爛郷は今日も騒がしく、今日も大事件

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爛郷は今日も騒がしく、今日も大事件

投稿 by 紅あまりりす on Mon May 22, 2017 5:16 pm

1、ちょっと朝から憂鬱気分






ーー自分が何のために生きているのかと問うのではなく、自分が何のためにこの世界に落とされたのかを問いたい。朝起きたとき、指導を受けたとき、派手めなじゃれ合いをしたとき。様々な出来事の後にふっと頭をよぎり、集中力を切らす。
 ーーそして、最終的に辿り着くのが。
この世界、私に対してちょっと厳しすぎない? ということである。




「ーーあはは、おはよう、霰(さん)。今日も朝からくれいじーだね」
「あはは、そんな君もクレイジーだよ。やあ、朝から何を食べているんだい?」
「やっぱり霰はいつもおかしいやぁ、笑えるね。うん、これはね……」

失礼なことをずけずけ言ってくるこの女の子は、私の一番の友である。多分。たまに殺そうとしてくるから油断ならないけど。きらきらした黄金色の毛を靡かせ、赤い目を爛々と光らせる姿はちょっとーーいや、かなり怖い。化け猫が化け猫相手になにびびってんだ、と思う方もいるだろうが、さ。いや、ちょっと違うからね?
黎(れい)は化け猫の中では血を好む部類で、いわゆる吸血鬼だ。なんで化け猫から吸血鬼へとレベルアップしてんだと疑問なところだが、その理由は誰も知らない。まあ吸血鬼でも同族の仲間の血は吸わないみたいだから……うん。いっそ、吸血鬼じゃなく吸血猫に改名すれば良いのにと思っている。

取り出されたテロンとしたな何かを見て、私こと霰は眉を寄せた。いや、よせる眉なんてないんだけどね? 代わりに片耳をぴくりと動かして、用心して顔を近づける。

「びくびくしてないで見てごらんよ。前みたいに猫喰い花なんて出してないからさ」
「出すほうがおかしいです、それ」

冷静に突っ込みつつも、内心はかなりヒヤヒヤしている。だって、本当にあれはやばかったのだ。まじで喰われるかと思った。
綺麗な桃色の花を丁寧に飾り付けて持って来られたら、誰も猫喰い花なんて思わないはずだ。だいたい猫喰い花の特徴は難しいから、わかるはずがなかった。お礼を言って受け取った瞬間、突然のホラー。真っ赤な口に、ズラリと並んだ白い牙。まー素敵な八重歯! なんて感嘆してる場合じゃない。命の危機だったの。まじで。

しみじみ思い返し、ぶるりと大げさに身体を振る。めんどくさいなぁもう、なんて声が聞こえたが優しく無視した。ちなみに、猫喰い花はきっちり倒しましたよ。頭を呑み込んできたから光線をぶっ放してやった。灰も残りませんでした。ついでに長の敷地が半分ほど更地になり超怒られた。ダメージのほとんどは長からである。猫喰い花の登場シーンはたった1秒でしかなかった。哀れ猫喰い花。なんて。

「焦れったいなぁもう。いっそ食べてくれたらわかるかも! ね、ね、食べてみて」
「嫌です。私は未確認なものは食べないと決めてるんですから」
「未確認なものじゃないよ。霰もよく知ってるものの一部だもん。ほら、近くにやたらうるさくて馬鹿で臭い無能がいるでしょ? あれの肉だから大丈夫ーーって、ほとんど言っちゃった。でもおかげでそこまで未確認じゃなくなったね! ね、わかったなら平気でしょ」

黎の細まった瞳が挑戦的にギラギラと光る。それを見てなんとなく理解した私は、前足で黎の手を押さえ付けつつ問いた。

「……ちなみに、どこの部位?」

真っ黒になったそれは微かに香ばしい匂いをさせている。湯気が立っているが黎は暑くないのだろうか。

「あはは、やっと霰にもわかったんだね。そうだね、これは耳だよ。あまりにもうるさいしお腹が空いてたから引き千切ってきちゃった。焼いて臭いは消したから、きっと牛の肉みたいに美味しいと思うんだ。ね、ね、食べよう」

勧めてくる黎には悪いが、私は丁重にお断りした。私は菜食主義だから。黎は残念そうにしたものの、すぐに耳ーー肉にかぶりついた。
その隣に座りながら私は大あくびをする。今朝あの無能なやつと遊んだときは耳は付いていた。じゃあ今さっき黎の食糧にされてしまったんだなぁ。あいつの幸福は短かった。残念残念。




 ーーと、私の休息はここらで強制的に終了された。空から飛んでくる赤黒い何か。それはこちらめがけて真っ直ぐ飛来してくる。私は溢れでようとする涙を拭って黎に手を振った。多分しばらく死ぬだろうから。今生の別れだ。さようなら。我が心の友。

頭に鈍い衝撃を受け、状態が前のめりになる。それを狙うように掴み上げられ、私は悲しい声で鳴いた。空から弾丸みたいに突っ込んできた鬼ババアに、私は連行されたのだ。首根っこを掴むのはズルい。まじズルい。






 ーー化け猫たちが住む爛郷。そこでは、毎日一匹の猫が、鬼ババアに酷い目に合わされているという。




【あとがき】
はじめまして、紅あまりりすです。言いたいことはひとつ。
まあのんびり読んじゃってください。
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