猫達は躍る 満月の下で

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猫達は躍る 満月の下で

投稿 by 吉祥 on Sat May 20, 2017 11:45 pm

DCDさん様のオリキャラ達を借りてSSを書こうと決めて何年経ったのか知らないけど、プロットっぽいのが見つかったので書き直してみる

どうせ失踪するから期待しないでくださいな

登場猫→グリフィン ジンジャー(HPにある、『雷と獅子鷲』の終わった後)
    吉祥(いま失踪してる小説が終わったあとのこと)

でき次第上げるつもりだけど、そうそう進まない
怒られたら消します

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Re: 猫達は躍る 満月の下で

投稿 by 吉祥 on Sat May 20, 2017 11:46 pm

時刻は夕刻。 日が沈み、間もなく月が昇る頃。
「ふぅー それにしてもクレイジーな事件だったなぁ」
グリフィンはサンダー族のキャンプを後にして、どこへ旅に出ようかと気ままに空を飛んでいた。
「まだ行ったことない場所に行くのもいいが、またニホンに行ってみるのもいいかもしれないな!」
そうと決まればすぐさま高度を上げ、目的地へと向かおうとした。

しかし、突然顔にねばつくものがまとわりつく。
「は!?クモの巣!?なわけないが!?」
理解が追いつく前に、そのクモの巣のようなものはすぐに体にもまとわりつき、翼の自由まで奪われてしまう。
「くそっ 落ちてたまるかっ!」
無理やり暴れて、辛うじて翼の拘束を解き、落下だけは免れた。
しかし、不時着した方がいい、顔がべとべとする。
「誰だこんな変なトラップを仕掛けやがったのは!」
「いやいやどうも、本当に引っかかるとは思わなくてですね?」
独り言に対する返事があった。





「うーん、では里帰りといきますか。 ニホンの青汁もいいけど、やっぱり山の青汁が一番ですからね」
こちらはジンジャーが里帰りを決め、サンダー族の縄張りを出ようとした時だった。
ふと、心地よい匂いが鼻をくすぐった。
「こ、この匂いは...!? 」
間違えようがない。いままで飲んだ青汁の中で一番美味しく感じた青汁!ニホン産で法外に高くて、一杯分しか手が出なかったあの高級青汁!その匂いをジンジャーの鼻が捉えた!
何故こんな所に とか、そういった疑問は頭の片隅に押しやられ、すぐに匂いの元を辿り始めた。
すると青汁の入った入れ物が、ちょこんと地面に置いてあるではないか!
ジンジャーは迷わず駆け寄った!
「あ、あの時の青汁!!会いたかっt
しかしそこに辿り着く前に、足を踏み外して、落ちた。
ご丁寧に、落とし穴が掘ってあった。
よく見れば地面の色も違ったのだが、ジンジャーには見えていなかった。
そして落ちると同時に、ネットによって捕えられ、吊り上げられてしまう。
「...はめられた!?」
青汁の事で頭がいっぱいになっていて、状況を理解するのに時間がかかった。
というか青汁だけでこんな罠に引っかかってしまった事を恥ずかしくも思ったが、いやしかし、
「こんな所にこんな悪意のある罠を置いたのは誰だー!?」
「はいはい、私ですよ。そんな叫ばなくても聞こえるからさ。 まったく2匹ともご丁寧にほぼ同時に掛かってくれるんだから。」
ジンジャーの視界の隅に、黒い猫が写った。


この日、彼ら2匹は...

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Re: 猫達は躍る 満月の下で

投稿 by 吉祥 on Sun May 21, 2017 12:21 am

「初めまして。まあまあ、楽にしてくれよ。」
罠から放たれたグリフィンとジンジャー、そして黒猫は、4本木の演説台の下に集まっている。
さっき分かれたはずの相棒と再び出会ってしまい、若干の気まずい空気が流れるが、一番の気まずい原因は多分目の前の黒猫だろう。
「...なんで俺は、お前にキャッチされなきゃならないんだ? おれは雄に追いかけられる趣味はないぜ?」
「そういう目的で捕まえた訳じゃないんよね。安心したまえ。」
「えっと... つまり僕達になにか用事があって...?」
「うん、そういうこと。まあ取って食おうって訳じゃないさ。」
「そんなセリフ、猫から言われるのははじめてだぜ。」

「んで、グリフィン君と、ジンジャー君だよね?」
「!   知っているのですか!?」
「まあ、調べりゃ分かる。 そっちが彼女募集中、「おさわりの翼猫」のグリフィン、こっちが青汁フェチ、「国境なき看護猫」のジンジャー。」
「か、彼女募集中って。というかおさわりって酷くないか!?」
「フェチ!? フェチではないですよ!あと国境じゃなくて縄張り!」
「そうなの?そう聞いたけど。」
どこから聞いたんだ。
グリフィンの「おさわり」の部分はあながち間違ってないと言おうとしたが、ジンジャーは流石に自重した。

「そんな事よりMr、まずお前が名乗るべきじゃないのか?」
「おっと、そうだったね。
私は吉祥。漆黒の黒猫といったら私の事だ。
...ああごめん、ここで自分の名前を間違えた方がよかったかな。」
「...。」
グリフィンもジンジャーも、何か言ってやる気も失せてしまう。
最悪の出会いから、身勝手に話を進められて、なんて言えばいいのだろうか。
しかし、彼は自分達を知っているようだが、グリフィンもジンジャーも、吉祥なんて猫を知らなかった。
「あれだろ?ここでいろいろ活躍したんだって?スター族の子を口説いたり、青汁の定期販売を始めたり」
訂正しよう。 彼もよくわかっていないようだ。

「...そんなことより、私達にどんな用事があるんです?」
「ジョークには突っ込んでくれよなー。」
吉祥はどこからか、薄い板のようなものを取り出した。
「私も割と最近調べ始めたんだけどさ、

君達、エクシードなんだってね?」

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Re: 猫達は躍る 満月の下で

投稿 by 吉祥 on Sun May 21, 2017 8:05 pm

「「な、何故それを!?」」
グリフィンとジンジャーは同時に叫んだ。
彼らが、自らエクシードである事を話した事はそうそう無い。
「そんな大きい声出さなくったって聞いてるよ。 言ったじゃない、調べればわかるって。」
「分かるって、どこまで分かってるんですか!?」
「ん? どこまでって、どこまでもだよ。 私が知らない事なんて無いさ。」
「不気味なヤローだ...。 んでMr、なんでも知ってるお前さんが、俺たちに何をして欲しいんだ?」
「ああ、僕は今ちょうど、エクシードについて調べててね。君達の話を聞きたかったんだよ。」
「...知らない事なんて無いのに聞くの?」
「ああ、知らない事なんて無いから聞くのさ。」
こうして話している間にも、黒猫は忙しなく薄い板をいじっていた。
後に聞くと、これは『スマートフォン』というらしく、重要な情報交換装置だそうだ。 ひどくお金がかかるらしい。 主に『ソシャゲ』とやらに。
「ちょっと、何を言ってるのか分からねぇが、いいぜ、どんなトークをすればいいんだ? 手早く済ませてくれよな。」
正直な所、過去の話なんて可愛いレディか、子猫ちゃんくらいにしか話したくはない。
ジンジャーだって、無意味に過去を掘り返されるのは嫌なはずだ。
スマホ片手に座っていた吉祥が立ち上がり、グリフィンとジンジャーに背を向けた。
「うん、聞かせておくれよ。 」
その刹那、グリフィンとジンジャーは、避けた!
黒猫が2匹に背を向けて、言葉を発した次の瞬間に、明確な殺意を感じ取った!
2匹の間に、爪が掠める!
目でギリギリ見えるか見えないかの速度だった。
「君達エクシードが、この世に存在する理由についてさ。」
グリフィンとジンジャーは振り返った。
しかし背後には誰もおらず、視線を戻せば、さっきと同じように、背を向けた吉祥がいるだけだった。

「...。」
「知っているかい。君たちがこの森に来る前、僕もここに来ていたんだよ。 まあこの森も、僕の縄張りの一つみたいなものになっててね、君達が来ていたのを知っていた。 それで調べさせてもらった。 するとどうだい? 容姿だけじゃなく、中身もまるでただの猫らしくないじゃないか。」
吉祥は2匹の方を振り返った。
その目は、明らかに殺意に染まっていた

「エクシードだかエクシーズだか知らないが、何やら過去にトラブルもあって、だいぶ危険な存在じゃないか。 もし、また暴走したら、どうするつもりだった? 修行もせずに、制御できた気になってるんじゃないかい?」
「そんな事は!」
「ないと言い切れない。 君たちは修行が足りないんだ。 旅と修行は違うんだよ。」
「だが修行なんて!」
「修行なんて聞いたことないって? まあ翼猫や角猫ってだけでイレギュラーなのに、さらにエクシードなんていう超イレギュラーに、師匠も師範も存在しないんだけどさ。」
吉祥は淡々と話す。こちらの反論も、聞き遂げられることなく遮られる。
「でも、なぜ襲ってくるのです!?」
ジンジャーはもう既に臨戦態勢だ。拳法の構えをしている。
「君達は、特異なんだ。いままでそういうヤバい奴は、人間社会はともかく、猫の社会に悪影響を及ぼす。 君らの存在は、既に不和を引き起こしている。」
「チッ... なんだか知らねぇが、お前は俺たちを殺すつもりか?」
「いーや、殺しはしない。 ただ、普通の猫として生を改めてもらうか、それこそ人間も入れない山奥に引き篭もって貰うか、かな。」
「そんなの!納得できません!」
「納得できない、ねぇ? それじゃ分かりやすく、決闘といくかい? その方が面倒くさい説明に納得してもらう必要は無いだろう?」
「あぁ... ようは俺達が勝てば、お前は大人しく引き下がってくれるわけだな?」
「ああ、約束しよう。ついでに可愛い子の紹介と高級青汁のプレゼント付きだ。」
「...お前の紹介するレディなんて、さぞかし性格がひねくれてそうだな 俺は遠慮す
「高級青汁10ダース、いや20ダース。これで勝負ですね!」
「おい。」
お前青汁好きなのは知ってたけど、そこまでか!?
俺達の未来と青汁を対等に賭けるほどか!?
「よろしい。じゃあルールを決めようか。」
そう言って微笑む彼の瞳からは、いつの間にか殺意はまるごと消えていた。

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Re: 猫達は躍る 満月の下で

投稿 by 吉祥 on Mon May 22, 2017 10:05 pm

「私は、くだらないゲームの3本先取りで勝敗を決するのもそれはそれで好きなんだけど、ここはやっぱり戦って決めた方がいいよね?」
「OK そうしてくれ。」
「うむ、僕1匹と君達2匹、同時に掛かってきて。お互いに、相手を戦闘不能にすることで試合終了ってことで、宜しいかな?」
「... ちょっと作戦会議をします。」
「どうぞどうぞ。」

ジンジャーはグリフィンを尻尾で呼び寄せた。
「彼、相当腕に自信があるみたいだね。 僕達がエクシードだと分かった上で2対1を申し込んでくるなんて。」
「ああ、それにさっきの一撃、素早すぎる上に威力もヤバいだろうな。 それをどういった理屈か、その場から動かずに背中を向けたまま放ってきた。 只者じゃないな。」
「真剣勝負は降りておく...?」
「No problem! 真剣勝負を降りる必要は無い!」
「君ならそう言うと思ったよ。ただ、やっぱり彼は未知数だし、僕らに有利な条件を加えてもらった方が良さそうだね。」
「そうだな。そうしよう。」

「なにか作戦は決まったかい ?」
「まあね、 ところでずいぶん余裕があるんだね?」
「僕が負けることなんて、そうそう無いからね。」
「じゃあ、もうちょっとハンデをくれてもいいんじゃない?」
「ハンデ? 既に2対1なのに? まあでも、元々使うつもりはなかったけど、『私の体力を回復する術』類の術は、全て禁止 ってことで。」
「まだいけるだろ?」
「まだ? まだだぁ? よかろう。手ぬぐいを使うのも縛ってやろう。これで充分だろ。」
「てぬぐい? とやらがあると、Mrは何が出来るようになるんだ? 」
「どんなものにも一瞬で変身したり、曲に合わせて踊ったりできるぞ。」
「そりゃ使わないでもらっていいかな。」
「分かった。 そうしよう。それじゃあ早速、5分後に戦闘開始だ。準備があるなら済ませておけよ。」





5分間で、再び作戦会議を行う。
「なんか、さっきまで話が通じない相手とばっかり戦ってましたから、こうしてじっくり戦闘内容を決めてから戦うのってあんまりないよね。」
「ああ。 確かにな。
ところであいつの尻尾を見たか? 違和感があるぜ。」
「言われてみれば、確かに。」
「何か隠してるかもしれないな。」
「刃物とか仕込んであるかも。」
「そいつは先日倒しただろ。
ともかく、奴が俺達を舐めてるのは分かった。 旅を続ける為にはあいつを懲らしめなきゃならねぇわけか。」
「戦闘不能にすればいいんですもんね。なら僕も全力で戦います。」
グリフィンとジンジャーは、拳を打ちつけあった。

「ところで試合開始前の青汁は
「いらん。」

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Re: 猫達は躍る 満月の下で

投稿 by 吉祥 on Tue May 23, 2017 6:26 pm

間もなく“試合”が始まる。
夕日が沈みきるまであと僅か。
場所は4本木近くの平野。 曰く、ここはどの部族の縄張りでもないらしい。


「あんまり堅苦しいのは苦手なんだ。 気軽に本気でかかってきてよ。」
「もう既にyouの言ってる事が訳分からねぇぜ。」
「僕達だって、鍛えてるんですからね。 早めに戦闘不能になって下さい!」
ジンジャーは構えた。
グリフィンは前足をひと舐めしてから
「「さあて、往
「んじゃよろしく。
...あれ? なんか言おうとしてた?」
決め台詞を完全に遮られた。

「これだからジャパニーズキャットは嫌いなんだ。 どいつもこいつもこっちの話を遮ってきやがる。」
実際さっきもそうだったし。

ふと、グリフィンの視界の片隅で、夕日が沈みきったのが見えた。
夕暮れの赤が消え去った。
振り向けば、真ん丸の月が光を強めた。
今夜は満月だった。
「夜だ。我々、化け物の時間だ。」
「…」
ジンジャーが顔をしかめたのがわかった。
「悪いが、俺もジンジャーも、化け物呼ばわりは御免だ。」
「いや、悪いが言わせてもらおう。

君たちは僕と同じ、『化け物』だよ。」
黒猫は笑った。

それは嘲笑うものではなく、
まるで、“やっと仲間を見つけた”と言いたげな、優しい笑顔だった。

まるで俺達が化物で良かったと言わんばかりのそんな笑顔だ!

「あの野郎…」
「落ち着けグリフィン! 乗せられちゃだめだ」
「…けっ」

「せいぜい僕を、退屈させないでおくれ。」
日が沈んだとは思えないほど、辺りは月光で明るく照らされている。
吉祥は、空を指差した。

パーン

彼の指先から、乾いた音が響いた。
試合開始の合図だ。

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Re: 猫達は躍る 満月の下で

投稿 by 吉祥 on Tue May 23, 2017 6:27 pm

「妖力マシマシの幻術、打ち破ってみせろ!」
吉祥は構えた。
すると彼の背後からもう一匹黒猫が飛び出してきた。そいつは真っ直ぐにグリフィンに跳んでくる。

グリフィンはひらりとかわすが、背後には既に何もいない。
「幻か?」
ジンジャーの方にも別の黒猫が飛びつく。それを受け止めると確かな重みがジンジャーにのしかかった。 黒猫の分身がジンジャーに蹴りを入れようとするのを前足で防ぎ、そのまま黒猫を吉祥に投げ返す。
吉祥に届く前に黒猫は煙になって消えた。
「いや!実体がある!分身を殴っても本体にダメージが行かないかもしれない!」
「お、いい推理だね。こいつらは僕の思い通りに動くが、全員独立しているわけさ。」
吉祥の両脇に、彼と同じ姿の黒猫が二匹現れる。
「初っ端から気色悪ぃな。」
「同感です…。」
「ひどいなー こんなに可愛い黒猫なのに。」
吉祥は片方の分身の頬を舐めた。分身はそれでも表情一つ変えないでこちらを見ている。
「ま、いつだって本気出していいからね。」
分身が同時に動き出し、グリフィンとジンジャーに襲いかかった。

2匹ともひらりとそれをかわす。
「だったら本体を狙うまでだ!」
グリフィンは羽ばたき、吉祥との間合いを詰める
しかし既に、分身の黒猫が目の前に立っている。
「厄介ですね…」
ジンジャーは立て続けに3体、黒猫の分身を殴り飛ばした。吹き飛んだ黒猫はすぐに煙に巻かれ、また目の前に現れる。
「なら、これならどうだ!」
グリフィンはドリルキックを放つ!
分身を二体貫き、吉祥へと一直線に飛んでゆく。
しかし吉祥はあっさりとかわす。
「間合いさえ近ければ分身も出せまい!」
グリフィンは着地してすぐさま、黒猫との間合いを詰めようとする。
「うーん 確かにその通りだなぁ」
吉祥はバックステップで距離を取る。
途中分身に何度か邪魔されても、速度を上げて吉祥を追い込んだ
「でやぁ!!」
しかしその蹴りも吉祥は難なくかわしてみせた。
しかし。
「まかせて!」
グリフィンの前足が吉祥の回避した先で、黒猫の後頭部を捉え、そのまま地面ごと叩きつけた!

「ふん。舐めてた割には大したことねぇな。」
「僕らのコンビネーションを前にしたら…」
しかし、ジンジャーの拳の先には、ただの地面と煙があるだけだった。
「なっ!?こいつも幻影か!」
「そうだねー。司令塔みたいな働きしてるのが本体とは限らないねー。」
退屈そうな声が聞こえてきた。
「まぁまぁ、それで君たちはまたひとつ賢くなった。せいぜい戦いの中で成長してくれたまえ。」
腹立つ言葉の方を向けば、後ろ足で立つ黒猫が5匹並んでるのが見えた。
既に、どれが本物なのか、どれが喋っていたのか判別することができない。
いや、そもそもあの五体が全て幻影の可能性もある。

「ま、本体がこの森から出て呑気にゲームしてるとかって事はないから、そこは安心しておくれ。」
5匹の黒猫の真ん中がそう言った。

「おちょくられてる気分だぜ…」
「うん… 今のところ勝ち目が見えない…」
ジンジャーが珍しく弱気だった。
しかしグリフィンも同じ気持ちだった。
「勝ち目?そりゃあね。僕は君たちを戦闘不能にするまで手抜きはしないからね。」
黒猫のどれかが答えた。

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Re: 猫達は躍る 満月の下で

投稿 by 吉祥 on Thu May 25, 2017 10:16 pm

グリフィンは飛びついてくる黒猫を打ち払っている。
ジンジャーは分身を殴りながら、思考を巡らせていた。あの黒猫達に、若干の違和感があった。

グリフィンが黒猫の分身に間合いを詰めていた時、ジンジャーに分身は襲ってこなかった。
それに、分身と言う割にはそれぞれの動き方がまちまちなのだ。大体が一直線にこちらに跳んでくるが、稀にちょこまかと動く奴がいて、微妙に動きの遅い奴もいる。
吉祥は、「こいつらは独立している」と言っていたが、それはあくまで分身の体力のことだろう。本体が彼らを操っていると考えられる。
そして「司令塔らしい動きをしてる奴が本物とは限らない」という発言。
まるで「司令塔らしい動きをしてない本物を探してみろ」と言わんばかりの発言だ。

つまり。

ジンジャーは分身をいなしながら、相棒の様子を凝視した。
「グリフィン!!今殴ったやつ!そいつが本物だ!」
「なんだと!?」
グリフィンはその黒猫めがけて駆け出した。 グリフィンに殴られた黒猫は、姿を消すことなくそのまま逃げ始める。グリフィンがそれを追う。ジンジャーはその後を追う。
先程と同じようにジンジャーに対しては黒猫は飛びついてこない。
グリフィンに黒猫が集中しており、グリフィンが振り払った黒猫が、ジンジャーの横を転がり、消える。

ジンジャーは跳んだ。
できるだけ、グリフィンの真横に着地するように見えるように。
しかし、近くの木を蹴り、真っ直ぐ折り返した。
そして、『何も見えない』地面に、爪を立てて着地した。

「いってえ!!」

そこには黒猫がいた。
すぐさま追撃をしようとしたが、吉祥が逃げるのが先だった。

「うわー なんで見えてんの!」
吉祥は、体についた砂を払い落としている。
グリフィンは、追っていた黒猫と、纏わりついていた黒猫が同時に消えたので、ジンジャーの元へ戻ってきた。
「ジンジャー、なんで本体が分かったんだ?」
「あれだけの分身を1匹で操りながら、グリフィンの全力移動を追いかけていたんですから、飛びつく動きとかが鈍くなるだろうなって、思ったんです。鈍かったやつをめがけて着地しただけです。」
「わぁ。まったくの図星だ。分身に対して『あれが本物だ!』って叫んだのもブラフってことだね …ジンジャー、意外とやるようだね!見直したぞ。」
決闘中とは思えないくらい吉祥は喋る。
「戦闘中に成長しろって言ったけどこんなに早く幻術を看破するなんて思ってなかったよ。才能があるかもね。大体グリフィンは…  おっと。」
吉祥が後ろに飛ぶと、そこにグリフィンの蹴りが通り過ぎる。
「べらべらと喋りやがって、戦闘中じゃなかったのか?」
「ひどいなぁ 休憩も大事だよ?」
「…戦いっていうなら、もっと真面目に戦え!」
「真面目にねぇ 僕にとってそれは無理かな。いや、僕は真面目なんだけどまわりがいつもそう言うんだよね。真面目に真面目にって。」
吉祥は挑発するように地面に寝転んだ。
「長生きすりゃわかるよ。」
グリフィンは再びキックを狙うが、既に吉祥はそこにはいない。

「さて、次の術は次回から お楽しみにー」
黒猫が、あなたの目の前で、あなたに向かって手を振っている。

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Re: 猫達は躍る 満月の下で

投稿 by 吉祥 on Sun May 28, 2017 11:41 pm

「そういえば君たちって、技名って自分で考えてるの?」
「は?いや特には…」
「僕もねー 基本的に技にはほとんど名前はないんだけど、たまに昔つけた名前がそのまま残ってるのがあってさー」
「…」
「例えば最初の術は、【黒色月下幻影術 ‐半月‐】っていう名前がついててだね、このかっこいいのが一周回って恥ずかしくなった後、なんやかんやでちょっとかっこよく感じることに気がついて、そのまま使ってるんだよね」
「…」
「あ、もしかして読めない? 普通にくろいろげっかげんえいじゅつ はんげつ  って読んでくれればいいからね。」
「…」
ここでジンジャー、こっそりグリフィンにあるものを差し出す。
「これが日本語読みだからまだマシな方で、これに、【ノワールムーンファンタジア】なんてルビつけてみろよ。これじゃあ流石に痛々しくって唱えるどころじゃないさ。」
グリフィンは、突然羽を広げ、低空飛行で吉祥に突撃した!
「ふっ!その間合いじゃあ拳半分届かなっ…」
ザシュッ!
「いってぇ!!」
グリフィンの手には、“暗器”が握られていた。
「お前今まで武器なんか持ったことなかったじゃーん!」
吉祥の腕に僅かながら傷ができていた。
回復の術は禁止になっているので、この僅かな傷も有利に繋がるはずだ。
吉祥は傷口を舐めている。
「あぁ、たしかにこれは使いづらい。サンキュージンジャー。」
グリフィンはジンジャーに暗器を返す。
「これ暗器じゃなくて、コロネパン作るときのコロネ型。」
「「えぇ…」」
どおりで使いにくいわけだ。


(あれ?冗談だったのに誰からもツッコミが来ない…)
ジンジャーは首を傾げた。

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Re: 猫達は躍る 満月の下で

投稿 by 吉祥 on Wed May 31, 2017 10:20 pm

「さーて、次の術だ!打ち破ってみせろ!」
今度は、吉祥の横に1匹だけ黒猫が現れた。
「コンビネーションは、」
「君たちだけの特権じゃないんだぜ。」
黒猫らがそれぞれ喋った。
そして、2匹とも真っ直ぐジンジャーに向かっていった。
正面からの攻撃に備えて両前足を構える。
吉祥はそれを待っていたかのように、2匹とも背後に回り込み、無防備な後頭部に蹴りを入れ、ジンジャーを前に蹴り飛ばした。
「ぐぅ!?」
「ジンジャー!」
黒猫2匹は次はグリフィンの方を向いた。
黒猫は片割れの腕を掴み、グリフィンに向かって投げ飛ばす!
投げ飛ばされた黒猫はグリフィンに飛び掛かる!
グリフィンはそれを撃ち落とそうと蹴りをかまえた
しかし、そいつよりも先に、片割れを“投げた方”が一瞬で間合いを詰め、グリフィンの腹に拳をめり込ませていた。
怯んだところに、上空からの黒猫の一撃。
「がはっ…」
ふらつきながらも、黒猫に拳を当てようとするも、2匹は既に距離を取っていた。
「なんだよー まだ始まったばっかりなんだけど。」
「まるで僕が弱いものいじめしてるみたいじゃないか。」
二匹がそれぞれ文句を垂れる。
ジンジャーとグリフィンは起き上がり、頭を振った。
黒猫が再びグリフィンに飛びつこうとする。
グリフィンは飛翔して回避。そのままジンジャーの横に着地した。
「冗談抜きであいつは強いな…!」
「ええ… 何か作戦があれば…」
黒猫はグリフィンとジンジャーにそれぞれ飛びかかる!
回り込まれることを警戒したジンジャーに、今度は真っ直ぐ殴りかかる。
速攻を警戒したグリフィンには回り込んで足払いを掛ける。
今や黒猫の攻撃に完全に翻弄されていた。
「作戦?考える時間をやろうか?」
「そうだね、3秒くらいでどう?」
吉祥と分身はニヤニヤと笑っている。

そしてぴったり3秒後、黒猫2匹はグリフィンとジンジャーに飛び掛かる。
ジンジャーは、いつでも振り向けるように再び防御の構え。
グリフィンは咄嗟に、ジンジャーと背中合わせに立った。
「グリフィン!?」
「一度言ってみたかったセリフが今言えるとはな。 ジンジャー、『背中は任せたぜ!』」
「! そうか! 了解!」
グリフィンとジンジャーは後ろ足で立ち、互いに背中を合わせた。
黒猫とその分身は、それを見て一旦距離をおいた。
「はっはー。そんな構え、それこそアニメか漫画ぐらいでしかやらないもんだと思ってた。これじゃあ死角をつけないじゃないか。」
「でもまあ、守りの状態だねぇ。どれ、打ち崩してやろう!」
吉祥らは二手に別れ、まず1匹が正面のジンジャーに飛びつく。
ジンジャーはそれの拳を受け止め、弾き飛ばした。
しかしその隙を狙い、2匹目がジンジャーに向かう!
そこでグリフィンが素早くジンジャーの前に回り込み、構えた!
それを見越していた吉祥は、再び回り込み、背後にいるジンジャーを狙い…
「待ってましたよ…!」
ジンジャーは既にカウンターの用意を済ませていた。
ズン!
ジンジャーの拳に確かな感触。
黒猫が吹き飛ばされるのが見えた。
その黒猫は空中で体制を立て直し、しっかりと着地した。
1匹目が不意打ちを狙って飛びつくも、警戒していたグリフィンのカウンターを受け、同じように吹き飛ばされた。

「わぉすごい。術も何も使わずにこれに対応してきたのは君たちが初めてだよ。」
「うんうん。初めてだよ。」

「第一段階はね。」
「第二段階ならどうかな?」
「…!」
「まだあるってのか…!」
グリフィンとジンジャーは背中合わせで再び構える。

黒猫の1匹が大きく息を吸い込んだ。
そいつから危機を感じ、グリフィンは上空へ飛び上がり、ジンジャーはそれに掴まった。

「火遁!」
吉祥の声が響く。
次の瞬間、足元が火の海と化した!
黒猫の口から火炎が吹き出している。
「反則だろあんなの!」
「攻撃する術は一切の制約を設けませんでしたので。」
火を吹いてない方の黒猫が答える。
グリフィンは、ジンジャーと共に飛翔している。ここにいるだけでも熱気が感じられる。

「けふっ。」
黒猫が火を吹くのをやめると、火の海が嘘のように消えた。
あれだけの熱気を放ちながら、一切の草木に火をつけなかったのだ。
「それも幻ですか…?」
「いや?ご覧の通り魚が美味しそうに焼けたところ。」
「うむ。おいしい。」
「あっ俺の分は!!」
黒猫が揉めてるのを見て、上空の2匹は小声で話す。
「あいつは本当に、エクシード化しないと戦えなさそうだな。」
「…できれば使いたくなかったんですけど…。」
「このままエクシード化せずに俺たちがやられちまったらそれでおしまいなんだぜ?」
「分かってますけど… 戦闘不能にするだけでいいんですよね… それのためにエクシードの力を使うのは…」
「…そうだな その通りだ。 だが、これ以上危なくなったら使うぞ。」
黒猫らはまだ揉めていた。
「グリフィン。聞いてくれ。君は今明らかにあの黒猫の挑発に乗っているよ。」
「何?そんなはずは…」
「深呼吸して。君のいつもの表情はどうしたんだい?言葉だってさっきから刺々しいよ。彼にペースを掴まれちゃいけない。今のあれだって君への挑発のはずだ。」
グリフィンは、ジンジャーに言われてようやく自覚した。吉祥はグリフィンをひたすら挑発し続けていたのだ。
グリフィンは深呼吸をした。

「ありがとなジンジャー。俺としたことが情けねぇぜ。」
そこには、いつもの表情のグリフィンがいた。
「僕らの未来のために、吉祥さんを懲らしめましょう!」

「…君たち本当に勘がいいなぁ もうちょっと乗せたかったのに。」
黒猫は二匹同時に喋った。
「せっかくだから言っておくか。…君のような勘のいいガキは嫌いだよ。」
「はぁ?」

「ま、挑発が解けたところで、僕の術をなんとかできるのかな?」

吉祥は、手を空に掲げた。

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Re: 猫達は躍る 満月の下で

投稿 by 吉祥 on Sun Jun 04, 2017 9:51 am

「雷帝。」
グリフィン、すぐさま急降下し、落雷をかわした。雷は轟音を響かせて近くの木に落ちたが、木が燃えたりすることはなかった。
地面が近くなったところでジンジャーが着地。走って黒猫らと距離を詰める。
1匹が息を吸い込んだのが見えた。
「グリフィン!」
グリフィンの滑空キックが、火を吐こうとしてる黒猫の背後を捉えた!
しかし黒猫は飛んで避けた。
いや、相方の黒猫が上空に放り投げたのだ!
「火遁!」
グリフィンの頭上から炎の吐息が襲いかかる!
「どりゃああああ!」
しかしグリフィンは、屈する事なく自ら炎に突撃した!
火を吹く黒猫に、ドロップキックが炸裂!確かな感触が伝わってきた。
「あっつ!」
それに少し遅れて火の熱さが体中を走り抜けた。
「げほっげほっ 生き物なら火くらい恐れてくれよー」
ドロップキックを喰らっても平然と着地し、黒猫はまた喋り出した。
「第三段階してもいいけど、なんだかあまり有効じゃなさそうだなぁ。」
黒猫がグリフィンの背後に目をやってるのに気付き、グリフィンがそちらを振り向くと、ジンジャーが既に黒猫を組み伏せていた。しかしどちらの黒猫が分身なのかはわからない。
「どうだ?ジンジャー。そっちのサンダーキャットが本体だと思うか?それともこっちのファイヤーキャットが本体か?」
「…どっちも束縛できたら良かったんですが。」
ジンジャーに取り押さえられた黒猫は、ニヤリと笑ってこう言った。
「…くっ!殺せ!」
「黙ってろ。」
お前は女騎士か何かか。


「ま、そっちがその気なら、こっちにだって考えがあるからね。」
グリフィンの喉元に尖ったものが突きつけられた。
「2匹とも動くんじゃない。そちらの『私の分身』に手出しするなら、こちらもそれなりの事をせざるを得ない。」
「グリフィン!!」
全く気配に気が付かなかったが、吉祥はグリフィンの喉元に黒い傘を突きつけていた。
「ほー?分身なのに手出しされたら困るのか?」
「そうだ。あれは私の分身だ。だが今まで見た通り、特別な分身だ。ほとんど私と同じように動く。おかげで、『私と近づかないと、術を解除』できないんだ。分身を壊される前に保護したいだけさ。」
「交渉ってことか?てめえの望みはなんだ?」
「僕の分身の解放。この状況の仕切り直し。」
「…。」
グリフィンは考える。
今ジンジャーが取り押さえている、雷を落とした方の黒猫が偽物なら、本体がここまで必死に交渉をするだろうか。
いま本体が取り押さえられているから、それを解放しようと必死に交渉しているようにも見える。
だが、この黒猫が、この奇天烈な術を使いまくる黒猫が、取り押さえられたくらいでこんな手段に出るだろうか?
本体が取り押さえられているからこそ、交渉を持ち出したのか?

黒猫の発言はハッタリか、本当か。
グリフィンは1つの結論を出した。

「ジンジャー、そいつを離せ。」
「! 大丈夫なの!?」
「ああ、ここは乗るべきだ。それよりもこいつの突きつけてる傘がヤバい。おそらく簡単に喉元を貫かれる。」
「…わかった。」
ジンジャーは黒猫を解放した。
解放された黒猫はすぐに駆け出した。

「はは、素直に乗ってくるとは思ってなかったよ。 まさか本体を離してくれるなんて。」
グリフィンの目の前の黒猫は傘を降ろした。
そして傘を振りかぶり…
「そうだな。分身なんか束縛しても、何の意味ないからな。」
グリフィンは、振るわれた傘を両手で受け止める。衝撃波が辺りに轟いた。
「あれ?バレてた?」
「ハッ!今ので確信したぜ。実際どっちが本物かなんて全く分かんなかったぜ。」
「…あーあ。やっちゃった。君もやるようになったねぇ。」
吉祥とグリフィンはお互いに傘を掴んだまま向き合っている。
「で?オレが本体を取り押さえてると思いこんでたらどうするつもりだったんだ?」
「それも君への挑発行為さ。なんだかあっさり僕の術を破られたようで、納得行かなくてね。」
「全くお前は性格が悪いな。」
グリフィンは傘ごと吉祥を引き寄せた
しかし吉祥はそれに合わせて手を離す。
「そりゃどうも。」
グリフィンは急に傘を離されて体制を崩した

フリをした。

「でりゃああ!!」
すぐに翼を使って無理やり体制を整え、そのまま吉祥に飛びついた!
傘の持ち手を黒猫の喉元を目掛けてスイングする!
「うぐっ…」
黒猫の首元に傘の持ち手が引っ掛かり、その勢いに任せて傘ごとジンジャーの方に放り投げた!
「ジンジャー!!」
「任せて!」
ジンジャーが跳躍した。
放物線を描いて飛んでくる黒猫の、ちょうど首元に手刀を入れ、叩き落とした!


ドサッ!!


黒猫は地面に叩き落された。

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Re: 猫達は躍る 満月の下で

投稿 by 吉祥 on Fri Jun 09, 2017 10:14 pm

吉祥は白目を剥いて気絶している。

「…やりましたね。」
「ああ。 こいつはどう見ても近接が得意なタイプじゃねえしな。」
「どうしますか?とりあえず縛っておきますか。」
「そうだな。目を覚ましたときに負けを認めさせなきゃならねぇからな。 強いて言うなら火を吹けないように口も縛っておかな


刹那。


グリフィンの首元に

黒い傘の柄が引っ掛かけられる!


急激に首が締まったグリフィンは、声を出すことすらままならず、自分が黒猫にしたのと同じように吹き飛ばされる。

ジンジャーは彼の名を叫ぼうとしたが、自分の背後に気配を感じた!

しかし、素早すぎた。
後頭部を傘で強打され、気絶しそうになる。

そこに容赦なく、腹に回し蹴りが命中した!
「ぐゔっ!?」


よろめきながら、ジンジャーは距離を取った。

そこには、吉祥の分身が立っていた。

「馬鹿な!本体は気絶しているはずだろ!」
グリフィンはしゃがれた声で叫んだ。
グリフィンは、彼の言葉を思い出した。

『こいつらは僕の思い通りに動くが、全員独立しているわけさ。』

そうだ。分身の体力がどうのこうのではない。吉祥にとって分身とは、『自分を模した別個体』なのだ。
指示には従うが、指示がなくても自らの意思で動く個体達だったのだ!


その分身の黒猫は、足元に倒れる本体に、思いっきり蹴りを入れ、どこからか取り出した水をぶっかけた。

「…! げほっげほっ…」

せっかく追い詰めた本体を、分身に解放されてしまった。
ジンジャーとグリフィンは、あの時分身を解放したことを後悔した。

「…いやはや、どうやら油断していたようだ。普段の君なら、やられたフリからの不意打ちなんて絶対にしないだろう?」
黒猫は、敗北しかけたはずだが、相変わらずよく喋る。
吉祥は頭を振って意識をはっきりとさせ、ついでに体を震わせて水を落とした。
「まあ一本取られたってことで、この術は終わりにしよう。」
吉祥を起こした方の黒猫が煙になって消えた。

「君たちは、自分を誇りに思うがいい。君たちは僕と対等に戦っているんだ。しかもまだエクシードの力を秘めてるっていうね。使わないのかい?」
「…こんなくだらねぇ事には使わねぇ。」

「…は?今なんて?」
吉祥は毛並みを整えていたが、毛を舐めるのをやめてグリフィンをまじまじと見た。
「言った通りの意味だ。お前なんかとケンカするために、エクシードの力を使ったりはしねぇ。」
「…。 それ、本気で言っているのか。まさかとは思うけど。」
「…ああ。そうだ。俺はとっととお前を戦闘不能にして、旅を続けるぜ。」
「…」

吉祥は、何やら考え込むような仕草をしている。



「今すぐエクシード化しろ。今すぐだ。」
吉祥の声のトーンが下がった。
「だからお前なんかに…」
「グリフィン!!」

ジンジャーの叫び声が響いた。

しかし、実際には彼の言葉が発せられるまでに、吉祥の爪は既にグリフィンの喉元に突き立てられていた。

「…!?」
明確な殺気。先程までのどこかゆるやかな戦いはどこへやら。今、少しでも余計な動きをすれば、間違いなく殺される。
「今すぐだ。お前の先程の言葉、訂正させてやる。お前たち二匹のエクシードの力を合わせても、俺に敵わねぇことを見せてやる。


遊びは終わりだ。」

爪を突き立てられて動けないグリフィンの前に、吉祥は尻尾を見せつけた。

「!?」

その尻尾は、二本あった。

「金華猫か…!?」
「金華猫?俺はそこまで厄介な化物じゃないぜ。お前の母親はヤバかったけどな。」
「知っているのか!?」
「それが聞ける立場か?」
「…。」



グリフィンは、決意を固めた。



「解放。」


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Re: 猫達は躍る 満月の下で

投稿 by 吉祥 on Thu Jul 06, 2017 11:17 pm

辺りが暗くなった。空に暗雲が立ち込める。
グリフィンに雷が落ちると、彼の周りを強烈な衝撃波が走った!
黒いオーラ、筋肉質な体、金色に光る四枚の羽、赤く光る瞳。二足で構えたその姿こそ。

「超越新種 エクシードグリフィン!」

「はいはい、すごいすごい。」
これだけの衝撃波を棒立ちで受けながら、黒猫は平然と目の前に立っていた。
黒猫の黄色い瞳は、真っ直ぐとグリフィンを睨みつけていた。

「これでようやく、遠慮なくぶん殴れる。」
吉祥は、グリフィンの腹に拳をめり込ませた。
グリフィンはその拳の異常な火力に吹き飛ばされた!
明らかにあの小柄な猫から放たれるべきパワーを無視している。
普通の猫ならバラバラに砕け散ってしまうだろう。

空中でバランスを取り、黒猫に向けて
氷の矢を乱射する!
吉祥はただ先程の傘を取り出し、開いただけだった。

「はぁー。」
黒猫はこれみよがしにため息をつく。

そして、少し離れたところにいたジンジャーに、声をかけた。

「ほら、次は君の番だよ。僕だって本気の姿を出したんだから。君も本気を出してもらわないと。」
吉祥は2本の尻尾を振りながら煽るように言った。

「僕は…」

吉祥の居場所に、グリフィンの重力波で強化されたキックが炸裂した!
しかし、吉祥は傘で何事もなく受け止めた。


エクシードの力、それは呪いだ。
決して、望んで手に入れた力ではない。
それでも、その力を、仲間を守るために使うと決めたのだ。

「覚醒。」

角は赤く染まり、体は黒いオーラに包まれる。筋肉質な体、そして輝く金の瞳。
武術の構えとともに2足で立ち上がる。


「超越新種 エクシードジンジャー!」

「不思議な力だねぇほんと。内包されたエネルギーが開放されてるっていうより、突然エネルギーが発生してるのに近いんだよなー。」

変身を終えると、目の前に黒い顔があった。

すぐさま目前の黒猫に重力波を放つが、手応えはない。

「その、若干の重力操作、そこにヒントがありそうな気がするんだよねー。」
今度は背後からの声。
そこにクロスチョップを打ち込もうとするも、やはりそこに黒猫の姿はない。

「また偽物を殴ってイライラする必要はもうないさ。」
ジンジャーと、地上に降り立ったグリフィンの間に立つ黒猫は、やはり余裕の表情を浮かべている。

「今度はもう、当たりすらしないからさ。」

黒猫の姿が煙に包まれて見えなくなった。

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Re: 猫達は躍る 満月の下で

投稿 by DCD on Wed Jul 26, 2017 8:19 pm

お久しぶりです吉祥さん!うちの子たちを使っていただきありがとうございます。

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Re: 猫達は躍る 満月の下で

投稿 by 吉祥 on Thu Oct 12, 2017 11:23 pm

DCD wrote:お久しぶりです吉祥さん!うちの子たちを使っていただきありがとうございます。

完結目指して頑張るます!見守っててくだせえ

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Re: 猫達は躍る 満月の下で

投稿 by 吉祥 on Thu Oct 12, 2017 11:24 pm

「まさか逃げたのか?」
「…どこにいるんです!」
エクシードの力によって身体能力だけでなく様々な能力が強化されてはいるが、吉祥の術を看破することはできない。

そこからどう仕掛けてくるか…

突如音もなく、グリフィンの目の前に黒猫が現れる。
しかも既に腕を振りかぶっている!

避けられないと判断し、両腕に氷を纏い、その拳を受け止めた!
とてつもない衝撃を感じるが、黒猫は再び煙に包まれて消える。
今度はジンジャーの背後に黒猫が現れる。ジンジャーが振り向きざまに回し蹴りをするのを飛び越え、ジンジャーの頭を踏みつけ、再び消えた。
そして再びグリフィンの目の前へ。

異常なのはその速度だ。
ジンジャーが全力で走っても、グリフィンが真っ直ぐ飛翔しても到底追いつけない速度で黒猫は移動している。

「もちろん、尻尾を解放したらこのくらいの速度は出るさ。分身を使ってないことは保証しよう。」
吉祥はグリフィンの拳を片手で受け止めながら言い、そしてそのまま消えた。
グリフィンは拳を振り抜くが、やはりそこには何もいなかった。

「気持ちわりーマジックしか使えねーのかお前は。」
「まあ、そこが持ち味だからね。筋肉モリモリの君らと真っ向の2対1で殴り合いたくないってのもあるけど。」
声は一箇所から聞こえてくる。
そちらに向かって重力波を打ち込むも、もちろん当たらない。
「消える前に尻尾でも掴めたら… うわっ!」
ジンジャーの目の前に突然黒猫の尻尾が振られる。
掴もうとするも、するりと避けた尻尾にそのまま顔面を叩かれる。
「!?」
すごく痛かった。

再び黒猫は消える。

グリフィンは氷を両手に纏い、全方位に集中した。

しかし再び現れたのはジンジャーの背後だ。
吉祥の拳がジンジャーの背中に炸裂する!
ジンジャーの口から血が飛び散る!内臓が潰れるほどの威力を、音も無く背後から放ってくる。

「…なぜ、突然こんなに痛めつけるのかって顔をしてるな?」
ジンジャーの目の前に黒猫が現れた。
「僕ら猫又っていうのはね、相手によって攻撃力に天井を設けなきゃいけないんだよ。君らが下手に手加減しちゃうと僕も手加減しなきゃいけないんだ。」
ジンジャーは、黒猫の拳を両手で受け止めた。それだけでジンジャーの足が悲鳴を上げる。
「そうさ、だから僕は言うんだ。『お互い全力になろうぜ?』ってな。」
黒猫は消える。
「きっと楽しいぞ。俺が保証する。お前たちの全力を、俺に見せてみろ。」

それはまさしく悪魔の囁きだった。
エクシードの力をいつまでも制御できるわけではない。
それこそ、正気のうちに追い詰め、最後のトドメだけ力を開放するくらいでないといけない。というよりも、どれだけ戦いが長引くか予想もつかないのに、迂闊に力を解放するわけにはいかない。
そして何より、吉祥の術に対抗するには、今は力よりも知恵が必要だ。
それもとびっきりの悪知恵だ。

ジンジャーは全方位に意識を集中させる。
しかし吉祥が現れたのはグリフィンの方だった。
氷を纏った両腕で攻撃を受け止めてはいるが、攻撃に転ずることはできていない。黒猫は再び消えた。

「グリフィン!全方位に氷弾は撃てる?」
「やったことはねぇが、なるほど、それなら手っ取り早いな!」
グリフィンは両腕を広げる。それを取り囲むように氷の礫が現れる。
「喰らいやがれ!」
周囲に同時に氷の礫が乱射される。
ジンジャーは木の影に隠れて氷をやり過ごした。

そこから黒猫が取れる行動は…

「グリフィン!上だ!」
「おう!」
周囲の礫が上空を向き、同時に放たれる!

黒猫は…

ジンジャーの目の前に現れた!


「目の前に来ると思ってましたよ。」
ジンジャーは振るわれた吉祥の腕を掴んだ!そのまま素早く関節を抑える。
「わー 捕まっちゃった。」
「そしてそのままっ!」
思い切り、黒猫を背後の木の幹に叩きつける!
木が大きく揺れた。

「やるねぇ? 特に、何かされる前に迷わず叩きつけるっていうのはいい判断だ。」
ジンジャーは吉祥の腕をまだ掴んでいる。吉祥はまるでダメージもないといった表情でジンジャーを見ている。
ジンジャーは再び黒猫を地面に叩きつける。
確かな手応えはあるものの、黒猫は表情を崩さない。

「だがな、腕を離さないっていうのは、いささか欲張りだね。」
今度は吉祥がジンジャーを投げつける!
今度はジンジャーが木の幹に叩きつけられる!
「がはっ…」
その衝撃で木が折れてしまう。
木の倒れる音がした。
「おや、まだ腕を離さない。それはつまり、」
「グリフィン!!」
「もう準備OKだぜ。」
礫を遮る木はもうない。ジンジャーは吉祥の腕を強く掴んでいる。
グリフィンは、遠慮なく礫を発射した!

「この数は片手じゃ受けらんないなぁ。」
吉祥は一瞬で傘を取り出し、開いて礫を受け止めた。
「ど、どこからそんなに素早く…」
「さぁ?私はこいつを信頼してるからね。勝手に手元に来て、勝手に開いてくれるよ。」
吉祥はジンジャーの方を振り向く。
「ま、たまに言う事聞かないけどね。」
黒猫は笑っていた。

グリフィンは礫を放ち続ける。ジンジャーに当てぬよう、吉祥だけを狙い撃ちにする。

黒猫の片腕を掴むジンジャー、礫を放つグリフィン、傘で礫を防ぐ吉祥。場が一時的に膠着する。

最初にしびれを切らしたのはグリフィンだった。
「これならどうだ!」
吉祥の正面からの礫と別に、背後から礫が迫る!
ジンジャーは吉祥の腕を固定し続ける。

「うーん、そりゃ、腕の本数が足りないや。」
吉祥は尻尾を振った。

すると、背後から迫ってきた礫はすべてぴたりと動きを止めた。
空中に静止しているのだ。
あとに続く礫も、時間が止まったかのように動きを止めた。

「えいっ。」
吉祥がジンジャーに掴まれた腕を振ると、ジンジャーは軽々と放り投げられてしまう。
そしてジンジャーの目と鼻の先に、氷の礫が見えた。

「解除。」


ジンジャーの体に鋭い痛みが走り、さらに猛烈な寒気が襲った。

「ジンジャー!!」

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Re: 猫達は躍る 満月の下で

投稿 by 吉祥 on Tue Oct 24, 2017 1:14 am

相棒の声を聞くが、体が動かない。
さむい。
まるで氷の中にいるようだ。


まるで?



唐突に何かが砕ける音がして、体が動くようになった。
「うぅ!!寒い!!」
「すまねぇジンジャー!お前のことを…!」
「…大丈夫。僕も迂闊だった。」

「まぁすごい。エクシードの相棒であっても一撃で氷漬けとは。そんなもん当たりたくないなぁ。」
「てめぇ…」
「おっと。氷漬けにしたのは君だ とかそういう“つまらない事”は言うつもりは無いよ。そうじゃなくて、仲間に当たっても平気なように気遣いするとか、出来なかったのかい?」
「黙れ!」
「アドバイスなんだけどなぁ。」
「うるせぇ!だいたいお前、卑怯すぎるんじゃないのか!?」
「グリフィン!落ち着け!」
グリフィンの腕をジンジャーは掴むが、グリフィンはそれを振り払う。
「吉祥!てめえは俺らのことを、「イレギュラー」だと言ったな!「不和を起こす」って言ったな!」
「ああ、言ったぞ。」
「それって、お前の方こそどうなんだ!お前の方がよっぽど猫離れしてる!お前の方がよっぽど非猫道的なんじゃないのか!?」
「そう見えるか?」
「見えるなんてもんじゃねぇ。お前は何様のつもりで俺たち… いや、ジンジャーをこんな目に遭わせるんだ!」
「…。」
吉祥は黙った。
しかしそれは、“言い負けた”から黙ったのではなく、“考えつかないから黙っている”わけでもないのは、グリフィンにもジンジャーにも明らかだった。
黒猫は、今にもため息をつきそうな、そんな表情だったからだ。
「はぁ。」
ついた。


「聞こうじゃないか。お前はどうやって仲間を守るんだ?」
「そ、そんなの、俺が強くなって、それで
「それで?やられる前にやる か? それが出来りゃ、確かに守れるだろうな。グリフィン。」
黒猫は、まるでやんちゃな子猫に対して、呆れながら言い聞かせるように、穏やかに語りかける。
「力比べだけが力じゃない。振るうだけが力じゃない。その場その場で、相手を黙らせればいいんだ。相手の力を押さえるもよし、相手の弱みを握るもよし、勝利条件が満たせないなら、相手の敗北条件を強引に満たしたっていい。」
黒猫はあぐらをかくように座っている。
「お前のそれは、ただの幼稚な暴力だ。そんなんじゃあこの先、生きていけないぜ?」
「…」
グリフィンは、湧き上がる不快感を抑えながら、黒猫の言葉を反芻した。

今までに俺がやってきた事は?今までに俺が戦ってきた意味は?戦わずして勝つ方法があったとしたら?

戦わずに彼女を、カモミールを護ることが、俺に出来たのだろうか?
あの時、「俺がもっと強ければ」と、思った。

それをあいつは、いとも簡単に…

「グリフィン。しっかりしろ。」
声のする方を向く。
相棒がいた。


「もう、諦めよう。」
「は!?」

ジンジャーの口から、まるで予想していなかった言葉が飛び出した。

「もういいよグリフィン。俺らはあいつに敵わない。俺らはあいつよりも弱い。」
「ちょっ、ちょっとまてジンジャー!」
「束になって襲い掛かっても、連携をとっても、あいつ1匹やっつけることも出来なかった。 だからなんだっていうんだ。それがなんだって言うんだ。」
ジンジャーは俯いて、グリフィンの顔を見ない。
「俺は、誰かが傷つくのは見たくない。これ以上あいつと戦ったら君が持たない。」
「大丈夫だ!俺はまだやれる!こんな傷…!」
「違うんだグリフィン。あいつと戦い続けるだけで、君の心がズタズタになってしまう。」
「心…」

「君が頑張ってきたことは、俺が一番よく知ってる。一緒にいくつも困難を乗り越えたし、一緒にたくさん笑ったり悲しんだりもした。そんな君が、理不尽に、ここまで傷つけられるのは、もう無理だ。」
ジンジャーは、エクシード化を解除した。

「俺らはこれから、吉祥から、この先どうやって生きていけばいいか教えを乞い、その通りに生きよう。その方が、ほかの猫達の為になるんだろう。」
「ジンジャー…」
「もういいんだグリフィン。君だけが何かを守り続ける必要は無いんだ。君が誰かから守ってもらったっていいんだ。」
「…。」
ジンジャーは吉祥に向き直った。

吉祥は、目の前のネズミを取り逃した時のような顔をしていた。
「…本気?」
「僕らはいつでも本気だ。本気で戦って、これ以上持たないと思った。だから降参するんだ。」
「そ、そりゃ、幼稚な暴力とか言ったり、無理なアドバイスとかしたけど、 ほら、こう、そこはジャソプ的な感じで弱点克服したりとか…」
「…」
「も、もしかして怒ってる?こう、ただ言っても伝わらないかなぁって思ってたのも多少あるんだけど、勝負を途中で投げ出すのは… 」
「…。」
「…。」
吉祥は諦めたようにうな垂れた。

「うーん。どうやら僕が思っていたのとは違っていたみたいだ。君達を過大に評価しすぎていたのかもしれない。どんな猫にも目に見えない限界がある。それを無理に超えさせようとしてたのかもしれない。君達が敗北を受け入れると言うなら、いまの猫の社会にあった生き方を僕が教えよう。」

ジンジャーは2足で立ち、吉祥に握手を求めた。

吉祥も歩み寄り、握手に応じ
なかった。

手が触れる直前で手を引っ込め、ジンジャーを凝視している。

「?」
「な、なんだよ、何もしないのかよ。」
「はあ?」
「お約束ってやつじゃないのかよ。諦めたように見せかけてってやつ。」
「…猫の社会ってそんな殺伐としてるものなのかい。」
「いやまあ、いまどきそこまで緊迫してる訳じゃないさ。失敬失敬。」
吉祥は改めてジンジャーとの握手に応じた。

しかし、吉祥の顔はすぐに曇った。

「あなたのアドバイス、しっかりと学ばせてもらいました。」
ジンジャーは吉祥の前足を強く握った。
「勝つことが出来ないなら、【敗北条件を強引に満たしてもいい。】それなら、この肉球に塗った薬草であなたを無理やり回復させれば、あなたはルールを破ったことになる。」
「ちょ、ちょっと!でもお前さっき確かに、諦めるって、お前のその言葉に嘘偽りは無かったぞ!」
「ええ、諦めましたよ。【あなたに純粋に勝利すること】をね!」

吉祥が腕を引っ張るも、ジンジャーは決して離さない。


「あなたの負けです。吉祥!」


その言葉を言い終わる刹那

辺りに鮮血が飛び散った。

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Re: 猫達は躍る 満月の下で

投稿 by 吉祥 on Wed Jan 31, 2018 10:46 pm

ジンジャーが掴んでいた黒猫の腕から、すっと重みが消失した。

血が飛び散り、ジンジャーの顔までも容赦なく汚した。

正面を見れば、荒い息の黒猫が片腕を押さえながら立っていた。

いままで掴んでいたものを見る。

赤い血の滴る、黒い右前足だった。
「うわっ!」
思わず手を離した。
その黒い手は地面に落ち、消えたりすることなくその場で血を垂れ流している。
どう見ても本物だった。

「自分の腕を、自分で切り落としたのか…!?」
「はっ… ははは…!血を流したのなんていつぶりだろう!こんなにも血を流すなんて何年ぶりだろうな!!」
それでも黒猫は、多少震える声で、確かに わらった。
「恐ろしい程によくできた作戦だった。あと少し躊躇したら、俺はどうやっても負けを認めなきゃならなかっただろうな!」
吉祥は、腕をおさえるのをやめた。
数滴滴ったが、もう血は垂れてこなかった。
「悪いな。もう知ってるだろうけど、俺は極度の負けず嫌いなのさ。」
吉祥は笑ったまま話す。
「お前の作戦は完璧だよ。決着まで行かなくても僕の片腕を奪い取ったんだから。回復のできない僕は、その腕を再生させることすら出来ないんだから。」
「グリフィン!!」

ジンジャーは相棒の名前を呼んだ。
グリフィンはエクシード化を解いていない。すぐさま黒猫に向かって氷の礫を飛ばす。

「またそれか!ワンパターンは感心しないぜ!」
「それはどうかな!」
氷の礫を飛ばしたが、そのひとつひとつはより大きく、より研ぎ澄まされている。
吉祥はステップと宙返りを繰り返しながら避ける。

グリフィンは、三つの礫を操り、吉祥の逃げ道を塞ぐように打ち込む。
吉祥はそれを視認すると、術で姿を消し、安全地帯に瞬間移動する。
それを何度か繰り返すが、吉祥が痺れを切らした。

「融けろ!」

今度は口からでなく、手から火炎を放つ。
氷の礫が溶かされ、一面が水蒸気に包まれてしまう。



「覚醒!!」

ジンジャーが再びエクシード化し、霧の中の黒猫の気配を探る。

咄嗟に振り向き、攻撃を受け止める!

「また背後ですか?」
「やっぱり背中が一番狙いやすいかなって。」
「そんなんじゃ、俺に攻撃は届きませんよ!」
「ふーん、なら、せいぜい五感と第六感を鍛えておくことだね。」

黒猫は霧に紛れて姿を消した。

「グリフィン!やつの姿は見える?」
「霧が濃くて見えねえな、まあ霧があってもなくても、見えやしないだろうがな。」



「…いや。分かるぞ…!」

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Re: 猫達は躍る 満月の下で

投稿 by 吉祥 on Sun Feb 04, 2018 9:19 pm

吉祥は霧の中、策を巡らせていた。

徐々に追い込まれてはいるが、負ける筈はない。
どうすれば程よくノックアウトすることが出来るだろうか。
倒すだけなら、奴らの変身を解除させてそこを叩き潰せば終わるだろうが、あくまで戦いは楽しまなくてはならない。
そうして霧の中、姿を消しながら次の一手を考えていた。

どうやらエクシード達は攻めあぐねているようだが。守りを固めているようにも感じられない。
ここはやはり、霧の中から不意打ちを繰り返し、守りに入った所を崩してやろう。

吉祥は2足で立ち上がり、グリフィンの気配の方向へ歩き出した。


不意に、吉祥へとまっすぐ、氷の矢が飛んできた!

「あぶなっ!!」
不意打ちだったが、辛うじて飛び退いて避ける。
その着地地点にも真っ直ぐ矢が放たれる!
霧で視界が阻まれてるどころか、今は術で姿を消しているんだぞ!?当てずっぽうの1発ではなく、迷いのない1発の矢だ。こちらの居場所を見抜いたような射撃。
避けても避けてもその先に矢が放たれ続ける。
(見えているのか!?ありえねぇ! …なるほど、足音と声から居場所を予測したんだな。)
先程不意打ちに対して声を出してしまったことを後悔した。
そこで吉祥は分身を作り出し、自分の前を走らせた。
そして自分はそっと宙に浮かんだ。

(これで分身に向かって矢を撃ち続けるだろ

「そこだ!!!」

宙に浮いた、姿を消した黒猫に向かって、グリフィンのクロスチョップが直撃した!!
黒猫は油断しきっていたため、まともに受け止めることも出来ず、技をもろに食らってしまう。

「がはっ… いってえ…」
先程のグリフィンの飛翔の風圧により、水蒸気は吹き飛ばされ、視界が明るくなった。
グリフィンとジンジャーが、こちらに向けて構えをとっている。

吉祥は自分の姿を再び消し、分身を作り出してジンジャーに向けて飛び掛らせた!
(これで僅かな時間潰しと、布陣が崩れれば御の字!)

「ジンジャー、偽物だ。」

分身は誰にも構ってもらえずに、寂しそうに消滅した。

グリフィンとジンジャーは、ただこちらを見ている。


「…。もしかして。君たち、
いや。グリフィンだね。

ぼくがみえているね?」


「…あぁ。ぼんやりとだけどな。」
「いつからだ?」
「たった今さっきからだ。」
「なぜ見えるんだ?さっきの水蒸気が関わっている訳でもないだろうし。」

そこまで言って、吉祥は理解した。

そうだ。グリフィンには金華猫の血が半分も流れているのだった。
“半分も”だ。クォーターとか、僅かにとか、そんなレベルではない。半分は化け猫なのだ。

そうなると、途端に話が変わってくる。
いまやグリフィンには、自分の術の全てを看破するだけの余地がある。
そんな奴相手に、丁寧にいろんな術を見せてきてしまった。見せびらかしてしまった。
もう同じ術は彼には通じないだろう。

姿を消しても無駄。分身しても無駄。高速で走り抜けても…

「ふっ… ふはははは!!!」
「なんだ!?」
「まさかまさか、本当に戦いの中でここまで成長するなんてな!猫又の同士以外でここまでやるなんて、僕はびっくりしているんだ!」
吉祥は、ひととおり腹を抱えて笑ったあと、深呼吸してから言う。
「だが、僕は負けない。ここで負けたら、僕はなんのために腕を切り落としたんだ。すまないが、勝たせてもらうよ。」
黒猫の足元から、黒い煙が立ち上る。
「この姿を見せるのは、いつぶりだろうな。しかもそれが、陰陽師とか、偉大な猫又相手じゃなくて、こんなにもちっぽけな好敵手相手になんてな!」
風が吹き荒れる。グリフィンとジンジャーも吹き飛ばされないように踏ん張る。
黒い煙はもくもくと大きくなる。
「リミッターを外せ!久々の“じゃれ合い”だ!思う存分暴れ倒せ!!」
2匹は、黒い煙の向こうで、エネルギーが異常なまでに膨れ上がっているのを感じ取っていた。
「いざ!刮目せよ!我こそは吉祥!三毛と鍾狐の血を引く、偉大なる猫又!偉大なる化け猫!偉大なる…」

その時、異変が起こった。

「偉大な…」

煙が薄れ始めた。

そこには、ゆうに10メートルはあろう2足立ちの黒猫がいた。
しかし、その背丈はみるみるうちにしぼんでいく。
まるで空気が抜けていくかのように、みるみるうちに元の大きさへと戻っていく。

「いだいな… な、なな、なにごと!?」
吉祥はパニックに陥っていた。
そりゃ変身するのなんて久々だったけど、別に専用の呪文が必要なわけでも、正式な手順があるわけでもない。
ただ、充分な空間と、充分な霊力があれば…

「霊力…?」
吉祥は、自分の霊力を、自身に問いかけた。
左の手の上に煙が現れ、現在の霊力を可視化させた。



《ノコリ霊力 99/99999999》


「なん…だと…!?」

「やっと、枯れましたか。」
吉祥が視線をあげると、ジンジャーは勝ち誇った表情をしていた。
「最初から分かっていました。あなたにはまるで穴が空いているかのように、霊力を回復させていることが。術を使った“後”に、まるで吸い込むように霊力を取り込んでることが。」
「だ、だからといって、どうやって…!?」
「だから、“治した”んですよ。あなたのその異常な穴を。俺、看護猫ですからね。」
「いつ…?握手の時は違っただろ?」
「ええ。もっともっと前から。」
吉祥の耳が徐々に後ろに倒れていく。
「知らないんですか?暗器っていうのは、毒を塗って使うこともあるんですよ。暗器に…」
「暗器!?この話、暗器なんて出てきた!?」
「出てきましたよ!?」
「まって思い出すから… コロネの型なら出てきたけど…」
「コロネの型じゃなくて暗器ですよ!?」
「コロネの型って言ったじゃん!」
「コロネの型って言ってたじゃねえか!」
「お、俺だって冗談くらい言うことあるんですよ!!」
思っていた以上に自分の冗談を受け入れてもらえていなかったことに、ジンジャーは少し赤面した。
「げふん。元々は傷を塞ぐ薬草を探していた時の失敗作なんですけど、その薬を塗った暗器であなたに傷を付けた。時間は掛かりましたが、目論見通りあなたの霊力の回復を封じることができたわけです。」
「…。」
吉祥は黙り込んだ。
「…さあて、吉祥。ずっと言ってやろうと思っていた事がある。いっぱいある。あれもこれもお前に言ってやりたい。だがモタモタもしてられねぇ。俺はセリフを一つだけ言わせてもらう。」

グリフィンは決めポーズをして、言い放つ。

「お前の言葉、そっくりそのまま返させて貰うぜ!」

「「さあて、往生しな!」」


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Re: 猫達は躍る 満月の下で

投稿 by 吉祥 on Sun Mar 04, 2018 8:25 pm

(こいつ、普通に二言言いやがった。)

しかし、そんなことを言ってる余裕はない。残り霊力が99。ここから勝つには…

霊力が本当に空っぽだったら、猫又なんて少し頑丈なだけのただの猫だ。

だがそれも、『霊力が本当に空っぽだったら』だ。
まだ勝ち目はある。 はず。


しかし、そんな“ほぼ”普通の猫の吉祥に、手を抜くことなく本気でグリフィンとジンジャーが襲い掛かる。

言うまでもない。今まで僕が彼らを煽りすぎたせいだ。奴らはまだ僕が奥の手を残してると思っている。
「ああ、そうだとも。」
ジンジャーの格闘と、グリフィンの氷の礫をバックステップでかわす。
「腕がなくなろうと、霊力が空っぽでも、本当は奥の手が無くっても、僕は絶対に諦めない。 往生なんて、出来ねえな!」


「あいつ正気か?」
「油断しないで下さいね」
「ああ。それを嫌というほどティーチされた所だ。」
「有利なうちに決着を付けましょう。倒せるのは今しかない。」
「ああ、いくぞジンジャー。」
「ええ。」
2匹は拳を打ち付け合った。

「「覚醒!!」」

2匹の姿が、それぞれオーラに包まれる。

さらなるエクシードの力。
2匹が今まで纏っていたオーラは消え、さらに筋肉質な肉体と、輝く瞳がそこにはあった。

「…第二段階って所か?」
「…。」
「へへっ 時間稼ぎの会話にすら乗ってこないのか。釣れないねえ。」

吉祥はそこまで言うと、2匹に背を向けて逃げ出した。

正直、あのエネルギー量はやばい。
しかも、まだ変身を残しているはずだ。
背後からの氷の礫を瞬間移動で避ける。残り霊力89。
高速移動で先回りして止めに来たジンジャーを透明化してすり抜ける。残り霊力79。
吉祥の周囲を、氷の矢が囲い、同時に射抜かれる。身代わりに食らわせて逃げる。残り霊力59。

このままではあと1分も持たない。

奥の手がなければ、禁じ手か。
今更、ルールを破ったって、奴らは気が付かないだろう。
手ぬぐいがあれば、今からでも逆転ができるはず。
それとも残りの霊力で体力を回復して…

吉祥の足元が、氷漬けになった!

「しまっ…
「どりゃあああ!!!」
ジンジャーが真っ先に飛びついた。
乱打。
吉祥の片腕の防御も意に介さず、その上から圧倒的に殴る。殴る。
その間も、グリフィンは氷の礫を構える。もし今捉えたのが本物ではないとしても、すぐに捕らえられる。

「トドメです!!」

ジンジャーが両手を構えると、そこに水のエネルギー弾が生じる。
それを迷うことなく目の前の黒猫に放った!

大地が揺らぐ。
黒猫がボロ切れのように吹き飛ばされる。
グリフィンは未だにそれから照準を外さない。

「まだ生きていますね。」
「マジかよ。」
「でも、流石に戦える状態ではないでしょう。降伏してくれるといいんですが。」
「…。油断するなよ。」


視界が赤い。
身体中の骨が折れてるんじゃないかと感じる。
いたい。痛い。痛い。

ああ、なんでこんなくだらない戦いしちまったんだ。
もし、ここで僕が素直に降伏したら、手ぬぐいを取り出して、目の前で全回復して見せて、びっくりさせてやろう。
そのまま彼らの傷も全部治して、森に穴開けたりしたのも治さないと…
そして、森の猫達に謝りに行って…

あーあ。
そのくらい、僕が素直だったら良かったのになぁ。

吉祥は、立ち上がろうとしてみた。
足の1本を動かすだけで、全身が悲鳴をあげる。

良かった。動くじゃないか。儲けもんだ。

他の足も動かす。
無理して体を起こす。
顔だけじゃなく、色んなところから血が流れ出ていく。
三本の足で立つ。
そのまま二足で立ち上がる。

なんだ、まだいけるじゃんか。



最後の悪足掻きだ。本当の逆転っていうのを、見せてやろう。


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Re: 猫達は躍る 満月の下で

投稿 by 吉祥 on Wed Apr 18, 2018 3:43 pm

黒猫は立ち上がった。
そしてふらつきながらも、2匹の方を見た。

その行為だけで、エクシードの2匹の背中の毛が逆立つ。
「なんだあいつ… 俺らの攻撃が効いてねぇってのか?」
「いや、確実にあいつを殴ったはず… それでも立ち上がるなんて…」
「負けず嫌いも、ここまで来ると怖くなってくるぜ。」
「…。」
ジンジャーは、精神を統一し、黒猫の次の行動を見極める。

吉祥は、残りの霊力の大半を使い、別の空間への通り道を作った。
そこを通り抜ける事すら出来なさそうな、小さな穴だ。
そこに腕を突っ込み、鎖鎌を取り出した。
「借りてく!」
そう一声かけて、その空間は閉ざされた。
残り霊力9。

吉祥はその鎖鎌を地面に投げ捨て、片腕で鎌を持ち、

「勝負だ。」

それだけ言うと、体の反動を使って、真っ直ぐジンジャーに向けて放り投げた!



「ジンジャー!避けろ!」
「分かってる!」

鎖鎌は、真っ直ぐ飛んでくる。
それをジンジャーは難なくかわした。

黒猫は、叫んだ。

「当たれぇぇぇええ!!!」

その声に呼応するように、鎖鎌はその進路を直角に曲げた。

ジンジャーの脇腹に、鎌が突き刺さった!

「かかった!」
吉祥は鎖を口で咥え、それを引き寄せる。
「ぐっ…」
痛みは大したことは無い。だが、それが刺さった瞬間ジンジャーの体が動かなくなる。
グリフィンはすぐさま氷の礫を吉祥に向けて撃つ。
吉祥は尻尾で傘を持ち、構える!
氷の礫は傘を貫くが、なんとか持ち主を守り抜く。


「換命の鎖鎌よ!主に代わり命ずる!汝に与えられし力をここに発揮せよ!!」
ジンジャーの脇腹の鎌から、吉祥の咥える鎖から、それぞれ青白い霊魂が飛び出す。

ジンジャーの霊魂が吉祥へ。
吉祥の霊魂がジンジャーへ。


ジンジャーは、その瞬間エクシード化が解除され、糸が切れた操り人形のようにその場に崩れ落ちた。

「ジンジャー!!」
グリフィンはすぐさま駆けつけるが、ジンジャーは明らかに顔色が悪い。

「換命の鎖鎌。突き刺した相手と自分の体力をまるごと入れ替えるとんでもない武器だ。 …体力回復はたしかに禁止したが、体力を入れ替えることは別に禁止しちゃいねぇからな。 それにしても。エクシード化ってのはすげえな。こんなに体力に余裕を持たせて戦ってやがった。もっと容赦なく相手しておくべきだったんだな。そうだ。僕がこんなに舐めたことしてなければ、こんなことにはならなかったんだな。」

黒猫は傷だらけの体でありながら、先程よりも余裕のある様子だ。

「てめぇ…」
「さぁ。続きをやろうか。もう僕は霊力空っぽだから、少し見苦しい戦いになるだろうけど、 …ああ、傷のことは気にしなくていいよ。見た目はあれだけど体力のおかげでそんなに痛くは…」
「べらべらと喋ってんじゃねぇ!!」
「…そうだな。じゃあ最後に一つだけ聞こう。」

「君はどうする? この状況で、1匹で黒い化け物に挑むかそれとも…」
「それ以上喋るな…」

グリフィンは、内なる何かからの声を聞く。

「俺が…」

あいつが憎いか?

「てめえを…」

その怒りは誰のためのものだ?

「ぶっ飛ばす!!」

力に身を委ねろ。

気がつけば、体が勝手に動き出していた。

《GURAAAAAAAAAAAHHHHHHH!!!!!》




翼猫は、『変貌』した。
その咆哮を浴び、体が縮こまる。
その姿を見て、体が震える。
その気迫を感じ、恐怖を植え付けられる。

吉祥の出した声は、ひとりでに震えていた。

「よぉ。エターナル。俺はてめえに会いに来たんだ。」

グリフィンの身体を、グリフィン以外が支配していることは明らかだった。


そして彼が纏うオーラは、巨大な蟷螂のそれだった。

「…。」
グリフィンは、何も言うことなく、吉祥へと歩みを進める。

吉祥は少しずつ後ずさりする。
「さてさて、どうやって退治してやろうか…」
「…。」
「別に殺すつもりは無いが、あんたは少々聞き分けがなさすぎるからな。」
「……。」

徐々に縮まっていく間合い。
互いに視線は外さないが、吉祥の方が一方的に追い詰められていく。

「まいったなぁ… それ以上近寄られたら、…食べちゃうぞ?」
「…。」

吉祥は我慢が出来ず、無意識に瞬きをした。

瞳を閉じて、開くまでのその瞬間に、グリフィンは吉祥に飛び掛った!

吉祥は反射的に、右へと避けた。

しかし、その目の前に、エネルギーの溜められた拳が見えた。

「あっ 無理だこれは…」

超重力波動弾が、グリフィンの片腕から放たれる。

吉祥は、避けることも受け止めることもできない。
「ぐぁああああああぁぁっ…」



黒猫の断末魔は、力なく消えていった。









グリフィン達を囲っていた、ドーム状の結界が、ガラスが割れたかのように崩れ落ちた。

識別阻害の結界。
中で何が起きていたか、外の者は干渉することができない空間。それを黒猫はこっそりと作っていた。



つまらん。

目の前のボロ雑巾のような黒猫を見て、エターナルはそう感じた。


この程度では到底満足などできない。

もう少し楽しませてくれるものだと思っていたが、がっかりだ。


では遠慮なくこの力を使い、好き勝手やらせてもらおう。

この俺が満足するまで、暴れてやろう。

グリフィンは羽を広げ、上空まで飛び立った。

さらなる破壊を求めて。

《GRUAAAAAAAAAAAHHHHHHHHH!!!!!》












グリフィンの首が絞まった。

「!?」
『いやぁお見事お見事。ファインプレーだ。どのへんがファインプレーかって? 僕に“トドメ”を刺さなかった所だね。ギリギリ生き残れたよ。』
グリフィンの首を、見えない何かが締め上げ続ける。


『知らなかったかい? 『道連れ』は化け猫の十八番さ。ははははははははは…!』

全ての力を開放した『化け物』は、地へ堕ちる。

吉祥は裂けた真っ赤な口を大きく開きながら気絶した。






森に、平穏が訪れた。

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Re: 猫達は躍る 満月の下で

投稿 by 吉祥 on Wed Apr 18, 2018 3:44 pm

ジンジャーは、猛烈な気だるさの中、目を覚ました。

目を開くと、そこには草原が見えた。
そして、親友が横たわっているのも見えた。

「グリフィン!!」
すぐさま飛び起き、体中が悲鳴をあげるのも無視して駆け寄る。

そこにはエクシード化が解除されたグリフィンが倒れていた。
ジンジャーは手早く脈を確認し、呼吸も確認する。

少し弱いが、脈も呼吸もあることが分かり、ジンジャーは大きくため息をついた。

「よかったぁ…」

改めて周りを見渡すと、すぐ近くに黒い塊が落ちている。

「グリフィン。グリフィン。起きられるかい?」
「ぐぅ…いててて…」
苦しそうに呻きながら、グリフィンは目を覚ました。

「元に戻っている…。」
少しぼんやりしていたが、自分の手を見てそう呟いた。
「元にって?エクシードからってこと?」
「ああ。エクシードの力に全て委ねて… まるで中身の違う自分を上から見てるみたいで気分が悪かったぜ。」
「…吉祥はどうなったんだい?」
ジンジャーは、黒い塊を尻尾で差して言う。
「…生きてるのか?」
「まだ見てないけど… どうやらグリフィンが勝ったみたいだね。」
「いや… 最終形態の俺を止めたのは吉祥だ。」
「えっ?」
ジンジャーは気を失うまでのことを整理する。
吉祥の霊力が枯れて、追い詰めたけど
、鎌が刺さり、自分から霊魂が抜け出していった所で記憶が途絶えている。

「Mrから確認するしかないようだな。…生きてればだけどな。」

2匹は、黒い塊の側まで歩み寄る。

その時、軽快な電子音が流れ、その直後に黒い塊が突然跳ね上がった!

グリフィンとジンジャーは驚きつつも、襲撃に備えて構えた!


しかし黒い塊… 吉祥は襲いかからなかった。背中に腕をのばし、スマートフォンを取り出し、(後に、どこから取り出したのか聞いても教えてくれなかった。)通話を始めた。

「あ、おねーさま… えーと平素は格別のご高配を賜り… えっあっ!鎖鎌?鎖鎌です?大鎌とか鎌鼬とかじゃなく鎖鎌?えーーとその件はいろいろと事情がありまして… いやあの借りパクはしません!!もちろん今日中に返しに参ろうかと…え?10秒以内?えっ!? あっ 切られた…」

吉祥は項垂れて、そこでようやく臨戦態勢の2匹に気がついた。
「あ、おつかれさまー。…どしたの?」
「…いや…」
「……突然動き出したから。」
「あーうん。ごめんごめん。姉の着信音だけ別のにしてるから、びっくりして飛び上がっちゃうんだよね。」
「いやそれもびっくりだけども。」
「…怪我とか大丈夫です?俺でよければ傷見ますよ?」
「ああ、そっちか。安心せい。回復は得意なんだ。」
吉祥は今度は口に手を突っ込むと、そこから手ぬぐいが出てくる。
マジシャンかよ。

その手ぬぐいを被ろうとして、吉祥は手を止めた。
「試合終わった?どっちが勝った?実はまだ続いてるとかないよね?」
「どうなったのグリフィン?」
「…俺が吉祥を倒した後、吉祥に道連れにされた。」
「あー そんなことした気がするなぁ。 じゃあ、引き分けってことで!試合終了!」
吉祥が手ぬぐいを被ってそれを取ると、全身の傷や流血、さらに自ら切り落とした腕すらも元通りになっていた。
「…化け物だな。」
「うん。よく言われるよ。」
吉祥が手ぬぐいを投げると、グリフィンの頭上に覆い被さり、あっさり全ての傷を消してしまった。
ジンジャーも同じく完全回復された。
「こんな術があるなら、看護猫なんて必要なくなっちゃいますね…」
ジンジャーは少しショックを受けているようだった。


吉祥は手ぬぐいを耳に収納する。
「それどうやってしまってるんです?」
「企業秘密。 …あー おなかへった。」
吉祥はグリフィンとジンジャーを見ながら呟く。
「…いや、別に君らの力はいらないなぁ。」
「「?」」
「こっちの話。何か食べる?」
吉祥が指先で指示するだけで、焼き鳥の串が現れる。
「いや…」
「別にいいかな。」
「そう?欲しくなったら言ってね。」
吉祥は焼き鳥を齧り始めた。

「さーて やる事が沢山あるけど、まずは君たちへの義務教育をしなきゃね。
「義務教育ってなんです?」
「俺たちは別に… 」
「遠慮しなくていいから。さ、言われたとおりにしてね。」
「え?」
「まず、息を大きく吸ってー!」
グリフィンとジンジャーは、訳が分からないまま言われた通りにする。
「吐くー」
ふぅー
「吐くー」
「吐くー」
「もっと吐くー」
「まだ吐くー!」
肺が潰れた。口からもう何も出てこないというところで。
「はい吸う!」
「だはぁ!?」
急な酸素の供給に、少し頭がくらくらする。
「はい、できたよ。」
「はい じゃねえよ!ただ苦しいだけじゃねえか!」
グリフィンは、ふざけている黒猫に蹴りでも入れてやろうと飛び上がろうとしたが、その場で少し飛び上がって、そのまま着地してしまう。
「グリフィン!?」
「何が起きたんだ??」
そう言ってジンジャーの方を見ると、いつもと違うジンジャーがそこにいた。
「ジンジャー、角どこやった?」
「グリフィン、翼はどこ行っちゃったの?」

「「えっ??」」

グリフィンもジンジャーも、その角と翼がまるっと無くなっているのだった。
「君ら今どきの人間は警戒しなきゃいけんよ。あいつら変なの見つけるとすぐ写真撮ってすぐ世界中に広めやがるからな。猫又らの間でも、人間を驚かす傍ら、あいつらに記録されないようにしなきゃならないから大変なんだよほんと…。」
「これ、戻れるんだよな?」
「あたぼーよ。引っ込めた時と逆にすればにょきっと。」
「にょき って。」

逆ってことは?
「はい、吸って吸って吸って吸って、思いっきり吐く!」
それぞれ背中と額に、いつもの感覚が戻ってきた。
「こんなにもあっさり隠せたんだなこれ…」
「むしろよく隠さずに世界中旅してたんだと、呆れるレベルだ。
…さて、義務教育おしまい。んで、ここでタイミングと都合よく、お目見えだよ。」
吉祥の視線の先を追うと、3匹とも見慣れた猫がこちらへ駆け寄ってきた。

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Re: 猫達は躍る 満月の下で

投稿 by 吉祥 on Wed Apr 18, 2018 3:45 pm

「ということで、昨日の明朝の謎の咆哮の原因はグリフィンくんでした。皆様には多大なるご迷惑をおかけしましたことをお詫び申し上げます。 …ほら君らも!」
吉祥が頭を垂れ、その両脇の2匹の頭を吉祥の2尾が押さえつける。
「これから土地の整備に向かわせていただきます。本日、太陽が真上に来るまでには元通りにしすので、それまでの間近辺には立ち入らぬようお願い致します。」
えらく丁寧なお詫びに、サンダー族族長のブルースターも少し困っていた。
「え、ええ。…できれば部族の猫達に影響のない所でやって欲しいものね。」
「全くだ。」
思わずグリフィンは同意するが、吉祥の尻尾の押さえつけがさらに強くなった。
「それにしても、吉祥とグリフィンとジンジャー、みんな知り合いだったんだね!」
見回りで彼らを見つけたファイヤハートは、率直な感想を口にする。
「いや…」
「知り合ったばかりですね。」
「えー 冷たいなぁ2匹とも。」
吉祥は普通に座り直すが、尻尾は2匹を押さえつけたままだ。
「まあ、今度こそ僕らみんないなくなるからさ。聞きたいこととかあるなら早めにね。」
「聞きたいこと… じゃあ!」

「吉祥とグリフィンとジンジャー、誰が1番強いの!?」
「そりゃ、吉祥だな」
「吉祥ですね。」
「…まあ、単体なら負けないけど、グリフィンとジンジャーが手を組んだら僕でも勝てないよ。」
「すっげー!」
無邪気に喜ぶファイヤハート。

(2匹がかりで、しかも縛り有りでもすっきり勝てなかったんだから、こいつには敵わないだろうな。)

(体力入れ替えなんて反則を使わなきゃ負けてたし、そもそも手の内がバレたり、霊力回復のメカニズムまで対策されてんだ。実質僕の大敗だけどな。)

3匹の心境は複雑であった。

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Re: 猫達は躍る 満月の下で

投稿 by 吉祥 on Wed Apr 18, 2018 3:47 pm

サンダー族の猫達に再びに別れを告げ、吉祥の分身3匹が、他の部族への報告を済ませて戻ってきた。

3匹で戦いの跡地に戻ってくると、吉祥は復旧作業をしながら語り始めた。

「グリフィンの母親の話が出たね。知り合いって訳じゃないけど、1度だけ会ったことがある。その程度でよければ話聞くかい?」
「ああ。 …俺が殺しちまったんだろ?」
「いや、化け猫はそんな簡単に死なないよ。でもまあその時に確実に1度死んでるだろうね。」
「…生きてるってのか?」
「考えられる線は2つ。
1度死んで、自分の持つ力をほとんど消費して復活したか、
力を持ったまま復活し、どこかに引き篭もってるか。」
「…。」
「前者なら、もはや記憶すらも残ってるか怪しい。けど海をまたいで僕なんかの耳に入るほど高名な金華猫だ。そんな簡単に力を失うとも思えないんだよな。つまり。」
「つまり、どこかで今も生きている可能性が高い。 …ってことか?」
「あくまで僕の予想だよ。 …なんなら今から全部調べ上げてもいい。ちょっと今やってる復元作業代わってもらわなきゃいけないけど…」
「遠慮する。」
「まあLINEグループに書いて返事待つだけなんだけどね。」
「…いや、そうされるのもなんか癪なのと、これからの旅の目的がひとつ増えたと思うことにさせてもらうぜ。」

倒れた木の幹に吉祥が水をかけると、その木は目に見える速度で再生を始めた。
「よし。作業終わり。」

「おつかれさまー!青汁が入ったよ!」
「「いらん。」」

瞬く間に元通りになった木の根元に、翼猫、角猫、猫又の3匹が揃った。

この日、彼ら2匹は…

「あ。青汁で思い出した。 ねぇー 青汁5ダースじゃダメ?」
「駄目です!引き分けで半分なら10ダースです!!」

新たな友を…

「女の子?僕… 私が化けてあげようか?」
「殴るぞ。」

…得たのか?

fin

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Re: 猫達は躍る 満月の下で

投稿 by 吉祥 on Thu Apr 19, 2018 12:17 am

――――――――――ここからは特別編です――――――――――

「というか、大丈夫なんですか?」
「何が?」
「いえ… 先程の、お姉さん?との話…」
「あー 平気でしょ。本当に怒ってたら今すぐ回収しに来るから。 ほら、こんな感じで。」
吉祥が尻尾で示した所の空間が歪み、赤い毛皮の猫が飛び出してきた。

「ってことは、滅茶苦茶アングリーじゃねえか!」
「よぉ吉祥。あたしの鎖鎌、知らねえか??」
「はーい お借りしてましたー」
その赤い猫は、グリフィンとジンジャーに背を向けているので、どんな顔をしているのか分からないが、相当怖い顔をしているだろうから、わざわざ覗き込むようなことはしなかった。

「まあまあ、お土産と一緒に返そうと思ってたんだけど…」
「これは、あたしの武器であって、お前のものでは無い。」
「じゃあ今度僕の武器借りに来てよ。それでおあいこ。」
「死にやがれ」
そう言い捨て、吉祥から取り上げた鎖鎌を掲げて呪文を唱えると、吉祥の足元の地面が消え、吉祥はボッシュートされた。

「はぁ、また整備しなくちゃ… ん?」
そこでようやく2匹に気がついた。
「あんたらは?うちの愚弟が迷惑をかけたのかな?」
「…まあ、そんな所ですね。」
「それはすまなかったね。あたしは紅雨(こうう)。あいつには気をつけるんだよ。」
紅雨と名乗った猫は、全身が赤い毛皮の猫又だった。
しかもなかなかの美猫だと、グリフィンは思った。
「あいつに気をつけろとは、どういった意味なんでしょう?レディー?」
「レディー?はっ!んなこと言われたのは初めてだ!面白い猫だね!」
紅雨はさぞかし愉快そうに笑った。
「そうだなそうだな。あいつにも聞かせてやりたいね。メスには優しくしろってな!」
「まったくだ。こんな美しい姉を持っておいて、レディーの扱いのひとつも知らないなんてな!」
「ふふん、それじゃなんだい?このままお前はあたしのことを口説き落としたりしてくれるのかい?」
「おっと、もうバレてるのか。流石は紅雨。ならば今度一緒に食事でもどうだい?」
「食事?それ以外の付き合いがいいね。例えばあんたの魂を差し出すとか…」
「は?」
「死んだ時に魂を私に献上するってのもあるけど?」
「ええと…」
吉祥もヤバい奴だけど、その姉もそれなりにヤバい奴だった。
しばらく黙っていたジンジャーが助け舟を出す。
「先程の、あいつに気を付けろって、どういう意味なんでしょう?紅雨さん。」
「あいつは、大食らいなんだよ。」
「大食らい?」
「見たところ、あんたらは齧られてないみたいだけど… あいつは、猫であろうがなんだろうが、気に入った能力者を喰っちまうんだ。」
「…は?」
「最近は大人しいが、昔はそりゃ酷かった。だいぶ問題になったけどあいつは全然気にしてない。」
「食べられるとどうなるんですか…?」
「もちろん死ぬ。知らないのかい?食べるって、不老不死を殺す数少ない手段だよ。そして相手を喰った吉祥が、獲物の能力を丸ごと奪っちまうってことさ。」
そこでグリフィンとジンジャーは、少し前に吉祥が漏らした言葉を思い出した。
『…いや、別に君らの力はいらないなぁ。』
2匹の毛が逆立った。
「あんたらがあいつと何してたのか知らないけど、付き合う奴は考えた方がいいだろうね。猫又なんてどいつもこいつもおかしい奴ばっかりだからね。」
グリフィンとジンジャーは思わず顔を見合わせる。
もしかして、ああやって喧嘩をふっかけてきたのも、品定めだったのか?

「さ、思ったよりビビらせちまったみたいだから、あたしはここで失礼するよ。」
紅雨はニヤリと笑った。
「ビビらせちゃったって… もしかして今の話…?」
ジンジャーが恐る恐る聞くが、紅雨はニヤニヤしているだけだ。
「そんなに気になるなら、うちの愚弟に聞いてみな?はっはっはー」
紅雨は軽快に笑い、煙に巻かれて消えてしまった。
そして紅雨と入れ違いで、吉祥が穴から這い上がってきた。
「はぁー 戻ってこれた…」
「…」
グリフィンとジンジャーの視線は、軽蔑するように吉祥を見ていた。
「お、僕のいない間にいろいろ盛り上がってたみたいだね。どうせ僕のことすごく悪く聞かされたんだろ?」
「…どこまで本当なんです?」
「言い方によっては全部本当だけど… 実際は懲らしめられてからは無断で命を奪うことはしてないよ。」
「無断って。」
「相手を齧る時は許可を得てから!吉祥おぼえた!」
「…。」
「それに最近は、食べなくても能力を真似できるようになったしな。ほら。」
吉祥の背中に黒い翼が2対生える。
「黒歴史があるのなんて、どの生き物でも一緒だろ?」
吉祥は翼を取り外した。外した翼を空に放り投げると、ひとりでに飛んでどこかへ行ってしまった。

「でもまあ、あんまり化け猫と関わりすぎてもいい事ないから、気をつけるこったな。」
「絶交するか。」
「絶交ですね。」
「ひどーい!」

吉祥
見習い
見習い

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Re: 猫達は躍る 満月の下で

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