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【1話完結】Voice on the open day

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投稿 by トワイライトアウル Sat Jan 26, 2019 10:57 pm

本家の部族ではありますが、本家の猫は登場しないため、こちらに。


最終編集者 トワイライトアウル [ Sun Jan 27, 2019 11:37 am ], 編集回数 2 回
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【1話完結】Voice on the open day Empty Re: 【1話完結】Voice on the open day

投稿 by トワイライトアウル Sat Jan 26, 2019 10:59 pm


「さあコウムポー、早く早く!」


春風が僕の手を引いていく。


僕の名を呼ぶ。


煌びやかな夜露で光る林床を、コウムポーは導かれるままに蹴った。
足元は眩んだ。天と地がくっついては離れた。
僕を呼ぶ声は丘の上から聞こえたと思えば、沼地この奥底からも聞こえた。
みんなが僕の背を押してくれる、コウムポーは嬉しくなった。


枝々の隙間から、みんなの視線を感じる。
そのことを知ったコウムポーは、高い岩から一気に駆け下りることくらい、朝飯前だった。


「すごいよコウムポー、君はどの戦士より優秀さ!」


湿った空気が語りかけてきた。
当然さ!
コウムポーは誇らしげに顔を高く上げ走った。
教えてもらいさえすれば空だって飛べるんだ。
高々と空を舞う鳥達をひょいと捕まえて、族長だってきっと度肝を抜かすさ。


陽の光が気持ちよかった。ずっと浴びることができなかった。ここ数日はずっと苦い薬草の匂いと、すっぱい匂いばかりだったから。


すると、ふと、周囲の匂いが変わった。
焦げたような匂いを感じた。
他の部族の縄張りではないはずだ。僕はどこまで来てしまったんだろう?
コウムポーは縄張りをまだ見て回らせてもらっていなかった。指導者と一緒に探検するのが楽しみだったのに。


それでも景色は、僕を求めるかのように加速していった。
生い茂る花々は僕のしっぽをくすぐった。雄大な木々たちは僕の足取りを歓迎するようにざわめいた。


昨日までぴくりとも動かなかった両足が、ウィンド族の戦士より早く動くんだもの。
コウムポーは自分がどの部族のどの猫よりも賢く、強いことを悟った。


「みんなひどいや。僕を看護部屋に閉じ込めて。こんなことだってできるんだぞ!」


コウムポーはとびきり強く大地を蹴飛ばした。森が揺れ、地面だってよろけて転んでしまう。


「待って、コウムポー!待ちなさい!」


はるか後ろから声が聞こえた。恐ろしい声だった。
その声は僕をまた閉鎖された看護部屋に引き戻してしまうんだと直感した。


ここで捕まるわけにはいかない、僕は自由なんだ!こんなに早く走れる!


それでもその声は徐々に近付いてきた。コウムポーはうねる地面を懸命に走った。
尖った葉先で身体が裂かれても、あまりの速さにしっぽが焼け落ちたって構わなかった。


「そんなに… …ったら死んじゃうわ、お願…… 、帰ってきて!」
「耳を貸さないで!」


迫り来る声をかき消すかのように、風達が言う。
気付けば森はピンク色に染まっていた。
低木は黄色や紫色に色めき、手招いている。
すごい、こんなところ見たことない!
コウムポーは興奮してヒゲをふるわせた。あちこちを手で触れてみたかったが、今は声から逃れることひ必死なのだ。
どす黒い声はすぐ後ろまで追ってきていた。
なんて早いんだ、僕はどんな戦士よりも早いのに!


「……だ!…こっちだ!」


遠くの、赤や緑の枝の向こうから声がした。
まるでこの世界の全ての楽しさを叫ばんとするかのように、明るくって、はしゃいだ声だ。


「こっちだよ!こっちに来ればその声も追ってはこれないさ」


声のする遠くの方に目をやると、たくさんの獲物の気配を感じ取った。
まるまると太って動きのとろい、おいしい獲物たちをたんまりと捕まえられる!


コウムポーは悟った。そして一心に駆けて行く。
草木はどんどん減っていって、獲物が隠れられそうな場所も減って行った。
それなのに、獲物たちは逃げようともしない。


「こんな狩場があったなんて、一族のみんなも喜ぶぞ!」

「馬鹿だなあ、もうとっくに見つけてるさ」


そこには親友の姿があった。
ふかふかの寝床もあった。一日遊んだって遊びきれないくらい、不思議なものがたくさんあった。仲間と一緒に、おいしそうに獲物に食らいついていた。


「なんだよ、君は看護部屋にいたんじゃないのか?」


コウムポーは息を切らしながら駆け寄った。


「君こそ看護部屋にいたはずだろう?でもそんなこともういいのさ。ここに来れば病気なんてないし、やりたいことなんだってできるんだ!」


ふと、黒い声達が追ってこなくなった。
怒りと不安と、心配と、憂いと、何かよくわからないものでできたあの声は、途端に恐怖の色へと変わった。


何を言っているのはわからない。サンダー…?サンダー族のことか?
兎にも角にも、その声はどうやらここへは来れないらしかった。


僕は逃げ切ったんだ!
喜びと達成感が溢れ出した。
荒れた呼吸で肺が壊れそうになりながら、僕は誇らしげに胸を張った。


指導者なんていらない。
迫りくる轟音を朦朧とした意識のうちに感じながら、自惚れた笑みを浮かべた。


今の僕ならば、教えてもらわなくたって、空を飛べると思った。


~Fin~
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【1話完結】Voice on the open day Empty Re: 【1話完結】Voice on the open day

投稿 by ドリームハート Sun Mar 03, 2019 1:54 pm

1話完結なんてすごいですね!

コウムポーがとてもかっこいいと思いました。足が動かなくて看護部屋にいたのに、不思議な世界を走っているということは、スター族の所に行ったのですか?


これからも頑張ってください!

ドリームハート
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