孤高な黒は、愚鈍な白と旅に出る

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Re: 孤高な黒は、愚鈍な白と旅に出る

投稿 by ヒーステイル on Sun Sep 04, 2016 10:23 am

+ +  第三章 + +  (日照りside)






 ドラウトからすれば、この一団をなぎ払うのは容易い事だった。

 今でも足元はふらつくし、視界だって霞んでる。ピクリ、と僅かに痙攣する脇腹が、強く空腹を訴えていた。

 対照的に、相手は健康的なようで、よく肉がついている。動きだって機敏だ。だが___ドラウトにはそれを跳ね返せるだけの力があった。

 「おい、お前。こんなところで何をやっている?」

 先頭にいた、リーダー格の雄猫が口を開く。

 「お前たちこそ、なぜそこを退かない?俺は先に進むんだ。退かないというなら、力づくで退かせるまでだが」

 ドラウトが笑うように唸り返すと、猫たちの尻尾が二倍くらいに膨れ上がり、耳が後ろを向いた。

 「それはこっちの台詞だな!」

 茶トラの雄猫が牙を剥いて激しく唸り、バッとドラウトに向かって飛び出してきた。

 ドラウトはそれを交わしてはたき落とし、爪を出して抑えこんだ。下でもがくが、抑えこんで離さない。

 「クェイルフェザー!」

 一団から悲鳴が上がる。恐らく、何の命令もなしに飛び出したことによる非難も混じっているようだが、頭に血の昇ったドラウトには、そんな声は聞こえなかった。

 「次はどいつだ!」

 「待て!」

 リーダー格の雄猫が一歩踏み出して言った。

 「クェイルフェザーを離せ、そうしたら俺達も攻撃はしない。族長のところへ連れて行く。お前も、その方がいいだろう?」

 「ふん・・・賢明な判断だな」

 ドラウトはそう返すと、赤い瞳を鋭く輝かせた。




 
 「名をなんという?」

 「__なぜ教えなければならない?」

 「ここではお前の居場所などないのだよ、弁えるんだな。さあ、答えろ」

 押し問答を続けて暫く立つ。どうやら相手の族長はドラウトの名を知りたいようだったが、それはあくまで穏和に、しかし強く執拗に問いかけられていた。

 ドラウトは、戦闘時以外なら極めて冷静であるため、こうした掛け合いは楽しむ性格だった。それは、相手のレベルが高いのが条件だが。

 しかし、今は先を急がねばならない。さっさと切り上げて進みたかった。

 ざわざわとこちらを咎める声が猫たちの並のように伝う。ちらりとそちらに目をやると、白い雄猫と目があった。一見すると雌猫のように柔い。

 白猫は怯えたように目を丸く見開いた。幼さが目立つ顔が僅かに歪む。

 幸せそうだ、と思った。

 見かけで判別するのはドラウトの意に反するが、それでも込み上げてくる殺意が胸を熱くする。

 __俺は、行かなくてはいけないのに。

 ドラウトは族長に向き直ると、低い声で静かに名を告げた。

 「そうか___ではドラウト。お前は今日、戦士部屋の裏で寝なさい。今日はもう遅い。捕虜をどうするかは、朝伝えることにしよう。シスルファー、ウッドフェイス、見張りを頼む。それ以外の年長戦士たちは、この後族長部屋に集まってくれ。

 では、解散」



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Re: 孤高な黒は、愚鈍な白と旅に出る

投稿 by ティアーミスト on Tue Sep 06, 2016 6:25 pm


こんにちは、コメ失礼します!

フロストのちょっぴり皮肉っぽい台詞が好きだったりします笑 彼がドラウトにちらりと羨ましさを感じたことに驚きました。

お二方の心情表現がとても素敵で、キャラクターにするりと感情移入しながら読み進めました(*´ω`*) うーん、捕虜として捕まったドラウトは、一体このあとどうなるのでしょう? 気になります。

執筆がんばですっ
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Re: 孤高な黒は、愚鈍な白と旅に出る

投稿 by ヒーステイル on Wed Sep 07, 2016 6:27 pm

ティアーミスト wrote:
こんにちは、コメ失礼します!

フロストのちょっぴり皮肉っぽい台詞が好きだったりします笑 彼がドラウトにちらりと羨ましさを感じたことに驚きました。

お二方の心情表現がとても素敵で、キャラクターにするりと感情移入しながら読み進めました(*´ω`*) うーん、捕虜として捕まったドラウトは、一体このあとどうなるのでしょう? 気になります。

執筆がんばですっ

コメありです!フロストとドラウトがどうなっていくのかがこの作品の魅力だと思うので、慎重にやっていきたいですw
二匹の運命やいかに・・・!(
お互い頑張りましょう!
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Re: 孤高な黒は、愚鈍な白と旅に出る

投稿 by ウィンターリーフ@冬葉 on Sat Sep 10, 2016 11:20 am

**   第四章   **   (霜side)




羨ましい、とも思ったし、憧れもした。遠くからその猫を見つめ、フロストは羨んだ。明確な殺意を向けられたことに恐怖を感じるが、それ以上に好奇心が勝る。身が竦むほどの威圧に気圧されるだけで無く、行動に移すべきなのだと考え、フロストは嘆息した。
話し合いが終わり、口々に呟きながら去っていく仲間を見送る。指導者と言えば年長戦士と議論でもするつもりなのか、弟子の自分をほっといて族長部屋へと行ってしまった。自分勝手なことをするな、と常に叱ってるくせして、自分だって同じことをしている。呼び出されたのはわかっているが、やはりきちんと弟子に伝えるべきだ。理不尽な世の中、としたり顔をして地面を引っ掻き、フロストはそわそわと件の猫を追おうとした。あの猫に近付いてはいけない、など誰も言ってない。


例の猫は大人しく____定かではないが____戦士部屋の裏に、確かにいた。こちらにはとっくに気付いているようで、射るような鋭い目がこちらを貫く。あまりに激しい視線に恐怖よりも苛立ちが勝ち、フロストは口を開いた。


「あのさあ、思ったんだけど。警戒までならまだしも、殺意を明確に表すのはどうかと思うよ」


フロストの言葉に驚いたのか、その猫は軽く目を見開いた。わかりやすい反応だ、と感心しながらフロストは値踏みするようにじっと凝視する。
この猫、仲間からのからかいの声に苛立ってるんだな。
そのことが容易に汲み取れて、フロストは恐怖を完全に消し去っていた。戦闘はなけなしだけど、頭脳では誰にも負けない。
無言でじっと睨んでくるその猫を前に、フロストはひょんなことを口にした。きっと、相手側もさぞ驚いたことだろう。


「そう言えば、名前なんだっけ? 僕、族長の話全く聞いてなかったんだよね」


その猫の瞳が、苛ついたように強く揺れた。
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Re: 孤高な黒は、愚鈍な白と旅に出る

投稿 by ヒーステイル on Sun Sep 18, 2016 1:26 pm

+ +  第五章 + +  (日照りside)


 

 生意気な小僧だと思った。

 ドラウトの目の前に立つのは、あの柔そうな白色の雄猫だった。一見美しく見えるであろう容姿の奥には、冷静な光が見えた。

 ドラウトはゆっくり顔をあげ、真正面から白猫の瞳を見返した。足音も隠さずに堂々と現れたかと思えば、覗きこむだけで一瞬怯えた顔をする。だが、すぐに賢そうな顔に戻って顎を上げた。

 「___お前は随分弱いな」

 珍しく穏やかな声音でそう言うと、ドラウトはまた顎を前足の上に乗せて鼻を鳴らした。

 耳を刺す気に食わない声に、苛立って仕方がなかった。前に進まねばならないこの足をこんな地に縛り付けようとするこの部族が憎い。

 だが、例えドラウトを更に苛立たせる猫が現れたとて、ドラウトには決して敵わないのだ。そのことを思い出すと、急に興ざめしたように胸のざわめきも消えた。この部族でドラウトが会話するに値するのは、せいぜい族長くらいなものだろう。

 すると、意外なことに、白猫は言葉を返してきた。

 「ねえ、名前をきいてるんだけど。もう一回言ってあげようか?聞こえなかったんなら」

 明らかに煽る声にドラウトはもう一度鼻を鳴らす。

 「__お前は何か勘違いをしてないか」

 ドラウトは赤紅の瞳を鋭く光らせながら言った。

 「俺のことをまるで聞き分けのない犬のようだと思っているんだろう。安い挑発に乗るような愚鈍者だと。生憎だが、俺は自分のことを分析できるくらいには頭脳は持ってるんだ」

 「・・・へえ?さっきは苛立ちすら隠せてなかったようだけど」

 「隠したところで俺に何のメリットがある?お前らが俺に制裁を下せるほど強いというなら別だが、どう見たってお前らは弱い。何日も食っていないような俺に負けるくらいな」

 「よくいうよ。たべようと思えば、食べるものならいくらだってあったはずだ。木の実を食べれば、君は今こんなところで情けなく僕と話してるようなことにはなっていなかっただろうね。その無駄なプライドが、君の首を締めているんじゃないの?」

 済ました顔で言う白猫に、ドラウトは歯をむいて向き直った。

 「随分と達者だな、その口は」

 「ほら、やっぱり安い挑発に乗るんじゃないか」

 「馬鹿を言え」

 ドラウトは白猫に鼻が付くくらい近寄って、目線が合うよう屈んだ。ドラウトののしかかるような大柄で屈強な体に、白猫は少なからず怯んだようだった。

 「事実として話そう___お前は、俺に勝てるか?」

 そう訊くと、白猫の青い瞳が丸くなった。

 「お前の自慢はその頭脳なのだろう。殺意剥き出しとやらの俺にひけらかすくらいな。だが、お前はそれで生きていけるのか?猫が持っている牙や爪を研がず、頭だけでこの森と暮らしていけると言うのか」

 ドラウトは笑わなかった。揺らめく白猫の青い目に、いつかの友人の姿を重ねていた。もう会うことはないと分かっていても、諦めたくなかった姿だ。

 この白猫は、俺には敵わない。再確認をすると、怒りや殺意が波を引くようにすっと無くなった。今までの旅路の中で、あまり他者と関わらず傍観だけしてきたのも幸いだったかもしれない。

 ともかく、ドラウトは白猫に名を教える気もないまま、作戦を整えることにした。いつまでもこんな平和ボケしたような部族にいられない。

 特に何も言わず背を向けようとすると、微かな唸り声がきこえた。

 「待ってよ」

 「・・・・・」

 「これからどうしようっていうの。___ここから脱走するつもり?」

 ドラウトは再び、苛立ちを露わに赤紅の瞳をぐっと細めた。


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Re: 孤高な黒は、愚鈍な白と旅に出る

投稿 by ウィンターリーフ@冬葉 on Sun Sep 18, 2016 2:29 pm

**  第六章  **    (霜side)





「事実として話そう____お前は、俺に勝てるか?」


鋭い爪で引っ掻かれたような痛みが胸を襲った。
その後の言葉を聞いて、さらに胸が鋭く軋んだ。正論過ぎて、正しすぎて、今の自分に反論できる余地がなかった。
赤紅の目の猫は笑わない。覗き込むようにこちらの目を見つめてきて、何も言わずに凝視される。その沈黙に居心地の悪さを覚えるのと同時に、フロストは苛立ちを抱いた。この猫に指摘されたことに対してか、それとも自分自身か。表情を面に出さないようにしていると、その猫は何も言わずに背を向けようとした。


その瞬間、カッとなって頭が熱くなったのがわかった。


……負けた!
そう思った。彼のその態度から心情までもが汲み取れるようで、フロストは思わず小さく唸った。
咄嗟に出た唸りに、フロストは僅かに驚いた。
それを誤魔化すように、フロストは聞く。何をしているんだと、もう一人の自分が叫んでいた。


「待ってよ」


冷静になれない自分がいた。


「これからどうしようっていうの。____ここから脱走するつもり?」


馬鹿な質問だと思い、フロストは苛々と首を振った。
何が待ってよ、だ。何を引き止めてるんだ。正論を言われて悔しくなり、相手の弱味を握ろうとするようなことを。


「別に止めはしないよ。僕はそこまで部族に忠実じゃないし、祖先らに信仰深い方でもない。だから君がどうなろうと知ったこっちゃないけどさあ____」
「……お前は一体何が言いたい?」
 
はあ、とため息をついて面倒くさそうに再び向きなおった彼を見つめ、フロストは瞳を細めた。
妙案を思いついた。


「ただ、君に興味を持っただけ____ってことかな。でも、言いたいことが一つある」


なんだ、と無言で促す鋭い眼光を堂々と見据える。
居丈高な奴だな、という感想は呑み込んでおいて、だ。


「もし困ったことがあったら、僕を呼ぶといいよ」


何言ってんだコイツ、みたいな顔をされかけたが、フロストは微笑んで背を向けた。当然、呼び止められるわけもなく、フロストは難なくその場を離れ、広場へと向かって行った。
____言葉の裏の意図、わかればいいけど。そんなことを思ってフロストはため息をついた。


「……ま、そんなこと無いと思うけどなあ」


あの殺意振りまく猫を思い浮かべ、小さくボヤく。
指導者がまだ戻ってないことを確認し、フロストは見習い部屋へと足を向けた。あの猫の言われたことを、少々考えたいと思う。


のっそりと寝床に横たわり、他の見習い猫の質問の声を無視し___フロストは鼻を埋めた。






もし脱走したいのなら手助してあげる_____我ながら、あり得ない提案だと思いながら。
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Re: 孤高な黒は、愚鈍な白と旅に出る

投稿 by ヒーステイル on Mon Oct 03, 2016 4:15 pm

+ +  第七章 + +  (日照りside)




 陽もすっかり沈み、散りばめられたような星々が、雲の隙間から覗いている。今、この孤高な猫を包むのは尖った視線ではなく、静かな暗闇だった。

 イバラで囲まれた部屋__捕虜がじっと息を殺して窺う外にいるのは、二匹の見張りだ。どちらも素晴らしい筋肉を持った戦士であるが、ドラウトを押さえつけるには弱い。

 ドラウトは考えた。声を上げさせず、殺すことも不可能ではない。だが、それが仮に失敗したらどうだろう?ドラウトは必ず見張り番を仕留めることができる。だがそれは、完璧な着地にならなのかもしれない。

 「出口を探すか」

 ドラウトは低い声で呟くと、辺りを見渡した。

 背中の方は岩で囲まれていて、見張り番が立つ方はキャンプの中心地であろう空き地だ。となれば、この岩の向こうは森だろう。

 長くここにあるであろう岩は、足をかければ崩れてしまいそうだった。ドラウトは大柄であるがすらりとしている。体はそう重くない。だが、この岩棚はドラウトを支えきれないだろう。

 貧弱な。ドラウトは毒吐き、岩棚に近寄って観察した。どこか道はないだろうか?

 岩棚が続く向こうに、細い隙間があるのが見えた。進めば森へでれるだろうか。ドラウトは足を踏み出す。毛皮が小石を引っ掛けてカランと転がっていった。

 ドラウトは臆することなく進んでいった。見張り番が気付いた気配はない。

 「___行き止まりか」

 細い道はそう遠くないところで詰まっていた。さほどがっかりした気持ちもなく、ドラウトは足を止める。

 振り返ろうにも、岩棚の反対側をイバラが邪魔していて向きを変えられないのだ。

 ドラウトは苛々して尾を振った。イバラは部屋になっているようで、中からは大勢の猫の匂いがする。捕虜がすぐ傍にいるのも知らず、呑気に寝ているのだ。

 そこでふと、雄猫の匂いを嗅ぎとった。あの生意気な、弱い白猫だ。多くの経験を持つ鼻は嘘をつかない。

 「・・・・」

 ドラウトは腹ただしくなり、歯をむき出しにした。なぜこいつは呑気に寝てやがるんだ?ドラウトは地が揺れるほど、しかし誰にも気づかれないくらい、低い声で言う。

 「おい」

 そして、ドラウトははっとして赤紅の瞳を細めた。

 誰もわからない、気づかない___はずが、イバラの向こうで、何者かが起き上がった気配がした。

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Re: 孤高な黒は、愚鈍な白と旅に出る

投稿 by ヒーステイル on Sun Dec 18, 2016 5:21 pm

【お知らせ】
諸事情により、コラボ小説を一時休止させていただきます。
また来年再開いたします。待っていてくださると嬉しいです。
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Re: 孤高な黒は、愚鈍な白と旅に出る

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