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海の音を奏でて

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ぶっちゃけオーシャンどう思う?

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投稿 by ライトプール Mon Jul 18, 2016 9:59 am

めっちゃ面白いです♪
一気読みしちゃいました・・・!
部族猫体験で、オーシャン君と話してなくて、どんな子かなーって思って
たので、続きがすごく楽しみです!
執筆がんばってください!

ライトプール
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投稿 by ウィンターリーフ@冬葉 Tue Jul 19, 2016 4:43 pm

ライトプール wrote:めっちゃ面白いです♪
一気読みしちゃいました・・・!
部族猫体験で、オーシャン君と話してなくて、どんな子かなーって思って
たので、続きがすごく楽しみです!
執筆がんばってください!

わあ! ライトプールさん、コメントありがとうございます。
続きが楽しみだと言って下さって嬉しいです! 最近気まぐれでやって来てふらっと更新したりするのでとても不定期で……停滞したりすることはないですので、最後までお付き合いして頂ければ嬉しいです。
お互い頑張りましょう^^
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投稿 by ウィンターリーフ@冬葉 Wed Jul 20, 2016 1:31 pm

      【目次】(日々更新)




*第一章  始まりの海

・幕開け
・海の道
・迫る満月
・忌まわしき冬の夜


*第二章  始まりの夢
・落暉の実が落ちるまで
・夢の中で思うのは
・記憶
・変化
・曖昧
・薔薇はお好きか
・心の在り方
・交ざらない
・認めない
・届かない


最終更新日 2020.4.30


最終編集者 ウィンターリーフ@冬葉 [ Thu Apr 30, 2020 9:55 pm ], 編集回数 7 回
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投稿 by ウィンターリーフ@夏… Mon Jun 19, 2017 10:28 am

記憶







強さが全てなのだと思う。力によって捩伏せるのは、古来からのやり方であるからだ。
だからーー自分を贄にしようとした両親は、弱い自分になら勝てると思ったのだろう。ろくにものも知らず、母親から与えられた世界でしか生きていなかったから。

だけどーー死を目の当たりにしたとき。弱い奴は時に強者へと変貌する。自分の生を手放すまいと、死に物狂いで掴み取ろうと足掻く。あのとき、俺が勝ったのは。


ただ、生への執着が強かったにすぎない。






裏切られる痛みを知ってから、無意識に逃げるようになった。痛みをまた受けたくないから、感情を閉ざすようになった。だって、心を動かさずにいれば、傷つかずに済むのだから。

そうして強くなったオーシャンは、畏怖を込めて『海色の王』と呼ばれることとなる。


オーシャンの氷は未だ溶けない。

ウィンターリーフ@夏…
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投稿 by ウィンターリーフ@冬葉 Wed Dec 27, 2017 3:05 pm

変化






「海色の王とはあなたのことね!!」

穏やかな昼下がりのことだった。いつもの場所でのんびりしていたら、いきなりの来訪者である。
見事な黄金色の毛に、若葉を思わせる瑞々しい緑の目の雌猫だった。

「あなたに宣戦布告をするわ! どうやら意味もなく暴れまわって、近隣の猫たちを怯えさせているようだから、あたしが成敗しにきたの!! 大人しく罪を認め、このあたしに倒されなさい!!」

オーシャンは久々に唖然とした。というか、言っていることが無茶苦茶すぎた。
意味もなく暴れまわって? いつ、誰がだ。俺は俺の領域に入ってきたものしかぶっ飛ばしていない。
怯えさせている? そんなのは知るか。そいつらが無意味に怯えているだけだろう。
大人しく罪を認め? いつ、誰が、どこで、そんな罪を犯した。だいだいおまえに裁く権利があるのか。
と、まあ言っても良いのだが面倒ごとを嫌うため、オーシャンはのっそり身を起こすのみにした。たったそれだけで事足りるということは、今までの経験上よく知っていた。

オーシャンは王者の素質がある。その言葉や行動、動作だけで他者を惹きつけ、抗えなくさせる力を持つのだ。そう、だから、この雌猫に対しても同じである。
身を起こし、堂々と石段の上に座る。前足を揃え、背筋を伸ばし。尻尾をゆらりと揺らしーー最後に、上から威圧するように睨むだけ。そうして、適当な言葉を放てばいい。

「うるさいよ、おまえ」

のどかな空気がその一言で壊された。ピシッと亀裂が入るかのように冷気が辺りを包む。案の定、雌猫がさあっと顔を青くした。

「王である俺に無礼な態度をとるとは、良い度胸をしているなぁ。挙句、身に覚えのないことを小賢しく捲したてる」
「なっ……シラを切るつもり!?」

おや、珍しい。と内心でオーシャンは驚いた。ここ最近、オーシャンに突っかかる猫はいなかったからだ。
しかし、面倒だ。反抗も、その態度も。まだ年若い雌猫の目には、純粋な怒り。その行動を推したのは、いわゆる正義。つまるところ、この生意気な雌猫にとってオーシャンは悪役。悪の王者であるらしい。
まったく、だから馬鹿は嫌いだ。と呟きたくなるのを堪え、オーシャンは追い払うことにした。言を逆さに聞きそうな奴には力が一番である。力はわかりやすく、猫を威圧する。それだけで位が決まる。

トンっと軽やかに石段を降り、下り、雌猫に飛びかかる前に、オーシャンは微笑んだ。

「出直してこい、若造」

真ん丸に見開かれた目は最後、雌猫の身体は10メートル先まで吹っ飛ばされた。
ぎゃあっという鳴き声に背を向け、石段を登る。オーシャンはわかっていた。これでもう、逆らわないと。

しかし、常識はたまに覆される。それも思いもよらぬ方法によって。

背後からの殺気に気づき、咄嗟に避けた側を黄金色の毛に包まれた爪が掠める。まさか、と思って振り返ると、なんと、あの雌猫だった。

「ああ、もう!! あったまきた!! なんかもう私情だけでいいや! 絶対あんたに一度はぎゃふんと言わせてやるわ!! 吹っ飛ばされたこと死んでも忘れないんだから! 祟ってやるう!!」

怒りの表情で、最後には目にじわりと涙を滲ませて、雌猫はそのまま背を向けて一目散に逃げていった。
ーーいや、逃げて行ったのか?
オーシャンにしては珍しく、またも唖然とした表情でその姿を見送りーーため息をついた。


ーー乱していくな、馬鹿が。



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投稿 by フォーニィラーク Fri Dec 29, 2017 11:35 am

今ざっと読みましたけど 面白いです!
こういう感じの物語、好きなんですよーー


ホント今さらですけど、、これからも がんばってくださいね!
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投稿 by ウィンターリーフ@冬葉 Mon Jan 01, 2018 1:17 am

ブリザードファー wrote:今ざっと読みましたけど 面白いです!
こういう感じの物語、好きなんですよーー


ホント今さらですけど、、これからも がんばってくださいね!




初めまして、ですかね? よろしくお願いします、ウィンターです!
ブリザードファーさん、コメありがとうございます。そう言って頂けるととても嬉しいです。不定期更新でいつ出現するかわかりませんが、こんなウィンターを許してくださいm(__)m
(冬休みだから最低一話は更新できる、はず……!)

あっ、それとです。あけましておめでとうございます^^
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投稿 by ウィンターリーフ@冬葉 Mon Jan 01, 2018 1:21 am

あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願い致します。



2017年、不定期更新の小説と神出鬼没の私に付き合ってくださりありがとうございました! (きっと誰も付き合ってないのだけれど、一応……)今年はできるだけ顔を出したいと思っております!目指せ完結!!
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投稿 by ウィンターリーフ@冬葉 Sun Mar 18, 2018 3:07 pm

曖昧




宣戦布告をされてから、翌日頭のどこにも記憶していなかったあの雌猫がやって来たのだ。どうしようもない愚か者として片付けるのも良かったが、自分に対抗する存在を失うのは面白みがなくて惜しいーーとそんな考えで、オーシャンはあえて雌猫の無礼を見逃した。そこからが、始まりだったとは知らず、二日三日と王と雌猫の不思議な関係は続いていく。
「ーー私の名前はフェイトよ!」
「そうか。運命とはまた、大層な名をもらったものだ」
「でしょ、かっこいいでしょ!」
「そうだな」
適当な相槌にも関わらず、フェイトは嬉しそうに尻尾を揺らす。敵を相手になに心を許しているのか。
「あっ…あんたが世辞なんて小狡い手を使ったから忘れてたじゃない! もう、私が名乗ったのだから今度はあんたが名乗る番よ」
礼儀は知っているようだと感心する。でも、いいのだろうか。
オーシャンは残念そうにフェイトを見つめた後鼻を鳴らす。自らが先に名乗るということは、相手より己が格下だと認めたということ。故に、フェイトはオーシャンより格下だということ。

「おまえも知っているだろう? 海色の王だ」
「ちっがうわよ! 名前よ、な・ま・え! あんたのそれは唯の呼び名、恐怖する猫らが畏怖と嫌悪を込めて考えた皮肉よ」
いけしゃあしゃあと。舌打ちしたくなるのを堪え、「それでいい」と告げる。
「俺にぴったりだろう? 家族殺しの嫌悪すべき対象。突如ふらりと湧いた紛い物の王」
海色の王と名付けられるのはむしろ光栄だね、と笑って吐き捨てる。そんなとき、決まって遠い目をするオーシャンを心配そうに見やるフェイトの気持ちを気づかないふりをする。
同情も憐憫もいらない。親愛も、慈愛も、恋心も。間違えてこちら側の線を踏み込ませないよう、オーシャンはフェイトを拒絶する。核心には触れさせない。上っ面の表面だけの言葉を並べ、海色の王としての態度を崩さない。弱かったオーシャンはいらないのだ。弱く、泣き虫で世間知らずで、愛を知って裏切られる怖さを知るオーシャンは、いらない。

そんな曖昧で不安定な関係はいずれ終わりが来る。どちらに転ぶかは、全てーー




○ ○ ○





「ーーやめてよ」
掠れた声で、真ん丸に見開いた目で零すフェイトを嘲るようにオーシャンは嗤った。
オーシャンの足元に伏せるのは、オーシャンに狼藉を働いた罰すべき者。灰色の毛を血に染め、力なく横たわる雄猫の背に爪を立てたまま、オーシャンはゆるりと首を傾げた。
「なぜ、やめる必要が?」
「なぜって…そんなのわかりきってる! たったそれだけで、命を奪うなんてこと、そんな…」
ああ、つまらない。
そんな偽善だけの言葉、掠りもしない。
「たったそれだけ? は、ふざけるな。王への狼藉だぞ。万死に値する」
「わけがわからないのよ! そいつはただ、あんたへの悪口を少しばかり言っただけじゃない! 他の奴らだって言ってるのに、なんでそいつだけ…」
「ならば、皆殺しにしようか? そいつだけじゃない。そいつだけが悪いわけじゃないというのなら、連帯責任としよう。誇るがいいよ。この海色の王が、おまえの言葉に耳を貸したことを」

悠然としてオーシャンは言い放つ。邪魔だとばかりに雄猫を蹴飛ばし、一番高い位置に登る。
瑞々しい緑が理解できないとばかりに嫌悪に染まるのを見て、オーシャンは失敗を悟った。
ーーこの雌猫を許すのではなかった。

「ふ、ふざけんなッ!! 猫の命をなんだと思っているのよ!? 王だからって、王のなにが偉いのよ! ただ高見の見物を決め込んで、昼寝してるだけじゃない!!」
「強いから王だ。周りが畏怖するから王だ。周りが従順になるから王だ。外敵が襲ってこないから王だ。理不尽なことが起きようと、自分たちの生活と命が保障されるから俺を殺そうとしない。ま、できないのもあるが。故に、俺は王だ。王に祀り上げたのはお前たちだろう? ならば俺は王の仕事をするだけ」
絶句するフェイトに続ける。
「最近の俺は優しかっただろう? ある程度の狼藉も見逃した。おまえの無礼もな。ただーー優しいだけじゃ王に相応しくない。王が許してばかりだと周りに侮られる。だから思い上がった卑しい者を、こうしてたまには痛い目に合わせなければ。こうでもしないと、俺がどれだけ恐ろしいのかーー皆、忘れてしまうだろう?」

オーシャンはーー海色の王は艶やかに微笑んだ。
フェイトは理解する。王の意味を、王の慈悲を、王の残酷さを。だが、それでもなおフェイトは信じていた。信じたかった。少なくともあのひと時、海色の王は王ではなくてもっとこうーー
その可能性を信じたくて、フェイトは震える身体を叱咤して一段、また一段と登る。

「お願いだから、殺さないでよッ…あんたは絶対そんなことしない。だって、あのとき、あんたはーー」
そんなフェイトの潤んだ瞳を見つめ、王は困ったように嘆息する。そうしてちらりと横たわる雄猫を見た後、仄暗く目を輝かせた。
このとき、フェイトは助かったと思った。自分の信じる穏やかなオーシャンはちゃんといたのだとそう思った。思ったのに。

「仕方ない。じゃあ、選ばせてあげよう」
選ぶ…? 震える声で呟いたフェイトに、王は楽しそうに優しく、残酷に微笑んだ。


「自分の命を差し出すのならば、この者を助けてあげようか」


それは、王とフェイトの曖昧な関係が終わった瞬間だった。
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投稿 by ウィンターリーフ@冬葉 Sun May 27, 2018 2:21 pm

薔薇はお好きか





「ーー殺しなさいよ」
ふわっと黄金色の毛が浮かび、強い意志を持つ緑が真っ直ぐにオーシャンを見据えた。
「殺しなさいよ。それであんたの気がすむのなら…」
「おまえ、それは本気?」
フェイトの言葉に驚きもせず、オーシャンは可笑しそうに問い返した。
今にも毛繕いでもしそうな呑気な態度にフェイトは怒らぬよう、無理やり溜飲下げる。ちらりと視界の端に写る雄猫はーー大丈夫、生きている。
「本気よ。あたしはあんたの理不尽な物言いなんかに屈しないんだから…殺せるものなら、殺して見なさいよ!」
啖呵を切って、言ってやった。
フェイトは震えそうになる足を叱咤して堂々と顎を上げた。オーシャンは、海色の王は美しい目を瞬いて途端に体を震わせる。笑い声が、その口から溢れた。
「フェイト、言うものだなぁ。おまえの愚かさに俺はいっそ関心してしまうよ」
「何言って…」
「おまえ、確かに俺に殺されていいと言ったな? それなのに俺に殺されはしないと何処かで確信している…全くつまらぬものよ。それならばいっそ、本気で殺してしまおうか」
言っている意味が、わけがわからなくてフェイトは思わず一歩後ずさった。
ーー怖い、この猫が。
初めて感じる大きな恐怖にバクバクと心臓が音立てる。あたしはとんでもないものに興味を持ってしまった…いや、持たれてしまった。
海色の王はその名の由来通り、鮮明な青い毛並みを靡かせて笑ってる。ああ、なんでこんな時までも美しいんだろうか。危険な香りを持つ粗野な男なのに。

怨めしくて言葉を発っしようとし、ひたと口をつぐむ。
「おまえを殺すより、おまえの反応の方が楽しい。そう思わぬか?」
その足取りはこちらには向かず、蹴飛ばされた雄猫へと向かう。何をするのか、その先はもうわかりきっていて。

フェイトは怒りの声をあげ、オーシャンに飛びかかって行った。怒りに恐怖もなにもない。ただこの男を止めなければ、その想いで必死に駆ける。
爪の先がその青い毛並みをかすったとき、天地が逆さになりーー最後に見たのは、薔薇のような赤だったか。それが誰から生み出されたかなんて、その時のフェイトにはわからなかった。ただ。
青い空に赤い薔薇はひどく生えるものだと、そう思った。
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投稿 by ペタルドロップ Mon May 28, 2018 4:32 pm

はじめまして!ペタルドロップです!

こういう視点から書かれた物語を読むのは初めてなので、とても新鮮です!

オーシャン君、これからどうなってしまうのでしょうか...。
そして、誰がやられてしまったのでしょうか…。
これからどのような展開が待ち受けているのか、楽しみになるような終わり方ですね!

私もウィンターリーフさんのように、彩りを鮮明に描写できるようになりたいです♪これからも執筆頑張ってください!応援してます♡


******************************


はじめまして!ペタルドロップの友人です。

久しぶりの更新!!!ウィンターリーフさんの投稿、楽しみにしていました!!!

ウィンターリーフさんの小説は、表現が多彩で引き込まれます!

フェイトはどうなってしまったのか...

このような形になってしまいすいません。陰ながら応援させていただきます!執筆、頑張ってください!!!
ペタルドロップ
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投稿 by ウィンターリーフ@冬葉 Sun Jun 03, 2018 11:16 am

ペタルドロップ wrote:はじめまして!ペタルドロップです!

こういう視点から書かれた物語を読むのは初めてなので、とても新鮮です!

オーシャン君、これからどうなってしまうのでしょうか...。
そして、誰がやられてしまったのでしょうか…。
これからどのような展開が待ち受けているのか、楽しみになるような終わり方ですね!

私もウィンターリーフさんのように、彩りを鮮明に描写できるようになりたいです♪これからも執筆頑張ってください!応援してます♡


******************************


はじめまして!ペタルドロップの友人です。

久しぶりの更新!!!ウィンターリーフさんの投稿、楽しみにしていました!!!

ウィンターリーフさんの小説は、表現が多彩で引き込まれます!

フェイトはどうなってしまったのか...

このような形になってしまいすいません。陰ながら応援させていただきます!執筆、頑張ってください!!!




ペタルドロップs 〉

はじめまして、ウィンターリーフです。ペタルドロップさん、コメントありがとうございます!
視点を色々変えた方が互いの考えていることの違いがわかりやすいかなぁ、と思いそうしました。
オーシャン君は、そうですね。フェイトの存在に慣れたとは言え、心は許してませんからこれからもフェイトの心を傷つけるような言動が多いかとw
この後の展開をお楽しみに!
彩りが鮮明だなんて嬉しいです! でもまだまだ精進し続けねば…との心意気でおりますw
嬉しいお言葉の数々、ありがとうございましたm(_ _)m



ペタルドロップsのお友達の方 〉

わざわざありがとうございます、とても嬉しいです!
更新を楽しみにしてくださるのは励みになります。最近更新ペースが亀さん並なのでそろそろスピードアップしたい…
表現が多彩と嬉しいお言葉を! 昔はかなりだめだめだったんですけどねw 進歩した…と思いたい!w

フェイトは重要な猫ちゃんのひとりなのでそう簡単に死なせませんとも! (あらネタバレ?)
いえいえ、感想をいただけるだけ嬉しいです。完結に向けて頑張ります^^
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投稿 by ウィンターリーフ@冬葉 Sun Jun 03, 2018 5:42 pm

ちょっとした雑談とお知らせ


こんにちは! 不定期更新、神出鬼没のウィンターと申します!
さてさて、今日はちょっと次回予告をしようかと思います。これはただの自己満と気まぐれで思いついただけですので、どんどんスルーしちゃってくださいな!

では。ちょっとしたネタバレですが、フェイトちゃんは死にません。性格が捻りまくったオーシャンの大切な猫ちゃんなのですもん。簡単には死なせませんよ。いちおジャンルとしては恋愛、のつもりですから!
傲岸不遜な王様を純真な彼女がどう落とすのか、期待していてください^^





ーここからは分かる方に向けてー

猫寮生活はご存知でしょうか! あの懐かしの、あれです。昔の私が暴走して始めたあれです。あの小説に私が演じさせてもらった、アリア・クラリッサを主人公としたお話を投稿しようかなと考えているのです。彼女の生い立ちを深く掘り下げていきたいな、と考えております。アリアは、今まで私が生み出したキャラの中で1番印象が強い子なので。
予定日はいつになるかわかりませんし、またいつ顔を出すかもわかりませんが、何れか投稿できたらという想いで此処に書かせていただきました!



私からのちょっとした雑談とお知らせは以上です。必ずまたやって来ます!
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投稿 by ウィンターリーフ@冬葉 Sun Aug 19, 2018 4:55 pm

心の在り方







「ーーやっぱり、あんたは優しいわ」
 そう言って微笑んだフェイトの身体が崩れ落ちるのを見てーー
 散った紅を呆然と見つめ、雄猫と見比べ、オーシャンは
「あ…?」
 心を占める言いようもないこの感情は、何か。震える手でフェイトを抱きおこす。震える手? 何を馬鹿なと笑おうとして失敗する。なんでだ。なんでかわからないが、手が震えている。
 オーシャンは愕然とした。今まで敵なしで恐れることなど何もなかった俺が、ちっぽけな小娘の傷に動揺を…? 鼻で笑い飛ばしたかったが、できなかった。だって紅が。
 オーシャンは考えを放棄し、ただひたすらに走り出した。自分が何を思って何をやろうとしているのか、理解してしまったら自分が自分でなくなりそうだったから。
 だからただひたすら、オーシャンは薬草を集めるために、走った。




 ○ ○




 ーー結局、あたしは何をしたかったんだろう。
 ふわふわふわふわと、真白い何かに寝そべりながら思う。最後に見たのは、青空に飛び散る綺麗な紅で。今思うにあれはフェイトから出たものだった。じゃなきゃ、彼はあんな顔をしない。
 そう考えると悪くないのかも、とフェイトはにんまり笑った。あいつにあんな顔をさせることができたなら良いかもしれない、と。

 ーーでも。
 満足してすぐに浮かび上がるでも、にフェイトは自分のことながら苛々した。これ以上何を望むってんだと。だってあたしはもう死……
 あれれ、と間抜けな声を上げてフェイトは起き上がった。死後はこんな世界なのだろうかと。起き上がったフェイトの声に呼応するように、白が一気に紅に染まった。
「なっ…?」
 嫌な色だとフェイトは思った。まるでーー血ではないかと。嫌そうな顔に次の瞬間、パッと紅が青に変わる。目の覚めるような、空の色。それよりも先に思い浮かぶのはーー
「オーシャン…」

 そうだ、オーシャン。
 途端心に広がるのは、何も出来なかった焦ったさと苛立ちと、不安と恐怖とーー何よりも心を占めたのが、胸の奥がキュッとするような甘くて痛い痺れ。そうだ。あたしはオーシャンが
「…好きだったのよ」
 口に出すとすっきりすると言うけど、そんなの嘘だ。出した分だけ出さねばと言うように、後から後から溢れて溢れそうで。甘いだけじゃないカケラの一つ一つを集めて繋げて、海色の彼に渡したら彼はいったいどう心を揺らすのだろう。

 知らず知らずのうち、好きになっていたのだろうか。思えば頻繁に会いに行くようになったのも、その気持ちがあったからだろうか。
 何でだろう、と小さく呟き、分かりきった問いかけに苦い顔をする。
 ーー理由なんて。
 その目に、その声に、その顔に、その態度に、その匂いに。話していくうちに同情して、絆されて、悪いことをしているとわかっていても止められない。それが、それこそが恋なのだ。
 どうしようもない、馬鹿なあたし。
 瞠目し、苦々しく笑う。

 ーー死んでなかったら、伝えてみたい。そしてあわよくば。
 壊れていく青い世界で、フェイトは囁いた。

 ほんの少しでも、心を動かしたい。





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投稿 by ウィンターリーフ@冬葉 Sat Dec 15, 2018 9:43 pm

交ざらない







じっとその顔を見つめて思うのは、こんなにも他人の顔を見たことがあっただろうか、と言うことだ。
 翳りを帯びた金色の目が、黄金色の小さな身体を見下ろす。くたりと力を失った四肢に、腹の真ん中に点々と散る乾いた血の痕。その血痕を毛づくろいでもするかのように舐めとった彼は、血をせき止めるために押し当てていた蜘蛛の巣を認めてグッと目を細めた。

 ーー血は、止まりそうか。

 よかった、と知らずに安堵していたことにオーシャンはもう驚くことはしなかった。あの時の気持ちはもう、誤魔化しようがなかったからだ。
 愛おしいか、と聞かれたらわからないと答える。邪魔かと問われたらわからないと答える。でも…消えてしまったらと聞かれたら、たぶん、きっと、嫌なんだろうと思う。

 たぶん、きっと。

 わからない。わからない。考えたくもない。
 自分を見失いそうでイライラする。オーシャンはさっきまでの静かな目に怒りを宿し、横たわる雌猫に呟いた。
  「ーーおまえに会わねば、良かったのだろうかね」

 風がオーシャンの海色の毛を荒く撫でた。





 それっきりだった。フェイトが目を覚ましたとき、オーシャンの姿はどこにもなかった。








(今回は短めでお送りいたします)



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投稿 by ウィンターリーフ@冬葉 Wed Apr 29, 2020 9:50 pm

 認めない





目を覚ましたフェイトが1番初めに見たものは、夢にまで見た彼ではなかった。
「……だれ」
 掠れた声で問うと灰色の毛玉のような雄猫がおずおずと鼻先を突き出してくる。身体の状態を確認するためのその行動が煩わしく思わず唸れば、雄猫はひっと叫んで毛を逆立てた。
「ああ…あんた、あのときの」
「お、王に命じられました…おまえの咎を償う方法を考えろと。オレは、あなたに命を救われたも同然。だからオレはあなたを死なせるわけにはいかなかった」
 だから手当てを。
 ボソボソとした声だが、はっきりと意志のこもった目で見返されフェイトは素っ気なく頷いた。考えれば、フェイトが傷を負ったのは全てこいつのせいなのだ。こいつが愚かしくも王の近くで陰口を叩くなどするから、怒りを買う羽目に。
 ーーオーシャンだってきっと、殺したりなんかしたくなかった…
 そう思うのはただの願望だろうか。

 でも。
 ぼんやりと傍の雄猫を見やりながら考える。
 オーシャンは躊躇っていた。あの瞬間、フェイトが飛び込んでいなかったとしてもこの雄猫は死んでいなかっただろう。だってあの攻撃には迷いがあった。甘さがあった。だからあたしは死ななかった。
 ーーあたしの存在が少しでも影響したのだろうか。
 だとしたら良いなと思う。少なくともフェイトの存在を認めて、心を揺らしたということだ。出会う以前の彼だったら一切の躊躇はなかったのかもしれない。
 それがフェイトの独りよがりだったとしても。

「ねえ…オーシャンは?」
 どこに。
 その瞬間雄猫がびっくりしたように毛を逆立てた。眠たげな灰色の瞳がまんまるに見開かれている。と、次の瞬間には目が泳ぎ始めた。
「え、ええと王は、その、散歩に…」
「散歩?どこに?」
「そっそれは知りません!オレはそもそも下っ端のようなものなので、恐れ多くも質問するなど…」
 その萎縮様に唖然とするも、ちぎれた片耳に納得がいった。なるほどね。

「ーーほんとに散歩?」

 ゆっくりと身体を起こし、行儀良く座る。背筋を伸ばしその目を覗き込むように問いかける。

「あたし、すっごい鼻が良いの。しかもずっとオーシャンの側に居たから匂いはすごく覚えてるのよ。だから、この場所一帯には彼の匂いが染み付いているはずなの。なのにーー」

「良いこと? あたしはあんたの命を救った命の恩人なのよ。ならばその恩に報いるべきではなくて。正直に話して。でないともう片方の耳を消すわよ」

 正直に言えば、フェイトはオーシャンの横暴さにも怒っていたがこの雄猫にも怒っていた。というより、ある程度は見逃すオーシャンを怒らせるほどのことをした雄猫に良い感情はあまり抱けなかった。
 手当てしてくれたのは嬉しいが、恩人に対して真実を隠すことは不誠実だ。いったいどちらの味方なのだと言いたい。そりゃ、オーシャンが怖いのはわかるけれど。
 フェイトの言葉に雄猫は戦慄しーーそれはもう今にも泣き出しそうな声であっさりと吐いてくれた。



「ーー王は、しばらく戻らないと。フェイトには言うなと釘を刺されました」





 ーーあたしの心をかき乱すだけ乱して、恋心まで植え付けさせたくせに、逃げるなんて。
 信じられない、とフェイトは怒りに震えた。あのときあたしに見せたあの表情、その意味を知りたいのだ。
 それにーーこのままだなんて、死んでもごめんだわ!

 ふんす、と鼻息荒くジロリと目の前の雄猫を睨み上げた。

「どこに行ったのか、知ってること全て洗いざらい話して!」
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投稿 by ウィンターリーフ@冬葉 Wed Apr 29, 2020 9:52 pm

お久しぶりです。
投稿久々すぎてやり方を少し忘れました笑笑
ノロノロ更新です。閲覧してくれる方が居なくともこれだけは完結させるため頑張ります。
できれば数日中にもう一話投稿したいところです…!
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投稿 by シャイニングナイト Thu Apr 30, 2020 6:26 pm

はじめまして!(。・ω・)ノ゙
シャイニングナイトです!ヽ(*´∀`)ノ
小説、読ませてもらっています!最高に面白いです!こういう小説、好きです(ノ´³`)ノ♡自分的にフェイトがお気に入りです!ちょっと気が強いとこが好きだあ!頑張って下さいね!完結を楽しみにしています!((o(。>ω<。)o))
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投稿 by ウィンターリーフ@冬葉 Thu Apr 30, 2020 9:06 pm

シャイニングナイト wrote:はじめまして!(。・ω・)ノ゙
シャイニングナイトです!ヽ(*´∀`)ノ
小説、読ませてもらっています!最高に面白いです!こういう小説、好きです(ノ´³`)ノ♡自分的にフェイトがお気に入りです!ちょっと気が強いとこが好きだあ!頑張って下さいね!完結を楽しみにしています!((o(。>ω<。)o))


シャイニングナイト様 〉〉コメントありがとうございます! 好きですなんて言っていただけて嬉しい限りです^^ 嬉しい言葉ばかりでとても励みになります。更新がとんでもなく遅いのにも関わらずここまで読んでいただけてフェイトも喜んでいると思います…!笑笑
完結を目指してラストスパートさせていただきますo(`ω´ )o
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投稿 by ウィンターリーフ@冬葉 Thu Apr 30, 2020 9:09 pm

届かない




ーーそれは陽だまりのようだった。
 その明るさに、暖かさに、知らず知らずのうちに心惹かれていた。無邪気で無鉄砲なその存在は、決して不快なものではなかった。
 だから。海色の王にとっての太陽そのものが、恐怖でありトラウマであり、力の象徴である紅に染まっていくのがただただ恐ろしかった。
 そして、それを成したのが自分自身だと言うことに驚愕を覚えずにはいられなかった。

 偶然であったとしても。望んで手にかけたわけでなくとも。ーー振り下ろされるべきものではなかった。
 王の爪は、やっとあらわれた'唯一'を傷つけるためにあるのではないのに。

 罪悪感、という名の感情に隠れる、もうひとつのなにか。気づいてはいけないのに、それを目にするたび気づかされる心の変化。それが恐ろしくて、王は逃げた。
 海色の王としてではなく、ひとりの雄猫として。




 ○



 ーーオーシャンは生まれてこの方海辺の住処から離れたことがなかった。だからだろうか。深い森の匂いに馴染めずに今すぐ帰りたいと脳が叫んでいる。海の潮風がひどく恋しかった。
 しかし。
 ふと躊躇う。躊躇うも、なぜ俺が躊躇う必要があるのかと思い苛々と首を振る。あの場所は全てオーシャンのものだ。オーシャンが死に物狂いで自らの牙と爪で勝ち取った場所。もはやあの場所は惨めであった贄の頃の時代などなかったかのように、王としての時代が染み付いている。

「そうだ。俺は王」

 あの頃のように愚かで弱い存在ではない。
 なのになぜ。



「ーー見つけた」



 この雌猫を前にすると、あの頃に戻ったような錯覚に陥るのだろう。

 その猫は沈みゆく夕陽を背に、堂々と立っていた。黄金色の毛が今や夕陽を浴びて燃えているかのよう。爛々と、オーシャンを捉えて離さないその瞳が真っ直ぐにこちらを見据えていた。
 オーシャンは何も言えなかった。ただ逃げねばと無視するべきだと、顔を背けその横を通り過ぎようとした。
「いつから王は、ちっぽけな小娘を相手に逃げるようになったの?」
 許さないとばかりの声に足を止めた。
 仕方なく振り返る。瑞々しい若葉のようなそれと目を合わせた瞬間、ふとフェイトの表情が柔らいだ。
「あたしーーあんたに言いたいことがあって来たの。だから黙って逃げるなんて許せない」

「ねえ。あのときあんたは、どうしてあたしを殺さなかったのーー?」

 泣きそうなそれでいて不安そうな表情でフェイトは問う。オーシャンは何も言えなかった。言えずにいた。
 黙って見つめ返すオーシャンにフェイトはさらに畳み掛ける。

「あの一撃は本来、あたしに向けてのものではなかったわ。だから一切の容赦など、あんたが本当に殺す気だったらあたしは死んでた…でも、あたしは生きてる。ねえ教えて。あのとき、あんたはあたしを見て躊躇ったの? それとも最初から」
 あたしの目の前で殺す気などなかった?

 それは祈りにも似た囁きで。
 どうかそうであってほしいと願うように聞いた声は、あまりにも小さく儚くて。
 返答次第によってはそれは容易く壊れる。でも本当であったのなら。

 黙ったままのオーシャンに一歩、また一歩と近づきその真意を知りたくて不思議な色味の瞳を覗き込んだ。角度によって変わる色彩と同じように、その瞳には様々な想いが渦巻いていて読み取ることは難しい。



「あたしーーあんたを信じたい。過去に何があろうと
 オーシャン、あんたは心を凍らせてなんかいないわ」






 ーー心を動かしてくれると思っていた。傾けてくれると。でも。あまりに過信していた。軽々しくも同情などという感情を表に出してはいけなかった。
 思えば噂でしか知らなかったのに。フェイトは一度もオーシャンの口から過去の出来事を聞いたことがなかったのに。
 ああ、なんて愚かなあたし。
 安っぽい同情なんかでオーシャンの、海色の王の心を溶かせるはずがなかったのだ。

 過去という言葉にピクリと反応したオーシャンの目が、きらりと金色に輝いた。さっきまでの感情の渦巻が嘘のよう。薄い膜を張るようにじわじわと氷に覆われていく。その瞬間、フェイトの目の前にいたのは確かに王だった。

「おまえの望む言葉を吐けば、おまえは満足するのか? 慈愛のこもった言葉を受けて俺がおまえに絆されて情を移すとでも? …愚かな」

「今さら情に溺れるなど! 慈しみも同情もとうの昔に血溜まりの中。救いの手など差し伸べられない。自らの力で切り開かなければ。その時に犠牲にした感情だ。今さら取り戻せるものか!」

 その目には嵐があった。憎しみの色が渦巻いている。


 だからこそ。愚かなフェイトはこう思った。
 その色を消してあげたい、だなんて。






ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
*あとがき
まさかの、久々の、二話連続投稿です。迷走していたらすみませんm(_ _)m
オーシャン君の口調が非常に難しいのです…笑 今までで一番私を悩ませるキャラです間違いなく。
完結まであと少し…だと思いますが、よろしくお願いします^^
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