辛く苦しくても、この世界を慈しんで
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WARRIORS BBS :: 小説投稿フォーラム :: 完全オリジナル猫小説
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辛く苦しくても、この世界を慈しんで
世界は、辛いことばかりじゃないんだと思う。
だから、どんなに辛くても、笑ってれば大抵は乗り越えられるんだ。
けど。
立ち直れないことがあったとき、私は、一体どうすればいいんだろう?
__________________________________________
慎ましく、穏やかに暮らしてたはずなのに。
「どうしてこんなことに」
誰にも迷惑をかけた覚えもないのに。
「なぜこんな酷いことを」
こんな目にあったのは、全て、身分のせいなんだ。
「こんな世界、消えてしまえばいいのに」
そう思うのは、きっと、悪いことじゃない。
だから、どんなに辛くても、笑ってれば大抵は乗り越えられるんだ。
けど。
立ち直れないことがあったとき、私は、一体どうすればいいんだろう?
__________________________________________
慎ましく、穏やかに暮らしてたはずなのに。
「どうしてこんなことに」
誰にも迷惑をかけた覚えもないのに。
「なぜこんな酷いことを」
こんな目にあったのは、全て、身分のせいなんだ。
「こんな世界、消えてしまえばいいのに」
そう思うのは、きっと、悪いことじゃない。
最終編集者 ウィンターリーフ@和風が好み [ Sun May 29, 2016 1:41 pm ], 編集回数 1 回
ウィンターリーフ@冬葉- 年長戦士
- 投稿数 : 140
Join date : 2015/06/20
所在地 : 北国
Re: 辛く苦しくても、この世界を慈しんで
まず謝罪を。
色々あり、今まで書いた文(プロローグ以外)は消去しました。
物語の構成を少し変えたいと思ったので、小説はこのまま続ける予定です。
時間がかかると思いますが、少しだけでも見ていただけたらハイになります^^
色々あり、今まで書いた文(プロローグ以外)は消去しました。
物語の構成を少し変えたいと思ったので、小説はこのまま続ける予定です。
時間がかかると思いますが、少しだけでも見ていただけたらハイになります^^
最終編集者 ウィンターリーフ@冬葉 [ Sun Mar 20, 2016 4:42 pm ], 編集回数 1 回
ウィンターリーフ@冬葉- 年長戦士
- 投稿数 : 140
Join date : 2015/06/20
所在地 : 北国
Re: 辛く苦しくても、この世界を慈しんで
【始まり】
美しい雪の夜。
ひらひらと舞い落ちる雪は真っ白で、自分でさえも白に塗り潰されたような錯覚に陥る。
でも空は黒い。
真っ黒な夜空に星が瞬き、月輝く静謐な冬の夜。
厳かで神聖で、言葉では言い表せないほど美しかった。
そんな冬の夜に私は憂いを吐き出す。
悲しみと苦しみと憎みと怒りを。
誰にも気付かれないようそっと、静かに、ただただ吐き出す。
自分が嫌になる。
心が割れそうになる。
こんなにも苦しいのに、神々は手を差し伸べてくれない。
怖くて怖くてたまらないのに、誰も助けてはくれない。
孤独心を無くして欲しい。
手を差し伸べてくれるのなら、私は立ち上がれる。
弱いから、誰かがいなきゃまえに向かって歩き出せない。
美しい雪の夜。
ひらひらと舞い落ちる雪は真っ白で、自分でさえも白に塗り潰されたような錯覚に陥る。
でも空は黒い。
真っ黒な夜空に星が瞬き、月輝く静謐な冬の夜。
厳かで神聖で、言葉では言い表せないほど美しかった。
そんな冬の夜に私は憂いを吐き出す。
悲しみと苦しみと憎みと怒りを。
誰にも気付かれないようそっと、静かに、ただただ吐き出す。
自分が嫌になる。
心が割れそうになる。
こんなにも苦しいのに、神々は手を差し伸べてくれない。
怖くて怖くてたまらないのに、誰も助けてはくれない。
孤独心を無くして欲しい。
手を差し伸べてくれるのなら、私は立ち上がれる。
弱いから、誰かがいなきゃまえに向かって歩き出せない。
最終編集者 ウィンターリーフ@冬葉 [ Sun Mar 20, 2016 4:52 pm ], 編集回数 3 回
ウィンターリーフ@冬葉- 年長戦士
- 投稿数 : 140
Join date : 2015/06/20
所在地 : 北国
Re: 辛く苦しくても、この世界を慈しんで
まるでエピローグともとれる、どこか切なくて儚げな、不思議なプロローグですね。
新小説開幕、おめでとうございます!
メッセージそのものとも言えそうなストレートなタイトルに心惹かれ、閲覧させていただきました。
元の小説がラノベの『海上のミスティア』くらいしか思い浮かばない私はたぶんまだまだ修行が足りない……
何はともあれ、この救世の物語の更新を楽しみにお待ちしています。
陰ながら応援させていただきます( *´ ω` *)!!
新小説開幕、おめでとうございます!
メッセージそのものとも言えそうなストレートなタイトルに心惹かれ、閲覧させていただきました。
元の小説がラノベの『海上のミスティア』くらいしか思い浮かばない私はたぶんまだまだ修行が足りない……
何はともあれ、この救世の物語の更新を楽しみにお待ちしています。
陰ながら応援させていただきます( *´ ω` *)!!
Re: 辛く苦しくても、この世界を慈しんで
らいとにんぐきっと wrote:まるでエピローグともとれる、どこか切なくて儚げな、不思議なプロローグですね。
新小説開幕、おめでとうございます!
メッセージそのものとも言えそうなストレートなタイトルに心惹かれ、閲覧させていただきました。
元の小説がラノベの『海上のミスティア』くらいしか思い浮かばない私はたぶんまだまだ修行が足りない……
何はともあれ、この救世の物語の更新を楽しみにお待ちしています。
陰ながら応援させていただきます( *´ ω` *)!!
なんて嬉しいお言葉を………!!
正直、世界観や設定などに悩んで立ち上げたので、観覧していただけただけでも嬉しいです。
亀さんペースになり得ますが、更新、楽しみにしてて下さい!
コメ、ありがとうございます^^
ウィンターリーフ@冬葉- 年長戦士
- 投稿数 : 140
Join date : 2015/06/20
所在地 : 北国
Re: 辛く苦しくても、この世界を慈しんで
【幕開け】
「酷い、酷いよ!」
悲鳴が溢れる。
視界を埋め尽くす、たくさんの火。
「誰か、誰か!」
倒れ伏す母の身体を揺さぶりながら、声限りに叫ぶ。
周りにはたくさんの野次馬が群がっているのに____誰一人、助けてくれない。
母の呼吸が浅い。
目を見開いてくれない。
私は必死に揺さぶった。
母は死なない。私を置いて死なないでほしい。
お母さんが居なくなったら、私は、いったいどうしたら……!
「お願い、助けて、助けてよ!!」
メラメラと火が燃え盛る。
オレンジ色の鮮やかな火。
草木を燃やし、黒い煙を排出し、視界を曇らせる。
息が詰まりそう。
「誰か____!」
最後の気力を振り絞って叫んだ。
それなのに誰も動かない。
炎に囲まれた私たちに近づけないのか、近づきたくないのか。
憐れみと嘲笑の色を浮かべる猫たちは非情だった。
泣きたい。
泣きたいほど辛かった。苦しくて苦しくて、涙が溢れそうになるほどに、心が痛かった。
____私がいったい何をしたというの?
この国の非情さに怒りが募った。
下位の者は神々の怒りを買わないよう生贄を差し出す。差し出されるのは女子供ばかり。それも下位の身分のもの。
生贄なんて最低だ、と言いたかった。
でも言えない。
気道を煙が塞いで、声も呼吸すらできない。
きっと、私はここで朽ちていく。
「酷い、酷いよ!」
悲鳴が溢れる。
視界を埋め尽くす、たくさんの火。
「誰か、誰か!」
倒れ伏す母の身体を揺さぶりながら、声限りに叫ぶ。
周りにはたくさんの野次馬が群がっているのに____誰一人、助けてくれない。
母の呼吸が浅い。
目を見開いてくれない。
私は必死に揺さぶった。
母は死なない。私を置いて死なないでほしい。
お母さんが居なくなったら、私は、いったいどうしたら……!
「お願い、助けて、助けてよ!!」
メラメラと火が燃え盛る。
オレンジ色の鮮やかな火。
草木を燃やし、黒い煙を排出し、視界を曇らせる。
息が詰まりそう。
「誰か____!」
最後の気力を振り絞って叫んだ。
それなのに誰も動かない。
炎に囲まれた私たちに近づけないのか、近づきたくないのか。
憐れみと嘲笑の色を浮かべる猫たちは非情だった。
泣きたい。
泣きたいほど辛かった。苦しくて苦しくて、涙が溢れそうになるほどに、心が痛かった。
____私がいったい何をしたというの?
この国の非情さに怒りが募った。
下位の者は神々の怒りを買わないよう生贄を差し出す。差し出されるのは女子供ばかり。それも下位の身分のもの。
生贄なんて最低だ、と言いたかった。
でも言えない。
気道を煙が塞いで、声も呼吸すらできない。
きっと、私はここで朽ちていく。
ウィンターリーフ@冬葉- 年長戦士
- 投稿数 : 140
Join date : 2015/06/20
所在地 : 北国
Re: 辛く苦しくても、この世界を慈しんで
遅ればせながら、新小説おめでとうございます!
2章とも語り手の悲しみが伝わってくるような文章で、とても引き込まれました。
忙しいとは思いますが、続きを楽しみにしております。無理のない範囲で執筆頑張ってくださいね!
2章とも語り手の悲しみが伝わってくるような文章で、とても引き込まれました。
忙しいとは思いますが、続きを楽しみにしております。無理のない範囲で執筆頑張ってくださいね!
ウィングシャドウ@もう復活でいいんじゃないかな- 新入り戦士
- 投稿数 : 65
Join date : 2015/05/15
所在地 : 本の中
Re: 辛く苦しくても、この世界を慈しんで
ウィングシャドウ@復活といったな、あれは嘘だ wrote: 遅ればせながら、新小説おめでとうございます!
2章とも語り手の悲しみが伝わってくるような文章で、とても引き込まれました。
忙しいとは思いますが、続きを楽しみにしております。無理のない範囲で執筆頑張ってくださいね!
わあああああ!コメントありがとうございます、嬉しいです!!
嬉しいことばかりおっしゃって下さって……やる気がどんどん湧いてきます。
お互い頑張りましょう^^
(部族猫体験遅くてごめんなさい……土日には更新できる予定です)
ウィンターリーフ@冬葉- 年長戦士
- 投稿数 : 140
Join date : 2015/06/20
所在地 : 北国
Re: 辛く苦しくても、この世界を慈しんで
不定期更新……神出鬼没……こんな私でごめんなさいm(__)m
『黒い日』
黒かった。
全てが黒い、暗黒の色。
限りなく続く同じ色のなか、彷徨い歩く私。
「お母さん」
母を呼ぶ声が幾重にもなってこだまして、少々気味が悪い。でもいくら大声で叫んでもとても小さく聞こえる。
_____ここ、怖い。
そう思って逃げ出したくなるけど、だめなんだ。だって、お母さんを置いてきちゃった。
置き去りにしちゃいけないのに、暗闇に一人、残しちゃった。
だから。
「お母さん、何処にいるの?」
探さなきゃ、だめなんだ。
**
喉が、痛い。
私は盛大に咳き込んだ。喉に何か、異物が詰まっているような感覚に身体が拒絶を示す。
ふるふると震え始める身体からは木屑がぱらぱらと落ちてきた。そして、赤い水も。それに、煤。
鈍い頭をぶるっと振って私は辺りを見回した。
限りない黒い色。そして焼け焦げた木々。そして時折チラつく赤い炎。
その景色を見回し、私は慌てた。
「お母さん!」
飛び出た声は恥ずかしいほど掠れたものだったけど、私は無我夢中で倒れた木々の隙間に滑り混んだ。
汚れなんて、怪我なんて気にしない。そんなのどうでもいいもの。
お母さんが無事でいれば、それでいいの。
願うほど、叶わない想いは辛いんだと思う。
願っても、叶わないことほど辛いことはないと思う。
だから、夢なんて抱いちゃいけないのかもしれない。だって、叶わなかったとき、とても悲しい。
胸が張り裂けそうになるほど悲しくて、死にたいって思うから。だから。
「お母さん」
残酷な現実に、夢を抱いちゃいけない。
**
泣いた。
声が枯れるほど、咳き込むほど。
泣いて泣いて。酷い酷いって。お母さんを返してって。
泣くしかできなかったから。泣く以外に何をしたらいいのかわからなかったから。
こんな酷い現実を、どう生きて行けばいいのか不安だったからかもしれないけど。
泣くしか脳のない私に、差し伸べてくる手は邪魔でしかなかった。
「俺と一緒に居よう」
その言葉、とても儚かった。
(暗…)
『黒い日』
黒かった。
全てが黒い、暗黒の色。
限りなく続く同じ色のなか、彷徨い歩く私。
「お母さん」
母を呼ぶ声が幾重にもなってこだまして、少々気味が悪い。でもいくら大声で叫んでもとても小さく聞こえる。
_____ここ、怖い。
そう思って逃げ出したくなるけど、だめなんだ。だって、お母さんを置いてきちゃった。
置き去りにしちゃいけないのに、暗闇に一人、残しちゃった。
だから。
「お母さん、何処にいるの?」
探さなきゃ、だめなんだ。
**
喉が、痛い。
私は盛大に咳き込んだ。喉に何か、異物が詰まっているような感覚に身体が拒絶を示す。
ふるふると震え始める身体からは木屑がぱらぱらと落ちてきた。そして、赤い水も。それに、煤。
鈍い頭をぶるっと振って私は辺りを見回した。
限りない黒い色。そして焼け焦げた木々。そして時折チラつく赤い炎。
その景色を見回し、私は慌てた。
「お母さん!」
飛び出た声は恥ずかしいほど掠れたものだったけど、私は無我夢中で倒れた木々の隙間に滑り混んだ。
汚れなんて、怪我なんて気にしない。そんなのどうでもいいもの。
お母さんが無事でいれば、それでいいの。
願うほど、叶わない想いは辛いんだと思う。
願っても、叶わないことほど辛いことはないと思う。
だから、夢なんて抱いちゃいけないのかもしれない。だって、叶わなかったとき、とても悲しい。
胸が張り裂けそうになるほど悲しくて、死にたいって思うから。だから。
「お母さん」
残酷な現実に、夢を抱いちゃいけない。
**
泣いた。
声が枯れるほど、咳き込むほど。
泣いて泣いて。酷い酷いって。お母さんを返してって。
泣くしかできなかったから。泣く以外に何をしたらいいのかわからなかったから。
こんな酷い現実を、どう生きて行けばいいのか不安だったからかもしれないけど。
泣くしか脳のない私に、差し伸べてくる手は邪魔でしかなかった。
「俺と一緒に居よう」
その言葉、とても儚かった。
(暗…)
最終編集者 ウィンターリーフ@復活宣言! [ Thu Feb 16, 2017 4:00 pm ], 編集回数 1 回
ウィンターリーフ@冬葉- 年長戦士
- 投稿数 : 140
Join date : 2015/06/20
所在地 : 北国
Re: 辛く苦しくても、この世界を慈しんで
今更ですけど、新小説おめでとうございます(遅
切ない文章にグイッと引き込まれました。
ウィンターsならではの表現の仕方、すごく好きです。
陰ながらしかし全力で応援させていただきます......(・ω・´●)
切ない文章にグイッと引き込まれました。
ウィンターsならではの表現の仕方、すごく好きです。
陰ながらしかし全力で応援させていただきます......(・ω・´●)
レパードクロー- 副長
- 投稿数 : 335
Join date : 2015/05/17
所在地 : ちゃぶ台帝国にある実家
Re: 辛く苦しくても、この世界を慈しんで
ひょうつめ@復活宣言 wrote:今更ですけど、新小説おめでとうございます(遅
切ない文章にグイッと引き込まれました。
ウィンターsならではの表現の仕方、すごく好きです。
陰ながらしかし全力で応援させていただきます......(・ω・´●)
ああああ! コメントありがとうございます。
表現の仕方がすごく好きと言っていただき、すごく嬉しいです! これからも頑張りたいと思います。
なんかすっごく暗いなー……なんて思ってたので、これからは少しずつ明るく……! しばらくはシリアスかなあ。
お互い頑張りましょう!
ウィンターリーフ@冬葉- 年長戦士
- 投稿数 : 140
Join date : 2015/06/20
所在地 : 北国
Re: 辛く苦しくても、この世界を慈しんで
『赤い日』
「俺と一緒に居よう」だなんて。
あなたに一体なにができるというのか。
私のことなんて、なにも知らないくせに。
「嫌い。あっちへ行って」
そう言うのに、彼はただ笑った。赤い赤い景色の中、澄んだ水面のような目を輝かせて。
その目を見る限り、私に対しての憐れみはなかった。ただの、優しさだけが浮かんでいた。
「言葉とは、つくづく裏がある」
穏やかな、どこまでも穏やかな声音に思わず耳を傾ける。滝のように溢れた涙はいつの間にか止まっていた。
「だから、今、君が言った言葉とは」
本心を隠している、彼はそう囁いた。
「今は、眠れ。心の傷に耐えられる、その時まで。成長し、過去を振り返られるようになる、その時まで」
眠れ。
その言葉で、眠りたくもないのに自然と瞼が重くなっていく。睡魔に引き摺り込まれそうになる前に、私は精一杯抗って必死に訴えた。
「……嫌! だってお母さんを置いてきちゃった。取り残しちゃいけないのに、暗闇に置き去りにしちゃった!」
その声に、彼は切なそうに瞳を伏せた。
**
『赤は血。炎も赤。死を表すのは決まって赤』
ならば生は?
私は首を傾げ、赤い林檎を前足で突ついた。
『生は金。輝かしい、太陽のような金』
とろりと林檎が金色へと変化する。
ならば、心に眠る深い憎悪の種は。
『黒。烏と、夜空と、土の黒。何も見えない、残酷な世界の色』
ならば喜びの色とは。
その問いかけに私は困ってしまった。しばし考えた後、答えを紡ぐ。
『喜びに、色などない』
そう思って頷いたのに、やはり違和感を拭えない。
私は本当に困り、高みに居る猫に声を掛けた。
『喜びの色とは?』
そう尋ねたのに、彼は教えてくれない。ただ黙って微笑み、こう言った。
君が付けなさい。
『喜びの色を、私は知らないよ?』
だから無理、その想いを込めて再び見上げれば、彼は背を向け、さらに高みへと姿を消してしまった。
後に残されたのは、金の林檎と、空っぽな心。
その心を埋めるには、喜びというものに、色を付けねばならない。
『喜びなんて、わからない』
ぽつりと呟いた言葉から、涙が落ちた。
「俺と一緒に居よう」だなんて。
あなたに一体なにができるというのか。
私のことなんて、なにも知らないくせに。
「嫌い。あっちへ行って」
そう言うのに、彼はただ笑った。赤い赤い景色の中、澄んだ水面のような目を輝かせて。
その目を見る限り、私に対しての憐れみはなかった。ただの、優しさだけが浮かんでいた。
「言葉とは、つくづく裏がある」
穏やかな、どこまでも穏やかな声音に思わず耳を傾ける。滝のように溢れた涙はいつの間にか止まっていた。
「だから、今、君が言った言葉とは」
本心を隠している、彼はそう囁いた。
「今は、眠れ。心の傷に耐えられる、その時まで。成長し、過去を振り返られるようになる、その時まで」
眠れ。
その言葉で、眠りたくもないのに自然と瞼が重くなっていく。睡魔に引き摺り込まれそうになる前に、私は精一杯抗って必死に訴えた。
「……嫌! だってお母さんを置いてきちゃった。取り残しちゃいけないのに、暗闇に置き去りにしちゃった!」
その声に、彼は切なそうに瞳を伏せた。
**
『赤は血。炎も赤。死を表すのは決まって赤』
ならば生は?
私は首を傾げ、赤い林檎を前足で突ついた。
『生は金。輝かしい、太陽のような金』
とろりと林檎が金色へと変化する。
ならば、心に眠る深い憎悪の種は。
『黒。烏と、夜空と、土の黒。何も見えない、残酷な世界の色』
ならば喜びの色とは。
その問いかけに私は困ってしまった。しばし考えた後、答えを紡ぐ。
『喜びに、色などない』
そう思って頷いたのに、やはり違和感を拭えない。
私は本当に困り、高みに居る猫に声を掛けた。
『喜びの色とは?』
そう尋ねたのに、彼は教えてくれない。ただ黙って微笑み、こう言った。
君が付けなさい。
『喜びの色を、私は知らないよ?』
だから無理、その想いを込めて再び見上げれば、彼は背を向け、さらに高みへと姿を消してしまった。
後に残されたのは、金の林檎と、空っぽな心。
その心を埋めるには、喜びというものに、色を付けねばならない。
『喜びなんて、わからない』
ぽつりと呟いた言葉から、涙が落ちた。
ウィンターリーフ@冬葉- 年長戦士
- 投稿数 : 140
Join date : 2015/06/20
所在地 : 北国
Re: 辛く苦しくても、この世界を慈しんで
『青い日』
ーーすごく、優しい目があった。
まるで空のような、一度だけ見た海のような。深く深く、心の奥まで染み入るような、優しい青い目だ。
その目を私は食い入るように見つめていた。瞬きするのでさえもどかしくて、私はこの青い目を消したくなくて、一心に見つめた。
だってその青い目は、何の嫌悪も侮蔑も憐れみも讃えていなかったから。ただ一心に優しさだけを、包み込むような慈愛の色を宿して、私を見てくれている。それがこんなにも痛くて嬉しいなんて、私は知らなかった。
お互いに言葉は発さずに、心地良い空気が流れていく。微笑むように眇められた青に自分の金が映っているのを見つけ、私は無性に嬉しくなった。
ーー優しい色を、私も持てるだろうか?
そんなことを思って、ふっと浅く息を吐く。この目に溶ける金に混じって、優しさの色を宿したい。そうしたら、少しは嬉しい気持ちになれる気がした。濁ってしまった自分の瞳を、澄んだ優しい青に映されているということは、少し恥ずかしいけれど。
ーーああ、この景色が永遠に続けばいいのに。
叶わない願いを思って切なくなりながら、私は薄れていく意識を掴もうと手を伸ばす。
待って、まだ、嫌なのに。
掴もうとすると魚のように、スルリと手から離れてゆく意識に、私は負けてしまった。
ーーまだ、その青を見ていたいのに。
つかの間の温かさを失うと思うと、きゅうっと胸が萎んだように痛くなる。その痛みに、私は歪んだ考えを出してしまう。嫌だって、思うのに。
こんな痛みを感じるくらいなら、優しさなんていらない。
そんなこと、絶対思いたくなかった。
こんなことを思ってしまうのは、全て、この世界のせいなんだ。
**
「……ッ!」
身体を動かすと、今にも気絶したくなるような痛みが走った。咄嗟に地面に爪を立てて痛みを堪える。
「大丈夫、力を抜いて」
幻聴かと思った。
こんなにも優しい声を出すのは、母しかいないからだ。けど、母の声はもっと高かったはず。
「ほら」
促され、疑問は痛みと共に消えた。言われた通りに力を抜くと、みるみるうちに痛みの波が引いていく。それにほっとして思わず息を吐けば、僅かな笑い声が聞こえた。まるで吐息のような音で、それすらも柔らかい。
ーー誰?
そう思って瞼を開こうとするも、驚いたことにちょっとも動かない。まるで瞼と瞼がくっついてしまったかのようで、私は狼狽えた。その狼狽えが、尻尾に現れていたようで。
「大丈夫、今は寝ていなよ。寝ていれば目も開く。寝ることで、身体も治っていく。だからーー」
ああなんか、聞いたことがあるような声。そうぼんやり思ったときーー
「今は、眠りなさい」
酷く既視感があって思わず耳をぴくっと動かしてしまった。それと共に、何か暗くてどろりとしたものが心を覆っていくようなーー
それを確かめる前に、意識は落ちていった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
久々の更新……!
ーーすごく、優しい目があった。
まるで空のような、一度だけ見た海のような。深く深く、心の奥まで染み入るような、優しい青い目だ。
その目を私は食い入るように見つめていた。瞬きするのでさえもどかしくて、私はこの青い目を消したくなくて、一心に見つめた。
だってその青い目は、何の嫌悪も侮蔑も憐れみも讃えていなかったから。ただ一心に優しさだけを、包み込むような慈愛の色を宿して、私を見てくれている。それがこんなにも痛くて嬉しいなんて、私は知らなかった。
お互いに言葉は発さずに、心地良い空気が流れていく。微笑むように眇められた青に自分の金が映っているのを見つけ、私は無性に嬉しくなった。
ーー優しい色を、私も持てるだろうか?
そんなことを思って、ふっと浅く息を吐く。この目に溶ける金に混じって、優しさの色を宿したい。そうしたら、少しは嬉しい気持ちになれる気がした。濁ってしまった自分の瞳を、澄んだ優しい青に映されているということは、少し恥ずかしいけれど。
ーーああ、この景色が永遠に続けばいいのに。
叶わない願いを思って切なくなりながら、私は薄れていく意識を掴もうと手を伸ばす。
待って、まだ、嫌なのに。
掴もうとすると魚のように、スルリと手から離れてゆく意識に、私は負けてしまった。
ーーまだ、その青を見ていたいのに。
つかの間の温かさを失うと思うと、きゅうっと胸が萎んだように痛くなる。その痛みに、私は歪んだ考えを出してしまう。嫌だって、思うのに。
こんな痛みを感じるくらいなら、優しさなんていらない。
そんなこと、絶対思いたくなかった。
こんなことを思ってしまうのは、全て、この世界のせいなんだ。
**
「……ッ!」
身体を動かすと、今にも気絶したくなるような痛みが走った。咄嗟に地面に爪を立てて痛みを堪える。
「大丈夫、力を抜いて」
幻聴かと思った。
こんなにも優しい声を出すのは、母しかいないからだ。けど、母の声はもっと高かったはず。
「ほら」
促され、疑問は痛みと共に消えた。言われた通りに力を抜くと、みるみるうちに痛みの波が引いていく。それにほっとして思わず息を吐けば、僅かな笑い声が聞こえた。まるで吐息のような音で、それすらも柔らかい。
ーー誰?
そう思って瞼を開こうとするも、驚いたことにちょっとも動かない。まるで瞼と瞼がくっついてしまったかのようで、私は狼狽えた。その狼狽えが、尻尾に現れていたようで。
「大丈夫、今は寝ていなよ。寝ていれば目も開く。寝ることで、身体も治っていく。だからーー」
ああなんか、聞いたことがあるような声。そうぼんやり思ったときーー
「今は、眠りなさい」
酷く既視感があって思わず耳をぴくっと動かしてしまった。それと共に、何か暗くてどろりとしたものが心を覆っていくようなーー
それを確かめる前に、意識は落ちていった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
久々の更新……!
ウィンターリーフ@冬葉- 年長戦士
- 投稿数 : 140
Join date : 2015/06/20
所在地 : 北国
Re: 辛く苦しくても、この世界を慈しんで
うわああウィンターさあああん!うるさくしてすみません、復活おめでとうございます( ♡ᴗ♡ )
心に傷を負った主人公の目線から書かれているのに、ひとつひとつの文章に優しさと温かさがありますね。
時に詩のような一面もあって……とてもきれいな作品だなあ、とほれぼれしてしまいます笑
更新を楽しみにさせていただきます♪ 執筆ふぁいとですー!
ティアーミスト- 年長戦士
- 投稿数 : 135
Join date : 2015/05/17
Age : 22
所在地 : Love the life you live. Live the life you love.
Re: 辛く苦しくても、この世界を慈しんで
ティアーミスト wrote:
うわああウィンターさあああん!うるさくしてすみません、復活おめでとうございます( ♡ᴗ♡ )
心に傷を負った主人公の目線から書かれているのに、ひとつひとつの文章に優しさと温かさがありますね。
時に詩のような一面もあって……とてもきれいな作品だなあ、とほれぼれしてしまいます笑
更新を楽しみにさせていただきます♪ 執筆ふぁいとですー!
うわあああああ!! ティアーさんっ、会いたかったです!! ありがとうございます、ウィンター復活宣言です!
嬉しいお言葉ありがとうございます! 書いてて思ったのですが、『爪』や『耳』『尻尾』などの描写がないと人間の話になりそう……
コメありがとうございます! お互い頑張りましょうね^^
ウィンターリーフ@冬葉- 年長戦士
- 投稿数 : 140
Join date : 2015/06/20
所在地 : 北国
Re: 辛く苦しくても、この世界を慈しんで
『暗い日』
『ーー返して!返して返して、お願い。ああ、お願いだから返して。私のお母さんを、返して!!』
胸が痛くなるような悲痛な声に、私は目を覚ました。叫んでいたのは自分だったのだ。
顔を上げたところでふぅ、と息を吐く。はっとして周りを見ると、足下には柔らかい苔と温かな鳥の羽。これが私を守ってくれたのだろうか。いやーーと否定しかけ、痛む頭を抑えた。
ちがう。なんだろう、誰かが居たのだ。とても綺麗な、湖面のように綺麗な色の瞳を持ったーー
「おはよう」
突然の声と見知らぬ猫の出現に驚き、私は思いっきり仰け反った。無様に頭を打ち、その痛みに悶絶する。
「あ、驚かせてごめんね。身体は大丈夫?」
「だ、大丈夫です…」
ぼそぼそと答えると、水色の瞳の彼は微笑んだ。
その様に警戒が湧く。ーーいや、確かにこの声と目は知っている。夢と現の狭間の中、優しく語りかけてくれたことも朧げだが思い出した。危険な猫ではない。むしろ助けてくれたのだからお礼だって言っていい。恩人なのだから。命を、救ってくれたのだから…?
ふと、そこで首を傾げた。
私は、助けてください、などと言っただろうか? いや、言ってない。この猫の善意だとはわかるが、助けるのならむしろお母さんをーーなぜ、お母さんを助けるの?
「え、え」
混乱して頭が痛い。
私はなんで、倒れていた? なんでそこにお母さんが出てくるの? それにーーなぜこんなにも、辺りが焦げ臭いのだろうか。まるで、何かを焼いたようなーー
「焼いた?」
呟き、繰り返す。瞬きに見えたのは木や猫を舐め尽くす炎の色ではなく、正反対に落ち着いた、救いの色。いや、今私はなんて。
「火……」
その瞬間、記憶がわっと頭に溢れかえった。
パチパチと爆ぜる木の音に、嘲笑の声。オレンジ色の炎と鮮やかな真紅。ぐったりとした肢体に、天を向いた虚ろな目。懐かしい匂いが残酷に、死臭へと変わる。
息が荒くなる。ーー痛い。
冷たい目。心に溢れる悲しみとどうしようもない怒り。どす黒く染まりそうになる思考と、落ちた涙。
ーーああ、そうだった。お母さんは……
「いや……やだあああああああああああっ!!」
耳を劈くような悲鳴が自分の口から放たれた。
ああ、痛い。胸が痛くて割れそうだ。お願い、助けて。痛いよ、お母さん。お母さーー
ふっと何かに強く抱き締められる。お母さんだったらと良いのにと願うのに、漂う香りはミントのような冷たい匂い。願うのは、陽だまりのーー
「嘘っ、うそ、うそだったら、いいのに。うそでいて、せめて、お願いだからぁ……!!」
鳴き声に変わり、嗚咽が漏れる。もう嫌だ。こんな現実受け止めきれない。
こんな現実、嫌だ。苦しくて痛くて辛いだけで、お母さんだっていないのに。もうもう、嫌だ。
不満のように、するりと言葉が溢れた。
「どうして助けたのよぉ……助けられたってちっとも、うれしくな、いのに……こんなんだったら、死んでたいよ、どうして、どうして私が、どうし、て……」
今、私の心は悪意でいっばいで。泥が詰められたようにぐちゃぐちゃで。だから聞かないで。間に受けないで。私の言葉はきっとあなたを傷つける。
だから。ごめんなさいの代わりに頑張って押し黙り、涙だけは許してもらう。
助けてくれてありがとう。と本心から言えたらいいのに。そうして笑えたら完璧なのに。私はもう、そんな当然のことさえできない。
どうして私を助けたの。なんて、これ以上言ったら彼に失礼だから、もうなにも言えない。
『ーー返して!返して返して、お願い。ああ、お願いだから返して。私のお母さんを、返して!!』
胸が痛くなるような悲痛な声に、私は目を覚ました。叫んでいたのは自分だったのだ。
顔を上げたところでふぅ、と息を吐く。はっとして周りを見ると、足下には柔らかい苔と温かな鳥の羽。これが私を守ってくれたのだろうか。いやーーと否定しかけ、痛む頭を抑えた。
ちがう。なんだろう、誰かが居たのだ。とても綺麗な、湖面のように綺麗な色の瞳を持ったーー
「おはよう」
突然の声と見知らぬ猫の出現に驚き、私は思いっきり仰け反った。無様に頭を打ち、その痛みに悶絶する。
「あ、驚かせてごめんね。身体は大丈夫?」
「だ、大丈夫です…」
ぼそぼそと答えると、水色の瞳の彼は微笑んだ。
その様に警戒が湧く。ーーいや、確かにこの声と目は知っている。夢と現の狭間の中、優しく語りかけてくれたことも朧げだが思い出した。危険な猫ではない。むしろ助けてくれたのだからお礼だって言っていい。恩人なのだから。命を、救ってくれたのだから…?
ふと、そこで首を傾げた。
私は、助けてください、などと言っただろうか? いや、言ってない。この猫の善意だとはわかるが、助けるのならむしろお母さんをーーなぜ、お母さんを助けるの?
「え、え」
混乱して頭が痛い。
私はなんで、倒れていた? なんでそこにお母さんが出てくるの? それにーーなぜこんなにも、辺りが焦げ臭いのだろうか。まるで、何かを焼いたようなーー
「焼いた?」
呟き、繰り返す。瞬きに見えたのは木や猫を舐め尽くす炎の色ではなく、正反対に落ち着いた、救いの色。いや、今私はなんて。
「火……」
その瞬間、記憶がわっと頭に溢れかえった。
パチパチと爆ぜる木の音に、嘲笑の声。オレンジ色の炎と鮮やかな真紅。ぐったりとした肢体に、天を向いた虚ろな目。懐かしい匂いが残酷に、死臭へと変わる。
息が荒くなる。ーー痛い。
冷たい目。心に溢れる悲しみとどうしようもない怒り。どす黒く染まりそうになる思考と、落ちた涙。
ーーああ、そうだった。お母さんは……
「いや……やだあああああああああああっ!!」
耳を劈くような悲鳴が自分の口から放たれた。
ああ、痛い。胸が痛くて割れそうだ。お願い、助けて。痛いよ、お母さん。お母さーー
ふっと何かに強く抱き締められる。お母さんだったらと良いのにと願うのに、漂う香りはミントのような冷たい匂い。願うのは、陽だまりのーー
「嘘っ、うそ、うそだったら、いいのに。うそでいて、せめて、お願いだからぁ……!!」
鳴き声に変わり、嗚咽が漏れる。もう嫌だ。こんな現実受け止めきれない。
こんな現実、嫌だ。苦しくて痛くて辛いだけで、お母さんだっていないのに。もうもう、嫌だ。
不満のように、するりと言葉が溢れた。
「どうして助けたのよぉ……助けられたってちっとも、うれしくな、いのに……こんなんだったら、死んでたいよ、どうして、どうして私が、どうし、て……」
今、私の心は悪意でいっばいで。泥が詰められたようにぐちゃぐちゃで。だから聞かないで。間に受けないで。私の言葉はきっとあなたを傷つける。
だから。ごめんなさいの代わりに頑張って押し黙り、涙だけは許してもらう。
助けてくれてありがとう。と本心から言えたらいいのに。そうして笑えたら完璧なのに。私はもう、そんな当然のことさえできない。
どうして私を助けたの。なんて、これ以上言ったら彼に失礼だから、もうなにも言えない。
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