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Memory of Flower[完結]

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投稿 by アイルステラ Sat Jan 18, 2020 12:59 pm

Memory of Flower



ペタルドロップの16歳の誕生日に、この物語を捧げます。
Happy birthday!!!




~説明~

 猫達は、それぞれ、生まれながらに自分だけの能力を持っている。
   そして、その能力は互いに見せ合わないことを礼儀としていた。
 一族には、代々王として一族を導く役割を担う猫の家族がいる。
 周りの一族とは争いが絶えず、王が暗殺されることもあり、部族が消えてしまうことも多々あった。
    また、王家に子供が産まれた時は、忙しい両親の代わりで、その子猫それぞれに子守り役 兼 教育役を担う若い猫がつく。
     後に、王への助言や補佐もする。




~主要登場猫紹介~

 フルールスリート  〔みぞれ花〕
  <花の使い>
  銀色に濃く太い縞
  アステル族の王家の一人娘

 アクアステラ    〔水の星〕
  <記憶の使い>
  濃い青色
  フルールスリートの子守役 兼 教育役の若い雄猫

 ムーンルキス    〔月の光〕
  <風の使い>
  こげ茶色と白
  ネージュムーンの双子の兄

 ネージュムーン   〔雪の月〕
  <香りの使い>
  薄茶色と白
  ムーンルキスの双子の弟




【はじめに】

   こんにちは!アクアステラです♪
今回の “Memory of Flower ” は、私の初の個人小説です!

書き始めたのは去年の6月辺りで、“雪の結晶” と同時進行で書いていました。
ペタルドロップの誕生日プレゼントとして書いた小説なのですが、他の方々にも読んで欲しいと思い、投稿しようと考えました。

編集等色々ある関係で、一日に投稿できる量は少なくなってしまうのですが、毎日投稿する予定ですので、気長にお付き合いいただけると嬉しいです♪
コメントなどいつでも募集中です!


それではどうぞ!!!


最終編集者 アイルステラ [ Wed Apr 15, 2020 5:13 pm ], 編集回数 1 回

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投稿 by アイルステラ Sat Jan 18, 2020 1:00 pm

【序章】1

 部屋の外は凍えるような寒さだが、部屋は暖かい空気に包まれている。
星が煌めく夜、新しい命が産まれた。

「アステル族へようこそ。」

「綺麗な子だな。」

2匹は身を寄せ合いながら、産まれたばかりの子猫を誇らしげに見つめる。
不意に子猫の周りに緑がのびてきた。
あっという間につぼみがつき、花が開く。

「この子は<花の使い>なのね。」

「俺達の子供にピッタリの素敵な能力だ。」

雄猫は連れ合いの頭を愛情を込めて舐める。
2匹の吐く温かい息がそっと花を揺らした。

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投稿 by ペタルドロップ Sat Jan 18, 2020 1:02 pm

新小説おめでと〜✨ もう読んだけど(笑) 誕生日に送ってくれたとき本当に嬉しかった♪
私も早く書き終えたい!(実は私も個人の小説を書いているのですが、なかなか進まないんです...(笑))
たくさんの人がこのアイルステラの小説に引き込まれますように! いい話ですよ〜
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投稿 by アイルステラ Sun Jan 19, 2020 12:21 am

ペタルドロップ wrote:新小説おめでと〜✨ もう読んだけど(笑) 誕生日に送ってくれたとき本当に嬉しかった♪
私も早く書き終えたい!(実は私も個人の小説を書いているのですが、なかなか進まないんです...(笑))
たくさんの人がこのアイルステラの小説に引き込まれますように! いい話ですよ〜

ペタルドロップありがとう♪
ペタルドロップの小説、ずーっと楽しみに待ってるんだけどね~?笑

まだまだ文章力が不足しているのですが、暖かく見守って頂けると幸いです!

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投稿 by アイルステラ Sun Jan 19, 2020 10:59 am

【序章】2

 柔らかい日差しが差し込む森の中、生後2ヶ月程の子猫がいる。
その横にはスラリとした雄猫の姿がある。

「どうしていつもあたしの側にいるの?」

幼い銀色の子猫が濃い青色の猫に尋ねる。

「あなたを守るためですよ。」

若い雄猫は丁寧に答える。

「どうしてあたしを守るの?」

「あなたが一族にとって大切な猫だからですよ。」

幼い子猫はよくわからない、というような顔をする。
しかし、目の前をチョウが通り過ぎると、ぱっと目を輝かせて追いかけ始める。
楽しそうに走り回る子猫を、雄猫は嬉しそうに見つめた。



 午後の光がいくらか薄れ、辺りに夕暮れの気配が混じりはじめた。

「そろそろ帰りましょうか。」

「え~、もう帰るの?」

子猫は、拗ねたように口を尖らせながら言った。

「ほら、もう夕暮れですよ。遅くなると、お父様とお母様が心配されます。」

「アクアステラがいるから大丈夫でしょ!」

「帰りましょう。」

雄猫は優しく言った。



 「ただいま~!」

「ただいま戻りました。」

空き地の一番奥に作られた部屋に2匹は脚を踏み入れた。

「お帰りなさい、フルールスリート。アクアステラもありがとう。」

柔らかな寝床の上で毛繕いをしていた白色の雌猫が顔を上げて、自分の娘をしっぽで招いた。
フルールスリートは母猫のお腹に体をくっつける。

「今日は何をしたの?」

「えっとね、えっとね、チョウチョがいた!!!」

「あら!よかったわね。」

部屋をそっと出ようとしたアクアステラに母猫はちらっと顔を上げて会釈した。

「すっごく綺麗だったの!!!それで─────」

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投稿 by アイルステラ Mon Jan 20, 2020 7:26 am

【序章】3

 美しく成長した雌猫が空き地の真ん中で呆然としている。
まだ幼さの残るその顔には、絶望の色が浮かんでいた。
その横には、立派に成長した雄猫がいる。

「お母様...お父様...どうして...」

「フェネストラ、何があったんだ!どうして...こんなことに...」

アクアステラが2匹を運んできた猫のうちの1匹に問い掛けた。

「ブリューム族との境界線で...」

雄猫は下を向いて首を振った。
一族からどっと怒りと悲しみの声があがる。
アステル族を導く存在が殺された。

空き地を冷たい風が吹き抜けた。



 「フルールスリート様...?」

アクアステラは部屋に向かってそっと声をかけた。
ゆっくり部屋の中に入ると、ぎゅっと身体を丸めているフルールスリートがいる。
アクアステラが部屋に入ってきたのを感じたのかフルールスリートは目を開いた。
しかし、その目からは止めどなく涙が溢れている。

「私は...どうすればいいのでしょう...」

「これからアステル族を導いていくのはフルールスリート様です。」

アクアステラは悲しみを必死に押し殺して言った。
自分の役割──王家に仕え、王家に助言すること、そして、王家の猫を守ること──を果たすために。
目の前にいる猫は、まだ少女と言ってもいいほどに幼い。
アクアステラは、幼いながらも一族を導く役割を背負わされた猫を命を懸けてでも守ろうと心に誓った。

「アクアステラ...あなたにお願いがあります。」

不意にフルールスリートが言葉を発した。

「なんでしょうか。」

「私を残してどこにも行かないでください...」

目にいっぱいの涙を溜めながらもフルールスリートはアクアステラを見つめた。
父と母がいなくなってしまっても、少女の時は進んでいく。

「もちろんです。」

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投稿 by アイルステラ Tue Jan 21, 2020 7:44 am

【序章】4

 風のない昼下がり、空き地を漂う空気さえも、静かな温もりに包まれている。
久しぶりの春の日差しに猫達は思い思いに寝そべっている。

「どこに行かれるのですか?」

アクアステラは空き地を横切るフルールスリートに声をかけた。

「ちょっと脚を伸ばしに行こうかと思いまして。来てくれるのですか?」

「フルールスリート様を守るのが私の役目です。」

フルールスリートは空き地から出ると、特にどこに向かう様子もなく、気持ち良さそうに歩いている。
アクアステラはフルールスリートと体一つ分空けて、後ろからついて行った。
森の草木も太陽に照らされて、生き生きとしている。



 西に傾いた太陽が静かな湖面に金色の影をキラキラ落とす。
フルールスリートは、その様子をじっと見つめている。

「フルールスリート様。そろそろ...」

アクアステラの声に、フルールスリートは振り返る。
帰るように促すアクアステラの言葉をフルールスリートはしっぽで遮り、隣に来るようにしっぽで招いた。
きっちりしっぽ1本分の距離を空けて腰を下ろしたアクアステラに、フルールスリートはもっと近づくように合図する。
アクアステラはためらいがちにフルールスリートの側に座り、一緒に夕日を眺める。

「夕日が綺麗ですね。こんなに綺麗だと、何も心配事がないような気がしてきます。」

アクアステラは耳をぴくっと立てたが、何も言わずに夕日を見つめた。

「私はいつもあなたには支えてもらってばかりですね。たまにはあなたも自由に過ごしてみたらどうですか?」

フルールスリートは微笑みながら言った。

「フルールスリート様...」

「何ですか?」

「先ほどの言葉は...」

そこまで言いかけて、アクアステラは口をつぐんだ。
そして、何でもない、というように首を振った。

「そのままの意味ですよ。」

夕日が2匹を柔らかく包んでいた。

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投稿 by アイルステラ Wed Jan 22, 2020 7:49 am

第1部
【第1章】1

 四方八方から唸り声と悲鳴が聞こえる。アステル族が長年暮らしてきた空き地が、今、戦場と化している。空き地の端の方で、長く引っ張った警戒の声が聞こえた。その声と同時に、更に多くの敵の戦士が空き地になだれ込んできた。戦況は、敵の圧倒的有利で、アステル族は長老さえも子猫を庇って必死に戦っている。

茂みに身を潜めていたフルールスリートの前に、傷だらけの雌猫が落ちてきた。

「グレイスシエル!!!」

フルールスリートは慌てて駆け寄り、雌猫の匂いを嗅いだ。傷は深く、雌猫は立ち上がろうとして地面に倒れ込んだ。

「フルールスリート様!ブリューム族の戦士が多過ぎます!このままでは...!」

毛とかぎ爪が舞う狂乱状態の真ん中を、肩から血を流しながらアクアステラが駆け抜けて来た。フルールスリートは横で倒れ込んでいるグレイスシエルを見て、空き地を見回して、しっぽを震わせた。少しの間の後、フルールスリートが呟くように言った。

「アクアステラ、ブリューム族の狙いは恐らくこの私の命でしょう。これ以上アステル族から犠牲を出したくありません。」

その言葉を聞き、アクアステラはぞっとしたように目を見開いた。

「私が行け────」

「だめ!!!」

フルールスリートの言葉がグレイスシエルに遮られた。グレイスシエルは痛みに顔をしかめながらも、なんとか身体を起こしてフルールスリートの前に立った。フルールスリートの目をしっかり見つめ、苦しげに言葉を紡ぎ出す。

「分からないのですか?みんな...アステル族の全員が!フルールスリート様に生きていて欲しいと願っているのですよ!!!なぜ皆が逃げずに戦っているのかわかりますか?あなたはアステル族の王家の猫です。皆、今までアステル族を導いてきてくれたフルールスリート様が大好きなんです!!!だから逃げずに戦っているんです!!!あなたが逃げたという言葉を聞くために!!!」

そこまで言うと、グレイスシエルは最後の気力を振り絞って戦場に走って行った。フルールスリートは涙を流していた。

「まさか...私が...こんなに大切に思われていたなんて...」

「フルールスリート様...」

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投稿 by アイルステラ Thu Jan 23, 2020 7:42 am

【第1章】2

 「見つけたぞ!!!」

突然茂みに飛び込んできたブリューム族の若い戦士をアクアステラは思い切り引っ掻いて、茂みから追い出した。

「フルールスリート様!もう時間がありません!!!逃げてください!!!」

「でも...みんなは...」

「フルールスリート様が逃げたと聞けば、皆も逃げるでしょう!どちらにしろ...ここにはもう住めないでしょうから...」

アクアステラは空き地をちらっと見て肩を落とした。その時、茂みの外が急に騒がしくなってきた。

「あそこだ!あそこに居たぞ!!!」

少し前に茂みに飛び込んできた戦士が仲間に呼びかけているのが聞こえる。ブリューム族の戦士が茂みに向かおうとしているのを、アステル族の戦士が必死に遮っている。

「気付かれたか...」

アクアステラは大きく深呼吸をして、フルールスリートの目を見つめた。

「私が囮になります。ブリューム族が私を追い始めたら、逆の方向に逃げてください。私が囮だと気付かれるのは時間の問題でしょう。それまでに、できるだけ遠くに。」

「でも、それって!!!あなたが..........」

「いいんですよ。あなたを守るのが私の役目です。」

アクアステラのあまりにも落ち着いた目を見て、フルールスリートは耳を震わせた。

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投稿 by アイルステラ Fri Jan 24, 2020 7:36 am

【第1章】3

「あなたのためならば、死んでもいいんです。」

アクアステラが不意に言った。

「あの時の返事、遅くなってしまいました。このような状況だからこそ、素直に言うことができます。」

アクアステラは切なげに微笑んだ。

「こんな時に言われても...困ります...」

フルールスリートは涙を流しながらも必死に笑顔を作った。フルールスリートの涙が地面に落ちた。すると、その場所から美しい花が一輪咲いた。

「あなたは <花の使い>だったのですね。」

そう言いながら、アクアステラはフルールスリートの額に鼻で触れた。その瞬間、フルールスリートの脳裏にアクアステラとの思い出が光のように蘇ってきた。最後に夕日の光が煌めいてフルールスリートは目を瞬かせた。

「あなたは...」

「私は <記憶の使い>です。」

フルールスリートの言葉を引き継いでアクアステラは言った。フルールスリートは自分で咲かせた花をそっとアクアステラの耳の後ろにさした。

「最後に一つだけ我が儘を言っていいですか?」

アクアステラはその言葉に答えず、フルールスリートの耳元で囁いた。その言葉は激しい戦いの音の中でもはっきりと聞こえた。
























「フルールスリート、愛しています。」

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投稿 by アイルステラ Sat Jan 25, 2020 7:46 am

【第1章】4

アクアステラはさっと茂みから走り出る。そして、一度も止まることなく、空き地の外に走って行った。

「逃げたぞ!!!追え!!!」

ブリューム族の戦士はアクアステラを追い掛けて行った。フルールスリートは全速力でアクアステラと反対の方向に走った。

涙は止めどなく溢れる。自分のために命を投げ出している仲間達のことを思うと、きびすを返して住み慣れた空き地に帰りたくなる。しかし、グレイスシエルとアクアステラの言葉がフルールスリートを動かし続けていた。



 日が暮れて来ても、足を止めず、フルールスリートは走った。肉球が切れて血が出ているが、そんなことが気にならないほど、フルールスリートは打ちのめされていた。
結局、フルールスリートは2日間走り続けた。



 走り始めて3日目の夜。
フルールスリートが走っている場所は、既にどの部族の縄張りでもなかった。

「あっ!!!」

フルールスリートの声が闇に飲み込まれる。必死に爪を立てようとするが、もろい土壁はボロボロと崩れていき、フルールスリートは成す統べもなく、滑り落ちて行った。

底にぐったりと横たわるフルールスリートの身体には、イバラで引っ掻かれた傷がたくさん付いている。微かに脚を震わせて、フルールスリートは意識を手放した。








彼女はあまりにも多くの物を無くしてしまった。


住み家。家族。仲間。そして、愛する者さえも。

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投稿 by アイルステラ Sun Jan 26, 2020 9:22 am

【第2章】1

 木漏れ日の下を、2匹の雄猫が肩を並べて歩いている。太陽は一番高い所に上っていて、木々の間を吹き抜ける風が気持ち良い。

「ネージュムーン、この辺でそろそろ休憩するか。」

「ああ。今回は僕だよね。行ってくる。」

ネージュムーンは足音を忍ばせて、近くの下生えに消えた。もう一匹の雄猫はフーッと大きく息を吐くと、座り込んで脚を伸ばし、毛繕いをしながら弟が狩りから帰ってくるのを待った。



───そろそろ帰ってきてもいい頃だな。

その時、慌てたように茂みを走り抜ける音が聞こえた。

「ムーンルキス!!!」

切羽詰まった様子の声を聞き、ムーンルキスはぱっと立ち上がった。

「どうしたんだ?」

「ああ!良かった!!!急いでこっちに来てくれ!!!」

ネージュムーンはくるりと向きを変えて、来た道を引き換えしていく。

「干上がった川底に倒れている猫を見つけたんだ。相当弱ってるみたいで...」

走りながらネージュムーンは早口で説明する。倒木を飛び越えて、向こう側に降り立ったムーンルキスは慌てて止まった。森の木々が無くなり、目の前がぱっと開けている。

ムーンルキスの足元には高さのある土手が広がっていた。今は干上がっているが、元は割と大きな川だったらしく、対岸まではかなり距離があった。ネージュムーンはその土手に沿って走っていく。

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投稿 by アイルステラ Mon Jan 27, 2020 7:42 am

【第2章】2

「あそこ。」

土手に沿って大きく曲がった所でネージュムーンは脚を止めた。対岸の土手の下に1匹の猫が倒れている。ムーンルキスは川底に下りようと、土手の淵に脚をかけたが、その足元から土はボロボロと崩れていく。ムーンルキスは脚を取られそうになり、急いで後ろに下がった。

「下りることはできても、戻れなくなる可能性があるな。」

ムーンルキスの声にネージュムーンも不安そうに頷きかけたが、はっと兄を見る。

「ムーンルキスの風で────」

「無理だ。」

ネージュムーンの言いかけた言葉をムーンルキスはあっさりと否定する。

「いくら俺が <風の使い>でも...そうか!」

言いかけたムーンルキスだったが、さっとしっぽを振った。兄の言葉を待ちかねるように、ネージュムーンが地面を引っ掻いた。

「ネージュムーンは、登りやすい場所を探してきてくれ。その間に俺は怪我の具合を確認しておく。」

「でも、ここ、川底まで割と高さあるよ?」

「まぁ、見ててくれよ。」

ムーンルキスは不適に微笑み、土手から身を踊らせた。ムーンルキスは空中で自身の能力を使って風を起こす。その風に包まれて、ムーンルキスは軽々と地面に着地した。

「ムーンルキス、さすがだな!」

「ネージュムーン、そっちは頼んだ!ついでに使えそうな薬草があったら取っておいてくれ!」

兄弟はさっと視線を合わせてから、それぞれ走り出した。そこには確かな固い絆がある。

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投稿 by アイルステラ Tue Jan 28, 2020 7:44 am

【第2章】3

 ムーンルキスは倒れている猫の元にさっと駆け寄り、匂い嗅いだ。眠っているのか、意識はない。雌猫の身体には無数の傷があり、血は止まっているが、肉球には切れた後がある。ざっと体中を調べて、大きな傷がないことを確認すると、ムーンルキスはほっとして溜め息をついた。

傷を清潔にしようと考え、ムーンルキスは肉球を舐め始める。周りの様子からして、半日程前から彼女は倒れていたようだ。体の切り傷を舐めていると、茶色だと思っていた毛皮は汚れていただけだということが分かってきた。

ネージュムーンが薬草をくわえて合流した頃には、雌猫は銀色に濃い縞のある、美しい姿になっていた。



 「ムーンルキス!!!」

息を切らしながら駆け寄って来た弟は、薬草を地面に置くと、そっと雌猫の匂いを嗅いだ。

「意外と大丈夫そうだね。」

「嫌、そうとも言えない。」

ムーンルキスは険しい顔をして言った。

「さっきから身動き一つしないんだ。俺達が話している声にも全く反応していないだろ?」

「言われてみれば...」

ネージュムーンも心配そうに雌猫を見る。

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投稿 by アイルステラ Wed Jan 29, 2020 7:43 am

【第2章】4

しばらく2匹は黙っていたが、ネージュムーンが沈黙を破った。

「少しくらい旅を中断してもいいんじゃないか?せめて、意識が戻るまで。」

ネージュムーンは兄の顔をちらっと見ながら言った。

「それがいいいかもな。このまま残していくのは気が引ける。」

少し考えた後、ムーンルキスは言った。ネージュムーンも力強く頷き、足元に置いていた薬草を広げた。

「この怪我に使えそうなのは、マリーゴールドだよね。この肉球にはヒレハリソウがいいんだけど...見当たらなかった気がする。」

「ヒレハリソウの代わりに、ニセホウレンソウでもいいんだったよな?」

ムーンルキスはそう言いながら、弟が持ってきた薬草を覗き込んだ。エニシダ、ルリチシャ、マリーゴールドがクモの巣に包まれている。

「探したらあるかもしれないけど、今ない物は仕方がないよ。とりあえず、マリーゴールドを塗ろう。」



 2匹がマリーゴールドを塗り終わった頃には、日が傾きかけていた。

「ネージュムーン、登れそうな場所は、遠かったか?」

「微妙なんだよね。」

ネージュムーンは顔をしかめながら言う。

「僕達で運んで行ったら、日没になるか...ならないか...」

「それなら、今夜はここで寝るか。」

「ああ、それでいいよ。」

川底を風が吹き抜ける。2匹は毛を逆立てて身を寄せ合った。

「ちょっと...」

「ああ。寒いな...」

そう言いながら、雌猫を暖めようと、雌猫を2匹でしっかり囲んだ。心なしか、雌猫の呼吸が穏やかになった気がした。

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投稿 by アイルステラ Thu Jan 30, 2020 7:50 am

【第3章】1

 サワサワと木々が風になびいている。雌猫を見つけてから一晩が経ったが、彼女はまだ目を覚まさない。今はネージュムーンが雌猫を側で見守っていて、兄のムーンルキスは狩りに行っている。近くの下生えが揺れたと思うと、ムーンルキスが獲物をくわえて姿を現した。

「お帰り。」

ムーンルキスは返事代わりにさっとしっぽを振って、獲物を置いた。

「まだか...」

「うん...」

「そろそろ起きないと、栄養不足のはずなんだが...」

兄弟は心配そうに顔を見合せる。ネージュムーンは体を起こすと、思い切り伸びをして、体を振った。その時、雌猫が微かに身動きした。2匹はそれに気付き、急いで雌猫に寄り添う。ムーンルキスは雌猫をそっと舐めはじめた。ネージュムーンは雌猫の耳元で囁く。

「起きてください。」

雌猫がゆっくりと目を開いた。琥珀色の目に光が差し込み、雌猫は眩しそうに目を細める。まだ焦点の合わない目は空を見上げ、それから2匹の兄弟をぼんやりと見つめた。

「良かった!ようやく目が覚めたんだね!」

ネージュムーンが嬉しそうに言う。

「気分はどうだ?」

ムーンルキスも優しく尋ねる。雌猫は幾度か目を瞬かせる。彼女の目に徐々に光が戻ってきた。

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投稿 by アイルステラ Fri Jan 31, 2020 7:51 am

【第3章】2

「名前は?」

ムーンルキスが問い掛けるも、雌猫はぼんやりしている。

「名前を教えてくれないかな?」

ネージュムーンもゆっくり話しかけた。

「フルールスリートです...」

「フルールスリートか。どこから来たんだ?」

ムーンルキスが聞くと、フルールスリートはゆっくりと首を傾けた。しばらく考えてから、フルールスリートは呟いた。

「すみません...思い出せないです...」

「...え?」

ネージュムーンが驚いて聞き返し、ムーンルキスは眉をひそめる。

「思い出せないって...」

「記憶喪失...ってことなのか...」

「何か思い出せることはないの?」

心配そうに尋ねるネージュムーンをムーンルキスはしっぽで遮る。

「それは後だ。とにかく、今は食べて、ゆっくり休んだ方がいい。」

「それもそうだね。あ、水を取って来るよ。」

「ありがとう、ネージュムーン。助かる。」

立ち上がったネージュムーンにムーンルキスはお礼を言う。そして、自分が捕ってきたハタネズミをフルールスリートの前に置く。

「食べられそうか?」

「はい。ありがとうございます。」

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投稿 by アイルステラ Sat Feb 01, 2020 7:33 am

【第3章】3

 フルールスリートがハタネズミを食べているのを見ていると、フルールスリートが不意に話しかけてきた。

「助けて頂いてありがとうございます。あの...あなた方は...」

「すまない、こちらの紹介をしていなかったな。俺達は旅をしているんだ。俺はムーンルキス────」

「僕はネージュムーン!よろしくね!」

ネージュムーンはさっと茂みから顔を出した。口には水を含ませたコケをくわえている。

「ちょっと!!!僕抜きで自己紹介しないでよ!!!」

「今来たからいいだろ。」

不満そうに言うネージュムーンに、ムーンルキスは冷静に返す。

「良くないよ!もうちょっと帰ってくるのが遅かったらどうするんだよ!!!」

そんな2匹の様子を見て、思わずフルールスリートから笑みがこぼれた。

「あ!笑った!!!」

ネージュムーンが嬉しそうに言う。

「仲いいんですね。」

「ああ。これでも双子だからな。」

「これでも、って。」

そう言ったネージュムーンの耳を、ムーンルキスはしっぽではじいた。

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投稿 by アイルステラ Sun Feb 02, 2020 11:49 am

【第3章】4

「俺達もそろそろ食べないか?」

「あ、水どうぞ!」

「今頃かよ。」

苦笑しながらムーンルキスが呟いたが、ネージュムーンには聞こえなかったようだ。

「ありがとうございます。」

「そういえば、敬語じゃなくていいよ!」

ネージュムーンは嬉しそうに言い、ムーンルキスも親しげに頷く。

「でも...助けて頂いた身ですから...」

フルールスリートは渋るが、ネージュムーンは食い下がる。

「普通にしてくれてた方が接しやすいしさ!ね?お願い!!!」

「ネージュムーンとムーンルキスがそれでもいいなら...」

少しの間の後、フルールスリートは言った。

「やった!」

嬉しそうにしているネージュムーンを見て、フルールスリートはふんわり微笑んだ。小さくあくびをしたフルールスリートを見て、ムーンルキスは言う。

「そろそろ休んだらどうだ?起きたばかりなのに、疲れさせてしまったな。」

「いえ。話しててとても楽しいですから!大丈夫です...大丈夫よ。」

少し迷った後、フルールスリートは言い直した。3匹は顔を見合わせてクスッと笑った。

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投稿 by アイルステラ Mon Feb 03, 2020 11:42 am

【第4章】1

 ネージュムーンは朝の光に照らされて目が覚めた。そっと目を開けると、くるっと丸まっているフルールスリートが目に入った。ようやく目を覚ましてくれて、昨日話すことが出来たが、まだまだ聞きたいことがたくさんある。


───どこから来たのか。

───なぜ倒れていたのか。

───これからどうするのか。

───そして、なぜ記憶を無くしてしまったのか...


起こさないようにそっと立ち上がったつもりだったが、フルールスリートがさっと顔をあげた。

「起こしちゃったね...寝てていいよ。」

不安そうな表情を浮かべているフルールスリートを安心させようとするが、フルールスリートの表情は晴れない。

「大丈夫だよ。フルールスリートを残して僕達はどこにも行ったりしないからさ。」

そう言いながら、ネージュムーンはムーンルキスを強く突く。

「なんだよ?」

大きなあくびをしながらムーンルキスが言う。

「フルールスリートが寂しがってるんだ。」

その言葉を聞いて、ムーンルキスはまた大きなあくびをしながらも立ち上がる。そして、横になりながらも不安げな表情を浮かべているフルールスリートに近づき、その隣に横になる。

「大丈夫だ。安心しろ。」

そう言って、フルールスリートにしっぽをかけて丸まった。ようやく安心したような顔になったフルールスリートはムーンルキスにくっついて目を閉じた。ネージュムーンはそっと下生えの中に入っていった。

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投稿 by アイルステラ Tue Feb 04, 2020 8:51 am

【第4章】2

 「フルールスリートの事を聞いてもいいか?」

食事が終わり、それぞれが口の周りを拭っている時にムーンルキスが言った。フルールスリートは神経質そうに頷いた。

「どこから来たか、覚えてる?」

ネージュムーンが聞くが、フルールスリートは即座に首を振った。

「そっか...」

「何でもいいから、覚えてることを教えてくれないか?」

フルールスリートは目をつぶって考えていたが、しばらく経つと目を開き、溜め息をついた。

「何も...本当に...覚えてない...」

ネージュムーンは慰めるようにそっと鳴いたが、ムーンルキスは何かに気付いたように小さく身を震わせる。

「なぁ...まさかとは思うが...自分の能力は分かるよな?」

ムーンルキスの言葉にネージュムーンは、はっとして目を見開く。2匹が息をのんで答えを待っていたが、フルールスリートの言葉を聞いて愕然とした。

「能力って...?何か大切な物なの?」

ムーンルキスとネージュムーンは呆然としながら顔を見合せる。2匹の反応を見て、フルールスリートは耳を寝かせた。

「私...何か大切なことを忘れてるみたいね...まぁ、思い出さえも全部忘れてるんだけど...」

フルールスリートは自嘲するように言いながらも俯いた。兄弟は顔を見合わせながら同じ事を考えていた。

───自分の名前と同じくらい...嫌、自分自身を表すと言ってもいい物を...

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投稿 by アイルステラ Wed Feb 05, 2020 12:02 pm

【第4章】3

「能力っていうのはね。」

ネージュムーンが気を取り直してそう言い、自分の能力をフルールスリートに見せようとした。それをムーンルキスがしっぽでそっと遮る。

「見せるのか?必要ではない限り、互いに能力は見せ合わないのがルールだろ?」

「今は必要な時だよ。それとも、フルールスリートが信じられないっていうのか?」

ネージュムーンは少し険しい顔をしてムーンルキスに聞き返す。

「嫌、形式上言っておいただけだ。」

ムーンルキスは言葉少なくそう言って、さっとしっぽを振った。ネージュムーンは不安そうに2匹を見ていたフルールスリートを振り返る。

「あの...見せ合わないってどういうこと?」

「それぞれ、自分だけの能力を持ってるんだ。つまり、他の猫の能力は分からないってこと。」

フルールスリートが頷いたのを確認してネージュムーンは話を続ける。

「能力はね、自慢したりするためにあるんじゃなくて、必要な時しか使わないんだ。それを今から僕が見せるね。ちょっと見ててね。」

そう言って、目をつぶった。フルールスリートが首を傾げていると、甘い香りがしてきた。胸いっぱいに吸い込むフルールスリートにネージュムーンが呟く。

「ラベンダーだよ。」

その時、爽やかな風が3匹の間を吹き抜ける。

「森の端でプルメリアが咲いてるな。」

ムーンルキスの声が響く。フルールスリートとネージュムーンが驚いてムーンルキスを見つめると、ムーンルキスは知らないふりをして3匹の周りに風で渦を作った。ネージュムーンはふっと笑い、渦の中に様々な香りを加えた。

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投稿 by アイルステラ Thu Feb 06, 2020 8:19 am

【第4章】4

 風が弱まっていき、それと同時に様々な香りも薄れてきた。完全に風が収まったときには、森はいつもフルールスリートが感じている香りに戻っていた。フルールスリートは大きな溜め息をついた。

「とても...すごいわ...能力って素晴らしい物なのね。」

「フルールスリートも持ってるんだよ!」

「ああ。思い出せないだけだ。」

うっとりとしているフルールスリートにネージュムーンとムーンルキスは言った。

「フルールスリート。」

唐突にムーンルキスが言った。

「フルールスリートはこれからどうするんだ?」

「これから?特に何も考えてないけど...ムーンルキス達はどうするの?」

兄弟はさっと目を交わして互いに頷く。

「昨日言ったこと覚えてるか?俺達は旅をしてたんだ。フルールスリートが元気になったら旅に戻ろうと思ってる。」

───2匹は私に会う前からずっと旅をしていたのね...引き止めることは無理だわ...
フルールスリートは思い、俯く。

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投稿 by アイルステラ Fri Feb 07, 2020 7:42 am

【第4章】5

「だから、フルールスリートも来ないか?」

ムーンルキスの言葉にフルールスリートは驚いて顔を上げた。

「...え?私も行っていいの?」

「これから行く当てもないだろ。」

「フルールスリートを残して行くの心配だしさ!」

目を丸くして聞くフルールスリートに兄弟は口々に言う。

「フルールスリートさえ良ければ...だが。どうだ?」

「もちろん行くわ!!!まだムーンルキスとネージュムーンと一緒に居れて嬉しいもの!」

フルールスリートが目を輝かせて言ったので、兄弟は安心した。早速ネージュムーンがフルールスリートに話し掛けている側で、ムーンルキスは考えていた。

───フルールスリートは記憶を無くしている...この旅で記憶を取り戻せるきっかけがあればいいのだが...少なくとも、能力を...

「ねぇ、ムーンルキス!!!今夜は僕達の冒険話をフルールスリートに聞かせてあげない?」

「聞きたい!!!」

ネージュムーンの提案にフルールスリートが早速飛びつく。

「いいんじゃないか?ついでに俺達のこれから向かう場所についても。」



空に群青色が広がり始めている。3匹は体を寄せ合って、思い思いの格好でくつろいだ。

「僕達はね────」

時々ムーンルキスが口を挟む中、ネージュムーンの話を、フルールスリートは身を乗り出すようにして聞いている。3匹の背中を淡い夕日の光が斜めに照らしていた。

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投稿 by アイルステラ Sat Feb 08, 2020 6:34 pm

【第5章】1

 朝焼けが、にじむように東の空に広がり始める。

フルールスリートは目を覚ますと、清々しい気分で空を見上げる。2匹と一緒に旅をすると決めてから、太陽が3回昇り、そして沈んだ。隣を見るとムーンルキスとネージュムーンが気持ち良さそうに寝ている。

「今日は私が...」

フルールスリートはそっと呟き、朝のしっとりとした空気を嗅ぐ。ここで暮らすのも3日目で、周りの地形はだいたい覚えた。

───2匹は今まで私の分まで獲物を捕ってきてくれていたものね。

近くから漂って来るネズミの香りに、フルールスリートはさっと身を伏せる。

イバラの茂みに沿って匂いをたどると、茂みの外側の枝の下に、落ち葉を掻き回している小さなネズミの姿が見えた。ネズミは木の実を探すことに夢中になり、フルールスリートが忍び寄ることに気付いていない。

ほどなくして、フルールスリートは獲物を捕らえた。



 そっと下生えを押し分けて寝床を作っている小さい空き地に足を踏み入れる。

「フルールスリート?」

寝ぼけた声でネージュムーンが言った。大きなあくびをしているネージュムーンに近づき、側に捕ってきたツグミを置く。

「フルールスリート!狩りに行ってたの!?」

驚きで目を丸くして言うネージュムーンにフルールスリートは得意そうに答える。

「ネージュムーン達が寝てたからよ!意外とたくさん捕れたの!!!」

そう言いながら、まだとろんとした目をしているムーンルキスの側にもネズミを置く。

「お帰り、フルールスリート。体の調子はどうなんだ?」

「全く問題ないわ!今日はすごく体が軽くて!」

そう言って、フルールスリートはネズミを食べ始める。

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