Cyan ◆もう一つの結末◆  2-4から3-6まで

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Cyan ◆もう一つの結末◆  2-4から3-6まで

投稿 by ナットテイル on Tue Feb 16, 2016 6:00 pm

こんばんは!新しいBBSに書き込みをさせていただくのは初めてになります。
ナットテイル(木の実尻尾)と申します。ちょうど一年ほど前に、よくこのBBSにお邪魔させていただいていました。


本家の世界を舞台とした小説を書かせていただきたいと思います。世界観はほとんど本家のものと同じです。一匹、オリジナルのキャラクターがいます。
キャラクターの独自設定が激しいです。また、かなり性格を想像で付け加えてしまったキャラクターがいます。
2期4巻から物語を始めていますが、本編で起きた出来事が起こらない、また本編では起きない出来事が起こることが多々あります。

拙い文書ではありますが、一生懸命書かせていただきます。よろしくお願いします。
私の小説で不快に感じるようなことがありましたら、遠慮なくおっしゃってください。
また、機械音痴なもので、操作方法を間違えてしまうことがあると思います。
誤った操作によって文字が変になっていたり、物語と関係ないものが投稿中に含まれてしまったりしていた場合は教えていただけると嬉しいです。
書き溜めた分は少しあるのですが、更新速度は遅めになってしまうと思います。少しずつではありますが進めていきたいと思います。





◆主な登場猫
(これから少しずつ付け加えていくと思います)




シアン(シアンポー)

日を浴びると輝く、長くて赤い毛に宝石のように煌めく青緑色の目をした小柄な雌猫。
この物語の主人公。大人しく引っ込み思案。特に年上の雄猫が苦手で目を見て話すことができない。
物事を一歩引いた位置から冷静に見ることができるため、感情表現豊かなホワイトポーの気持ちを静かに抑えることもしばしば。
意志が強く、責任感も同じように強い。はっきりと本論を切り出すことが苦手で頭で色々と考えても大体は言葉にならない。
やや不眠症気味。偏食家で食が細いため、よくホワイトポーに叱られている。
戦いの文化がない部族の生まれなので、戦いを嫌っている。狩りは大得意。




ホワイトポー

シアンの親友。喜怒哀楽が激しく、感情表現や表情が豊かな少女。
基本的には聞き分けの良い素直な猫。ハキハキとしていて明るく、思ったことは大抵はっきりと言う。
負けず嫌いで売られた喧嘩は買わずにいられない。シアンとは正反対な部分が多い。
話好きだが聞き好きでもある。恋多き少女で少しのことで恋に落ちてしまう。
美しい透き通るような白い毛をしているが、森の中で目立ちすぎるので自分では嫌がっている。
前の森が破壊された出来事から人間を極度に怖がっている。
いつか出来るであろう大切な存在を守るために強くなることを望んでいる。




スパイダーポー

不器用でぶっきらぼうな少年。痩せていて足がすらりと長い。
絶賛反抗期中で誰にも素直な態度を取れない。
部族の生まれでないシアンをいつも差別するような態度をとって馬鹿にしている。
ホワイトポーとはいつも喧嘩をしている。なんだかんだ言って優しい部分もあるため、シアンも彼を嫌いにはなれない。
弟の命を奪った怪物に強い恐怖心を持っており、怪物の前で軽率な行動をとった猫には本気で怒る。




ソーンクロー

シアンの指導者。過激で喧嘩っ早く豪快。
あまりに自由で無茶苦茶なところがある性格は部族の中でも賛否両論。
無邪気な少年の心を大人ながらも忘れていない。シアンは彼を尊敬しており、ソーンクローもシアンの才能を認めている。




スートファー

新米戦士。臆病で怖がり。三兄弟の次男。
見習いのころは病弱で自分の殻に閉じこもりがちな性格だった。
生と死の間を彷徨っていたが、兄のレインウィスカーが何とか生の方向に引き止めていた。
訓練もあまり参加できずほとんど看護部屋で1日を過ごす毎日を送っていた。
コケばかりとっていたため、コケ採り名人と呼ばれていたほど。
グレーストライプが、ただ死に向かって生きていた彼の人生を大きく変える。
気の良い性格でいつも優しいが、破滅的な危うさも秘めている。繊細で壊れやすいガラスのハートの持ち主。
いつも優秀な兄弟と比べられてきたため、自己肯定感が低い。
グレーストライプ至上主義者。また、運命の赤い糸が見えるらしい。




レインウィスカー

スートファーの兄。三兄弟の長男でもある。
礼儀正しく物腰柔らか。気さくで話しやすい。
足が速く、優秀な狩猟猫のため俊足のハンターと呼ばれている。
幼いころから危うい弟と気の強い妹の面倒を見てきたため気苦労が絶えなかった。
指導者になることが戦士としての最高の喜びだと考えている。




ソーレルテイル

気が強く、ツンツンした若い女戦士。
三兄弟の末っ子。はっきりとした顔立ちで、とても美しい猫だが、大抵いつも不機嫌なので皆下手に近寄れない。
生まれつき戦いの才能に恵まれており、華麗な攻撃技は達人の域に達している。
親友のリーフプールにのみ優しく面倒見の良い部分を見せることができる。
幼いころに両親を失ったためか自分の身を守るために弱みを他の猫に見せることを嫌う。
意地っ張りで素直な態度をなかなかとらない。朝は特に機嫌が悪いらしい。
スートファーとは、ある出来事が原因で兄弟の縁を切っている状態。




ブラクンファー

皆からの信頼も厚いベテラン戦士。ホワイトポーの指導者。
いつも落ち着いており、カッとなりやすい後輩戦士であるソーンクローやクラウドテイルのなだめ役にもなっている。
穏やかで諭すようなツッコミが多い。スートファーの持論の賛同者でもある。
個性豊かなサンダー族の面々の中では、1、2を争う常識人。
ソーレルテイルの愛ゆえの暴言にはもう慣れっこである。




クラウドテイル

ソーンクローの一番の親友。
彼もまた、ソーンクローと同じように少年の心を持っている。
子猫にも負けず劣らずの好奇心があり、部族一の情報通といっても過言ではない。
娘のホワイトポーが大好きで、かなりの過保護。ブラクンファーにはよく呆れられている。
無神経な発言も多いが、とても強い家族愛は本物。




ブライトハート

クラウドテイルの妻でホワイトポーの母。
見習いのときに犬に襲われ大怪我を負ったが、クラウドテイルの強い励ましとサポートによって奇跡的な回復をみせた。
大怪我の後遺症にも負けずに強く前向きに生きる母をホワイトポーは強く尊敬しており、シアンもまた敬愛している。




ダストペルト

気難しい雄猫。たくましく大きな猫。
厳しく、ぶっきらぼうだが部族への忠義心は強い。今は息子のスパイダーポーととても仲が悪い。




ファーンクラウド

ダストペルトの妻でアッシュファーの妹。
消えてしまいそうな儚げな美しさと危うさを感じさせる猫。どこか浮世離れした雰囲気をもつ。
鈴の音のように澄んだ美しい声をしているが、大きな声を出すことは滅多になく、いつもは今にも消え入りそうな小さな声で俯きながら話す。




バーチキット

ダストペルトとファーンクラウドの子どもでスパイダーポーの弟。
早く見習いになりたがっている。のんびり屋でマイペース。




サンドストーム

強く気高い女戦士。しっかり者で弱音はほとんど言わない。
いつも悩み多き夫のファイヤスターをそばで支えている。
お告げの猫であるシアンのことを警戒しており、壁を間に一枚挟んだようなどこかよそよそしい態度を見せる。




ファイヤスター

堂々とした姿が皆の憧れでもある族長。
シアンを警戒しつつ、少し恐れてもいる。賢く、常にサンダー族のことを考えている。




シンダーペルト

思慮深い看護猫。薬草の知識は非常に豊富。サンダー族の猫だけでなく、他部族の猫からも強い信頼を集める。
優しい雰囲気とそばに居るだけで感じることが出来る安心感を持つ。
一言一言に説得力があるため、彼女にアドバイスを求める部族猫は多い。




リーフポー

見習いながらもベテラン看護猫にも引けをとらない看護の才能とお告げを読み取る才能がある。
物静かで控えめな性格でおしとやか。
明るく元気いっぱいなスクワーレルフライトとは性格が正反対だが、二匹は不思議な絆で結ばれており、とても仲が良い。




スクワーレルフライト

活発でややおてんば。眩しい太陽のような性格の猫。
皆の人気者であり、ホワイトポーの憧れの存在でもある。




ブランブルクロー

発達した筋肉を持つ大きくたくましい雄猫。カリスマ性を秘めており、どこか孤高のオーラを持つ存在。
スクワーレルフライトと話しているときには、いつもは感じられる、彼のぴんと張り詰めた空気が和らぐ。




アッシュファー

いつも無愛想で他の猫を遠ざけるような態度をとる雄猫。
ボソボソと小さな低い声で話し、決して自分から目を合わせようとはしない。
美しい藍色の目をしているが、その目はいつも深い寂しさに満ちている。部族の猫からは猫嫌いだと思われている。
仲間の命が危険に晒されると、普段の性格とは一変して自分の身を犠牲にしてでも必死に助けようとする。
シアンは彼は本当は猫嫌いなわけではないと考え、猫を遠ざける理由を知ろうとするのだが…。
自分をやたらと気にかけるシアンを煩わしく思っている。
大抵朝から晩まで訓練に没頭しており、何かに熱中すると周りの呼びかけにも答えないほどにのめり込む。




ロングテイル

目が悪くなってしまったため、若くして引退した雄猫。
ホワイトポーと仲が良く、いろいろな話を彼女に聞かせている。




ゴールデンフラワー

サンダー族最年長ながら、気品にあふれた上品な落ち着きのある雌猫。




マウスファー

気性の激しい雌猫。スパイダーポーの指導者だったためよく喧嘩をしているが、不思議と仲は良い。




ぶち猫

シアンにお告げをした美しいぶち猫。その正体はシアンにも分からない。
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Re: Cyan ◆もう一つの結末◆  2-4から3-6まで

投稿 by jayheart on Tue Feb 16, 2016 7:12 pm

ナットテイルs
初めまして小5女子のjayheart(ジェイハート:カケスの心)です‼(名前を載せる際はカタカナで良いですよ!)
遅れましたが新小説おめでとうございます‼(っしゃ1コメげっとぉ~
シアン(シアンポー?)がどんな風にカツヤクするか楽しみです‼
間違いは指摘OKなのですね?きっと私は結構気付いたりするはずです‼バンバンいきますね‼
頑張ってください

jayheart
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Re: Cyan ◆もう一つの結末◆  2-4から3-6まで

投稿 by ナットテイル on Tue Feb 16, 2016 7:22 pm

jayheart wrote:ナットテイルs
初めまして小5女子のjayheart(ジェイハート:カケスの心)です‼(名前を載せる際はカタカナで良いですよ!)
遅れましたが新小説おめでとうございます‼(っしゃ1コメげっとぉ~
シアン(シアンポー?)がどんな風にカツヤクするか楽しみです‼
間違いは指摘OKなのですね?きっと私は結構気付いたりするはずです‼バンバンいきますね‼
頑張ってください

ジェイハートさん、初めまして~!コメントしてくださってありがとうございます!
ジェイハートさんのご期待に少しでも沿えるように一生懸命書かせていただきたいと思いますっ!
間違いの指摘に関してはしていただけると個人的にありがたいですw
間違いには結構お気づきになるということでとっても心強いです!
シアンの活躍も、頑張ってこれから書いていきますね~!
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Re: Cyan ◆もう一つの結末◆  2-4から3-6まで

投稿 by L ͛k ͛ on Wed Feb 17, 2016 4:16 pm


登場猫紹介の緻密さ、丁寧さから漂う凄まじい良作臭……!

ひっそり応援していますp(`・ω・´)q!
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Re: Cyan ◆もう一つの結末◆  2-4から3-6まで

投稿 by ナットテイル on Wed Feb 17, 2016 7:50 pm

LK@ハトちゃん可愛い! wrote:
登場猫紹介の緻密さ、丁寧さから漂う凄まじい良作臭……!

ひっそり応援していますp(`・ω・´)q!

コメント、ありがとうございます!
ご期待に沿えるかどうかは分からない稚拙な文章ですが、少しでも良いものになるように努力しつつ描いていきたいと思います…!
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Re: Cyan ◆もう一つの結末◆  2-4から3-6まで

投稿 by ナットテイル on Wed Feb 17, 2016 8:14 pm

プロローグを投稿させていただきます!最初の部分ですが、3期6巻のネタバレを含んでいます。
少しグロテスクな表現もあります。苦手な方はご注意ください。



◆プロローグ◆ ~本来の結末~
 一匹の若い黒猫が森の中を歩いていく。その足取りは心なしか不安げで、その憂いに満ちた緑色の目にもほんの少しではあるが、しっかりとした不安の色が浮かんでいる。もちろん黒猫自身も、自分が一抹の不安をこの計画に対して抱いているのだと、理解している。ただ、それを心では認めていなかった。頑なに認めようとしなかった。心は不安に押しつぶされ、今にも根元からぽっきりと折れそうであったが、彼女には高いプライドがあった。彼女が自分の出生に関する、知りたくなかった事実を知るきっかけになった事件の後も、必死になって守り続けてきたそのプライドこそが、彼女の壊れそうな心を必死に支え続けていた。それに、彼女は高い志を持っていた。私は、将来族長となる猫だ。彼女は不安を塗りつぶすようにそう思った。自分が族長になった時のことを考えると心が落ち着く。最近やや情緒不安定気味であった彼女にとってこの妄想は、言うなれば一種の精神安定剤のようなものだ。
未来の族長が、この程度のことで不安を感じてどうするというの?黒猫は自分への情けなさと悔しさが沸き上がり、思わず奥歯をかみしめた。自然と足に力がこもり、彼女の足の運びはだんだんと速くなっていき、最終的には地を蹴った。そう、黒猫は自身の中に広がる不安の渦を殺すためにあえて堂々と顔をあげ、尻尾をぴんと立てて肩で風を切って走りだしたのだ。偉大なる族長、ファイヤスターが残虐な猫スカージとの戦いに向かった時のように。自分がこれから行うことは、正義の革命だ。何を恐れる必要がある?
 
走ることによって幾分か恐怖心は和らいだ。黒猫は思わず小さな安堵のため息をついた。怖くなんかない。怖くなんかない。自分を暗示にかけるように何度も呟く。悪いほうに考えてはいけない、良いほうにだけ考えるべきだ。私の計画は完璧のはず。計画には一つの抜かりもないのだから。
私は今まで何度も「今日実行に移すこと」について考えてきた。というよりもあの衝撃的で、あまりにもショッキングな事件のあとはそのことしか考えていないといっても過言ではない。私の考えた計画を実行することが、果たして私がするべき最善の選択なのかは正直分からない。私は誰にも、兄弟にすらもこのことを相談していないのだ。誰の意見も聞いていない。しかし、あの私達の処刑場ともいえる大集会を今夜に控えた今日。私達にはこれしか方法が残されていないのだ。他の方法をとるには遅すぎる。今から兄弟たちと相談したってはっきりとした答えなんか出るわけがない。兄さんは、戦いのときはとても勇気に溢れているのにこのことになると慎重すぎるし、弟は自分の意見を言わなさすぎる。それに、二匹ともあの猫と話し合って解決する、以上の意見を出そうとはしないだろう。私が今からしようとしていることなんて思いもよらないだろうし、もしも私がそれを提案したとしても二匹とも怒り狂いながら却下するに決まっているのだ。駄目だ。と私は思う。兄さんと弟は考えが保守的すぎるのだ。話し合いなんて全く意味がない。あいつは話が通じる相手じゃない。事実、私達兄弟は十分あいつと話し合おうとしたのだ。あいつが私達の話を全く聞く気がないということは、私たち自身が身をもって体験している。
相手がこっちの話を聞く気がないなら…。
 それならば、私が知る限りでは、とるべき方法はたった一つしかない。
 
キャンプからどんどんと遠ざかるにつれて黒猫の不安感は増していった。今すぐキャンプに駆け戻りたい。兄弟ととりとめもない話をして笑い合いたい。戦士部屋のあたたかいコケのベッドで丸くなって眠りたい。しかしもう後戻りはできないのだ。黒猫はぞっとした。足を進めても待っているのは地獄。しかし後戻りしたら更なる地獄が待ち受けている。ぞわぞわとした鳥肌を抑えることはできなかった。黒猫は思わず駆ける足を止めそうになった。足を止めては駄目だ。止めたら終わりだ。心の奥で叫ぶ弱虫の声を必死で無視した。聞いたら駄目だ。聞いたら終わりだ。息が荒くなり、思わず転びそうにもなる。知らず知らずのうちに全身の毛が逆立っていた。
私の標的はこっちの方向へ、「一匹で」狩りへ向かったという。それとなく、副長にたずねたのだからそれに間違いはないだろう。私は、深い理由なんて何もないという風に装って、彼に標的の行方を聞いたのだ。大丈夫。疑われなんてしない。きっと彼は昼下がりの忙しさに心を奪われて、私がそんな質問をしたことはもう忘れているはずだ。

いてほしい。という気持ちといないでほしい。という二つの感情がぶつかり合う中、黒猫は走るのをやめた。あいつの香りがする。においを嗅ぐのも嫌なくらい嫌いなあいつの。黒猫はじっと身を伏せてじりじりと前進した。茂みの陰から、川辺にたたずむあいつの姿が見えた時、安心とも絶望ともとれるような意味の分からない混乱した感情が彼女の心をぐちゃぐちゃにかき乱して埋め尽くした。思わず叫びだしそうになり必死でこらえる。がくがくと体中の震えが止まらなかった。嫌だ!やりたくない!その気持ちとは反して前足がゆっくりと前に出る。後ろ足がそれに続く。足の動きを止めることはできなかった。浅く速い呼吸しかできない。彼女は半分涙目になっていた。まるで母猫を見失ってうろたえる子猫のようなまなざしを標的に向ける。キャンプを出てきたときに、彼女にあった自信はもうなくなっていた。自分自身を勇気づける言葉すら何も心に浮かばない。それでも黒猫は足を止めない。前足は彼女の緊張を表しているようで上手く動かない。それでも、彼女の足からは、おぼろげではあるがその足を進める原動力となっている闘志を表すように、自然と鋭い爪が出ていた。己の計画を実行するために、もうこれしか私達に残された道はない。


標的の雄猫が忍び寄る黒猫に気が付いたとき、彼女はもうすぐ彼の後ろに迫っていた。雄猫の背筋が凍った。黒猫の緑色の目は今までに見たこともないような色をしていた。いろいろな感情をごちゃごちゃと混ぜて、その上から憎悪をぶちまけたような深い色。雄猫はそこからただならぬものを感じ、思わず声をあげようとした。その刹那、黒猫の前足が雄猫の喉に突き刺さった。濁ったうめき声のようなものが雄猫の口から零れ落ちた。黒猫は恐ろしいほどに落ち着いていた。雄猫の首に深く爪を食い込ませ、獲物にするのと同じように鮮やかに切り裂いた。血が黒猫の前足を濡らした。雄猫のうめき声はだんだんと弱々しくなっていく。黒猫はそれを冷たい目で見つめていた。雄猫はついにうめき声をあげなくなり、大きく息を吐き出すとそれきり動かなくなった。黒猫は真っ赤に染まった前足を振って血を辺りに飛ばした。鉄の混ざった鼻をつく不愉快な香りに胸がむかむかとする。動かなくなった雄猫は濁った藍色の目で絶望したように虚空を見つめている。その表情は何故だろうか。ひどく悲しそうだった。
急に黒猫の心の中に疑惑の念が湧いた。この猫はなぜそんなに悲しそうな顔をしている?復讐をあと一歩のところで果たすことが出来ずに殺されたからか?いや、それとも…?

黒猫は事件が起こったあの日のことを思い出した。燃え盛る火とあたりを覆い尽くす灰色の煙の奥でぎらぎらと輝く一対の藍色の目。あの時の恨みに満ちた悲痛な叫び。

私はそれを聞く耳すらもたなかったが…。


私はずっと、悪いのはこの猫だと思ってきていた。私達を長年騙し続けてきたあの姉妹にも腹は立つが、それよりも私達の身を滅ぼす危険性が高いのは今や死体となったこの雄猫だったはずだ。
でも、彼はなぜこうなった?いくらあの雌猫に恋をしていたとしても、なぜあそこまで恨む?まず私はこの猫のことを何一つとして知らないじゃないか。この猫とあの姉妹との間に何があったのか。それすらも知らないのだ。

もしかして、この雄猫も被害者なのではないか?


だとすると、一番悪いのは、何も知らないのにこの猫を殺した私?

ぞっとした。冷たいものが一気に背筋を滑り落ちた。膝ががくがくと震え、思わずその場に崩れ落ちてしまいそうになる。それまでの冷静さが嘘のように一気に失われ、呼吸がはやくなった。この場にいたくない。せかされるように鼓動がはやくなる。心の底からそう思った。後ろから責めるような視線を感じ、黒猫はびくっとした。黒猫の足元に転がった雄猫の死体の、光を失った藍色の目がじっとこちらを見ていた。何かを訴えるような切ないまなざしに射抜かれ、黒猫は身動きが取れなくなった。
小さな悲鳴が出た。どくどくという激しい心臓の音がはっきりと耳に響く。
  黒猫の罪を問うかのように。一定のスピードで。
違う。違うのだ。思わず叫びだしそうになる。悪いのはあんたじゃない。私達の命を奪おうとし、秘密をばらして部族から追放しようとしたのはあんたじゃないの。こうするしか無かったじゃない、こうでもしないと私達は部族から追い出されてしまうかもしれないのだから。
黒猫は視線から逃れたかった。すぐにその場から離れる準備を始めた。血に濡れた手を川で洗い、雄猫の体を素早く川に叩き落した。藍色の目を見ないようにぎゅっと目をつぶって。もうこの猫のことなんて考えたくない。考えれば考えるほど自分が今まで信じ続けてきたものを疑ってしまうから。

準備を整えた黒猫は川に背を向けて走る。私のしたことは間違っていたのか?繰り返し何度も何度も考えるが答えなど分からない。さっきあったことを一切忘れようとしてもあの藍色の目が忘れられない。キャンプに帰りたくない。仲間の前でどんな顔をしていいのか分からない。もう逃げ出してしまいたい。何から逃げるかなんて分からないけれど、誰とも顔を合わせたくなかった。

私が悪いのか?私は誰よりも戦士のおきてを守り続けてきた。そんな私がスター族の戦士から見放されたのか?確かに私の『存在自体』が戦士のおきてを破っている可能性もあるが…。黒猫は真っ黒な闇が広がる水たまりに突き落とされたかのような絶望感と寒気に襲われた。
 駄目だ。私は何としてもこの罪を隠し通さねばならない。誰にもばれてはいけない。おそらく、あいつの体は川から海へと流されるだろう。あいつは行方不明という扱いになる。私の罪が明るみに出るはずがない。それに、何匹かの猫しかあの事件を知らないのだ。それに事件を知っている猫全員があいつの死に安堵するはず。
 黒猫は何とかして自身を正当化した。そうしないとキャンプとは全く別の方向へ駆けて行ってしまいそうだから。だから黒猫は心の中で繰り返す。

 私は悪くない。私は悪くない。私は…。
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Re: Cyan ◆もう一つの結末◆  2-4から3-6まで

投稿 by ナットテイル on Thu Feb 18, 2016 8:23 pm

◆第1話◆ ~お告げの猫というのは…?~

 
この世で一番つらいことはいったい何だろうか?
そう聞かれたら私は必ずこう答えるだろう。
 
 この世で一番つらいこと。 それは、孤独 だと。

私はそんなことを考えて大きなため息をついた。私だって好きで今、孤独でいるわけじゃないのだ。私は生まれながらにして寂しがり屋なのだから。本当は独り立ちだってしたくなかった。父さんと母さんのもとで一生ぬくぬくと暮らしていられればそれで十分だったのに…。しかし、部族の規則なのだから文句を言っても仕方がない。
とりあえず、今日眠る場所を探さねばならない。私はいじけた考えを頭から振り払い、考えた。少しずつ暮れていく空を見つめていれば、もちろん焦りも生まれる。昨日まで私が寝泊りをしていた場所にはたくさんの猫たちがやって来て、私は否応なしにそこから追い出された。たくさんの猫たちはつい三日ほど前にこの森へとやって来た。私が今までに見たことがないほどの大勢の猫たち。彼らは最初、一か所に固まって生活していたようなのだが、つい先日になって別れて生活を始めたのだ。そして、私が生活を始めたじめじめとした低い木が生えた暗い森の中にも猫たちがやって来たというわけである。わざわざ人気のなさそうなところを選んだのだが、物好きな猫もいるものである。

私は大勢の猫がやってくる二日ほど前にここへ来た。私が子供のころ住んでいた場所には多くの猫が住んでいた。大きな群れがそこにはあったのだ。人間という生き物の住みかも私達の住みかのすぐ近くにあったし、そのためか私はたびたび彼らの姿を見かけた。彼らは猫と比べるとはるかに大きく、私達には理解できない言語を操る。人間が近くに住んでいるためか、私達の仲間の中には元飼い猫 と呼ばれる猫が数多くいた。元飼い猫である猫の中には、自ら群れの中へ入ることを望んで人間のもとを離れた猫もいる。そのような猫たちの大半は傲慢な性格をしており、その猫たちと長い間、先祖代々この地に住み続けている猫との間にはいろいろといざこざがあった。しかし、まあなんとかうまくやって来たのである。もと飼い猫の彼らは狩りを基本的にせず、人間から餌をもらって暮らしていた。だが、最近は先祖代々この地に住み続けている猫たちの中でも狩りをしない猫は増えてきていた。
私は旅猫である父と、遠くの群れにもともと所属していた母の間に生まれた。父は狩りが得意で、母は狩りが不得意であったが川のそばで暮らす猫の群れにもともと所属していたためか魚を取ることが出来た。父は群れの猫が狩りをしなくなってきていることを常に嘆き続けていた。そして私は父と母から狩りの仕方と魚の取り方を学び、そして一匹で生きていくための術も同時に学んだのである。私達の群れには基本的に掟はないが、群れが出来た当初から伝わる絶対的な掟が十条あった。その一つに夫婦の一番初めの子は独り立ちさせなければならない。というものがある。群れの昔話に関係しているらしいが、難しいことは私にはよくわからない。とりあえず、私は長女だったために独り立ちをしなければならなかったのだ。そしてそれを私は何となく運命として受け入れていたのである。
独り立ちの日、母は私に母の故郷である川のそばの群れへ行くように勧めた。私の名前を出せば歓迎してもらえる。あなたは狩りが出来るから少なくとも追い返されることはないわ。と母は私に告げた。外の世界を知ることを望んだ母は自分の意思で群れを旅立ったのである。その群れには母の友達もいるし、母の両親…すなわち私の祖父母も住んでいる。私の孤独感を減らすためにはこれが最善だと両親が考えたのだろう。
「この群れを出て初めの分かれ道があるでしょう?」
旅立ちの準備を終え、出発を目前に控えた私に母は不安げな顔で言った。
「そこを右に行くの。そのまままっすぐ進めば私がもともと住んでいた川の近くの群れへたどり着けるわ」
私はうなずいた。
「分かった。ありがとう、母さん。
 ねぇ、左の道の先には何があるの?」
それを聞いたのに深い意味はなかった。ただ、少し気になっただけである。
「そこには昔少しの間だけだけど父さんが住んでいたことがあるわよ」
母さんは柔らかく微笑んだ。
「だけどあそこには猫は住んでいない。自然と獲物は豊富だけどやはり群れの仲間がいないと寂しいでしょう?」
私は小さくうなずいた。
「私は父さんみたいに一匹で生きていけるほどまだ強くはないもの」
母さんは首を横に振った。
「母さんから見たら、あなたは父さんに負けないくらい強くてたくましいわよ。新しい群れでも自信を持って生きるのよ。どうしてもこの群れが恋しくてどうしようもなくなったらいつでも帰ってきていいのだからね」
でも、と私は思わず口ごもった。
「部族の掟はどうするの」
母さんはおかしそうに笑った。
「ばかね」
母さんの青緑色の目が優しい光に満ちた。
「シアン、あなたが新しい部族で暮らすことを望まないのなら、また家族で暮らせばいいわ。私はあなたのためならいつでもこの部族を出る覚悟はできているわ。もちろん、それは父さんも同じ」
私は母さんに感謝を込めてまばたきした。
「シアン!そろそろ出発だ!」
父さんが家の入り口の方へと歩いてきた。
私はうなずいて、母さんと鼻を触れ合わせた。
「いつでも会いに来ていいからね。シアン」
私は母さんにささやいた。
「分かっているわ、母さん。いつか必ずまた会いましょう」
父さんは涙をこらえているような顔をしていて、私は思わず笑ってしまった。
「大丈夫よ、父さん。私新しい群れでもうまくやっていけるから」
父さんはさっと私の耳を舐めた。
「ああ。お前は父さんと母さんの子だからな。どこへいっても大丈夫だよ」
私は微笑んで両親に向き直り、頭を下げた。
「父さん、母さん、今までありがとう。
 私はこれから自分の力で生きていく。父さんと母さんから教わったことは絶対忘れないからね」
私は父さんと母さんの顔をもう一度よく見てから家の外へと歩き出した。決して一回も振り返らなかった。

分かれ道にはすぐに着いた。私はそこで立ち止まることもせず、迷わずに右の道へと歩き出した。右の道と左の道の間には低い茂みがある。寝転がったら気持ちよさそうだ。右の道と比べると左の道はでこぼことしており、たくさんの小石が転がっている。肉球が痛みそうだ。左の道を横眼で見つつ、私は右の道を進んでいった。そのときだった。突然甘いような、心が安らぐような何とも言えない香りが鼻の奥に広がった。あまりにも突然すぎて私は立ち止まって目をぱちくりさせた。何の香りだ?

「こんにちは。初めまして!」

後ろから急に声をかけられて私は小さな悲鳴を上げて飛び上がった。一匹の雌猫が私のすぐ後ろにいた。足音も何も聞こえず、彼女の気配すら感じ取れなかったことに私は驚いた。父でもここまで足音を消すことはできない。よほど優秀な猫だということは容易に推測できる。彼女はどこかの群れの戦士なのだろうか?引き締まった体をしたスレンダーなぶち柄の猫で、そして何よりもとても美しかった。どこか浮世離れした雰囲気で、艶やかな毛並みは人間に大切に飼われている飼い猫を想像させたが、飼い猫がここまで足音を消して歩くことが出来るだろうか?そして何より彼女の美しい緑色の目は銀河のごとく煌めいていた。その目でまっすぐ見つめられ私はどぎまぎした。よく見ると彼女の毛も輝いていることが分かった。毛の一本一本が星のような光を持っている。そのためか彼女の周りの空気だけがなんだか別物のような気がした。独特の空気が流れている。彼女は私に大きな目を細めて微笑みかけた。
「初めまして。えーっと、ごめんなさい、驚かせるつもりはなかったのだけれど…」
彼女はすべすべとした声で小首を傾げながらそう言った。もし声に触り心地があるとしたら彼女の声はとても滑らかで手触りがいいだろうな。と私は思った。彼女は背筋をぴんと伸ばしたとても良い姿勢で座っており、私は思わず自分の丸めた背中を伸ばした。彼女のどこか浮世離れした美しい目をまっすぐ見るのはどうしても照れるので、視線は彼女の形のいいピンク色の鼻に向けた。
「い、いえ。大丈夫です。
 えっと…。あなたは…?」
私は緊張しつつたずねた。まず、この美しい猫はいったい何者なのだろうか。そして見ず知らずの猫である私に、いったい何の用があるというのか。
ぶち猫は私の困惑を感じ取っているのかは分からないが、穏やかな微笑みを崩さない。
「私の名前も、あなたのもとへやって来たはっきりとした理由も、今は言うことができないの。いつか時期が来たらすべてあなたに伝えるわ。でも、まだ今はその時じゃない」
私はぽかんとして首を傾げた。
「えっと…?どういうことでしょうか…?」
ぶち猫は少し顔をしかめて申し訳なさそうな、困ったような笑顔を浮かべた。
「分からなくて当然よ。そして怖がることもない。私があなたのもとへ来た理由について、今はまだ分からなくて大丈夫なの。それはあなたが『運命の猫』だとはっきりと分かるまでは伝えることはできない」
謎は深まるばかりだった。運命の猫?私が?一体何のだ?
「とりあえず、『今日』のお願いがあるの」
ぶち猫の表情が変わった。笑顔から真剣なものになる。それに応じて目の色も緊張した色を帯びた。ぶち猫はその緊張した面持ちのまま私に告げた。
「あなたが右の道へ行こうとしていたことは知っている。でも、お願い。右の道ではなくて左の道へ進んでくれないかしら?」
私はぽかんと口を開けた。左の道へ?それがこの猫の願いだというのか。
「えっと…。ど、どうして私を左の道に?」
そう言ってからはっとした。
「もしかして、あなたは川の近くの群れに所属している猫なのですか?そして群れに近づくよそ者を遠ざけようとしているのですか?誤解しないでください!私は怪しいものではないのです。ただ、その部族のお役に立ちたいと思っただけで…」
私は慌てて言った。私はただの小娘だが、そんなに怪しく見えるだろうか。それとも川の近くの群れには今、戦いか外敵かは分からないが、そのような警戒しなくてはならない相手がいるのだろうか。だからこの分かれ道で腕のいい戦士が警備をしているのだろうか。
しかし、私の言葉に雌猫は怪訝そうな顔をしただけだった。よく考えればそれもそのはずだ。もし、さっきの私の仮説が正しいのであればこの猫はなにも私の前に現れた理由をもったいぶる必要もないのだ。ただ、すぐに先ほどの願いを述べれば良いだけ。それに、私が『運命の猫』になるかもしれないという話とも全く辻褄が合わない。彼女は今、私の前に現れたことへのはっきりとした理由を言わない。それにはちゃんと言わない(言えない?)理由があるのだろう。その理由というのは決して自分の所属する部族に怪しいものを近づかせたくないというような単純な理由ではないはずだ。その事実に気づいた私は、あまりの恥ずかしさに顔を赤らめてうつむいた。
雌猫は小さく首を横に振った。
「私は川の近くの部族の猫とは全く無関係よ。彼らとは関わりがない。それに、私はあなたを怪しい猫だなんて思ってもいないわ」
私はうなだれた。
「私の早とちりでした。すみません」
ぶち猫は柔らかな微笑みを浮かべた。
「謝る必要なんて何もないじゃないの。
そうだ、それであなたに左側の道へ行ってほしい理由が聞きたいのよね?
理由はね、今は左側の道へ行った先の森には群れが一つもないわ。
厳密に言えば、昔はあったのだけれどね。でも、今はない。
だけど、そんなに先ではない近い未来、あの森に部族ができるの」
私はぶち猫の言葉に驚き、目を見開いた。
「新しい部族が、ですか!?」
ぶち猫はうなずいた。
「正確に言えばもともと違う森で暮らしていた猫たちがあの森に移り住んでくる。といったほうがいいかしら。とりあえず、あの森には部族が出来る。四つの部族がね」
私は興味深くその話を聞いた。父が昔一匹で修行していた森に部族が出来る。しかし…。
私は小さく首を傾げた。
「でも、その新しい部族と私にいったい何の関係が?」
私の質問にぶち猫は大きくうなずいた。
「ええ。それは説明する義務が私にはあるわね。
あなたはね、あの全部族の運命を変える猫になるかもしれないの
…そして何より悲劇的な最期を迎えるあの猫の運命を変えうる存在でもあるのよ」
ぶち猫は目に希望をたたえ、じっとこちらを見つめた。
「お願い。あの子の、そして部族の運命を、変えて」
私はその言葉の重さに何も言うことが出来なかった。運命を変える?そして、悲劇的な最期を迎える猫の運命も変える?そういう意味での『運命の猫』だろうか?私はさらに質問をしようと口を開いたが、雌猫は首を横に振ってそれを制した。
「これ以上は何も言えないわ。とりあえず、私から今日のところはこれだけ。
でも、進むべき道は自分で決めるのよ。どっちの道に進むのかを私は強制できない」
ぶち猫の真剣なまなざしに私は射抜かれた。
正直何も分からないし、私が本当に部族の運命を変えるのかも分からない。でも、この猫にそんな期待を込めた眼差しで見つめられたら仕方ないじゃないか。
「分かりました。その願い、叶えられる限り私が叶えます」
ぶち猫の目がぱっと輝いた。目をまん丸に見開き、顔全体が明るい光に満ちる。
「本当?ありがとう!これであの子の運命も変わるかもしれない」
私は大いに照れた。だが、私にそんな重大なことが出来るだろうか?
いや、やるだけやってみよう。私は決意した。
「じゃあ、サンダー族に向かってくれないかしら?」
私はきょとんとした。聞き慣れない名前だ。サンダー…雷だろうか?
「サンダー…族?」
ぶち猫はうなずいた。
「ええ。そこの部族の長にはあなたが来るかもしれないとは告げてあるわ。
あなたが本当に行くかはまだ分からなかったから確実、とは伝えていないけれど」
ぶち猫は大きく深呼吸をした。
「あまり無理をしないでね。また会いに行くわ」
私はうなずいた。
「サンダー族、ですね。分かりました」
ぶち猫は私にすらりと長いしっぽを振った。
「元気でね!」


私はぼんやりとしながらその時のことを思い返した。サンダー族、とあのぶち猫は言っていた。今日、私の住みかへやって来た猫たちはどこの部族だったのだろうか。聞く前に追い返されてしまったので結局分からずじまいだ。あの猫たちがサンダー族の猫だったらどうしよう。そうしたら私は全く歓迎されていないというわけだ。ぶち猫に願いを叶えられる限り叶えるなんて言ってしまった矢先、こんなに弱気でどうするのだ。私は小さくため息をついて、それから気持ちを切り替えた。とりあえずどこにサンダー族がいるのかが分からない以上どうすることもできない。まず、サンダー族の猫を探さなければならない。
 私はやや速足で森の中を歩いていたが、そのうちに川を見つけた。そこまで大きな川ではなく、きれいな水が静かに流れている。私は川のそばに座り、川を覗き込んだ。一匹の小さな魚が泳いでいる。私は前足を出し、魚を捕るための構えの姿勢をとった。と、そのとき魚が跳ねた。私はさっと魚をすくった。魚は陸にうちあげられ、ぴちぴちと跳ねた。私は魚をくわえて牙を食い込ませてとどめを刺した。私は地面に魚を置き、かがみこんで魚を食べようとした。

その時だった。
「そこで何をしているの?」
という鋭い声が響いた。私はびくっとして振り向いた。
一匹の淡いショウガ色の毛をした猫が緑色の目を怒りに燃やしながらこちらを睨んでいた。
私は慌てて後ずさりした。思わずよろけ、川に落ちそうになる。
雌猫が息をはっと飲む音が聞こえた。
「…!」
おそるおそる雌猫の方を見ると彼女は目をこれでもかと開き、じっとこちらを見ていた。
「ちょっと待って…。あなたの目をよく見せて」
私は何が何だかよく分からなかったが言われるままに彼女に一歩近づいた。攻撃されるかもしれないと思ったが、彼女は今何かに驚いている。私を遠慮のない視線でじっと見据える彼女はふうと一息ついた。
「…。とりあえず、サンダー族のキャンプまで一緒に来てもらおうかしら。詳しい話はキャンプについてからってことで」
私は目を見開いた。この猫はどうやら私が探していたサンダー族の猫らしい。この猫は私のところへ来たぶち猫から何かを聞いているだろうか。それとも、あのぶち猫もサンダー族に所属している猫で、キャンプへ行けば会うことが出来るのだろうか。
「あ、自己紹介が遅れたわね。私の名前はサンドストーム。ほら、行くわよ」
サンドストームと名乗った雌猫は悠々とした足取りで歩き出した。私を振り返ることもしない。私がついてくると信じているのだ。私は緊張しつつも強さと美しさを兼ね備えた雌猫について行った。
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Re: Cyan ◆もう一つの結末◆  2-4から3-6まで

投稿 by ラッキークロー@LC on Sat Feb 20, 2016 2:01 pm

 遅れましたが新小説おめでとうございます。登場人物たちの性格を細かにとらえたキャスト紹介を見た時点で、この小説の更新が楽しみで仕方ありません。

 プロローグの黒猫は、ホリーリーフのことなのでしょうか? 文章のクオリティも素晴らしいですが、何より彼女のアッシュファー殺害の心情を、赤裸々に、生々しく書き出していることに感動しました。物語ではなく、ノンフィクションのドラマをみているようで、お話の虜になりました。

 一章のシアンの描写もよみやすく、ファンになりました。陰ながら応援しています!
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Re: Cyan ◆もう一つの結末◆  2-4から3-6まで

投稿 by ナットテイル on Sat Feb 20, 2016 9:05 pm

ラッキークロー@書きたい物も描きたい物も沢山 wrote: 遅れましたが新小説おめでとうございます。登場人物たちの性格を細かにとらえたキャスト紹介を見た時点で、この小説の更新が楽しみで仕方ありません。

 プロローグの黒猫は、ホリーリーフのことなのでしょうか? 文章のクオリティも素晴らしいですが、何より彼女のアッシュファー殺害の心情を、赤裸々に、生々しく書き出していることに感動しました。物語ではなく、ノンフィクションのドラマをみているようで、お話の虜になりました。

 一章のシアンの描写もよみやすく、ファンになりました。陰ながら応援しています!

コメントありがとうございます!格調高くカッコいい文章をお書きになるラッキークローさんにお褒めいただき、嬉しく思います。
自分では読みにくくないかなぁと思っていたので、そう言っていただけると安心します。これからも精進いたします!
プロローグの黒猫はホリーリーフです!3期でのホリーリーフとアッシュファーのあまりにも悲しい最後に胸が痛み、何とかして彼らが救われるエンドの小説を書きたい…。と思って構想を練ってきました。
これからも完結まで時間がかかってしまうとは思いますが、進めていきたいと思っていますので、少しでも楽しんでいただければ幸いです!
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Re: Cyan ◆もう一つの結末◆  2-4から3-6まで

投稿 by ナットテイル on Sat Feb 20, 2016 9:50 pm

◆第二話◆ ~予言の猫について思うことは~
 とりあえず、驚いた。私は他の猫以上にいろいろな経験を積んできたと思っていたけれど、どうやら甘かったらしい。事前に予言されていたというのに(私は都合よくさっきまでそれを忘れていたけれど)心の底から驚いてしまった。
私は雌猫を連れてキャンプまで歩く。出来るだけ不安な気持ちが外に出てこないようにと自信を持った歩き方を心掛けた。ファイヤスターは何というかしら。私は最愛の猫の顔を思い浮かべる。彼はとても強い猫だ。きっと森で一番強い。だけど、この猫を見たら少しは恐れを抱くはずだ。何しろあんな予言を受けたのだから…。
私は尻尾の毛が逆立ちそうになるのを必死で抑えた。せっかく長く辛い旅を乗り越えてこの新たな住みかへとやって来たのだ。そして住み心地のよさそうな新しいキャンプも手に入れた…。もちろん、文句を言っている猫もいた。でも、前のキャンプと比べてもきりがない。あのキャンプはもう破壊されてしまって無くなったのだ。私は少なくとも新しいキャンプに満足している。部族の猫たちは少し贅沢を言い過ぎなのだ。ブランブルクローやスクワーレルフライト達が一体どれほど苦労をして旅をしてきたのかが分からないのだろうか。私は小さくため息をついた。とにかく、私達は新たな土地でひとまず落ち着くことが出来たのだ。それなのに、すぐに新たな問題が襲ってくる。私は大きな倒木をひらり跳び超えて振り向いた。さっき出会った雌猫は私が飛び越えた倒木をなかなか乗り越えられず、困っている。彼女は自分が部族の脅威になりうるなんて全く思ってもいないのだろう。私はもう一度大きなため息をつくと、彼女に手を貸しに倒木まで歩いて行った。
 
彼女を助けた後、私は歩きながらあの時のことを思い返していた。
私達が前の住みかを旅立った次の日、バーリーとレイヴンポーが住む納屋に泊まった日の朝のことだ。

その日は良い天気だったと記憶している。新天地へ向かう私達の不安など全く気にもしていないとでもいうように。私ははやく起きすぎてしまい、大きく伸びをした。このまま二度寝をしてしまうのも気持ち良いだろうな。と私は思った。すぐ横には最愛の猫、ファイヤスターが寝そべっていた。私は愛しき彼の寝顔を見つめた。色々なものが目まぐるしく変わっていくが、仲間たちは変わらずそこにいてくれる。
 
「う、うぐぐ…」
 突然ファイヤスターが顔をゆがめて苦しみだしたので、私は目を見開いた。全身に焦りが走った。私は咄嗟にファイヤスターを揺さぶった。
「ファイヤスター!」
 彼の耳元で鋭い声で叫ぶと、ファイヤスターは全身を一瞬びくりとさせ、素早く跳ね起きた。近くで寝そべっていたダストぺルトがうるさそうに薄く目を開けて私を睨みつけた。寝ていた彼には悪いが、苦しそうなファイヤスターをただ見ているわけにはいかない。ファイヤスターは緑色の目に緊張の色を浮かべ私を見た。不安げな眼差し。こんな顔をしているのは久しぶりに見た。私にも緊張がうつった。これはどうやらただ事ではないようだ。もしかしたら、私達が森から出てきたことについてのお告げだろうか。私達の命がけの選択は間違っていたということか?
 「シンダーぺルトはどこにいる?三匹で話し合いたい」
 ファイヤスターは周りの他の猫を気遣ってか声をひそめて言った。私は小さく頷いた。
 「ちょっと納屋の外に行かない?」
 私はあたりを見まわしていった。
 「分かった。シンダーぺルトを呼んできてくれないかい?俺は外で待っているよ」
 私は看護猫仲間と納屋の隅っこで集まって眠っているシンダーぺルトを突っついた。娘のリーフプールが穏やかな顔で眠っている。私は愛らしさで胸がいっぱいになった。
 「んん…。あら、サンドストーム?おはようございます」
 シンダーぺルトは思慮深そうな目をぱちぱちとさせた。
 「ごめんなさい、朝早いのに。ファイヤスターがどうやらお告げを受けたらしいの。それもあんまりよくない感じの。それで、話し合いたいらしいのだけど…」
 シンダーぺルトはあくまで冷静だった。大きく息をつき、目を閉じてうなずいた。
 「分かりました。行きましょう」
 
ファイヤスターは納屋のすぐ外に座っていた。朝特有の澄んだ空気が流れていた。朝の空気って私は好きだ。何だか特別な張り詰めた緊張感があって気持ちがピリッと引き締まる。今日も一日部族のために頑張らなくちゃいけないな。という気持ちにさせてくれる。私はとりあえず大きく息を吸い込んだ。新鮮な空気を思いっきり味わう。
「悪いな、それでお告げのことなのだが…。よく分からなくて。二匹の意見を聞きたいんだ」
私とシンダーぺルトは顔を見合わせた。
「で、ファイヤスター。いったい今回はどのようなお告げだったのですか?」
シンダーぺルトは豊かな灰色の毛をした尻尾を振り動かして先を促した。ファイヤスターは不安げな顔で話し始めた。
「俺の夢の中には…、その、スポッティドリーフが出てきたんだ。彼女は大きな池のそばに座っていた。何故だか不安な気持ちにさせる薄暗い空気が漂っていて、辺りには重たい闇が立ち込めていた。スポッティドリーフの顔はとても不安そうで暗かった。彼女はひどく何かを悩んでいるように見えた。俺がすぐ近くまで近づいて行っても声をかけるまで俺の存在に気づかないほどに。
スポッティドリーフは小さな声で俺に告げた。『あなたに伝えなければならないことがある』と。俺は頷いた。『俺に告げることがあるのなら、言いにくいことであったとしても何でも告げてくれ』と。スポッティドリーフは小さく頷いた。彼女は俺を見なかった。言いにくそうに呟いた。『私には今は多くを語ることは出来ない。これはとても慎重に行わなければならないこと』とも言った。『もしかしたら、あなたたちは本来歩むはずだった未来のレールから外れてしまうかもしれないから』そう言って小さくため息をついたんだ。運命というものがあるらしい。スター族全体の考えとしては、運命を踏み外さなければ最悪の結末にはならないそうだ。最悪の結末というのは具体的には四つの部族が無くなったり、部族の存続が脅かされるほどの危機が起こったりということだ。確かに、今まで部族が危険にさらされることはあった。しかし、それは運命の範囲だったために的確なお告げを出すことが出来たんだそうだ…。しかし、その運命が変わってしまう可能性がある。そのか変えられた運命が良い方向に転がるか悪い方向に転がるかは誰にもわからないらしい。そして、彼女はこう言った。『青緑色の目を持つ炎が現れたとき、すべての部族は大きな変化を迎える。それだけは忘れないで』と」
シンダーぺルトがぐっと目を細めた。お告げの意味を考えているのだろうか。
「運命、が変わるのですか」
彼女は思慮深そうな目を鋭く光らせている。
「そうらしい」
ファイヤスターは大きく首を横に振った。
「まだ続きがあるんだ。俺はスポッティドリーフを呼び止めたんだ。彼女の体は…もう闇の中に溶け始めていた。俺は聞いたんだ。『その…、運命が変わることで部族が壊れてしまうことはあるのか?』って。『その猫によって部族が崩壊することはあるのか?』って。スポッティドリーフは項垂れてこう答えた。『その確率はゼロではないと。もちろん良い方向に変化が起こるかもしれないし、何も変化は起こらずに運命が変わる前と同じ結末を迎えるかもしれない。だけど、悪い変化が起こる可能性はゼロではない…』」
ファイヤスターは宝石のような目を不安げに曇らせる。シンダーぺルトが大きく息をつき、目を閉じた。
「スポッティドリーフはそれ以上何か言っていませんでしたか?」
ファイヤスターは少し躊躇った後、話し出した。
「これは俺にもまだよくわからないのだけど…最後にスポッティドリーフの瞳だけが見えて、声が聞こえたんだ。
『でもね、ファイヤスター。あなたは不安を感じる必要はない。彼女に助けを求め、運命を変えることを望んだ猫がいる。その猫が誰かが分かればその猫の望みもあなたなら自ずと分かるでしょう』と。そう言って彼女は瞳を閉じた。そうして、俺は漆黒の闇の中に包まれた。何回も彼女の名を呼んだのだが…俺の声が闇の中にこだまするだけで返事はなかった」
私もお告げについて考えてみたが、私達が本来歩むはずだった運命すら分からないのだ。それに青緑色の目を持つ炎が本当に表れるのかすら分からない。全てが憶測の範囲内の何とも頼りのないお告げなのだ。それ以上に、新しい住みかにたどり着くほうが大切じゃないだろうか。
私は首を横に振った。
「とりあえず、このお告げのことはいったん保留にしておかない?とりあえず、その青緑色の目を持つ炎が現れたらまた考えましょうよ」
シンダーぺルトも不安そうな顔ながら頷いた。
「そうですね。サンドストームの言う通りかもしれません。私もこのお告げの意味を考えてみますから。ファイヤスター。あんまり暗い顔をしないでください。何かお告げを受けたらすぐにご報告します」
ファイヤスターは仕方がないというように頷いた。
「そうだな…。まずは目先のことを考えんとな」
そうして、あの話し合いは終わった。
そして、本当に青緑色の目を持つ炎は現れた。私達の前に。私はこの上なく暗い気持ちになった。私の発言によってこのことを話すのが先延ばしになった。そのせいで正しい対応が出来ないかもしれない。しかし、どう対応しろというのか。追い出すべきなのか?しかし、この猫は良い変化を与えるかもしれないというのに追い出して良いものなのか?そもそもなぜ運命は変えられたのだろう。彼女に運命を変えるように働きかけた猫とは誰だ?そしてその猫の望みとはいったい何なのだろう?

私達はキャンプの中へ入った。たくましい雄猫、ブランブルクローがキャンプの入り口のあたりを歩いていた。彼の短い毛に沈みかけた日の光が当たり、きらきらと輝いていた。この猫に娘であるスクワーレルフライトが夢中になるのも頷ける。彼女は今、若かりし頃の私のような気持ちになっているのだろう。喧嘩と仲直りを繰り返しながらも、いつも何故だか心地よさそうに肩を並べている二匹を見るたびに私は見習い時代と新米戦士時代を思い出す。あの時、いつも一緒にいた猫。ファイヤスターとグレーストライプ。私は鋭く胸が痛むのを感じた。ファイヤスターの無二の親友。彼以上にファイヤスターと良き友であった猫はいないだろう。いつも呑気そうな微笑みを顔に浮かべ、幸せそうに喉を鳴らしていた大きな灰色の雄猫。仲間を自らを犠牲にして救った猫。私は彼を一生誇りに思い続けるだろう。そして、私もファイヤスターと同様に彼が帰ってくることを信じ続けている。
ブランブルクローは私を見て目をぱちぱちとさせた。
「サンドストーム、その猫は?」
私はちらと後ろを振り返った。雌猫は怯えたようにブランブルクローを見つめている。がっしりとしていてたくましいブランブルクローは小柄な彼女から見ると怖いのかもしれない。
「この猫は…もしかしたらお告げの猫かもしれないの」
私は万が一のことを考えて雌猫に聞こえないように声を潜めて小さな声でブランブルクローに言った。ブランブルクローの目が見開かれた。
「お告げ…ですか?」
私はあたりをちらと見まわす。雌猫は私の後ろで怪訝そうな、不安そうな眼差しを私に送っていた。私はブランブルクローに頷きかけた。
「あとでちゃんと話すわ。とりあえず、私はファイヤスターに報告してくる」
ブランブルクローは丁寧に頭を下げた。
「了解しました」
私は雌猫を振り返った。
「ごめんなさいね、行きましょう」


ファイヤスターの部屋の中へと入る。少し覗き込んでみると、彼は食事中だった。少し早めの夕ご飯ってところだろうか。
ファイヤスターは覗き込む私に気が付いたようで、おっ、と小さな声をあげて目を輝かせた。鮮やかなショウガ色の尻尾がゆらゆらと揺れた。入口からわずかに差し込む緩やかな光がファイヤスターの毛を染め上げている。はっと驚くほど美しい。まるで炎のようだ。
「やあ、サンドストーム!君の分の夕飯も用意しておいたんだ。よかったら一緒に食べないかい?」
私は微笑んで頷いた。
「ええ。もちろんそうする。でもその前に話さなきゃいけないことがあるの」
ファイヤスターは耳をぴくりと動かした。
「分かった。ほら、入っておいでよ」
私は後ろを振り向いた。一族の猫がこちらに注目している。見知らぬ美しい毛並みを持つ猫が現れたからだろう。彼女は視線を集めて決まり悪そうに俯いている。目立つのが苦手な性格なのだろう。私と雌猫の目が合った。青緑色の目を持つ炎。美しい青緑色の目は恐ろしいほど純粋な光をもって私の目を見つめた。
私は彼女に頷きかけた。
「いらっしゃい、少し話をしましょう」
私は近くで目を好奇心で輝かしながら雌猫を見つめる見習いのホワイトポーを呼んだ。
「ちょっといいかしら?」
ホワイトポーはすぐにやって来た。
「何でしょうか?」
ホワイトポーは興奮気味に目をきらきらとさせている。
「シンダーぺルトを呼んできてもらえるかしら?」
ホワイトポーは大きく頷いて勢いよく駆けだした。あのホワイトポーの猛スピードでは、シンダーぺルトはすぐにやって来るだろう。



ファイヤスターとシンダーぺルトは雌猫を見て驚きからか目を丸くした。そして二匹は顔を見合わせる。
「この猫は…やっぱり」
ファイヤスターが呟いた。シンダーぺルトも頷く。
「私も同感です。サンドストーム、この猫以外には考えられません」
雌猫は部屋の隅で決まり悪そうに俯いて座っている。
「あなたはお告げを受けた?」
シンダーぺルトが雌猫に一歩近づくと雌猫は体をすくめた。目を見開き、怯えたように首を縦に振る。緊張と異様な雰囲気のせいか、相当びくびくしているようだ。
「お告げなのかは分かりません。分かりませんけど…」
雌猫は言いよどんだ。私は先を促した。
「分からないけれど?」
雌猫は躊躇ったように小さく首を横に振ったが、また口を開いた。
「こう言われました。部族の運命を、変えてって」


最終編集者 ナットテイル [ Sun Feb 21, 2016 8:01 pm ], 編集回数 1 回
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Re: Cyan ◆もう一つの結末◆  2-4から3-6まで

投稿 by ナットテイル on Sun Feb 21, 2016 7:59 pm

◆第三話◆ ~集会のときの部族猫の反応は~
広場の真ん中で身を焼き尽くすかのような視線に、ただただ耐える。ああ、嫌だなぁ。注目されるのって本当に苦手だ。全く遠慮のない、好機と敵意に満ちた視線を私は真っ直ぐ見返す勇気もない。私の隣にはファイヤスターというらしいこの部族の長がいる。彼は堂々とした態度でぐるりと部族の猫たちを見まわした。さすが長を務めているだけあってこれだけの視線を一身に集めることにも慣れているようだ。
「よし!みんな集まったな。では、これから集会を始める!内容は、俺の横にいるこの猫のことについてだ」
ファイヤスターは尻尾で私を指し示した。私は何か悪いことをして親に叱られている子猫のようにさらに縮こまった。いや、でもよく考えてみると私はさらし者にされるようなことを何一つしていない。ただ、ぶち猫の言葉に従ってサンダー族の猫を探していただけじゃないか。それに対して、こんな仕打ちはあんまりだ。私は決まり悪さに倒れてしまいそうになりながら、足の震えを必死に止めようとした。
「この猫は浮浪猫だ。この森に迷い込んでいたらしい。だが、お告げの猫でもある」
ファイヤスターが言うと不満げな野次が飛んだ。
「浮浪猫がお告げの猫だと?そんな馬鹿げたことがあるのかよ?」
私はびくりと身体をこわばらせた。明らかに怒った声だった。歓迎されている気は全くしない。私は、周りをぐるりと取り囲む猫たちをどんな顔をして見たらいいのかが分からなくて、俯いたまま震え続ける足元をただ見つめた。
「スター族からの正式なお告げだ。そして、そのお告げが示している猫は、この猫で間違いない」
ファイヤスターは強い口調で続けた。
「ねえ」
遠慮がちな声が集まった猫たちの後ろの方から聞こえた。茶色の毛をした雌猫だ。 ほっそりとした猫で、目をぎらぎらと輝かせている。
「一体、どんなお告げだったのよ?」
周りの猫が彼女の言葉に頷いた。
「話す義務があるはずだぜ?ファイヤスター」
たくましい雄猫が低い声で言った。ファイヤスターの視線が泳いだ。落ち着かなさ気に尻尾がパタパタと地面を叩く。ファイヤスターはなかなか発言をしようとしなかった。一族の猫たちが不安げにざわめく。
「本当なのか?何で返事に詰まっているんだよ?」
先ほども発言した、たくましい雄猫が訝しげに唸った。その横に座っていたはっきりとした顔立ちの雌猫が疑るようにファイヤスターを睨みつけた。
「嘘なんじゃないか?ファイヤスターは生まれのことがあるから、行き場を失った哀れな浮浪猫を助けるために嘘をついているんじゃないのか?さっすが、立派な族長は考えることが違うよ」
馬鹿にしたような声が一族の猫の中から上がり、ショウガ色の毛をした若い雌猫が激しく唸った。
「誰?ファイヤスターを馬鹿にしたようなことを言ったのは?ファイヤスターほど一族のことを考えている族長が他にいる?」
一族の猫達はその後もそれぞれ勝手なことを言い合い、広場はひとしきりざわめいた。罵り合う声。誰かが誰かを馬鹿にする声。必死に怒る猫をなだめる声。
「静かに!!」
ファイヤスターが大きな声で怒鳴った。肩を怒らせ、怒りからか、息を荒くしている。
「こんな些細なことで言い合いをしてどうするというんだ?俺がお告げを受けたのは本当だ!お告げの内容だったな?」
ファイヤスターは大きく息を吸い込んだ。何を告げられたというんだろう。そんなに一族の猫に言いにくいことなのだろうか?私はぶち猫のことを思い浮かべた。ファイヤスターにお告げをしたのもあのぶち猫だろうか?そして彼女は一体何者なんだろう。
「青緑色の目を持つ炎が現れたとき、すべての部族は大きな変化を迎える、そうお告げがあった。この猫こそが青緑色の目を持つ炎だ」
広場の猫達はそれぞれが顔を見合わせ、ひそひそと何やら話し合っていた。声の雰囲気から、あまり良い感触ではないことが分かる。
「とりあえず、この猫はこの部族に必要になる存在だと俺は判断した。彼女は名をシアンという。シアンは見習いとして訓練をする必要がある年齢の猫だ。今日から戦士名を取得するまで、お前の名はシアンポーだ。ソーンクロー、お前には優れた狩りと戦闘の技術がある。シアンポーにそれを伝授してくれ」
ファイヤスターはそう言うと大きく深呼吸した。異論は認めないと言いたげな強い口調だった。部族猫達はまだ怪訝そうな顔で話し合っている。遠慮がちに周りを眺めていると、私のすぐ目の前に座っている黒猫と目が合った。黒猫は私と目が合うなり挑戦的にぐっと目を細めた。黒猫の尻尾の毛は逆立ち、二倍ほどに膨らんでいる。私はすぐに黒猫から目を逸らした。あそこまであからさまに敵意をむけられてしまうと、どうしたら良いのかが分からなくなる。
私は本当にぶち猫が言っていた運命の猫なのだろうか?私のような誰にも歓迎されていない猫がこの部族の運命を変えられるわけがないんじゃないか?私は心の中で不安が広がっていくのを感じていた。あのぶち猫はここにはいないのだろうか。あの猫と話したかった。本当に私が、彼女の探していた運命の猫で間違いないのかを確認したかったのだ。
きょろきょろとぶち猫を探していると、一匹の雄猫が前へと進み出てきた。引き締まった体つきをした雄猫だ。痩せているが、体にはしっかりとした筋肉がついている。懐っこい笑顔を浮かべながらその雄猫は私の目の前に立った。部族猫達は少し静かになった。その雄猫は私と目を合わせるとにやりとさっきの懐っこい笑みとは違ったタイプの笑顔を見せた。悪戯好きな子猫のような無邪気な笑顔だ。雄猫は長いしっぽをゆらりと揺らした。
「俺はソーンクロー。よろしくな、シアンポー」
ソーンクローはそう言って私の鼻に自分の鼻を押し付けた。いきなりのことで驚いてどきまぎする私に、ソーンクローはもう一度にやりと笑って見せた。
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Re: Cyan ◆もう一つの結末◆  2-4から3-6まで

投稿 by ナットテイル on Wed Feb 24, 2016 8:09 pm

◆第四話◆  サンダー族の素晴らしき猫達と

集会が終わると、猫達はそれぞれ神妙な面持ちで何やら話し合いながら、次第に大きな集団から小さなまとまりへと別れていった。先ほど発言した、気の強そうな茶色の毛をした雌猫とたくましいこげ茶の毛をした雄猫が、ひそひそ話をしながら私を訝しげに見ているのに気づいた。私は気まずさから前足の爪を出したり入れたりした。

結局あのぶち猫も見当たらないし、私はこれからどうすれば良いのだろう。

ファイヤスターが集会中に見せた不安げな顔も気になる。私が本当に部族を救う予言の猫だとしたら、何故ファイヤスターはあんなに不安がる必要があるのだろう。もしかしたら、『部族を変える』という予言には、それに伴う危険が隠されているのだろうか。私にはぶち猫の言っていた『あの子』を救うために部族を変えることによって、部族を壊してしまう危険性があるのだろうか?



そう考えると途端に怖くなった。




私は、どうすれば良いのだろう。


「えーっと、シアン、ポー?だよね?」

一匹の猫が、私を深い思考の沼から引き上げた。私は突然話しかけてきたその猫に対してどう反応したら良いのかが分からなかった。
「え、えっと…そうだけど…、私に何かご用でも?」
口ごもりながら答える。私達の間に静かな夕暮れ時の風が吹く。風に毛が揺らされる。私の目の前にいる猫の長い髭も風に揺らめいた。暗くなり始めた空には、一番星が煌々と輝いている。
「用ってほどでもないんだけどね。私はホワイトポーっていうの。見た目通りの名前でしょ?あなたと同じで見習い猫だよ」
ホワイトポーは新緑のような鮮やかさを感じさせる緑色の目を、夜空の一番星に負けないくらいに輝かせながら言った。
「この広場で話すよりも、見習い部屋の方が話しやすいよね。ここには私達以外にも沢山の猫がいるもの」
ホワイトポーは辺りを少し見まわしてから声をひそめた。
「ほら、あなたのことをよく思ってない猫も少なからずいるし」
私はちらりと、さっき私を訝しげに見た猫達のいた方を見た。あの二匹は部屋に帰ってしまったのか、もういなくなっていた。その代わり、さっきまであの二匹の猫がいた場所には、一匹の若い痩せた黒猫が佇んでいた。物思いにふけるように森をぼんやりとした視線で眺めていた黒猫は、私の視線に気づくと目を見開き、姿勢を低くして線の細い肩をいからせた。目は嫌なものを見てしまったと言いたげな、憎しみの色に満ちていた。
黒猫のあまりにも真っ直ぐな憎しみの視線に怯んだ私の耳に、突然喉の奥で低く唸る音が飛び込んできた。私は思わず身を強張らせた。唸っているのは、私の隣にいるホワイトポーだった。
「何よ!スパイダーポー?」
ホワイトポーは黒猫に向かって、今度は激しく唸った。そして
「行きましょう、シアンポー。あんなバカな猫に付き合う必要なんて全くないわ」
と吐き捨てるように呟いた。足早にその場を立ち去ろうとする。早足で歩いていくホワイトポーに私は慌ててついていった。さっきの喧嘩の一件を見ていたのか、雌猫の集団が怪訝そうにこちらを見ていた。
ホワイトポーは広場の真ん中を堂々と横切っていく。ひらけた広場の向こうには茂みが密集しているところがあった。茂みの群生地の真ん中に何本か大きな木が生えており、それらは堂々と枝を伸ばしている。枝は無数の葉によって飾られており、茂み達に覆いかぶさっていた。ホワイトポーはひらりと低木を飛び越える。私も彼女にならってそれを越えた。チクチクとした葉っぱが毛を掠った。

低木の密集地の向こう側には、柔らかな草とふかふかとした土によって作られた空間が広がっていた。コケの塊が空間の入り口から離れたところに二つ置かれている。
「ここは…?」
私は首を傾げた。
空間を覆い隠すような、大木達の枝と葉っぱによってできた天然の屋根によって柔らかな月明かりは遮られ、部屋の中はじっとりと暗かった。
「ここは、見習い部屋だよ」
ホワイトポーはそう言うと部屋の奥まで歩いて行き、二つのコケの塊を崩し始めた。何をしているのか聞きたかったが、ホワイトポーは私が口を開くより先に、また話し出した。
「今は見習いが少ないから部屋がすっごく広く感じるの。今だって十分暗いけど、夜は本当に真っ暗。光はほとんど差し込まない。聞こえるのは横で寝ているスパイダーポーのいびきと、名前もよく分からない鳥の不気味な鳴き声だけ。眠れない夜なんて地獄だよ。心細いし。今にも森の奥から得体の知れない怪物がやってくるんじゃないかって思うと…」
ホワイトポーはそう言いながら顔をしかめ、ひときわ大きなコケを猫パンチで、せいやっと小さな声で掛け声をかけてから叩き崩した。
「その怪物なら、どんなに強い猫でもこのコケみたいに一捻りに出来ちゃうかもね」
ホワイトポーは嘆くような声でそう言うとため息をつき、もはや塊とは呼べなくなったコケ達を分け始めた。
「そのコケはなに?」
私は作業を進めていくホワイトポーの横に座った。ホワイトポーはテキパキとコケを三つの集団に分けながら答えた。
「これはね、寝床だよ。シアンポーはこれを寝床として使っていなかったの?」
今までずっと『シアン』という名前で呼ばれていたため、『ポー』という語が後につくのにまだ慣れない。しかし、シアンポーと呼ばれるのは嬉しくもあった。部族の猫から良い目で見られないとしても、その名は私が正式に部族の一員になったことを思い出させてくれる。
「これは使ったことがないなぁ。私達の部族には決められた寝床が無かったから、みんな自由なところで寝泊まりしていたし」

私はもともといた部族を思い返す。二匹の弟達と、一番ぐっすり眠れるベッドを探し求め続けていた。不眠症気味だった私はどのベッドもあまり変わらなく思えた。だが、あるときに見つけた、人間が捨てたであろう『ソファ』という道具の居心地は最高だった。他の猫にも見つかりにくいところにあったこともあり、私達はそこを最高なベッドと認定したのだった。旅立つ日の前日には弟達とソファに寝そべりながらいろいろな話をした。弟は生意気で悪戯好きな困った猫だったが、どちらもとっても良い子だった。

ホームシックになりそうになり、私は慌てて意識を過去から現在へと戻した。
「へぇー!何だか自由な部族ね。皆で一緒に行動したり集まったりとかは無かったの?」
ホワイトポーはコケを分ける手を止めて、私を見つめてきた。目をキラキラと輝かせる。
「そうだね…、うん。無かったと思う。一応リーダーはいたけど、自分で狩りをして、自分で取った獲物を食べてって感じ。狩りの仕方とか生きていく方法はお父さんやお母さんに教えてもらうの」
私がそう言うと、ホワイトポーは違う文化をもつ猫のことをもっと知りたいの。と呟いた。彼女は止まっていた作業を再開し、分けたコケを固め始めた。
「新しい文化?」
私は端っこのコケのまとまりを、彼女の動きをちらちらと見ながら固める作業を始めた。
「そう。新しい文化。あなたのいた部族と私達の部族って全然文化が違うじゃない?私達の部族はお互いが密接した関係を持っていて、私達は厳しい掟に縛られている。掟に縛られることで、私達は守られるの。掟って私達のためにあるものだから」
私は真面目な顔でつぶやくホワイトポーを見つめた。
「この部族には何の掟があるの?」
私は尋ねた。ホワイトポーはちらりと私を見た。彼女は一つ目のコケの塊を作り終えたようだった。素早く二つ目に取り掛かる。
「いろいろなものがあるけど…。やっぱり部族への忠義心を強く持つことが掟では一番大切なんじゃないかな。他部族の猫に心を奪われるのってやっぱりいけないんだと思う」
ホワイトポーはコケを押しつぶしながら呟いた。その目には寂しさが表れている。
「最近、この森に移り住んできたの。移動が大変だった。でもさ、全部族の猫が協力して励ましあっているところはやっぱり素敵だったよ。また四つに別れて暮らし始めたけどまだ変な気分。せっかく仲良くなれた猫ともまた離ればなれだもん」
そう言えばそうだ。この森には四つの部族があるのだ。彼女の寂しそうな表情を見るに、やはり四つの部族はそれぞれ敵同士なのだろうか。
「話を元に戻すけど、自分の部族を裏切るのってやっぱり罪が重いと思う」
ホワイトポーは考えながら言った。
「自分の部族を裏切るって…例えば?」
私は尋ねた。もともと住んでいた部族は、今思うとあまり『部族』という雰囲気じゃ無かったかもしれない。と思う。どちらかというと同じ地域に住んでいる猫。という感覚に近かったかもしれない。だから、彼女達ほどの密接さもない。あの部族では、猫達の付き合いはかなり淡白なものだった気がする。
「うーん…。例えば…。やっぱり部族の仲間の命を奪うとか?そんなことをしたら追放だけどね」
ホワイトポーは身震いした。彼女は二つ目のコケも固め終わったようだ。私もやっと、コケの塊を完成させた。
「あなたって、まさか、追放されたわけじゃない…でしょ?」
ホワイトポーがそういえば。というように思い出したような雰囲気で言った。私は首を横に振った。
「まさか。私は追放されたわけじゃなくて…。何て言ったらいいのかしら。私は掟に従ってあの部族から出てきたの。私達の部族には、夫婦の最初の子を部族におき続けてはならないって決まりがあって…」
ホワイトポーが目を見開く。
「何それ!何でそんな決まりが?」
私は首を横に振った。
「私にも詳しくは分からない。だけど、昔話に由来しているらしいわ。昔、部族のリーダーが一番初めの子に殺されたんだか何だか。でもそれにも諸説あって、一番初めの子は誰かに罪をなすりつけられたとか、本当は殺されたリーダーは悪い奴だったとか」
私が説明すると、ホワイトポーは複雑な顔をして、うーん…。と唸った。
「でも家族と離れて暮らすのは寂しくない?」
私は少し微笑みながら頷いた。
「確かに寂しい。でも、暮らすのはダメだけど帰ってくるのは自由だし、一生会えないわけじゃないもの」
ホワイトポーは少しの間俯き続けていたが、急に顔を上げ、私を真っ直ぐ見つめた。日はさらに沈んだようで、重苦しい闇が部屋を埋め尽くしている。ホワイトポーの澄んだ緑色の目が一等星のように眩かった。
「私を兄弟だと思って構わないからね」
ホワイトポーはそう言って、間髪入れずに続けた。
「私ね、嬉しかったの。あなたがこの部族に入るって知ったときに。私は一人っ子で兄弟もいなくて…。最近までスクワーレルフライトって猫が見習いの先輩でいたのだけど、つい先日に戦士になっちゃって」
私は悲しげなホワイトポーをじっと見つめた。彼女は孤独を感じていたのだ。もう一匹の見習い仲間は、おそらく私に敵意を抱いた視線を向けてきたあの黒猫なのだろう。そして、彼女とあの黒猫の仲はあまり良好ではないようだ。
「だから、シアンポーが来たときは本当に嬉しかったんだ」
ホワイトポーは微笑みを浮かべてそう言うと大きく頷いた。
「ホワイトポーは生まれのことで私を避けるようなことはしなかったものね」
私はコケの塊を前足でつつきながら言った。ホワイトポーの初対面ながらもフレンドリーで堂々とした態度。一族の猫の冷たい視線に怯えていた私がどれだけそれに救われたことが。
「当たり前よ。私の父も生まれが飼い猫だったの。それでだいぶ冷たい態度をとられちゃって…。父がどれほど苦しんだかを知っているもの。私は生まれのことで差別はしないわ」
ホワイトポーは強く言った。
「ねぇ、シアンポー。お腹空いてない?部族猫への挨拶も兼ねてご飯を食べに行きましょうよ」
私は目を見開いた。
「あ、挨拶⁉︎私が挨拶しに行っても邪険に扱われそう…」
ホワイトポーは苛立ったように尻尾を振り動かした。
「大丈夫だって、私も一緒に行くもの。あなたに酷いことを言う猫は戦士だろうと容赦しないわ」
あまりにも頼もしい彼女の発言に私は目をぱちくりさせた。
「それに!これからこの部族で過ごすのよ?お互いを知ることは大切でしょ?皆あなたがお告げの猫ってこともあって緊張しているだけよ。少しの間話せばすぐにあなたを認めてくれるに決まっているわ」
私は小さく頷いた。
「分かった。挨拶しに行くわ」
ホワイトポーは、嬉しそうに笑った。
「さっすが、シアンポー!じゃあ早速行きましょう!あ、大丈夫よ。最初からスパイダーポーみたいな気難し屋のとこにはいかないから。話しやすそうな猫を選ぶからね!」
楽しげに部屋の入口の方へと歩いていくホワイトポー。
その背中に向かって私は声をかけた。
「ありがとう、ホワイトポー。さっき兄弟だと思って構わないって言ってくれたの嬉しかった」
ホワイトポーは振り返った。顔を真っ赤にしている。
「な、なんか面と向かって言われると照れるね。気にすることないわよ。私もあなたを勝手に兄弟だと思うから、あなたも勝手に思ってくれて構わないわよ。それでおあいこでしょ?」
私は微笑んだ。

今すぐ父さんと母さんに伝えたくなった。私にとっても素敵な友達ができたってことを。


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先ほど、BBSの記事の編集を行っていたときに、誤った操作をしてしまったのか急に違うページが開いてしまってびっくりしました。機械音痴なのでとりあえず、操作に早く慣れたいなぁと思います…。
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Re: Cyan ◆もう一つの結末◆  2-4から3-6まで

投稿 by ナットテイル on Mon Feb 29, 2016 9:01 pm

◆第五話◆ サンダー族の素晴らしき猫達と  ~夕食編~

完全に夜の帳が下りて暗くなった広場には、たくさんの猫がいた。それぞれ、何匹かで固まって談笑しながらご飯を食べている。

「とりあえず獲物置き場まで行きましょう?今の時期はまだ獲物が溢れてるから遠慮なく食べられるわよ」
ホワイトポーはそう行って歩き出した。広場から少し離れたところに獲物が高く積まれている。
「大きなウサギがないかなぁー。それか食べごろのリスでもいいけど…」
ホワイトポーはぶつぶつと呟きながら、獲物を選び始めた。獲物の山の中に見るからに筋っぽいハタネズミがあるのを見つけ、私はそれをくわえた。
「ちょっと待ちなさいよ!シアンポー!そんな痩せっぽちのハタネズミじゃ、ちっとも腹の足しにならないわよ?ほら、このモリバトにしなさいよ」
ホワイトポーは獲物の中から大きなモリバトをとりあげた。
「ありがとう、ホワイトポー。でも大丈夫。私、あんまりモリバトは好きじゃないの。あと、そんなに大きな獲物は食べきれないわ」
私はホワイトポーの配慮に感謝しつつ言った。ホワイトポーは口をあんぐりと開けた。
「じゃあこっちにあるリスは?そのハタネズミよりは食べ応えあるわよ?」
私は首を横に振った。
「ごめんない、実を言うと私、ハタネズミと魚以外は好きじゃないの。だから気にしないで」
ホワイトポーは小さくため息をついた。
「そんなんじゃ強い戦士にはなれないわよ?いろいろなものをお腹いっぱい食べないと!木の葉っぱが全部落ちて、獲物が痩せっぽちのしかいなくなるまえに、今のうちに食べとかないと」
ホワイトポーは獲物の山を見ながらしばらく吟味していたが、やがて大きなウサギをくわえた。運ぶのも大変そうなほど大きい。

「じゃあ、行きましょ」
ホワイトポーは喋りにくそうにもごもご言った。彼女はきょろきょろと辺りを見渡すと、真っ白な長い尻尾を広場で楽しげに話している4匹の猫の集団に向けた。

ホワイトポーはそっちの方向にさっさと歩いて行ってしまう。恐らく、彼女の独断と偏見で選んだ『話しやすい猫』なのだろう。



4匹の猫のうちの一匹、雪のように真っ白な毛をした猫が最初に私達に気づいた。澄み切った空のように青い目をぱっと輝かせ、満面の笑みを浮かべる。

「ホワイトポー!早速、そっちの可愛い子と友達になったのかい?」
ホワイトポーはウサギをどさりと落として喉を鳴らした。
「うん!シアンポーはとっても良い子よ。ソーンクローも運が良いですよ。こんな素敵な子を指導できるんですから」
真っ白な猫の横にいた猫は、私の指導者とやらになった猫であった。ソーンクロー。確かにそんな名前だった。
「あっはっは!確かにそうだな。ただ、俺の訓練は厳しいからな?辛すぎて部族から逃げ出したくなるくらいにな!」
ソーンクローと真っ白な猫は顔を見合わせて、とても豪快に笑った。近くで集まってご飯を食べていた集団の猫達が、その笑い声を聞いてぎょっとしたように振り返った。

「こら、2匹とも声がでかい。ほら、ホワイトポーとシアンポー、ずっとそこに立ってないで俺の横に座るといい。ホワイトポーはまたそんなに大きな獲物を選んだのか。食いきれなくなっても知らないぞ?」
穏やかそうな顔をした大きな雄猫が言った。彼は少し横にずれ、スペースを空けてくれる。
「私はブラクンファーより大きくなるつもりですから!アナグマよりも大きなたくましい猫になるんです!そしたら部族を守れるでしょう?」
ホワイトポーは勝気な声で言い放った。真っ白な猫が感動したような呻き声を上げた。
「くぅ〜、聞いたか?ソーンクロー?俺の娘の素晴らしい心意気を?ブライトハート譲りの優しさと俺譲りの勇敢さを持った俺の娘は本当に最高だ!先輩は幸せもんですよ!森で一番最高な猫の指導者になったんですから」
この猫はホワイトポーの父親だったのか。確かにどことなく似ているような…。大きな声でべらべらとホワイトポーの素晴らしさを語る白猫の頭を、形の良い前足がぺしりとはたいた。

「親馬鹿もほどほどにしなさいよ、クラウドテイル」
顔に、戦いで…なのだろうか?大きな傷を負った猫だ。美しい猫だが、顔半分の傷が痛々しい。
「だって、だって!ブライトハート。さっきの発言を聞いたか?ホワイトポーは森の未来を背負って立つ存在になるだろう?でもな、シアンポー。お前に一つ頼みたいことがある。ホワイトポーは少し突っ走りやすいところがある。お前はきっと良きブレーキになる。最高の相棒の誕生じゃないか!」
ブラクンファーがはっきりとため息をついた。
「クラウドテイル。お前の家族愛は認めよう。だがな、毎日親馬鹿話を聞かされる身にもなれよ?ホワイトポーも顔を真っ赤にして照れてしまっているじゃないか」
ホワイトポーは照れ隠しをするように、勢いよくウサギにかぶりついた。
「悪いな、シアンポー。こいつは悪い奴じゃないんだ。ただホワイトポーが大好きなだけなんだ」
ソーンクローが言い、クラウドテイルが恥ずかしいじゃないか!やめろやめろ!と叫びながらソーンクローに飛びかかった。2匹はぎゃあぎゃあ言いながら転げ回っている。

「雄猫はいつまでも馬鹿なのね」
ブライトハートが呆れたように呟いた。
「おいおい、その雄猫達と俺を一括りにするなよ?俺は夕食の場で取っ組み合いなんてしないからな」
ブラクンファーが口の周りを舐めながら言った。私はハタネズミを食べ終わり、私の指導者となった雄猫を見つめた。


年上の雄猫が、苦手だ。理由はわからないけれど、恐らく父さんと部族の副リーダーの激しい戦いを見てしまったからだろう。
副リーダーは今までに見た猫の中で一番大きな猫だった。副リーダーは掟を破った猫にあまりに厳しい仕打ちを与えた。それに異議を唱えた父さんは、副リーダーにこてんぱんにやっつけられてしまった。たくましく、大きな副リーダーの腕。固い筋肉。あえなく弾き飛ばされる痩せた父さんの姿。戦いの後に父さんの頬から流れた真っ赤な血。それらはすべて私の中ではトラウマになっている。

しかし、いま子猫のようにはしゃぎながら転がっているソーンクローにそんなに恐怖心は抱かない。この猫となら、上手くやっていけるかもしれない。集会中にあの猫が見せた、にやりとした笑顔を思い出しながら私は思った。


「狩りとかはできるのか?」
ソーンクローとクラウドテイルはブラクンファーに止められ、少しは落ち着きを取り戻していた。ブライトハートは優雅にクロウタドリを食べ続けている。
私はソーンクローの無邪気な目を見ながら小さく頷いた。まだ目を見て話すことはレベルが高い。私はソーンクローの首のふさふさとした毛を見ながら答えた。
「一応、独り立ちする前に、前の部族で教わったので。魚も取れます」
ブラクンファーが感心したように小さく声を上げた。ソーンクローは、ふむふむと呟きながら頷く。
「じゃあ、戦いの訓練が中心かしらね?」
ブライトハートが尋ねる。
「そうだな。まずは軽いところから始めるか」
ソーンクローが尻尾をさっと降って言った。
「じゃあ、そろそろ見習い部屋に戻りましょうか?」
ホワイトポーが立ち上がって言った。彼女はいつの間にか獲物を完食していた。
「そうね。皆さん、ありがとうございました」
私は4匹の猫に頭を下げた。
「君らさえ良ければ、また一緒に食べよう」
ブラクンファーが穏やかに目を輝かせながらそう言った。




私達は見習い部屋への道を戻っていた。ふと、広場のはずれで一匹の猫が夕ご飯を食べているのを見つけた。淡く、ぼんやりとした灰色の毛をした猫だ。細身の体を屈めて獲物を食べている。寂しい陰を感じさせる後ろ姿。私はその猫をじっと見つめた。

私の視線にホワイトポーは気づいたようだった。
「あぁ、あの猫はアッシュファーっていうの。なんだかよく分からないんだけど彼は猫嫌いらしくて、他の猫を避けるような態度をとるのよ」
そうなんだ。と私は小さな声で呟いた。


アッシュファー。彼はなぜ他の猫を避けているのだろうか?アッシュファーの細い背中は、何やら深い悲しみをたくさん背負っているように見えた。
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Re: Cyan ◆もう一つの結末◆  2-4から3-6まで

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