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そして、不死鳥は目覚める。

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投稿 by リンクステイル Sun Jun 21, 2015 3:15 pm

そして、不死鳥は目覚める。


川が流れ、草木が芽吹き、小さな動物たちが走り回るこの森に、2つの部族が土地を分けて暮らしていた。

大昔から栄えるこの2つの部族は、とある1匹の猫によって作られた。

その猫の毛は黄金色に輝き、その瞳は血のような冷たい赤ではなく、炎のように暖かい赤をしていた。

その森には古くから、こんな言い伝えがあった。

「この森に住む、自らが創り上げた2つの部族に危機が訪れた時、その猫は深い眠りから目を覚まし、子孫たちを危機から救う」

その猫のことを、部族猫たちは不死鳥と呼んだ。


────────────────────────────
どうもこんにちは。
初めましての方が多いと思います。リンクステイル【山猫尻尾】です。
今作が初めての小説なので、ぐだぐだになるとは思いますが、暖かい目で見守ってやってください。


最終編集者 リンクステイル [ Wed Jun 24, 2015 5:39 pm ], 編集回数 3 回
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投稿 by トワイライトアウル Sun Jun 21, 2015 3:20 pm

こんにちは!新小説おめでとうございます。
あ、自己紹介してませんでしたね。トワイライトアウル(夜明けの梟)と申します!
僕も今やっと親の監視(詳しくは自作小説で)がとけてきまして…頑張って自分の小説を進めているところです。
お互い頑張りましょうね!

不死鳥…ですか
深い眠り…うーん、何か不思議な予感
どういうふうになるんでしょう…楽しみにしてますね!
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投稿 by リンクステイル Sun Jun 21, 2015 3:25 pm

トワイライトアウル wrote:こんにちは!新小説おめでとうございます。
あ、自己紹介してませんでしたね。トワイライトアウル(夜明けの梟)と申します!
僕も今やっと親の監視(詳しくは自作小説で)がとけてきまして…頑張って自分の小説を進めているところです。
お互い頑張りましょうね!

不死鳥…ですか
深い眠り…うーん、何か不思議な予感
どういうふうになるんでしょう…楽しみにしてますね!
トワイライトアウルさん、初めまして!そして、楽しみにしてくださるとは……ありがとうございます!

私も親がいない間にこうして小説を投稿してたりします(笑)
鬼の居ぬ間になんとやら、ですね。

トワイライトアウルさんの小説も読ませていただきたいと思います!
お互い頑張りましょう(^^)
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投稿 by リンクステイル Sun Jun 21, 2015 4:43 pm

登場猫紹介


不死鳥〈フェニックス〉
黄金色の毛並みに炎のような赤色の瞳の猫。大昔にファイア族とウィング族を創ったとされる。


《ファイア族》  

族長
チアフルクラウド【陽気な雲】
白と灰色の毛の雄猫。青い瞳をしている。
アンバーシャインの親友。

副長
アンバーシャイン【琥珀の輝き】
黄金色の毛の雄猫。琥珀色の瞳をしている。
チアフルクラウドとは親友で、見習い時代も一緒に過ごした仲だが、驚くほど小さい。
本人は小柄だとは言っているが、大きさは年長の見習いより少し小さい位。
弟子はオーシャンポー。

治療猫
リヴァーストリーム【川の流れ】
片方の前足が白い銀色の毛の雌猫。水色の瞳をしている。
治療だけで無く、空の上の部族、〈クラウド族〉とも会話することができる。
弟子はカインドポー。

戦士長
タイガーテイル【虎の尻尾】
焦げ茶色の虎柄の猫。緑色の瞳をしている。
全ての戦士猫達をまとめる猫。
弟子はヘイルポー。


戦士猫

ライオンファー【ライオンの毛皮】
たてがみのような毛のある、黄土色の毛の雄猫。琥珀色の瞳をしている。
タイガーテイルのよき理解者。
弟子はブレイズポー。

ヒートヘイズ【陽炎】
赤茶色の毛の雌猫。淡い青色の瞳をしている。
タイガーテイルの連れ合い。

フレイムハート【炎の心】
クリーム色の毛の雄猫。淡い緑色の瞳をしている。

ブロッサムペルト【花毛皮】
三毛柄の雌猫。緑色の瞳をしている。

アイリスフット【アイリス足】
真っ白な毛の雌猫。淡い紫色の瞳をしている。

ウッドパッカー【啄木鳥】
茶色の毛に斑点模様のある雄猫。水色の瞳をしている。

ラクーンファー【アライグマの毛皮】
耳と尻尾の先と足の先が茶色い雌猫。深い青色の瞳をしている。
レインアローの連れ合い。

レインアロー【雨の矢】
濃い灰色の毛の雄猫。水色の瞳をしている。

タロンシャープ【鋭い鉤爪】
足の先の毛が白いさまざまな茶色が混じり合った毛の雄猫。黄色い瞳をしている。


見習い猫

ヘイルポー【雹足】
ところどころに白い斑点がある淡い灰色の雄猫。水色の瞳をしている。
タイガーテイルの弟子で、戦士長候補。

カインドポー【優しい足】
焦げ茶色の虎柄の雌猫。淡い青色の瞳をしている。
タイガーテイルの娘。
リヴァーストリームの弟子で、見習い治療猫。

オーシャンポー【海足】
濃い灰色の毛の雄猫。深い青色の瞳をしている。
アンバーシャインの弟子。

ブレイズポー【炎足】
茶色いブチのある白い毛の雄猫。琥珀色の瞳をしている。
ライオンファーの弟子。



《ウィング族》

族長
スノウクラウド【雪雲】
真っ白な毛の雄猫。水色の瞳をしている。

副長
ジェイドフォレスト【翡翠色の森】
淡い茶色の毛の雌猫。緑色の瞳をしている。

治療猫
グラスペルト【草の毛皮】
枯れ草色の毛の雄猫。黄色い瞳をしている。
弟子はサンドポー。

戦士長
ウィンドクロー【風の爪】
縞模様がある灰色の雄猫。青色の瞳をしている。
弟子はリーフポー。

戦士猫

スカイフェザー【空の羽】
淡い灰色の長毛の雄猫。水色の瞳をしている。
弟子はブルーポー。

フライングスクワーレル【ムササビ】
淡い茶色の虎柄の毛の雌猫。琥珀色の瞳をしている。

フリップハート【生意気な心】
茶色と黒のまだら模様の雄猫。黄緑色の瞳をしている。


見習い猫

リーフポー【葉足】
薄茶色の虎柄の雄猫。緑色の瞳をしている。
ウィンドクローの弟子で、戦士長候補。

サンドポー【土足】
黄土色の長毛の雄猫。琥珀色の瞳をしている。
グラスペルトの弟子で、見習い治療猫。

ブルーポー【青足】
青灰色の毛の雌猫。青色の瞳をしている。
スカイフェザーの弟子。


最終編集者 リンクステイル [ Fri Jul 24, 2015 11:15 pm ], 編集回数 4 回
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投稿 by L ͛k ͛ Sun Jun 21, 2015 5:00 pm

シンプルかつわかりやすい序文にとても惹きつけられました。

序文を読んでからもう一度最初のタイトルを読むと、さらに効果が倍増され、とても素敵ですね。憧れます………!

私もこちらでは初めまして、ライトニングキットと申します。
リンクステイルさんとはまだ直接やり取りしたことはありませんけれど、
Magic Cave で文章を拝見させていただいたことがあります。

もしよければあちらでも仲良くしてくださると嬉しいです^^ そしてこの不死鳥の物語、心から応援しています!
L ͛k ͛
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http://nekoryou-seikatsu.jimdo.com/

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投稿 by リンクステイル Sun Jun 21, 2015 7:07 pm

ライトニングキット@一人称「俺」 wrote:シンプルかつわかりやすい序文にとても惹きつけられました。

序文を読んでからもう一度最初のタイトルを読むと、さらに効果が倍増され、とても素敵ですね。憧れます………!

私もこちらでは初めまして、ライトニングキットと申します。
リンクステイルさんとはまだ直接やり取りしたことはありませんけれど、
Magic Cave で文章を拝見させていただいたことがあります。

もしよければあちらでも仲良くしてくださると嬉しいです^^ そしてこの不死鳥の物語、心から応援しています!

ライトニングキットさん、初めまして!
素敵だなんて……私にはもったいなすぎる言葉です……!!

Magic Caveで、私もライトニングキットさんの文章を読ませていただきました。
私なんかよりとても素敵な文で、読んでいるうちに引き込まれてしまいました。
ぜひリューグナー君と仲良くしてくださると嬉しいです!

そしてこちらの小説も、文才など0に等しいですが、今後もよろしくお願いします!
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投稿 by リンクステイル Tue Jun 23, 2015 5:50 pm

attention!!


・この作品に出てくる猫達の設定や台詞の中には、私の大好きな魔法使いの物語や、大罪人達の物語から取っているものがあります。ご了承ください。

・多少のネタバレを含みます(3-6まで)。

・勿論文才などございません。温かい目でご覧ください。
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投稿 by リンクステイル Tue Jun 23, 2015 9:46 pm

プロローグ


森は静まり返っていた。

月明かりが木々の葉を銀色に縁取り、静かに流れる川には輝く星が映った。

1匹の雄猫が現れる。

ショウガ色の雄猫だった。琥珀色の瞳には星の光が灯り、脚を動かすたびにたくましい筋肉が波打つ。

しかし、彼の真っ白な足は全く地面に触れること無く、その姿は炎のように実態が無いように見えた。

雄猫はふと足を止める。

彼の視線の先には、少し地面が盛り上がっている場所があった。

木々の間から漏れた月明かりに照らされ、地面に長い影を落としている。

雄猫は短く息を吸う。

「古の予言により、貴方を目覚めさせに参りました」

すると、地面がさらに盛り上がり、直ぐに崩れた。

土の中から、1匹の猫が現れる。

不意に、ふっと森の中に影がさした。雲が月を覆ったのだ。

猫は体を震わせて伸びをすると、毛に付いた土を落とし始める。

「お目覚めになりましたか」

雄猫が土の中から現れた猫に尋ねる。

「見ればわかるだろう」

猫は毛繕いを止めることなく、その問いに答える。

雄猫は怯んだように一歩下がった。

「申し訳ありません……」

「冗談だ」

猫は可笑しそうに言うと笑い、毛繕いを止める。

そして雄猫と向き合い、初めて瞳を開く。

真っ赤な色をしていた。

「おお、お前は確か、サンダーだな?」

猫はショウガ色の雄猫を見て、久しぶりに会った友人に声を掛ける時のように言った。

雄猫───サンダーは驚いたように目を見開く。

「お…俺を知っているんですか?」

「ああ、知ってるとも。俺が眠りにつく前、一度だけな。あの時はまだほんの子猫だった」

大きくなったな、と猫は目を細める。

「そして、よくぞ4つの部族を創り上げてくれた。あの猫達には部族が必要だった。本当に感謝している」

サンダーは恥ずかしそうに目を逸らした。

「いいえ…俺だけじゃなくて、シャドウもリヴァーもウィンドも、皆立派な族長達です」

猫は頷いた。「ああ、そうだ。お前達のことを誇りに思うよ」

「でも、俺たちが部族を創れたのも、貴方のお陰です。フェニックス」

サンダーは敬意を表して頭を下げた。

「貴方は俺が産まれるずっと前に、たった一人で2つの部族を創り上げました。俺たちは貴方のやり方を真似しただけです。そして今もなお、部族猫達が危機に陥った時には救いの手を差し伸べている」

「お前達は生前、充分部族の為に尽くしてきただろう。それに今はスター族として空から部族猫達の事を見守っているじゃないか」

猫は不思議そうに言う。サンダーは小さく首を横に振った。

「スター族は無能です、フェニックス。貴方のように部族猫達を直接助けることは出来ない」

しばらく黙った後、猫は再び口を開いた。

「俺はそろそろ行かなくては。部族猫達の危機はいつ起こるか分からないからな」

「どこに行くのですか?部族猫達の元へですか?」

「いいや、分からない。ただ、己の足の向くままに」

サンダーの問いに静かに答えると、猫は歩き出した。

さっと辺りに風が吹き抜け、木々の葉がさらさらと音を立てた。

猫が後ろを振り向くと、そこにサンダーの姿は無かった。

ふと猫は立ち止まり、星を見上げた。炎のような瞳を閉じる。

「……炎が消えようとしている」

猫はそう呟き、瞳を開くと、静かに暗い森の中へと消えた。


最終編集者 リンクステイル [ Sat Jun 27, 2015 3:13 pm ], 編集回数 1 回
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投稿 by リンクステイル Sat Jun 27, 2015 3:12 pm

第1章:悲しみの色


夢を見ていた。

燃え盛る炎が、たったひと吹きの風によって呆気なく消えてしまう、そんな夢を。

消えた炎は二度と燃える事はなく、ただ、焦げ臭い臭いを風が運んでいた。

「アンバーシャイン」

風の中から、誰かが、自分の名を呼んでいる。

顔を上げると、向こうから猫が歩いてきていた。

その猫は、アンバーシャインもよく知っている、あの伝説の姿と全く変わりはなかった。

「フェニックス?」


「おい起きろアンバーシャイン!いつまで寝ているつもりだ?」

小さいが鋭い声が耳元ではっきり聞こえ、前足で強く突かれた感触があった。

「痛っ!」

アンバーシャインは小さく悲鳴をあげると、目を覚ました。

目の前には、白と灰色の毛の雄猫、チアフルフットの顔があり、何だか少しほっとした。

「……おはよう、アンバーシャイン」

そう言うチアフルフットの顔は、どこかほっとしているように見えた。

もしや、自分と同じように不安になるような夢を見たんだろうか?

アンバーシャインはそう思ったが、相手の姿が昨夜見た時と変わっていないことに気づく。

「お前もしかして…寝て、ないのか?」

「まあな。なんか眠れなくって」

チアフルフットはそう答えると、大きく欠伸をした。

それにつられるように、アンバーシャインも欠伸をし、身体を起こした。

身体中の筋肉をほぐすため、身体を弓なりに曲げてゆっくりと伸びをする。

チアフルフットはもう一度大きな欠伸をした。

アンバーシャインは、眠そうな親友を見て、気の毒に思った。

昨日あんな事があった後だ。眠れないのもおかしくない。

それはこの部族の猫たち皆に言える事なのだが、特にチアフルフットは眠れなかっただろう。

アンバーシャインは、足元に横たわる黒猫の遺体を悲しげに見つめた。

同じようにして、チアフルフットがその足元に横たわる白黒の猫の遺体を見つめている。

「オレには出来っこありません。そんな重要な役割なんて」

チアフルフットが誰にともなく、いや、その白黒の猫に向かってなのか、ぼそっと呟いた。

そして、その弱気な考えを振り払うかのように身震いをし、身体をしゃんと起こした。

その姿はとても凛々しく、まさに一族の長の風格そのものだった。


亡き族長と副長のお通夜のためか、一族のほとんどの者が外で眠っていた。

夜明けの光がくぼ地に差し込むにつれ、一匹、一匹と目を覚ます。

チアフルフットは、目覚めた者の中の1匹を尻尾で呼び寄せた。

「長老達を起こしてくれ。パッチクラウドとナイトフラワーの遺体を埋葬したいんだ」

呼ばれた猫はさっと頭を下げると、小走りで長老達の元へ向かった。

その猫と入れ替わるように、銀色の毛の雌猫がこちらへ走ってきた。

「おはよう、チアフルフット。もうそろそろ…」

そこで言葉を切り、雌猫はアンバーシャインへと目を向けた。

「あら、アンバーシャイン。おはよう。昨夜は本当に大変だったわね」

「おはよう、リヴァーストリーム。本当にその通りだよ」

アンバーシャインはリヴァーストリームに挨拶を返した。

「もう行くのか?」

チアフルフットがリヴァーストリームに聞く。治療猫は頷いた。

「ええ。“聖なる洞窟”は森の最深部にあるから、早めに出発しないと」

チアフルフットはアンバーシャインの顔を見た。

「そういう訳なんだ。行きたくないけど、行かなくちゃならないんだよな」

アンバーシャインはチアフルフットを勇気付けるように、彼の耳を尻尾で軽く弾いた。

「大丈夫。必ずお前は立派な族長になれる」

チアフルフットは感謝するように瞬きをした。

「さ、行くわよ」

リヴァーストリームの声とともに、チアフルフットは出入口へと足を進めた。

すれ違いざま、チアフルフットはアンバーシャインの耳にそっと囁いた。

「君もな、新副長さん。一族を頼んだぞ」

出入り口へと消える親友の後ろ姿に向かって、アンバーシャインは言った。

「任せとけ」

聞こえたのか聞こえなかったのか、チアフルフットはさっと尻尾を高く上げ、その姿は見えなくなった。

アンバーシャインは、新族長と治療猫の居なくなったキャンプ内を見回した。

夜明けの光に目が覚め、誰もが活動を始めていたが、悲しみの色はまだ濃く漂っていた。

目を閉じれば、昨日の出来事がはっきりと映像として流れてくる。

決して忘れぬように。二度と起こさないように。もう一度、昨日を振り返ってみる。

この悲劇の幕開けを。


最終編集者 リンクステイル [ Fri Jul 31, 2015 1:54 pm ], 編集回数 2 回
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投稿 by リンクステイル Sat Jun 27, 2015 3:16 pm

作者リンクステイルの諸事情(夜中のテンションで投稿したら内容が悲惨な事になった)により、
第1章の書き直しを行いました。

もう一度目を通していただけたら幸いです。

本当にすみませんでした。
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投稿 by レパードクロー Sat Jun 27, 2015 3:24 pm

はじめまして、コメント失礼します!

フェニックスが気になります!
題名もかっこいいです。
これからどのような展開になっていくのかをわくわくしながら待ってます!!

そして自己紹介。
レパードクロー、ヒョウのかぎ爪です。
いくつかグダグダ小説をやっていて、ウォーリアーズアカデミーのとぴ主をやっています。
下手ながらお絵描きもしているので、よろしければいつかリンクスさんを描かせてください'ω'
豹さん、レパードなどと呼ばれています。
よろしくお願いします!
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投稿 by リンクステイル Sat Jun 27, 2015 5:04 pm

ひょう@またまたおかしな妄想中 wrote:はじめまして、コメント失礼します!

フェニックスが気になります!
題名もかっこいいです。
これからどのような展開になっていくのかをわくわくしながら待ってます!!

そして自己紹介。
レパードクロー、ヒョウのかぎ爪です。
いくつかグダグダ小説をやっていて、ウォーリアーズアカデミーのとぴ主をやっています。
下手ながらお絵描きもしているので、よろしければいつかリンクスさんを描かせてください'ω'
豹さん、レパードなどと呼ばれています。
よろしくお願いします!
レパードさん、初めまして!そして、コメントありがとうございます!

わくわくしながら読んでくださるとは……感謝感激です!
たまに何が書いてあるのかわからなくなるような小説ですが、これからも読んでくださったら嬉しいです!

レパードさんに、この小説に出てくるファイア族の族長、チアフルクラウドを描いていただきたいです!
リクエストのトピに描いておこうと思うので、よろしくお願いします!(勿論スルーokです)
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投稿 by リンクステイル Sun Jul 05, 2015 5:32 pm

第2章:悲劇の始まり


小鳥の囀りが森に響き渡る。

アンバーシャインはピクリと耳を立てると、目を開け、ゆっくりと起き上がった。

伸びをし、寝癖がついた自分の毛を舐めてとかし、そして顔を洗う。

それから隣でいびきをかいて寝ている白と灰色の毛のかたまりを、前足で強く突く。

これが、アンバーシャインの朝の決まりごとだった。

「な、ななな、何だ!?」

いつものように飛び上がって目を覚ます親友を呆れたように見ると、アンバーシャインは出入口を指す。

「獲物も少なくなりはじめたはずだ。さ、早く狩りに行くぞ」


戦士部屋から出ると、昇り始めた太陽の光を浴びて、すでにたくさんの猫達が活動を始めていた。

アンバーシャインとチアフルフットはすれ違う猫達に挨拶を交わしながら、獲物置き場に向かった。

獲物置き場となっている幹のうろの中には、思った通り獲物が少なくなっていた。

「ちぇっ。腹減ったのに」

チアフルフットは文句を言うと、それを証明するかのように彼のお腹が鳴った。

「言った通りだろ?」

アンバーシャインは苦笑すると、チアフルフットの乱れたままの毛に目をやった。

「それよりもさ、お前まず寝癖直せよ」

チアフルフットは面倒くさそうに自分の毛を見ると、寝癖を直し始めた。

「前から思ってたけどさ」

毛繕いを終えたチアフルフットは、アンバーシャインを不思議そうに見た。

「なんで君はそんなに色んなことがわかるんだい?」

「どういうことさ」

「さっきも言ってたじゃないか。獲物が少なくなってるって」

「ああ」

アンバーシャインはまた苦笑した。

「お前みたいに腹減ってる猫達が朝はたくさんいるんだ。そりゃ獲物も少なくなるって」

「そっか」

チアフルフットはにっと笑った。

と、突然、アンバーシャインは表情を険しくし、耳を出入口の方へ向けた。

激しい足音が、キャンプに向かって近づいてくる。

チアフルフットや他の猫達もそれに気付いたらしく、同じように出入口に神経を集中する。

白黒の毛の猫が部屋から現れ、近づいてきた黒猫と短く言葉を交わした。

その時、キャンプの出入口となっているトンネルから、焦げ茶色の虎猫が飛び出してきた。

その後から、灰色の猫、クリーム色の猫、三毛猫が続いて飛び出してくる。

「早朝のパトロールの一団だ」

チアフルフットが不安そうな声で言った。

「何があったんだろう」

「タイガーテイル」

その声に振り向くと、族長のパッチクラウド、副長のナイトフラワーが群れをぬって歩いてきていた。

「一体何があった」

「パッチクラウド、大変なんです」

焦げ茶色の戦士が息を切らしながら言った。

「俺らがパトロールをしていたら、境界線で、ウィング族の猫達が待っていたんです」
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投稿 by リンクステイル Sun Jul 05, 2015 5:46 pm

第3章:灰色雲は嵐を呼ぶ


「“待っていた”ですって?」

ナイトフラワーが訝しげに繰り返した。

「ああ。そうなんだ」

タイガーテイルは黒猫に頷いた。

「そいつらは、俺らがそこを通るのを待っていたんだ。そして俺たちが近づくと、話しかけてきた」

「『ファイア族に戦いを申し込む。そちらのそう族長に伝えろ』そう言ってきました」

ヘイルポーが恐怖に目を見開いて言った。

「『こちらの縄張りはファイア族と比べて狭すぎる。戦いでウィング族が勝ったら領土を寄越せ』と」

驚きの声が波のように猫達の間に広がる。

「誰なんだ。そこにいたのは」

パッチクラウドが尋ねた。

「戦士長のウィングクローとその弟子のリーフポー、そしてフリップハートです」

ブロッサムペルトが答える。

「俺はそいつらに言ったんです。『この土地は大昔、偉大なるフェニックスによって平等に2つに分けられた。だから大きさが違うなんてあり得ない』と」

「『おたくの族長は戦いを好まない主義のはずだが。そんなことを言ってたら、族長に耳を引き裂かれるんじゃないか?』そうも言ってやりました」

タイガーテイルの言葉に、フレイムハートがさらに言葉を重ねる。

「でも」

ブロッサムペルトが小さな声で言った。

「でも、駄目でした。相手は私達の言うことに耳を貸そうともしませんでした。ウィング族の族長は変わったと、そう言っていました」

その場にいた猫達の息を飲む音が聞こえた。

ウィング族の族長、グレークラウドは多くの戦士達に人気があったのだ。

「じゃあ、スノウテイルが族長になったわけね。でも、どうして」

ナイトフラワーが独り言のようにつぶやいた。

「病気で死んだと、そう言っていた」

タイガーテイルが答えた。

「スノウテイルはとても気性が荒い、野心家だ。そして、戦いを誰よりも好んでいる」

パッチクラウドが心配そうな声で言った。「ウィング族は変わってしまうだろう」

「その通りです。ウィング族は変わってしまいました。さっき会ったウィング族の戦士達も、前よりも筋肉がつき、体が引き締まっていました」

タイガーテイルが頷いた。緑色の瞳に不安が映っている。

「今日の日が落ちる頃、縄張りの境目、グランドロックがある場所に来いとの事です」

「戦いを断らなかったのか」

「断ろうとしました。ですが……」

そう言ってタイガーテイルはちらっと自分の弟子を見た。

「リーフポーに馬鹿にされたんです。『ファイア族は臆病者だ』って」

ヘイルポーがしゅんとして言った。自分がやってしまった事の重大さを感じて、反省しているのだろう。

ふむ、とパッチクラウドは唸った。

「まぁ、起きてしまった事は仕方ない。戦いに備えなくては」

そう言うと、集会の時にいつも乗る切り株の上に、ひらりと飛び乗った。

全員の視線が、パッチクラウドに集まる。

「これからどうするんだろう」

不安に満ちたチアフルフットの言葉が、ざわめき声の中に消えていった。
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投稿 by リンクステイル Wed Jul 08, 2015 1:31 am

第4章:選ばれた戦士達


辺りが静まると、切り株に乗ったパッチクラウドは話し始めた。

「皆聞いていただろう。今日の日没頃、グランドロックの近くでウィング族と戦う事になった」

不安げにひそひそと囁き合う声があちこちで聞こえ始める。パッチクラウドは咳払いを一つした。

「そこで、戦いに行くメンバーを選ばなくてはならない。俺とナイトフラワーは戦いに行く」

そこまで黙って聞いていたアンバーシャインは、ぞくりとするのを感じた。

戦いに出させてもらえるだろうか。いつつけたのか忘れてしまった傷跡を見ながら思う。

自分は力不足とされてあまり戦いに出してもらった事が無いから、今回こそは……!

「今から呼んだものは、前に出てきてくれ」

パッチクラウドがそう言って猫達を見下ろす。誰を出すのか考えているようだ。

「……タイガーテイル」

ようやく呼んだその声は力強く、戦士長に対する信頼が感じられた。

焦げ茶色の虎猫はうなずくと、力強い足取りで前へ進みでる。

「ヘイルポー、フレイムハート、ブロッサムペルト」

今朝のパトロールの一団だ。前に進み出る3匹を見ながらアンバーシャインは気付いた。

この戦いを受けてしまったから最後まで戦いたい、という3匹の気持ちを汲み取ったのだろう。

じゃあ、他に選ばれる戦士は誰だろう。

ラクーンファーは子供がいるし、レインアローはそんなラクーンファーの側にいたいはずだ。

だとしたら?アンバーシャインはドキドキした。もしかすると……。

「ライオンファー、ブレイズポー、ヒートヘイズ、アイリスフット」

パッチクラウドはそこで一呼吸置き、猫達を見回した。

アンバーシャインはぎゅっと目を閉じた。大丈夫、きっと選んで─────

「チアフルフット。以上だ」

────くれなかった。

アンバーシャインはがっくりと肩を落とした。まただ。まだ俺は力不足だと思われているんだ。

「精一杯戦ってくれ。ウッドパッカー、レインアロー、タロンシャープ、アンバーシャインは残ってキャンプを守ってくれ。ラクーンファーは保育部屋で子供達を守ってくれ。集会を終わる」

アンバーシャインは後ろを向くと、選ばれた猫達を励ます声を背中に聞きながら、戦士部屋に向かってとぼとぼと歩き出した。

チアフルフットの呼び止める声が聞こえた気がしたが、振り向かず歩き続けた。


アンバーシャインが戦士部屋から出ると、あたりは夕陽の光で真っ赤に染まっていた。

これは何かの予兆だろうか?アンバーシャインは寒気を覚えた。どうか、そうでありませんように。

出入口付近で、選ばれた戦士達を呼び集める声が聞こえる。

アンバーシャインは自分が落ち込んでいたことが急に恥ずかしくなった。

他にも選ばれていない猫達はいるのに、皆戦いに行く戦士達を励ましている。

それに自分はキャンプの守りを頼まれたのだ。敵の戦士がここへ来る可能性は十分ある。

しっかりやらなくては。

アンバーシャインは小走りで選ばれた戦士達の元へ行くと、近くにいた自分の師であり親代わりでもあったナイトフラワーの前で止まった。

「ナイトフラワー」

そっと名前を呼ぶと、ナイトフラワーはアンバーシャインの額を優しく舐めた。

アンバーシャインは急に子猫に戻った気がした。

「大丈夫。私は絶対に負けない」

黒猫の頼もしい声に、アンバーシャインは安心した。

「……ええ、わかってます。絶対に勝ってきてください」

ナイトフラワーと別れた後、アンバーシャインはチアフルフットの姿を探した。

白と灰色の猫はすぐ見つかった。

「ああ、アンバーシャイン!さっきは……」

「いいんだ。それよりもチアフルフット、頑張れよ。それと」

アンバーシャインはチアフルフットの言葉を遮り、声をかけた。そして、途中で口をつぐむ。

「絶対に……絶対に戻ってこいよ」

チアフルフットは驚いたような顔をしたが、すぐに笑って頷いた。

「おう、当たり前だろ?」

「出発するぞ!!」

パッチクラウドの力強い掛け声がかかる。

選ばれた戦士達は一斉に出口のトンネルに向かって走り出した。

アンバーシャインはその姿一つ一つを目に焼き付け、1匹でも欠ける事なく無事に戻ってきてくれる事を祈った。
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投稿 by リンクステイル Sat Jul 25, 2015 1:31 am

第5章:計画的犯行


最後の戦士の尻尾が出口へ消えると、アンバーシャインは胸の毛を舐めて気持ちを落ち着かせた。

自分は選ばれなかったかもしれないけど、代わりにキャンプを守るという重大な任務を任された。

アンバーシャインは自分に言い聞かせた。

ここに残っている中の最年長は自分だ。しっかり仕切らなくては。

そこでアンバーシャインはまず、尻尾でレインアローを呼び寄せた。

若い戦士は水色の瞳を不安げに光らせてこちらに走ってきた。

「何でしょうか」

「保育部屋を守る優秀な戦士が必要だ。そこでレインアロー、お前に頼もうと思う」

レインアローは驚いて耳を立てた。

「い…いいんですか?」

「ああ。ラクーンファーとオーシャンキットは不安だろうから、父親のお前が行くといいと思ってな」

アンバーシャインがそう答えると、レインアローはほっとしたように頷き、急いで保育部屋へ走っていった。

次にアンバーシャインは、落ち着いた様子でキャンプの中央に座っているタロンシャープのもとへ歩いていった。

タロンシャープの横には、少し落ち着かない様子のウッドパッカーが座っていて、アンバーシャインが近づくと弾かれたように立ち上がった。

「アンバーシャイン!俺たちはどうすればいい?」

「まあ落ち着けってウッドパッカー」

アンバーシャインは友達をなだめた。ウッドパッカーは啄木鳥のようにせわしない。

「俺たちはキャンプの出入口を見張ろう。いつ敵が現れてもいいように」


「どこら辺を見張ろうか?」

キャンプを出ると、ウッドパッカーが辺りを見回して問いかけた。

「よし、それじゃあ────」

そう言いかけたアンバーシャインのお腹がぐぅと鳴った。

アンバーシャインは顔が火照るのがわかった。そういえば、朝から何も食べていない。

「何か捕まえて食べてきていいですよ。僕らが見張ってるんで」

タロンシャープが笑いを堪えながら言った。アンバーシャインは元弟子の気遣いに感謝した。

「ああ、そうするよ」

そう言うが早いが、アンバーシャインは全感覚をフル活用して獲物を探した。

そして数分後には、アンバーシャインの足元にはたくさんの獲物が山積みになっていた。

アンバーシャインはそのうちのハタネズミを2匹ペロリと平らげると、残りを咥えてキャンプに運んだ。

「早かったですね」

獲物を咥えてキャンプに戻ってきた元指導者を見て、タロンシャープが目を丸くした。

「こいつ、腹が減ると獲物を捕まえるスピードが尋常じゃなくなるからな……」

ウッドパッカーが呆れたように笑った。

アンバーシャインは肩をすくめると、キャンプに入り、獲物置き場へ獲物を置いた。

キャンプから出ると、アンバーシャインは見慣れた姿がこちらへ向かって走ってくるのが見えた。

「おい……見ろ!俺らの部族の見習いだ!」

ウッドパッカーが驚いたようにその姿を目で追った。

「ブレイズポー!」

タロンシャープが叫んだ。慌てて見習いを迎えに行く。

ライオンファーの弟子のぶち猫は、アンバーシャイン達の前で横滑りをして止まった。

恐怖に琥珀色の瞳を見開き、肩の傷口から出血している。

「ブレイズポー……」

「アンバーシャイン、パ…パッチクラウドが呼んでいます。今すぐ戦いに来い、と」

ブレイズポーはウッドパッカーの声を遮り、喘ぎながら言った。

アンバーシャインは目を見開いた。直接族長から指名?そんな馬鹿な。

「今、戦場はどんな状況だい?」

「パッチクラウドがひ…一つ、い、命を落としました。ファイア族があ、圧倒的に負けています…!」

それを聞くと、アンバーシャインは走り出した。

「ウッドパッカー、タロンシャープ、頼んだ!」

聞こえたかどうかはわからないが、叫んでおいた。

アンバーシャインは力強く地面を蹴って進んだ。

耳元で風がヒュンヒュン唸り、耳の奥では血がごうごうとなる。

景色が凄い勢いで後ろへ流れていき、息が上がる。

次第に血の臭いが強くなり、猫達の叫び声で風の音が掻き消された。

誰かが飛びかかってきた。

アンバーシャインは素早く身体を伏せて相手の腹の下に潜り込むと、思いっきり相手を蹴り上げた。

そして倒れた敵の上に素早く乗ると、相手の肩に思いっきり歯を食い込ませる。

相手は悲鳴を上げて逃げていった。

久しぶりの戦いなのに、身体がしっかりと動く。アンバーシャインは少し得意げになった。

それにしても、本当にウィング族は変わってしまったようだ。アンバーシャインはさっと左右に目を走らせた。

前よりも筋肉が盛り上がり、身体がシュッとしている。そればかりか、身体がファイア族より一回り大きい。

と、その時、目の端に白い影が映った。

ハッとして振り向くと、ウィング族の族長、スノウクラウドがファイア族の族長、パッチクラウドに狙いを定めているところだった。

パッチクラウドは他の戦士と取っ組み合っている。

族長が危ない!アンバーシャインは躊躇わずに飛び出した。

しかし、途中で思わず唸った。駄目だ、遠過ぎて間に合わない。

また、誰かが飛びかかってきた。

不意を突かれたアンバーシャインは驚きの声を上げて相手と取っ組み合った。

一瞬余裕ができ、アンバーシャインが族長達の方へ目を向けると、スノウクラウドが雄叫びを上げてパッチクラウドに飛び掛かる直前だった。

ファイア族はその声に驚いてそちらに注意を向けたが、ウィング族は全く気にすることもなく、その隙にファイア族の戦士を押さえつけてしまった。

こいつら、計画していたのか!?

アンバーシャインは背筋がぞくりとした。その間にも、パッチクラウドとスノウクラウドの距離が縮まっていく。

パッチクラウドのぎょっとした声が聞こえ、スノウクラウドの勝ち誇った叫び声が響き渡った。

ああ、もう終わりだ。

アンバーシャインは思った。

炎は、翼の起こしたたったひと吹きの風によって、二度とと燃え上がることはなくなるんだ。
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投稿 by リンクステイル Tue Jul 28, 2015 12:20 am

第6章:夜の花は儚く散る


スノウクラウドの鉤爪がキラリと光る。殺気に満ちた水色の瞳が、真っ直ぐにパッチクラウドを捉える。

もう駄目だ。俺たちファイア族は負けたんだ。

そう思った瞬間、パッチクラウドとスノウクラウドの間に、真っ黒な影が立ちはだかった。

血飛沫が舞い、その影が音もなく崩れ落ちる。

アンバーシャインは影の正体を見て、思わず叫んだ。

「ナイトフラワー!!」

親がいなかった自分を、ここまで育て上げてくれたナイトフラワー。

戦いや狩りの仕方も指導してくれて、一族を陰で支えていた副長。

その副長が、今、族長を庇ってあの白猫に傷を負わせられた。

────許せない。

ふつふつと怒りが腹の底から湧き上がり、身体中に力がみなぎってくる。

アンバーシャインは自分を押さえつけている敵の戦士を凄い勢いで投げ飛ばすと、今もなおパッチクラウドに襲いかかろうとしている憎き白猫に向かって走り出した。

スノウクラウドの血に濡れた鉤爪がパッチクラウドに当たる直前、アンバーシャインは雄叫びを上げてスノウクラウドに飛びかかった。

驚いた声を上げてこちらを向く白猫の肩に思い切り噛み付く。

血の味が口の中に広がり、相手がもがく振動が伝わってくる。

アンバーシャインは相手を離すと白猫と向き合った。腹の底から唸り声を上げ、全身の毛を逆立てる。

スノウクラウドは飛び退き、馬鹿にしたようにアンバーシャインを見て唸った。

しかし、怪我を負った肩をかばうようにして立っているのを、アンバーシャインは見逃さなかった。

「俺に本気で勝てると思うなよ、見習い。お前みたいなチビが九つの命を持つ俺に敵うわけがない」

アンバーシャインの中で、何かがプツンと切れた。

アンバーシャインは勢いよく相手に飛び掛かると、やすやすと仰向けにひっくり返した。

「よく覚えておけ。俺は見習いではなく、ファイア族の戦士だ。アンバーシャイン。それが俺の名だ」

驚くスノウクラウドの耳に鋭い声で囁くと、アンバーシャインは相手の腹を思い切り引き裂いた。

血が噴き出し、相手の腹が真っ赤に染まる。

もう一度攻撃しようと前足を振りかざすと、ふっとアンバーシャインの身体が浮いた。

一瞬何が起こったかわからず、唖然としていると、身体に物凄い衝撃が走った。

スノウクラウドに跳ね飛ばされたのだと気付いたのは、その直後だ。

白い大きな前足で押さえつけられ、アンバーシャインは呻いた。

瞬間、脇腹がかっと熱くなる。

その時、急に身体が軽くなった。

痛みを我慢しながら起き上がると、二つの部族の族長が取っ組み合っているところだった。

が、すぐにパッチクラウドが押さえつけられた。ひどい怪我を負っている。

勝ち誇った笑い声を上げるスノウクラウドを、アンバーシャインは突進して突き飛ばした。

体勢を立て直して再びスノウクラウドを襲いに行こうとすると、さっとパッチクラウドの尻尾が道を塞いだ。

気持ちが落ち着いてきて、周りを見る余裕が生まれると、アンバーシャインはその理由がわかった。

ウィング族の戦士たちが、自分たちを包囲していたのだ。

「退却!ファイア族、戻れ!」

パッチクラウドがかすれ声で叫んだ。

ファイア族の戦士たちが、敵を睨みながら後ずさり、こちらへ戻ってくる。

すると、ウィング族の戦士たちも、族長の後ろへ一列で並び始めた。

スノウクラウドが勝ち誇った笑みを浮かべた。

「どうやら俺たちの勝ちのようだな。ここの領土は俺たちのものだ。明日の日の出より後にお前たちをここで見たら、殺すからな」

ウィング族の戦士たちが歓声を上げた。

ファイア族の戦士たちはウィング族を睨み付けると、悔しそうにその場を去った。


キャンプの近くまで来ると、ブロッサムペルトに肩を借りて歩いていたナイトフラワーが急に崩れ落ちた。

「ナイトフラワー!」

アンバーシャインは慌てて駆け寄り、ナイトフラワーの側に座った。

「ああ……アンバーシャイン……」

ナイトフラワーは弱々しく笑った。息が浅く、早くなっていく。

「ごめん……なさいね……。大丈夫だって……言ったのに……」

「ナイトフラワー……」

「でも……きっと……貴方なら……私……が……いなくても……大丈夫……」

「そ…そんな、ナイトフラワー。まるで貴女が死ぬみたいじゃないですか……」

アンバーシャインは無理に明るく言おうと努めたが、最後の方は涙声になってしまった。

ナイトフラワーはふっと笑った。

「馬鹿ね……。貴方にも……わかるでしょう……?私が死ぬことくらい……」

「やめて……やめてください!」

涙が、ほろほろと流れ出ていく。あんな奴に、ナイトフラワーが殺されるなんて……!!

「さよなら、私の愛しい子。貴方なら、きっと…………」

ふっとナイトフラワーの瞳から光が消えた。アンバーシャインは悲しみの声を喉の奥から上げた。

「……さあ、キャンプに運ばなくては」

今まで押し黙っていた族長が、小さな声で言った。

「我が一族は、本当に素晴らしい戦士を亡くしてしまった」

アンバーシャインはそっと亡き副長の首筋を咥えあげると、チアフルフットと共にキャンプへ運び始めた。

地面には、ナイトフラワーの尻尾が引きずられた後が、細長く残っていた。
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投稿 by ラッキークロー Wed Jul 29, 2015 9:03 pm

 読みやすい量と文章でスラスラ読めて続きが楽しみです!

 ナイトフラワーがなくなってしまいました......この後アンバーシャインが副長になるのでしょうか?
 スノウクラウドの暴挙にどう立ち向かっていくのか...?続きを待ってます!(^^)!
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投稿 by リンクステイル Wed Jul 29, 2015 11:53 pm

ラッキークロー wrote:  読みやすい量と文章でスラスラ読めて続きが楽しみです!

 ナイトフラワーがなくなってしまいました......この後アンバーシャインが副長になるのでしょうか?
 スノウクラウドの暴挙にどう立ち向かっていくのか...?続きを待ってます!(^^)!
コメントありがとうございます!

そうです。非常に残念なことに、ナイトフラワーが亡くなってしまいました……。
あのナイトフラワーが………(←間接的に殺したのはこいつ)

アンバーシャイン、副長に任命されるはずです!きっと!w
スノウクラウドとアンバーシャインの戦いは、これからちょくちょく入れていこうかななんて考えておりますw

これからもよろしくお願いします!
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投稿 by リンクステイル Thu Jul 30, 2015 12:01 am

第7章:新たな副長、そして族長


ナイトフラワーの遺体が切り株の前に横たえられると、お別れのグルーミングが始まる前に、パッチクラウドが切り株の上に飛び乗った。

全員の目が一斉にそちらに集まる。パッチクラウドは話し始めた。

「今回の戦いで、我が部族は優秀な戦士を1匹亡くしてしまった。ナイトフラワーは、俺が受けるはずだった攻撃を代わりに受けて死んだ」

アンバーシャインは頭を垂れた。他の猫の悲しげな声も聞こえる。

「そこで俺は、非常に残念なことだが……新しい副長、そして族長を決めなければならない」

アンバーシャインはハッとして顔を上げた。驚きの声がさざ波のように猫達の間に広がっていく。

「何をおっしゃっているんですか」

フレイムハートの震え声がした。

「だってパッチクラウド、貴方はまだ生きているじゃないですか」

「ああ、俺はまだ生きている」

パッチクラウドは“まだ”を強調して言った。その時やっと、アンバーシャインは族長が苦しそうに立っているのに気が付いた。

「でも、もう時間が無いんだ。ナイトフラワーには本当に申し訳ないが、俺はあと少しでクラウド族の元へいく」

絶望した声があちこちで聞こえ始め、パッチクラウドはさっと尻尾を振ってその場を静まらせた。

「俺には時間がない」パッチクラウドは繰り返した。「さあ、始めなくては」

族長はそこで一旦言葉を切り、苦しそうに深呼吸すると、くいっと顎を上げた。

「ナイトフラワーの亡骸の前で、新しい族長を発表しよう。彼女の魂がこの猫の名を聞き、承認してくれるように」

パッチクラウドの言葉が、星が輝き始めた夜空に吸い込まれていく。

「チアフルフットを、ファイア族の新しい族長に任命する」

「えっ?」

隣に座っていたチアフルフットが、驚きの声を上げて立ち上がった。

困ったように、年長の戦士と族長の顔を交互に見る。自分の他にもっと相応しい戦士がいると言いたいのだろう。

「俺は、お前が立派な族長になれると信じている」

パッチクラウドはチアフルフットを見て頷いた。変える気はないらしい。

昔から族長はそうだ。アンバーシャインは苦笑した。自分の言ったことを決して曲げずに貫き通す。

チアフルフットも観念したのか、敬意を込めて頭を下げた。

「オレじゃあ力不足だとは思いますが、精一杯部族をまとめていきたいと思います」

チアフルフットのその言葉にパッチクラウドは頷くと、もう一度口を開いた。

「次に、新しい副長を発表しなくてはならない」

アンバーシャインは辺りを見回した。今度こそ年長の戦士が選ばれるはずだ。

「アンバーシャイン!」

パッチクラウドが力強い声で呼んだ。

「……えっ?」

思わず声を上げた。驚きが全身を駆け抜ける。自分がナイトフラワーの後を継ぐ?できるはずが無い。

しかし、アンバーシャインを見つめるパッチクラウドの瞳は、揺るぎなかった。

アンバーシャインは戸惑いながら立ち上がった。

「お前はナイトフラワーから素晴らしい指導を受けた。これからはチアフルフットとこの一族を支えていってくれ」

パッチクラウドはそう言い終えると深く息を吐いた。急に老けてしまったように見える。

「ですがパッチクラウド……!!」

アンバーシャインは慌てて族長に声を掛けたが、間に合わなかったようだ。

パッチクラウドの体が傾き、そのまま切り株の下へ落ちていった。

悲しみの声が辺りをつんざき、猫たちが亡き族長と副長の元へお別れのグルーミングをしに集まっていった。

「最後まで威厳のある族長だったな」

チアフルフットがぽつりと呟いた。目が宙を見つめている。

「……ああ」

アンバーシャインは答えた。死を受け入れられないのは、アンバーシャインも同じだった。


月が一番高いところまで昇り、族長と副長の亡骸の周りが空き始めた頃、ようやく2匹は亡骸の元へ向かった。

アンバーシャインはパッチクラウドの白黒の毛を敬意を込めて舐めた。

「今まで本当にありがとうございました。貴方のことは絶対に忘れません。でも、貴方が居なくなってしまったら、俺らはどうすればいいんですか?」

アンバーシャインは亡き族長に静かに話しかけると、チアフルフットと場所を入れ替わり、ナイトフラワーの側に立った。

そしてその場にうずくまると、ナイトフラワーの真っ黒な毛に鼻を突っ込み、懐かしい匂いを吸い込んだ。

「……ナイトフラワー」

アンバーシャインは囁き声で語りかけた。

「どうして貴女まで死ななくてはならなかったのですか?」

貴女が命を犠牲にしてまで守った族長は死んでしまいました。貴女の死は無駄になってしまったんです。

アンバーシャインは心の中でそう付け加えた。口に出してまで言う勇気は無かった。

「さよなら、俺の唯一の家族」

アンバーシャインは悲しげに溜息をつくと、前足の上に顎を乗せた。

その時、ふっとアンバーシャインの頭の中に、ある決意が浮かび上がった。

絶対にナイトフラワーの仇をとってやる。アンバーシャインは身体中がかっと熱くなった。

例え自分の命を犠牲にしてでも果たしてやる。お前は俺の永遠の宿敵だ、スノウクラウド。
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投稿 by リンクステイル Sat Aug 01, 2015 12:23 am

第8章:予感


そして時は現在に戻る───────


アンバーシャインは目を開けた。悲しみに満ちた記憶を、そっと胸の奥にしまう。

いつの間にか日は高く昇り、もう一番上に届きそうになっていた。

そうとう長い時間目を瞑っていたんだな。アンバーシャインの中に、ちらりと希望が見えた。

もしかすると、今まで自分は眠っていて、さっきの記憶は全部夢だったのかも。

しかし周りを見回すと、それは全て現実なんだと叩き込まれた気がした。

急がしそうに動き回る戦士たちの身体には生々しい傷跡があり、その中にあの黒猫の姿はない。

アンバーシャインは胸が悲しみに締め付けられ、苦しくなった。これからは二度とあの姿を見ることはなく、自分たちで一族を率いていかなくてはならないのだ。

「アンバーシャイン」

後ろから声を掛けられ、アンバーシャインはゆっくりと振り向いた。

そこには、心配そうな顔で自分を見つめるブロッサムペルトの姿があった。

「ぼーっとしてたけど、大丈夫?」

「ああ、大丈夫だ」

アンバーシャインは素っ気なく答えた。悲しみと怒りが混ざりあっていたため、他の猫に辛く当たってしまいそうだったからだ。

「そ、そう。なら良かった」

ちょっと傷ついた様子で三毛猫は言うと、そっとその場を離れた。しかし途中で立ち止まると、アンバーシャインの方を見た。

「何か手伝えることがあれば、手伝うから」

「ありがとう、ブロッサムペルト」

さっきより素っ気なくならないよう、アンバーシャインは口調に気をつけて答えた。

ブロッサムペルトはほっとしたように微笑むと、怪我した猫たちを慌ただしく看て回るカインドポーを手伝いにいった。

アンバーシャインは少しほっとした。心配してくれるのは嬉しかったが、今は一人にして欲しかったのだ。

でもいつまでも悲しみに沈んでいるわけにはいかない。アンバーシャインは自分を奮い立たせると、切り株の上へ飛び乗った。

一族の視線が一斉に自分に集まる。アンバーシャインは慣れない視線に少したじろぐと、深呼吸をして声を張り上げた。

「昨日は本当に悲しい出来事があった。だが我々ファイア族は、その悲しみから立ち直らなくてはならない。
まず戦士たちは、獲物を調達する組と、縄張り内をパトロールする組に分かれてくれ。絶対に一匹で行動しては駄目だ。
それと、ひどい怪我を負ったものは無理をするな。今日はゆっくり休め。
さあ、行動を始めてくれ!」

アンバーシャインがひらりと切り株から飛び降りると、戦士たちは動きだした。

そして空に星が輝き始める頃には、キャンプ内には獲物が十分に調達でき、誰もが腹一杯で落ち着いて体を休めていた。

アンバーシャインは満足げに頷いた。ファイア族が立ち直る日はそう遠く無さそうだ。

「お疲れ様」

柔らかな声がして、ブロッサムペルトが何かを咥えて隣にやってきた。

「これ、あなたにと思って。私はもう食べたから」

ブロッサムペルトがアンバーシャインの足元に落としたのは、美味しそうなネズミだった。途端に自分が腹ペコなのに気づく。

「ありがとう」

アンバーシャインは喉を鳴らすと、そのネズミを二口で平らげた。

「ねえ、アンバーシャイン………」ブロッサムペルトは何かを言いかけた。

その時、出入り口の近くに座っていたアイリスフットが、勢いよく立ち上がって叫んだ。

「チアフルクラウドとリヴァーストリームが帰ってきました!!」

その声に猫たちは立ち上がり始め、出入り口に2匹の姿が見えると、一斉にそちらへ走り出した。

「お帰りなさい!」「お疲れ様でした!」「“聖なる洞窟”はどうでしたか?」

チアフルクラウドは苦笑すると、浴びせられる言葉一つ一つに答えようと口を開きかけた。

しかし、それをリヴァーストリームがさっと遮った。

「今族長はお疲れなの。休ませてあげて」

猫たちは不満そうに族長のために道を開けた。慌てて自分も立ち上がる。

「ごめんよ、あいつのとこに行かなきゃ。ネズミありがとうな」

アンバーシャインはブロッサムペルトに声をかけると、2匹にかけよった。

「お疲れ、チアフル“クラウド”。まるで人気者だな!」

「まるで、じゃないよ。オレはいつでも人気者さ」

アンバーシャインの言葉に、チアフルクラウドは笑って答えた。いつもの親友だ、とアンバーシャインは少しほっとする。

「アンバーシャイン、私達がいない間の一族の様子はどうだった?」

リヴァーストリームが不安そうに聞いた。

「大丈夫だよ。だいぶ落ち着いてきたし、何よりカインドポーはよく頑張っていた」

それを聞いて、治療猫はほっとしたようだった。「留守番ありがとう、アンバーシャイン」

「お安い御用さ」アンバーシャインはふっと微笑んだ。

「オレ、もう休むよ。疲れちまった」

チアフルクラウドは疲れた声で言うと、大きく欠伸をした。

「ああ、そうだ」アンバーシャインは呟くと、尻尾で見習い2匹を呼び寄せた。

チアフルクラウドが怪訝な顔で見つめる中、アンバーシャインは見習い2匹に命じた。

「族長は物凄くお疲れだ。お前たちで部屋を整えてくれるか?」

「おいおいアンバーシャイン……」

そこまで気を使わなくてもいいと言わんばかりに、チアフルクラウドは困った声で言った。

「いいか、お前は族長になったんだ」

アンバーシャインはにやりと笑って言った。「これからがんがん働いてもらうために、部屋の整理くらいはさせないと」

チアフルクラウドが本気で困った顔をしたので、アンバーシャインと2匹の見習いは笑った。

「大丈夫、俺もいるって」アンバーシャインは安心させるように言うと、見習いたちの方へ向き直った。

「じゃ、よろしく頼むぞ」

「「はい!」」ヘイルポーとブレイズポーは元気よく返事をすると、駆け足で族長部屋となっている岩の割れ目へ向かった。

「じゃ、私はもう戻るわね」リヴァーストリームが言った。

アンバーシャインとチアフルクラウドは治療猫におやすみを告げた。リヴァーストリームは治療部屋へ去っていった。

一族の皆も次第に部屋へ引き上げ始め、空き地にいる猫たちの姿がまばらになってきた。

「じゃあ、オレも寝るとするかな」チアフルクラウドが眠そうに言った。

「じゃ、俺も寝る」アンバーシャインは欠伸をした。身体中が疲れ切っている。

「おやすみ、アンバーシャイン」

「おやすみ、チアフルクラウド」

お互いはお互いに声を掛け合うと、自分の寝床へと戻った。

アンバーシャインは戦士部屋の自分の位置で身体を丸めると、隣にチアフルクラウドがいないことに違和感を感じながら目を閉じた。

今日はとりあえず何も起こらずに平和に過ごせた。アンバーシャインはそのことにほっとしていたが、妙な胸騒ぎを覚えた。

もしかしたらこの平和は、明日にでも崩れるかもしれない。
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投稿 by リンクステイル Thu Aug 06, 2015 2:04 am

第9章:崩れ始める翼


アンバーシャインは一人、キャンプの中央に立ち尽くしていた。

足元には、見慣れた白と灰色の猫が、血まみれで転がっている。

「そんな…………!!」

アンバーシャインは絶望した声を上げた。こいつがいなくなったら、俺は………!!

「アンバーシャイン」

自分を呼ぶ声がした。

顔を上げると、目の前に黄金色の毛並みに炎の瞳を持つ猫が立っていた。

「アンバーシャイン、苦しみに惑わされるな。目先のことだけに囚われてはならない。敵を招き入れるな」

猫はそう告げると、次第に姿が薄れていった。

「フェニックス!」

アンバーシャインは叫んだ。「待って、待ってください!」


「待っていられないんだよ、アンバーシャイン!早く起きろ!君は副長だろ?」

聞き慣れた声が耳に飛び込んできて、アンバーシャインは目を覚ました。慌てて飛び起きると、乱れた毛を直し始める。

さっきの夢が頭から離れない。アンバーシャインは気持ちを落ち着かせるため、毛を舐める舌にさらに力を込めた。あれは何を意味するんだ?

「やっと目が覚めたな」チアフルクラウドが呆れたように言った。

「ごめん」アンバーシャインはチアフルクラウドの姿を見てほっとすると、答えた。

「さあ、夜明けのパトロールのメンバーを決めてくれ」

チアフルクラウドは欠伸をしながら言った。そうだ。副長の仕事の中には、それも含まれるんだった。

「わかった。お前はもう戻ってもいいよ。起こしてくれてありがとう」

「おうよ。メンバーを決めたら起こして、パトロール隊を送り出してくれ」

チアフルクラウドはそう言い残すと去っていった。アンバーシャインは早速仕事に取りかかった。

「ライオンファー、起きてください。夜明けのパトロールをお願いしたいのですが」

ライオンファーはすぐに目を覚ますと、アンバーシャインに向かって頷いた。「了解。俺の他に、あとは誰を連れて行こうか」

「ブレイズポー、アイリスフット、タロンシャープを連れて行ってください」

アンバーシャインは答えた。

ライオンファーはもう一度頷くと、パトロール隊のメンバーを起こし始めた。アンバーシャインはそれを確認すると、外へ出た。

夜明けの光がキャンプに差し込み始め、ひんやりとした空気が辺りを覆っている。

腹が減ったので、アンバーシャインは獲物置き場へと歩いていった。

太ったネズミを選び、かがんで食べていると、パトロール隊が出発するのが見えた。

今日も何事もありませんように。アンバーシャインはそう願わずにはいられなかった。

その時、目の端に三毛柄の毛が映った。

最後の一口を飲み込み、そちらに顔を向けると、ブロッサムペルトがこちらへ向かって歩いてきていた。

「おはよう、ブロッサムペルト」

アンバーシャインは声をかけた。最近ブロッサムペルトの姿を見る事が多くなった気がする。

「おはよう、アンバーシャイン」

三毛猫がはにかんだ様子で答えた。「ねえ、一緒に狩りに行かない?」

「ああ、行こう」アンバーシャインは立ち上がった。少しでも何も心配せずにいられる時間が欲しかったのだ。


狩りの結果は上々だった。2匹が大量の獲物を咥えてキャンプに戻る頃には、日がだいぶ高く上がっていた。

最後の獲物を持って帰ってくると、突然チアフルクラウドに呼び止められた。

「アンバーシャイン!早く来てくれ!」

切羽詰まったその声に、アンバーシャインは慌てて獲物を置くと、そちらへ走り出した。

「大変なことが起きている」

アンバーシャインが近くに来るとチアフルクラウドが言った。

「何があったんだ?」アンバーシャインは、近くに取り乱した様子で立っている夜明けのパトロール隊に聞いた。

「このままじゃウィング族に、あたし達の縄張りを根こそぎ持ってかれるわ!」

アイリスフットが悲鳴に近い声で言った。

「ウィング族が、我々の縄張りで狩りをしていたんだ。追い払おうとすると、『ここは俺たちの縄張りだ』と言って攻撃してきた」

「俺たちだって応戦しようとしました」タロンシャープが悔しそうに言った。

「でも、反撃しようとすると、次々とウィング族の戦士が出てきて……」

アンバーシャインはチアフルクラウドと目を合わせた。族長は頷いた。こちらの意思が伝わったようだ。

「俺とチアフルクラウドでそこへ行こう。でも」

反論しかけたライオンファーを、アンバーシャインは遮った。

「2匹だけじゃありません。心配しないでください。一族の強い戦士数名に、俺たちの後ろで隠れて待機してもらいましょう」

ライオンファーは納得したように頷いた。

「しかし、このキャンプを守る戦士も必要です」アンバーシャインは言った。

「俺とレインアローとタロンシャープでいいか?」

ライオンファーは言った。「レインアローは保育部屋を守りたがると思うがな」

「ありがとうございます。ブレイズポーは戦いに行かせるんですか?」

「ああ。あいつにとっても、いい経験になるだろう」

アンバーシャインは了解の印に頷くと、切り株の上に立って今の話と作戦を説明するチアフルクラウドを見上げた。

一族のショックは大きいものだったが、皆ウィング族に負けるものかといきり立っていた。

その通りだ。アンバーシャインは力がみなぎってくるのを感じた。ファイア族は、ウィング族なんかに負けたりはしない。

アンバーシャインは切り株から降りた族長と頷き合うと、同時に走り出し、そのままキャンプの出入口を抜けた。
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投稿 by リンクステイル Sat Aug 08, 2015 12:15 am

第10章:奪われた炎


「そんな……嘘だろ?」

チアフルクラウドが信じられないという風に言った。アンバーシャインは同感だと言わんばかりに唸る。

キャンプから出て少ししか進んでいないというのに、辺りにはウィング族の強い臭いが漂っていた。

不審に思って2匹がさらに歩を進めると、そこではウィング族の猫達が我が物顔で狩りをしていたのだ。

「確かにスノウクラウドは俺たちの領土を貰うとは言っていたが、あれはこの前戦場になった場所の事じゃなかったのか?」

アンバーシャインは口調に憎しみを込めながら言った。ああ、今すぐにでもスノウクラウドの喉を掻き切ってやりたい。

「落ち着け、アンバーシャイン」チアフルクラウドがそっと言った。

「まずは話を聞くんだ」

アンバーシャインは殺気をどうにか抑えると、近くを走り抜けようとした淡い灰色の猫を呼び止めた。

「おい、止まれ!」

灰色の猫は止まり、ゆっくりとこちらを振り向いた。その顔を見て、アンバーシャインは驚いて叫んだ。

「スカイフェザー!」

「や、やあ、アンバーシャイン」スカイフェザーは落ち着き無く言い目を逸らした。

アンバーシャインはショックを受けていた。スカイフェザーは見習いの頃からの知り合いで、境界線近くで会うとよく長い時間話をする仲だった。

「なあスカイフェザー」アンバーシャインはまだ顔を背けている友達に声を掛けた。

「どうしてこんなところで狩りをしているんだ?君達の部族はこの前の戦いの時に戦場になった領土だけを貰うんじゃなかったのか?」

「僕らには獲物が足りないんだ、アンバーシャイン」

スカイフェザーは必死に言った。水色の目が罪悪感に満ちている。

「だけどこれじゃ、今度は俺たちの食料がなくなっちまう」アンバーシャインは反論した。

「どうかわかってくれ!僕だってこんな事したくないよ。でも、族長が………」

そこでスカイフェザーははっと口を閉じた。慌てて左右に目を走らせると、飛ぶようにその場から逃げていく。

「あ、おい待て────」

アンバーシャインは止めようとしたが、遅かった。灰色の尻尾は木々の間に消え、もう見えなくなってしまった。

「見ろ、アンバーシャイン!」

突然チアフルクラウドが声を上げた。アンバーシャインはチアフルクラウドの視線を辿ると、そこにはあの憎たらしい白猫の姿があった。

アンバーシャインは喉の奥から唸り声を上げると、相手に飛び掛かる準備をした。しかしそれを、チアフルクラウドが尻尾で制する。

「ごめんよ、アンバーシャイン。だがここは族長のオレに任せてくれないか」

アンバーシャインは渋々チアフルクラウドの後ろについた。しかし、怒りに燃える目は真っ直ぐに白猫を見据えている。

「スノウクラウド、ちょっと良いですか」チアフルクラウドはウィング族の族長に近づくと、声を掛けた。

「やあチアフルクラウド」スノウクラウドは振り向いて答えた。嫌なほど穏やかな声だ。

「ここは我々の縄張りのはずだが……何か緊急なことでもあったかな?」

「失礼ですが」チアフルクラウドは言った。落ち着いた声だが、怒りを必死に抑えているのがアンバーシャインにはわかった。

「ここは我々ファイア族の縄張りです。この間の戦いで貴方がおっしゃったのは、その戦いで戦場となった領土を貰うということではなかったのですか?」

「ああ、そうだが?」スノウクラウドは素知らぬふりをして答える。アンバーシャインは首の毛を逆立てた。いつまで我慢が持つか自信がなくなってくる。

「ならば、なぜここで狩りをしているのです?ここは戦場にはなっていませんよね?」

チアフルクラウドの声に、だんだんと怒りが混じってきた。

そんな若い族長の様子を楽しんでいるかのように、白猫はニタァと笑った。

「我々ウィング族は、この前の戦いでファイア族に勝った。この後戦ったとしても絶対に結果は変わらない。つまりファイア族は我々の支配下にあるのだ」

「はっ!?」とうとうアンバーシャインの我慢の糸が切れた。

「ふざけんな!!お前らみたいな薄汚い奴らに領土なんて渡してたまるか!!さっさと出て行け泥棒どもが!!!!」

「おい………」チアフルクラウドは口調を荒げる副長を見て、困ったように声をかけようとした。

しかし、スノウクラウドの方が先だった。水色の目をきらりと光らせる。

「ああそうか。なら試してみようじゃないか」

スノウクラウドはさっと尻尾を振った。途端に四方八方からたくましいウィング族の戦士達が現れ、アンバーシャインとチアフルクラウドを包囲し始める。

スノウクラウドはぐっと目を細めた。口元には笑みを浮かべている。

「ウィング族、かかれ!」

族長の号令に、戦士達が雄叫びを上げながら2匹に向かって飛びかかっていく。

チアフルクラウドが息を吸い込んだのを感じる。アンバーシャインは身体にぐっと力を込めた。

「ファイア族、かかれー!!」

チアフルクラウドの力強い号令に、あちこちに隠れていたファイア族の戦士達が、一斉にウィング族の戦士達に飛びかかっていった。
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投稿 by リンクステイル Tue Aug 11, 2015 7:17 pm

第11章:救世主


ファイア族の戦士達とウィング族の戦士達が、互いに取っ組み合い始めた。

たちまち辺りは戦場と化した。

猫達の悲鳴が飛び交い、血の臭いが漂い始める。

アンバーシャインは小さな身体を駆使し、戦う猫達の間を素早く通り抜けた。

ターゲットはたった1匹。

愛しい黒猫を殺した全ての元凶。

アンバーシャインは左右に目を走らせ、さらに身体に力を込めた。

見つけた。敵はすぐそこだ。

アンバーシャインは思いっきり地面を蹴ると、その猫の首元を狙って飛びかかった。

「スノウクラウドッッ!!!」

白猫は突然の奇襲に驚き、恐怖に目を見開いた。

アンバーシャインはスノウクラウドに飛び掛かると、深く強く肩に噛み付いた。

スノウクラウドは悲鳴を上げ、身を捩らせた。が、アンバーシャインは離れない。

当然だ。アンバーシャインは満足げに唸った。今自分が噛み付いているこの肩は、この前の戦いで自分が重傷を負わせた場所なのだ。

しかし、アンバーシャインは相手を軽く見ていた、いや、見過ぎていた。

突然腹部に痛みが走り、アンバーシャインは思わず相手の肩を離してしまった。

と同時に身体に全くかからなくなる重力。

自分が腹を殴られて飛ばされているという事実に気づいたのは、落ちる一瞬前だった。

地面に強く叩きつけられ、数秒間息が吸えなくなる。

しばらく横になり喘ぐように息をしていると、急に自分の上に影がのしかかった。

はっと目を開けると、そこには肩から血を流し、怒りに目を燃やしているスノウクラウドの姿があった。

「よくも俺に傷を付けたな?」

「よくも族長とナイトフラワーを殺したな!!」

スノウクラウドの脅すような声に、負けじとアンバーシャインも怒鳴り返した。

痛みに耐えながらゆっくりと起き上がり、真正面でスノウクラウドと向き合う。

「ほう、あの黒猫は、お前の大事な奴だったのか」

スノウクラウドが目を光らせた。アンバーシャインは喉の奥から唸り声を上げた。

「俺の師であり、親代わりでもあったナイトフラワーを、お前は殺したんだ」

「これはこれは!偉大なるアンバーシャインには親がいないのか!!」

しめたと言わんばかりの口調で白猫は言う。アンバーシャインは相手に飛びかかった。

「黙れ!!!」

しかし準備していたスノウクラウドにあっさりと押さえつけられ、アンバーシャインは身動きが取れなくなった。

だがアンバーシャインも負けてばかりではいられない。

自分を押さえつけている白猫の前脚に深く爪を立てると、痛みに足を上げた一瞬の隙にアンバーシャインは身をよじって逃げた。

そして再びスノウクラウドに飛び掛かると、2匹は取っ組み合いを始めた。

突然肩に痛みが走り、アンバーシャインは呻いた。強く引っ掻かれたのだ。

その隙にアンバーシャインは再び押さえつけられてしまった。

スノウクラウドの水色の瞳が、残虐な光を帯びた。アンバーシャインは死を覚悟した。

「さらばだ、小さな戦士くん。あの世で会おうぜ」

スノウクラウドはアンバーシャインの首に強く噛み付いた。

アンバーシャインはだんだん意識が薄れていくのを感じ、目を閉じた。もう、終わりだ……。

その時、ふっと身体が軽くなり、頭上でスノウクラウドの悲鳴が響いた。

それと同時に慌てて逃げるウィング族の戦士達の足音が聞こえてきた。一体何があったんだ?

アンバーシャインはそっと目を開け、思わず息を飲んだ。

「すまなかったな、遅くなって」

真っ赤な瞳をした黄金色の雄猫が、心配そうに自分を覗き込んでいた。
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投稿 by リンクステイル Thu Aug 13, 2015 11:52 pm

第12章:不死鳥現るーチアフルクラウド視点ー


チアフルクラウドは、敵の戦士と取っ組み合っていた。

相手の殺気立った目を見て、チアフルクラウドは思わず恐怖を覚えた。

族長になるということは、常に誰かから命を狙われるということだと聞いたけれど、本当なんだ。

その時、突然スノウクラウドの悲鳴が響いた。

自分を抑えている敵の戦士が、驚いて顔を上げた。一瞬、その瞳に不安がよぎる。

すると、敵の戦士は何が起こったのかわかったらしく、目を恐怖に見開き慌ててその場から逃げ出していった。

他のウィング族の戦士たちも逃げ出していくのがわかり、チアフルクラウドは混乱した。

何があったのか気になり慌てて身体を起こすと、その光景に目を丸くした。

仰向けに転がっているアンバーシャインに覆い被さるようにして、あの伝説の猫が立っていたのだ。

「フェニックス!!」

思わず叫ぶと、チアフルクラウドはフェニックスのもとへ走っていった。

「助けに来てくださったんですね!」

チアフルクラウドはフェニックスの近くで足を止めて言った。感激し過ぎて思わず声が震えてしまう。

「ああ、間に合ったようで良かったよ」

フェニックスはほっとしたような声で言う。しかし、それに反論する声が聞こえた。

「間に合っていませんよ。2日前に起こった戦いで、我が部族の族長と副長が命を落としました」

チアフルクラウドが驚いてそちらを見ると、そこには悔しそうな表情のアンバーシャインが立っていた。

伝説の猫にあまりにも失礼じゃないか、とチアフルクラウドは思ったが、アンバーシャインの気持ちを考えて思い直した。

家族のいないアンバーシャインにとって、唯一の家族であったナイトフラワーを亡くしたんだ。

キツく言ってしまうのは仕方がないかもしれない。

「そうか……」途端にフェニックスは表情を暗くさせたが、すぐに何かを決心したような表情になった。

「私が来たからには二度とそのようなことは起こらせない。その為に私は来たのだから」

集まってきたファイア族の猫たちが歓声を上げた。

きっとほっとしているだろうと思い、アンバーシャインの方を向くと、驚いたことにアンバーシャインは疑るような目でフェニックスを見ていた。

まあいいか。チアフルクラウドは鼻を鳴らした。今にフェニックスに助けてもらう時が来るさ。

現にさっき助けてもらったのだろうけれど、きっと次助けてもらったら、フェニックスを信用し始めるだろう。

アンバーシャインのことは置いといて、まずはみんなが身体を休めなくてはいけないな。

チアフルクラウドはそう考え、フェニックスに話しかけた。

「さあ行きましょうフェニックス。オレたちのキャンプに案内します」



「ずいぶんと立派なキャンプだな」フェニックスは満足したように言った。

「ええ。とても住み心地がいいです」チアフルクラウドは頷いた。

2匹は切り株の近くに座って話をしていた。今、フェニックスの寝床をつくるように見習いたちに指示をし、完成を待っているところなのだ。

「あの、これ、食べますか?」ヘイルポーが近づいてきて、2匹の前にそれぞれ太ったネズミを置いた。

「ありがとう。君はなんという名前なんだい?」フェニックスは聞いた。

「ヘイルポー、です」ヘイルポーは恥ずかし気に答えた。

「ヘイルポー、寝床は作り終わったのか?」チアフルクラウドは尋ねた。

「はい、終わりました」ヘイルポーは言うと、頭をさっと下げてどこかへ行ってしまった。

「ずいぶんと礼儀正しい見習いだな」フェニックスは笑い、ネズミを一口頬張った。

「ええ。あの子はとてもいい見習いです。もう1匹のブレイズポーも、とてもいい子ですよ」

チアフルクラウドは言った。自分の見習いではないのに、とても誇らしかった。

「あの猫がブレイズポーかい?」フェニックスは尻尾で1匹の猫を示した。

チアフルクラウドはその尻尾の先を目で追うと、思わずため息をついた。

フェニックスが示す先には、相変わらず疑るような目でこちらを見ている副長がいた。

隣に座っているブロッサムペルトが、アンバーシャインの肩の深い傷を舐めているが、それを気にする素振りもなくこちらを睨んでいる。

「あれはアンバーシャインです。我が部族の副長で、普段は忠実で気の良い奴なんですが………」

チアフルクラウドはもう一度ため息をついた。何であんなに疑うのか訳が分からない。

「ほう。随分と小さいが、彼が副長か。そういえばさっき私に反論してきた猫だね」

「そうです。失礼な態度で本当にすみません」チアフルクラウドは謝った。

「いいや気にしなくていいよ。きっと彼は2日前の戦いで大切な猫を亡くしたんだろう。私がもう少し早ければ、な」

あんなアンバーシャインを見ても、驚いたことにフェニックスは怒らず、同情するような視線をアンバーシャインに向けた。

それに気づいたのか、アンバーシャインは目をそらした。

チアフルクラウドはフェニックスを尊敬した。疑われているというのに怒らず同情までするなんて。

「ところで、チアフルクラウド」フェニックスは何気ない口調で言った。

「なんでしょう」

「あの三毛猫は、アンバーシャインと付き合っているのかい?」

そんなことを聞いて、どうするのだろう。チアフルクラウドは驚いたが、こたえることにした。

「ブロッサムペルトですか……。いいえ、付き合ってないと思います。でも、ブロッサムペルトはアンバーシャインのことが好きでしょうね」

「そうか、ありがとう。少し気になっただけなんだ。私はもう寝るよ」フェニックスは言った。

「え、ええ。おやすみなさい」チアフルクラウドは返した。

フェニックスが自分の寝床へ消えるのを見届けると、チアフルクラウドは落ち着かなげに胸の毛を舐めた。

あの質問に自分が答えた時、なんでフェニックスは目を光らせたのだろうか。

まあいい。チアフルクラウドは頭を振り、その思考を追い払った。

そして一眠りしようと、自分の寝床へ消えていった。
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