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雪の鱗

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雪の鱗        Empty 雪の鱗

投稿 by エーテルレイン Tue Mar 13, 2018 8:53 pm

Prologue

シンシンと降り注ぐ白銀の雪

氷輪が暖かく見守る中、鮮血を積もった天華に散らせる姿

それは、美しい夢現の光景のようだった

助けを乞う声はもう出ない

救いを求む力はもうない

あぁ___いったいどこで、間違えていたのだろう

二度と戻れないと分かっていた

美しいそれは悲哀の涙を流した

___哀しい、なんて哀しいことでしょう

憐れで麗しい君よ

それの泣き声は虚しく、白魔と化した森に消えていった



























嗚呼、なんて素晴らしい物語

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雪の鱗        Empty キャラクターズ

投稿 by エーテルレイン Tue Mar 13, 2018 8:58 pm

キャラクター紹介

天華(アマハナ)※雪の別名
雌猫
真っ白な毛に灰色の斑点
目は翡翠色

ウェイル・シールズ
雄猫
黒い毛に白い斑点
目は赤色


常時更新

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雪の鱗        Empty 第一章:灰の降る谷

投稿 by エーテルレイン Tue Mar 13, 2018 9:13 pm

「もう…ここまで来ていたのね」

白い体には無数の斑点
それは時間と共に増え続けた
永遠とも呼べる長い時を、生き続けた証

あの日、世界が紅に包まれた悲劇
日は沈まず、常に夕日よりも赤い太陽が不気味に昇っている

「エクター…なんて、どうして私が選ばれたの…」

永い時を生きているせいで、大切な存在は皆いなくなった
死ぬこともできず、生きている心地もしない
エクター、それは救世の切り札
御身に神降ろしされた神との融合体

天華には慈悲の女神が宿っている
この世にはエクターが3匹いる
戦いの神を宿す者
忠誠の神を宿す者

3匹は世界を救うべく生贄にされ、惨禍に呑まれた
望まぬ不死と、願わぬ不老
全てを背負わされ、生かされ続けている半神

「投げ捨てることはできない…か」

天華は他の2匹に会ったことはなかった
連絡の手段などないし、広すぎる世界を、3匹が巡り会うことは難しい

「太陽の守り手を探さなければ、世界は戻らない」























この時、世界が壊れ始めて千年が経とうとしていた

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雪の鱗        Empty Re: 雪の鱗

投稿 by エーテルレイン Tue Mar 13, 2018 9:31 pm

______慈悲深き者よ…どうか私を救______






「またか…」

最近、同じ夢を見る
ぼやけた視界の中、白い誰かが泣いている
誰だ…

覚えてる限り、会った事もない猫が、切なく泣いてそう言う
それが何を意味するのかは全く分からない

ただ、その微笑みは俺の胸まで締めつける
今にも泣き出しそうなのに、無理して笑うその顔が

「そんな顔するなよ…」

何故かそんな言葉が口を衝いで出てしまって
掻き消すように無理矢理目を瞑った

たかが夢なのに、その猫に会いたいと願ってしまう
会って、愛したとしても…自分よりも先に死んでいくというのに

「…お前は誰なんだ…」

















俺の夢に叫ぶのは誰だ___

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雪の鱗        Empty Re: 雪の鱗

投稿 by エーテルレイン Wed Mar 14, 2018 8:44 pm

かつて、月の巫女と謳われた一族がいた

数多の痛みを癒し、無数の苦しみを取り除いてきた

ただ、それだけのために己が命を削り

ただ、誰かのために祈りを捧げてきた

だがそれを疎ましく、おぞましく思った者達

中には命を救われた者もいるというのに

月の巫女たちはこの世界から抹殺された

やがて、誰しもが月の巫女という存在を忘れ

平穏に生きていた

月の巫女は神に使える天使の代品

心優しい月の巫女は、死ぬその時まで誰しもの平和を祈ったという











天華は生まれつき、不思議な力を持っていた

それは、触れたものの傷を癒す力

生まれ持ったその力

天華を欲しがるものは多かった

天華は月の巫女が滅ぼされる数日前に、一族からはぐれ、母を亡くした孤児だった

心優しい雌猫に育てられ、はぐれ猫となった

何処にも所属しない天華は自由だった












「是非とも我が一族に!」

「いいや!俺達の部族に!!」

「私たちの元へいらして!」

たった1匹の猫をめぐって、争いは起きた

まるで狂ったように戦うのは、勇敢なる戦士





___嗚呼、哀しい。私は誰かのものになるつもりなどないというのに___














天涯孤独だと決めていた天華

それを阻む期待と争い

がむしゃらに、逃げた

逃げるしかできなかった

















___こんな世界、要らない

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雪の鱗        Empty Re: 雪の鱗

投稿 by ウィンターリーフ@冬葉 Sun Mar 18, 2018 2:08 pm

こんにちは、コメ失礼します。
プロローグに惹かれてやって来ました! ああいう、どこか悲しくて不思議な表現、私の大好物なのです!
『憐れで麗しい君よ』のフレーズに、そのような表現をされる猫とはどんな猫なのかとても気になります。陰ながら応援させていただきます!
ウィンターリーフ@冬葉
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雪の鱗        Empty Re: 雪の鱗

投稿 by エーテルレイン Sun Mar 18, 2018 7:06 pm

ウィンターリーフ@冬葉 wrote:こんにちは、コメ失礼します。
プロローグに惹かれてやって来ました! ああいう、どこか悲しくて不思議な表現、私の大好物なのです!
『憐れで麗しい君よ』のフレーズに、そのような表現をされる猫とはどんな猫なのかとても気になります。陰ながら応援させていただきます!


ありがとうございます
ウィンターリーフさんの望まれるお話になるか、分かりませんが、是非読んでいただけたら幸いです
これからも、宜しくお願いします

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雪の鱗        Empty Re: 雪の鱗

投稿 by エーテルレイン Sun Mar 18, 2018 9:20 pm

願ってしまったから

祈ってしまったから

後悔など...











「すみません、この先に大きな塩辛い池があると、聞いたのですが...」

天華は軒で眠っている、白い飼猫に訪ねた
空が紅くなって以来、二本足は見なくなった
そのせいでほとんどの飼猫が死に絶えていった

生き残ったのは極わずかであり、首輪があってもほとんど野生の猫として生きている者が多い

「いや、俺は分からないな。...あんた、旅の猫か?」

「えぇ、そんなところ」

「そうか...ウミを探しているのなら、そこらをうろついている爺さんを、尋ねるといい」

「老猫?」

猫に会ったのも数週間ぶりだが、年老いた者が生きていられる世界ではないはずだ

「爺さんは昔、部族で戦士やってたらしいからよ。こんな世界になっちまっても、生きていけるんだろうよ」

「なるほどね。顔に出ていたかしら?」

「なんでそんな老猫が生きてられるんだって、考えたような顔してたぜ」

「ふふ。鋭いようね」

「お互いな」

たわいない言葉を交わし、白い猫に別れを告げた
名乗る必要などない
ここへ来ることは二度とないからだ

天華は教えられた老猫を探しに、軒から離れた
ウミ、と呼ぶのだろうか
塩辛い池という知識はあった
そこに行けば何かがある
そんな予感がしていた












___運命の悪戯に惑わされて...

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雪の鱗        Empty Re: 雪の鱗

投稿 by エーテルレイン Sat Mar 24, 2018 11:39 pm

海...か...

久しいとは思っている
何せ、その近くで生まれ育ったから
でも、もうそこへ戻ることは怖くてできなかった

1000年の時が、全てを忘却に葬り去った



「誰か...助けてくれ......」


永遠など、要らないというのに
死なないのは、生きていないと同じこと


「死なない誰かを探したところで......」


この世界は、救われない

拭えない恐怖と絶望が、彼の思考を支配していた










「ですから!私は!ウミ!という!塩辛い!池を!」

「すまんの、耳が遠いもんで...」

「えぇ...」

「ウミ...かの?ウミは、日の沈む方向へ歩きなさい」

3回目でようやく理解してもらえた
出会った時は驚くほどの老猫で、こうなることは想定内
だが、生きた年数は天華の方が長い

「嬢ちゃん、あまり、無理はしないでな」

「お気遣い!ありがとう!...聞こえたかしら...」

「いやいや、こんな老猫に、話しかけてくれるのは、嬢ちゃんが、随分と久しぶりでね。こちらこそ、ありがとうね」

天華は会釈すると、不思議と笑顔が出た
自分より、若いのに体は歳をとっている
そんな矛盾に笑っていたし、哀しくもあった
けれど、話すだけで喜ぶ老猫を見て、清々しい気分になれた

あぁ、こんな風に、私も歳をとって、些細な事で喜ぶことができたら......いいのに






___巻き戻せ…巻き戻せ......狂った歯車を

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雪の鱗        Empty Re: 雪の鱗

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