Memory of Flower[毎日更新]

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投稿 by アイルステラ on Sat Mar 14, 2020 2:25 pm

【第18章】1

床の上で眠っていたムーンルキスは、隣の檻を開くガチャガチャという音で目を覚ました。あと少し経てば、人間はムーンルキスに檻に戻るように声を掛けるだろう。しかし、今は他の猫達を見守っているため、もう少し自由にしていられそうだ。

今は夕方のようで、オレンジ色の光が室内を優しく照らしている。ムーンルキスはひんやりとしたフローリングの床の上で大きく伸びをし、窓辺に座っているクォーツの方へ向かった。ムーンルキスが近付く気配を感じたのか、クォーツがゆっくりと振り返る。

「ムーンルキス、今日の夕日、すごく綺麗よ。」

そう言って、小さく尻尾で招いた。ムーンルキスは窓の下に置いてあった箱を使い、クォーツの横に飛び乗る。クォーツの言ったように、太陽が今まさに美しく輝きながら、海へ沈んでいくところだった。



「ムーンルキス。」

夕日を眺めていたムーンルキスにクォーツが静かに声を掛ける。

「そろそろ、また旅を始めるのよね?もう脚も治りかけているもの...」

質問と言うよりも断定し、自分に言い聞かせているようなその言い方に、ムーンルキスは言葉を失う。

色々な思いが沸き上がり、混乱しているムーンルキスの頬に、クォーツがそっと自分の頬をこすりつけた。驚いてクォーツを見るムーンルキスにクォーツは少し首を傾げて微笑んだ。

「次の旅の目的地は、もう決まってるの?」

ムーンルキスが首を振ると、クォーツはゆっくりと目を閉じ、歌い出した。

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投稿 by アイルステラ on Sun Mar 15, 2020 6:56 pm

【第18章】2


♪星の雫の落ちる場所

永遠(とわ) に枯れないその花は

誰に知られることも無く

満月の夜に花開く



不意に流れてきた美しいメロディーに、ムーンルキスは聴き入った。最後の音が溶け込むように空気に消えてから、ムーンルキスは目を開く。

「すごく綺麗だな...その歌は?」

クォーツはゆっくりと目を開きながらムーンルキスを見た。

「昔から伝わる歌よ。私は母から教わったの。この辺りは、よく流れ星が見られる場所。言い伝えによると、流れ星は燃え尽きても宇宙から不思議な力を運んで来るんですって。その宇宙からの力によって、不思議な力を持つ花が満月の夜に咲く。そして、その花が枯れることはない。そう伝えられているわ。」

「旅の目的地にぴったりだよ。」

そう言ったムーンルキスをちらっと見てクォーツは口を開く。

「でも、この花、絶対に存在しているとは言えないわ。ただのおとぎ話かもしれないもの。それでも大丈夫?」

「そこが分からないから面白いんじゃないか。」

ムーンルキスがキラっと目を輝かせて言う。

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投稿 by アイルステラ on Sun Mar 15, 2020 6:56 pm

【第18章】3

その時、人間がムーンルキスに向かって呼び掛けた。ムーンルキスの檻を軽く叩いている所を見ると、どうやら檻に戻って欲しいようだ。いつもなら自分から戻って行くムーンルキスだが、今日はクォーツの隣から動かない。

穏やかな声を出しながら近付いて来る人間に、ムーンルキスは初めて唸った。人間は驚いたように動きを止め、ムーンルキスは取り繕うように、尻尾をゆっくりと動かしながら目を逸らした。

人間は諦めたように溜め息をつくと、クォーツを見て静かに何かを語りかける。そして、そっと部屋から出ていった。

「ムーンルキス、どうして───」

クォーツの言葉を遮ってムーンルキスが言う。

「一緒にいると不満か?」

ムーンルキスは急いで大きく首を振るクォーツを見て微笑んだ。



すやすやと寝息をたてているクォーツを囲って、ムーンルキスは身体を丸め直す。窓の外では満天の星が輝き、流れ星が長い光の尾を引いて、斜めに堕ちていくのが見えた。

星空を背景に、風に舞い上げられた紅葉が冬が近付いていることを示している。
今ではもうすっかり聞き慣れてしまった波の音に耳を傾けながら、ムーンルキスは目を閉じた。

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投稿 by アイルステラ on Mon Mar 16, 2020 10:16 am

【第19章】1

月のない夜空に星が輝いている。

寒さに身を寄せあっているネージュムーンとフルールスリートの口からは、呼吸をする度に白い息が出ている。今は一年で最も寒い時期だ。ムーンルキスがようやく病院から出て来てから3ヶ月ほどが経過した。今夜もムーンルキスはクォーツと海辺で話している。

「ねぇ、ネージュムーン。」

「ん?どうかした?」

ネージュムーンはふわっと欠伸を聞き返す。リラックスした様子のネージュムーンを見て、フルールスリートも肩の力を抜いた。風に吹かれて枯れ葉がカラカラと音を立てる。



「冬って長いね。暖かい春が待ち遠しく感じるわ。」

小さく言葉を発したフルールスリートをネージュムーンはじっと見つめる。その深い瞳に耐え切れなくなったフルールスリートは目を逸らした。

「そんな自分の気持ちを押し殺さないでいいよ。本当は早く旅を再開したいんでしょ?」

自分の気持ちをズバリと言い当てられ、フルールスリートは耳を寝かせた。

「いいんだよ。フルールスリートがそう思うのは普通さ。クォーツの歌とあの花のことを聞いた時、どうして僕が春まで病院の近くで待とう、って言ったのか不思議に思ってない?」

「ネージュムーンはあの時、道も分からないし、山の中で冬になったら危険だからって...」

フルールスリートは小さな声で答えた。その言葉にネージュムーンは頷く。

「そう。あの時はそう言ったよ。実際にそうとも思ったからね。でも、一番は、ムーンルキスの自分の本当の気持ちをはっきりさせて欲しかったからなんだ。」

ネージュムーンはそう言って、遠くを見るような目をする。

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投稿 by アイルステラ on Mon Mar 16, 2020 10:17 am

【第19章】2

しかし、フルールスリートが分かっていないような表情をしているのに気付くと、小さく笑った。

「今、ムーンルキスはクォーツのことを僕達と同じくらい大切に思っているんだ。もしかしたら、僕達以上かもしれないけどね。」

ネージュムーンはそう言って苦笑した。フルールスリートも、ムーンルキスとクォーツはお互い相手が好きだということは気付いていたので驚かない。

「だから、クォーツと一緒に暮らそうか、それとも僕達と旅を続けるか...今相当迷っていると思うんだよね。」

フルールスリートは、ムーンルキスがそこまで考えていたとは知らなかった。目を丸くして話を聞いているフルールスリートに、ネージュムーンは軽く頷きかける。

「その気持ちが中途半端なまま、僕達への責任感のために旅に出るのはよくない。だから、ムーンルキスに自分で決めさせるために、考える時間を作ったんだ。それに...」

ネージュムーンはそう言って言葉を切った。そして、茂みの隙間からわずかに見える空を見上げて切なげに呟く。

「クォーツって...そっくりなんだ。本当に...驚くほど...」

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投稿 by アイルステラ on Tue Mar 17, 2020 12:16 pm

【第19章】3

「僕達兄弟は、元々飼い猫だったんだ。

母さんが飼い猫、父さんが旅猫。

旅をしていた父は、母に会ってお互い一目で好きになった。

母が飼い猫だったから、父は旅を続けるか、母と暮らすかで迷ったんだ。

だけど、悩んだ末に旅猫をやめて、母と暮らすことにした。

それで、僕ら双子が産まれた。

僕達は父さんが旅した、たくさんの場所の話を聞いて育った。

そのおかげで、幼い僕らは、旅に対して憧れの気持ちを持つようになった。

父さんも母さんも、旅猫になるか、飼い猫になるかは自分達で自由に決めていい、って言ってた。



月日が経って、ムーンルキスが引っ越して来た白い雌猫と恋をした。

お互いを愛していたし、若いけど、誰もが認めるお似合いのカップルだったよ。

その子のお腹に赤ちゃんができて、もうすぐムーンルキスが父親になるって時に...

どうしてそこにいたか、誰にも分からなかった。

誰のせいでもなかったんだ。


その子が道路で倒れていた。

僕達兄弟が見つけた時には、その子もお腹の子も...

それからすぐ、僕ら2匹は旅に出た。

父さん達は何も言わずに送り出してくれたよ。



2匹で旅を始めて、色々な場所に行った。

そのうち、3匹の旅になって海を目指していたら、今、彼女そっくりな雌猫が現れた。」

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投稿 by アイルステラ on Tue Mar 17, 2020 12:17 pm

【第19章】4

ネージュムーンが大きく息を吐き出した。静かな波の音が辺りを包んでいる。

「それがクォーツなんだ。」

ネージュムーンはそう言って、ムーンルキスとクォーツのいる方向をじっと見つめる。フルールスリートは茂みから出て、星の消えかかった空を見上げる。強く、頼れるムーンルキスにそんな過去があったということに、フルールスリートは動揺を隠せなかった。

「それにね。あんなことが起こってから、ムーンルキスが心から笑っているのを見ることが、今まで一度も無かったんだ。でも、最近はクォーツに心を開いてるみたいで...」

ネージュムーンも茂みを出て、フルールスリートの隣に座る。

「ごめん、急にこんな話して...」

フルールスリートは何度も大きく首を振る。そんなフルールスリートをちらっと見てから、ネージュムーンは小さく溜め息をついた。

「ムーンルキスは強いよ。だから、傷付いた心も自分の中に隠してしまうんだ...」

空からひらりと雪が舞い落ちてきた。
徐々に数が増えてきた粉雪は、一陣の風に吹かれ、美しく渦を描きながら宙を舞った。

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投稿 by アイルステラ on Thu Mar 19, 2020 2:07 pm

【第20章】1

「サクラって夜も咲いているのね。」

クォーツが枝先についている咲いたばかりの花を見上げながら言った。

「ああ。サクラはニホンっていう名前の遠い島国から人間が持ってきた木らしい。そこでは、夜でもサクラを見ながら宴を開くって聞いたことがある。」

ムーンルキスも枝先で寄り添うように花開いている2輪のサクラを見つめる。クォーツがふっと息を吐き出し、病院の玄関へと向かう。ムーンルキスは急いでクォーツを追い掛け、猫用扉の前に立ち塞がる。

「もう帰るのか?まだいつもより───」

「ええ、そうよ。あなたは明日出発でしょ?今日は早く寝ないと。」

その言葉を聞き、立てていたムーンルキスのしっぽが下がった。

約束───病院の玄関の横に立っているサクラの木。その花が開いたら、旅に戻る───の日が来てしまった。

クォーツはムーンルキスをそっと鼻でつついて扉前から優しく押し退けた。そして、扉をくぐり抜けようとしたが、後ろからかけられた言葉で動きを止める。

「なぁ...クォーツも俺達と一緒に旅をしないか?」

その懇願するような声を聞いて、クォーツは胸が潰れそうだった。ずっと聞きたかったその言葉。しかし、クォーツはムーンルキスの肩にそっとしっぽで触れると、何も言わずに猫用扉をくぐり抜ける。その間、ムーンルキスを見ることはできなかった。

───見ると、涙がこぼれてしまいそうだったから───

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投稿 by アイルステラ on Thu Mar 19, 2020 2:07 pm

【第20章】2

フルールスリートは地面に空いた小さな穴を見つめて腰を落とす。少し経つと、朝日に照らされた穴から、ネズミがゆっくりと顔を出した。フルールスリートはさらにぴったりと地面に伏せ、ネズミの動きを見つめる。

ネズミは落ち葉を掻き分け始め、そのうち小さなドングリをかじり始めた。フルールスリートは目で距離を測り、大きく一跳びする。そして、小さな悲鳴を上げたネズミに飛び掛かり、さっと仕留めた。

「フルールスリート!」

満足して鼻を舐めていたフルールスリートは、ムーンルキスの声に振り返る。すると、その声の方向の茂みがガサガサと揺れ、ウサギが飛び出してきた。フルールスリートはネズミをその場に残し、ウサギに向かって走り出す。

ウサギは慌ててくるりと向きを変えると、再び茂みに飛び込んだ。その瞬間、ウサギの驚いた声が響く。フルールスリートが息を止めて見守っていると、口に立派なウサギをくわえたムーンルキスが茂みから顔を出した。

「さすがね!ムーンルキス!!!」

「フルールスリートのおかげだ。」

そう言いながら、ムーンルキスは誇らしげに大きなウサギを見る。

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投稿 by アイルステラ on Thu Mar 19, 2020 2:08 pm

【第20章】3

ネズミとハトを置くと、フルールスリートは寝床にしていた茂みから出る。そして、病院の窓から中を覗くために、段ボールに飛び乗った。中を覗くと、クォーツがお気に入りの棚の上で丸まっている。

「クォーツ。」

フルールスリートは呼び掛け、窓ガラスを前足でそっと叩いた。クォーツがゆっくりと耳を立て、欠伸をしながら顔を上げる。窓の外のフルールスリートを見つけると、急いで棚から飛び降り、部屋から出て行った。

フルールスリートはそれを見届けると、玄関の前まで走り、クォーツを待ち受ける。軽く走る音が聞こえたかと思うと、クォーツが猫用扉を形のいい頭で押し上げながら出て来た。

「フルールスリート!」

クォーツは嬉しそうに叫ぶと、喉をゴロゴロ鳴らしながら体を擦り付けて、フルールスリートと挨拶を交わした。



「ところでどうしたの?今日は出発の日でしょ?」

ふと動きを止めてクォーツが尋ねた。昇り始めたばかりの太陽の光が差し込み、クォーツの真っ白の毛の先を金色に染める。

「そうよ。今日が出発。でも、今日でクォーツとお別れだから、朝ご飯一緒に食べないかな、って思って。どうかしら?」

フルールスリートは期待に満ちた目でクォーツを見つめる。

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投稿 by アイルステラ on Thu Mar 19, 2020 2:08 pm

【第20章】4

クォーツはぱっと目を輝かせたが、すぐにはっとした表情になる。そして、少し恥ずかしそうに口を開いた。

「でも、私、自分で獲物を捕まえたことないの...」

「大丈夫だよ───」

急に聞こえてきた声の方向を2匹が見ると、ネージュムーンとムーンルキスがゆっくりと歩いて来た。

「───もうクォーツの分も僕達3匹で捕まえてきたから。」

ネージュムーンのその言葉に、ムーンルキスとフルールスリートも笑顔で頷く。

「そうなの!最後の日なんだから、遠慮しないで!!!」

「行こう、クォーツ。」

2匹にも強く誘われ、クォーツは、はにかみながら頷いた。



フゥーっとクォーツが満足そうな溜め息をつく。

「すごく美味しかったわ!ありがとう!!!やっぱりお家で食べるご飯よりすごく美味しいわね!」

「クォーツ、家に帰った後で、間違えて病院のウサギとか食べないように気を付けてね!」

フルールスリートがおかしそうに言う。その言葉に、ネージュムーンとムーンルキスが吹き出す。

「分かってるわ!!!」

4匹でひとしきり笑い終わると、茂みの中に重い沈黙が残った。やがて、クォーツがゆっくりと立ち上がる。そして、小さく微笑んだ。

「出発の時間ですね。」

3匹はクォーツの後に続いてゆっくりと茂みを出る。日向に出ると、体がぽかぽかと温まり、フルールスリートは柔らかい日差しの下で伸びをした。





*****

すみません! 昨日忘れてしまったので今日は二日分投稿しました!

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投稿 by アイルステラ on Fri Mar 20, 2020 4:26 pm

【第20章】5

クォーツがネージュムーンに近付き、他の2匹には聞こえない小さな声で、耳に何かを囁く。その言葉に応えるように、ネージュムーンが力強く頷いた。次に、クォーツはフルールスリートに駆け寄る。

「ねぇ、クォーツ。一緒に旅に行こうよ。4匹で旅をした方が、絶対楽しいわ。」

クォーツはフルールスリートの目を見つめて首を振る。

「ごめんなさい。私は旅には行けないわ。みんなの足を引っ張ってしまうもの。」

「そんなことないわ!私達みんなで───」

フルールスリートその言葉を、クォーツはしっぽで遮る。その時ふっと漂った香りに、フルールスリートは目を見開いた。

「クォーツ...もしかして...?」

「秘密よ。」

小声で尋ねたフルールスリートに、クォーツはちらっとムーンルキスを見てから微笑んだ。そして、通り過ぎると同時に、しっぽでフルールスリートの脇腹にそっと触れた。

「またね、フルールスリート。」



「あなたは旅をするように定められた猫なのよ...私とは違うわ...」

クォーツは小さな声でムーンルキスに囁きかける。クォーツはムーンルキスの瞳の中に写っている自分の姿を見た。

「クォーツ、愛してる。」

「私もよ、ムーンルキス。愛しているわ。」

クォーツはムーンルキスの胸に頭を押し付ける。ムーンルキスもクォーツの頭に自分の頭を擦り付けた。2匹は名残惜しそうに体を離す。

「また会いに行く。」

「ええ。待っているわ。」



クォーツは去って行く3匹を見つめながら、自分の体の中に息づいている命の鼓動を感じた。こぼれかけた涙を必死にこらえて、クォーツは空を仰ぎみた。

───ねぇ、ムーンルキス。サクラがすごく綺麗よ。

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投稿 by アイルステラ on Fri Mar 20, 2020 4:27 pm

第4部
【第21章】1

再び旅を始めてから数日が過ぎた。今、歩いているのは、蛇行しながらゆっくりと流れている川の岸だ。クォーツに教えてもらった通り、3匹は海岸線を北へ進み、最初に見つけた川の上流へと向かっている。この川は、目の前にそびえ立つ高い山から流れて来ているようだ。

クォーツの言っていたこの道は、海から少し離れるだけで人間の家がまばらになり、今はほとんど見かけない。おかげで、ムーンルキス達はリラックスしながら旅を続けている。

「それにしても、あの花、どこにあるのかな?」

ネージュムーンが2匹に問い掛ける。

「あまりにも情報が少なすぎて...」

「 " 星の雫の落ちる場所 " って所しか、場所を示している歌詞はないものね。」

フルールスリートも同意する。



少し考えていたムーンルキスが、後ろを歩いている2匹を振り返る。

「クォーツは、この歌はこの辺りに古くから伝わっている、って言ってたよな。だとすると、その花について何か知っている猫がいるはずだから、その猫を探せばいいんじゃないか?」

フルールスリートが納得したように頷いている間に、ネージュムーンは周りをさっと見回し、声を上げる。

「見て!ちょうどあそこに!」

ネージュムーンがそう言って、前方を見ながら耳をたてる。こちらへ歩いて来る赤茶色のスラリとした雌猫を見つけたのだ。フルールスリートとムーンルキスも、すぐにネージュムーンの言っている猫を見つけた。

「すごい良いタイミングだな。何か知らないか、早速聞きに行こう!」

ムーンルキスは驚いたように言い、軽く走り出す。2匹もすぐ後からムーンルキスを追った。

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投稿 by アイルステラ on Sat Mar 21, 2020 3:02 pm

【第21章】2

雌猫は、空を見上げて歩いていたが、フルールスリート達に気付くとぱっと目を輝かせる。そして、3匹に向かって走り出したが、次の瞬間つまづき、地面に頭から突っ込んだ。ムーンルキスとネージュムーンは困惑したように顔を見合わせ、フルールスリートは急いで雌猫に駆け寄った。

「えっと...大丈夫?」

フルールスリートが戸惑いながらも声をかけると、雌猫はばっと顔を上げた。

「大丈夫大丈夫!ちょっとこの石ころちゃんが動いただけ!───」

雌猫は、フルールスリートに弾けそうな笑顔で笑いかけると、楽しそうに続ける。

「───多分私のことが好きすぎたのね!!!私のこと追いかけるくらい好きなんて、照れちゃう!!!」

「石は...動かないわ...」

フルールスリートは唖然として目を瞬かせながらも、そう指摘した。後ろで兄弟も、特にムーンルキスも呆気にとられて雌猫を見つめている。

「ものの例えよ!」

雌猫はそう言うと、足元の石を前足で優しく突ついた。そこでふと顔を上げると、首を傾げる。

「あなた誰?あ、じゃなかった。あなた達、ね。」

目の前の雌猫は後ろのネージュムーンとムーンルキスに気付くと言い直した。フルールスリートはハッとすると、急いで自己紹介をする。

「私はフルールスリート。」

「僕はネージュムーン。こっちは兄のムーンルキスだ。」

ムーンルキスは神経質そうにしっぽを左右に揺らしながら、雌猫を見ている。

「私はローズミスト。よろしくね!会えて嬉しいわ!昨日以来誰とも喋ってなくて、もう死にそうだったの!!!」

「...そ、そうなの...」

ローズミストのテンションについて行けないフルールスリートだったが、なんとか頷く。ネージュムーンとムーンルキスは、少し離れた所に移動し、柔らかな草の上で欠伸をしている。



「この嵐みたいな猫はどうにも...接し方がわからない...」

「ムーンルキスは元気でお喋りな猫とはあんまり関わらないからね。」

フルールスリートと話しているローズミストを見ながら、苦々しそうに言ったムーンルキスにネージュムーンは苦笑した。

「嫌いじゃないが...落ち着きが無さすぎる。」

「ムーンルキスは落ち着きすぎな所があるよ。」

笑いながら言う弟の言葉に、ムーンルキスは心底驚いたように目を丸くした。

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投稿 by アイルステラ on Sat Mar 21, 2020 3:03 pm

【第21章】3

ネージュムーンとムーンルキスは、少し離れたところで静かに話しているようだ。

「フルールスリート達も旅猫なの?」

「も、ってことはローズミストも旅猫なの?」

ようやく来た普通の質問に、フルールスリートは安堵して尋ね返した。

「そうよ!私は1匹で旅をしてるんだけど、フルールスリートは、ネージュムーンとムーンルキスと一緒なの?」

「ええ。今はある花を探してるところなの。」

「花か...目的があるのもいいわね...」

ローズミストは呟き、何かを思案するかのように空を見上げた。

「ローズミストはどこに行くか決めてないってこと?」

「...ん?何か言った?」

目をぱちくりさせたローズミストに聞き返され、フルールスリートは思わず吹き出した。

「ローズミストって面白いわね!」

「よく言われるんだけど、特に面白くしてるつもりは全くないわ。」

そこで力強く一歩踏み出したローズミストだったが、足の付き方を間違えたのか、地面に崩れ落ちた。

「大丈夫!?」

「痛い!!!足捻ったみたい!嫌になる!」

そう言いながらもローズミストは楽しそうに笑っている。

「何か薬草採ってこようか?」

フルールスリートはローズミストがなぜ笑っているのか理解できなかったが、ローズミストの足を気遣った。

「大丈夫大丈夫!よくあることだから!!!」

「よくあることなの...?」

心配して尋ねたフルールスリートに、ローズミストは自身ありげに大きく頷く。

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投稿 by アイルステラ on Sun Mar 22, 2020 1:31 pm

【第21章】4

しばらくしてゆっくりと立ち上がったローズミストは、気分を変えるかのように大きく身体を振り、フルールスリートに問い掛ける。

「それで、さっき何か言った?」

「あ、そうだった。目的も無しに旅してるの?」

ローズミストに指摘され、フルールスリートはもう一度質問した。

「そうそう。気が向いたから旅に出たの。だから、目的地もないし、好きな方向に進んでるところ。そういえば、フルールスリート達の目的の花って何?」

フルールスリートの質問に頷きながら答えていたローズミストは、ふと思いついたように言葉を発する。

「実はその花の情報について何か知ってる猫はいなか、って探してたところなの。でも、ローズミストも旅猫なら、不思議な力を持った花のことは知らないはずね。」

「うん、聞いたことないと思う。」

フルールスリートと話しながら、ローズミストは意味もなくフルールスリートの周りを1周する。フルールスリートが首を傾げてローズミストを見つめると、ローズミストは淡い緑の目で見返してきた。

「なんで今私の周りを歩いたの?」

「意味なんてないない!なんとなくかな!」

「なんとなく、ね...」

フルールスリートはそう呟きながら空を見上げる。今は真昼を少し過ぎたくらいだ。

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投稿 by アイルステラ on Sun Mar 22, 2020 1:32 pm

【第21章】5

「それじゃぁ私、そろそろ行こうかな。」

「え!?もう?」

しばらく話した後、唐突に発せられたローズミストの言葉に、フルールスリートは目を丸くする。その言葉を聞きつけたのか、ネージュムーンとムーンルキスも隣に来た。

「一匹は寂しくない?」

ネージュムーンが穏やかに尋ねる。

「一緒に来るか?」

ムーンルキスもローズミストに問い掛ける。

「そうよ!その方が絶対楽しいわ!」

フルールスリートも誘ったが、ローズミストは首を振る。

「いいえ。私はこのまま一匹で旅を続けることにする。私はまだ誰かと一緒に旅をする資格なんてないの。」

その言葉を理解できず、フルールスリートは説明を求めるようにローズミストの瞳を見つめる。しかし、ローズミストは申し訳なさそうに肩をすくめ、微笑みながら立ち上がる。

「またね、フルールスリート、ネージュムーン、ムーンルキス!旅をしていたらいつか会えるはず!!!」

「いつか必ず!」

「道中気を付けてね。」

「また会える日を楽しみにしている。」

ローズミストは3匹に笑いかけると、歩き出す。フルールスリート達が小さくなっていく後ろ姿を見送っていると、ローズミストがまたつまずいたのが見えた。

「ローズミスト...」

フルールスリートが苦笑して呟いた。その言葉が聞こえたのか、ローズミストが笑顔で振り返り、何かを叫ぶ。

「またね!!!」

フルールスリートにはそう言ったように見えた。

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投稿 by アイルステラ on Mon Mar 23, 2020 3:40 pm

【第22章】1

茂みから出たフルールスリートは、思い切り伸びをして、朝の柔らかい光を全身で感じた。後ろからネージュムーンも欠伸をしながら出て来る。

「おはよう、ネージュムーン。」

「おはよう。今日は過ごしやすそうな天気だね!」

フルールスリートは頷いて同意を示すと、ムーンルキスの気配を探して辺りの空気を嗅いだ。ムーンルキスは川辺に立ち、行く手の山を見つめていたが、2匹の気配を感じたのか、振り返る。ネージュムーンがムーンルキスに駆け寄り、頭を擦りつけて挨拶を交した。フルールスリートは川で水を飲むと、顔を拭いながら兄弟の会話を聞いていた。

「そろそろ猫に会ってもいい頃だと思うんだよね。」

「ああ、ローズミストと別れてから結構経ったからな。」



フルールスリートは川沿いを歩きながら水面に映る3匹の姿を見つめていると、前を歩いていたムーンルキスが急に立ち止まった。よそ見をしていたフルールスリートはムーンルキスに衝突しかけ、慌てて地面に爪を立てる。

「ムーンルキス?」

フルールスリートの言葉に、ムーンルキスは前を見ろ、と示した。フルールスリートがムーンルキスの後ろから覗くと、前方の高い草の中に猫の姿が見え隠れしているのが見えた。

「不思議な花のこと、知ってるかな?」

ネージュムーンは一番後ろから口を出し、早く行こうよ、と兄を軽く突ついた。しかし、3匹が走って来るのに気付いた三毛猫は警告の鳴き声を上げ、全身の毛を逆立てた。

「何しに来たの!?こっちに来ないで!!!」

雌猫が叫んだ。ムーンルキス達は慌てて立ち止まる。そして、ネージュムーンとムーンルキスは顔を見合わせた。

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投稿 by アイルステラ on Mon Mar 23, 2020 3:40 pm

【第22章】2

「どうしたんだろう?」

ネージュムーンが呟くが、ムーンルキスは分からないと言うように、肩をすくめて見せた。フルールスリートは風に乗って漂ってきた香りを嗅いで、笑顔になる。

「そういうことね。」

そう言ってもフルールスリートは三毛猫の方へ歩き出す。

「フルールスリート?」

兄弟が不思議そうに問いかけたが、フルールスリートはさっとしっぽを振り、大丈夫だから心配しないで、と合図した。

「あ、ネージュムーンとムーンルキスはちょっと待っててね。」

フルールスリートは振り返ってそう言った。



「こんにちは。突然驚かしてしまってごめんなさい。私はフルールスリート。」

フルールスリートはそう言って、ほっそりとした雌猫から少し離れた所で立ち止まる。三毛猫は警戒しながらも、ゆっくりと茂みの前から離れてフルールスリートに近寄る。そして、フルールスリートの香りをくんくん嗅いだ。それで安心したのか、表情を和らげてフルールスリートを見る。

「こんにちは、フルールスリート。私はフィーユ。どこから来たの?」

「私は彼らと一緒に旅をしているの。数日前までは、この川を下った所にある街にいたわ。」

フルールスリートはそう言って、後ろの方で2匹の様子を見守ってるネージュムーン達をちらっと見た。フィーユはネージュムーンとムーンルキスを見て、不安そうな顔をした。

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投稿 by アイルステラ on Tue Mar 24, 2020 2:58 pm

【第22章】3

「お子さん達が心配なんでしょ?」

フルールスリートが優しく尋ねると、フィーユはそわそわしながら頷いた。

「もう気付いていたのね...」

フィーユはそう言ってから、鋭い目でフルールスリートを見た。

「もしあの子達を傷付けるなら───」

「そんなことしないわ!私も彼らも絶対しない!だから安心して。」

フルールスリートはフィーユの言葉を遮って、きっぱりと言った。

「前に...」

フィーユは言いかけて、首を振った。

「昔のことを話しても意味無いわね。」

自分に言い聞かせるように言うと、フィーユは目を閉じて大きく息を吐き出す。そして、目を開くと、フルールスリートを見つめて頷きかけた。



フルールスリートがしっぽで合図すると、兄弟がゆっくりと近付いて来た。

「驚かしてしまってすまない。」

礼儀正しい2匹の様子を見て、フィーユも緊張を解いた。

「こちらこそ、失礼な態度をとってしまい───」

フィーユの言葉を甲高い声が遮る。

「かあさん、もうでてもいい?」

ムーンルキスとネージュムーンは目をぱちぱちと瞬かせる。

「ええ、もう出てきてもいいわ。」

フィーユが優しく茂みに向かって呼び掛ける。すると、茂みがガサガサと揺れ、子猫が3匹飛び出してきた。キジトラの子猫を先頭に、元気よく駆け寄ってくる子猫達の勢いに、ムーンルキスとネージュムーンは思わず一歩下がった。

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投稿 by アイルステラ on Tue Mar 24, 2020 2:58 pm

【第22章】4

「うわぁ!可愛い子達ね、フィーユ!!!」

「ありがとう、フルールスリート!この子は、フドル。」

フィーユはそう言いながら、最初に4匹の所に走って来た雄のキジトラの子猫をしっぽでさす。次に、フィーユに体をこすりつけて甘えてきた母猫そっくりの雌猫と、引っ込み思案そうな小柄な灰色の雄猫を見ながら言葉を続ける。

「この子はジェルム、この子はプリュイよ。」

フルールスリートはパタパタと近くに寄ってきたフドルと鼻を触れ合わせて挨拶をする。

「おねえさんたち、だれ?どこからきたの?」

「遠い所からよ。」

早速質問してきたフドルに、フルールスリートは優しく答える。

「私はフルールスリート。こっちはネージュムーンにムーンルキスよ。」

そう言いながら2匹の方を見たフルールスリートは、首を傾げた。

「ネージュムーン?ムーンルキス?どうしたの?」

2匹は子猫達を前に、固まっている。

「えっと...僕達、子猫と接したことなくて...」

珍しい2匹の姿にフルールスリートは吹き出した。隣でフィーユもくすくす笑っている。フィーユはこの様子を見て、ネージュムーン達に対する警戒心を完全に解いたようだ。母猫にぴったりと体をくっつけていたジェルムは、フィーユが笑っているのを不思議そうに見上げた。

「なにがおもしろいの?」

フィーユはそれには答えず、自分の前足の間に収まっているジェルムと、横にちょこんと座っているプリュイを鼻でそっとつつく。

「ジェルム、プリュイ、ムーンルキスとネージュムーンに挨拶してきたら?」

ジェルムはイヤイヤと言うように首を振りながら、母親の毛に顔をうずめた。プリュイはムーンルキスとネージュムーンに見られているのに気付くと、慌てて母親の陰に隠れてしまった。その2匹の様子に、ムーンルキスとネージュムーンも頬をゆるめる。

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投稿 by アイルステラ on Wed Mar 25, 2020 10:51 am

【第22章】5

フルールスリートの前では、フドルが横になり、足をパタパタさせている。フルールスリートがフドルのお腹を優しく舐めてやると、フドルは嬉しそうな声を出した。その様子に、フルールスリートは笑顔になる。フドルの嬉しそうな声に、ジェルムとプリュイがフドルの方をちらっと見てから母親を見上げる。

「ほら!」

フィーユにもう一度言われ、ジェルムとプリュイはネージュムーン達の方へおずおずと歩き出す。そして、ネージュムーンとムーンルキスの前に来ると、上目遣いに小さな声で挨拶した。ネージュムーンとムーンルキスも、そのかわいさに笑顔になる。

プリュイがネージュムーンの香りを嗅ごうと1歩前に踏み出す。その小さな鼻面を、ネージュムーンがそっと舐めてやった。プリュイは一瞬驚いた表情を見せたが、すっかり安心したのか、ネージュムーンにくっついて座る。

そんな兄の様子を横目でちらっと見てから、ジェルムは母親の元へ走って行った。そして、フィーユに体をこすりつけ、甘えた鳴き声を出す。フィーユは、ジェルムの頭を愛おしそうにさっと舐めると、フルールスリート達に問い掛ける。

「そういえば、どうしてここに来たの?何か用事でも?」

その言葉を聞き、ムーンルキスがはっとした。

「そうだった。実は聞きたいことがあって。」

「何?どんなことでも聞いて。」

そう言いながら、フィーユはぴょんぴょん跳ねて遊んでいるフドルをしっぽで招く。
少し不満気な表情を浮かべたフドルだったが、大人しくフィーユの隣へ走ってきた。
他の猫達もフィーユの周りに集まり始める。

ネージュムーンは、隣で短い脚を必死に動かし、ネージュムーンと歩こうとしているプリュイに気付き、速度を緩める。
プリュイはネージュムーンの隣を嬉しそうにトコトコ歩き始めた。

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投稿 by アイルステラ on Wed Mar 25, 2020 10:51 am

【第22章】6

「フィーユ、この歌を知ってるか?」

皆が集まったところでムーンルキスはそう言って、ネージュムーンとフルールスリートと共に歌い出す。


♪星の雫の落ちる場所

永遠に枯れないその花は

誰に知られることも無く

満月の夜に花開く


「ママがねる前にうたってくれる歌。でも、ちょっと違うかも。」


ジェルムは小さな声で呟いてから、フルールスリート達の視線に気付くと、慌ててフィーユの陰に隠れてしまった。

「ネージュムーンもこの歌しってるんだね。」

プリュイが小さな体を丸め、欠伸をしながら言う。

「フィーユ、知ってるのね!」

フルールスリートが嬉しそうに言うと、フィーユは頷いた。

「ええ。だけど、私が知ってる歌とは少し違うわ。」

ムーンルキスが続きを促す。


♪星の雫の落ちる場所

永遠に枯れないその花は

誰に知られることもない

白い海に浮かぶ森

月の光に照らされて

水面(みなも)で揺れる 一輪の花


フィーユの歌声は、クォーツに負けず劣らず綺麗だった。風が吹いてきて、プリュイのフワフワした毛を揺らす。

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投稿 by アイルステラ on Thu Mar 26, 2020 10:26 am

【第22章】7

フドルがプリュイの方へ駆けていく。

「プリュイってば、もうねてる!」

フドルはそう言って、プリュイの耳を引っ張ろうとした。

「フドル!イタズラしないの!いつもはお昼寝してる時間なんだから!」

フィーユに厳しい声で注意され、フドルは不満そうな顔で母親を振り返る。それでもフィーユが表情を変えないのを見て、つまらなさそうにフィーユの元へ戻って行った。
しかし、母親の横に大人しく座っているジェルムを見ると、再び走り出し、妹に飛び乗って押し倒す。

「なにするの!」

ジェルムは抗議すると、得意気にしている兄をふるい落とした。フドルはコロコロと転がって行くが、ぱっと立ち上がり、体を振ると、ジェルムを追いかけ始める。
フィーユは困ったように、しかし、嬉しそうに子猫達を見ている。



「話が途中だったわね。」

フィーユが思い出したように言い、フルールスリート達もじゃれ合っているフドルとジェルムから目を離した。

「そんな続きがあったなんて知らなかった。」

ネージュムーンが感慨深気に言葉を発する。

「ああ。だけど、新しいことが分かった。その花は、水辺に咲いていて、その水辺は白い海に浮かぶ森の中に...」

ムーンルキスはそう言いかけて、言葉を濁した。

「 ”白い海” って何かしら?」

フルールスリートが皆が疑問に思っていたことを口に出した。

「海は...青いよね...?」

ネージュムーンが真剣な口調で言ってから、当たり前か、と言って小さく笑った。

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投稿 by アイルステラ on Thu Mar 26, 2020 10:27 am

【第22章】8

「フルールスリート達はその花を探しているの?」

首を傾げて問いかけたフィーユに、フルールスリートは大きく頷く。それを見て、フィーユが少し目を閉じて考え込んでから3匹に向かって問いかける。

「どうしてその花が咲くかは知ってる?」

「ああ。宇宙から運ばれてくる不思議な力のおかげで、その力を持った不思議な花が咲くと聞いた。」

ムーンルキスが答える。

「その花を探す手掛かりを私、知っているわ。」

「「本当!?」」

「本当か!?」

3匹は思わず身を乗り出した。フィーユは静かな口調で話し始める。



昔、ある山の頂上に1つの流れ星が落ちました。流れ星は宇宙から不思議な力を運んできていました。

その力は、山の頂上に咲いていた1輪の花の種に移り、やがて不思議な力を持った花が咲きました。

その花は他の花と同じように時が来れば枯れる運命でしたが、たまたまその花を見つけた能力の高い猫が、自分の能力を使い、永遠に生き続ける力を花に与えました。

その能力のおかげで、不思議な力を持った花は永遠に枯れない花となりました。

しかし、その能力は、100年毎に弱まってしまいます。

そのため、100年に1度、能力の高い一匹の猫がお告げを受けて山を訪れ、自分の能力で弱まった力を強くするのです。

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