アマラスの剥製(1期~3期)

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アマラスの剥製(1期~3期)

投稿 by ラファエル-メモリー on Thu Jul 13, 2017 9:32 pm

気が向いたら更新してゆきます。

決して主人公になれない猫たちにスポットライトを当てた短編を複数つらねてゆく予定です。

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Re: アマラスの剥製(1期~3期)

投稿 by ラファエル‐メモリー on Thu Jul 13, 2017 9:37 pm

【1】青の憧憬(1-1以前)   ブルーファーとオークハートをメインに据えた短編です。





ー1ー


例えばの話だった。全部、ぜんぶ。


幼い頃、ブルーファーは長老たちの話を聞くことが好きだった。

目を瞑れば、黄昏に満ちた保育部屋。落下する夕日とシダの葉の擦れる音。柔らかな寝息を立てて、隣に転がる友達。ゆるやかに寝息を零すライオンキット。彼は時折、きれいなエメラルドグリーンの瞳をしばたかせて、それから前足に抱えたコケのかたまりを、大事そうに胸元に引き寄せていた。
ライオンキットの抱えるそれは、昨夜のうちに“ぼうけん”をして手に入れたもののひとつだ。幼いブルーファーは笑みを零したライオンキットを思い出す。

昼下がり、柔らかな陽だまりは甘い匂いをつれている。淡い色のちいさな世界のなかで、黄金色の子猫は得意げに口元を緩める。尻尾をぴんと立てる彼は、幼いブルーファーに冒険譚を語った。たどたどしく紡がれるそれに、青灰色の子猫はロイヤルブルーの瞳を大きく見開く。弾けたのは好奇心と、ささやかな羨ましさ。

幼いブルーファーは想像する。足音を忍ばせて、ハリエニシダのトンネルをくぐる小さな戦士。ひとつの物音さえ逃さず捉え、彼は歩を進める。六分の好奇心と四分の不安をつれて、青灰色の子猫の知らない世界を踏みしめる。
“よる”は世界の彼方からやってくる。群青色に塗りつぶされた空と、眠たげに駆ける“つき”。ぽっかり空いた空の穴は“ほし”の欠片を砕いたかのような色だという。
いったいそれらは、どんなにすてきなものなのだろう。きっとライオンキットはそれらを見たのだろう。幼いブルーファーは、それらに憧れを抱いて止まなかった。

幼い彼女は、“ぼうけん”も“よる”も“つき”も、それから“ほし”も。長老たちが語る物語の中でしか知らないものだったから。

幼いブルーファーは、長老の不思議な物語を聞くたびに目を瞑り、想像した。
知りたがり屋な子猫にとって、彼らの話はなによりも興味をもたらした。
“さばく”に迷い込んでしまったライオン族の戦士の話。“うみ”を目指して歩き続けたトラ族の戦士の話。“あい”のために身をささげたライオン族の雄猫と、トラ族の雌猫の話。既に戦士となったブルーファーの脳裏にさえ、それらは鮮烈な印象共に焼き付けられている。

幼いブルーファーの想像が壊れたのは、ライオンキットの話を聞いてから数ヶ月が経ったころだった。
その頃は、何匹かが見習いに昇格して、保育部屋が閑散としていた時期だった。姉さんのように慕っていたローズキットさえ見習いへと昇格して、ハリエニシダのトンネルの先の世界を知っていた。それが何処か寂しくて、自分ひとりだけがのけ者にされている様な気分だった。

四角に囲われたちいさな世界のなか。穏やかにグルーミングを行なう大人たちを傍目に幼い子猫は、初めて規則を破った。見習い部屋へと駆けた青灰色の子猫はあどけなさを浮かべながら、ローズポーに問うたのだった。ハリエニシダのトンネルの先には何があるのか、を。よる、というものはどんなものなのかを。
ローズポーは呆れがちに笑って、それから少しだけ眉を寄せてから幼いブルーファーを抱き寄せた。耳元に囁かれた言葉は、悪気はなかった。それでもその言葉は確かにブルーファーの想像を壊してしまったのだった。

彼女は言った。ハリエニシダのトンネルの先なんて、知らなければよかった、と思えるものしかないの。と。よる、というものはただただ私や貴方を不安にさせるものしかないの、と。


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Re: アマラスの剥製(1期~3期)

投稿 by ラッキークロー@LC on Tue Jul 18, 2017 9:39 pm

 新小説おめでとうございます!

 そして、お名前を拝見した時もしやと思ったのですが......旧BBSでも活動していらっしゃったラファエルさんでしょうか......!?

 丁寧に丁寧に作られた工芸品をじっくり見るような精緻な文章と、登場人物の内面までを描きだす言葉の一つ一つに、ひたすら感動したことを覚えています。小説の再始動、本当にうれしいです!

 陰ながら、ひっそりと応援しています。更新心待ちにしています!
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Re: アマラスの剥製(1期~3期)

投稿 by ラファエル-メモリー on Tue Jul 25, 2017 12:19 am

>ラッキークローさま

どうも、此方では初めまして。一話の投稿のみにもかかわらず、温かなコメントをありがとうございます。
ご指摘頂いたように、実はその通りでして……昔の掲示板にて同名義で同様の文章を書かせて頂いていたものになります。
数年経ってみて、ようやく自身の拙く綻びのある文章をも振り返ることができるようになったので、再挑戦をしたいと思いまして……ゆっくりと気が向いた時にでも更新して行くつもりです。
今回の一話目は、数年前のものに少し手を入れただけでして、今振り返るととても未熟で粗が目立つものですが、これから更新してゆくにあたって、ラッキークローさまが褒めてくださった文の個性を殺さず、どうにか形としてまとめあげて行きたいと思っています。
次を投稿出来るのがいつになるのかは不透明なのですが、次の更新も、此方を閲覧している方が満足して頂けるものをお届けしたいと思っていますので、のんびりと楽しみにしていただけたならば、作者冥利につきます。


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Re: アマラスの剥製(1期~3期)

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