Cat World War 【最初で最後の戦い】
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WARRIORS BBS :: 小説投稿フォーラム :: 完全オリジナル猫小説
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Cat World War 【最初で最後の戦い】
Cat World War_____【最初で最後の戦い】____
* 深い深い森の奥。全ての生き物が静まり返る秋の日に、
猫たちの戦いの火蓋が切られた。
完結・・・ゼッタイ・・・完結スル・・・!!
* 深い深い森の奥。全ての生き物が静まり返る秋の日に、
猫たちの戦いの火蓋が切られた。
完結・・・ゼッタイ・・・完結スル・・・!!
ヒーステイル- 副長
- 投稿数 : 282
Join date : 2015/05/17
Re: Cat World War 【最初で最後の戦い】
登場猫紹介 ※定期更新
*火ノ国
ショウリン
梢輪__火ノ国の元帥。白と黒の斑の小柄な雄猫。目はゴールド。
ヒジョウ
灯条__火ノ国の長。尾に斑点のある白い雄猫。目は緑。
カコ__灯条の連れ合い。黒い雌猫。目はブラウン。
エイラン
永藍__灯条の息子。ほっそりとした黒い雄猫。目はゴールド。本作の主人公。
ユキ__永藍の妹。斑の雌猫。目はブラウン。
ミユウ
実勇__永藍の弟。淡いショウガ色の雄猫。目はブラウン。
ノウリン
能鈴__カコの兄。灰色の大柄な雄猫。目は琥珀。
キシュウ
基愁__能鈴の息子。薄茶色の虎柄の大柄な雄猫。目はブルー。
ヒツ__基愁の妹。薄茶色の雌猫。目は琥珀。
コウロ
光露__灯条の親友。黄金色の小柄な雄猫。目は緑。
エノ__三毛の雌猫。目は緑。
テン__尾の短い灰色の雌猫。目は琥珀。
ケイフ
京斑__光露の息子。濃い灰色の雄猫。目は緑。
イクマ
郁眞__茶色の小柄な雄猫。目はブルー。
*火ノ国
ショウリン
梢輪__火ノ国の元帥。白と黒の斑の小柄な雄猫。目はゴールド。
ヒジョウ
灯条__火ノ国の長。尾に斑点のある白い雄猫。目は緑。
カコ__灯条の連れ合い。黒い雌猫。目はブラウン。
エイラン
永藍__灯条の息子。ほっそりとした黒い雄猫。目はゴールド。本作の主人公。
ユキ__永藍の妹。斑の雌猫。目はブラウン。
ミユウ
実勇__永藍の弟。淡いショウガ色の雄猫。目はブラウン。
ノウリン
能鈴__カコの兄。灰色の大柄な雄猫。目は琥珀。
キシュウ
基愁__能鈴の息子。薄茶色の虎柄の大柄な雄猫。目はブルー。
ヒツ__基愁の妹。薄茶色の雌猫。目は琥珀。
コウロ
光露__灯条の親友。黄金色の小柄な雄猫。目は緑。
エノ__三毛の雌猫。目は緑。
テン__尾の短い灰色の雌猫。目は琥珀。
ケイフ
京斑__光露の息子。濃い灰色の雄猫。目は緑。
イクマ
郁眞__茶色の小柄な雄猫。目はブルー。
ヒーステイル- 副長
- 投稿数 : 282
Join date : 2015/05/17
Re: Cat World War 【最初で最後の戦い】
*独ノ国
マルティン__独ノ国の元帥。クリーム色の雄猫。目はゴールド。
ラウバル__独ノ国の長。黄金色の逞しい雄猫。目はブルー。
ブラウン__ラウバルの連れ合い。白い雌猫。目はブルー。
プレール__独ノ国の副長。灰色の虎柄の雄猫。目は緑。
ルイーダ__淡い灰色の雄猫。目はブルー。
ヴァルター__白い大柄な雄猫。目は琥珀。
ランド__ラウバルの弟。黒い雄猫。目は琥珀。
スコル__ランドの妹。茶色の雌猫。目はブルー。
カール__マルティンの息子。銀色の雄猫。目はオレンジ。
ルート__カールの弟。金色の大柄な雄猫。目はブルー。
モニカ__ショウガ色の雌猫。目は緑。
マルティン__独ノ国の元帥。クリーム色の雄猫。目はゴールド。
ラウバル__独ノ国の長。黄金色の逞しい雄猫。目はブルー。
ブラウン__ラウバルの連れ合い。白い雌猫。目はブルー。
プレール__独ノ国の副長。灰色の虎柄の雄猫。目は緑。
ルイーダ__淡い灰色の雄猫。目はブルー。
ヴァルター__白い大柄な雄猫。目は琥珀。
ランド__ラウバルの弟。黒い雄猫。目は琥珀。
スコル__ランドの妹。茶色の雌猫。目はブルー。
カール__マルティンの息子。銀色の雄猫。目はオレンジ。
ルート__カールの弟。金色の大柄な雄猫。目はブルー。
モニカ__ショウガ色の雌猫。目は緑。
ヒーステイル- 副長
- 投稿数 : 282
Join date : 2015/05/17
Re: Cat World War 【最初で最後の戦い】
*維ノ国
トーリオ__維ノ国の元帥。茶色とショウガ色の雄猫。目はゴールド。
ペニー__維の国の長。灰色の大柄な雄猫。目はブルー。
ガレア__ペニーの息子。濃い灰色の痩せた雄猫。目は琥珀。
トロム__ガレアの姉。濃いオレンジ色の雌猫。目は琥珀。
ナージ__クリーム色の雄猫。目はグリーン。
ジェロ__白い雌猫。目はグリーン。
ジュゼ__斑の大柄な雄猫。目は琥珀。
チャーノ__ナージの兄。濃いクリーム色の雄猫。目はグリーン。
トーリオ__維ノ国の元帥。茶色とショウガ色の雄猫。目はゴールド。
ペニー__維の国の長。灰色の大柄な雄猫。目はブルー。
ガレア__ペニーの息子。濃い灰色の痩せた雄猫。目は琥珀。
トロム__ガレアの姉。濃いオレンジ色の雌猫。目は琥珀。
ナージ__クリーム色の雄猫。目はグリーン。
ジェロ__白い雌猫。目はグリーン。
ジュゼ__斑の大柄な雄猫。目は琥珀。
チャーノ__ナージの兄。濃いクリーム色の雄猫。目はグリーン。
ヒーステイル- 副長
- 投稿数 : 282
Join date : 2015/05/17
Re: Cat World War 【最初で最後の戦い】
*利ノ国
トルー__利ノ国の元帥。濃い茶色の雄猫。目はゴールド。
スペル__利ノ国の長。虎柄の大柄な雄猫。目はグリーン。
レッド__スペルの息子。黄金色の大柄な雄猫。目はブルー。
ウィリー__レッドの弟。黄金色の大柄な雄猫。目は淡い黄色。
ミッチ__黒い雌猫。目は琥珀。
アーネス__灰色の虎柄の雄猫。目はブルー。
グルー__口周りの黒い大柄な白い雄猫。目はブルー。
ビー__焦げ茶色の小柄な雄猫。目はグリーン。
メリー__薄茶色の雌猫。目は琥珀。
*阿ノ国
ヘルミナ__阿ノ国の元帥。焦げ茶色の虎柄の雌猫。目はゴールド。
ファン__阿ノ国の長。淡い灰色の大柄な雄猫。目はブルー。
ブラン__縞模様と斑点のある藤色の背の高い雄猫。目はグリーン。
*柱ノ国
介石__柱ノ国の元帥。白と黒の斑の雄猫。目はゴールド。
黄石__柱ノ国の長。三毛の小柄な雌猫。目は琥珀。
王耀__焦げ茶色の雄猫。目は琥珀。
勇洙__黒い毛皮に縞模様のある雄猫。目はグリーン。
香霧__黒い毛皮の雄猫。目は琥珀。
小梅__三毛柄の雌猫。目はグリーン。
*栄ノ国
エーベス__栄ノ国の元帥。淡い金茶色に縞模様のある雌猫。目はゴールド。
ウィンド__栄ノ国の長。灰色の大柄な雄猫。目はブルー。
クラウンド__金色の毛皮の雄猫。目はグリーン。
コット__クラウンドの兄。赤茶色の大柄な雄猫。目はグリーン。
ライト、ウェーン__クラウンドの兄。
*美ノ国
ポール__美ノ国の元帥。黒い大柄な雄猫。目はゴールド。
ディエ__美ノ国の長。ショウガ色の斑の雌猫。目はブルー。
ルクレール__白い雄猫。目は濃いブルー。
*瑞ノ国
アンリ__瑞ノ国の元帥。ショウガ色の虎柄の雄猫。目はゴールド。
モッタ__瑞ノ国の長。濃い灰色の毛足の長い小柄な雌猫。目は琥珀。
バッシュ__黄金色の毛皮の雄猫。目はブルー。
ファドーツ__バッシュの妹。三毛の小柄な雌猫。目はブルー。
ローデ__茶色の虎柄の雄猫。目はグリーン。
ヘーゼル__淡い茶色の雌猫。目は琥珀。
*浪ノ国
イワン__浪ノ国の元帥。銀色の大柄な雄猫。目はゴールド。
ジュガ__浪ノ国の長。茶色いがっしりした雄猫。目は濃緋色。
イヴァン__濃い灰色と白の大柄な雄猫。目はロイヤルブルー。
ウクナ__イヴァンの姉。クリーム色の雌猫。目はグリーン。
ベルーラ__イヴァンの妹。黒い虎柄の雌猫。目はブルー。
トルー__利ノ国の元帥。濃い茶色の雄猫。目はゴールド。
スペル__利ノ国の長。虎柄の大柄な雄猫。目はグリーン。
レッド__スペルの息子。黄金色の大柄な雄猫。目はブルー。
ウィリー__レッドの弟。黄金色の大柄な雄猫。目は淡い黄色。
ミッチ__黒い雌猫。目は琥珀。
アーネス__灰色の虎柄の雄猫。目はブルー。
グルー__口周りの黒い大柄な白い雄猫。目はブルー。
ビー__焦げ茶色の小柄な雄猫。目はグリーン。
メリー__薄茶色の雌猫。目は琥珀。
*阿ノ国
ヘルミナ__阿ノ国の元帥。焦げ茶色の虎柄の雌猫。目はゴールド。
ファン__阿ノ国の長。淡い灰色の大柄な雄猫。目はブルー。
ブラン__縞模様と斑点のある藤色の背の高い雄猫。目はグリーン。
*柱ノ国
介石__柱ノ国の元帥。白と黒の斑の雄猫。目はゴールド。
黄石__柱ノ国の長。三毛の小柄な雌猫。目は琥珀。
王耀__焦げ茶色の雄猫。目は琥珀。
勇洙__黒い毛皮に縞模様のある雄猫。目はグリーン。
香霧__黒い毛皮の雄猫。目は琥珀。
小梅__三毛柄の雌猫。目はグリーン。
*栄ノ国
エーベス__栄ノ国の元帥。淡い金茶色に縞模様のある雌猫。目はゴールド。
ウィンド__栄ノ国の長。灰色の大柄な雄猫。目はブルー。
クラウンド__金色の毛皮の雄猫。目はグリーン。
コット__クラウンドの兄。赤茶色の大柄な雄猫。目はグリーン。
ライト、ウェーン__クラウンドの兄。
*美ノ国
ポール__美ノ国の元帥。黒い大柄な雄猫。目はゴールド。
ディエ__美ノ国の長。ショウガ色の斑の雌猫。目はブルー。
ルクレール__白い雄猫。目は濃いブルー。
*瑞ノ国
アンリ__瑞ノ国の元帥。ショウガ色の虎柄の雄猫。目はゴールド。
モッタ__瑞ノ国の長。濃い灰色の毛足の長い小柄な雌猫。目は琥珀。
バッシュ__黄金色の毛皮の雄猫。目はブルー。
ファドーツ__バッシュの妹。三毛の小柄な雌猫。目はブルー。
ローデ__茶色の虎柄の雄猫。目はグリーン。
ヘーゼル__淡い茶色の雌猫。目は琥珀。
*浪ノ国
イワン__浪ノ国の元帥。銀色の大柄な雄猫。目はゴールド。
ジュガ__浪ノ国の長。茶色いがっしりした雄猫。目は濃緋色。
イヴァン__濃い灰色と白の大柄な雄猫。目はロイヤルブルー。
ウクナ__イヴァンの姉。クリーム色の雌猫。目はグリーン。
ベルーラ__イヴァンの妹。黒い虎柄の雌猫。目はブルー。
最終編集者 ヒーステイル [ Sat May 13, 2017 5:49 pm ], 編集回数 1 回
ヒーステイル- 副長
- 投稿数 : 282
Join date : 2015/05/17
Re: Cat World War 【最初で最後の戦い】
1コメ目ゲット!
Cat World Warの題名に惹かれてやってまいりました。登場猫を見ているだけでワクワクします! これからどんな物語が紡がれるのかが楽しみです^_^
和名がいいですねえ……
完結まで頑張ってください! 美味しい和菓子差し入れしますよ
Cat World Warの題名に惹かれてやってまいりました。登場猫を見ているだけでワクワクします! これからどんな物語が紡がれるのかが楽しみです^_^
和名がいいですねえ……
完結まで頑張ってください! 美味しい和菓子差し入れしますよ
ウィンターリーフ@冬葉- 年長戦士
- 投稿数 : 140
Join date : 2015/06/20
所在地 : 北国
Re: Cat World War 【最初で最後の戦い】
はじめましてーっ!
私こうゆうジャンルの物語大好きです!
応援してます!
私こうゆうジャンルの物語大好きです!
応援してます!
まーしゅ- 子猫
- 投稿数 : 9
Join date : 2017/03/12
所在地 : 日本のどっか
Re: Cat World War 【最初で最後の戦い】
ウィンターリーフ@冬葉 wrote:1コメ目ゲット!
Cat World Warの題名に惹かれてやってまいりました。登場猫を見ているだけでワクワクします! これからどんな物語が紡がれるのかが楽しみです^_^
和名がいいですねえ……
完結まで頑張ってください! 美味しい和菓子差し入れしますよ
コメありです!
登場猫を紹介しただけで終わらぬよう頑張りたいです・・・!w^^;完結したいです!(するとは言ってない)
お互い頑張りましょう!
ヒーステイル- 副長
- 投稿数 : 282
Join date : 2015/05/17
Re: Cat World War 【最初で最後の戦い】
まーしゅ wrote:はじめましてーっ!
私こうゆうジャンルの物語大好きです!
応援してます!
初めまして!コメありです!
ご期待に添えるよう頑張ります!
ヒーステイル- 副長
- 投稿数 : 282
Join date : 2015/05/17
Re: Cat World War 【最初で最後の戦い】
【第1章】
淡い色の花びらがひらひらと舞ってきた。ぱしんと前足で挟んでキャッチしてみるが、ここらでは見ない色の花だった。
「なあ、兄さん」
ルートは器用に後ろ足でバランスを保つと、花びらを挟んだまま白銀色の猫を振り返った。
「この花はなんだ?」
白銀色の猫はこちらを振り返ると、小さな頭をかしげてルートの前足を覗き込んだ。兄は暫くふんふんと鼻を鳴らしていたが、やがて顔を上げると、にやにやと目を細めてルートを見た。
「これは、火ノ花だ」
「火ノ花?なんだ、それは。きいたことがないぞ」
「当たり前だろ、まだチビのお前には知らないことがたくさんあるんだ」
兄はにやにやと言う。
ルートはむっとしたが何も言い返さずに尻尾を振った。
ルートの黄金色の身体は、同世代の他の猫よりも大きい。ルートはまだ子猫、ということではなく、成猫の仲間入りをしたばかりの青年だ。兄よりも体つきはがっしりしているだろう。だから、ルートは決して「チビ」というわけではないのだ。
だが、年の離れた兄の身体には、もう消えないであろう大きな傷や、激しく戦ってきた証、見えない勲章というものが多く存在する。それらは全て、ルートにはないものだ。
無言でぱたぱたと尻尾を振るルートを、兄は笑ってなだめた。
「まあ、お前はすぐに大きくなる。心配するな。そうだな、この花は、火ノ国のものだ」
「火ノ国・・・」
聞いたことはある。ここから東の方角にある、小さな部族。噂によれば、彼らはすらりと華奢で小柄でありながら、その地でしか生息しない特殊な獲物を食べ、大きな力を蓄えているのだという。
「ラウバルも恐れる猫が住んでいるんだろう」
ルートは兄を仰ぎ見た。ぱっと前足を広げ、中から花びらを解き放つ。淡い色の花はルートの前で一瞬舞うと、すぐに遠くへ消えてしまった。
「長が言うことが全てとは、限らねえよ」
兄がぽつりと言う。ルートは呆れて溜息をついた。
「おいおい、ラウバルに聞かれたらどうするんだ!兄さん、殺されるぞ」
「俺を殺すような猫だったら、この独ノ国は終わりだな」
再びにやにやと笑みを浮かべて、兄は言った。悔しいが、そこは同意だ。兄は、こんなお調子者でも、全ての猫が尊敬するような偉大な猫なのだ。認めたくはないが。
「カール!」
遠くから足音が聞こえてくる。兄が耳を立てると、灰色の虎猫が姿を表した。
「プレール?なんだよ?」
「ラウバルからの言伝だ」
副長はさっと胸を舐めて見出しを整えると、東の方にくいっと顎をしゃくった。
「火ノ国が交流を求めてるらしい・・・だが、彼らはまだ他の部族を多く知らない。このままでは、我々に不利益だろう。だから、カール、お前を火ノ国に送る」
「はあ?」
兄は首を突き出し、牙を見せて素っ頓狂な声を上げた。ルートはぎょっとして兄とプレールを交互に見た。兄さんが、火ノ国に行くって?
「俺が行って何になるって言うんだよ?リスが木の実を犬に渡すくらい意味がないな!」
「長が言うには、経験豊富なカールなら、火ノ国にたくさんのことをもたらせるだろう、ということらしい」
「なんだ、それ。俺が行きたいくらいだ」
ルートは首を振ると、兄の背中を尻尾ではたいた。
「しゃきっとしろ。兄さんは、とても名誉なことを任されたんだぞ」
「兄を裏切るのか・・・」
プレールが苦笑をして肩をすくめた。
「安心してくれ。火ノ国は、長の息子の指導をお願いしたいらしい。ようは、指導対象が独ノ国から火ノ国の雄猫に変わるだけだ。カールなら楽勝だろ?」
「は?当ったり前だろ!」
「相変わらず乗せられやすい・・・」
兄はさっきの渋り方はなんだったのかというほどに目を輝かせ、笑いながら今にも駆け出しそうな勢いである。
カールは跳ねるようにぱっと振り返ってルートの耳を楽しそうにはたいた。
「ルート!兄ちゃんがいないからって泣くなよ?」
「だれが泣くか」
ルートが低く唸ると、兄はふざけて悲鳴を上げて伏せたが、ふと力をぬいてどこか遠くをみる目になった。
ルートが目を見張ると、カールはのそりと起き上がり、弟の額を舐めた。
「そうだよな。俺の弟だもんな」
ルートが何も言わずにいると、兄はプレールの横に付き、そのまま歩きさってしまった。
翌日、カールは火ノ国に向けて出発した。
淡い色の花びらがひらひらと舞ってきた。ぱしんと前足で挟んでキャッチしてみるが、ここらでは見ない色の花だった。
「なあ、兄さん」
ルートは器用に後ろ足でバランスを保つと、花びらを挟んだまま白銀色の猫を振り返った。
「この花はなんだ?」
白銀色の猫はこちらを振り返ると、小さな頭をかしげてルートの前足を覗き込んだ。兄は暫くふんふんと鼻を鳴らしていたが、やがて顔を上げると、にやにやと目を細めてルートを見た。
「これは、火ノ花だ」
「火ノ花?なんだ、それは。きいたことがないぞ」
「当たり前だろ、まだチビのお前には知らないことがたくさんあるんだ」
兄はにやにやと言う。
ルートはむっとしたが何も言い返さずに尻尾を振った。
ルートの黄金色の身体は、同世代の他の猫よりも大きい。ルートはまだ子猫、ということではなく、成猫の仲間入りをしたばかりの青年だ。兄よりも体つきはがっしりしているだろう。だから、ルートは決して「チビ」というわけではないのだ。
だが、年の離れた兄の身体には、もう消えないであろう大きな傷や、激しく戦ってきた証、見えない勲章というものが多く存在する。それらは全て、ルートにはないものだ。
無言でぱたぱたと尻尾を振るルートを、兄は笑ってなだめた。
「まあ、お前はすぐに大きくなる。心配するな。そうだな、この花は、火ノ国のものだ」
「火ノ国・・・」
聞いたことはある。ここから東の方角にある、小さな部族。噂によれば、彼らはすらりと華奢で小柄でありながら、その地でしか生息しない特殊な獲物を食べ、大きな力を蓄えているのだという。
「ラウバルも恐れる猫が住んでいるんだろう」
ルートは兄を仰ぎ見た。ぱっと前足を広げ、中から花びらを解き放つ。淡い色の花はルートの前で一瞬舞うと、すぐに遠くへ消えてしまった。
「長が言うことが全てとは、限らねえよ」
兄がぽつりと言う。ルートは呆れて溜息をついた。
「おいおい、ラウバルに聞かれたらどうするんだ!兄さん、殺されるぞ」
「俺を殺すような猫だったら、この独ノ国は終わりだな」
再びにやにやと笑みを浮かべて、兄は言った。悔しいが、そこは同意だ。兄は、こんなお調子者でも、全ての猫が尊敬するような偉大な猫なのだ。認めたくはないが。
「カール!」
遠くから足音が聞こえてくる。兄が耳を立てると、灰色の虎猫が姿を表した。
「プレール?なんだよ?」
「ラウバルからの言伝だ」
副長はさっと胸を舐めて見出しを整えると、東の方にくいっと顎をしゃくった。
「火ノ国が交流を求めてるらしい・・・だが、彼らはまだ他の部族を多く知らない。このままでは、我々に不利益だろう。だから、カール、お前を火ノ国に送る」
「はあ?」
兄は首を突き出し、牙を見せて素っ頓狂な声を上げた。ルートはぎょっとして兄とプレールを交互に見た。兄さんが、火ノ国に行くって?
「俺が行って何になるって言うんだよ?リスが木の実を犬に渡すくらい意味がないな!」
「長が言うには、経験豊富なカールなら、火ノ国にたくさんのことをもたらせるだろう、ということらしい」
「なんだ、それ。俺が行きたいくらいだ」
ルートは首を振ると、兄の背中を尻尾ではたいた。
「しゃきっとしろ。兄さんは、とても名誉なことを任されたんだぞ」
「兄を裏切るのか・・・」
プレールが苦笑をして肩をすくめた。
「安心してくれ。火ノ国は、長の息子の指導をお願いしたいらしい。ようは、指導対象が独ノ国から火ノ国の雄猫に変わるだけだ。カールなら楽勝だろ?」
「は?当ったり前だろ!」
「相変わらず乗せられやすい・・・」
兄はさっきの渋り方はなんだったのかというほどに目を輝かせ、笑いながら今にも駆け出しそうな勢いである。
カールは跳ねるようにぱっと振り返ってルートの耳を楽しそうにはたいた。
「ルート!兄ちゃんがいないからって泣くなよ?」
「だれが泣くか」
ルートが低く唸ると、兄はふざけて悲鳴を上げて伏せたが、ふと力をぬいてどこか遠くをみる目になった。
ルートが目を見張ると、カールはのそりと起き上がり、弟の額を舐めた。
「そうだよな。俺の弟だもんな」
ルートが何も言わずにいると、兄はプレールの横に付き、そのまま歩きさってしまった。
翌日、カールは火ノ国に向けて出発した。
ヒーステイル- 副長
- 投稿数 : 282
Join date : 2015/05/17
Re: Cat World War 【最初で最後の戦い】
【第2章】
「・・・なあ、おい。永藍、おいってば」
肩を叩かれ、ぼんやりと散っていく花を見ていた永藍ははっとして飛び上がった。
「すまない、郁眞。どうした?」
「まったく。変なキノコでも食ったか?食い意地張るのもいい加減にしろよ」
「張ってないって」
永藍は苦笑して言った。郁眞は普段あまり冗談を言わない猫なので、反応に少し困る。
隣に腰を下ろした小柄な雄猫は、空色の瞳を一瞬きらめかせ、永藍に向かって目配せをしてみせた。
「知ってるか。今日、独ノ国から使いの猫が来るらしい」
「独ノ国?」
永藍は小首を傾げた。名前は聞いたことがある。遠い地に栄えている部族で、逞しい身体と、美しい毛並みをしているらしい。
この火ノ国は他との交流を持っていない。永藍の知る限りでは大きな縄張り争いもなく、猫たちは戦いというものを知らない。それが今になって独ノ国と交流とは、一体灯条は何を考えているのだろうか?
「怖い猫じゃないといいけどな」
永藍がつぶやくと、郁眞は肩を竦めて尻尾をさっと払った。
「どうだろうな。他所の猫の考えることなど、わかったもんじゃない。最近、梢輪に会いにきている黄金色の猫__利ノ国の猫らしい」
言い終わると同時に、どこからか利ノ国の匂いが漂ってきた。永藍はぱっと立ち上がると、辺りを警戒して目を巡らせた。
(相変わらず嗅ぎ慣れない匂いだ)
前方から、ようやく歩み寄ってくる二匹の雄猫の姿が見えた。永藍は微かに顔を顰め、鼻をひくつかせた。花の香りとも、森の香りとも違う__もっと開けた場所、色々な匂いが入り混じり、漂うほど広大な土地。強者の匂いだ。
「やあ!火ノ国の猫かい?」
二匹のうち、鮮やかなブルーの目をした雄猫が口を開いた。花を咲かせたような笑顔になり、駆け寄ってくる。
大柄な雄猫に見下され、永藍は思わず一歩後退った。迫力に慄いた屈辱で耳が火照るが、なんとか喉を動かして挨拶を返す。
「こ__こんにちは。利ノ国の猫ですよね?」
「ああ、そうさ。君、名前は?」
「相手に名を聞く前に、先に名乗るのが礼儀だろう」
警戒して耳を伏せ、低い声で唸りながら郁眞が言った。永藍はひやりとして友人を見た。数は同じだが、相手の体格を見れば、どう考えたってこちらの分が悪い。ここは波風を立てないことが最適だと思ったのだ。
雄猫がゆっくりと郁眞を見た。好意的に見えたブルーの目が、今は冷ややかに光っている。すると、それまで一歩下がっていた淡い黄色の目の雄猫が慌てたように相方を押しのけた。
「やめろよ、レッド・・・!お邪魔してるのは僕達なんだ、失礼だろ」
レッドはじろりと雄猫を見返したが、やがてため息を吐き、頷いた。
「わかったよ、ウィリー。悪かったね、君たち」
永藍はびっくりして目を見開いた。どうにか「いや」と返すが、どうも落ち着かない気分になる。まさか、利ノ国の猫が自ら仲間を止めるとは。
(俺は彼らを見誤っていたようだ)
己の失態を恥じつつ、永藍はぺこりと頭を下げた。郁眞もそろりとやってきて、隣でお辞儀をする。
「俺は永藍です。火ノ国へようこそ」
「郁眞です」
レッドとウィリーはちらりと目を交わすと、屈託なく笑って一声鳴いた。
「ウィリーだよ」
「俺はレッド!これからよろしくな、火ノ国の戦士たち!」
「・・・なあ、おい。永藍、おいってば」
肩を叩かれ、ぼんやりと散っていく花を見ていた永藍ははっとして飛び上がった。
「すまない、郁眞。どうした?」
「まったく。変なキノコでも食ったか?食い意地張るのもいい加減にしろよ」
「張ってないって」
永藍は苦笑して言った。郁眞は普段あまり冗談を言わない猫なので、反応に少し困る。
隣に腰を下ろした小柄な雄猫は、空色の瞳を一瞬きらめかせ、永藍に向かって目配せをしてみせた。
「知ってるか。今日、独ノ国から使いの猫が来るらしい」
「独ノ国?」
永藍は小首を傾げた。名前は聞いたことがある。遠い地に栄えている部族で、逞しい身体と、美しい毛並みをしているらしい。
この火ノ国は他との交流を持っていない。永藍の知る限りでは大きな縄張り争いもなく、猫たちは戦いというものを知らない。それが今になって独ノ国と交流とは、一体灯条は何を考えているのだろうか?
「怖い猫じゃないといいけどな」
永藍がつぶやくと、郁眞は肩を竦めて尻尾をさっと払った。
「どうだろうな。他所の猫の考えることなど、わかったもんじゃない。最近、梢輪に会いにきている黄金色の猫__利ノ国の猫らしい」
言い終わると同時に、どこからか利ノ国の匂いが漂ってきた。永藍はぱっと立ち上がると、辺りを警戒して目を巡らせた。
(相変わらず嗅ぎ慣れない匂いだ)
前方から、ようやく歩み寄ってくる二匹の雄猫の姿が見えた。永藍は微かに顔を顰め、鼻をひくつかせた。花の香りとも、森の香りとも違う__もっと開けた場所、色々な匂いが入り混じり、漂うほど広大な土地。強者の匂いだ。
「やあ!火ノ国の猫かい?」
二匹のうち、鮮やかなブルーの目をした雄猫が口を開いた。花を咲かせたような笑顔になり、駆け寄ってくる。
大柄な雄猫に見下され、永藍は思わず一歩後退った。迫力に慄いた屈辱で耳が火照るが、なんとか喉を動かして挨拶を返す。
「こ__こんにちは。利ノ国の猫ですよね?」
「ああ、そうさ。君、名前は?」
「相手に名を聞く前に、先に名乗るのが礼儀だろう」
警戒して耳を伏せ、低い声で唸りながら郁眞が言った。永藍はひやりとして友人を見た。数は同じだが、相手の体格を見れば、どう考えたってこちらの分が悪い。ここは波風を立てないことが最適だと思ったのだ。
雄猫がゆっくりと郁眞を見た。好意的に見えたブルーの目が、今は冷ややかに光っている。すると、それまで一歩下がっていた淡い黄色の目の雄猫が慌てたように相方を押しのけた。
「やめろよ、レッド・・・!お邪魔してるのは僕達なんだ、失礼だろ」
レッドはじろりと雄猫を見返したが、やがてため息を吐き、頷いた。
「わかったよ、ウィリー。悪かったね、君たち」
永藍はびっくりして目を見開いた。どうにか「いや」と返すが、どうも落ち着かない気分になる。まさか、利ノ国の猫が自ら仲間を止めるとは。
(俺は彼らを見誤っていたようだ)
己の失態を恥じつつ、永藍はぺこりと頭を下げた。郁眞もそろりとやってきて、隣でお辞儀をする。
「俺は永藍です。火ノ国へようこそ」
「郁眞です」
レッドとウィリーはちらりと目を交わすと、屈託なく笑って一声鳴いた。
「ウィリーだよ」
「俺はレッド!これからよろしくな、火ノ国の戦士たち!」
ヒーステイル- 副長
- 投稿数 : 282
Join date : 2015/05/17
Re: Cat World War 【最初で最後の戦い】
【第3章】
「ねえ永藍!これ、この花なんだい?綺麗な色をしてるね」
レッドがぴょんぴょんと跳ね、歩く度に新しい植物を見つけて立ち止まっては騒いでいる。ウィリーが押したり叩いたり蹴ったりしているが、逞しいレッドをその場から引き剥がすことは出来ないようだ。
「あいつ・・・その辺に捨て置いた方がいいんじゃないか」
「まあまあ、郁眞。珍しいものばかりなんだろう」
永藍はため息を吐いた。何度かここに足を運んでいるというレッドたちは、今まであまり周りに目を配ったことはないようだった。この機会に興味を持ってもらえれば嬉しいが、彼ら二匹が目を配らずとも縄張りを歩かせてしまえるくらいには、ここの猫は他所の猫に耐性がない。
「いい加減痩せろよこのメタボ野郎!」
「だれがfatsoだって!?」
「ウィリー、だんだん私情を挟んできてるな」
「苛々してるんだね」
ようやく戻ってきたレッドを、今度は三匹で挟むようにして永藍たちは歩き出した。舞う花びらを未練がましく見るレッドは不満そうに尻尾を振っている。
「ごめんよ、永藍、郁眞。レッドには僕が言い聞かせておくから」
ウィリーが耳を寝かせて小声で言った。大きな体を縮こまらせ、尻尾を垂らす姿は、子猫のころの弟を思い出させた。
永藍は微笑むと、ウィリーの耳をさっと舐めた。
「大丈夫。探究心があるのは、いいことだし」
「そうだな」
郁眞も頷く。もう二匹に対して敵対心は抱いていないようだ。
ウィリーは嬉しそうに淡い色の目を輝かせると、眩しい笑顔で喉を鳴らした。
「ありがとう!帰ったら小川の中を走らせて日が落ちるまで出させないことにするよ」
怒らせてはいけないと思った。
「それにしても、火ノ国は獲物が豊富なんだね。木も、よく日光を浴びてる」
レッドがふと思い出したように森を見渡した。パキっと音を立て、自らが踏んだ折れた小枝の匂いを嗅ぐ。
「そうだな。小川もあるし、食料に困ることはない」
郁眞が言う。
レッドはウィリーと目を合わせ、聞き取れない低い声でぼそりと何か呟いた。
(なんだ?)
永藍は背中の毛が逆立つのを感じた。何か、不穏な気配がする。やはり利ノ国はわからない。
永藍が再び歩き出そうと茂みを押し分けると、背後で郁眞がぎょっとしたように叫んだ。
「永藍、前!」
と、同時に、永藍は何かに突き飛ばされ勢い良く地面を転がった。起き上がる間もなく、相手の体がのしかかってきて押さえつけられる。
「誰だ!」
背中の痛みと言い知れぬ恐怖でパニックになりかけたが、相手が爪も出していないのがわかると、頭がカッと熱くなるのがわかった。
永藍は鋭く唸ると、渾身の力でのしかかっている猫を突き飛ばした。そのまま飛び上がり、相手の体の上に乗る。転がってかわされたが、永藍は素早く向きを変えると相手の正面に立って殴りかかろうとした。
そこではっとした。永藍を迎え撃つように腰を低くしている猫。星のような銀色の毛皮に、燃えるような橙の瞳。レッドやウィリーよりは小柄だが、引き締まった筋肉は二匹を超えている。永藍を見つめる顔は、湖に薄く張った出来の良い氷のように美しかった。
「永藍!」
郁眞の声に反応したときには、永藍は再び突き飛ばされていた。地面に押さえつけられ、悲鳴を上げる。
「戦闘中に考え事とは、随分呑気だな?」
銀色の雄猫が小馬鹿にしたように唸った。
「ここは火ノ国だろ?長はどこだ。話をして、さっさとお前の指導を開始しなきゃな。まったく、こんなに戦えないとは思ってなかった。だが、基礎はできてるし筋もいいから__ 」
「ちょっと!俺の指導ってどういうことですか?貴方は・・・」
「俺か?」
雄猫は永藍を抑えたまま不思議そうに首を傾げた。なぜお前が首を傾げる。
レッドがやれやれと肩を竦め、気の毒そうに唸った。
「永藍、彼が独ノ国の使いの猫だよ」
「・・・?」
永藍が返事ができないでいると、ようやく雄猫は上から退き、何故か得意気に鼻を鳴らしてから永藍を見下ろした。
「俺は独ノ国から来たカールだ。これから暫く、お前の指導を受け持つ。せいぜい励めよ、よろしくな!」
「・・・いや、」
意味がわからない。
呆然とする永藍の横で、カールが不敵に笑ったのが見えた。
「ねえ永藍!これ、この花なんだい?綺麗な色をしてるね」
レッドがぴょんぴょんと跳ね、歩く度に新しい植物を見つけて立ち止まっては騒いでいる。ウィリーが押したり叩いたり蹴ったりしているが、逞しいレッドをその場から引き剥がすことは出来ないようだ。
「あいつ・・・その辺に捨て置いた方がいいんじゃないか」
「まあまあ、郁眞。珍しいものばかりなんだろう」
永藍はため息を吐いた。何度かここに足を運んでいるというレッドたちは、今まであまり周りに目を配ったことはないようだった。この機会に興味を持ってもらえれば嬉しいが、彼ら二匹が目を配らずとも縄張りを歩かせてしまえるくらいには、ここの猫は他所の猫に耐性がない。
「いい加減痩せろよこのメタボ野郎!」
「だれがfatsoだって!?」
「ウィリー、だんだん私情を挟んできてるな」
「苛々してるんだね」
ようやく戻ってきたレッドを、今度は三匹で挟むようにして永藍たちは歩き出した。舞う花びらを未練がましく見るレッドは不満そうに尻尾を振っている。
「ごめんよ、永藍、郁眞。レッドには僕が言い聞かせておくから」
ウィリーが耳を寝かせて小声で言った。大きな体を縮こまらせ、尻尾を垂らす姿は、子猫のころの弟を思い出させた。
永藍は微笑むと、ウィリーの耳をさっと舐めた。
「大丈夫。探究心があるのは、いいことだし」
「そうだな」
郁眞も頷く。もう二匹に対して敵対心は抱いていないようだ。
ウィリーは嬉しそうに淡い色の目を輝かせると、眩しい笑顔で喉を鳴らした。
「ありがとう!帰ったら小川の中を走らせて日が落ちるまで出させないことにするよ」
怒らせてはいけないと思った。
「それにしても、火ノ国は獲物が豊富なんだね。木も、よく日光を浴びてる」
レッドがふと思い出したように森を見渡した。パキっと音を立て、自らが踏んだ折れた小枝の匂いを嗅ぐ。
「そうだな。小川もあるし、食料に困ることはない」
郁眞が言う。
レッドはウィリーと目を合わせ、聞き取れない低い声でぼそりと何か呟いた。
(なんだ?)
永藍は背中の毛が逆立つのを感じた。何か、不穏な気配がする。やはり利ノ国はわからない。
永藍が再び歩き出そうと茂みを押し分けると、背後で郁眞がぎょっとしたように叫んだ。
「永藍、前!」
と、同時に、永藍は何かに突き飛ばされ勢い良く地面を転がった。起き上がる間もなく、相手の体がのしかかってきて押さえつけられる。
「誰だ!」
背中の痛みと言い知れぬ恐怖でパニックになりかけたが、相手が爪も出していないのがわかると、頭がカッと熱くなるのがわかった。
永藍は鋭く唸ると、渾身の力でのしかかっている猫を突き飛ばした。そのまま飛び上がり、相手の体の上に乗る。転がってかわされたが、永藍は素早く向きを変えると相手の正面に立って殴りかかろうとした。
そこではっとした。永藍を迎え撃つように腰を低くしている猫。星のような銀色の毛皮に、燃えるような橙の瞳。レッドやウィリーよりは小柄だが、引き締まった筋肉は二匹を超えている。永藍を見つめる顔は、湖に薄く張った出来の良い氷のように美しかった。
「永藍!」
郁眞の声に反応したときには、永藍は再び突き飛ばされていた。地面に押さえつけられ、悲鳴を上げる。
「戦闘中に考え事とは、随分呑気だな?」
銀色の雄猫が小馬鹿にしたように唸った。
「ここは火ノ国だろ?長はどこだ。話をして、さっさとお前の指導を開始しなきゃな。まったく、こんなに戦えないとは思ってなかった。だが、基礎はできてるし筋もいいから__ 」
「ちょっと!俺の指導ってどういうことですか?貴方は・・・」
「俺か?」
雄猫は永藍を抑えたまま不思議そうに首を傾げた。なぜお前が首を傾げる。
レッドがやれやれと肩を竦め、気の毒そうに唸った。
「永藍、彼が独ノ国の使いの猫だよ」
「・・・?」
永藍が返事ができないでいると、ようやく雄猫は上から退き、何故か得意気に鼻を鳴らしてから永藍を見下ろした。
「俺は独ノ国から来たカールだ。これから暫く、お前の指導を受け持つ。せいぜい励めよ、よろしくな!」
「・・・いや、」
意味がわからない。
呆然とする永藍の横で、カールが不敵に笑ったのが見えた。
ヒーステイル- 副長
- 投稿数 : 282
Join date : 2015/05/17
Re: Cat World War 【最初で最後の戦い】
こんばんは!
ヒースさんの助言通りに、登場人物を把握しないで読み進めたら、楽しかったですww
カールとルートが可愛いww(ヒースさんとヒース兄)を想像して、若干影響あるのかな~とか考えるとニヤケがとまりませんでした←
かくいう私もカールに似てる部分がありましたww(嫌な性格してる兄メンバーとしてカールを迎えたい←)
後は、カールの弟子も楽しみですねww
そして、登場人物をよく考えたな~と驚きました。本当に凄いですね。
さらに、文章力もあり楽しく読み進められました。今後も楽しみです。
最後に、最後に、やっぱりカールとルートの話が好きです← 私の中での理想の兄弟です!1章をずっと何度も読んでいたいほどハマりましたw今後もカールとルートだけの絡みをサイドストーリーとして期待してますw本編が終わった後にでも←
ヒースさんの助言通りに、登場人物を把握しないで読み進めたら、楽しかったですww
カールとルートが可愛いww(ヒースさんとヒース兄)を想像して、若干影響あるのかな~とか考えるとニヤケがとまりませんでした←
かくいう私もカールに似てる部分がありましたww(嫌な性格してる兄メンバーとしてカールを迎えたい←)
後は、カールの弟子も楽しみですねww
そして、登場人物をよく考えたな~と驚きました。本当に凄いですね。
さらに、文章力もあり楽しく読み進められました。今後も楽しみです。
最後に、最後に、やっぱりカールとルートの話が好きです← 私の中での理想の兄弟です!1章をずっと何度も読んでいたいほどハマりましたw今後もカールとルートだけの絡みをサイドストーリーとして期待してますw本編が終わった後にでも←
戦士- 年長戦士
- 投稿数 : 152
Join date : 2015/05/15
Re: Cat World War 【最初で最後の戦い】
戦士 wrote:こんばんは!
ヒースさんの助言通りに、登場人物を把握しないで読み進めたら、楽しかったですww
カールとルートが可愛いww(ヒースさんとヒース兄)を想像して、若干影響あるのかな~とか考えるとニヤケがとまりませんでした←
かくいう私もカールに似てる部分がありましたww(嫌な性格してる兄メンバーとしてカールを迎えたい←)
後は、カールの弟子も楽しみですねww
そして、登場人物をよく考えたな~と驚きました。本当に凄いですね。
さらに、文章力もあり楽しく読み進められました。今後も楽しみです。
最後に、最後に、やっぱりカールとルートの話が好きです← 私の中での理想の兄弟です!1章をずっと何度も読んでいたいほどハマりましたw今後もカールとルートだけの絡みをサイドストーリーとして期待してますw本編が終わった後にでも←
コメありです!カールルート兄弟は仲の良さが自慢ですw
お褒めいただきありがとうございます。サイドストーリー含め頑張りたいです。
ヒーステイル- 副長
- 投稿数 : 282
Join date : 2015/05/17
Re: Cat World War 【最初で最後の戦い】
【第4章】
永藍と郁眞が一族のもとへ帰った頃には、太陽は真上で燦々と照っていた。
「とりあえず、レッドとウィリーは長の方へ・・・。カールは、俺についてきてください。郁眞、灯条のところに案内してやって欲しい」
「了解」
郁眞がさっと尻尾を振り、二匹がついてくるかも確認しないまま歩いて行ってしまった。レッドとウィリーは永藍とカールに挨拶をし、慌てて彼を追いかけていった。
「灯条ってのは、お前の親父か?」
カールが問う。
美しい瞳を据えられて、永藍はさり気なく顔を背けつつ歩き出した。
「はい。この国の長です」
「火ノ国は、独ノ国以外と交流したことはあるのか?」
「ないです、俺たちは基本的には他との関係を持ちません。ただ、例外がありまして__ 」
永藍が言いかけると、その声を遮ってカールが「おっ!」と首を伸ばした。自分からきいた質問への答えくらい、最後まで聞いて欲しいものだ。
カールの視線の先には、斑模様の小柄な年老いた雄猫が座っていた。一見するとただの長老のようだが、尾を前足にかけ、耳を拭い毛を整えるその一つ一つの仕草さえもが気品に溢れている。
「元帥です」
永藍はカールに頷きかけた。
「よし」
カールは一言だけ唸ると、黙って梢輪に向かって歩き出した。
梢輪はカールに気付いて顔を上げた。こちらを見るゴールドの瞳は輝いているが、対照的に、何を考えているのか全く読めない。
カールはずいっと首を突き出し、優しく梢輪の耳に触れた。
永藍はその無造作な動作にひやりとしたが、元帥の顔は依然優しい表情のままだった。永藍も慌てて頭を深く下げる。
梢輪は喉を鳴らした。
「遠いところから、よう来てくださいました。私は梢輪と申します」
カールはびっくりしたように一瞬目を見開いた。元帥の物腰柔らかな態度に面食らったのだろう。だが、その表情もすぐに消すと、カールは歯を見せて微かに笑った。
「カールだ。今日からお宅の雄猫を借りるが、返す頃には立派な戦士になってるだろうよ。期待しててくれ」
「ちょっと、元帥にそんな言い方!」
悲鳴を上げる永藍をよそに、梢輪は「期待しています」と穏やかに鳴いている。カールは満足そうに鼻を鳴らすと、永藍を振り返った。
「おい、早速訓練を開始するぞ!」
「今からですか?」
永藍がびっくりして声を上げると、カールの橙の目付きが鋭くなった。突然突き飛ばされ、梢輪の反対側に土煙を上げて転がっていく。飛びかかってくるカールをどうにか躱したが、隙を突いて殴ることすら出来ずに永藍は飛びのいた。
「甘えるな!」
カールが鋭く唸った。
「今の俺は、お前の敵だ。遠慮するのがお前の欠点だな。あんまり舐めるんじゃねえぞ、俺はお前の水芦みたいな根性からたたき直すつもりだ。例え元帥が呑気に待っていようとな」
カールの突き出した前足が永藍の頬をかすめた。永藍はとっさにかがむと、大柄なカールの腹の下に潜り込んで思い切り頭突きを食らわせた。
「わかりました」
咳き込むカールに、言葉を投げつける。
「俺も死ぬ気であなたに付いて行きましょう。しかし、俺も言いたいことがあります」
顎を引いて背中を弓なりに曲げる永藍を見て、カールがにやりと笑う。
「俺達の元帥を馬鹿にするのなら、貴方の指導で俺の力はネズミのヒゲ一本分も伸びないと思っていただきたい」
永藍が低い声でそう告げると、カールは小さな頭を軽く傾げて永藍に向き直った。
「おう。約束しよう」
__気に入った、と呟く白銀色の声は、風に溶け込んだようだった。
永藍と郁眞が一族のもとへ帰った頃には、太陽は真上で燦々と照っていた。
「とりあえず、レッドとウィリーは長の方へ・・・。カールは、俺についてきてください。郁眞、灯条のところに案内してやって欲しい」
「了解」
郁眞がさっと尻尾を振り、二匹がついてくるかも確認しないまま歩いて行ってしまった。レッドとウィリーは永藍とカールに挨拶をし、慌てて彼を追いかけていった。
「灯条ってのは、お前の親父か?」
カールが問う。
美しい瞳を据えられて、永藍はさり気なく顔を背けつつ歩き出した。
「はい。この国の長です」
「火ノ国は、独ノ国以外と交流したことはあるのか?」
「ないです、俺たちは基本的には他との関係を持ちません。ただ、例外がありまして__ 」
永藍が言いかけると、その声を遮ってカールが「おっ!」と首を伸ばした。自分からきいた質問への答えくらい、最後まで聞いて欲しいものだ。
カールの視線の先には、斑模様の小柄な年老いた雄猫が座っていた。一見するとただの長老のようだが、尾を前足にかけ、耳を拭い毛を整えるその一つ一つの仕草さえもが気品に溢れている。
「元帥です」
永藍はカールに頷きかけた。
「よし」
カールは一言だけ唸ると、黙って梢輪に向かって歩き出した。
梢輪はカールに気付いて顔を上げた。こちらを見るゴールドの瞳は輝いているが、対照的に、何を考えているのか全く読めない。
カールはずいっと首を突き出し、優しく梢輪の耳に触れた。
永藍はその無造作な動作にひやりとしたが、元帥の顔は依然優しい表情のままだった。永藍も慌てて頭を深く下げる。
梢輪は喉を鳴らした。
「遠いところから、よう来てくださいました。私は梢輪と申します」
カールはびっくりしたように一瞬目を見開いた。元帥の物腰柔らかな態度に面食らったのだろう。だが、その表情もすぐに消すと、カールは歯を見せて微かに笑った。
「カールだ。今日からお宅の雄猫を借りるが、返す頃には立派な戦士になってるだろうよ。期待しててくれ」
「ちょっと、元帥にそんな言い方!」
悲鳴を上げる永藍をよそに、梢輪は「期待しています」と穏やかに鳴いている。カールは満足そうに鼻を鳴らすと、永藍を振り返った。
「おい、早速訓練を開始するぞ!」
「今からですか?」
永藍がびっくりして声を上げると、カールの橙の目付きが鋭くなった。突然突き飛ばされ、梢輪の反対側に土煙を上げて転がっていく。飛びかかってくるカールをどうにか躱したが、隙を突いて殴ることすら出来ずに永藍は飛びのいた。
「甘えるな!」
カールが鋭く唸った。
「今の俺は、お前の敵だ。遠慮するのがお前の欠点だな。あんまり舐めるんじゃねえぞ、俺はお前の水芦みたいな根性からたたき直すつもりだ。例え元帥が呑気に待っていようとな」
カールの突き出した前足が永藍の頬をかすめた。永藍はとっさにかがむと、大柄なカールの腹の下に潜り込んで思い切り頭突きを食らわせた。
「わかりました」
咳き込むカールに、言葉を投げつける。
「俺も死ぬ気であなたに付いて行きましょう。しかし、俺も言いたいことがあります」
顎を引いて背中を弓なりに曲げる永藍を見て、カールがにやりと笑う。
「俺達の元帥を馬鹿にするのなら、貴方の指導で俺の力はネズミのヒゲ一本分も伸びないと思っていただきたい」
永藍が低い声でそう告げると、カールは小さな頭を軽く傾げて永藍に向き直った。
「おう。約束しよう」
__気に入った、と呟く白銀色の声は、風に溶け込んだようだった。
ヒーステイル- 副長
- 投稿数 : 282
Join date : 2015/05/17
Re: Cat World War 【最初で最後の戦い】
【第5章】
冷たい風が体を強く撫でつけながら過ぎ去っていく。風はまるで氷の粒のように目に刺さってくるので、鋭い痛みとともに涙が出てくる。
いや、痛いのは目だけではない。
石の多い地面を蹴る肉球、前を行く師匠を必死で追いかけ、筋肉が悲鳴を上げている四肢。
「永藍!」
前方でカールがようやく走るのをやめるのが見えた。微かに霞む視界でそれをとらえると、永藍は力が抜けるのを感じ、よろよろとカールの足元に倒れこんだ。
「まったく、お前は体力がないな」
呆れたようにため息を吐きながら、カールが永藍の肩を叩く。痛い。
「もう一回湖一周、行くか?」
「勘弁してください・・・」
永藍は息を切らしながら頭を起こした。今も体中の筋肉が熱を帯びて脈打っている。肺の中で太ったネズミが小躍りしてるんじゃないかと思うくらい、息が苦しい。
「もう夕暮れか。続きは明日だな」
カールが毛皮をオレンジ色に煌めかせながら言った。明日もか、と文句を言う前に、その輝きに心を奪われてしまう。
対して、自分のみすぼらしさとは、何と言ったものか。永藍は土で薄汚れた背中を丸めた。洞窟のような黒い毛皮に、砂のような濃い瞳。火ノ国の猫は同様に地味な見た目をしている。レッドやウィリー、カールの美しさとは、比べるのも恐ろしい。
永藍はカールの後ろについて歩き出した。キャンプの前で、淡い黄色の藤のような色の雄猫が立っているのが見える。その横にいる雌猫は__
「ユキ!」
名を呼ばれて振り返った雌猫はおかえりなさいと喉を鳴らした。
「永藍、今日は随分遅かったのね__そちらの方は?」
「カールだ。今日から暫くこいつの指導をすることになった」
よろしくな、と胸を張るカールは、嬉しそうなのか偉そうなのかわからない。カールは先程からじっと押し黙っている藤色の雄猫に目をやると、特に興味もなさそうに目を瞬かせた。
「ブランか」
「まさか今日からお前の顔を拝むようになるとは・・・」
露骨に嫌そうに歯を向きながらブランが唸る。
「ブラン兄さん、今日はもう済んだのですか?」
永藍がきくと、ブランは曖昧に頷いた。どうやらあまり進まなかったらしい。ユキがそろりと傍にやってきて小声でいった。
「灯条に集会に出るように説得、私達への戦闘指導なんか同時にできないって、さっきまで怒ってらしたの。毎回同じことを言うから、なんだか申し訳なくなっちゃって」
「ブラン兄さんも大変だな」
永藍が苦笑すると、ブランが「俺が来る時はこいつを遠ざけておいてくれよ」と言い、永藍とユキに挨拶をして去っていった。
「ブラン兄さんと何か因縁でも?」
ちらりときくと、カールは記憶を探るように目をくるっと回した。
「あいつのキャンプと俺達のキャンプ近くて、昔よくブランにちょっかいかけに行ってたんだよ」
しらっと言っているが、彼のいうちょっかいが、ブランにとっての嫌がらせだったことを察する」
「ブランはなんでここにいるんだ?」
「先程言ったように、他との交流が少ない俺達にも、例外があります。その1つがブラン兄さんで、彼は俺達に集会に出るように説得と、指導を命じられているんです」
「父は集会に参加する気がないので、気の毒です」
ユキが尻尾をさっと振る。妹は、ブランの指導をよく受けているのだ。
だが、近々火ノ国は集会にでるようになるかもしれない__。永藍はキャンプの端で郁眞と歩く黄金色の二匹を目の端で捉え、こっそりため息を吐いた。
冷たい風が体を強く撫でつけながら過ぎ去っていく。風はまるで氷の粒のように目に刺さってくるので、鋭い痛みとともに涙が出てくる。
いや、痛いのは目だけではない。
石の多い地面を蹴る肉球、前を行く師匠を必死で追いかけ、筋肉が悲鳴を上げている四肢。
「永藍!」
前方でカールがようやく走るのをやめるのが見えた。微かに霞む視界でそれをとらえると、永藍は力が抜けるのを感じ、よろよろとカールの足元に倒れこんだ。
「まったく、お前は体力がないな」
呆れたようにため息を吐きながら、カールが永藍の肩を叩く。痛い。
「もう一回湖一周、行くか?」
「勘弁してください・・・」
永藍は息を切らしながら頭を起こした。今も体中の筋肉が熱を帯びて脈打っている。肺の中で太ったネズミが小躍りしてるんじゃないかと思うくらい、息が苦しい。
「もう夕暮れか。続きは明日だな」
カールが毛皮をオレンジ色に煌めかせながら言った。明日もか、と文句を言う前に、その輝きに心を奪われてしまう。
対して、自分のみすぼらしさとは、何と言ったものか。永藍は土で薄汚れた背中を丸めた。洞窟のような黒い毛皮に、砂のような濃い瞳。火ノ国の猫は同様に地味な見た目をしている。レッドやウィリー、カールの美しさとは、比べるのも恐ろしい。
永藍はカールの後ろについて歩き出した。キャンプの前で、淡い黄色の藤のような色の雄猫が立っているのが見える。その横にいる雌猫は__
「ユキ!」
名を呼ばれて振り返った雌猫はおかえりなさいと喉を鳴らした。
「永藍、今日は随分遅かったのね__そちらの方は?」
「カールだ。今日から暫くこいつの指導をすることになった」
よろしくな、と胸を張るカールは、嬉しそうなのか偉そうなのかわからない。カールは先程からじっと押し黙っている藤色の雄猫に目をやると、特に興味もなさそうに目を瞬かせた。
「ブランか」
「まさか今日からお前の顔を拝むようになるとは・・・」
露骨に嫌そうに歯を向きながらブランが唸る。
「ブラン兄さん、今日はもう済んだのですか?」
永藍がきくと、ブランは曖昧に頷いた。どうやらあまり進まなかったらしい。ユキがそろりと傍にやってきて小声でいった。
「灯条に集会に出るように説得、私達への戦闘指導なんか同時にできないって、さっきまで怒ってらしたの。毎回同じことを言うから、なんだか申し訳なくなっちゃって」
「ブラン兄さんも大変だな」
永藍が苦笑すると、ブランが「俺が来る時はこいつを遠ざけておいてくれよ」と言い、永藍とユキに挨拶をして去っていった。
「ブラン兄さんと何か因縁でも?」
ちらりときくと、カールは記憶を探るように目をくるっと回した。
「あいつのキャンプと俺達のキャンプ近くて、昔よくブランにちょっかいかけに行ってたんだよ」
しらっと言っているが、彼のいうちょっかいが、ブランにとっての嫌がらせだったことを察する」
「ブランはなんでここにいるんだ?」
「先程言ったように、他との交流が少ない俺達にも、例外があります。その1つがブラン兄さんで、彼は俺達に集会に出るように説得と、指導を命じられているんです」
「父は集会に参加する気がないので、気の毒です」
ユキが尻尾をさっと振る。妹は、ブランの指導をよく受けているのだ。
だが、近々火ノ国は集会にでるようになるかもしれない__。永藍はキャンプの端で郁眞と歩く黄金色の二匹を目の端で捉え、こっそりため息を吐いた。
ヒーステイル- 副長
- 投稿数 : 282
Join date : 2015/05/17
Re: Cat World War 【最初で最後の戦い】
今更ではありますが、新小説おめでとうございます!
またヒースsの楽しい世界観を読める!と、とても嬉しいです(*^^*)
永藍くんと、カールくんの師弟コンビがすごく素敵です。
永藍くんの成長を応援しています!
更新、楽しみに待っています
またヒースsの楽しい世界観を読める!と、とても嬉しいです(*^^*)
永藍くんと、カールくんの師弟コンビがすごく素敵です。
永藍くんの成長を応援しています!
更新、楽しみに待っています
明日輝- 年長戦士
- 投稿数 : 182
Join date : 2015/05/15
Re: Cat World War 【最初で最後の戦い】
明日輝 wrote:今更ではありますが、新小説おめでとうございます!
またヒースsの楽しい世界観を読める!と、とても嬉しいです(*^^*)
永藍くんと、カールくんの師弟コンビがすごく素敵です。
永藍くんの成長を応援しています!
更新、楽しみに待っています
トゥモローさん、お久しぶりですヽ(*´∀`)ノ
嬉しいお言葉…!ありがとうございます!師弟コンビ気に入っていただけてとても嬉しいです(∩´∀`∩)
お互い頑張りましょう!
ヒーステイル- 副長
- 投稿数 : 282
Join date : 2015/05/17
Re: Cat World War 【最初で最後の戦い】
【第6章】
ブランと会ったのは永藍たちがまだほんの子猫の時だった。
遠い、火ノ国から離れたところにある阿ノ国。そこからはるばるやってきたブランは大人びていて、同じ子猫のはずなのにと思ったのを覚えている。
ブランは背が高く、身も一回り大きな子猫だった。
傍に立てば自然と見下される。気圧されて耳を寝かす永藍たちを見て、彼が言い放った言葉はあまりに衝撃的だった。
『お前たちみたいな小さなヤツは、すぐに他の国の猫に踏み潰されるだろうな』
それは長く続くブランとの初めての接触、そして火ノ国の子猫たちが、他の国という存在を知った初めての会話だった。
「のう、ユキ」
呼びかけられて、ユキはブランを見上げた。彼の鮮やかな色の目は、自分のキャンプがある向こうの森を見つめている。
「永藍は、カールとうまくやってるのか」
「永藍ですか?」
ユキはふむと少し考えこんだ。三兄弟の中で、ユキと永藍は取り分け昔から仲が良かった。子猫のころから行動を共にすることが多かったが、最近は違う。
理由は、先日遠い地から永藍を指導するためにやってきたという、雄猫の存在だった。名をカールといい、美しい毛皮にしなやかな体を持つ、いかにも強そうな猫だ。
対して兄である永藍は、今までこれといった戦闘の訓練を受けたことがなく、朝早くにカールに引っ張りだされては、日が暮れてから土にまみれて帰ってくる。昨日など、体から水が湧き出ているのかと思うほどに毛皮が濃くなるほど濡れて帰ってきた。
「毎日大変そうです」
とユキは正直に言った。ブランが心配そうな目付きになる。ユキは小さく頷いて言葉を付け足した。
「でも、わくわくしてるんだと思います。あれは、元々戦いには興味がありましたから」
「あれ、か」
ふっとブランが笑い、安心したように前足で耳を拭った。
「あいつもタフさけ、心配はしてないが。問題はカールだな」
ブランは嫌そうに顔を顰め、長い尻尾で何かを叩くようにさっと払った。そんなにカールが嫌いなのだろうか。
「独ノ国は好かん。凶暴な猫はお前らも好かんだろう」
「今のところ、カールくんにそのようなところはお見受けられませんが・・・?」
ユキが言うと、ブランは呆れたように唸った。
「相変わらずお前らは危機感がないな。まあ、集会に出るようになればいずれわかる」
ブランがすいっとキャンプの中央に視線を巡らせた。茂みから白い雄猫が出てきて、梢輪に声をかけた。ユキたちの父、灯条だ。
ブランは集会に出るよう、毎日のように灯条に掛けあっている。今のところ、その努力が実を結んだ様子はない。ユキは気の毒に思いながら、心の底では安心していた。
だって外の世界は危険すぎる。この縄張りの中でさえ、キツネやアナグマという脅威があるのに、どうして外へ行ける?きっとブランのいる阿ノ国のように、穏やかに接してくる猫たちばかりではないだろう。
「私たちは、ここを守らなくてはいけないのです」
呟くと、ブランが無言で見つめてくる気配がした。ユキは目を合わせずに、元帥と話す父を見ていた。
「ユキ!」
キャンプの入り口が鳴り、陽気な声に呼ばれた。
聞き覚えのある声だ。灯条がその猫の姿を認め、警戒をといて軽く頷いた。キャンプに三毛の雌猫を先頭に、ぞろぞろと大勢の猫たちが入ってくる。その群れの中からこげ茶色の雄猫がこっちへ向かって歩いてきた。
「王耀さん」
「元気にしてたか?」
琥珀色の目を煌めかせ、王耀がユキの耳に触れて挨拶した。一歩下がり、ブランをじろっと見やる。
「ブラン、まだいたのか。ユキと永藍たちにちょっかいかけるんじゃないぞ」
「言われなくてもわかっとるわ。まだ生きてるなんて驚きだな、王耀」
「私を老猫扱いするな」
毛を逆立てて王耀が唸るが、二匹とも喧嘩に発展させる気はないようだった。そっぽを向いたブランにもう一度唸ると、王耀はため息をついた。
「永藍はどうした?昨日もうちの縄張りから、ヘトヘトになって歩くあいつの姿が見えたぞ。なんでも、独ノ国と交流してるらしいな」
ユキが頷くと、王耀は続けた。
「いいか、遠い国は信用しちゃだめだからね。あいつらったら、何をするかわかったもんじゃない!」
「ユキを誑かすのはやめろ爺さん」
「だれが爺さんだ!」
「おや、王耀さん?」
言い争う二匹の前に、ひょこりと顔を出したのは永藍だった。
いつものように毛皮を汚し、疲れきった顔をしている。だが、金色の目には喜びと興奮をたたえていた。
「永藍、今日はどうかしたの?」
ユキがびっくりしてきくと、兄はああ、と微笑んだ。が、返したのは永藍の後ろからやってきたカールだった。
「こいつは今日、ひとつ立派になったぜ!」
「師匠から一本、勝利をとったのです」
永藍は控えめだが誇らしげに笑った。負けたというカールも、嬉しそうに尻尾をたてている。
ユキは戦いが好きではない。爪を出すのは、獲物を捕る時だけで十分なのだ。だが、永藍が誇らしげなのを見た途端、ユキは胸が熱くなるのを感じた。
永藍は、確実に強くなっている。
ブランと会ったのは永藍たちがまだほんの子猫の時だった。
遠い、火ノ国から離れたところにある阿ノ国。そこからはるばるやってきたブランは大人びていて、同じ子猫のはずなのにと思ったのを覚えている。
ブランは背が高く、身も一回り大きな子猫だった。
傍に立てば自然と見下される。気圧されて耳を寝かす永藍たちを見て、彼が言い放った言葉はあまりに衝撃的だった。
『お前たちみたいな小さなヤツは、すぐに他の国の猫に踏み潰されるだろうな』
それは長く続くブランとの初めての接触、そして火ノ国の子猫たちが、他の国という存在を知った初めての会話だった。
「のう、ユキ」
呼びかけられて、ユキはブランを見上げた。彼の鮮やかな色の目は、自分のキャンプがある向こうの森を見つめている。
「永藍は、カールとうまくやってるのか」
「永藍ですか?」
ユキはふむと少し考えこんだ。三兄弟の中で、ユキと永藍は取り分け昔から仲が良かった。子猫のころから行動を共にすることが多かったが、最近は違う。
理由は、先日遠い地から永藍を指導するためにやってきたという、雄猫の存在だった。名をカールといい、美しい毛皮にしなやかな体を持つ、いかにも強そうな猫だ。
対して兄である永藍は、今までこれといった戦闘の訓練を受けたことがなく、朝早くにカールに引っ張りだされては、日が暮れてから土にまみれて帰ってくる。昨日など、体から水が湧き出ているのかと思うほどに毛皮が濃くなるほど濡れて帰ってきた。
「毎日大変そうです」
とユキは正直に言った。ブランが心配そうな目付きになる。ユキは小さく頷いて言葉を付け足した。
「でも、わくわくしてるんだと思います。あれは、元々戦いには興味がありましたから」
「あれ、か」
ふっとブランが笑い、安心したように前足で耳を拭った。
「あいつもタフさけ、心配はしてないが。問題はカールだな」
ブランは嫌そうに顔を顰め、長い尻尾で何かを叩くようにさっと払った。そんなにカールが嫌いなのだろうか。
「独ノ国は好かん。凶暴な猫はお前らも好かんだろう」
「今のところ、カールくんにそのようなところはお見受けられませんが・・・?」
ユキが言うと、ブランは呆れたように唸った。
「相変わらずお前らは危機感がないな。まあ、集会に出るようになればいずれわかる」
ブランがすいっとキャンプの中央に視線を巡らせた。茂みから白い雄猫が出てきて、梢輪に声をかけた。ユキたちの父、灯条だ。
ブランは集会に出るよう、毎日のように灯条に掛けあっている。今のところ、その努力が実を結んだ様子はない。ユキは気の毒に思いながら、心の底では安心していた。
だって外の世界は危険すぎる。この縄張りの中でさえ、キツネやアナグマという脅威があるのに、どうして外へ行ける?きっとブランのいる阿ノ国のように、穏やかに接してくる猫たちばかりではないだろう。
「私たちは、ここを守らなくてはいけないのです」
呟くと、ブランが無言で見つめてくる気配がした。ユキは目を合わせずに、元帥と話す父を見ていた。
「ユキ!」
キャンプの入り口が鳴り、陽気な声に呼ばれた。
聞き覚えのある声だ。灯条がその猫の姿を認め、警戒をといて軽く頷いた。キャンプに三毛の雌猫を先頭に、ぞろぞろと大勢の猫たちが入ってくる。その群れの中からこげ茶色の雄猫がこっちへ向かって歩いてきた。
「王耀さん」
「元気にしてたか?」
琥珀色の目を煌めかせ、王耀がユキの耳に触れて挨拶した。一歩下がり、ブランをじろっと見やる。
「ブラン、まだいたのか。ユキと永藍たちにちょっかいかけるんじゃないぞ」
「言われなくてもわかっとるわ。まだ生きてるなんて驚きだな、王耀」
「私を老猫扱いするな」
毛を逆立てて王耀が唸るが、二匹とも喧嘩に発展させる気はないようだった。そっぽを向いたブランにもう一度唸ると、王耀はため息をついた。
「永藍はどうした?昨日もうちの縄張りから、ヘトヘトになって歩くあいつの姿が見えたぞ。なんでも、独ノ国と交流してるらしいな」
ユキが頷くと、王耀は続けた。
「いいか、遠い国は信用しちゃだめだからね。あいつらったら、何をするかわかったもんじゃない!」
「ユキを誑かすのはやめろ爺さん」
「だれが爺さんだ!」
「おや、王耀さん?」
言い争う二匹の前に、ひょこりと顔を出したのは永藍だった。
いつものように毛皮を汚し、疲れきった顔をしている。だが、金色の目には喜びと興奮をたたえていた。
「永藍、今日はどうかしたの?」
ユキがびっくりしてきくと、兄はああ、と微笑んだ。が、返したのは永藍の後ろからやってきたカールだった。
「こいつは今日、ひとつ立派になったぜ!」
「師匠から一本、勝利をとったのです」
永藍は控えめだが誇らしげに笑った。負けたというカールも、嬉しそうに尻尾をたてている。
ユキは戦いが好きではない。爪を出すのは、獲物を捕る時だけで十分なのだ。だが、永藍が誇らしげなのを見た途端、ユキは胸が熱くなるのを感じた。
永藍は、確実に強くなっている。
ヒーステイル- 副長
- 投稿数 : 282
Join date : 2015/05/17
Re: Cat World War 【最初で最後の戦い】
【第7章】
初めての勝利。
それは、永藍を虜にさせるには十分な獲物だった。
「そう・・・それは良かったです。おめでとう」
ユキが薄茶色の瞳を優しくうるませ、桃色の鼻面でさっと永藍の頬をかすって祝福した。小柄なこの雌猫は、ブランが誘っても頑なに頷こうとしないくらい、戦いが嫌いだ。そんな妹が自分の勝利に感動しているのを感じて、永藍はたまらなく嬉しくなった。
「こんなチビにやられるとは、お前も鈍ったのう、カール」
ブランが長い尻尾で永藍の耳をはたき、タカのような目をカールに向けた。永藍は首をすくめて彼を見上げた。
「ふん、俺は最強の戦士だ。お前もこてんぱにしてやろうか?」
カールが馬鹿にしたように唸る。ブランは歯を剥いただけで何も言わなかった。
「こら、永藍!ダメだろう、そんな汚い毛皮のままじゃ」
王耀が言い、永藍の黒い毛皮を荒っぽく舐めた。永藍は思わず飛び上がったが、何も言えずにため息をついた。王耀が世話焼きなのは昔からだ。
「もういいですよ王耀さん」
「いいわけない!ほら、背中を向けて」
「師匠!永藍が困ってるよ、やめてください!」
ぱっと立ち上がり、目を丸くした三毛猫がころころ駆けてきた。三毛猫は永藍と王耀の間に割って入ると、小柄な体で王耀の肩をぐいっと押しのけた。
「小梅、私はこいつの為を思ってだな」
「いいから!」
小梅はぴしゃりと言うと、永藍に向かって陽気にウィンクした。とても可愛らしいのだが、後ろでいい年の雄猫がしょんぼりと尻尾を垂れてるのはいただけない。
「お前ら、火ノ国に何しに来たんだ?」
カールが尋ねた。王耀が訝しげに目を細め、小梅は興味津々にカールの横についた。
「今にわかりますよ」
小梅の後ろからやってきた黒猫がぼそりと言ったと同時に、空き地に灯条がやってきた。
灯条は後ろ足を順番に伸ばすと、空き地を見渡して柱ノ国の猫たちを見た。緑の目は輝いているが、表情は読み取れない。
「ようこそ、黄石。我が一族に何の用かね?」
父の低い声が響く。いつの間にか火ノ国の猫達がずらずらと出てきて空き地に固まった。ユキが横につき、耳を立てて注意深くきいている。
一団の中から枯れ葉のような三毛の雌猫がゆっくり歩み出てきた。灯条にそっけなく会釈をする。
「お久しぶりね、灯条。元気そうで何よりだわ。我が一族も嬉しく思います」
「お宅も健康そうで何よりだ」
雌猫は満足そうに喉を鳴らした。小さく頷き、また進み出て灯条の鼻面に触れて親しげに挨拶をした。
「これは姉としての挨拶。さて、本題に入りましょう」
黄石は灯条が嫌な顔をする前にすばやく言った。それに気づき、微かに灯条の顔が引きつっている。
「黄石の弟なの?」
小梅がびっくりしたように声を上げた。
ユキがちらっと小梅に目をやり、小声で答える。
「腹違いのね」
父と黄石は血を分けた、腹違いの姉弟だ。永藍にとっては彼女は叔母になるが、そんなふうに思ったことは一度もない。黄石は美しい、柱ノ国の長だが、永藍は父が季節を追うごとに彼女を厄介に思っているように感じる。
「最近、外の国がきてるらしいわね。独ノ国に、阿ノ国__利ノ国も」
利ノ国と聞いた途端、カールがアナグマを見つけたかのように鉤爪を出した。永藍が驚いて見上げると、カールは肩をすくめ、「悪い」と呟いた。
「私達は、外の猫とは合わない。前にそう話したわよね」
黄石が言った。
「ああ。そうだな。俺たちは、集会に参加するつもりはないよ」
灯条の緑の目がきらっと光った。この場にブランがいることを知っていて言ってるのだろうか?だとしたら相当正確が悪いですよ、父さん。
「そう。それなら良かったわ」
黄石が安心したように尻尾を振った。どうやらもう確認は済んだらしい。
王耀が頭を起こし、黄石をじっと見つめてから尻尾で小梅と香霧を呼び寄せた。ブランに一声唸り、カールを胡散臭そうにミ見やり、ユキに優しく声をかけ、最後に永藍のもとにやってきた。
「永藍」
「はい」
「気をつけたほうがいい」
王耀の琥珀色の瞳が一瞬星のように光り、永藍をまともに覗きこんだ。王耀の低い声が、永藍の耳の奥で響く。
「外の猫達を受け入れれば、火ノ国は喰われるぞ。この縄張りは、お前たちのものじゃなくなるんだ」
初めての勝利。
それは、永藍を虜にさせるには十分な獲物だった。
「そう・・・それは良かったです。おめでとう」
ユキが薄茶色の瞳を優しくうるませ、桃色の鼻面でさっと永藍の頬をかすって祝福した。小柄なこの雌猫は、ブランが誘っても頑なに頷こうとしないくらい、戦いが嫌いだ。そんな妹が自分の勝利に感動しているのを感じて、永藍はたまらなく嬉しくなった。
「こんなチビにやられるとは、お前も鈍ったのう、カール」
ブランが長い尻尾で永藍の耳をはたき、タカのような目をカールに向けた。永藍は首をすくめて彼を見上げた。
「ふん、俺は最強の戦士だ。お前もこてんぱにしてやろうか?」
カールが馬鹿にしたように唸る。ブランは歯を剥いただけで何も言わなかった。
「こら、永藍!ダメだろう、そんな汚い毛皮のままじゃ」
王耀が言い、永藍の黒い毛皮を荒っぽく舐めた。永藍は思わず飛び上がったが、何も言えずにため息をついた。王耀が世話焼きなのは昔からだ。
「もういいですよ王耀さん」
「いいわけない!ほら、背中を向けて」
「師匠!永藍が困ってるよ、やめてください!」
ぱっと立ち上がり、目を丸くした三毛猫がころころ駆けてきた。三毛猫は永藍と王耀の間に割って入ると、小柄な体で王耀の肩をぐいっと押しのけた。
「小梅、私はこいつの為を思ってだな」
「いいから!」
小梅はぴしゃりと言うと、永藍に向かって陽気にウィンクした。とても可愛らしいのだが、後ろでいい年の雄猫がしょんぼりと尻尾を垂れてるのはいただけない。
「お前ら、火ノ国に何しに来たんだ?」
カールが尋ねた。王耀が訝しげに目を細め、小梅は興味津々にカールの横についた。
「今にわかりますよ」
小梅の後ろからやってきた黒猫がぼそりと言ったと同時に、空き地に灯条がやってきた。
灯条は後ろ足を順番に伸ばすと、空き地を見渡して柱ノ国の猫たちを見た。緑の目は輝いているが、表情は読み取れない。
「ようこそ、黄石。我が一族に何の用かね?」
父の低い声が響く。いつの間にか火ノ国の猫達がずらずらと出てきて空き地に固まった。ユキが横につき、耳を立てて注意深くきいている。
一団の中から枯れ葉のような三毛の雌猫がゆっくり歩み出てきた。灯条にそっけなく会釈をする。
「お久しぶりね、灯条。元気そうで何よりだわ。我が一族も嬉しく思います」
「お宅も健康そうで何よりだ」
雌猫は満足そうに喉を鳴らした。小さく頷き、また進み出て灯条の鼻面に触れて親しげに挨拶をした。
「これは姉としての挨拶。さて、本題に入りましょう」
黄石は灯条が嫌な顔をする前にすばやく言った。それに気づき、微かに灯条の顔が引きつっている。
「黄石の弟なの?」
小梅がびっくりしたように声を上げた。
ユキがちらっと小梅に目をやり、小声で答える。
「腹違いのね」
父と黄石は血を分けた、腹違いの姉弟だ。永藍にとっては彼女は叔母になるが、そんなふうに思ったことは一度もない。黄石は美しい、柱ノ国の長だが、永藍は父が季節を追うごとに彼女を厄介に思っているように感じる。
「最近、外の国がきてるらしいわね。独ノ国に、阿ノ国__利ノ国も」
利ノ国と聞いた途端、カールがアナグマを見つけたかのように鉤爪を出した。永藍が驚いて見上げると、カールは肩をすくめ、「悪い」と呟いた。
「私達は、外の猫とは合わない。前にそう話したわよね」
黄石が言った。
「ああ。そうだな。俺たちは、集会に参加するつもりはないよ」
灯条の緑の目がきらっと光った。この場にブランがいることを知っていて言ってるのだろうか?だとしたら相当正確が悪いですよ、父さん。
「そう。それなら良かったわ」
黄石が安心したように尻尾を振った。どうやらもう確認は済んだらしい。
王耀が頭を起こし、黄石をじっと見つめてから尻尾で小梅と香霧を呼び寄せた。ブランに一声唸り、カールを胡散臭そうにミ見やり、ユキに優しく声をかけ、最後に永藍のもとにやってきた。
「永藍」
「はい」
「気をつけたほうがいい」
王耀の琥珀色の瞳が一瞬星のように光り、永藍をまともに覗きこんだ。王耀の低い声が、永藍の耳の奥で響く。
「外の猫達を受け入れれば、火ノ国は喰われるぞ。この縄張りは、お前たちのものじゃなくなるんだ」
ヒーステイル- 副長
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Join date : 2015/05/17
Re: Cat World War 【最初で最後の戦い】
【第8章】
クラウンドは葛藤していた。
瞼を閉じて暗闇に思い浮かべる。ぼんやりと、黄金色の猫が浮かんだ。大柄で、艶やかな毛並みだ。彼はクラウンドを振り返ると、ブルーの目に軽蔑の色を浮かべ、背を向けて歩き去ってしまう。
待て!クラウンドは悲痛な声を上げた。どこへ行く、俺は許してないぞ!
「危ないから戻るんだ!」
「は?」
素っ頓狂な声が返ってくる。横を見ると、白い雄猫が一匹、こちらをイモムシでも見るかのような目で見つめていた。
「そうかそうか、お前、そんなに俺のことが好きなんだな。危ないから森へ行くなって?随分過保護なやつだぜ、なあ!」
「う、うるさい!お前に言ったんじゃないルクレール!ってかなんでここにいるんだよ、自分の縄張りに帰れ」
「俺達はおたくのエーベスに呼ばれたんだよ!お前が崇敬する元帥の命を、俺達が無視してもいいって言うんだな?」
「ふざけるな、エーベスを無視するなんて俺が許さない」
「どっちなんだよ!」
ルクレールが歯をむいて唸った。クラウンドもエメラルドグリーンの瞳できつく睨み返す。こいつと顔を合せる度にその鼻面を殴っては取っ組み合っていた。元帥の前でそんな愚かなことはしないが、美ノ国を好いていない彼女なら許してくれるんじゃないだろうか。
クラウンドがそう思い直して前足を上げた時、茂ったイバラの向こうから淡い色の雌猫がゆっくり歩いてきた。エーベスだ。
「今日ははるばるありがとう、美ノ国の戦士たち。そしてポール、ディエ」
エーベスが話しだすと、守るように横にぴたりと三匹の栄ノ国の戦士が立つ。コット、ライト、ウェーン。どれもクラウンドの兄たちだ。クラウンドは、エーベスを守ることを許された兄たちを心底羨ましく、そして憎く思った。
なんだって、俺はこんなに辛い思いをしなくちゃいけないんだ。
黒い雄猫とショウガ色の雌猫が進み出て、恭しくエーベスに頭を下げた。
「いいや。俺たちは話し合いに使う労力を惜しまない」
「ええ、わたしも同意見です。さて、エーベス。どんな話があるのでしょうか?」
ディエが言うと、エーベスは彼女を見て頷いた。
「最近、利ノ国が力を増しているのを知っていますね。利ノ国はわたしと同じ血が流れています。それはとても嬉しいです」
「ほう?随分と栄ノ国は呑気なようだ」
ポールが口を挟む。クラウンドは思わずルクレールを睨みつけた。お前のとこの元帥は気品がなさすぎる。心の中でそう悪態をついてやると、ルクレールはそれが聞こえたかのようにこちらを向いた。
俺のせいじゃねえよ!そう言ってるのがわかる。
「あなたこそ、呑気にわたしを煽っていられるほど余裕なようね?」
エーベスが金茶色の毛を逆立てた。ポールが短くうなり返す。元帥、とディエがため息をついた。
「エーベス、どうぞ続けて」
「・・・利ノ国の縄張りは、私達の森の縄張りに比べてとても大きい。脅威になりうると思いませんか?」
そうだそうだと栄ノ国の戦士たちから賛成の声が上がった。
「一理あるな。しかし、トルーやスペルの悪評を我々は聞いたことがない。慌て過ぎじゃないのか?たかが利ノ国だぞ。あれは孤立している」
ポールのゴールドの目が疑うように揺れた。
ディエも美ノ国の元帥に言葉を添える。
「わたしたちの森は確かに狭い__だけど、その分縄張り同士が近く、密接な関係にあるわ。今までの厄介な問題も協力して解決してきたじゃないですか。利ノ国には頼れる相手がいないでしょう?あなた方が突き放したから」
毒のあるその言葉に、エーベスの横にいたウェーンが首の毛を逆立ててシューッと唸った。コットが尻尾でやめろと止める。
「突き放してなんかいない。利ノ国が離れることを望んだんだ。言いがかりはよせ」
クラウンドは声を上げた。しかし、心は揺れたままだった。美しいグリーンの瞳は、今も利ノ国で過ごしてるであろう二匹の兄弟を求めてさまよっていた。
クラウンドの後を短い脚でころころついてくる姿。カラスに怯えて、クラウンの腹に自分の体を押し付けるその体温。朗らかに笑う声。クラウンド、と呼ぶ二匹の輝き____
最後に見せたのは、こちらを拒絶するブルーの目だった。
なぜだ。どうして離れていったんだ。どうして、利ノ国なんかに、
「クラウンド」
強い声に我に返った。ルクレールがこちらをみている。馬鹿にしたように鼻を鳴らしてから、彼はクラウンドの耳を叩いた。
「諦めろ。求めるな。お前が辛くなるだけだぞ。わかってるでしょ?あいつらは戻ってこないし、戻る必要もない。クラウンドの中にもなくてもいいもんだ」
「・・・わかってるよ」
クラウンドはただ、そう返した。
わかってる。嘘じゃない。あいつらは栄ノ国より、利ノ国にあることを求めていた。成長を求めていた。それだけだ。
わかっているんだ。
「クラウンドの言うとおりだ。ディエよ、君は栄ノ国を敵に回したいのか?まだ利ノ国のことが解決していない。黙って聞くんだな」
灰色の大きな雄猫が立ち上がり、ディエの前まで来て彼女をきつく睨んだ。この国の長、ウィンドだ。ディエはウィンドを睨み返したが、何も言わなかった。
「利ノ国には協力相手がいない、と言いましたね。それは間違いよ」
エーベスが声を張り上げた。ゴールドの瞳がきらりと光り、胸をそらして辺りを見渡す。自然と元帥に視線が集まった。
「東にある火ノ国___知っていますか?」
「火ノ国?」
クラウンドは首をかしげた。聞いたことのない名だ。ルクレールに視線をやると、わからないと首を横に振られる。
「東にある小さな縄張りか?介石の、柱ノ国の近くだよな。それがどうしたんだ、あいつらはなんの脅威でもないだろう」
ポールが訝しげに言う。
エーベスは首を横に振った。
「わからないのです。今まで誰も関わったことのない猫達__阿ノ国は交流はあるようですがヘルミナはわたしたちに教える気がありません___がいます。これだけでも何をするかわからない」
「その火ノ国と、利ノ国が手を組もうとしているんだ」
ウィンドが言葉を引き継ぐと、ポールとディエの目がぎょっと丸くなった。戦士たちからも戸惑った声があがる。
「・・・へえ、すごく興味深いね・・・」
「何だルクレール、火ノ国に興味があるのか?」
「もちろんさ。美しい猫達だといいな」
俺たちは、美しいものが大好きだからね。わざとらしく白い毛を整えながらルクレールが笑う。心底どうでも良かった。
利ノ国が、得体も知れない猫達と組もうとしている__?
「これは間違いなく我々を脅かす存在になるだろう!この森の全ての猫達が不安になることだ」
ウィンドの声が響く。美ノ国からも同意の鳴き声が広まる。
クラウンドはその場に立ち上がり、ウィンドを見ながら尻尾を高く上げた。
「クラウンド?何か案があるのか」
「簡単だ。利ノ国と火ノ国が一緒になる前に、俺達が火ノ国を知ればいい」
クラウンドは父を見つめる。
いいか、ウィリー、そして___レッド。お前たちの好きなようにはさせない。お前たちを好きなようにはさせない。安全なこの森から出て何を学んだのか知らないが、俺はまだお前たちの兄なんだ。
「火ノ国に向かいましょう」
葛藤は終わった。俺が、足を踏み出す番だ。
クラウンドは葛藤していた。
瞼を閉じて暗闇に思い浮かべる。ぼんやりと、黄金色の猫が浮かんだ。大柄で、艶やかな毛並みだ。彼はクラウンドを振り返ると、ブルーの目に軽蔑の色を浮かべ、背を向けて歩き去ってしまう。
待て!クラウンドは悲痛な声を上げた。どこへ行く、俺は許してないぞ!
「危ないから戻るんだ!」
「は?」
素っ頓狂な声が返ってくる。横を見ると、白い雄猫が一匹、こちらをイモムシでも見るかのような目で見つめていた。
「そうかそうか、お前、そんなに俺のことが好きなんだな。危ないから森へ行くなって?随分過保護なやつだぜ、なあ!」
「う、うるさい!お前に言ったんじゃないルクレール!ってかなんでここにいるんだよ、自分の縄張りに帰れ」
「俺達はおたくのエーベスに呼ばれたんだよ!お前が崇敬する元帥の命を、俺達が無視してもいいって言うんだな?」
「ふざけるな、エーベスを無視するなんて俺が許さない」
「どっちなんだよ!」
ルクレールが歯をむいて唸った。クラウンドもエメラルドグリーンの瞳できつく睨み返す。こいつと顔を合せる度にその鼻面を殴っては取っ組み合っていた。元帥の前でそんな愚かなことはしないが、美ノ国を好いていない彼女なら許してくれるんじゃないだろうか。
クラウンドがそう思い直して前足を上げた時、茂ったイバラの向こうから淡い色の雌猫がゆっくり歩いてきた。エーベスだ。
「今日ははるばるありがとう、美ノ国の戦士たち。そしてポール、ディエ」
エーベスが話しだすと、守るように横にぴたりと三匹の栄ノ国の戦士が立つ。コット、ライト、ウェーン。どれもクラウンドの兄たちだ。クラウンドは、エーベスを守ることを許された兄たちを心底羨ましく、そして憎く思った。
なんだって、俺はこんなに辛い思いをしなくちゃいけないんだ。
黒い雄猫とショウガ色の雌猫が進み出て、恭しくエーベスに頭を下げた。
「いいや。俺たちは話し合いに使う労力を惜しまない」
「ええ、わたしも同意見です。さて、エーベス。どんな話があるのでしょうか?」
ディエが言うと、エーベスは彼女を見て頷いた。
「最近、利ノ国が力を増しているのを知っていますね。利ノ国はわたしと同じ血が流れています。それはとても嬉しいです」
「ほう?随分と栄ノ国は呑気なようだ」
ポールが口を挟む。クラウンドは思わずルクレールを睨みつけた。お前のとこの元帥は気品がなさすぎる。心の中でそう悪態をついてやると、ルクレールはそれが聞こえたかのようにこちらを向いた。
俺のせいじゃねえよ!そう言ってるのがわかる。
「あなたこそ、呑気にわたしを煽っていられるほど余裕なようね?」
エーベスが金茶色の毛を逆立てた。ポールが短くうなり返す。元帥、とディエがため息をついた。
「エーベス、どうぞ続けて」
「・・・利ノ国の縄張りは、私達の森の縄張りに比べてとても大きい。脅威になりうると思いませんか?」
そうだそうだと栄ノ国の戦士たちから賛成の声が上がった。
「一理あるな。しかし、トルーやスペルの悪評を我々は聞いたことがない。慌て過ぎじゃないのか?たかが利ノ国だぞ。あれは孤立している」
ポールのゴールドの目が疑うように揺れた。
ディエも美ノ国の元帥に言葉を添える。
「わたしたちの森は確かに狭い__だけど、その分縄張り同士が近く、密接な関係にあるわ。今までの厄介な問題も協力して解決してきたじゃないですか。利ノ国には頼れる相手がいないでしょう?あなた方が突き放したから」
毒のあるその言葉に、エーベスの横にいたウェーンが首の毛を逆立ててシューッと唸った。コットが尻尾でやめろと止める。
「突き放してなんかいない。利ノ国が離れることを望んだんだ。言いがかりはよせ」
クラウンドは声を上げた。しかし、心は揺れたままだった。美しいグリーンの瞳は、今も利ノ国で過ごしてるであろう二匹の兄弟を求めてさまよっていた。
クラウンドの後を短い脚でころころついてくる姿。カラスに怯えて、クラウンの腹に自分の体を押し付けるその体温。朗らかに笑う声。クラウンド、と呼ぶ二匹の輝き____
最後に見せたのは、こちらを拒絶するブルーの目だった。
なぜだ。どうして離れていったんだ。どうして、利ノ国なんかに、
「クラウンド」
強い声に我に返った。ルクレールがこちらをみている。馬鹿にしたように鼻を鳴らしてから、彼はクラウンドの耳を叩いた。
「諦めろ。求めるな。お前が辛くなるだけだぞ。わかってるでしょ?あいつらは戻ってこないし、戻る必要もない。クラウンドの中にもなくてもいいもんだ」
「・・・わかってるよ」
クラウンドはただ、そう返した。
わかってる。嘘じゃない。あいつらは栄ノ国より、利ノ国にあることを求めていた。成長を求めていた。それだけだ。
わかっているんだ。
「クラウンドの言うとおりだ。ディエよ、君は栄ノ国を敵に回したいのか?まだ利ノ国のことが解決していない。黙って聞くんだな」
灰色の大きな雄猫が立ち上がり、ディエの前まで来て彼女をきつく睨んだ。この国の長、ウィンドだ。ディエはウィンドを睨み返したが、何も言わなかった。
「利ノ国には協力相手がいない、と言いましたね。それは間違いよ」
エーベスが声を張り上げた。ゴールドの瞳がきらりと光り、胸をそらして辺りを見渡す。自然と元帥に視線が集まった。
「東にある火ノ国___知っていますか?」
「火ノ国?」
クラウンドは首をかしげた。聞いたことのない名だ。ルクレールに視線をやると、わからないと首を横に振られる。
「東にある小さな縄張りか?介石の、柱ノ国の近くだよな。それがどうしたんだ、あいつらはなんの脅威でもないだろう」
ポールが訝しげに言う。
エーベスは首を横に振った。
「わからないのです。今まで誰も関わったことのない猫達__阿ノ国は交流はあるようですがヘルミナはわたしたちに教える気がありません___がいます。これだけでも何をするかわからない」
「その火ノ国と、利ノ国が手を組もうとしているんだ」
ウィンドが言葉を引き継ぐと、ポールとディエの目がぎょっと丸くなった。戦士たちからも戸惑った声があがる。
「・・・へえ、すごく興味深いね・・・」
「何だルクレール、火ノ国に興味があるのか?」
「もちろんさ。美しい猫達だといいな」
俺たちは、美しいものが大好きだからね。わざとらしく白い毛を整えながらルクレールが笑う。心底どうでも良かった。
利ノ国が、得体も知れない猫達と組もうとしている__?
「これは間違いなく我々を脅かす存在になるだろう!この森の全ての猫達が不安になることだ」
ウィンドの声が響く。美ノ国からも同意の鳴き声が広まる。
クラウンドはその場に立ち上がり、ウィンドを見ながら尻尾を高く上げた。
「クラウンド?何か案があるのか」
「簡単だ。利ノ国と火ノ国が一緒になる前に、俺達が火ノ国を知ればいい」
クラウンドは父を見つめる。
いいか、ウィリー、そして___レッド。お前たちの好きなようにはさせない。お前たちを好きなようにはさせない。安全なこの森から出て何を学んだのか知らないが、俺はまだお前たちの兄なんだ。
「火ノ国に向かいましょう」
葛藤は終わった。俺が、足を踏み出す番だ。
ヒーステイル- 副長
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Re: Cat World War 【最初で最後の戦い】
【第9章】
「わ、王耀さん、それは一体」
「私はお前のために言ってるんだ。さあ、香霧も帰るぞ」
「はい」
永藍が戸惑いの声を上げたにも関わらず、王耀の琥珀色の瞳はすぐに仲間の方へと移ってしまった。香霧が気の毒そうに永藍に会釈しながら、王耀の後を追う。
黄石は灯条に挨拶をすると、火ノ国のキャンプから自分の猫達を連れて出て行った。
「・・・あいつら、俺にはなんの挨拶もなしに帰りよった」
「失礼な猫だ」
ブランとカールが不満そうに言う。ユキがまあまあと宥める声が聞こえるが、永藍は動けないでいた。
俺達が喰われる?自分たちの縄張りが、自分の縄張りでなくなると?
永藍は横目でブランとカールを見た。
全ての森の猫達が集まる、<大集会>。そこに火ノ国は参加していない。火ノ国は昔からずっと孤立してきた。誰も寄り付かないような小さく鬱蒼とした森、ということもあるだろう。しかし今までは他の猫達の助けを借りずやってきたのだ。つながりがあるとすれば王耀のいる柱ノ国くらいで、これからも当然やっていけると思ってる。
ブランのいる阿ノ国の長、ファンは執拗に大集会に出るように迫っている。その始まりが、永藍がまだほんの子猫の頃だ。
爪や牙で迫られれば反撃の余地もあったろうが、ブランを送り込まれてきてはそれもできない。温厚な梢輪は仲の良い真っ直ぐなブランを追い返すことが出来ずにいる。
永藍もユキも、ここの猫達はブランのことが好きだ。ユキ以外の戦士たちは、ブランがユキのことを特別に思ってることも知っている。阿ノ国の話も面白く、まるでお伽話のようなブランの故郷が気に入っている。
カールのことは、永藍もそうだった通りはじめは警戒心剥き出しだった。拍車をかけたのが彼の容姿だ。美しい毛皮に整った顔立ち、すっと鼻筋は形よく通ってる。
触れ合ってみれば繊細な見た目とは裏腹に豪雨のような猫だと気付くのだが、それまでに猫達はネズミの尻尾一本分ほどの時間をかけてしまった。
ブランもカールも、そしてレッドとウィリーも。よそからやってきた猫達は、以前より多くなっている。
「永藍?」
カールが橙の目でこちらを見下ろした。
「ユキがもう遅いし獲物を食べて寝ようと言ってるが、どうするんだお前」
「・・・ええ、そうしましょう」
永藍が何とか頷くと、その頭にブランの尻尾が乗ったのがわかった。
「俺は帰るでの。お前もしっかりやれよ」
「兄さん、お気をつけて」
ブランは満足そうに鼻を鳴らし、長い足そのままにユキの隣へ歩み寄る。二匹は森の奥へ消えた。ユキが見送る時はブランが珍しくねばるので、少し遅くなるだろう。
「そうだな、明日の訓練は川での訓練にするか」
カールがカササギを爪に引っ掛けてひきずってきた。一緒にたべようということだろう。永藍も喉を鳴らして友だちの横に座る。
「色んな所で戦えるようになったほうがいいだろ。前に湖でやったときとはまた勝手が違うからな。うまく魚になれるコツを教えてやるよ」
「絶対面白がってるでしょう、貴方」
色々なところで。永藍はカササギを咀嚼しながら、頭のなかで復唱する。
そんな風になってしまうのだろうか。そうなったら、ブランとは__カールと築いた友情も、捨て去らねばいけないのだろうか。弱音を吐けばカールに叱咤される、それもなくなるのだろう。
風が強く吹いた。うっと永藍は地面に伏せる。毛皮が剥がされそうな勢いだ。カールが驚いて唸ったとほぼ同時に、キャンプの入り口から大声が響いた。
「何者だ、どこからやってきた!」
見張り番の知らせにキャンプがざわめく。カコと毛づくろいをしあっていた灯条が立ち上がり、背中を弓なりに曲げた。
二匹の侵入者はゆっくりと入ってきた。獅子のような毛並み。あれはレッドだろうか?永藍はもっとよく見ようと立ち上がった。いや、違う___
一匹はすらりとした体格で、美しい黄金の毛皮をまとってる。もう一匹の方は艶やかな白い毛をしており、臆すること無く興味深げに青い瞳を巡らせている。
黄金色の猫の開かれた目はグリーンで、その目で火ノ国の猫達を舐めるように見渡した後、口を開いた。
「初めまして。どうか、仲良くしてくれないだろうか?」
頼むから名を名乗って欲しい。
「わ、王耀さん、それは一体」
「私はお前のために言ってるんだ。さあ、香霧も帰るぞ」
「はい」
永藍が戸惑いの声を上げたにも関わらず、王耀の琥珀色の瞳はすぐに仲間の方へと移ってしまった。香霧が気の毒そうに永藍に会釈しながら、王耀の後を追う。
黄石は灯条に挨拶をすると、火ノ国のキャンプから自分の猫達を連れて出て行った。
「・・・あいつら、俺にはなんの挨拶もなしに帰りよった」
「失礼な猫だ」
ブランとカールが不満そうに言う。ユキがまあまあと宥める声が聞こえるが、永藍は動けないでいた。
俺達が喰われる?自分たちの縄張りが、自分の縄張りでなくなると?
永藍は横目でブランとカールを見た。
全ての森の猫達が集まる、<大集会>。そこに火ノ国は参加していない。火ノ国は昔からずっと孤立してきた。誰も寄り付かないような小さく鬱蒼とした森、ということもあるだろう。しかし今までは他の猫達の助けを借りずやってきたのだ。つながりがあるとすれば王耀のいる柱ノ国くらいで、これからも当然やっていけると思ってる。
ブランのいる阿ノ国の長、ファンは執拗に大集会に出るように迫っている。その始まりが、永藍がまだほんの子猫の頃だ。
爪や牙で迫られれば反撃の余地もあったろうが、ブランを送り込まれてきてはそれもできない。温厚な梢輪は仲の良い真っ直ぐなブランを追い返すことが出来ずにいる。
永藍もユキも、ここの猫達はブランのことが好きだ。ユキ以外の戦士たちは、ブランがユキのことを特別に思ってることも知っている。阿ノ国の話も面白く、まるでお伽話のようなブランの故郷が気に入っている。
カールのことは、永藍もそうだった通りはじめは警戒心剥き出しだった。拍車をかけたのが彼の容姿だ。美しい毛皮に整った顔立ち、すっと鼻筋は形よく通ってる。
触れ合ってみれば繊細な見た目とは裏腹に豪雨のような猫だと気付くのだが、それまでに猫達はネズミの尻尾一本分ほどの時間をかけてしまった。
ブランもカールも、そしてレッドとウィリーも。よそからやってきた猫達は、以前より多くなっている。
「永藍?」
カールが橙の目でこちらを見下ろした。
「ユキがもう遅いし獲物を食べて寝ようと言ってるが、どうするんだお前」
「・・・ええ、そうしましょう」
永藍が何とか頷くと、その頭にブランの尻尾が乗ったのがわかった。
「俺は帰るでの。お前もしっかりやれよ」
「兄さん、お気をつけて」
ブランは満足そうに鼻を鳴らし、長い足そのままにユキの隣へ歩み寄る。二匹は森の奥へ消えた。ユキが見送る時はブランが珍しくねばるので、少し遅くなるだろう。
「そうだな、明日の訓練は川での訓練にするか」
カールがカササギを爪に引っ掛けてひきずってきた。一緒にたべようということだろう。永藍も喉を鳴らして友だちの横に座る。
「色んな所で戦えるようになったほうがいいだろ。前に湖でやったときとはまた勝手が違うからな。うまく魚になれるコツを教えてやるよ」
「絶対面白がってるでしょう、貴方」
色々なところで。永藍はカササギを咀嚼しながら、頭のなかで復唱する。
そんな風になってしまうのだろうか。そうなったら、ブランとは__カールと築いた友情も、捨て去らねばいけないのだろうか。弱音を吐けばカールに叱咤される、それもなくなるのだろう。
風が強く吹いた。うっと永藍は地面に伏せる。毛皮が剥がされそうな勢いだ。カールが驚いて唸ったとほぼ同時に、キャンプの入り口から大声が響いた。
「何者だ、どこからやってきた!」
見張り番の知らせにキャンプがざわめく。カコと毛づくろいをしあっていた灯条が立ち上がり、背中を弓なりに曲げた。
二匹の侵入者はゆっくりと入ってきた。獅子のような毛並み。あれはレッドだろうか?永藍はもっとよく見ようと立ち上がった。いや、違う___
一匹はすらりとした体格で、美しい黄金の毛皮をまとってる。もう一匹の方は艶やかな白い毛をしており、臆すること無く興味深げに青い瞳を巡らせている。
黄金色の猫の開かれた目はグリーンで、その目で火ノ国の猫達を舐めるように見渡した後、口を開いた。
「初めまして。どうか、仲良くしてくれないだろうか?」
頼むから名を名乗って欲しい。
ヒーステイル- 副長
- 投稿数 : 282
Join date : 2015/05/17
Re: Cat World War 【最初で最後の戦い】
【第10章】
黄金の猫は白猫と一瞬目を交わすと、一歩進み出て気取った動きで頭を低くした。
「驚かせてすまない。長と話がしたいんだが、どこにいらっしゃる?」
黄金色の猫の言葉に、灯条がカコの傍を離れて歩き出した。通り過ぎざまに永藍の脇腹を掠り、緑の目を細める。
永藍は困惑して頭を起こした。今のはどういうことだ?まさか父さん、俺を呼んでいるのか?
カールが短く唸り、永藍を叱るように歯を剥いた。
「わかってるなら、早く行け。他の猫と話す折角のチャンスを無駄にすんな」
永藍は小さくうなずき、素早く灯条の後を追って黄金色の猫たちに近付いた。彼らからは、利ノ国とも柱ノ国とも違う匂いがした。強いていうならば、カールやブランだろうか。永藍が怖ず怖ずと灯条の隣に立てば、白猫が微笑む。
「ここの長は俺だ。灯条と言う。こっちは息子の永藍。さて、君たちは一体何者だね?」
灯条の白い毛が僅かに波打ち、逆立っている。
黄金色の猫は申し訳無さそうに耳を倒し、白猫は尻尾をさっと振った。
「俺はクラウンド、カールたちの住む森の、栄ノ国の縄張りからやってきたんだ」
「突然やってきてすまないね・・・驚かすつもりはなかったんだ。俺はクレールという」
愛想よく笑う顔はよく整っていて、突然の来訪にも関わらず一族は見惚れたように静まり返っている。
だが、それに反して、灯条と永藍は肩を強張らせたままでいた。嗅ぎ慣れないにおいに満ちたこの二匹の来訪はあまりに突拍子もなさすぎる。何より、近くに住むはずのカールが何も言わないことに焦りをつのらせていた。
ゴールドの目を細める永藍を見てクラウンドが言った。
「やあ永藍。君とは仲良くなれそうだな」
「え、いや・・・はあ」
「まったく、クラウンド退け。永藍が困ってるだろう?君、美しい毛皮をしているね」
まるで夏の闇夜のようだ・・・と溜め息混じりに囁くクレールから距離をとっていると、灯条が片前足を上げ静かにと合図した。
「我が森にようこそ・・・と言いたいところだが、得体のしれない国の猫達を歓迎はできないな。君たちは一体何をしにきたんだ?」
「俺達の森でも、火ノ国は話題になるんだ。素敵なところってな」
エメラルドの瞳をクラウンドは輝かせる。
「本当にここはいいところだな。木々も豊かで獲物も豊富。何より、孤立した森は敵から身を守りやすい」
「何が言いたい?」
「___我が栄ノ国の仲間になってくれないだろうか」
クラウンドの言葉に、灯条が息を飲んだのがわかった。永藍は思わずクラウンドを見つめた。なぜこんな小さな一族にそんなことを頼み込む?
おい、とどこからか声が上がった。
「胡散臭い口ぶりもまったく変わらねぇな。ケシの実でも食べて、少しは休息をとったらどうだ?」
「カール!」
立ち上がって言う銀色の雄猫を、じろりとクレールが睨む。
「カール・・・口を出すのが好きだな、お前は。うさぎより足りないその脳みそをよくも誇らしげになあ」
「うさぎも捕まえられない弱い猫にどう言われてもな、クレール」
睨み合うカールとクレールの間に割って入るように、永藍は駆け寄って尻尾を伸ばした。
「おやめください。今父が話しているのです。どうしてもやりたいというのなら他所でやりなさい」
永藍が唸るとカールとクレールはバツが悪そうに目を逸らした。
「____仲間、というのは」
灯条がクラウンドの目を見つめ返す。
「何の脅威にも脅かされていない俺達にとっては不要なものだ」
「状況がいつまでも変わらないと思いで?予期せぬ時に事態が一転することを、俺達はよく知っているんだ、灯条」
「ほう?なら、俺達の脅威は一体どこにあるんだ。洞穴か、湖か、それとも沼の中か?」
訝しげに唸る灯条をクラウンドは一瞥した。その瞳に永藍は毛を逆立てる。美しいエメラルドの瞳にはあまりにも不釣り合いなほどの、焦りと渇望がありありと浮かんでいた。
なんだ、この猫は?栄ノ国は俺たちを望んでいるというのか?
「あなた方は、利ノ国を知っているか」
低く、そして静かなクラウンドの声が、ぽつりと落ちた。
黄金の猫は白猫と一瞬目を交わすと、一歩進み出て気取った動きで頭を低くした。
「驚かせてすまない。長と話がしたいんだが、どこにいらっしゃる?」
黄金色の猫の言葉に、灯条がカコの傍を離れて歩き出した。通り過ぎざまに永藍の脇腹を掠り、緑の目を細める。
永藍は困惑して頭を起こした。今のはどういうことだ?まさか父さん、俺を呼んでいるのか?
カールが短く唸り、永藍を叱るように歯を剥いた。
「わかってるなら、早く行け。他の猫と話す折角のチャンスを無駄にすんな」
永藍は小さくうなずき、素早く灯条の後を追って黄金色の猫たちに近付いた。彼らからは、利ノ国とも柱ノ国とも違う匂いがした。強いていうならば、カールやブランだろうか。永藍が怖ず怖ずと灯条の隣に立てば、白猫が微笑む。
「ここの長は俺だ。灯条と言う。こっちは息子の永藍。さて、君たちは一体何者だね?」
灯条の白い毛が僅かに波打ち、逆立っている。
黄金色の猫は申し訳無さそうに耳を倒し、白猫は尻尾をさっと振った。
「俺はクラウンド、カールたちの住む森の、栄ノ国の縄張りからやってきたんだ」
「突然やってきてすまないね・・・驚かすつもりはなかったんだ。俺はクレールという」
愛想よく笑う顔はよく整っていて、突然の来訪にも関わらず一族は見惚れたように静まり返っている。
だが、それに反して、灯条と永藍は肩を強張らせたままでいた。嗅ぎ慣れないにおいに満ちたこの二匹の来訪はあまりに突拍子もなさすぎる。何より、近くに住むはずのカールが何も言わないことに焦りをつのらせていた。
ゴールドの目を細める永藍を見てクラウンドが言った。
「やあ永藍。君とは仲良くなれそうだな」
「え、いや・・・はあ」
「まったく、クラウンド退け。永藍が困ってるだろう?君、美しい毛皮をしているね」
まるで夏の闇夜のようだ・・・と溜め息混じりに囁くクレールから距離をとっていると、灯条が片前足を上げ静かにと合図した。
「我が森にようこそ・・・と言いたいところだが、得体のしれない国の猫達を歓迎はできないな。君たちは一体何をしにきたんだ?」
「俺達の森でも、火ノ国は話題になるんだ。素敵なところってな」
エメラルドの瞳をクラウンドは輝かせる。
「本当にここはいいところだな。木々も豊かで獲物も豊富。何より、孤立した森は敵から身を守りやすい」
「何が言いたい?」
「___我が栄ノ国の仲間になってくれないだろうか」
クラウンドの言葉に、灯条が息を飲んだのがわかった。永藍は思わずクラウンドを見つめた。なぜこんな小さな一族にそんなことを頼み込む?
おい、とどこからか声が上がった。
「胡散臭い口ぶりもまったく変わらねぇな。ケシの実でも食べて、少しは休息をとったらどうだ?」
「カール!」
立ち上がって言う銀色の雄猫を、じろりとクレールが睨む。
「カール・・・口を出すのが好きだな、お前は。うさぎより足りないその脳みそをよくも誇らしげになあ」
「うさぎも捕まえられない弱い猫にどう言われてもな、クレール」
睨み合うカールとクレールの間に割って入るように、永藍は駆け寄って尻尾を伸ばした。
「おやめください。今父が話しているのです。どうしてもやりたいというのなら他所でやりなさい」
永藍が唸るとカールとクレールはバツが悪そうに目を逸らした。
「____仲間、というのは」
灯条がクラウンドの目を見つめ返す。
「何の脅威にも脅かされていない俺達にとっては不要なものだ」
「状況がいつまでも変わらないと思いで?予期せぬ時に事態が一転することを、俺達はよく知っているんだ、灯条」
「ほう?なら、俺達の脅威は一体どこにあるんだ。洞穴か、湖か、それとも沼の中か?」
訝しげに唸る灯条をクラウンドは一瞥した。その瞳に永藍は毛を逆立てる。美しいエメラルドの瞳にはあまりにも不釣り合いなほどの、焦りと渇望がありありと浮かんでいた。
なんだ、この猫は?栄ノ国は俺たちを望んでいるというのか?
「あなた方は、利ノ国を知っているか」
低く、そして静かなクラウンドの声が、ぽつりと落ちた。
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