”部族”を生きる、ぼくらのお話

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”部族”を生きる、ぼくらのお話

投稿 by 明日輝 on Wed Mar 30, 2016 6:05 pm





”部族”を生きる、ぼくらのお話







その昔、とある四匹の猫は“部族”を作りました。

 猫はそれぞれ自分の名前にあやかった部族を築きあげ、子孫を残しました。

 “部族”はそれぞれを時に仲間として、時に敵として、今まで共に生きてきました。

 “部族”の歴史はとても長いものですし、きっとこれからも続いていくことでしょう。

 これは、そんな“部族”を生きる、ぼくらのお話。





初めに

こんばんは、明日輝です。掛け持ちなのはよーくわかっていますが作ってしまいました。

この作品は、シリアスや恋愛や友情、冒険など色々盛り込んだお話です。日常を描いていく感じで、コメディが多いです。

すこし恋愛に偏りがちかも………。

相変わらずの亀更新です。

できるだけわかりやすく描写していこうと思うので、ぜひよろしくお願いします。




※章ごとの題名は「(キャラ名)と〇〇」という形になっています。これは、(キャラ名)視点という意味です※


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Re: ”部族”を生きる、ぼくらのお話

投稿 by 明日輝 on Wed Mar 30, 2016 6:07 pm



目次



更新中………
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Re: ”部族”を生きる、ぼくらのお話

投稿 by 明日輝 on Wed Mar 30, 2016 6:07 pm




※物語が進むにつれて説明を詳しくしていきます。



登場猫紹介*サンダー族編



◇スワローポー〈燕の足〉
 ♀。濃い灰色の毛に黄色の目。小柄で可愛らしい。
 ”奇跡の劣等生”。真面目だが、不器用。純粋だけど、頑固すぎるところがある。
 一応、主人公。


◇スカイポー〈空の足〉
 ♂。薄い灰色の毛に透き通る青い目。大柄。さっぱりしているけどどこか甘いルックス。
 随分と大人びている。優しく、穏やかに微笑む。極めて優秀。
 スワローポーの双子の兄。


◇ウルフポー〈狼の足〉
 ♂。黄金色の毛に緑の目。手足が長く、しなやか。目鼻立ちがくっきりとしていてハンサム。
 族長と副長の間に生まれ、傍若無人で自分中心の言動をする。基本何でもできる。
 スワローポー、スカイポーとは幼馴染。



登場猫紹介*ウィンド族編


登場猫紹介*リヴァー族編


登場猫紹介*シャドウ族編


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Re: ”部族”を生きる、ぼくらのお話

投稿 by 明日輝 on Wed Mar 30, 2016 6:30 pm




0 スワローポーと夢







 その日、両親が死んだ___。


                                                                     ◇ ◆ ◇


「敵だぁ!!」

 枯葉の季節が近づき、夜はすっかり冷え込むようになった。私は暖かい場所を求めるように時折体をもぞもぞ動かしながら母親と兄と眠っていた。

 そんないつも通りの夜のキャンプに響き渡ったのは、おそらく見張りをしていたのだろう戦士の声。

 私たちはすぐに飛び起きる。その頃私はまだ生まれたばかりで幼く、もちろん戦いなんて経験したことなかったから、状況がよくつかめずにぼんやりとしていた。一体全体、どうしたの?

 再び夢の世界に入り込んでしまいそうな感じでコクコクと船を漕いでいた私は母親の背中を尻尾でパシリと叩かれる。

 それで目が覚めた。出かかっていた欠伸が引っ込み、代わりに出てきた涙をこらえながら、母親に「痛い」と文句を言おうと母親を見上げる。

 その瞬間痛さなんて吹っ飛んだ。

 母親は今まで見たことのない真剣な顔をして保育部屋の外を睨んでいた。イバラや蔦で守られたこの安全な空間の先にいる敵をまっすぐ睨んでいた。

 私はこれが遊びでも訓練でもなんでもない、本当に死と隣り合わせの戦いなんだと悟った。すると急に恐怖にとらわれて膝が笑い出す。

 保育部屋にいる母猫達は私たち子猫を出口から一番遠い隅へと固まらせると、二匹の母猫を残して戦場へ飛び込んだ。私の母親も戦いに行った。

 部屋の外からは、時折断末魔のような叫び声が聞こえる。私は聞こえる度に体を震え上がらせ、それが敵の声なのか味方の声なのか、怯えていた。嗚呼スター族様、どうか助けて!

 自分の目で状況を確かめられないことがとても怖かった。

 いつまでそうしていたのだろう。気が付くとキャンプはしんと静まり返っていた。戦いが終わったのだろう。

 私たちはゆっくりと立ち上がり、恐怖で逆立ったままでボサボサになっていた毛を舐めて整える。誰も口を利くことはせず、普段の賑やかさが嘘のようだった。

「スカイキット、スワローキット!」

 すると突然、保育部屋に一匹の戦士が飛び込んできた。戦士は血だらけで、毛の色さえよく分からない。歩けていることろをみると、血は他の猫の血なんだろうが、体重が不自然に右側にかかってた。怪我をしているの?

 私と、兄の名前を呼んだ戦士は血走った目で保育部屋の中を見渡した。私たちを見つけると、右の前足で手招きした。え、私………?

 私と兄は顔を合わせると、戦士の方へ小走りで向かった。戦士に近づくと、血で埋まった匂いからその戦士が族長だと分かる。

「怪我はないか?」

 族長は私たち兄妹を頭のてっぺんから爪の先まで失礼なくらいじろじろ見ると、安心したようにフッと息を吐いた。

 私と兄はいまいちわからない。今保育部屋にはたまたまたくさんの子猫がいる。なのにどうして私たち?私たちの後ろで貴方の息子さんが寂しそうにしてますよ、族長。

「ついてこい」

 結局なにも説明しないまま、族長はくるりと身を翻して保育部屋から出ていった。仕方ないので、私たちも部屋から出る。

 部屋から一歩足を出した私は思わず戻りたくなった。キャンプは血と敵の匂いで溢れかえっていた。目をぎゅっとつむり、息を止める。さっきの記憶が蘇り吐き気がした。

 どの猫も少なからず怪我をしていて、普段の明るさはどこにも見当たらない。

 族長はキャンプの真ん中に私たちを案内した。いつもなら、獲物が積み上げられている場所だ。今はネズミやツグミがずたずたになって散乱している。

「こっちだ。」

 数匹の戦士が固まって丁度死角なっている場所を族長は指した。こんな時まで見張りをしている戦士たちの裏にくるりと回り込む。

「!」

 数秒早く回り込んだ兄が息を呑んだのが分かった。毛を逆立てた兄はズッと後ずさりする。そこに何があるのか、不思議に思った私は兄からそこに目を向ける。

「………嫌っ!」

 悲惨だった。

 八つ裂きにされるくらいの勢いで血まみれになって息絶えていたのは、私たちの両親だった。どうして!

 私はどさっと崩れこむ。受け入れたくなくて、目をそらしたいが、瞬きも出来ずに二匹の死体を見つめる。

「一族を、君たちを守った勇敢な最期だった。サンダー族は二匹を称える。」

 族長は辛そうな声で絞り出すように呟く。私たちは何と言っていいのかわからずに黙っていた。いなくなったら意味ないじゃん、とは言えなかった。

「許さない」

 長い沈黙破ったのは私だった。自分で言って自分で驚く。こんなに低い声が出せるとは。

「これが部族なんですか?これが戦いなんですか?だったら私はこんなの嫌です。こんなの、おかしい。」

 兄は何も言わなった何も言わずに私に体を押し付ける。族長は小さく「そうだな」と呟いた。

「こんなに、おかしいよぉ………」

 静かなキャンプに、私の嗚咽が響いていた。


                                                                          ◇ ◆ ◇


 私の夢は、“部族”から戦いをなくすこと。





最初すごくシリアスですけど、この後もっと明るい感じです、たぶん(;´・ω・)


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Re: ”部族”を生きる、ぼくらのお話

投稿 by 明日輝 on Wed Mar 30, 2016 6:38 pm





1 スワローポーとお兄ちゃん






「何でこんなに、違うんだぁ!!!」

 森中に響き渡るような大声で、私は叫んだ。
 もし今この森のどこかに狩りをしていた猫がいたのなら、私は謝らないといけない。
 きっとすべての獲物と言う獲物が住処に引っ込んだのだろう。

 と、そのくらい大きな声を出した私は肩で息をしながら目の前の雄猫を睨んだ。

 その雄猫の名前は、スカイポー。私の双子のお兄ちゃん。

 スカイポーはさっきとったばかりの獲物をくわえながら、苦笑いした。
 そのまま、もごもごと「落ち着いて」と私をなだめる。これが落ち着いてられるもんか!



 私は、稀に見ぬ劣等生だ。
 そう、自分で言うのもなんだが、奇跡と言っても過言ではないだろう。
 ついたあだ名は“奇跡の劣等生”。なんにも嬉しくない。

 あだ名の通り、私は非常に出来が悪い。

 見習いになって、一ヶ月経ったと言うのに、まだ一度も獲物を捕まえたことがない。ただの一度もだ。

 別に、今まで二本足の家で飼い猫としてぬくぬく育ってきたわけではない。
 みんなと同じようにシビアな野生猫生活をしてきた。
 そう、毎日がサバイバル!

 血のことでとやかく言うつもりはないが、血はむしろいい方。限りなく純血に近い。
 家族たちだって、“族長や副長になれこそはしないが、頼りにされるそこそこ強い戦士”ばかり。結構優秀。

 その証拠に、お兄ちゃんは素晴らしい。

 狩りの腕前は相当のもので、戦士と変わらない量を捕ってくる。
 訓練初日に特大リスを自力で捕ったことは軽く伝説になりかけた。
 その時私は木の根っこに引っかかって足をくじいたと言うのに………。

 戦闘だってもちろんよくできる。
 訓練初日に二か月先輩の見習いを降参させたらしい。
 その、プライドをへし折られたであろう先輩に心の底から同情しよう。
 ちなみにその時私は頭から地面に突っ込んで星を見ていた。綺麗だったぜ!

 狩りも戦闘もずば抜けたお兄ちゃんはどこか大人びている。
 蝶々を見つけても、私のように追いかけたりはしないし、落ち葉で滑って転ぶような間抜けな真似も決してしない。
 運動神経いいもんね。

 極めつけはそのルックス!微笑むと優しくて素敵!とお姉さま方に大変人気だ。
 大きくなったら相当モテそうだ。私が保障しよう。

 と、まあお兄ちゃんは所謂“完璧”って奴だ。
 お兄ちゃんに、“奇跡の優等生”というあだ名をつけたい!くーっ、あだ名が光ってるよ!

 だからひとは言う。
 “スワローポーはスカイポーにエリート要素を持っていかれたんだ”、と。全くもってその通りだと私は思う。
 せめて人並みの才能は残していってよ、お兄ちゃん!
 スター族は不公平だ。



 優秀な兄と対比されるからか、元が悪いのか、すっかりお荷物扱いされる私。
 不憫だとは思わんか?!
 これでも真面目に訓練しているんだ。不器用なだけだ。

 私の指導者は優しいから、そんなダメダメな私を見捨てることなく、何度も辛抱強く基礎から教えてくれる。本当にありがたい。

 でも私は知っているのだ。
 私がダメダメな理由を彼女の教え方がダメダメだからと陰口を言う奴がいることを!
 何てこと!
 彼女がいなかったら、私のダメダメ具合は今の六割増しだからな!一族私のせいで破滅してもしらんぞ?!

 これ以上彼女に迷惑かけるわけにはいかない!そう思った私は、お兄ちゃんに狩りを教えてもらおうと頼み込んだのだ。

 そこでお兄ちゃんの見習い離れした美しい体勢と動きを目の当たりにした私は先ほどの叫びをあげたのである。
 どうしてなんだぁ!

 才能の違いをがつんと突き付けられ、私は心に大きなダメージを負った
 。お兄ちゃんの狩りの様子を見ると、私が獲物を捕れない理由がわかる気がするよ。

「スワローポーは動きが堅いんだよなあ。なんか、こうもっと、本能に従う感じで………」

 がっくりと項垂れ、ひとり落ち込む私を見て、お兄ちゃんはあわあわと慌てながら、身振り手振りを交えてアドバイスしてくれた。
 でもお兄ちゃん、本能って………!

「うーん、コツを掴むこと、としか言えないよ。」

 お兄ちゃんは少し困ったように耳を曲げながら言った。
 それができたら苦労しないんだけど………。
 お兄ちゃんの目が、役に立てなくてごめん、と言っている気がする。私はさらに頭を落とした。
 ああ、未来に光なんてみえないよ。

「ま、まあ!まだ一ヶ月だし、これからこれから!」

 無理矢理明るい声で言うお兄ちゃんに、感謝の気持ちをこめつつ、曖昧に微笑んだ。

 まだ、じゃないんだよ、もう、なんだよ。もう!一ヶ月なんだよお!
 ちょっとしか捕れないとか、惜しいとかならまだいいさ。けど私は、尻尾すら掴めたことないんだぜ!

「お兄ちゃん、ごめんね。私は出来る気がしないよ。」

「そうやって暗くならない!例え狩りがダメでも、スワローポーにだって得意なことはあるでしょ?!」

「得意なこと………」

 得意なことって、なんだろう。

 私が目をぱちくりさせ、真剣に考え始めるとお兄ちゃんはホッとしたようにうんうんと頷いた。
 得意なこと、ねえ………。

 戦闘は狩りより苦手。
 走るのもびっくりするくらい遅い。
 人前で話すとすぐあがっちゃうし。
 看護猫の才能が?!と思い立って薬草の整理を手伝った時だって看護部屋中の薬草を駄目にして立ち入り禁止食らったし………。
 うーん………、あ!

「食べること!」

 見つけ出した答えに顔を明るくして言うと、お兄ちゃんは微妙な顔で笑ってきた。
 わかってるよ、最近、なんも捕れてないのに獲物もらうことが申し訳なくて一番小さいネズミで我慢してるんだよ!笑顔のまま目でそう語った。

「………お兄ちゃん、そのうち戦力外で捨てられるかもしれない、どうしよう!」

 よく考えてみたら、私本当にお荷物じゃん。ただ一族の食料減らしてるだけじゃん!
 頭の中を戦力外の三文字が埋め尽くす。
 だああああ!

「そんなことはしないって。長老たちだって養ってもらえてるだろう?」

 お兄ちゃんは馬鹿だなーと呆れたように笑った。

 そんなことないんだ、お兄ちゃん。
 長老たちは若かりし頃、一族に貢献した方々ばっかりなんだ、正真正銘の役立たずである私とは違うんだ。
 ああ、どうしよう捨てられたら。おとなしく死を待つしかないじゃんか。

「お兄ちゃん、骨は拾ってね」

「アホか」

 生気の抜けた目でそういうと即答で返された。
 失礼な、真剣に悩んでるんだっ!




「スワローポー、どうする?もう少し練習しようか。」

 茶番はここまでにして、というようにお兄ちゃんは立ち上がった。私もつられて立ち上がる。

「ううん、今日は疲れたからも、よーし!今日も元気に頑張ろう!」

 お兄ちゃんに笑顔で無言の圧力をかけられた。
 こうやってすぐ怠けようとするのが私の悪い癖だなあ。

 そうしてお兄ちゃんのスパルタ指導を受けつつ、只管地面に這って前進の練習をする。
 あっ、腿の筋肉が!

 ………捨てられた時に備えて、新居を探しておくべきか。






………とまあ、基本こんな感じのノリです。




最終編集者 明日輝 [ Fri Apr 01, 2016 5:45 pm ], 編集回数 2 回
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Re: ”部族”を生きる、ぼくらのお話

投稿 by 明日輝 on Fri Apr 01, 2016 5:15 pm





2 スワローポーと幼馴染






「お前、一匹も捕れなかったのか?俺なんて午後だけで5匹も捕ったぞ!」

 結局あの後獲物を捕れずにとぼとぼキャンプに戻ってきた私に声をかけてきた奴の名はウルフポー。
 幼馴染と言う名の腐れ縁で、今すぐにでも縁を切ってやりたい相手。

 奴は、お兄ちゃんより優秀だ。
 お兄ちゃんが“優等生”なら奴は“天才”。未来の族長最有力候補。
 こんな二匹と一緒に生まれてしまうなんて、私はなんて不運なんだろう。

 族長と副長の間に生まれ、両親のいいとこ取りをしたような奴は、何を勘違いしたのか、一族を我がものだと思っている。

 先輩の戦士にだってタメ口で話しかけるのだ。
 命令こそしていないが平気で意見をする。
 奴が先輩と話すたびに私の心臓は跳ね上がる。よく今まで生きてこられたな。



 そんな奴は私の顔を見れば見下したように自慢話をしてくる。
 得意気に上がった顎がどうせお前はできないんだろう、と言っている気がして無防備な首筋に爪を突き立ててやりたい。

「うるさいッ!」

 少し前の私ならこう言い返していただろう。そして言い争いになっていたはず。
 しかし私には学習能力というものがある。

 奴と目を合わせないように真っ直ぐハイレッジを見つめながら奴の横を素通りする。
 奴は私が何も言ってこなかったことに驚いたのか口をポカンと開けていた。
 ふっ、間抜け面だな。

 できる限りのいい姿勢を保ちながら堂々と歩いていると、後ろで奴が悔しそうに顔をしかめたのがわかった。
 まったく、お子様ですねえ!

「悔しがってるのが見え見えなんだよ!潔く認めろよ!」

 やはり上から目線の言葉がかかった。
 振り向かずとも、奴が私の後頭部を睨んでいるのがわかる。
 悔しがってるのアンタじゃないか。
 そんなに睨んでも禿げないぞ。

 腹の奥底からフツフツと怒りが湧きあがっては来たが、奴のお子様な挑発に引っかかるのは癪だ。
 無視を貫いて見習い部屋へ向かう。私は大人なんだよ!

 見習い部屋に入り、隅の方で苔を集めた。
 かぎ爪でかき集めるときに岩にこすれて不快な音がする。
 奴のせいだ。奴のせいで余計な力が入ってしまったではないか!

 さっさと忘れようと取りあえず完成した寝床に体を丸める。
 ただでさえ肉体的に疲れていたのに精神的にも疲れてしまった。
 今なら史上最速で眠れるかもしれない。

 自己ベストに挑戦すべく、さっそくうとうとし始めたと思ったら、何故か奴も見習い部屋に入ってきた。
 何で来るんだよ!狩り、得意なんでしょ?黙って一族に貢献してればいいじゃんか!

 狸寝入りだ。
 眠ってますから関らないでください出ていってくださいを丸めた背中でアピールする。
 物凄く奴の視線を感じるけど、ここで起き上ったら負けだ!

 一刻も早く夢の世界に入ろうとするけど、頑張れば頑張るほど遠ざかっていく気がした。
 ああ、なんでまだいるのよ!
 奴は微動だにせず私を見ている。というか睨んでいる。

 と、その時、ようやく奴が動いた。
 そのまま出ていってくれれば嬉しいが、奴はズカズカと中に入ってくる。奴の足音が振動となって私に伝わってくる。
 悪いことして隠れている気分だ。私なんも悪くないのに。

 奴はなんと私の頭の前に回り込んでどすっと腰を下ろした。
 だから何で来るんだ!
 私は体中を緊張させ、警戒体勢を整えた。

 奴は私が狸寝入りしていることに気が付いたらしい。「起きろよ」と言ってきた。
 なんてこと。
 だがここで素直に起きられるほど私のプライドは低くない。断固として狸寝入りを続けさせていただこう。

 私が丸まったままでいると奴は諦めたのか小さくため息をついた。
 よし、出て行ってくれと願うも奴が腰を上げる気配はない。
 座り込んだまま私をじろじろ見ている。おい、失礼だぞ。

「なあ、」

 奴が首を傾げながら話しかけていることがわかった。
 もちろん私は無視をする。そう決めていたが………

「お前、チビだな。」

 奴のその言葉に私の中の“何か”がブチッと切れた音がした。
 私の一番のコンプレックスを言いやがった。それもチビというド直球な言葉で!

 私は狸寝入りをやめ、バッと跳び上がった。
 その反動で突然のことに驚いている奴に手刀をくらわす。
 奴は低い唸り声をあげながら頭を抱えてうずくまった。どうだ、強烈だろう。

 涙目で「お前………!」と下から睨んでくる奴を見て私はにんまりした。ああ、いい気分!

 そのまま奴をフッと嘲笑うと、優雅さを意識しながら身を翻した。
 奴へのたまりにたまった苛立ちが少し発散された気がする。



 私は奴、ウルフポーが嫌いだ。





最終編集者 明日輝 [ Fri Apr 01, 2016 5:40 pm ], 編集回数 1 回
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Re: ”部族”を生きる、ぼくらのお話

投稿 by 明日輝 on Fri Apr 01, 2016 5:22 pm





3 サンポーと面倒な後輩たち





 “先輩”とは、かっこいい存在である。

 ある時は後輩の手本となり、ある時は後輩をそっと見守る。
 転びそうになった時は横に出て支えてあげる。
 決めかねている後輩の背中をそっと押してあげる。
 自分を犠牲にしてでも後輩を守ってあげる。

 そう、俺にとって“先輩”というのはヒーローそのものだ。

 当然俺は“先輩”に憧れた。「先輩!」と俺を慕うまだ見ぬ後輩の姿が夢に出てくるほどだった。
 憧れてもらえるような猫になるため、辛い訓練も必死に頑張った。

 不運にも、俺が生まれてから暫く子猫が生まれなかったために、なかなか後輩ができない。
 じれったかったが、俺が立派な“先輩”になるためにスター族様が与えてくれた時間なのだと思うことにした。

 そして、見習いになって二ヶ月。俺に後輩が誕生した。

 初めての後輩は三匹だった。俺とそこまで体の大きさは違わないのだが、不思議ととても小さく見えた。
 ついに、先輩に………!

 彼等の指導者が、俺を見習い部屋の案内役に指名した時は興奮で鳥肌が立った。体がぶるっと震えて毛がふわっと浮く。

 俺は三匹のもとに近づき、出来るだけ親しみやすい笑顔を彼らに向けた。

「俺の名前はサンポー。よろしくな」

 自己紹介をすると、三者三様の「はい」が返ってきた。その瞬間、俺は“先輩”になったのだ。


                ◇ ◆ ◇


 それから早一ヶ月。
 わかったことは、彼らは俺の思い描く“後輩”とはかけ離れた、面倒な後輩、だと言うこと。

「狩りに行っていま~す」

 間延びした声で指導者に声をかけ、欠伸を噛みしめながらキャンプから出た。

 朝の森は木漏れ日が綺麗だ。空気も澄んでいて毛をなでるようなそよ風がとても気持ちいい。
 俺は朝の森が好きだ。

 キャンプから出て数分。
 いつもの狩場にたどり着いた俺は、耳を立て、腹が地面に付きそうなほど身をかがめると、さっそく獲物を探し始めた。

 朝の森はすぐに獲物が見つかる。わずかだがカリカリ………という音が聞こえてきたので、慎重にそちらに足を進める。

 綺麗な赤い実をつけた低木の隙間からこっそり覗くと、リスが木の実を集めていた。
 丸丸と太っていてとてもおいしそうだ。俺は音をたてないように舌なめずりをした。

 腰をさらに低く落とし、木の枝を踏まないように気を付けながら標的へ忍び寄る。
 幸い、リスは木の実に夢中で警戒が甘い。イケる、そう感じた。

 シュッと爪を出し、さあ、飛び掛かろうとした時、

「だあああああ!!おっしい!」

 大声がした。
 当然、獲物は木の実を放置したまま一目散に穴へ飛び込んでしまった。必死に手を伸ばしたが尻尾一本分届かない。ああッ!俺の獲物!

 犯人は分かっている。アイツだ。
 怒りを抑え、大声がした方の茂みに首を突っ込んだ。案の定、小柄な猫が悔しそうに地団駄を踏んでいた。



 彼女の名前はスワローポー。俺の後輩。真面目で純粋ないい子だ。でも不器用なのかどうもうまくいっていない。
 彼女に悪気はないのだが、さっき見たく大声を出して戦士に怒られているのをよく見かける。

「やあ、スワローポー。」

 本当は俺も腹が立っているが、また怒ると彼女がかわいそうなので心の広い“先輩”の俺は見逃してやることにしよう。
 さらに狩りのアドバイスもしてやろうとするなんて。俺はなんていい先輩だろう。

「あ、おはようございます。サンポー。」

 振り向いたスワローポーはぼさぼさだった。枝や葉っぱが所々毛に引っかかっている。大方、茂みに突っ込んでいったのだろう。

「調子はどうだい?」

「いやあ、なかなかうまくいかなくて」

 俺が尋ねると、スワローポーは恥ずかしそうに答えた。
 俺はさっそくアドバイスをしてやることにする。

「飛び掛かる瞬間、ちょっと腰を落としてためるといいよ。勢いよく飛び出せる。あと、急所を確実に狙うこと。意外としぶといからね。」

 見えない獲物に向かって飛び掛かったり殴ったりしながら説明すると、スワローポーは感心したように何度もうなずいていた。
 顔をぱっと明るくして「ありがとうございます!」と頭を下げてきた。

「いいって。じゃ、頑張ってね。」

 いいことをした。
 満足して先ほどの場所で再び狩りを始めようとした俺は背後の茂みでなったガサッという音に振り返った。………なんとなく予想はしていたさ。

 出てきたのは俺の後輩、二匹目。スカイポーだ。
 奴は訓練初日の戦闘で二か月多く訓練を積んできた俺をメッタメタにし、俺の“先輩”という立場を木端微塵にした。

 優秀な奴はことあるごとに俺の上を行く。俺は危機感を感じていた。このままでは舐められてしまう!と。

「何話してたんですか」

 スカイポーは敵意を含んだ目で俺を睨んでくる。おい、先輩だぞ。というかわずかながら殺気も帯びている気がする。恐ろしいや。

 スカイポーはシスコンだ。妹のスワローポーを溺愛している。いや、そんな言葉じゃ足りないか、ヤンデレ、だ。
 「ぼくの妹に近づく輩は排除する」という感じの独り言をたまに呟いている。ぎゃー怖い。

 それだけではない。
 いつもイケメン王子様面しているくせに、腹の中は真っ黒だ。ニコニコ微笑みながら裏では何考えてるかわかったもんじゃない。
 後輩のくせに、生意気だぞ!

 しかし、奴のそんな裏の顔を知る者は、この世に俺しかいない。
 スカイポーは完璧な仮面を被っている。俺はなんとか奴の仮面の下の顔をさらけ出してやろうと努力しているけど、やりすぎると逆にやられそうでなかなか尻尾が掴めん。

 そもそもどうして俺がスカイポーの本当の顔を知ったか?それはかくかくしかじか、ってやつだ。

「別になんでもねえよ。大丈夫だ、俺は命の保証がない恋をする予定はない。」

 疑わしそうな目で睨んでくるスカイポーから逃げるように俺は歩き出した。狩りはやめだ。今日はもう取れる気がしない。



 疲れた。
 無駄にとぼとぼと岩に囲まれたキャンプに入ると、もうなんか薄々分かってたけど三匹目の後輩がいた。ウルフポーだ。

「!………なんだ、サンポーか。どこ行ってたんだ。」

 きらきらと明るい顔で俺を見たと思えば物凄くがっかりされた。
 俺で悪かったな!っていうか先輩だぞ、敬え!そう言い返す気力もなく「散歩」といった。サンポーだけにね、なんちゃって。

 ウルフポーもまたスワローポーにデレデレだ。目が開いた一週間後には片思いし始め、何かとスワローポーを追いかけている。

 恥ずかしいのか不器用なのか、よく分からんがスワローポーを馬鹿にした発言をしている。
 アレか、好きだから苛めるっていうアレか?
 まあこいつの仮面は薄っぺらいから周りにバレバレ。気が付いてないの、多分本人達のみ。

 そう、これで両想いだったら王道ストーリーが完成するが、あいにくスワローポーはウルフポーを嫌っている。
 こちらは心の底から嫌いなようだ。
 ウルフポー、無念。

 ま、俺はウルフポーにムカついているわけだからスワローポーに無視されて凹む奴を見て「ざまあみろ」と鼻を鳴らすわけだ。



 ………あーあ、もっと可愛い後輩が欲しかった。こんな面倒くさいの望んでない!
 俺はどすどすと大きな音を立ててキャンプを歩いた。砂埃が舞ったがまあ良いだろう。

 “先輩”とは尊敬され、信頼されるかっこいい存在だ。
 決して殺られかけたり、見下されたりするものではない、はず………。



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Re: ”部族”を生きる、ぼくらのお話

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