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But, you are what you think in the night with no moon ? 〜あるいは暗闇のない世界の話〜

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投稿 by ナットテイル Mon Feb 22, 2016 8:57 pm

こんばんは。ナットテイルと申します。今、別の小説を連載中ですので、それと合わせてゆっくりとになってしまうとは思いますが投稿していこうと思います!私の確認不足で、他の方と小説の内容がかぶっている部分があるかもしれません。そのことなどで、不愉快な思いをされた方がいらっしゃいましたら、遠慮なくおっしゃってください。




最終編集者 ナットテイル [ Wed Feb 24, 2016 7:28 pm ], 編集回数 2 回
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投稿 by ナットテイル Tue Feb 23, 2016 6:59 am

昨日、改めてストーリーの展開を考えたのですが、最初の設定では展開が上手く合わなくなってしまいました。
そのため、また最初の部分を編集して、最初の設定を変えたいと思います。
私の考えが足らず、このようなことになってしまい、本当に申し訳ないです。
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投稿 by jayheart Tue Feb 23, 2016 7:07 am

新小説おめでとうございます‼こちらも指摘OKなんですよね?1個見つけましたよ‼

そして鋭い金色の目は幼いながらも投資に…
                 ⬆
           ここ『闘志』ではないでしょうか?

と言うかリコイ言い方貴族っぽくて精霊の守り人シリーズのチャグム(イッテイイノカナァ)みたいでおもしろいです‼
掛け持ちガンバです‼p(^-^)q

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投稿 by ナットテイル Tue Feb 23, 2016 7:32 am

jayheart wrote:新小説おめでとうございます‼こちらも指摘OKなんですよね?1個見つけましたよ‼

そして鋭い金色の目は幼いながらも投資に…
                 ⬆
           ここ『闘志』ではないでしょうか?

と言うかリコイ言い方貴族っぽくて精霊の守り人シリーズのチャグム(イッテイイノカナァ)みたいでおもしろいです‼
掛け持ちガンバです‼p(^-^)q

ありがとうございます!読んでいただき、間違いまで見つけていただいたのにもかかわらず、私の考えが足らなかったせいで設定の考え直しをすることにしました。本当に申し訳ないです。
リコイは新しく考え直した方にも登場させるつもりです。
内容はかんがえたので、今日の夕方にでも投稿したいと思います。
こちらの小説にもコメントしてくださって、ありがとうございました!
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投稿 by ナットテイル Wed Feb 24, 2016 7:41 pm

始まりの話


静かな港町という意味であるA quiet port townは、フィル・テイルロン大陸の西に位置している。海に面した小さな町だ。特産品は美しく香り高いバラの花、そして新鮮な海産物だ。
いつも町にはバラの華やかな香りが漂っている。赤っぽいレンガで造られた小さな家々が立ち並ぶ光景は、なんだかチョコレート菓子のようで可愛らしい。
いいところだ。と白犬は思う。住む人々は穏やかで良い人ばかりだ。
彼女の思い浮かべる故郷には、いつも金色に輝く風が吹いている。潮の香りとバラの香りが混ざり合った、柔らかく美しい風が。
「あんたが言ってた故郷のイメージと随分違くない?スノー・フレーク?」
高性能エネルギーカーを運転しながら、一匹のトラ猫がいう。
首から腹へ向けて白い毛が生えている。気の強そうな顔立ちをしており、ぱっちりとした黄色の目はまっすぐ前方に向けられている。
スノー・フレークと呼ばれた白い犬は頷いた。
「私の『イメージしてた景色』とまず違ってる」
スノー・フレークは助手席に座り、横を向いて答えた。
窓越しに彼女の眼前に広がる、青く海底が見えるほど澄んでいたはずの海は真っ黒に化けていた。あの海には、今生命体がいないのだ。
私が、『Underwater ruins school』にいた間に何もかもが変わった。あの10年で何もかもが変わってしまったのだ。
白犬はまるで感情を失ったように感じながら、ただぼんやりとその変わり果てた故郷の象徴を眺めていた。
「あ、何?あんたが故郷をいいところに見せたくて、意地張って誇張して伝えてたってわけじゃないのね?」
トラ猫は冗談めかして言った後、急に真面目な顔つきになった。
「やっぱり、あんたが恐れてたことが起こったってこと?でも、あんたの故郷の町は軍を持っているわけでもないし、戦いに使える素材がそこにあるわけでもないのに?」
真剣な面持ちで運転をしながらトラ猫は言った。
トラ猫が握っているハンドルは透明だ。これは、エネルギーを伝える特殊な素材でできている。彼女の手から稲妻のようなオレンジ色の電力が放たれて、ハンドルの中へと注がれている。彼女自身が放つ強力なエネルギーが、この車を動かす原動力となっているのだ。
「確かにそうだけど、何が起こってもおかしくないのが今の世でしょ?たとえ戦争と無縁の町だろうと…。王国軍も何をするかわからないけれど、反乱軍だって何をするか分からないよ。正義をアピールしているけど、やっていることは正義とは言えないでしょう。あれは」
スノー・フレークが不安な声で言うと、トラ猫は露骨に嫌そうな声をあげた。え、それやっぱり言っちゃう?トラ猫は不愉快そうに呟いた。
カーブに差し掛かり、ハンドルがキュッときられる。
「えぇー、何となく言うって予想はしてたけど言っちゃったかぁ〜。これから親友が入る軍の悪口ぃ?
いくら心がこの大陸より広いと言われてる私だとはいえ、そりゃあ見過ごせないわね〜。ま、私はあの最悪な『Underwater ruins school』に反抗できればそれだけでいいけど」
トラ猫は吐き捨てるようにそう言うと、荒っぽくブレーキを踏んだ。車が前につんのめる。スノー・フレークは前に飛んでいきそうになってぎょっとした。すまんすまん。とトラ猫はあまり悪いと思っていなさそうな声で謝る。まったく…、それが心が大陸より広いと言われてる猫のすること?
スノー・フレークは思わず悪態をつく。トラ猫は可笑しそうに声をあげて笑った。
この高性能エネルギーカーは、運転しているトラ猫…ツェロンによって作られた。ツェロンはかなり荒っぽいところが多かったが、繊細な手作業や、機械工学が得意だった。彼女の10年間の集大成とも言える作品が、この高性能エネルギーカーなのだ。『Underwater ruins school』時代、ツェロンはたくさんの作品を作っていた。ロボットには充電も乾電池もいらない。エネルギーは彼女の前足から放出すれば良いのだから。
その彼女による発明品のほとんどはガラクタのように学校内の倉庫に積まれている。いや、〈ガラクタのように〉というより、本当にそのほとんどがガラクタだった。発明内容は素晴らしいが、全く動かないもの。動くけれど、使い道がないもの。
彼女の数多くの発明の中に、皿洗いロボットというものがあった。学校での皿洗い係を面倒に思った彼女が、パパッと作ってしまったのだ。
だが、そのロボットはあまりにも仕事をするのが遅かった。結局、彼女自身がやったほうが何倍も早いほどに。
そんな素晴らしきガラクタだらけの発明品の中の一つが、今スノー・フレークの腕に付けられている防水機能のついた腕時計だ。スノー・フレークの去年の誕生日に送られたこれは、彼女の発明品の中では1、2を争うほど実用的なものだった。スノー・フレークにとっても、大切な一生の宝物になっている。




「ここら辺でいい?」
ツェロンが車を森の傍に止める。スノー・フレークは頷いた。
「大丈夫。ありがとう」
ツェロンは不安そうにスノー・フレークを見つめた。
「ね、ここで待ってようか。私。それとも、あなたに私のエネルギーをいれよっか?ちょっとは勇ましい気持ちになれることは保証するわよ」
ツェロンは黄色の目を光らせる。スノー・フレークは一番の友人の気遣いに思わず頬を緩ませた。白犬は首を横に振る。
「いいえ、そんなことしなくていいわよ。じゃ、行くわね。ぐっばい、ツェロン」
あまり湿っぽくなるのは嫌だった。スノー・フレークは尻尾を揺らすとすぐに前を向いた。ツェロンは不安そうに彼女の後ろ姿を見送っていた。
だが、スノー・フレークは決して振り返ろうとはしなかった。彼女は、ただ故郷に向かって歩きつづけた。


故郷に近づいても潮の香りもバラの香りもしなかった。スノー・フレークはやはり。と思った。何かがあったのに違いない。故郷は破壊されてしまったのか?

親友のツェロンはこれから反乱軍に入る。王国軍側であった『Underwater ruins school』に復讐をするためだ。彼女は自分自身を危険に晒しても構わないと、寂しげに笑って言った。
白犬は思い出す。真夜中、照明が消えた大きな集会所に2匹で忍び込んだこと。集会所の真ん中に寝転がりながら、彼女が小さな声で言ったこと。
「私達は闘うしか生きる道がないのよ。そう教わったでしょう?どんなに反抗したって、結局はあいつらの思い通りだわ。
あぁ、こんな力なんていらなかった」
ツェロンは右前足をあげて、オレンジ色の稲妻を出した。火花が散る。真っ暗な部屋が、そこだけ明るくなった。2匹の姿を暗闇に浮かび上がらせる。
ツェロンのトラ柄の毛がチリチリと少し焼けた。
「私達は一生、《譎詭変幻兵器》なのよ。そして、それ以外のものにはなれない」
ツェロンの毛を焦がす稲妻。スノー・フレークはじっと、その攻撃的な譎詭変幻兵器に見入った。彼女にはそうすることしか出来なかった。ツェロンの悲しそうな目をじっと見つめることがどうしても出来なかった。
「あぁ、私は本当は発明家になりたかったなぁ。自分の好きなものをずっと作っていたかったなぁ」
ツェロンは誰に言ったわけでもなかった。ただ、嘆くようでもなく淡々と言い放った。その瞬間、彼女のぱっちりとした黄色の目から大粒の涙が一滴だけ零れ落ちた。
「あれ、なんか涙出てきた。なんでだよ」
ツェロンは少し驚いて、涙をぬぐった後、乾いた声であははははと笑った。
彼女がツェロンの涙を見たのは、それが初めてだった。



私達は一生、譎詭変幻兵器以外のものにはなれない。
スノー・フレークは心の中で呟いた。親友は〈彼女自身〉を譎詭変幻兵器にして一生を過ごし、そして終えようとしている。彼女はこれからも発明をするだろうか。自分の好きなものを発明するのだろうか。それとも、兵器しか発明させてもらえないのだろうか。彼女の譎詭変幻兵器は、あの美しいオレンジ色のエネルギーは兵器になるしかないのだろうか。
スノー・フレークはツェロンとは違う。自分の力を恨んだのは同じだった。
だが、誰かを傷つけるのも、誰かが傷つくのを見るのも嫌だった。もう見たくない。スノー・フレークは自らどちらか軍に所属する気にならなかった。
なんとなく、故郷に帰ることにしたのは自分の将来が見えなかったからだ。
そして、自分が譎詭変幻兵器だという現実から逃げたかったからだ。
スノー・フレークはただただ歩く。昔の故郷を思い出す。自分の思い出の中の美しい故郷が色鮮やかに蘇ってくる。

荒れ果てた花屋の横を通る。兵器の攻撃を受けた後だろうか?壁が崩れ落ちている。
スノー・フレークはただただ歩き続ける。




町の入り口にある、大きなバラの花を模したモニュメントは無残に倒れていた。
鮮やかな故郷の景色が崩れていく。チョコレート菓子のような家には、生き物の気配がない。寂しい雰囲気が漂っている。

町に入った瞬間、白犬はこの町が滅びたことを悟った。



「誰⁉︎」
甲高い声と共に、何かが足元に飛んできた。地面に当たると、ぽんぽんと軽い音を立てて煙をあげる。小柄な白黒のぶち猫がぎょっとしたようにこちらを見ていた。白犬は、そのぶち猫に見覚えがあった。幼いころ、まだ『Underwater ruins school』に入る前のことだ。よく一緒に遊んでいた猫だった。スノー・フレークは懐かしさから思わず大きな声をあげた。
「ベデックト!無事だったの?」
ベデックトは警戒を解かなかった。ぐっと目を細め、激しく唸って威嚇した。
「なぜ、私の名を知っている?どこから調べてきた?今すぐ去れ!」
ベデックトは叫ぶように言い、また何かを投げた。これは、木の実玉だ。とスノー・フレークは思った。
体にぽすりと当たる。これが、ベデックトの出来る唯一の抵抗なのだろう。
「ベデックト、私よ…えっと…」
スノー・フレークは言い淀んだ。自分の本当の名前を忘れてしまったのだ。と白犬は今気づいた。スノー・フレークというのは譎詭変幻兵器としての名前だ。10年前に強制的に捨てさせられた、本当の名前。私の名は何というのだろう。
「私はおまえを知らない!今すぐ出て行け!」
ベデックトは激しく言うと、急に俯いた。
「もう、いいだろう。花畑を壊し、海まで壊し…。そして挙げ句の果てには町の若者まで連れて行く!
 私は偶然見つからなかったが、見つかった人は皆だ!皆、反乱軍の本拠地へ連れて行ったんだろう?抵抗したら攻撃をする…。
これ以上この町から何を奪う?もう何もない…。ここに生き残っているのは私だけだ…。頼む、今すぐ去ってくれ」
ベデックトは涙声になりながら話した。白犬は、立ち去るしかなかった。これ以上この町にいるわけにはいかなかった。
傷ついたベデックトの心を、兵器である私が壊してしまうわけにはいかない。



白犬は駆け出した。

昔の故郷の景色は、もう消え失せていて、思い出すこともできなかった。







目の前に黄色の車が見えたとたん、涙が出そうになった。ツェロンはまだここにいてくれたのだ。
「おかえり」
ツェロンはそれ以上何も言わなかった。
「…『Underwater ruins school』まで連れて行って」
ツェロンはこれにも、何も言わなかった。
車が静かに発進した。




『Underwater ruins school』とは、スノー・フレーク達の母校だ。そして、彼女は、そこで職員になる権利を得ていた。




「あんたはさ」
ツェロンが沈黙に耐えきれなくなったように呟いた。こちらはもちろん見ない。目は真っ直ぐ前に向けられている。

「あの学校に行ってどうするわけ?」
スノー・フレークは小さく首を横に振った。
「分からない。まだ、なんにも決めていないから」
小声で呟く。ふーん。とツェロンは言い、ため息をついた。
「内側から叩き壊そうっての?さすがね、あんたは」
スノー・フレークは何も言わなかった。彼女には自分がこれからどうなっていくのかが、全く分からなかったのだ。







1時間ほど車を走らせた後、ツェロンは砂浜に車を停めた。
「ついたよ、忌まわしきこの砂浜に…ね」
ツェロンはそう言ってスノー・フレークを見た。
「いいかい?今度はもう待ってやらないからね?私はもう行くからね」
スノー・フレークは頷いた。
「分かってる」
ツェロンはじゃあね、と呟いた。わざとなのかスノー・フレークの方を見ない。
「…元気でね。私は譎詭変幻兵器としての一生を全うするからね。あんたは…あんまり兵器として生きるなよ」
白犬は苦しさに叫びだしそうになった。ツェロンはどうしても兵器にならないといけないのか?2匹でずっと車に乗って旅をしているわけにはいかないのか?
「…じゃあね、ツェロン」




スノー・フレークの前から黄色の車が遠ざかっていく。一生の別れになるのだろうと何となく分かっていた。










『Underwater ruins school』海底遺跡学校。その名の通り、海の底にある。
海底では呼吸が出来なくなってしまうのだが、海底遺跡を使用したこの学校の周りには空気の膜が出来ている。それによって水の浸入を防いでいるのだ。
学校内の空気は、入れ替え装置によって定期的に交換される。
この膜は、譎詭変幻兵器によって作られたものだ。水の譎詭変幻兵器を操るものであれば、空気の膜を作ることくらい容易い。

『Underwater ruins school』へは専用の潜水艦に乗っていく。
波打際に、譎詭変幻兵器を操れるもののみが放てるパワーだけを原動力として動く一匹乗り専用の潜水艦が並べられている。 スノー・フレークは黄色の潜水艦を選んだ。ツェロンの車を思い出したからだ。
潜水艦につけられたひもを引っ張り、海まで運んでいく。潜水艦は軽い。潜水艦の底に小さな車輪がついており、砂浜の上を不安げに滑っていく。

海は緩やかに波打つ。この海の底に兵器となった子どもたちがいるのだ。そして、私はつい最近までその一匹だった。

潜水艦は波の上に浮かぶ。スノー・フレークは潜水艦に乗り込んだ。潜水艦の中には湿っぽい空気が漂っている。

生き物の気配がした。

スノー・フレークがそれに気づいたのは、もう原動力となるパワーを入れ終わった後であった。全くそっちに注目しておらず見ていなかったが、荷物置き場となる小さな木の籠の中に一匹の子猫がいた。
スノー・フレークは思わず声を出しそうになって慌てて口を閉じた。
一匹の黒い毛をした猫だ。呑気な顔をして眠っている。スノー・フレークは子猫の顔を覗き込んだ。一体なぜ…。身寄りがなくて、行き場に困ったのだろうか。それで、この潜水艦の中に潜り込んだ…?
潜水艦が、がたがたと動き出す。大きく一度ぐらりと揺れた。
黒猫がその揺れに驚いたように目を開けた。黄色の鋭い目がぐっと見開かれる。ぴんととがった耳に、ツンツンとした黒い毛と、鋭い黄色の目は狼にそっくりだった。スノー・フレークは子どもの狼のようなその子猫から目が離せなかった。スノー・フレークが何かを言う前に、その子猫は話し出した。

「あたしは譎詭変幻兵器の使い手。誰かが、この潜水艦であの学校へ行くのを待っていたの。ねぇ。主人、お願いします。私を『Underwater ruins school』に連れて行ってください」
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投稿 by ナットテイル Mon Feb 29, 2016 8:42 pm


用語


譎詭変幻兵器
生き物の想像の範囲を超えた力のこと。また、その力を操る生き物のことでもある。
使い手の中では猫が一番多く、あとの生き物の使い手はあまりいない。操れる力の限度には個人差があり、微弱な力のみコントロールできるものもいれば、強大な力を使いこなすものもいる。猫の場合、目の色で力の判別ができる。

オレンジ色→炎系統の譎詭変幻兵器

青              →水系統の譎詭変幻兵器

緑              →風(自然)系統の譎詭変幻兵器

琥珀色       →治癒系統の譎詭変幻兵器

藍色           →上記全ての譎詭変幻兵器を微弱ながら使える

黄色           →特殊系統の譎詭変幻兵器




『Underwater ruins school』
海底遺跡学校。譎詭変幻兵器を操れるものを集め、〈操るもの自身をも兵器にする〉教育を行っている。戦いの才能を認められたものは王国軍へ派遣される。実技訓練と称して行われている訓練は、別名 捨て駒探し と呼ばれている。


王国軍と反乱軍

かつて、幼い頃から戦いの訓練を受け続け、戦いに熱中してしまった王がいた。その王は王国軍を結成し、理由もなく戦争を繰り返した。が、それに対抗したのが反乱軍である。反乱軍は王国軍と戦い続けたが、王国の最先端な戦闘機や、譎詭変幻兵器による攻撃になす術もなかった。そのため、とにかく人員を確保することを最優先することにした反乱軍は、所構わず町を襲い、戦えそうな生き物を連れ去るようになってしまったのだ。この二つの軍による戦争は少なくともスノー・フレークが生まれる以前から始まっていた。


反乱組織係
『Underwater ruins school』に反乱を起こすために学校内に作られた係。もちろん係の掛け持ちOK。
全ての譎詭変幻兵器の自由と解放を目標として掲げている。情報が広範囲に伝わるのを恐れて、ほとんどの譎詭変幻兵器を操れる子ども達にその存在を知られていない。






キャラクター紹介

フェンリル
この物語の主人公。『リコイ』という種類の猫で、猫なのに狼に似ている。鋭い黄色の眼光とピンとまっすぐたった耳、短くツンツンとした黒い毛が特徴。性格は傲慢で凶暴。とにかく全ての生き物に対して何となくエラそうな態度をとる。自分で良いと思ったことは実行し、不可能と言われてももちろん信じない。スノー・フレークのことのみ、慕って従っており、彼女のことは「主人」と呼んでいる。自分より強いといわれる存在が気に食わないらしく、自分が最強であり続けようとする。スノー・フレーク以外からのアドバイスは受けようともせず、基本的には全て自分の思ったように行動する。仲間のことは、自分のための犠牲…捨て駒呼ばわりしているが、なんだかんだ言って仲間を大切にするような一面もある。基本的に何でもできるのだが、泳ぎだけはどうしてもできない。クロウタドリの肉のみ食べ物と認めている。
能力は特徴系統の譎詭変幻兵器で〈変化〉。自らを狼に似た幻獣、フェンリルに変化させる。色恋沙汰への興味は全くない。どちらかといえば努力型というより天才型だが、努力も毎日欠かしていない。自分の出生についてはスノー・フレークにすらも明かしていない。



☆スノー・フレーク

白く、スマートな体つきをした大きな犬。世界でも数少ない、犬の譎詭変幻兵器の使い手。強大な風系統の譎詭変幻兵器を操り、そのときのみ目が緑色に光り輝く。しっかり者で真面目な性格。極度に心配性でマイナス志向でもあり、物事を悪いほうに考えないと気が済まない。フェンリルの尊敬を一身に集めていることを、何故なのかと気にしている。また、おそらく『Underwater ruins school』の生徒の中で最強であろうフェンリルからの、あまりにも真っ直ぐで純粋な尊敬には、プレッシャーを感じている。物凄く真面目な性格。真面目すぎるほど。明らかに冗談であることも本気にしがち。強力な譎詭変幻兵器を操ることができ、戦闘能力も高いのだが、自分にほとんど自信がない。自己主張が苦手で、自分の意見をかなりあっさりと曲げてしまう。仲間を失うことを恐怖しており、戦いを嫌う。バラの花が大好きで、部屋にたくさん飾っている。筆まめで学生時代の友達によく長い手紙を書いている。また、毎日の日記も欠かさない。



ミュートゥス(神話)

フェンリルの親友…?オレンジ色の毛にオレンジ色の目。はっきりとしたまん丸な目をしている。顔立ちが幼い。小柄だが、フェンリルよりは大きい。九つの命を持つ〈九命族〉の生き残り。多くの命を持つため、戦いでは前線を任されていることが多い。両親を『Underwater ruins school』に殺された過去を持つため、生きる希望を失っている。そのため、譎詭変幻兵器として一生を終えて良いと思っており…。両親を失ったことは周りには隠している。微弱だが、炎系統の譎詭変幻兵器を操る。いつも明るく、ノリが良いテンションの高い少女。怖い話が大の苦手で、真っ暗な部屋では眠れない。元気さと明るさで押し切っているが、傷つきやすい繊細さも内に秘める。かなり涙もろい。占いやおまじないは信じるタイプ。その日のラッキーカラーのアイテムを毎日持ち歩くほど。小魚の袋詰めが大好き。



フロレスタ(林)
黄色と青のオッドアイ。神秘的で美しい毛の長い白猫。深い優しさと愛情を持ち、無口で物静か。いつだって落ち着いている。無邪気なところもあり、時にはクラーロに悪乗りしてミュートゥスに悪戯をすることもある。皆の姉であり母のような存在。オッドアイであるため、水系統の譎詭変幻兵器と特殊系統の譎詭変幻兵器を操ることができる。その威力はかなり強力。特殊系統の能力は『受け渡し』。自分の体力を相手に送り、その相手が水系統の譎詭変幻兵器を扱えるようにする。ナイトホークとは特に仲がよく、彼とは気持ちが通じ合っている。無口だが、表情は豊かで、比較的ころころと表情が変わる。思っていることが顔に出るため、トランプゲームが弱い。やや大人びているが、年頃の少女らしいところもあり、ミュートゥスの話す恋バナへの食いつきはかなりのもの。料理の腕は壊滅的。ナイトホーク以外は食べることができない。



ナイトホーク(夜鷹)
闇に溶け込む毛並みの良い真っ黒な体に、意志の強そうな青い目をした雄猫。少し喧嘩っ早いが、勇気に溢れた正義感の強い少年。座右の銘は勧善懲悪。悪を許さない、曲がらない性格。情報発信係に所属しており、情報を集めることが得意。戦闘能力はとても高い。強さを常に追い求めており、訓練を欠かさない努力型。フロレスタとは親友同士で基本的に側にいることが多い。また、フロレスタの作り出す料理を食べられる唯一の存在。尻尾が長いのが特徴。常に怯まず堂々としているフェンリルに淡い恋心を抱いている。だが、恋愛にはとことん不器用で、フェンリルにはついぶっきらぼうな態度をとってしまう。苦手なことは早寝早起きと整理整頓。



クラーロ・デ・ラ・ルーナ〈クラーロ〉(月光)

反乱組織係の結成者であり、リーダー。周りの係の皆より一歳年上。無邪気でどこか子どもっぽい。常識に縛られない、独創的で豪快かつ大胆な戦法を展開させる反乱組織係の頭脳担当。気が強いところもあるため、ときどきフェンリルと衝突するが、なんだかんだ言ってお互い信頼している。名前が長いので、略してクラーロと呼ばれている。よく真夜中に怪談を話してミュートゥスを怖がらせている。話好きではあるのだが、ちょっと話し方が大げさなこともしばしば。基本的に悪戯担当。ときどきフロレスタと協力する。適当なところも多いが、リーダーなだけあって頼れる存在。係の仲間は彼女の発言や行動の突飛さ、子どもっぽさに時々呆れているが、全員彼女をリーダーとして信頼している。頭を使うと甘いものを欲するようになるらしく、いつも係の仲間にベリーの蜂蜜がけを奢らせている。あまり物事を深く考えすぎず、すべてを笑い飛ばせる強さを持つ。サンセールとは恋人同士…?のような違うような不思議な関係。得意なことは古書の解読。
まだ『Underwater ruins school』に入りたてのころ、殺されそうになった友達を庇って大怪我を負い、その後遺症でうまく動けない。そのため、あまり前線に出て戦うことはない。サンセールが、戦いのときはいつも守るように彼女のそばに寄り添っている。彼女自身も自分で自分の身を守れるように、独自に護身術の訓練を行っている。目の色は藍色。



クーラービリス〈ラービ〉(危険)
美しい金色の毛をした猫。目の色は黄色で、特殊系統の譎詭変幻兵器を操る。名前が長いため、略してラービと呼ばれている。しっかり者で係の仲間の中では一番の常識人。クラーロの悪戯の被害者ランキングではナンバーワン。クラーロには呆れているが、慕っており、名コンビでもある。よくクラーロからは無茶振りをされており、文句を言いながらもそれにのってあげている。小さなボケにもかなりの確率でツッコミを返してくれる、安心できる存在。そのためか、時々彼女がボケると困惑されてしまう。優しく、人が良い性格で、困っている生き物を放っておけない。仲間思いな性格で、仲間のピンチにはいちはやく駆けつける。かなり強い心を持っていて、そう簡単には物事を諦めない。よくマイナス思考なスノー・フレークを励ましている。能力は『鈍感』。痛覚を鈍らせるという生命の危険を伴うもの。一定時間、痛みをほとんど感じなくすることができる。その能力が効いている時間内であれば、致命傷を負っても動き続けることが可能。その間に治癒系統の譎詭変幻兵器で回復してもらえば、怪我の心配はいらない。



サンセール(誠実)

黄金色の毛をしたトラ猫。目の色は琥珀色で、治癒系統の譎詭変幻兵器を操る。かなり強力なものまで操ることが出来る。いつも穏やかで落ち着いた微笑みを浮かべている。ときどき辛辣。冷静で感情的になることは全くない。常に柔らかな空気を醸し出しているが、感情の起伏が少ないため冷たい猫だと思われることもある。表情が変わりにくいため考えていることを読みにくく、トランプゲームが強い。丁寧な性格で、誰にでも敬語で話す。警戒心が強く、あまり知らない生き物には心を開きたがらない少し閉鎖的なところもある。クラーロとは特に親しい。かなり物知り。いつも難しい本を読んでおり、古書の解読法をよくクラーロから教わっている。手先が器用で裁縫などの細かい仕事が得意。目、耳、鼻が良いため、敵の気配をよく感じ取る。仲間の中で一番泳ぎが下手。よく能力の影響で大怪我を負うラービを心配している。
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投稿 by ナットテイル Wed Mar 09, 2016 5:44 pm

『1』反乱組織係の新入り

まず一つ言及しておかねばならないのだが、反乱組織係の一員の雌猫、ミュートゥスは九命族の生き残りである。九命族とは、今となってはほぼ数匹しかいないと言われている、とても珍しい力を受け継ぐ猫達である。その名の通り、九つの命を持っているのだ。ミュートゥスはそれに加えて微弱ではあるが、炎系統の譎詭変幻兵器を操ることもできる。

反乱組織係の活動は年中無休だ。

ミュートゥスは遺跡の二階にある図書館へと向かっていた。その中にある、古書保管庫内に反乱組織係の活動拠点はある。古書保管庫に用があるものはなかなかいない。ときどき、考古学を教えているお爺さん先生が来るぐらいだ。彼は考え事に夢中なのか、いつも何やらぶつぶつと呟いており、ミュートゥス達には見向きすらしない。そのため秘密に活動していても、その活動拠点がバレる心配がなく安心なのだ。
ミュートゥスが古書保管庫の重たい扉を開けると、少し古めかしいような独特の香りが鼻腔に広がった。


「ありゃぁー。また負けちったー」
彼女の耳に嘆くような声が響いた。続けて、もう一回!もう一回!とせがむ声が聞こえる。多分、クラーロとサンセールがトランプゲームをしているのだろう。
「仕方ないですね〜。フロレスタ、負けず嫌いなクラーロさんのために、もう一回だけ勝負しましょうか」
いつもの講義が休みだったのだろうか?フロレスタも今日はいるようだ。

ミュートゥスは通路を歩きながら左右を見渡す。比較的大きな通路の両脇には、更に細い通路が枝分かれしている。その細い通路の左右には、古書が丁寧に整理整頓された本棚が立ち並んでいる。たくさんの歴史的価値のある古書が収められている古書保管庫は、素晴らしいところなのだろうが、古書の解読が出来ないミュートゥスにとってはそれらは縁遠い存在だ。

「今日は何で勝負しているのー?七並べ?それともスピード?」
ミュートゥスは大きな声で尋ねる。そうすると、古書保管庫の中にその声がわんわんと響いた。部屋はたいして狭くはないが、壁の素材が原因だろうか?想像以上に声が響き渡る。
「あー、ミュートゥスだ〜。やっほー!今日はなんと、なんと、なんと!!!大富豪です!」
いぇ〜い。ぱちぱち。
楽しげに1匹で騒いでいるのはクラーロ・デ・ラ・ルーナだろう。ミュートゥス達より一歳年上の先輩だ。名前が長いため、反乱組織係の中ではクラーロと呼ばれている。
別の係と掛け持ちをしているナイトホークや、ラービことクーラービリス、そして決まったカリキュラム以外の特別講義を受けているミュートゥスとフロレスタとは違って、クラーロとサンセールは他の係には属していないし、特別講義にも参加していない。そのため、いつもこの古書保管庫へ早めに来て遊んでいるのだ。今日はフロレスタの受講している「譎詭変幻兵器による社会貢献」の講義は無かったようだ。そのため、通常通りの講義を受けたミュートゥスよりも早く、この部屋に来ることが出来たのだろう。

奥のスペースにはやや小さめなテーブルと、テーブルと向かい合うように二つのソファがある。ソファはベッドとしても代用が可能な優れものだ。時々、計画についての話し合いの途中で寝てしまう猫がいると、その猫はこのソファへ運ばれる。やや小さめなテーブルは主にトランプゲームで使われることが多い。

小さめなテーブルやソファの少し横に、大きなダイニングテーブルと係の人数分の椅子が置かれている。計画を話すときは大抵そこで話し合いが行われる。古書保管庫の奥の自由に使えるスペースはそこまで広くないため、それでかなりいっぱいいっぱいだ。あとは、寝っころがれるようにと絨毯が敷かれた、少し狭いスペースがある。この絨毯スペースは主にナイトホークが占領していた。ナイトホークの読みかけの漫画が、絨毯の上に乱雑に投げ出されている。ソファには、誰か(特にクラーロ)が寝そべっているか、もしくは何匹かで座って談笑をしているかどちらかであることが多い。ダイニングテーブルのあるエリアには、基本的にサンセールがいて、椅子に座って難しそうな本を読んでいる。

今日はサンセールとフロレスタが並んで座っており、クラーロの横が空いていた。ミュートゥスはクラーロの横に座った。目の前に座っているフロレスタと目が合い、思わず2匹とも微笑んでしまった。
「フロレスタは今日はお休みだったけれど、ミュートゥスは通常通り、講義があったんですよね?有意義でしたか?」
ミュートゥスは受講している講義、「譎詭変幻兵器から見るこの大陸の歴史」の内容を思い出した。
「えぇ、今日はウサギの譎詭変幻兵器使いであり、かつこの大陸の五代目の王であるラピヌの話を聞いたわ。クラーロさんとサンセールも受講すれば良いのに。そこそこ面白いわよ」
クラーロはケラケラ笑ってから、随分と憎たらしい顔をして言った
「私はね、私らがトランプゲームで遊んでるってときにミュートゥスとラービが難しい講義を受けてるって事実がとっっっても痛快なの。だ・か・ら、好き好んで講義なんてもんは受けませーん」
フロレスタが苦笑し、ミュートゥスは思わずクラーロを睨んだ。
「なんですか、その底意地悪い理由は!」
サンセールがまぁまぁと言ってミュートゥスを宥める。
「それが理由なのはクラーロさんだけですよ、ミュートゥス。僕も実を言うと講義を受けたいのですが…教師達の意図が見え見えじゃないですか。あれって結局僕らに『兵器』として生きることは悪いことじゃないって伝えるための講義でしょう?」
ミュートゥスは小さく頷いた。
「まぁ、ちょっとそんな意図が伝わってくることもあるかも。だけど、そこに目をつむればなかなか良いことが聞けるよ」
サンセールはなるほどと呟いて、肩をすくめた。やはり彼はこの学校の全てを、ーこの係のことを除いてー 信用していないのだ。
「じゃ、配りますか」
サンセールは気を取り直すように器用な手つきでパラパラとトランプをきると、一枚ずつ配り出した。

「サンセール、あんたズルしてないよねぇ?まさかねぇー」
クラーロがじろっと、目を細めながらサンセールの手元を見る。サンセールが苦笑した。
「まさかぁ。ズルはしませんよ。真剣勝負じゃないですか。じゃあそう言うのならクラーロさんが配りますか?」
サンセールはまだ配っていないトランプの束を、ややぞんざいにクラーロに差し出した。クラーロはちょっとムッとしたような顔をして首を横に振った。
「別に、ただの確認よ!本当にずるしたなんて思ってないからね。だけどさっきから、私のところにぜんっぜん1とか2のカードが来ないんだもん」
クラーロは口を尖らせると、不公平よ!と不満げに唸って自分の手札を取り上げた。
「あぁ、クラーロさんったら。まだ僕、全部配り終えてないですよ」
クラーロはサンセールの言葉を聞いていなかった。すぐに無邪気な声を上げる。
「ぃよっしゃぁぁぁ!!2が!2が降臨したぁ!」
そう叫んでミュートゥスに手札をみせてくる。サンセールが全く仕方ない方ですねぇ。と呟いて肩を落とす。ミュートゥスは思わず彼に同情した。
「ほら、強くない?これ、すんごく強くない?」
ミュートゥスは、すごいですね。本当、すごいですね。さすがクラーロさんですね。とあからさまな棒読みで言った。つくづく、この係のリーダーは子どもっぽい。


反乱組織係について。
反乱組織係とはこの子どもの心を忘れていないリーダー、クラーロによって結成された。その結成理由は単純明快。ただ、『Underwater ruins school』を内部から壊し、そこに囚われている譎詭変幻兵器の使い手を解放すること。ただそれだけである。クラーロはそのために、毎日のように遺跡内をくまなく見てまわり、警備が甘いところや、攻撃を仕掛けやすそうなところをチェックしているのだ。そしてそれを元に計画を立てる。確かに、今はトランプゲームで遊んでいるが、決して毎日遊んでいるというわけではない。

藍色の目をしたクラーロは微弱ではあるが、特殊系統を除く全ての譎詭変幻兵器を扱える。だが、過去の事件との関係から彼女が前線に出ることはほぼ皆無と言って良い。基本的に前線を担当するのはナイトホークとラービの2匹だ。ミュートゥスはクラーロの戦法ではほとんど前線を任されない。彼女には、それが少し不満だった。



「ほら、手札に関係なくクラーロさん弱いじゃないですか。全敗ですよ」
がっくし。となぜか口でも言いながら肩を落とすクラーロにサンセールが呆れたように言い放つ。
「なんでよ!いつもだったらフロレスタが全敗するじゃない!こんなのおかしいよ!私は認めないからね」
大声で喚くクラーロに、フロレスタはにこにこと柔らかな微笑みを浮かべているだけだ。
「フロレスタが全敗するのはババ抜きだけですから。ですよね?フロレスタ?」
フロレスタは小さく頷いた。彼女のババ抜きの弱さは異常だよなぁ。とミュートゥスは思う。彼女は、自分の手札の状況がすべて顔に出てしまうのだ。今日はナイトホークとラービはどうやら来ないようだ。ナイトホークは情報発信係、ラービは譎詭変幻兵器強化訓練係と反乱組織係を掛け持ちしているので忙しいのだ。
「ナイトホークはやっぱり忙しいらしいですね」
サンセールが机の上に散らばったトランプを回収しながら言う。ミュートゥスは首を傾げた。
「ナイトホーク?なに、また情報集めてるの?」
情報発信係も秘密に活動している係である。情報をこっそり集め、小魚の袋詰めなどのおやつと引き換えに情報を提供する。ナイトホークは情報を集め、報酬は無しでその情報をそのまま反乱組織係に伝えてくれるのだ。ちなみに、情報発信係にはナイトホーク以外には、リーティとフォリアという雌猫が所属している。
「えぇ。何やら大変らしいですよ、ナイトホーク。今一大スクープが入ったらしくて」
サンセールはトランプをとんとんと机で揃え、箱の中にしまう。フロレスタが、不思議そうにサンセールを見つめた。
「一大スクープについては僕も詳しく知らないんですよ。ナイトホークに聞いたんですけど、まだはっきりとしたことは言えないとかわされてしまって…。でも、どうやらこの学校をひっくり返すかもしれないほど大きなニュースだそうです」
サンセールがフロレスタに答えた。フロレスタはほとんど話さないが、表情が豊かなので気持ちは伝わりやすい。恐らく、一大スクープの内容に興味を示したのだろう。
「え〜。何それ。なんでそんな大事なことなのにナイトホークは言ってくれないのよ。私に恩があるのに〜」
クラーロが不満げに言った。
「…一応言っておきますが、恩があるのはクラーロさんではありません。彼が恩を感じているのはフロレスタです。あしからず」
サンセールが無残にも言い放ち、クラーロは悲しげな声を上げてソファの上でじたばたした。
「でも気になるなぁ。まだ調査中ってことだよね?」
ミュートゥスは身を乗り出した。サンセールが小さな声で唸って首を傾げた。
「多分…。だけど彼の話の感じからすると僕らにも関係あることって雰囲気でしたね」
フロレスタの目が興味と好奇心からかきらきらと輝いている。
「私達に関係のあること?反乱に有利になる情報ってこと⁉︎」
クラーロはさっきまでサンセールにばっさりと突っ込まれて落ち込んでいたが、突然元気を取り戻して叫んだ。彼女は切り替えが早い。
「反乱に有利ってことは、警備が甘いところを新たに見つけたとか?いや、でも遺跡内はクラーロさんが毎日くまなく見回ってますよね?てことはやっぱり施設関係じゃないってことですよね?」
ミュートゥスは尋ねた。
「この反乱組織係リーダークラーロが責任をもって調べたところによると……これ以上警備が甘いところはない!
ということで、その一大スクープが施設関係のことだったら、私はリーダーの座をミュートゥスに譲ります!」
クラーロは立ち上がって堂々と宣言した。
「あ。私、その座いらないっす」
ミュートゥスは思わず拒否した。フロレスタが思わずというように笑い出した。
「ちょっと!こんなに名誉なことなのに??後でやっぱりいるって言っても知らないんだからね!私もうあげないよ?」
クラーロは小さな子どもがするようにぷくぅと頬を膨らませた。ミュートゥスは冷たく首を横に振る。
「だからいらないですって」



2匹のやり取りを呆れたように見つめていたサンセールが急に耳をぱっと立てた。
「誰か来ますね。足音的に2匹です」
クラーロがおぉっと興奮したように声を上げた。
「噂をすればってやつ?きっとナイトホークとラービね。それにしても、サンセール。あんたほんっと耳が良いわね」
サンセールは肩をすくめた。
「お褒めくださり、ありがとうございます。クラーロさんにしては珍しいですね。素直に僕を認めて褒めるなんて」
クラーロは心外だと言いたげに目をぐっと細めてそっぽを向いた。
「全く!まーた出鱈目を言う!私はいつだってあなたを認めているじゃないの!」


扉が開く重たい音がした。
ナイトホークとラービはやけに慌てて古書保管庫に駆け込んできた。バタバタと足音が響く。
「おかえり!」
ミュートゥスは通路を走ってくる2匹に声をかけた。
「ただいま!で、急で悪いんだけどさ、皆にめっちゃ重大なニュースがあるんだ」
ナイトホークは忙しく皆のスペースに現れるなり、言った。よほど慌てて走ってきたようで、2匹とも息が切れている。
「あぁ、最近嗅ぎ回ってたってやつね。さっきサンセールから聞いたわ。ほら、恥ずかしがらずに、リーダーになんでも言ってごらんなさいな。ほらほら」
にやけながら言うクラーロに、別に恥ずかしがってるわけじゃないでしょう。とラービが美しい黄色の目を、呆れたようにくるりと回して言った。
「うん、リーダー。俺、別に何にも恥ずかしがってないですよ」
ナイトホークも否定し、クラーロは納得いっていなさそうに首をかしげる。
と、そのときラービがダイニングテーブルへと目をやり、大きな声をあげた。
「あー!クラーロさん!私が今日のおやつに食べようと思って買ってきて、テーブルの上に置いておいたベリーの蜂蜜掛けを食べましたね!食べるのを楽しみにしてたのに!」
ラービは目を怒りに燃やし、全身の毛を逆立てている。クラーロはにやにやと笑った。
「あー?またまたぁ。いつものラービちゃんの照れ隠しぃ?本当は私のために買ってきてくれたんでしょう?」
ラービは怒りのあまり身体を震わせている。
「ち・が・い・ま・す!!」
一言一言投げつけるように言い、ラービはクラーロに近づいていった。
「クラーロさん!さっきの発言に突っ込みたいところはたくさんあるんですけど…。とにかく一つだけ言っときます!勝手に私のものを食べないでください!この前だって、私の『完全解説  手当の仕方 〜応急処置編〜』を、断りも入れずに持って行ったでしょう?私、あの日に治療学の授業があって、教科書が必要だったんです!この部屋の中をずっと探してたんですよ!」
ラービは掴みかかるように言う。
「今日という今日は許しませんから!私は堪忍袋の緒が切れましたっ!」
クラーロは、んー?と困ったように首を傾げ、後ろ足で首の後ろをかいた。
「でも、あの教科書はサンセールが誰のか知らんから持ってって良いって言ったから持っていったんだけど…」
サンセールは、僕に飛び火させないでくださいよ。とぼやいた。ラービはサンセールをギラッと睨みつけた。
「大体、サンセールは…」


「まぁまぁまぁ!」
ミュートゥスは慌てて遮った。この言い争いは長い。
第一、人が良いラービは絶対に許さない!と口では言うが、結局怒りを引きずらないのだ。ラービとクラーロの言い争いはいつものこと。いわば、この反乱組織係の日常だといってもよい。
「とりあえず情報を聞きましょうよ」
すっかり情報の存在を忘れられてしょげかえり、フロレスタに慰められていたナイトホークの目が、ミュートゥスの発言を聞いてぱっと輝いた。
「あぁ、そうそう!情報!ごめんね、ナイトホーク」
クラーロが申し訳なさそうにナイトホークを見た。ナイトホークは肩をすくめて首を横に振った。
「お気になさらず、ですよ。クラーロさん。
で、その情報なんだけど…。この『Underwater ruins school』に新入生と、新任の先生が来たらしいんだよ、つい昨日」
ナイトホークは、聞かれたらまずいとでも言うようにぐっと声を潜めた。
「昨日?でも今日はそんな知らない生徒も先生も見てないよ?」
ミュートゥスは首を傾げる。ナイトホークは頷いた。
「そもそも、その情報を聞いたのが一昨日なんだ。黄色い潜水艦がこっちへ向かってるって。海岸からここまで着くのに丸一日くらいはかかるだろう?で、昨日到着するはずだと思って、ずっと授業をサボって学長室の前で張り込みしてたんだ」
ラービが驚いたような声を上げる。
「授業をサボって⁉︎あなた、情報のためなら何でもするのね」
ナイトホークが照れたようにへへっと笑ったので、別に褒めてるってわけじゃないわよ。とラービは呆れたように言い放った。
「ま、昨日の授業は俺の苦手な古代学だったし、いっかなって」
ナイトホークの言葉にクラーロが古代学を休むなんてもったいないっ!と叫び、サンセールがそれに同調した。
「じゃあ、こんど教えてもらいますからね、クラーロさんにサンセール。
で、学長室の前で張り込んだ甲斐あって、その新入生と新任の先生を見たんだよ」
おー!とミュートゥスは思わず声を上げた。
「やったじゃん、ナイトホーク!」
ナイトホークはウィンクした。
「まぁね!大スクープゲットってわけ!」
クラーロが急かすように尻尾を床に打ち付ける。
「で、その新入生と新任の先生が一体どう私達に関わってくるんだい??優秀な情報隊員君?」
ナイトホークは、その質問に落ち着き払って答える。
「いくら早く反乱したいからってそんなに焦らないでくださいよ、リーダー。なんと、その新入生と新任の先生…猫じゃなかったんですよ!」
ラービが目を見開いて叫ぶ。
「猫じゃなかった⁉︎それっていったいどういうこと?」
クラーロが小さな声で、ラービ。リアクション100点。とつぶやき、ラービは恥ずかしそうにクラーロを小突いた。
ナイトホークはラービの質問に対して、緊張気味に話し出す。
「先生の方は犬だったんだ。犬の譎詭変幻兵器って珍しいだろう?だけど、驚くのはまだ早いぜ。

その新入生なんだけどさ…、なんと狼だったんだよ!」
ナットテイル
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見習い
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But, you are what you think in the night with no moon ? 〜あるいは暗闇のない世界の話〜  Empty Re: But, you are what you think in the night with no moon ? 〜あるいは暗闇のない世界の話〜

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