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Girl forget somethinG important 【削除依頼】

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投稿 by ヒーステイル Sat Jun 06, 2015 8:37 pm

私が大好きだったのは、貴方達なんでしょうか。

分からない。

分からないから、



    私は
”貴方”を追うのです。








































*注意書き*
・某笑顔動画で大人気の曲を元にしました
・勝手な解釈・構造等あるのでご注意を
・部族が舞台なのでこちらのフォーラムに立てさせていただきました


最終編集者 ヒース@一人称「僕」 [ Sat Jul 04, 2015 4:35 pm ], 編集回数 4 回
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投稿 by ヒーステイル Sat Jun 06, 2015 9:03 pm

主な登場猫覧


フウィートレイン【小麦雨】
茶色い毛をした華奢な雌猫。目はミントブルー。
優しく真面目だが、はっちゃける時ははっちゃける、明るい少女。2匹の幼馴染がいる。
仲間が大好き。辛辣な言葉を投げることもあるが、一族が本当に好き。
若手戦士。
とある事故に巻き込まれ…

ラフアース【粗い大地】
黒っぽい三毛柄の雌猫。目は緑。
勝ち気で負けず嫌いなフウィートレインの親友。元気いっぱいでよく駆けまわっては怪我をする、治療部屋の常連さんとなりつつある。

トレントハート【急流の心】
青灰色の大柄な雄猫。目は淡い青緑。ハンサムな顔立ちをしている。
良く笑いよくしょげる、感情豊かな好青年。優男で、その容姿からいろんな部族の雌猫からモテる。フウィートレイン達の友達で、ソーンアイの親友。

ソーンアイ【トゲ目】
形のいいアーモンド形の琥珀色の目をした、黒と白の雄猫。
若干口調は荒いが、心優しく面倒見の良い常識人兼苦労人。トレントハートの行動にゆる被害者の一人。
トレントハートといったら彼、彼といったらトレントハートと言う程、親友とは息が合う。

サンダー族本家の猫達。
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投稿 by L ͛k ͛ Sat Jun 06, 2015 9:44 pm

キャラクターが魅力的で、今から物語の指導がとても楽しみです。
個人的にラフアースのネーミングセンスにとても痺れさせていただきました。笑

応援しています*^^*!
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http://nekoryou-seikatsu.jimdo.com/

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投稿 by ヒーステイル Sun Jun 07, 2015 8:45 am

Lightningkit@猫寮生活小説化……! wrote:キャラクターが魅力的で、今から物語の指導がとても楽しみです。
個人的にラフアースのネーミングセンスにとても痺れさせていただきました。笑

応援しています*^^*!


師匠、コメントありがとうございます!
キャラクターが魅力的とは・・・なんと!勿体ないお言葉です!w
キャラは結構他の自作と被ってしまうかもしれませんがw
ラフアースは思いつきだったのでw痺れてもらえてよかったです((
師匠も頑張ってください!
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投稿 by ヒーステイル Sun Jun 07, 2015 9:31 am

序章







 狭苦しいキャンプの中で、夥しいくらいの数の猫が、ぐわんぐわんと波のように犇めいていた。

 そんな中、子猫を守るため、母猫を守るため、一族の命を1つでも多く救うため、必死で鉤爪を振るう。

 何匹もの戦士に踏み荒らされ、無残にバラけた茨の壁が、飛び散って毛皮に刺さった。

 でも、充血した目は敵のことしか見えていなくて。

 緑の刺なんて、どうでもよかった。

 鈍い音に混じり、鉤爪の鋭い音が鳴り、戦士たちが死に物狂いで戦っているのが、首を巡らせなくても分かる。

 死に物狂いになっているのは、自分のためではない。

 今も闘ってる、そう、狭い部屋で縮こまりながら、自分より幼い子猫を守ろうと歯を剥く小さな戦士たちに限らず、一族が誇る戦士たちを守るため、血を流しているのだ。

 だから、この一族が好きなんだ。

 甲高い悲鳴、喉の奥から発せられた、獣のような唸り。

 ふとした瞬間に目を上げ、血が滴る爪を地面に下ろした。

 ひどく、ゆっくりに見える動きで、雄猫が足をもつれさせながら、こちらに向かって転がってくる。彼は揉み合う猫達に押され、地面を時折跳ね上がりながら跳んできた。

 あ。ぶつかる。

 その刹那、頭に重い衝撃が走った。

 鋭くもなく、鈍いでもなく、波が揺れるような痛み。己の胸が仰け反り、空き地の向こうに飛んでいくのが分かった。

 剥いた瞳にちらりと過る、雄猫の顔。彼は目を見張り、悲壮な顔をしていた。

 がんっと大木が切り落とされたように、硬い地面に叩きつけられた。体はつんのめり、骨の髄が何かを木霊する。

 その木霊は、やがて聞き取れるくらいの音となった。

 いいや、これは髄からの音ではない。仲間の声だ。

 血相を変え、戦士が自分の名を叫ぶ。

 誰なんだろうか。仲間の声など忘れるはずもないのに、頭が酷く痛むせいか、どうしても声の主が浮かび上がらなかった。

 何度も何度も聞こえるその声。2重にも3重にも聞こえて、1匹のものかどうかも分からない。

 ごとり、と頭を地面に預ける。ひんやりとしているはずの地面は、熱気で温度さえも感じれなくなっていた。

 ぼやけ、焦点の合わない目に最後に映ったのは、消炭色の雌猫が足を引きずって走ってくるその姿。他部族も尊敬する、族長の友人だ。

 幾つも聞こえていたはずの声は、声とも言えないくらい重なっていた。

 ああ、ごめんね、分からないよ。



 意識を手放す寸前、ぼやけた猫の姿が見えた。1匹?2匹?わからない。



 ぽっかりと開いた心の穴に落ちていく。







 何か、とても大切なことを忘れてしまった気がした。
























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投稿 by ヒーステイル Sun Jun 07, 2015 10:48 am

1.目が覚めて





 「足の方はもう大丈夫そうね」

 シンダーペルトの言葉に、フウィートレインはほっと息を吐いた。また戦士業に戻れるかと思うと、隠そうとしても、安堵の思いが顔に出る。

 「なあに、そんな嬉しそうな顔して」
 「え、あ、いいえ」
 「私の足みたいにならなくてよかったわね。若いっていいわぁ」

 慌てて首をふるフウィートレインを見て、看護猫はいたずらっぽく笑う。ご自分だってお若いじゃないですか、と軽く言うと、彼女は笑ってフウィートレインを部屋から追い立てた。

 「もう私の世話にならないようにね!」

 シンダーペルトの明るい声が、耳の中で木霊した。

 久しぶりの空き地の景色に、爽やかな風に揺れるヒゲがぴくりと動いた。

 さて、何をしようか。そう思うと同時に、般若のような顔をして駆けて来る親友を見つける。

 「おはよう!」

 「おはよう私の親友!怪我は大丈夫!?大丈夫ねそうね信じてるわMy Friend!!」

 「あーうん、大丈夫大丈夫」

 今の言葉で親友をやめようと思った、なんて言ったら、きっと怒られる。フウィートレインは肩をすくめて苦笑すると、ラフアースの耳を尻尾で軽く弾いた。

 「さっそくグレーストライプに狩りのシゴトをもらったの。一緒に来る?」

 ラフアースは子猫のように瞳をきらきらさせ、自信満々に言った。

 「ええ、もちろん。私の方が多く捕ってみせるわ!」

 「病み上がりの病人に何を言う」

 「ごめんなさい」

 悔しいが、狩りはラフアースの方が得意だろう。気配を消すのが、彼女は上手い。

 おお、もう治ったか!おめでとう、また遊ぼう、知った顔たちがフウィートレインの前に現れ、微笑んでは流れていく。

 「ありがとう」

 何度口にしたか分からない言葉を惜しみなく言うと、フウィートレインはラフアースと一緒にキャンプを出ようとした。

 その時、2匹の雄猫が、空き地を横切って走ってくるのが見えた。

 「フウィートレイン!」

 ハンサムな顔を曲げ、トレントハートが慌てたように大声で言う。

 「おはよう・・・ございます」

 やや躊躇ってから、会釈をした。背後から、親友の視線が鋭く刺さる。疑問に思う間もなく、ソーンアイがトレントハートの後ろから顔を覗かせた。

 「良かった・・・痛くねえみてぇだな」

 彼は、まるで自分のことのように、嬉しそうに言った。

 フウィートレインは何だかくすぐったくなって、親友の後ろに引っ込んだ。

 「2匹も一緒に来る?」

 ラフアースはさらりと訊いた。まるで、2匹は同輩だとでも言うように。

 トレントハートは間を開けてから、明るく笑って尻尾を振った。

 「ううん、俺達はいーや!副長にパトロールを頼まれちゃってもうホントいやになちゃああああああ!!痛い!!」

 「うるせえ騒ぐな。じゃあな」

 トレントハートが天に召されたが、気にしないでおこう。

 森に出るとすぐ、ラフアースが突拍子もないことを訊いてきた。

 「ねえ、トレントハートとソーンアイのこと、覚えてる?」

 何を言ってるんだろう、と思った。2匹は一族の中でも有名なのだ。

 「もちろん。ねえ、ラフアース、本当先輩に気楽に話しかけるよね。いまみたいに。いいなぁ、ラフって」

 その社交性を羨むと、彼女はちょっと笑った。

 「いいでしょ!」

 ラフアースは顎をくいっと上げると、体を伏せてゆっくり歩き、茂みの中へ入ってしまった。リスでもみつけたのだろう。

 覚えてるにきまってるわ。

 誰ともなく呟くも、心に抱いた不信感を拭うことはできなかった。

 心に形があるのなら、その半分以上が欠けてしまった気がする。思い出せないことが、ある。それは親友にも言えない。

 思い出せないけど。1つだけ、確かに覚えてる。

 それは確かに覚えてることだけど、きっと覚えてるのも、1部分だけなんだ。知っているのに、覚えていたことを少ししか思い出せないのは、こんなにも淡いことなのか。

 その思いを振り払うように、フウィートレインは鳩を追って駆け出した。

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投稿 by トワイライトアウル Sun Jun 07, 2015 9:41 pm

新小説おめでとうございます!
僕も以前「Am I right…?」という没案小説がありましたw
思い出せないって辛いですね…
僕がテストで感じている気持ちの何倍も何百倍も辛いんでしょうねきっと…((オイ
もし僕が一人記憶がなくなったら…こんなに冷静ではいられませんね
(ちなみに僕の小説も記憶がカギですw)

頑張ってください!!   お互い頑張りましょう。
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投稿 by ヒーステイル Mon Jun 08, 2015 3:08 pm

トワイライトアウル wrote:新小説おめでとうございます!
僕も以前「Am  I   right…?」という没案小説がありましたw
思い出せないって辛いですね…
僕がテストで感じている気持ちの何倍も何百倍も辛いんでしょうねきっと…((オイ
もし僕が一人記憶がなくなったら…こんなに冷静ではいられませんね
(ちなみに僕の小説も記憶がカギですw)

頑張ってください!!   お互い頑張りましょう。


コメありです!
そうですね、覚えてるのに、知っていることのほうが少ないっていうのは辛いですね・・・
テストも辛いですが(´・ω・`)
トワ君も、執筆頑張ってください!
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投稿 by レパードクロー Mon Jun 08, 2015 3:11 pm

ラフアースが一瞬で好きになりましたw
名前も性格もラフな彼女がどう活躍していくかに期待MAXなのです^^
そしてバッジの件、すみませんでした。
こんなレパードをどうか、これからもよろしくです。
そして小説にコメもらえたらもっと嬉s((空耳ですよー
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所在地 : ちゃぶ台帝国にある実家

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投稿 by ヒーステイル Mon Jun 08, 2015 4:59 pm

レパードクロー wrote:ラフアースが一瞬で好きになりましたw
名前も性格もラフな彼女がどう活躍していくかに期待MAXなのです^^
そしてバッジの件、すみませんでした。
こんなレパードをどうか、これからもよろしくです。
そして小説にコメもらえたらもっと嬉s((空耳ですよー


コメありです!
ラフアースが好きですと!?嬉しいです!w
短編(たぶん)ですが、頑張って全員を目立たせたいですw
いえいえ、こちらこそよろしくお願いします!近々コメさせていただきますね~
頑張ってください!
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投稿 by ヒーステイル Tue Jun 09, 2015 7:17 pm

2.穴に落ちていく。









 鳩に向かって、鉤爪を振り下ろす。ズキン、と肩が痛み、フウィートレインは歯を食い縛った。

 今この状況が狩りの最中でなかったら、きっと肩を抱えて倒れていたところだろう。

 フウィートレインは痺れを切らして飛び上がり、鳩の首を咥えて激しく振った。鳩は嘴の端からか細い声を絞りだすと、くたりと動かなくなった。

 息を切らし、ぐったりした体を引きずってキャンプに戻る。

 1匹しか捕れなかったが、この体ならしょうがないと、副長は許してくれるだろう。

 鳩を獲物置き場へ落とし、痛む右前足を引きずって進む。歩いた跡に一本の線ができ、前足は茶色く汚れてしまった。

 フウィートレインは戦士部屋の前で体を丸め、毛づくろいをしながら体を休めた。

 「あっれ、フウィートレイン」

 すっとんきょうな声に、首を振り向かせると、にこにこと笑顔を浮かべたトレントハートが立っていた。

 「もう戻ってきたの?もしかして、痛む?」

 彼は小首を傾げ、フウィートレインの隣に座った。

 あー、と口籠る。「そうですね・・・」

 「復帰直後に無理するからでしょ?まったく、何で自分のことになると雑になるのかねえ。俺とソーンアイが怪我した時は、あんなに保護してくれたのに」

 彼は仕方ないな、と言うように頬を膨らませた。雄猫がそんなことをやっても目を覆うしかないのだが、トレントハートは容姿が容姿だから、様になってる。

 「え?」

 彼は何を言ってるのか。フウィートレインは首を振った。

 「私、貴方達の世話なんて、したことないですけど」

 びくっとトレントハートの肩がはねた。丸っこい瞳は、動揺の色で満ちている。

 「何いってんの・・・」

 トレントハートは震えた声で呟くと、急に立ち上がって駆け出した。

 フウィートレインは理解が追いつかぬまま、ラフアースとソーンアイを引っ張って戻ってきた雄猫を見て、目を白黒させた。

 「ねえ、ソーンちゃん、ラフアース」

 「ソーンちゃん言うな、きもい」

 「なんなのよ、馬鹿トレントハート」

 トレントハートは2匹の暴言を無視し、真剣な顔をして訊いた。

 「フウィートレイン、もう活動していいってシンダーペルトに言われたんだよね?」

 その問いには、フウィートレインが答えた。

 「ええ」

 トレントハートは、ちらっとフウィートレインを見る。その目に、安堵の色が広がった。

 「そっか・・・うん、良かった」

 3匹はそろって首を傾げ、ソーンアイは不機嫌そうに唸った。

 「なんで俺らを呼んだんだよ?まさか、こんだけ訊くためだけに、とか言うんじゃねえだろうな」

 脅すような声色に、慣れてるトレントハートは一瞬間を開けてからさらりと返した。

 「そうそう、当たり!ごめんねぇ!あ、ちょ、顔は勘弁して下さい、まじで。殴るならせめて腹ぅっぐう!」

 ラフアースが隣でからからと笑う。馬鹿ね、と冷やかす口調も、なんだか懐かしい響きだ。

 なんだか居心地が悪かった。知らない場所に、ぽんと放られた気分だ。でも、不思議と、胸の穴が埋まっていく感覚に陥る。

 ふわふわとした体内に、ゾクリと背中の毛を逆立てた。

 ああ、駄目だ。まだ、足りない。今の私は、何も知らない。
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投稿 by ヒーステイル Tue Jun 09, 2015 8:32 pm

3. それでもあなたがなんだか思い出せないままでいるのに




 「じゃあ、アッシュポーは?」

 「はい、覚えてます。彼とは、私が見習いの時に、よく追いかけっこをして、楽しかったねと言い合いました」

 ふむ、とシンダーペルトは頷く。

 「ほとんどの猫は、外見だけじゃなくて、エピソードも覚えてるわね」

 ちくりと胸が痛んだ。その言い方だと、まるで私が覚えてない猫がいるみたいじゃないか。

 フウィートレインの心境を察したのか、看護猫が顔を上げた。

 「貴方は何を覚えていて、何を知っていたかさえも忘れているのよ?そうカッカしなさんな」

 やんわりとした口調なのに、どこか影を感じさせる言葉に、フウィートレインは口を結んで目を逸らした。

 何を知っていたか、を忘れた?つまり私の記憶は、どこまで失くしてしまったかも分からない、という事?

 冗談じゃない。フウィートレインは心の中で悪態をつき、シンダーペルトを見上げた。

 「私は、誰を忘れたか、というのも覚えてないんですね?その__その誰かを確かめる方法って、ないんですか?」

 シンダーペルトは迷うように短く唸り、胸に鼻をうずめた。

 「そうね・・・。私もはっきりとは言えないわ。記憶を失くした猫なんて、初めてだもの。なにか、きっかけみたいなのがあれば、きっと思い出せるはずなんだけど・・・」

 フウィートレインは頭を上げ、辺りを見回した。

 昨日の、あの感覚に走らされて、気付けば看護猫に相談していた。これで、救われると願っているのだ。

 シンダーペルトは一言、「考えすぎないで」と言うと、月の石へ出かける準備をする、と部屋の奥へ消えてしまった。

 フウィートレインはキャンプを横切り、戦士部屋で丸くなった。

 もうすぐ日が暮れる。1,2匹が、毛を乱して寝っ転がり、いびきをかいて昼寝を続行している。フウィートレインは微笑むと、彼らが風邪を引かぬよう、苔を敷き直した。

 ごろん、と寝床で横になる。目を閉じるが、寝る気はない。眠れないのだ。

 夜は暗い。しん、と静かで、森の息が感じられるような、ただ1つの時間。そんな時間に考え事をするのが癖になるまで、時間はかからなかった。

 そっと、口の中で呟いた。

 ねえ、私の心に見え隠れする貴方は、一体誰なの?1匹?2匹?分からない、何も分からない。

 今の私は、貴方を知らない。すれ違ってもわからないかもしれない。

 そう思うと、胸が苦しくなった。

 自分を知っている私に無視される?悲しいってもんじゃないわ。

 ・・・でも、貴方は「悲しい」と思うのかしら。

 貴方のことを忘れたくなかった。でも、そう思えるほどの猫なのか。今こうやって、うんうん悩んでるのを見たら、貴方は笑う?分からない。

 苦しい。息が出来ない。このまま闇に飲み込まれていけるのなら、どんなに楽か。

 かさり、と茂みが鳴る音がした。

 頭を上げ、目を向けると、しなやかに黒三毛猫が、影を落として立っていた。

 「ラフアース__ 」

 「覚えてるわよね?」

 え、と思わず瞬きをすると、ラフアースは強い瞳をしていた。しかし、発した声は、彼女のものと思えないほど、弱々しかった。

 「私のこと、覚えてるわよね?知ってるわよね?今までのこと、全部、ぜんぶわすれちゃったの?
 私が子猫のとき、ハーフテイルの兎にドクダミを仕込んだこととか、蜂にさされて目が腫れ上がっても、パトロールについてって鬼みたいな看護猫に怒られたこととか、初めて戦士になった日のこととか、
 ぜん、ぜんぶ、覚えてないの?もう、ぜんぶ」

 彼女は肩を前のめりにし、悲痛な声で泣き崩れた。

 わんわん泣く雌猫をよそに、戦士は寝続けている。

 フウィートレインは這うようにしてラフアースの側へいき、尻尾を伸ばして肩に触れ、彼女の濡れた頬に額を寄せた。

 ごめん、ごめんね。

 囁いたつもりが、その言葉は息と共に吐出され、夜に溶けこんでいった。

 ひゅい、と喉が鳴り、喋れるようになるまで、フウィートレインは魚のように口をパクパクさせながら、苦しみに顔を歪めていた。

 「__忘れてなんかない。だってあんたは私の”親友”よ?」

 言い聞かせるように言った。自分に、”親友”に。

 そう、ラフアースは親友。ずっと一緒にいる、友達・・・

 あれ、ずっと一緒にいたのは、本当にラフアース?

 きっとそうよ・・・私は記憶をなくしていない、覚えてる。

 本当に?そう囁く声に、フウィートレインはくしゃりと顔を顰めた。
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