度目だったか?またしても”私”を託せる”私”は完成しなかった。
どんなに自分を複製したとしてもやはり魔力なしでは生きられない。生成時に蓄えた魔力が切れればこの通りまるで糸の切れたマリオネットのごとくぷっつり倒れ、そしてその後は次第に体が変貌し、ビーストのように猫を襲うようになってしまう。
「どうあがいても天国行きは免れないというのか・・・・・・?」
光る猫の話では魔力の尽きたケットシーは消滅してしまうという。また、にわかには信じがたい話だが、ケットシーたちの間で口授されるひとつの伝説があった。
希望を願い 呪いを受け止め 戦い続ける者たちがいる
それが私たちケットシー。 奇跡を掴んだ代償として戦いの運命を課せられた魂
その末路は消滅による救済 この世界から消え去ることで絶望の因果から解脱する
いつか訪れる終末の日 円の神、アインとかリングとか呼ばれるもの・・・の導きを待ちながら私たちは戦い続ける
悲しみと憎しみばかりを繰り返すこの救いようのない世界で、力尽きるその日まで、頑張り続けたねぎらいとして、絶望に屈し、倒れた心を救うために、
神は現れる。憎みあうことも、苦しむこともない天国へと我等を導き救ってくれる・・・
だが私は天国になど行きたくはない。いや、もちろん地獄に落ちたいわけでもないが・・・私の願いはいつだってそう、ただ生きていたい。それだけなのだ。
(私が消えたら私の家族はどうなる?せっかく病気が治って喜んでくれていたというのに・・・私はまだ、死にたくない・・・・・・!)
だが、命を契約という奇跡でつないだ以上そこから先は欲張りなのだろう。ケットシーの運命はそれを許さないのだから。
私は複製魔法によるクローンの製造を行った。”私”の記憶、癖、しぐさ、文字通り私の全てを移植することで作るもう一人の私。導かれ、魂が消える前に自ら命を断ち、彼女に直前までの記憶を引き継がせれば新しい体、新しい命の中で私はずっと生きていけるかもしれない。
テストのため私は家族から離れ、彼女と入れ替わった。何の問題も無かった。魔力切れという欠陥が見つかるまでは。プッツリ糸の切れたように倒れた”私”を心配し、親はすぐに病院に駆け込んだ。ベッドに寝かされた私のクローンに、私は隙を見て銃で魔力を打ち込み、その場をやり過ごした。
(これじゃあだめだ。また新しく作り直さないと。とりあえず、いったんまた入れ替わる必要があるな。)
その夜。私はクローンを始末した。そして後日、また新しいものを作り、入れ替わった。
(ふっ、・・・・・・われながら、ひどい妄執に取り付かれていたな。)
そして今、私は私の”罪”に銃口を向けている。愚かにも私は私自身に牙を向けられて、初めて目を覚ましたのだ。
確かに生きていたいのは事実だ。それは今も変わらない。現に生命を冒涜した私の罪は今、形となって私の目の前にいる。
悪魔。そう、私は悪魔を作ってしまった。
『会いたかったよ。オリジナル。』
あの日、もう一人の私が現れたとき、私はハンマーで頭を殴られた気分だった。きっと彼女は自分が作られた生命だと知ってしまったんだ。そして私を消すために来た。それは仕方の無いことだ。きっと私もそうするだろう。だが、彼女があのレヴィという悪魔のいうとおり、全てのケットシーにその矛先を向けてしまったなら、円の神とそこに導かれるはずの魂にまで仇をなすなら、阻止しなくてはならない。
(自分の全てが移植されたもの・・・・・・・全てを持っている私には分からないが、きっと逆の立場なら私もああなっていたのか)
(きっと彼女を悪魔にしたのは孤独だけじゃない。そう、今まで私が殺してきた全ての”私”、そのツケがきたんだ)
(私のわがままで世界を壊させるわけには行かない。彼女とともに、私も地獄に落ちる!!)
「倒させてもらうよ?生み出したものとしての責任だ。」
悪魔の私が銃を右手に出した。
「はっ!やってみろ・・・!!」
バシィンッ!!
(勝つ。絶対に・・・!!)
ゲノムは素早い動きで敵の構えた銃口を尻尾でそらし、反転して自分の銃を相手の顔面に構える。敵の弾丸が脇を掠めるが見向きもしない。
発砲。しかし相手も左手で側面からこちらの銃をそらし、避ける。下から右手の銃が来る。こちらも左手で相手の銃口を下げさせ、弾は地面をうがった。
再び照準を合わせるが今度は下から払い上げられ、弾丸は頭上にそらされた。敵が右手を回してこちらの拘束から逃れ、胸を狙って発砲してくる。右手で左に受け流しつつ、体をひねって回り距離を開けつつ、照準、同じく反転した相手が発射した弾丸をこちらの弾で撃ち落とす。
「-!」
「・・・・・・!!」
じりじりとお互いに次の動きを観察し読む。
「君は私が止める。」
「させるものかよ!」
お互いのハンドガンの弾が連続で火を噴く。銃弾は全て寸分の狂いも無くかち合い、弾かれていく。ジーンが距離をつめてくる。再び接近戦で撃ち合う気だ。
(だが、-!!)
ゲノムは接続魔法の触手を尻尾から伸ばす。不可視で魔力探知にも引っかからないこれをつなぎ、体の自由を奪う。いけー!
バチンッ!!
「何ィ!?ぐっ!?」
接続魔法が弾かれた。ひるんだ私は数発の弾を回避し損ねた。とっさに、銃のグリップエンドに装備されたハンドアックスの刃でそれを弾いた。
「貴様、それは―!!」
接続が弾かれた瞬間、一瞬だけ見えた。
「前の戦いでネブラが切断した君の触手、調べて複製させてもらった。自分と同じ魔法には接続できない。それがその魔法の弱点だ!」
こいつ、不可視状態の触手をサラシのように身体に巻いている!!それで、接続魔法が弾かれたのか・・・!だがっ―!!
「想定済みさ。”私”が考えることだからね。」
そう、対策されるのなど初めから分かっている。この状態で勝ってこそ私はジーンを超え、ゲノムになれるのだ!!
ゲノムは銃をもう一丁構える。ジーンもまた同じ。互いに二丁拳銃。それだけではない。
「「マシンピストルモード、魔力充電完了・・・・・・!!」」
フルオートの連射。弾丸の嵐を巻き起こすべく、白のケットシーと黒の悪魔が狙いを定めた。
「ガハッ・・・・・・・!!」
バスターソードが地面に突き刺さる。
(冗談じゃない!)
ブロームは膝を突いて、目の前の悪魔を睨む。
「・・・・・・。」
おぞましい竜の幻影を従えた悪魔は腕組をしたままこちらを見下ろす。
すでに持ちうる武器のほぼ全てが破壊されていた。逃亡も試みたが必ず先回りされ、振り切れない。
(冗談じゃない!冗談じゃない!!冗談じゃない!!!)
クソ、なんだって言うんだ!?いつもどおり武器ハントをして、叩きのめしたヒヨッコを踏みつけて命を狩り、武器に名を刻んで最高の愉悦を味わうはずだったのに!こんな、こんなぁ―!!
「なんなんだ、何なんだよお前ら悪魔は!?」
その慟哭に悪魔が口を開く。
「俺達は悪魔。孤独から生まれ、呪いを抱いたもの。」
「何をわけのわからないことを!!」
ブロームは悪魔をバスターソードをでなぎ払う。しかし大振りな攻撃はさっきから何度もやられているように身体を羽根にして避けられた。
「お前のような極悪人でも神は天国に導くだろう。自分にとって都合のいいやつしか救わないような偽善者になりたくないだろうからな。」
背後で集合合体した悪魔がブロームを爪の一本で指して言う。
「だが、お前はそっち側に行くべき存在じゃない。」
「へぇ・・・。」
ブロームは冷や汗を流しながらもバスターソードを担ぐ。
「言ってくれるね。まあ私も自分が善人だなんて一ミリも思っちゃいないさ。それともなにか?私も悪魔にしてくれるのかい?』
その言葉にこれまで目を伏せていた悪魔がその目を開く。オッドアイだった。それもただのオッドアイではない。
その青い右目と、赤い左目・・・その両方に渦が見えた。片や生命を育む光の渦、片や生命を飲み込む呪いの渦。
「マッド・ブローム。お前は、世界を壊したくなるほど、誰かを愛したことはあるか?」
「何を言って・・・?」
「・・・・・・ならば、お前に悪魔になる資格は無い。」
瞳に映る渦が激しく逆巻く。
「っ!!」
「お前の魔法は、神に渡すと厄介だ。お前は―。」
―地獄に落ちろ!!-
悪魔の背から翼が伸び、禍々しい呪いのエネルギーを放出し始める。あれを撃たれたらやばい―!!
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
ブロームがバスターソードを振り下ろす。
(いないっ!?)
「マッド・ブローム。これで貴様は終わりだ。」
悪魔はすでに背後に立っていた。
「くっ!?」
すぐに振り返ろうとするが身体がおかしい。力が抜けていく。
「なっ!?これ・・・は―!!」
身体がまるで砂のように崩れていく。一体何が!?魔法効果解除が効かない!?
「俺は悪魔。名はラプラス。ラプラス・デモン。」
(ラプラスの悪魔!?まさかこれは―!!)
振り返った悪魔が左手で顔の左半分を覆ってみせる。
「俺の右目は全ての”始まり”を見届け。」
そしてその手をゆっくりスライドさせて右半分を覆う。
「俺の左目は全ての”終わり”を見送る。」
「貴様に絡みつく因果の糸を全て断った。全ての繋がりを無くした貴様はもう―。」
そこにブロームの姿は無かった。あるのは彼女のバスターソードだけ。
「-どこにもいない。」
そのバスターソードに彫られた犠牲者の名前が次々と消えていく。ブロームの存在が消えたことで犠牲者もまた、ビーストや、他の要因で死んだように世界が改竄されていくるのだ。
「俺はたどり着いてみせる。神を倒し、世界を再編し、あの子を、おれ自身を、奪い返す。」
どこかで聞いているであろう神を睨みつけるように天を見上げ、唸る様に呟く。
残っていたバスターソードが今、消滅した。
バンッ!!
乾いた銃声がひとつ、響く。倒れた黒い毛に緑縞の猫を見下ろすのはこれもまた黒毛に緑縞の猫だった。
「また、だめだったか・・・・・・。」
白衣を纏い、周期表の書かれたズボンを着用し、額にはルーペ付きのゴーグルを着用したその猫の手にはいまだ煙を上げるハンドガンが握られていた。
彼女はケットシー、ジーンである。
こうして自分で自分を殺すのは何度目だったか?またしても”私”を託せる”私”は完成しなかった。
どんなに自分を複製したとしてもやはり魔力なしでは生きられない。生成時に蓄えた魔力が切れればこの通りまるで糸の切れたマリオネットのごとくぷっつり倒れ、そしてその後は次第に体が変貌し、ビーストのように猫を襲うようになってしまう。
「どうあがいても天国行きは免れないというのか・・・・・・?」
光る猫の話では魔力の尽きたケットシーは消滅してしまうという。また、にわかには信じがたい話だが、ケットシーたちの間で口授されるひとつの伝説があった。
希望を願い 呪いを受け止め 戦い続ける者たちがいる
それが私たちケットシー。 奇跡を掴んだ代償として戦いの運命を課せられた魂
その末路は消滅による救済 この世界から消え去ることで絶望の因果から解脱する
いつか訪れる終末の日 円の神、アインとかリングとか呼ばれるもの・・・の導きを待ちながら私たちは戦い続ける
悲しみと憎しみばかりを繰り返すこの救いようのない世界で、力尽きるその日まで、頑張り続けたねぎらいとして、絶望に屈し、倒れた心を救うために、
神は現れる。憎みあうことも、苦しむこともない天国へと我等を導き救ってくれる・・・
だが私は天国になど行きたくはない。いや、もちろん地獄に落ちたいわけでもないが・・・私の願いはいつだってそう、ただ生きていたい。それだけなのだ。
(私が消えたら私の家族はどうなる?せっかく病気が治って喜んでくれていたというのに・・・私はまだ、死にたくない・・・・・・!)
だが、命を契約という奇跡でつないだ以上そこから先は欲張りなのだろう。ケットシーの運命はそれを許さないのだから。
私は複製魔法によるクローンの製造を行った。”私”の記憶、癖、しぐさ、文字通り私の全てを移植することで作るもう一人の私。導かれ、魂が消える前に自ら命を断ち、彼女に直前までの記憶を引き継がせれば新しい体、新しい命の中で私はずっと生きていけるかもしれない。
テストのため私は家族から離れ、彼女と入れ替わった。何の問題も無かった。魔力切れという欠陥が見つかるまでは。プッツリ糸の切れたように倒れた”私”を心配し、親はすぐに病院に駆け込んだ。ベッドに寝かされた私のクローンに、私は隙を見て銃で魔力を打ち込み、その場をやり過ごした。
(これじゃあだめだ。また新しく作り直さないと。とりあえず、いったんまた入れ替わる必要があるな。)
その夜。私はクローンを始末した。そして後日、また新しいものを作り、入れ替わった。
(ふっ、・・・・・・われながら、ひどい妄執に取り付かれていたな。)
そして今、私は私の”罪”に銃口を向けている。愚かにも私は私自身に牙を向けられて、初めて目を覚ましたのだ。
確かに生きていたいのは事実だ。それは今も変わらない。現に生命を冒涜した私の罪は今、形となって私の目の前にいる。
悪魔。そう、私は悪魔を作ってしまった。
『会いたかったよ。オリジナル。』
あの日、もう一人の私が現れたとき、私はハンマーで頭を殴られた気分だった。きっと彼女は自分が作られた生命だと知ってしまったんだ。そして私を消すために来た。それは仕方の無いことだ。きっと私もそうするだろう。だが、彼女があのレヴィという悪魔のいうとおり、全てのケットシーにその矛先を向けてしまったなら、円の神とそこに導かれるはずの魂にまで仇をなすなら、阻止しなくてはならない。
(自分の全てが移植されたもの・・・・・・・全てを持っている私には分からないが、きっと逆の立場なら私もああなっていたのか)
(きっと彼女を悪魔にしたのは孤独だけじゃない。そう、今まで私が殺してきた全ての”私”、そのツケがきたんだ)
(私のわがままで世界を壊させるわけには行かない。彼女とともに、私も地獄に落ちる!!)
「倒させてもらうよ?生み出したものとしての責任だ。」
悪魔の私が銃を右手に出した。
「はっ!やってみろ・・・!!」
バシィンッ!!
(勝つ。絶対に・・・!!)
ゲノムは素早い動きで敵の構えた銃口を尻尾でそらし、反転して自分の銃を相手の顔面に構える。敵の弾丸が脇を掠めるが見向きもしない。
発砲。しかし相手も左手で側面からこちらの銃をそらし、避ける。下から右手の銃が来る。こちらも左手で相手の銃口を下げさせ、弾は地面をうがった。
再び照準を合わせるが今度は下から払い上げられ、弾丸は頭上にそらされた。敵が右手を回してこちらの拘束から逃れ、胸を狙って発砲してくる。右手で左に受け流しつつ、体をひねって回り距離を開けつつ、照準、同じく反転した相手が発射した弾丸をこちらの弾で撃ち落とす。
「-!」
「・・・・・・!!」
じりじりとお互いに次の動きを観察し読む。
「君は私が止める。」
「させるものかよ!」
お互いのハンドガンの弾が連続で火を噴く。銃弾は全て寸分の狂いも無くかち合い、弾かれていく。ジーンが距離をつめてくる。再び接近戦で撃ち合う気だ。
(だが、-!!)
ゲノムは接続魔法の触手を尻尾から伸ばす。不可視で魔力探知にも引っかからないこれをつなぎ、体の自由を奪う。いけー!
バチンッ!!
「何ィ!?ぐっ!?」
接続魔法が弾かれた。ひるんだ私は数発の弾を回避し損ねた。とっさに、銃のグリップエンドに装備されたハンドアックスの刃でそれを弾いた。
「貴様、それは―!!」
接続が弾かれた瞬間、一瞬だけ見えた。
「前の戦いでネブラが切断した君の触手、調べて複製させてもらった。自分と同じ魔法には接続できない。それがその魔法の弱点だ!」
こいつ、不可視状態の触手をサラシのように身体に巻いている!!それで、接続魔法が弾かれたのか・・・!だがっ―!!
「想定済みさ。”私”が考えることだからね。」
そう、対策されるのなど初めから分かっている。この状態で勝ってこそ私はジーンを超え、ゲノムになれるのだ!!
ゲノムは銃をもう一丁構える。ジーンもまた同じ。互いに二丁拳銃。それだけではない。
「「マシンピストルモード、魔力充電完了・・・・・・!!」」
フルオートの連射。弾丸の嵐を巻き起こすべく、白のケットシーと黒の悪魔が狙いを定めた。
「ガハッ・・・・・・・!!」
バスターソードが地面に突き刺さる。
(冗談じゃない!)
ブロームは膝を突いて、目の前の悪魔を睨む。
「・・・・・・。」
おぞましい竜の幻影を従えた悪魔は腕組をしたままこちらを見下ろす。
すでに持ちうる武器のほぼ全てが破壊されていた。逃亡も試みたが必ず先回りされ、振り切れない。
(冗談じゃない!冗談じゃない!!冗談じゃない!!!)
クソ、なんだって言うんだ!?いつもどおり武器ハントをして、叩きのめしたヒヨッコを踏みつけて命を狩り、武器に名を刻んで最高の愉悦を味わうはずだったのに!こんな、こんなぁ―!!
「なんなんだ、何なんだよお前ら悪魔は!?」
その慟哭に悪魔が口を開く。
「俺達は悪魔。孤独から生まれ、呪いを抱いたもの。」
「何をわけのわからないことを!!」
ブロームは悪魔をバスターソードをでなぎ払う。しかし大振りな攻撃はさっきから何度もやられているように身体を羽根にして避けられた。
「お前のような極悪人でも神は天国に導くだろう。自分にとって都合のいいやつしか救わないような偽善者になりたくないだろうからな。」
背後で集合合体した悪魔がブロームを爪の一本で指して言う。
「だが、お前はそっち側に行くべき存在じゃない。」
「へぇ・・・。」
ブロームは冷や汗を流しながらもバスターソードを担ぐ。
「言ってくれるね。まあ私も自分が善人だなんて一ミリも思っちゃいないさ。それともなにか?私も悪魔にしてくれるのかい?』
その言葉にこれまで目を伏せていた悪魔がその目を開く。オッドアイだった。それもただのオッドアイではない。
その青い右目と、赤い左目・・・その両方に渦が見えた。片や生命を育む光の渦、片や生命を飲み込む呪いの渦。
「マッド・ブローム。お前は、世界を壊したくなるほど、誰かを愛したことはあるか?」
「何を言って・・・?」
「・・・・・・ならば、お前に悪魔になる資格は無い。」
瞳に映る渦が激しく逆巻く。
「っ!!」
「お前の魔法は、神に渡すと厄介だ。お前は―。」
―地獄に落ちろ!!-
悪魔の背から翼が伸び、禍々しい呪いのエネルギーを放出し始める。あれを撃たれたらやばい―!!
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
ブロームがバスターソードを振り下ろす。
(いないっ!?)
「マッド・ブローム。これで貴様は終わりだ。」
悪魔はすでに背後に立っていた。
「くっ!?」
すぐに振り返ろうとするが身体がおかしい。力が抜けていく。
「なっ!?これ・・・は―!!」
身体がまるで砂のように崩れていく。一体何が!?魔法効果解除が効かない!?
「俺は悪魔。名はラプラス。ラプラス・デモン。」
(ラプラスの悪魔!?まさかこれは―!!)
振り返った悪魔が左手で顔の左半分を覆ってみせる。
「俺の右目は全ての”始まり”を見届け。」
そしてその手をゆっくりスライドさせて右半分を覆う。
「俺の左目は全ての”終わり”を見送る。」
「貴様に絡みつく因果の糸を全て断った。全ての繋がりを無くした貴様はもう―。」
そこにブロームの姿は無かった。あるのは彼女のバスターソードだけ。
「-どこにもいない。」
そのバスターソードに彫られた犠牲者の名前が次々と消えていく。ブロームの存在が消えたことで犠牲者もまた、ビーストや、他の要因で死んだように世界が改竄されていくるのだ。
「俺はたどり着いてみせる。神を倒し、世界を再編し、あの子を、おれ自身を、奪い返す。」
どこかで聞いているであろう神を睨みつけるように天を見上げ、唸る様に呟く。
残っていたバスターソードが今、消滅した。
DCD- 未登録ユーザー
Re: 神話~Future to the desire
毎回更新されるごとに深まる謎、明らかになる秘密、そして迫力ある戦闘描写......。
今大好きな作品です! ファンタジーの世界感もとても素敵で、勉強になることばかりです。
葉っぱの影から応援しています。更新を楽しみにしています!
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ラッキークロー- 副長
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