とてもとても長い、たった一夜のこと。【ウォリクラSS】

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とてもとても長い、たった一夜のこと。【ウォリクラSS】

投稿 by 吉祥 on Fri Aug 03, 2018 10:16 pm

雲ひとつない空。
きっと綺麗な月が昇ることだろう。

勝手に名前を借りています
だらだらと書き進めます

吉祥
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Re: とてもとても長い、たった一夜のこと。【ウォリクラSS】

投稿 by 吉祥 on Fri Aug 03, 2018 10:22 pm

「お前なぁ、名前が子猫だからって仕事しなくていいってわけじゃねえんだぞ。」
「名前だけじゃなくて体格も子猫ですわよ?」
「それだけの知能と知識を、何にも活かすことなく、キャンプの中で暇を持て余すのはもったいないと言っているんだ。」
「要は、キャンプでヴァイオレットフォックスが吉祥さんのことを何回見たかとか、それに気づいた吉祥さんが何秒で目をそらすかとか、恥ずかしそうに尻尾を振ったとか、それをカウントされるのが嫌なだけでしょう?」
「誰だって嫌だろそれは!適当言いやがって!それだけのことをいちいち覚えているはずがない!」
「最速で1秒43で気がついて、少なくとも今まで21回は目をそらして尻尾を振るっていうコンボ決めてますよ。」
「お前はよほど暇なようだな。よかろう。名前はそのままでいいから戦士として扱ってやろう。これで明日以降、『子猫だからキャンプから出ちゃいけないんですぅー』なんて言おうもんなら、埋めるからな!」
「どこに?」
「川の底。」
もちろんライトニングキットは、実際にヴァイオレットフォックスの視線や吉祥の身動きなど監視していなかったし、子猫だからキャンプでから出られないなんて、そんな事を言ったのは吉祥にしかない。
吉祥はおそらくそれをわかった上でからかっているのであろう。
「ほら、分かったなら狩りにでも行くんだな!」
「私子猫だからキャンプから出ちゃいけないんですぅー! ...まってまって!明日以降って言ったじゃん!!」
「...」
「怒ってる?私言い過ぎちゃった?」
「怒ってないから行ってこい。」
「よかった!」
吉祥は、ライトニングキットの去り際、彼女の尻尾を前足ではたいた。

時刻は夕刻。
まもなく日が落ち、また夜がやってくる。

「あ、そうそうライトニングキット。」
「んぁ?」
子猫にしては随分だらしない声だ。

「戦士昇格、おめでとう。」
「あ、ありがとう?」
「めでたく今夜は寝ずの番だ。」
「ふぁっく。」

今夜はなんだか、長い夜になる気がする。



日は落ちて、月が明るくキャンプを照らす。
ライトニングキットが少し不機嫌に寝ずの番をしている。
吉祥は看護部屋の前に、ヴァイオレットムーンを見つけた。
「やあヴァイオレットムーン。キャンプの外を眺めて何をしているんだ?」
「あ、族長。いろいろ考え事を。」
「例えば?」
「そうですね... 月に傘がかぶってないから、明日は晴れるだろうとか、エルフさんが薬草を探しに行ったまま戻ってないなとか、看護部屋の奥で飼ってるヘビに、生きた獲物を運びたいなって思ったりですね。」
「晴れるのはいいことだ。エルフはどうしたんだ?まさかヘビの餌まで探しに行ってるわけじゃあるまい?」
「ええ。ヘビのことはまだ話してませんから。」
「よし、ちょっと探してくる。」
「どっちを?」
「私1匹で平気だよ。」
「だからどっちを?」
「夜の森は危険だからな。ついてくるんじゃないぞ。」
「どっちを探しに行くんですか!?」
「エルフに食べさせるヘビと餌の両方!」
「えぇ、どういう意味なんですか?」
ヴァイオレットムーンは呆れたようにこちらを見ている。
それに構わずキャンプの出口に向かう。
道中のライトニングキットに、小声で囁く。
「ヴァイオレットフォックス、カメラ向けた時に恥ずかしがって顔を隠すのが可愛い。」
ライトニングキットが驚いて口を開くも、寝ずの番なので口を聞けないのを思い出し、何か言いたげなまま悔しそうに口を閉じた。
なにやらジェスチャーをしているが、見終わる前に背中を向けて歩き出す。
からかってやったぜ。 まあ、明日何を言われるか分かったものではないが。

月はまだ昇ったばかりだ。



夜の森を1匹で歩くのは、とても気持ちがよかった。
猫に転生できたのはいいが、イエネコとして転生させられていたら多分今日まで生きてこられなかっただろう。
こんな真っ黒だが、一応野生の猫なのだと思う。

草むらをくぐり抜けると、不意に目の前から驚いた声が上がった。
「うわっ!びっくりした!」
声の正体はヒーステイルだった。

「やあこんばんは。良い子は寝る時間だぞ。」
「良い子扱いとか、やめてくださいよ。」
「何か悪いことでもしてるのか?」
「いえいえ。そういう訳じゃないですよ?」
「じゃあなんでこんな時間に、マタタビの枝なんか咥えて歩いてるんだ?」
「...ええと。」
ヒーステイルは足元にマタタビを落とし、気まずそうに目をそらした。
「みなまでいうな。どうせ誰かに頼まれたんだろ。」
「ち、違います!これは自分用!自分用です!」
「はー。普段マタタビなんて嗜まないお前が?」
「...そうですよ。悪いですか!私がマタタビを舐めようが、別に禁止されてないでしょう!?食べますよ!?」
「なにを?」
「吉祥さんが狙う獲物。」
「地味にいやらしい。」
私の最近の流行りの口調を真似してるんだろうか?
「まあ、早めにキャンプに戻るんだぞ。ちゃんと顔を洗って!酔ったまま帰ってくるなよ!」
「はーい。」
ヒーステイルはマタタビをくわえ直し、歩き去っていった。
ヒーステイルにマタタビを運ばせるなんて、誰がそんなことをするのだろう。
筆頭はチリーレインだ。あいつならやりかねない。だが怪しすぎて逆に怪しくない。
ほかに、マタタビを必要とするような猫がいるだろうか?
あまり、ウォリクラに酒豪がいるイメージが湧かない。
まあ、あとでヒーステイルが酔っ払ってるかどうかで確かめればいい。

少し歩くと、陽気な鼻声が聞こえてきた。
こんな時間に鼻歌を歌って歩いているなんて、ますます怪しい。
草むらに隠れて誰なのか確かめる。

歩いてきたのは、スノーレパードファーだった。
マタタビの匂いを纏っている。

「お前かよ!」
「ひえっ!?」

草むらから飛び出すと、スノーレパードファーは本気でびっくりしたようで、2mくらい飛び上がった。
どすんと着地すると、あたりの小さな獲物たちがカサカサと音を立てて逃げ出して行った。
「族長!何でこんなところに!族長部屋で尊い時間を過ごされている筈では!?」
無言でスノーレパードファーの鼻面を殴る。
「いてて... すみません。酔って調子に乗っちゃいました。」
「ふん。お前がヒーステイルにマタタビを取りに行かせたのか?」
「え?ヒーステイル?知りませんけど。」
再び殴ろうと、前足を構える
「知りませんって!私が舐めたのはエルフさんから貰ったやつですよ!」
「は?エルフ?」
「そうですよお。普段マタタビは控えてますけど、あれは我慢出来なかったんです〜」
再び陽気になり、ご機嫌に吉祥の横を通り過ぎて行った。

「マタタビねぇ。」

吉祥は空を仰ぐ。
夜はまだまだ始まったばかりだ。

スノーレパードファーが歩いてきた道を逆に辿っていく。するとフロストテイルに出くわした。

しかしフロストテイル、吉祥を無視して歩き去ろうとする。
思わず尻尾を叩く吉祥。

「ンア"ア"ア"ア"-!! なにすんですか!」
「ン"ア"ア"ア"ア"!! じゃねえよ!こんな時間にこんな所で何をしておるのだ!」
「違いますよ族長。ン にまで濁点付けちゃダメですよ。ンア"ア"ア"ア"-!! こうです。」
「ン"ア"ア"ア"ア"!!」
「まだついてる!」
「ンアアアア!!」
「濁点取りすぎ!」
「」ンア"ア"ア"ア"!!
「ああ!よく出来てるのにカギカッコから外れてる!!どうやったのそれ!?」
「うっせえ!!しつけえんだよ!!」
「ン"ア"ア"ア"ア"-!!」
フロストテイルを殴ると、正しい発音で叫んでくれた。

「んで、何をしてたの?」
「2回も殴った...ぐすん。 僕はただ、なんか変な噂を聞いたからそれを広めて... じゃなくて、確かめに来てたんですよ。」
「酔ってはいなさそうだな。」
「あれ、なんだ吉祥さんはもうマタタビの噂知ってたんですね。」
「誰もマタタビなんて言ってないぞ。語るに落ちたな。」
「...元々隠すつもりなんてないですしー??」
「はいはい。いいから知ってる事教えな。」
「僕はブライトスカイから、外でマタタビを配ってるらしいって聞いただけですよ。」
「ブライトスカイ??また意外なところから。」
「そうなんですよ。じゃあ僕はこれで。」
「おう。」
フロストテイルが歩き去るのを、何もせずに見送る。
「あれっ?何もしてこないの?」
「うん。」

フロストテイルはどこか寂しそうに去っていった。



「あれ?族長も見回りですか?」
次に現れたのはフォナイフセイブルだ。
「なんだか副長たちによく会うなぁ」
「じゃあエルフさんにも会いました?」
「いんや、エルフだけ会ってない。」
「こっちはスノーレパードファーがひどく酔ったまま戦士部屋に戻ってきたから、マタタビ臭くておちおち寝てられなかったんですよ。」
「テンってマタタビ効くの?」
「多分効きます。まだ試してないですけど。」
「そうなのか。 どうやらエルフがマタタビを舐めさせてるらしい。俺も探してるんだが。」
「エルフさんが?」
「何か知ってる?」
「いえ。さっきキャンプ出てきたところですよ。スノーレパードファーのことくらいしか知らないわ。」
「そっか。ありがとう。」

フォナイフセイブルと分かれると、吉祥は空を仰ぐ。

誰かが嘘をついてる気がするなぁ。


まだまだ月は昇りきらない。
夜は終わらない。



そして吉祥は、このいざこざの主犯を見つけた!
「チリーレイン!!」
「うわっ!やべっ!」
中年猫はよたよた走る。
吉祥は駆け足で回り込み、低く唸る。
しかしチリーレインはほっとしたような声を上げた。
「なんだよ!族長か!ヴァイオレットムーンかと思ったぜ!」
「どこをどう間違えた??」
「あー?ほら、黒いところとか。」
「あいつ紫だろ。」
「そうとも言うな。 はぁー、走って損したぜ。」
その場にぐでっと座るチリーレイン。
吉祥はそいつの体の匂いを嗅いでみた。
「マタタビの匂いがしてないな。」
「マタタビ??お前さん持ってるのか?」
「いや。俺は持ってないが。」
「なんでえ、あったらお前の欲しい情報をくれてやろうと思ったんだがなぁ。」
「うーわ、めんどくさ。じゃあ、俺の欲しい情報はマタタビが必要なんだな?」
「そうだ。聞きたければマタタビをオイラに恵んでくれな。」
「じゃあ、俺が今全く欲しくない情報の質問するから、それにはタダで答えてくれるよな」
「...うーん??」
「ヒーステイルになにか話をした?」
「今日は何も話してないぞ。」
「マタタビの話を誰かにした?」
「それならしたぞ。看護猫の集会でな。マタタビをさらに美味しくする情報!」
「でもチリーレインは、マタタビを舐めていない。」
「ああ。ヴァイオレットムーンが意地でも監視してる。看護猫が看護猫を看護してるみてえだ!」
「なるほどなるほど。全く役に立たなかった!」
「だろうな!役に立てたければマタタビを持ってこい!はっはっはっはー!」
チリーレインは愉快に笑いながら去っていった。
...あいつシラフでもめんどくせえな。知りたいことは聞き出せたけど。



吉祥が歩いていると、川へと着いた。
月明かりを浴びて、川面がキラキラと光っている。
すると上流から、どんぶらこ、どんぶらこと猫が流れてきた。

「フォームダック。こんな時間に水泳か?」
「ぐわっ!ぐわっ!」
楽しそうだ。だが話が通じないのは困る。

「隊長の話が聞きたい!」
「待って今行く」
通じた。

川からアヒル足で精一杯の駆け足でこちらへ駆け寄ってくる。
体を震わすと、水をまき散らしていつものふわふわの猫っぽい体に戻った。
「隊長の何が聞きたい!?」
しかしフォームダックの顔が少し赤いことに気づいた。
好きな話でテンションが上がってるというわけではあるまい。
匂いを嗅ぐと、川の匂いに隠れてうっすらとマタタビの香りがした。
「隊長はマタタビ好き?」
「隊長は猫じゃないからマタタビは効かないよ。」
「猫姿の隊長は?」
「うーん、すごく効く!」
フォームダックはなんだか嬉しそうだ。
そうだよな!うちの子のこと考えるのめちゃくちゃ楽しいよな!!
「こんな所で何を?」
「川登りの練習!」
「なんで?」
「敵が追えない逃げ道をみつけようと思って!」
テンションが高い。
「どこでマタタビを舐めたんだ?」
「あれっ?えーと、泳いだら思い出すかも。」
あたりをキョロキョロ見回すフォームダック。現在位置を見失ったのかもしれない。
フォームダックが再び川に駆け込み、迷わず飛び込んだ。

そして辺りを見回す。

「ぐわっ!思い出しました!あっち!あっちの方に...」

彼の言う『あっち』がどこなのかわかる前に、フォームダックは川の下流に見えなくなった。

無事に帰ってくるといいけど。


ふと空を仰ぐと、月は真上にあった。

夜はまだまだ終わらない。




「おやおや!吉祥さんではありませんか!」
次に現れたのはマリンフェザーだった。
「こんな時間に私の前に現れるとは、夜の保健体育がしたいに違いありませんね!?」
「したいわけねーだろが。」
「まあ!そうでしたね!吉祥さんにはヴァイオレットフォックスがいますもんね!」
「それも違う。」
「違うならいいじゃないですか。いいからいますぐ露出しなさい!大丈夫どうせこんな時間に誰も見てませんから!」
「お前の理屈は破綻している!支離滅裂にも程があるぞ!」
「じゃあ選んでください!ヴァイオレットフォックスに愛を囁くか、私といまここで変態仲間となるか!さあ、吉祥さんがどちらを選ぶか!これはもう決まったようなもの... あ、ちょっと!無視しないで!ねえ!」

とりあえず置き去りにした。

いつにもまして頭がおかしいのと、彼女からもマタタビの匂いがしたことは、決して別問題ではないだろう。

後ろで、まるで石に激突して痛そうに呻いてそうな声が聞こえたが、私は何も知らないし何も聞こえない。

そんなことをしていても、相も変わらず月は明るく輝いていた。
夜はまだ終わりそうにない。

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Re: とてもとても長い、たった一夜のこと。【ウォリクラSS】

投稿 by ヒーステイル on Fri Aug 03, 2018 10:38 pm

続きも楽しみにしてます お体に気をつけて毎秒投稿してください
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