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孤高な黒は、愚鈍な白と旅に出る

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孤高な黒は、愚鈍な白と旅に出る Empty 孤高な黒は、愚鈍な白と旅に出る

投稿 by ウィンター&ヒース Thu Jul 28, 2016 12:36 pm

▲▽▲▽▲▽▲▽孤高は、
                    愚鈍と旅に出る▽▲▽▲▽▲▽▲








それは、たった二匹の始まりの朝。



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孤高な黒は、愚鈍な白と旅に出る Empty Re: 孤高な黒は、愚鈍な白と旅に出る

投稿 by ウィンターリーフ@冬葉 Thu Jul 28, 2016 10:44 pm

始めましての方、お知り合いの方、ウィンターリーフです。
今回はペイルヒースさんとのコラボ小説と言うことで、オリジナル部族系小説に投稿するに至りました。ペイルヒースさんとは物語の大まかな構成や、自身の演じる猫たちなど様々なことを決めてきました。
「いいよ、見てやるよ」と思って下さった方、これから始まる物語を楽しんで頂けたら嬉しいです。

どうか、一人でも多くの方の目に止まりますように^^
ウィンター&ヒース、ウィンターからでした。




(コメントなどもらえると嬉しいです……!)
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孤高な黒は、愚鈍な白と旅に出る Empty Re: 孤高な黒は、愚鈍な白と旅に出る

投稿 by ヒーステイル Fri Jul 29, 2016 12:38 pm

お久しぶりです、ヒースです。
今回はウィンターさんとコラボさせていただけることになりました!至らぬ点がたくさんあると思いますが、どうぞヒースを見捨てないでやってくださいw
ちょこっと空いた時間でも、目を通してくださったら嬉しいです。
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孤高な黒は、愚鈍な白と旅に出る Empty Re: 孤高な黒は、愚鈍な白と旅に出る

投稿 by ヘザーストーム Fri Jul 29, 2016 6:35 pm

新小説おめでとうございます!
題名がかっこいいです…すごく憧れますw
これは、あの某トピックでおっしゃっていた小説ですか?
もしそうだったらめちゃめちゃ楽しみにしていたので嬉しいです。
続きを楽しみにしています!更新頑張ってください!

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孤高な黒は、愚鈍な白と旅に出る Empty Re: 孤高な黒は、愚鈍な白と旅に出る

投稿 by ウィンターリーフ@冬葉 Fri Jul 29, 2016 8:14 pm

ヘザーストーム wrote:新小説おめでとうございます!
題名がかっこいいです…すごく憧れますw
これは、あの某トピックでおっしゃっていた小説ですか?
もしそうだったらめちゃめちゃ楽しみにしていたので嬉しいです。
続きを楽しみにしています!更新頑張ってください!

コメントありがとうございます!
題名がかっこいいと言って下さって嬉しいです!(愚鈍な白、の方が私なんです……えへへ)
そうです、あのトピックのものです。やっと投稿に至りましたので、随分お待たせしてしまいましたね。
ご期待に添えるよう頑張ります^^
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投稿 by ウィンターリーフ@冬葉 Fri Jul 29, 2016 8:42 pm

**   序章   **    (霜side)







美しい月夜の晚だった。
凍えるような冷たい空気の中、動物の吐く息が白く漂う寒さの中で。ひらひらと天から舞い落ちる雪は、まるで子猫の誕生を祝うかのようだった。煌々と草木を照らし出す月明かりが、茂った森の中にも差し込んでくる。その光を浴びた猫たちは、嬉しそうに髭を振るわした。そうして、ある一定の方向に視線を向けたまま動かない。どの猫も、慈しみの滲む優しい目をしていた。


「______おめでとう、スワン」


スワン、そう呼ばれた白い雌猫は嬉しそうに小さく鳴いた。
もぞもぞと身を丸め直し、そのお腹に張り付く小さな子猫を見下ろす。眩いばかりの愛情は、一心に子猫に向けられていた。


「元気な男の子よ、私に似て白い毛をしているの」


周りを囲む猫たちははっとしたように子猫を見下ろした。小さな小さな、まだ目も空いていないのに母親に張り付く愛しい子猫。その子猫の毛は月明かりに照らされ、柔く白く発光していた。


「名前はどうしようかしら」


幸せで堪らない、というように子猫を見下ろしたスワンの顔は、正真正銘母親の顔をしていた。
美しく、元気いっぱいであった若い戦士の姿は、今や穏やかな母猫へと変貌を遂げていたのだ。その変わり様に、周りの猫たちは嬉しそうに頬を緩める。


「____目が空いてから決めればいい」


静かで大きくもない声量なのに、その涼しげな声ははっきりと室に届いた。途端、弾かれた様に笑みを浮かべる母猫に、いそいそと道を開ける猫たち。母猫は、やって来た雄猫を見て嬉しさに髭を振るわした。


「よくやった、スワン。本当に、よくやってくれたな……」


感動したように声を震わした雄猫を、母猫は馬鹿ね、と言って囁いた。優しさが滲む、甘い囁きだった。


「毛の色は、君に似たんだな。じゃあ瞳の色はどっちだろうか? 俺としては、少しは俺の色も受け継いでもらいたい気分なんだ……」
「わかるわ、その気持ち。でも大丈夫、瞳はきっとあなたの色だから」


確信を込めたように告げた母猫を、雄猫は不思議そうに見下ろした。何故だ? と静かに問う雄猫に、母親は笑って答える。




「私たちの願いだもの」


だからきっと叶う。
その声に、母猫と雄猫は互いの額をくっつけ、嬉しそうに微笑んだ。














子猫の誕生から暫らくして。
群れの長である雄猫と、そのつがいの雌猫の子供は、“フロスト”と名付けられた。
静謐な冬の夜に、雪の色と水の色を持って生まれた愛しい子猫として。“霜”は、祝福されて生まれし子猫だった。
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投稿 by ヒーステイル Sat Jul 30, 2016 3:26 pm

+ +  序章 + +  (日照りside)




 
 「お願い、誰か、誰か助けて」

 枯れかけたハシバミの陰で蹲る雌猫がいた。彼女の身体は肋骨が浮き出るほどやせ細り、本来艶やかな漆黒であろう毛皮に艶はない。

 「誰か。ねえ、いないの?」

 彼女は痩せた喉から絞り出したような声で仲間を呼んだ。はぐれてまだ10つの夜も明けてない。仲間が探しにきてもおかしくなかった。

 誰もいないとわかると、彼女はのそのそと体を丸め、腹にもたれる子猫を抱え直した。

 「お乳をあげなくては・・・この子は死んでしまう」

 母猫は絶望した声で呟く。乾いた舌でそっと子猫を舐めると、子猫は震える声で母を呼んだ。

 ああ、こんなにも愛おしい。震える生命を必死に生きようとしているこの子を、死なせてはいけない。

 母猫は美しい琥珀の瞳を輝かせた。だが、愛だけでこの子は助からないのだ。助かるのならば、彼女は命を懸けてでも、子猫に愛を与え続けるだろう。

 母猫が顔を上げ、もう一度声をあげようとした時、ふと長く濃い影が彼女を遮った。

 「こんなところで何をしている?」

 彼は驚いたように目を丸くし、母子の所まで走ってきた。母猫はほっと肩を下ろす。彼は、逸れる前の部族仲間だった雄猫だ。以前見た時より痩せているが、母猫より健康そうだ。一族はまだ暮らしていけてるようだ。

 「はぐれてしまって・・・ちょうど、お産が来てしまったの」

 「そうか、君はもうすぐ出産予定だったもんな」

 雄猫が労る声を出す。

 「俺達も、この日照りで相当まいってるよ。人間が、どうやら川の水をとめてるらしい。相変わらず傲慢な生き物だよ、奴らは」

 母猫の下で子猫がぶるるっと震え、か細く鳴き声をあげた。

 ああ、と彼女は連れ合いの名前を出して問う。

 「ねえ、彼は?皆は無事なの?」

 「今のところな。けど、長老が一匹亡くなった」

 雄猫は苦しげに唸った。毛艶のない尻尾を、干からびた地面に叩きつける。だが、怒りを孕んだその動作さえも弱々しくて、母猫は思わず目を伏せた。

 「お願い・・・この子を連れて帰って」

 雄猫が驚くように後退る。

 「ああ、もちろん構わないが・・・・君は?ふらついてるだろ。どうするんだ?」

 母猫はちらりと子猫を見た。必死に生きようとしてる我が子を、見捨てたりなど、出来なかった。

 彼女は小さく首を振る。

 「私はもう住処に戻る体力がないわ。この子だけでも連れて帰って」

 「でも、」

 「あわよくば、強い子に育ててほしい。ねえ。後生よ」

 母猫が笑うと、彼は苦しそうに顔を歪めた。そして、おぼつかない足取りで、黒い子猫を受け取る。本当は彼だって、大柄な子猫を連れて帰れるほど元気でないはずなのだ。母猫は最後に子猫の頬を舐め、彼等を見送った。

 ___良かった。

 そう思ってるはずなのに、彼女の目線はずっと子猫の背中を追っている。

 見えなくなったその頃に、母猫はようやく自分が泣いていることに気付いた。

 「どうか、無事で。強い子に。どうか___ドラウト」



 子猫に、母親の記憶はない。



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孤高な黒は、愚鈍な白と旅に出る Empty Re: 孤高な黒は、愚鈍な白と旅に出る

投稿 by 明日輝 Sat Jul 30, 2016 5:19 pm

ウィンターs、ヒースs、お久しぶりです。
そして新小説おめでとうございます!

今回はお二人の合作ということなので、白と黒が物語のなかでどう交わるのかが楽しみです。
影ながら応援させて頂きます!w
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投稿 by ウィンターリーフ@冬葉 Sat Jul 30, 2016 10:10 pm

明日輝 wrote:ウィンターs、ヒースs、お久しぶりです。
そして新小説おめでとうございます!

今回はお二人の合作ということなので、白と黒が物語のなかでどう交わるのかが楽しみです。
影ながら応援させて頂きます!w

ああ、明日輝さん、会いたかったです……! それと、コメントありがとうございます!
ヒースさんの足を引っ張らないよう、自分なりのフロストを作り上げたいと思っています。これからの霜と日照りの旅を、楽しみにしていて下さい^^
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投稿 by フラワリングハート@ふらわり Mon Aug 01, 2016 9:01 am

お久しぶりです……ウィンターさんとヒースさんの…合作…!!
透明度トップ2(独断と偏見)のお二人がタッグを組んだらどうなるのかとわくわくです!
もう序章から透き通った空気感と繊細な心情描写と愛しさと切なさと心強さで(?)汚れた心が浄化されました!
境遇の違う愛情を注がれた二匹の子猫がどのような活躍を見せるのか…楽しみです…!
ひっそりと声援をお二人の脳内に直接送り続けます!
(頑張ってください!)
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投稿 by ライトハート Mon Aug 01, 2016 12:15 pm

新小説おめでとうございます!
某トピックでコラボをすると聞いた時からワクワク楽しみにしてました!
密に応援させていただきます!!
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投稿 by ヒーステイル Mon Aug 01, 2016 12:53 pm

フラワリングハート wrote:お久しぶりです……ウィンターさんとヒースさんの…合作…!!
透明度トップ2(独断と偏見)のお二人がタッグを組んだらどうなるのかとわくわくです!
もう序章から透き通った空気感と繊細な心情描写と愛しさと切なさと心強さで(?)汚れた心が浄化されました!
境遇の違う愛情を注がれた二匹の子猫がどのような活躍を見せるのか…楽しみです…!
ひっそりと声援をお二人の脳内に直接送り続けます!
(頑張ってください!)

お久しぶりです!コメありがとうございます!
わたしに透明度はないです。濁りまくりです。頑張って浄水器を使用しておりますw
愛しさと切なさと・・・wあやまちはおそれずに進みたい(?)です!
ありがとうございます!(こいつ・・・脳内に直接っ・・・!?)
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投稿 by ヒーステイル Mon Aug 01, 2016 12:54 pm

ライトハート wrote:新小説おめでとうございます!
某トピックでコラボをすると聞いた時からワクワク楽しみにしてました!
密に応援させていただきます!!

コメありです!
ウィンターsが素晴らしい構想を練ってくださり、ここまできました!w
ありがとうございます!
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投稿 by ウィングシャドウ@もう復活でいいんじゃないかな Mon Aug 01, 2016 7:50 pm

新小説おめでとうございます。

 あのトピックで話していらっしゃった、ウィンターリーフさんとペイルヒースさんの合作がいよいよ読めるのですね!トピックでお二人が合作なさるということをお見かけしたときから、わくわくしていました……!

 冒頭から期待を裏切らない丁寧な情景・心情描写で続きが楽しみです。応援しております!

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投稿 by ティアーミスト Mon Aug 01, 2016 8:44 pm

おひさしぶりです(* >ω<) 
ヒースさん、ウィンターさん、新小説おめでとうございます!

お二方のそれぞれの作品が好きなので、今回は合作という事で、もう、ほんとに、楽しみです(
「孤高な黒」と「愚純な白」。タイトルの通り、序盤から二匹の人生は正反対に進んでいるような感じがしました。どうやって彼らの道が交わっていくのか、気になります…!

かきごおりの差し入れをしつつ、応援したいと思います。執筆がんばです!
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投稿 by ウィンターリーフ@冬葉 Mon Aug 01, 2016 10:33 pm

フラワリングハートs 〉〉

コメントありがとうございます!
透き通った空気感……しますか? ヒースsのならありえますが、私にはないですよーそんなきらきらしいものw 愛しさと切なさと心強さ、そんなに感じてくれたなんてとても嬉しいです! 陳腐な文ですが、最後までお付き合い下さいm(__)m 脳内……常にフラワリングsの美声が……っ!w お互い頑張りましょう!


ライトハートs 〉〉

コメントありがとうございます!
あのトピックから楽しみにして頂き、励みになります。少しずつですが霜と日照りの心境の変化など、感じて頂けると嬉しいです^^ (陰ながらですが、ライトハートsの小説を応援しております!)


ウィングシャドウs 〉〉

期待を裏切らない……ですと!?
嬉しいお言葉、ありがとうございます! コメント貰えるだけでハイになる私なので、今は歓喜して踊り回っていますw 応援を糧に、完結目指して頑張ります!


ティアーミストs 〉〉

お久しぶりですー、またお会いできて嬉しいです!
それぞれの作品が好きとは……とても嬉しいお言葉ですね! ヒースsとは互いの得意なことを活かしながら進めていく予定です^^ 有難い言葉を投げ掛けて下さり、感謝です……! しかもかき氷の差し入れもくれるなんて……天使ですか!! そんな天使のティアーミストsに、ジェラートのお返しです☆
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投稿 by ライトプール Tue Aug 02, 2016 10:34 pm

新小説おめでとうございます!
タイトルがすごくカッコイイです!!
文章がすごすぎて、すぐにひきこまれてしまいました・・・!ww
執筆がんばってください!

ライトプール
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投稿 by ヒーステイル Wed Aug 03, 2016 11:32 am

ライトプール wrote:新小説おめでとうございます!
タイトルがすごくカッコイイです!!
文章がすごすぎて、すぐにひきこまれてしまいました・・・!ww
執筆がんばってください!

コメありです!
タイトルはウィンターsが考えてくださりました。格好いいですよね!
ありがとうございます、頑張ります^^
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投稿 by ヒーステイル Wed Aug 03, 2016 11:42 am

日照りside


ドラウト【日照り】

黒い毛皮に、ところどころに灰色の斑点や線の入った雄猫。大柄だが、しなやかな体つきをしている。
鋭い赤紅の目。

冷静冷徹で自分本位な性格。相手の立場になって考えることが出来ず、広い世界を知っているが、自分自身の視野は狭い模様。
カッとなりやすく、持ち前の運動神経を活かして戦闘では無双となるが、頭に血が上りやすいので頭脳戦は得意ではない。
自分に厳しいのと同じく相手にも厳しい。
異国の部族から旅をしてきた。


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投稿 by ウィンターリーフ@冬葉 Wed Aug 03, 2016 1:29 pm

霜side


【フロスト】


純白な毛に、首回りと耳先が灰色の雄猫。整った顔立ちは、端整に分類される(見た目だけ美猫)。小柄で細身、しなやかな身体を持つ。穏やかな青色の瞳。


とにかくへたれ。世の全てのものに怯えるような、愚鈍な男の子。狭い世界しか知らず危険に関わりなく生きていたが、相手の気持ちや立場はきちんと理解する。
頭は切れるが、自分では実践不可能。何故なら戦闘能力皆無なうえ、狩りの腕も中の中という微妙なものだからである。ちなみに、狐と出会ったら硬直、穴熊と出会ったら失神、血を見れば貧血、死体を見れば嘔吐する。
ようは女の子よりも女の子らしい、乙女な雄猫である。
肥えた土地に住む小さな部族所属。
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投稿 by ウィンターリーフ@冬葉 Sat Aug 06, 2016 9:03 pm

** 第一章 **     (霜side)






「_____いつまで寝てんだよ、起きろコラ」


朝っぱらから何ともガラの悪い声に、フロストは渋々瞼を開けた。視界に映ったのはイライラと尻尾を叩き付ける、焦げ茶色の雄猫。何で目を開けた瞬間からこんな奴を見なくちゃいけないんだ……最悪だ。


「おい、声に出てるぞ」


このガラの悪い猫は「おい、だから聞こえてる___」不本意ながらも僕の指導者である。喧嘩っ早くて頭のキレが悪く、うんざりするほど雌猫に弱い先輩なのだが「……てめえ」僕の指導者なのである。だからどんなに呆れていても表面上は敬うようにしなくてはならない。


「おはようございます、先輩。今日は何をするんですか?」


本気でむかつくなこいつ、という独白は聞かなかったことにしておく。苔の寝床から身体を振って立ち上がり、幾らかたくましい先輩を見上げた。……上目遣いで。


「何をするんですか? 僕、訓練楽しみにしてるんです、すっごく!」


キラキラしい眼差しを送ったら、思いっきり舌打ちをされた。なんでだ、せっかく良い弟子を演じてあげたのに。


「訓練楽しみにしてるんです……だと? お前が、それを、言うな!」
「へ? 何でです?」


あくまで無邪気を装って首を傾げると、指導者の怒りが頂点に達した。


「おまえは教えがいがないんだよ! 狩りの時はぼけっとしてるし、真面目にやってると思ったら卒倒するほど下手くそだし。戦闘の訓練なんか逐一サボりやがって……無理やりやらせたら、子猫よりか弱い戦闘能力だしよ……」


ああ、俺の苦労ってなんだろう……
もう十分分かっているはずなのに懲りずに嘆く指導者を、フロストは冷めた目で見つめた。しょうがない、もう一度言ってあげよう。


「僕に何を求めているんです? 生憎ですが、僕の能力はこの頭脳だけです。狩りの腕が下手なのも、戦闘能力が悲しいほどないのも、全ての栄養がこの頭脳に回っているからなんです」


ガクッと指導者が脱力をした。


「だけど、別に嘆いたりなんてしません。しようとも思いませんし。だって僕は頭脳戦で役に立っていて、頼りにされている。狩りや戦闘は仲間に任せておけば、何不自由なく生きていけますから!」


ドヤ顔で決めてやった。
やった、決まった……とほくほく顔をするフロストの顔近くで、いきなり指導者がぐわっと牙を向く。いつに無い凶悪顏にちょっとだけびびった。


「その、無駄に良い顔で言われると、すっげえむかつくんだよ……!! 顔の皮を剥いでやろうか、あん!?」


おまえのせいで俺の立場が、俺の存在が……! と少しずれたことについても嘆く指導者に、笑って返しておいた。


「顔なんて、ただ皮一枚の問題ですって。大切なのは性格ですよ、性格」


気を張って行きましょう! と激励すると、速攻ではたかれた。


















フロストはいつも呑気ね。呑気で穏やかで、見ているこちらが脱力するほどふわふわしている。
あなたには、きっと悩みなんて一欠片も存在していないのね。……そんなあなたが、羨ましくもとても憎いわ。
ねえ、フロスト。
あなたを愛している以上に、あなたのことがとても憎い。憎くて愛していて、それでも憎い、愛しく可愛い私の子。あなたは、生まれたときから幸福な道を歩むよう、約束されていたのでしょうね。


幾度も繰り返される記憶の中の声に、フロストはそっと返した。


呑気で、子供のような子だとずっと思っていればいい。そうすれば、あなたは満足するのだから。憎くても愛おしくても同じこと。悩みなんて欠片もない、幸福なお馬鹿な子だと思っていればいい。
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孤高な黒は、愚鈍な白と旅に出る Empty Re: 孤高な黒は、愚鈍な白と旅に出る

投稿 by ラッキークロー Tue Aug 09, 2016 9:42 pm

 遅くなりましたが新小説おめでとうございます!

 ウィンターsとヒースsの合作......! それだけでわくわくが止まりません。
 
 繊細で、生き生きとした情景を描写するウィンターsと、切ない恋愛ものから神秘的なファンタジーまで書きこなすヒースs、そんなお二人が作りだす物語の展開、心から楽しみにしています!
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孤高な黒は、愚鈍な白と旅に出る Empty Re: 孤高な黒は、愚鈍な白と旅に出る

投稿 by ヒーステイル Fri Aug 12, 2016 1:42 pm

ラッキークロー@LC wrote: 遅くなりましたが新小説おめでとうございます!

 ウィンターsとヒースsの合作......! それだけでわくわくが止まりません。
 
 繊細で、生き生きとした情景を描写するウィンターsと、切ない恋愛ものから神秘的なファンタジーまで書きこなすヒースs、そんなお二人が作りだす物語の展開、心から楽しみにしています!

コメありです!
私も合作というのは久しぶりなのでワクワクしておりますwウィンターsの美しい表現をかき消さぬよう、精一杯頑張りたいです。
ラッキーsも頑張ってください!
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孤高な黒は、愚鈍な白と旅に出る Empty Re: 孤高な黒は、愚鈍な白と旅に出る

投稿 by ヒーステイル Fri Aug 12, 2016 2:14 pm

+ +  第二章 + +  (日照りside)








 ____どこからか海の匂いがする。

 そう思って顔を上げれば、鼻孔をくすぐるのは土っぽい獣の匂いだった。

 「こんなものを潮だと思うほど、俺はどうかしてしまったんだろうか」

 流石にそんなことはないと思うが、誇り高い生き物にとってはこれは死活問題ではないだろうか。むせ返るような匂いの中で、ふと考える。

 そういえば、もう3日も何も口にしていない。この辺りになら、干からびたネズミくらいいそうなものだ。

 そう思って茂みを押し分けて歩いて行くと、上から声がかかった。

 「やあお兄さん。そんなところで何をしているの?」

 黙って見上げれば、木の上で悠々と尻尾を揺らしている野良猫がいた。美しい雌猫だが、手入れをしていないのかそれとも興味がないのか、毛皮はボサボサだ。

 「・・・お前には関係ないだろう」

 見限って再び歩き出そうとするが、雌猫は話を続ける。

 「獲物を探しているの?残念、ここから先は森の猫たちの縄張りだよ。見つかって攻撃されて、死ぬのが落ち。やめておいたら?

 それに、この辺なら食べられる木の実がたくさんある。アケビや木苺、運が良ければヤマボウシなんてのもあるかもしれないよ。
 縄張りに踏み入るより、ずっと安全だと思うんだけれど?」

 「__よく喋るな」

 耳を立ててから振り返り、雌猫を睨み上げる。

 「木の実なんて、俺達猫のような誇り高い生き物が食べるものじゃあない!

 それに、お前、この先の縄張りに入るよりずっと安全だと言ったな。この俺が、森の猫のような群れることしかできない奴らに負けるわけないだろ」

 ひょい、と肩を竦め、雌猫が鼻を鳴らす。

 「でもお兄さん、随分と痩せているようだけど。それじゃあ負けちゃうんじゃない?」

 「馬鹿にするな。俺はな、3日食べなくてもここまで歩いていける基礎体力があるんだ。なんならお前を引きずり下ろして食ってやろうか?」

 おー怖い、と雌猫はあくまで煽るのをやめないようだ。

 ぐっと腰を下ろして爪を出すと、雌猫が立ち上がって楽しそうに言った。

 「なら勝手にしたらいいよ。私はここにとどまってるわけじゃあない。お兄さんの行く末を案じるわけでもないしね。じゃあ、頑張って」

 雌猫は最後ににこりと笑うと、静かに木の影に消えた。

 「・・・ふん、馬鹿め」

 今度こそ歩き出し、森に踏み入るとたくさんの木々の匂いとともに、微かなマーキングの匂いがした。

 森の猫、縄張り、マーキング。

 薄れている___だとすれば、もうじき新しく匂いをつけにやってくる猫がいるのだろう。一匹___いや、数匹の一団で。

 「俺は、こんなところでくたばっていられないんだ」

 奴らが俺の邪魔をするならば、引き裂いて従わせればいい。俺にはその力があるのだから。例え敵が何匹であろうと、簡単には死なないのだから。

 いいや、死ねない。死なせない。

 足音が近づいてくる。

 「____気付いてないのか」

 相手は四匹、いや五匹か。こんなもの、過去に比べれば、負けるはずなどないのだ。そう、このドラウトが。

 ひょいっと木に登り、一団がぞろぞろとやってくるのを待つ。

 「ねえ、何かしら」

 「侵入者の匂いだ」

 「知らせないと、族長のところへ行かないと」

 ___笑わせるな。

 何が族長だ。あんなもの、ただの臆病者にすぎないのに。

 「俺は、ここで止まってられないんだ」

 そう呟いて、ドラウトは飛び降りた。音もなく、柔らかに、目には素晴らしい殺意をたたえて。

 「俺の邪魔をするなら、退いてもらうぞ!」

 笑って激しく唸った姿は、まるで天界から舞い降りた堕天使のように見えただろう。

 だがそんなこと、ドラウトの暗い赤紅の目には映らない。





 復讐のためならば、天使は悪魔にだってなれるのだから。

 
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投稿 by ウィンターリーフ@冬葉 Sun Aug 21, 2016 9:52 am

**   第三章   **     (霜side)
   


「___なんですか、あの殺意だだ漏れの猫」


訓練に出掛ける間際のことだった。何やら騒がしい声と凄まじい唸り声が聞こえたと思ったら、朝のパトロール隊に連れられる見知らぬ猫の姿。集る猫たちのせいで姿はよく見えないが、こちらが竦むほどの鋭い気を放っているのが分かる。


「侵入者、か?」


族長はどう判断されるのだろうな、と興味深けに呟く指導者の後ろでフロストは大欠伸をした。
_____興味ない、そんなこと。


「侵入者のことで頭がいっぱいなら、僕はもう一眠りでもし____」
「ふざけんな」


ドスの効いた声で戒められ、フロストは首を竦めた。














「____おまえ、名をなんと言う?」


族長の立つ岩の下で蹲る猫をフロストは眠たげに見つめた。
艶のない黒い毛に灰色の模様。大柄でしなやかな身体つきをしているが、酷く痩せていて肋骨が浮き出て見える。その様が痛々しいけれど、フロストは同情する気にはなれなかった。
_____なんて怖い目をしているんだろう。今にも猫たちを射殺しそうな、闘志の燃える目だ。だが不思議と輝きは強い。
紅い目なんて始めて見た。血のような、とでも言えるが、薔薇のような色と言うのがフロストにはしっくり来る。強い輝きを秘める紅い目を見つめ、フロストは目を瞬いた。


「僕と正反対だ」


呟いた言葉は小さくて誰の耳にも入らない。でも、聞こえなくて良かったとフロストは心底ほっとした。
こんな、羨むような悲しむような声音を聞かれたら恥ずかしくて生きていけない。
____僕は別に羨んだりなど、そんなのは……
そうは思ってもやはり悔しい。この猫は、どう見ても戦士なのだ。僕には一切ない戦闘の力と言うものをひしひしと感じて、胸が痛くなる。
なんでだ。もう、とっくの昔に諦めたはずなのに。
知らず知らずのうちに地面に爪を立てていたらしい。ジャリッと言う音を響かせ、フロストは身を強く丸めた。


「っ____!」


目が、合った。
その瞬間、思わず逃げ出したくなるような鋭い目に見据えられる。こんな恐怖を、こんな緊張を今まで感じたことがない。向けられたことのない確かな殺意に、じっとりと汗が滲んだ。
その猫はまだこちらを見ている。鋭い紅い目が不意に細められ、その口元が歪んだ。剥き出された牙を見て、フロストは思った。
_____あの、喧嘩売るなら他の方にして下さい。


自分でも心底情けないと思う。
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