ウォリクラ物語 短編集
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ウォリクラ物語 短編集
1·····族長の誰からも構われない日
2·····変死体の謎
3·····夜襲
増え次第臨時追加予定 よろしくお願いします
ヒーステイル- 副長
- 投稿数 : 282
Join date : 2015/05/17
Re: ウォリクラ物語 短編集
【族長の誰からも構われない日】····1
吉祥は激怒した。必ず、この部族に鉄槌を下さねばと決意した。
────というのも、だ。
吉祥はこのウォリクラ族の族長である。突然の転生に混乱する部族をまとめあげ、仲間の危機にだっていち早く対応した。それは仲間あってこその力だと思っているが、一癖も二癖もあるウォリクラ達をまとめあげるのは本当に大変なのだ。もちろん、みな常識のある猫たちではあるがもともと声も聞いたことのない者が殆どだった。素性もよく知らぬ者達との共同生活は当然困難になる。
そんな部族を率いて早ふた月。情勢も落ち着いてきたことだし、そろそろ族長としての荷を下ろして、Twitterのようなやり取りをしよう!────と思っていた矢先のことだ。
「何故だかみんなにいなされている気がする・・・!」
吉祥は首の毛を逆立てながらその場にばたりと伏せいった。頭を抱えるように耳の後にまで前足を回す。誰も見ていないことを再度確認して、茂みの奥で吉祥は二又の尻尾を激しく振った。
「なんで!なんでだ!私何かしたか!?確かに一週間前はぱぱさんにツキノコ付けて遊んじゃったし、一昨日は寝てるチリーレインの鼻にダンゴムシ詰めたし、昨日はナイトリーフの尻尾とアスターハートの尻尾あやつなぎしたけど!したけどさ!」
だからってこれは酷いだろ!と吉祥は頭を地面に押し付ける。
今朝はいい風が吹いていた。涼やかな風が黒い毛を逆立て、陽炎のように揺らめかせていた。気持ちのいい朝に吉祥は喉を鳴らし、久しぶりに誰かと食事をしようと思ったのだ。最近は忙しくて殆ど喉に押し込めるようにリスを頬張ってばかりいたので、折角だしライトニングキットを誘おう、と意気込んだ──
────のだが。
「や、ちょっと今は・・・」
瞳を歪めて申し訳なさそうに立ち去る、ライトニングキットの金色の背中を呆然と見送ることしか出来なかった。
・・・?
ま、まあこんな事もあるだろう。彼女は今日はパトロールも早朝の狩りも入っていなかったはずだが。吉祥と別れた今も暇そうにキャンプをひとりで歩いているが。
きっと何かあるのだろう。一つ頷き、吉祥は人気のないキャンプを見渡してから、ひとりで食事をした。
昼は木漏れ日の煌めく暖かな風が吹いていた。
こんな和やかになる日は久しぶりだ。内政ばかりではなく誰かと狩りでもして、獲物の数を競おうか。
木陰で横になって話しているシアクラウドとパーシモンシード、フロストテイルを見つけ、吉祥はゆっくりそちらに向かって歩き出した。フロストテイルが地面に絵でも描いているのだろう、額を寄せあって笑う姿は楽しそうだ。吉祥は鼻で息を吐き出してから、「おい」と呼びかけた。
「今日はいい天気だな。良かったら、久しぶりに一緒に狩りでもどうだい?」
笑いかける吉祥だったが、対照に苦い顔をしたのは、旧友のフロストテイルだった。
彼は「あー」と唸ると、ちらりとシアクラウドと目線を交えてから吉祥に向き直った。
「悪いけど、私ら今忙しいんだ」
「すみません」
フロストテイルに言葉を添えるパーシモンシードがぺこりとお辞儀をする。丁寧な動作に何も言えず、吉祥はぎこちない動きで後に下がった。
「い、いや、いいんだ。ああ、忙しいもんな。すまん。うん、じゃあまた」
口の端を歪めて言葉を零し、吉祥はまたゆっくりと背中を向けてその場から歩き出す。途中、一言でも声をかけてくれまいかと耳を立てたりもしたが、望んでいた彼らの声は聞こえてこなかった。
そのまま不貞腐れるようにして森に出てウサギの穴に後ろ足をはめ、やっと抜け出せたと思ったら突然襲いかかってきたカラスに驚いて坂を転がり、華麗に起き上がれたと思ったらハトをくわえたヒーステイルとドーンフロストに激突して川に突き落とし怒られてしまった。本当に散々な目にあった。
何だか帰りづらくなって茂みの奥でこうして伏せてるわけだが、体が泥臭くて敵わない。ハーブの香りの看護猫を思ってため息を吐いた。
「・・・もう日暮れか」
茂みの隙間から差し込むオレンジ色の光にきゅっと目を細める。眩しい陽の光はは容赦なく吉祥の瞳を突き刺した。
本当に、散々だ。
お気に入りのふかふかの寝床は何日か前に跡形もなく消えてしまったし、食事は拒否られるし、狩りだって一緒にしてもらえない。今日は自分たちで捕った獲物で擬似的な宴会でも開いて仲間たちと騒ごうと思っていたのに、きっと集会を開いても、今の自分じゃ吃ってしまうだけだろう。
────そもそも集まってくれないかも。心の内でこっそり弱音を吐き、吉祥は組んだ前足の間に顔を埋めた。
明日誘えばみんな相手にしてくれるのだろうか。今から速攻で帰ったら、みんな出迎えてくれるのだろうか。心配したと、どうしたんだと声をかけて、私の失敗を笑ってくれるのだろうか。
明日も断られてしまったらどうしよう?何か気に触ることでもしたのだろうか。
ツキノコを生やされたぱぱさんもきっと怒っているだろう。内緒で背中の毛を可愛く枯葉で彩ってしまったエルフにも、寝床にカブトムシを仕込んでしまったフォナイフセイブルにもちゃんと謝って、それから ───それから、
「吉祥さん?」
がさり、と掻き分けられた茂みに咄嗟に目を瞑った。鮮明になったオレンジの光が瞼を焦がす。
吉祥は激怒した。必ず、この部族に鉄槌を下さねばと決意した。
────というのも、だ。
吉祥はこのウォリクラ族の族長である。突然の転生に混乱する部族をまとめあげ、仲間の危機にだっていち早く対応した。それは仲間あってこその力だと思っているが、一癖も二癖もあるウォリクラ達をまとめあげるのは本当に大変なのだ。もちろん、みな常識のある猫たちではあるがもともと声も聞いたことのない者が殆どだった。素性もよく知らぬ者達との共同生活は当然困難になる。
そんな部族を率いて早ふた月。情勢も落ち着いてきたことだし、そろそろ族長としての荷を下ろして、Twitterのようなやり取りをしよう!────と思っていた矢先のことだ。
「何故だかみんなにいなされている気がする・・・!」
吉祥は首の毛を逆立てながらその場にばたりと伏せいった。頭を抱えるように耳の後にまで前足を回す。誰も見ていないことを再度確認して、茂みの奥で吉祥は二又の尻尾を激しく振った。
「なんで!なんでだ!私何かしたか!?確かに一週間前はぱぱさんにツキノコ付けて遊んじゃったし、一昨日は寝てるチリーレインの鼻にダンゴムシ詰めたし、昨日はナイトリーフの尻尾とアスターハートの尻尾あやつなぎしたけど!したけどさ!」
だからってこれは酷いだろ!と吉祥は頭を地面に押し付ける。
今朝はいい風が吹いていた。涼やかな風が黒い毛を逆立て、陽炎のように揺らめかせていた。気持ちのいい朝に吉祥は喉を鳴らし、久しぶりに誰かと食事をしようと思ったのだ。最近は忙しくて殆ど喉に押し込めるようにリスを頬張ってばかりいたので、折角だしライトニングキットを誘おう、と意気込んだ──
────のだが。
「や、ちょっと今は・・・」
瞳を歪めて申し訳なさそうに立ち去る、ライトニングキットの金色の背中を呆然と見送ることしか出来なかった。
・・・?
ま、まあこんな事もあるだろう。彼女は今日はパトロールも早朝の狩りも入っていなかったはずだが。吉祥と別れた今も暇そうにキャンプをひとりで歩いているが。
きっと何かあるのだろう。一つ頷き、吉祥は人気のないキャンプを見渡してから、ひとりで食事をした。
昼は木漏れ日の煌めく暖かな風が吹いていた。
こんな和やかになる日は久しぶりだ。内政ばかりではなく誰かと狩りでもして、獲物の数を競おうか。
木陰で横になって話しているシアクラウドとパーシモンシード、フロストテイルを見つけ、吉祥はゆっくりそちらに向かって歩き出した。フロストテイルが地面に絵でも描いているのだろう、額を寄せあって笑う姿は楽しそうだ。吉祥は鼻で息を吐き出してから、「おい」と呼びかけた。
「今日はいい天気だな。良かったら、久しぶりに一緒に狩りでもどうだい?」
笑いかける吉祥だったが、対照に苦い顔をしたのは、旧友のフロストテイルだった。
彼は「あー」と唸ると、ちらりとシアクラウドと目線を交えてから吉祥に向き直った。
「悪いけど、私ら今忙しいんだ」
「すみません」
フロストテイルに言葉を添えるパーシモンシードがぺこりとお辞儀をする。丁寧な動作に何も言えず、吉祥はぎこちない動きで後に下がった。
「い、いや、いいんだ。ああ、忙しいもんな。すまん。うん、じゃあまた」
口の端を歪めて言葉を零し、吉祥はまたゆっくりと背中を向けてその場から歩き出す。途中、一言でも声をかけてくれまいかと耳を立てたりもしたが、望んでいた彼らの声は聞こえてこなかった。
そのまま不貞腐れるようにして森に出てウサギの穴に後ろ足をはめ、やっと抜け出せたと思ったら突然襲いかかってきたカラスに驚いて坂を転がり、華麗に起き上がれたと思ったらハトをくわえたヒーステイルとドーンフロストに激突して川に突き落とし怒られてしまった。本当に散々な目にあった。
何だか帰りづらくなって茂みの奥でこうして伏せてるわけだが、体が泥臭くて敵わない。ハーブの香りの看護猫を思ってため息を吐いた。
「・・・もう日暮れか」
茂みの隙間から差し込むオレンジ色の光にきゅっと目を細める。眩しい陽の光はは容赦なく吉祥の瞳を突き刺した。
本当に、散々だ。
お気に入りのふかふかの寝床は何日か前に跡形もなく消えてしまったし、食事は拒否られるし、狩りだって一緒にしてもらえない。今日は自分たちで捕った獲物で擬似的な宴会でも開いて仲間たちと騒ごうと思っていたのに、きっと集会を開いても、今の自分じゃ吃ってしまうだけだろう。
────そもそも集まってくれないかも。心の内でこっそり弱音を吐き、吉祥は組んだ前足の間に顔を埋めた。
明日誘えばみんな相手にしてくれるのだろうか。今から速攻で帰ったら、みんな出迎えてくれるのだろうか。心配したと、どうしたんだと声をかけて、私の失敗を笑ってくれるのだろうか。
明日も断られてしまったらどうしよう?何か気に触ることでもしたのだろうか。
ツキノコを生やされたぱぱさんもきっと怒っているだろう。内緒で背中の毛を可愛く枯葉で彩ってしまったエルフにも、寝床にカブトムシを仕込んでしまったフォナイフセイブルにもちゃんと謝って、それから ───それから、
「吉祥さん?」
がさり、と掻き分けられた茂みに咄嗟に目を瞑った。鮮明になったオレンジの光が瞼を焦がす。
最終編集者 ヒーステイル [ Sat Aug 04, 2018 4:59 pm ], 編集回数 2 回
ヒーステイル- 副長
- 投稿数 : 282
Join date : 2015/05/17
Re: ウォリクラ物語 短編集
【族長の誰からも構われない日】····2
「吉祥さん」
その声に、そうっと目を開けた。
目の前にいたのは、目を吊り上げるヴァイオレットフォックスと、穏やかにこちらを見下ろすフォナイフセイブルだった。
困惑する吉祥をヴァイオレットフォックスが茂みから押し出し、尻尾で耳を払った。
「もう、こんなところで何やってるんですか。茂みの中に黒い塊が見えた時、ついに死んだか!ってびっかりしたんですよ!」
「いや、死んでないけど・・・」
「見たらわかりますよ、吉祥さん。すずねさんすごく心配してらしたんですから。さあ、帰りましょう」
フォナイフセイブルの言葉に、吉祥はふらりと立ち上がる。歩みの遅い吉祥を急かすようにヴァイオレットフォックスが後ろについた。
キャンプにつくと、色とりどりの瞳が一斉にこちらを振り返った。ぎくり、と身を強ばらせ、吉祥は目を丸くする。
朝自分の誘いを断ったライトニングキットも、自分からすぐ顔を背けた旧友も、仲間みんなが吉祥の帰りを待っていた。スノーウィングが立ち上がって「おかえりなさい」と言い、ホワイトハートがこちらに駆け寄ろうとして何も無いところで転び、バク転をしながらウォーターロアーにぶつかっている。
「あれ?みんな怒ってたんじゃ」
「何言ってるんですか!早くこっちへ」
からからと笑ったスノーレパードファーに促され、キャンプの中央に行く。そこには、ハトの羽や新しい苔、軽そうな枯れ葉で作られた、柔らかそうな寝床があった。
「これ、みんなで見つけたんですよ!」
そう得意げに言ったのはエルフだ。
「最近吉祥さん大変そうだったから、少しでもお礼をしようと思って!」
とジェイホープがはにかみながら言う。
「折角だからサプライズにしよう!って話してたんですが…」
ホワイトクラウドが耳を寝かせて申し訳なさそうに視線を落とした。
吉祥は口をポカンと開けたまま、彼らを見渡した。
怒っていたわけでも、呆れたわけでもなかったんだ!彼らは吉祥にサプライズを仕掛けようとだんまりを決め込んでいただけで、吉祥を無視しようもいう意図はなかったわけだ。
「まったく」
ヴァイオレットフォックスが優しく目を細め、吉祥の肩をつん、とつついた。
吉祥はゆっくり頷き、一族に向き直る。集会を呼びかける時のようにしゃんと胸を張った。
「みんな・・・まさか俺のためにこんなことをしていてくれたなんて。この寝床を見つけたのは一体誰だい?」
「チリーレインよ」
チリーレインの方に目を向ければ、彼は照れたように目を背けながらぶっきらぼうに言った。
「まあ、何だかんだ言ってあんたには世話になってるしな・・・キャンプの端っこで見つけたんだ。日に当たってぽかぽかしてたし、少しでもあんたが気持ちよく寝れるように、ってさ」
「チリーレイン・・・」
吉祥の目線を、よせやいとチリーレインは尻尾で振り払って体を丸める。
そっと微笑んだ族長を、一族は輝きを詰めた瞳で見つめた。
「みんなありがとう。キャンプの端で寝床を見つけるなんて・・・ああ、びっくりしたよ。
それ俺が天日干ししてた愛用の寝床じゃねーか!!なに盗ってんだお前無くしたと思っただろ!!」
チリーレインは一週間マタタビ抜きの刑に処された。
「なにニヤニヤしてるんですか?」
「ニヤニヤしてないよ」
「すごく嬉しそうですよ、顔」
「・・・そりゃ嬉しいからね。すっごい不安だったんだからね、言っておくけど」
「すみません。不安にさせるつもりはなかったんですけど」
「ほんとかなぁ」
「ほんとですよ」
「・・・なら良かった。寝床はまあ、窃盗事件紛いだったけどさ。ほんとに嬉しかったんだよ俺」
「ふふ、わかってますって。わたしは吉祥さんのこと何でもお見通しなんですから!」
「そっか・・・はは、じゃあカブトムシ仕込んだのが俺っていうのも、もうバレてるんだね」
「は?」
「え?」
「吉祥さん」
その声に、そうっと目を開けた。
目の前にいたのは、目を吊り上げるヴァイオレットフォックスと、穏やかにこちらを見下ろすフォナイフセイブルだった。
困惑する吉祥をヴァイオレットフォックスが茂みから押し出し、尻尾で耳を払った。
「もう、こんなところで何やってるんですか。茂みの中に黒い塊が見えた時、ついに死んだか!ってびっかりしたんですよ!」
「いや、死んでないけど・・・」
「見たらわかりますよ、吉祥さん。すずねさんすごく心配してらしたんですから。さあ、帰りましょう」
フォナイフセイブルの言葉に、吉祥はふらりと立ち上がる。歩みの遅い吉祥を急かすようにヴァイオレットフォックスが後ろについた。
キャンプにつくと、色とりどりの瞳が一斉にこちらを振り返った。ぎくり、と身を強ばらせ、吉祥は目を丸くする。
朝自分の誘いを断ったライトニングキットも、自分からすぐ顔を背けた旧友も、仲間みんなが吉祥の帰りを待っていた。スノーウィングが立ち上がって「おかえりなさい」と言い、ホワイトハートがこちらに駆け寄ろうとして何も無いところで転び、バク転をしながらウォーターロアーにぶつかっている。
「あれ?みんな怒ってたんじゃ」
「何言ってるんですか!早くこっちへ」
からからと笑ったスノーレパードファーに促され、キャンプの中央に行く。そこには、ハトの羽や新しい苔、軽そうな枯れ葉で作られた、柔らかそうな寝床があった。
「これ、みんなで見つけたんですよ!」
そう得意げに言ったのはエルフだ。
「最近吉祥さん大変そうだったから、少しでもお礼をしようと思って!」
とジェイホープがはにかみながら言う。
「折角だからサプライズにしよう!って話してたんですが…」
ホワイトクラウドが耳を寝かせて申し訳なさそうに視線を落とした。
吉祥は口をポカンと開けたまま、彼らを見渡した。
怒っていたわけでも、呆れたわけでもなかったんだ!彼らは吉祥にサプライズを仕掛けようとだんまりを決め込んでいただけで、吉祥を無視しようもいう意図はなかったわけだ。
「まったく」
ヴァイオレットフォックスが優しく目を細め、吉祥の肩をつん、とつついた。
吉祥はゆっくり頷き、一族に向き直る。集会を呼びかける時のようにしゃんと胸を張った。
「みんな・・・まさか俺のためにこんなことをしていてくれたなんて。この寝床を見つけたのは一体誰だい?」
「チリーレインよ」
チリーレインの方に目を向ければ、彼は照れたように目を背けながらぶっきらぼうに言った。
「まあ、何だかんだ言ってあんたには世話になってるしな・・・キャンプの端っこで見つけたんだ。日に当たってぽかぽかしてたし、少しでもあんたが気持ちよく寝れるように、ってさ」
「チリーレイン・・・」
吉祥の目線を、よせやいとチリーレインは尻尾で振り払って体を丸める。
そっと微笑んだ族長を、一族は輝きを詰めた瞳で見つめた。
「みんなありがとう。キャンプの端で寝床を見つけるなんて・・・ああ、びっくりしたよ。
それ俺が天日干ししてた愛用の寝床じゃねーか!!なに盗ってんだお前無くしたと思っただろ!!」
チリーレインは一週間マタタビ抜きの刑に処された。
「なにニヤニヤしてるんですか?」
「ニヤニヤしてないよ」
「すごく嬉しそうですよ、顔」
「・・・そりゃ嬉しいからね。すっごい不安だったんだからね、言っておくけど」
「すみません。不安にさせるつもりはなかったんですけど」
「ほんとかなぁ」
「ほんとですよ」
「・・・なら良かった。寝床はまあ、窃盗事件紛いだったけどさ。ほんとに嬉しかったんだよ俺」
「ふふ、わかってますって。わたしは吉祥さんのこと何でもお見通しなんですから!」
「そっか・・・はは、じゃあカブトムシ仕込んだのが俺っていうのも、もうバレてるんだね」
「は?」
「え?」
ヒーステイル- 副長
- 投稿数 : 282
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