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光と闇が交差した時、世界は——

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光と闇が交差した時、世界は—— Empty 光と闇が交差した時、世界は——

投稿 by アイスレイク Fri May 29, 2020 10:47 pm

よろしくお願いします。

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光と闇が交差した時、世界は—— Empty 第一章

投稿 by アイスレイク Sat May 30, 2020 6:52 pm

私は縄張りの一部である北の森を駆け回っていた。雪が溶け始め、新緑が姿を見せ始めるこの季節の獲物は、冬眠から目覚めたばかりのせいか普段よりも捕まえやすい。
私は耳をぴんと立て、獲物が立てる僅かな音を探る。

身動ぎせずに息を潜めていると、『かさっ』という小さな音と共に太ったノネズミが茂みから飛び出したのが見えた。
見るからに美味しそうな獲物に喜び勇んで飛びかかろうと身をかがめた時、何かが背中の上に乗ってきた。

「ぴぎゃあ!」
そのことに驚き、奇声をあげて飛び起きる。

「はい、おはようシャドウポー。」
目を開けると、兄のウィンドポーが上からにっこりと笑いかけてきた。

「おはよ、兄さん。でももうちょっと寝かせてくれても良かったよね…。あと少しでネズミ捕まえられそうだったのに…。」
後半部分は兄に聞かれないように小声で呟いてから、背中に乗った兄の尻尾をさっとはらう。

「ん?何か言った?」
兄には聞こえないように細心の注意を払って文句を言ったはずなのだが、こちらを見る兄の目は笑っていない。

「あはは、何でもないわ〜。ただ今日も暖かくなりそうだな〜って言っただけだから!」

「もう雪溶けの季節だからね。これからは獲物も多くなるんじゃない?それより、寝癖ついてるよ」
どうやら私の文句は見過ごしてくれたようだ。
朝から兄に怒られるのはちょっとテンションが下がるので良かった、と一人安堵している間に、兄は私の毛をせっせと整え始めた。

「ちょ、兄さん!私もう子猫じゃないから世話焼かなくて良いよ!それに寝癖なんてほっとけば直るんだから」

「はあ…。そういうところが子猫っぽいんだよ。それにシャドウポーの毛は他の猫より綺麗なんだから、ちゃんと手入れしないと。宝の持ち腐れになっちゃうよ?」
兄のこういうところは本当に母にそっくりだ。
母が二人いるみたいで、思わずクスッと笑ってしまう。

「ちょっとシャドウポー!笑ってないで自分でも毛繕いしてよね」
兄には怒られてしまったけど。

「はいはい。私のことはもう良いから、姉さん起こしてあげてよ」

兄の背中を鼻面で姉の方へと押すと、
「え?ウォーターポーのこと?ほっとけば勝手に起きるんじゃない?」
兄は姉のことを一瞥してから我関せずといった感じで前足で顔を洗っている。

兄は姉に対しての扱いが本当に雑なのだ。

「そんなこと言わずに起こしてあげなよ、姉さんが可哀想でしょ?」

「別に?まあ起こしてやってもいいけど」
そう言って兄は姉のウォーターポーの形の良い耳を一発殴る。

「ぐえっ」
そう呻いて起き上がってきたのが姉のウォーターポーだ。
緑色の目を眠そうに細めながらのろのろと立ち上がる。

「痛いじゃないの!どーせやったの兄さんでしょ!」
姉は尻尾を左右に動かして兄に喰ってかかる。

「そうだけど、何か問題でも?おまえはそれくらいじゃないと永遠に起きないだろう。僕的には永遠に起きなくても問題ないが」
兄は涼しい顔で姉の怒りを受け流す。

「はあ?兄さんサイテー!」
姉が兄に飛びかかり、

「ちょ、苔屑が付くからやめろ」

「はっ!やめるわけないでしょう!その整った毛並み、ぐちゃぐちゃにしてくれるわ!」

二人は言い争いをしながらも戯れ始める。

いつも通りの平和な光景を、私は目を細めて笑いながら見つめるのだった。








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光と闇が交差した時、世界は—— Empty 猫紹介その1

投稿 by アイスレイク Sat May 30, 2020 7:17 pm

登場猫紹介その1

・シャドウポー
…本作の主人公。
全身の、闇夜より暗い黒い毛と、真紅の瞳が特徴的な美しい雌猫。氷のような冷たい美貌と、黒い毛に赤い瞳という悪魔を彷彿とさせる容貌により、近寄りがたい雰囲気を持つ。しかし、性格は基本明るく、元気。感情によって態度が大きく変わる。

・ウィンドポー
…シャドウポーの兄。シャドウポーと同じく黒猫で、整ってはいるがどこか冷たい美貌を持つ。瞳の色は明るい緑色。真面目でしっかり者の頼り甲斐のある兄。何か秘密を抱えているようで…?

・ウォーターポー
…シャドウポーの姉、ウィンドポーの妹。暗褐色の毛に明るい緑色の瞳が特徴の雌猫。いつも強気だがおっちょこちょい。

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投稿 by シャイニングナイト Sat May 30, 2020 9:40 pm

面白そうです!
頑張ってください!(*^^*)
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投稿 by アイスレイク Sun May 31, 2020 5:09 pm


2
言い争いを続ける兄と姉を見習い部屋に残して、私は副長のもとへとキャンプを突っ走る。

え?フクチョウっていうのは何かって?

ああー!私としたことが!肝心な説明がまだだったわね。

まず、ここはエメラルド族のキャンプ。緑豊かな森で暮らしている一族、っていうことでエメラルド族と、初代族長が命名したらしいわ。
で、族長っていうのはエメラルド族を引っ張っくリーダーで、副長がその補佐役。
あと、族長はシャイン族っていう私達の先祖がつくっている一族から光の力を与えてもらってて、九つ命があるの。
凄くない?

え?
そういうのは良いから続けろ?

あ、すいません。
族長は一族のまとめ役で、副長はその補佐。
あとの猫が持つ役職は戦士猫か見習い猫か看護猫のどれか、ね。
戦士猫っていうのは一族のために戦ったり狩りに行ったりする猫のこと。一族の七割は戦士猫なんじゃない?
看護猫は一族の病気や怪我を治したりシャイン族と対話したりする猫のこと。
見習い猫は戦士猫や見習い猫になるための訓練をしている猫のこと。
私や兄、姉は今見習い猫。

そして私は指導者と呼ばれる、私達に戦士猫とは何かを手取り足取り教えてくれる戦士猫に色々教わって、戦士猫への階段を駆け上っているの!

そんな一人芝居を頭の中で続けていると、

「シャドウポー!間抜けなウサギみたいな顔してるわよ、あなた!」
誰かが私に思いっきり体当たりしてきた。

私の親友であるペブルポーだ。

「気を付けてよね、ペブルポー!あなたまた太ったんじゃない?前より衝撃が増してるんですけど」

「失礼ね!あたしは太ってなんかないわよ!」
そう言っておどけたように毛を逆立てるペブルポーは、また私に軽く体当たりをする。

よろけて尻餅をついた私は、
「やったわね!」
と声をあげてペブルポーの前脚を軽く叩く。

そんな風に戯れあっていると、副長であるナイトアウルがきびきびとこちらに近づいてきた。
「おまえ達、朝から堂々とキャンプの真ん中で遊んでいる暇があるなら長老部屋の掃除をしろ。」

「えっ、でも今日は指導者のエコーフライトと狩りに行く予定なんです」
ペブルポーが慌てて言う。

「そうか。ならペブルポーは狩りに行け。シャドウポーは長老部屋の掃除をしろ」

え、普通に嫌なんだけど。
ペブルポー、一人だけ逃げたな。
一生恨んでやる。

「あとは…おーい!フリーズポー!ちょっとこっちに来てくれ!」
私がペブルポーを呪っている間に、ナイトアウルは長老部屋の掃除をさせられるもう一匹の生贄を見つけたようだ。

副長の声を聞いて、銀色の雄猫がこちらにやってきた。

「フリーズポー、シャドウポーと一緒に長老部屋の掃除をしてくれないか?」
副長が断ることは許さない的な感じでフリーズポーに問う。

「…分かりました」
ため息混じりに答えるフリーズポーを見て、ペブルポーが顔を輝かせる。

「ちょ、シャドウポー!ズルいわあなた!フリーズポーと一緒に掃除なんて最高じゃないの!」
そう言って私をたしたしと叩くペブルポー。

無表情で立つ『凍れる足』という名前が本当にお似合いなこの銀色の猫、フリーズポーは一族きってのモテ猫なのだ。
なんでこんな彫像みたいな猫が兄さんと並ぶくらいのモテ猫なのか未だに謎だ。

多分、顔が良いとか、優秀とか、顔が良いとか顔が良いとか、顔が良いとか、そんな理由なのだろう。
世の中は顔で回っていると言っても過言ではないから、この猫がモテる理由としてはそれしかないでしょう。

何が悲しくてこんなうんともすんとも言わないそこら辺にいる葉っぱみたいな奴と掃除しなきゃなんないのよ。
「さ、とっとと掃除しに行くわよ、彫像」
私はそう言って長老部屋に向かうのだった。

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投稿 by アイスレイク Sun May 31, 2020 5:46 pm

→シャイニングナイトさん

ありがとうございます!
更新頑張るのでこれからよろしくお願いします!
(私もシャイニングナイトさんの小説、いつも楽しみにさせてもらってます)

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投稿 by アイスレイク Sun May 31, 2020 10:45 pm

登場猫紹介その2

・ペブルポー
…青みがかった灰色の毛に虎柄模様のある雌猫。ミーハーでイケメンに目がない。目は暗い琥珀色。ノリの良い猫。シャドウポーの親友。

・フリーズポー
…艶のある銀色の毛並みと、澄んだ青色の瞳が特徴的な雄猫。無口で無愛想な性格だが、顔が整っているからか雌猫にとてもモテる。一族の雌猫のほとんどはフリーズポーかウィンドポーのファンという凄いを通り越して怖いの人気ぶり。

・ナイトアウル
…エメラルド族の副長。耳の先と足の先だけ黒い白猫。瞳の色は褐色。

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光と闇が交差した時、世界は—— Empty 登場猫紹介その2

投稿 by アイスレイク Sun May 31, 2020 10:45 pm

登場猫紹介その2

・ペブルポー
…青みがかった灰色の毛に虎柄模様のある雌猫。ミーハーでイケメンに目がない。目は暗い琥珀色。ノリの良い猫。シャドウポーの親友。

・フリーズポー
…艶のある銀色の毛並みと、澄んだ青色の瞳が特徴的な雄猫。無口で無愛想な性格だが、顔が整っているからか雌猫にとてもモテる。一族の雌猫のほとんどはフリーズポーかウィンドポーのファンという凄いを通り越して怖いの人気ぶり。

・ナイトアウル
…エメラルド族の副長。耳の先と足の先だけ黒い白猫。瞳の色は褐色。

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投稿 by アイスレイク Mon Jun 01, 2020 1:28 pm

「おはようございます。寝床の取り替え等の掃除に来ました、シャドウポーです」
そう言ってフリーズポーをギロっと睨む。
挨拶ぐらいしろよ、この顔だけ無駄にいい奴め!

「…フリーズポーです」

「あらあら、良く顔出せたものね、おまえの顔を見ると吐き気がするわ、この悪魔!」

「寝床の掃除なんか良いから早く帰ってくれ」
長老達は挨拶代わりに私を罵る。
長老達が口々に私を悪く言うのは、私のこの容姿が異質だから。私の血のように赤い目と黒い毛が悪魔を彷彿とさせるらしい。

せめて、兄さんのように緑の瞳をしていたら。
私はたまにこういった馬鹿なことを考える。

容姿なんて、自分の力で変えられないものなのに。

「私の顔を見ると吐き気がするんでしたら、どうぞお早めに吐いてください、リーフアイ。せっかく変えた寝床を汚されたらたまったもんじゃありませんので」
嫌味には嫌味で返す。
それが私のやり方だ。

「…。」
隣から視線を感じたが、私はそれを無視して汚れた苔をかき出す。

「まあ、憎ったらしい口をきくじゃない!おまえは——」「…リーフアイ、どうぞこちらへ。汚れがあなたの綺麗な毛皮に付いたら大変ですから」
口を開いたのはフリーズポーだった。その端正な顔に、美しい笑顔(結構人工的)をうかべて、普段のだんまりはどこいったと問いたくなるようにペラペラとお世辞を並べる。

もしかして、私のことを庇ってくれたんじゃ?

まさか、そんなのありえない。

私はフリーズポーからふいっと目を逸らして苔屑をまとめていく。

「まあ!フリーズポー!あなたはなんて良い猫なんでしょう」
年寄りの甘ったるい声に吐き気を催しながら作業を続ける。

「優しいあなたにとっておきの話をしてあげる。悪魔についての伝承を、ね」

思わず手を止めてリーフアイの方を見る。

「あら、おまえも聞きたいの?急かさなくても教えてあげるわよ」

——この世には喜びや楽しい、嬉しいといった感情を司る幸せの天使と、悲しみや怒り、不安などの負の感情を司る不幸せの悪魔がいるの。

天使は人々に幸福を与え、悪魔は絶望を与えていたわ。

そしてある日、悪魔は自分の仕事に価値を見いだせなくなった。絶望を与えるなんて仕事、本当にいるのか、と。
悪魔は自分の仕事を放棄して下界に降りたの。
そこで、ある一匹の猫と恋に落ちたのよ。

リーフアイの話に、長老部屋にいる誰もが引きつけられていた。

「その猫の名は——」「シャドウポー!」
彼女がその猫の名前を紡ごうとした時、長老部屋に何かが駆け込んで来た。

「あら、ウィンドポーじゃない。どうしたの?私の話が——」「黙れ」

長老部屋に駆け込んで来たのは私の兄、ウィンドポーだった。
いつも優しく理知的な光をたたえている兄の緑の瞳は、怒りに燃えていた。

「兄さん?どうしたの?」
尋常ではない兄の様子に半ば怯えながら尋ねると、兄は酷く優しい声で言った。

「シャドウポー。長老部屋の掃除は僕に任せて狩りに行ってきなよ。フリーズポー、君も一緒に行ってくると良い」

逆らうことは許さない。

兄の瞳はそう言っていた。

「…でも」
あちゃー、フリーズポー。怒れる兄より怖いものはこの世にないんだよ。

「わ、わかったわ兄さん!フリーズポー!行くわよ!」
フリーズポーを掴んで外に出る。

フリーズポーを必死で引きずっていくシャドウポーの耳には、
「怖がらせてごめんね、シャドウポー。僕の大切な妹。でも、何も知らない方が幸せに生きていける。

——シャドウポー、ウォーターポー。おまえ達だけは幸せになって。

そのために僕は——」
何かを諦めたような、ウィンドポーの声は聞こえなかった。

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投稿 by シャイニングナイト Mon Jun 01, 2020 7:55 pm

フリーズポー、私の推しに認定します(笑)
リーフアイのお話の悪魔はもしや…。
ということはまさか、
シャドウポーとフリーズポーは結ばれるのでは?
(勝手な予想です)
ますます面白そうです!
私と違って文章力もあるし。
頑張ってください!
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投稿 by アイスレイク Tue Jun 02, 2020 9:01 pm

→シャイニングナイトさん

私の拙い文章を読んで頂きありがとうございます!

シャドウポーとフリーズポーが今後どうなるかは…まだ秘密ですね☆(←当たり前だ、馬鹿)
これからはウィンドポーがどんどん不審な動きをしていきますが、どうかウィンドポーのことも見捨てないでやってください!

今後ともよろしくお願いします!

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投稿 by アイスレイク Tue Jun 02, 2020 9:05 pm

「リーフアイ。次シャドウポーにあの話をしようとしたら…分かっていますね?」
シャドウポーとフリーズポーが出て行くのを微笑をたたえて見送ったウィンドポーは、年老いた雌猫の方を驚くほど冷たい顔で見つめ、ゆっくりと前脚をあげる。

リーフアイは、ウィンドポーの前脚に光る刃物のように鋭い鉤爪を怯えたように見つめて言った。
「シャドウポーには知る権利がある。そう思わない?」

「知らない方が彼女は幸せです」

「それは、あなたの考え?…それともあの女の考え?」
ウィンドポーは答えない。

「私みたいな出来損ないが知っていて、シャドウポーが知らないなんてそんな馬鹿なこと——」「シャドウポーは無知なままで良い。これは、族長が決めたことです。逆らうことは許されない」
ウィンドポーはそう高圧的に言った後、静かに長老部屋を出て行った。

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投稿 by アイスレイク Wed Jun 03, 2020 2:00 pm


「兄さんはどうしたのかしら?何で私達を長老部屋から追い出そうとしたの?リーフアイの話を私に聞かせたくなかったのかしらね」

「…思案中悪いんだが、さっきからおまえの声のせいで獲物が捕まらない」
フリーズポーの指摘によって自分が独り言を言っているのに気づいた。

「ああ、ごめんなさい!だけど…何か引っかかるのよ。兄さんがあそこまで怒ったのは初めて見たものだから」
私がボソッと言うと、フリーズポーはちょっと立ち止まって言う。

「…ウィンドポーは俺達に何か隠している、そう思わないか?」
フリーズポーの冷静な声が私を打ちのめす。

「そんな…!私とウィンドポーは兄妹よ!兄さんは私に何かを隠したりなんて…!」

「…おまえはウィンドポーが戦闘訓練をしているところを見たことはあるか?」

「何を言い出すかと思えば、そんなこと?見たことあるに決まって…?待って、見たことないわ…!?どうして?私もう見習いになって結構経つのに」
不可解な点に気付いて思わず毛が逆立った。

「…俺も見たことがない。…それに、俺はウィンドポーが寝ているところを見たことがないのだが、おまえは?」

「それは流石にあるわ。兄さんは子猫の時、良く寝る子だったから。…でも、おかしいわね。兄さんは私よりも一か月先に見習いになって、私が見習いになってからは必ず私より先に起きていて、私より後に寝ついている…?」

「…そういうことだ。俺達は見習いになってからウィンドポーが寝ている姿を一度も見たことがない」

「今までそんなこと、一度も気づかなかったわ!たまにはやるじゃない、彫像」
気紛れにフリーズポーを揶揄う。

「…俺はフリーズポーだ。彫像ではない。その不名誉なあだ名をどうにかしろ」
フリーズポーがこちらを振り返り、いつもの無表情でそう言った。

「彫像と呼ばれたくなかったらまずその態度を変えることね、年中葬式!」

「…前よりあだ名が酷くなっている気がするんだが…。」
ふざけたやり取りをしながらも、私の心にかかった不安はなかなか消え去らなかった。

「…まあいい。いや、良くないが…狩りをしなければならないだろう。お喋りはやめろ」
フリーズポーはそう言って鋭い鉤爪を光らせる。

わかったわよ、と尻尾で合図してから、周囲の様子を探る。

チラッとネズミの匂いがしたと思うと、フリーズポーがすかさず飛びかかる。クタっとなってフリーズポーの口からぶら下がるハタネズミの首には、フリーズポーがつけたと思われる掻き傷があった。

「流石ね、彫像」
小声で褒めると、
「…そのあだ名は固定なんだな」
と不満気な声が聞こえた。 

それを無視して、先程から狙いをつけていたズアオトリを睨め付ける。

「…それは流石に無理じゃ」
私が見つめているズアオトリと私の距離は八メートルくらいと遠く、仕留めるのは難しいと思ったのか、フリーズポーはボソッと呟く。

足に力を込めて、大きく跳んでズアオトリの首を折る。

「私の跳躍力は一族の中でも一番なのよ」
自慢気にフリーズポーを振り返れば、彼はちょっと目を見開いてクスッと笑った。

「凄いな」

彼の本当の笑顔を見たのは初めてだった。
その端正な、作り物のような顔を優しく綻ばせた彼は今まで見た何よりも美しく見え、胸が思わずドキッとした。

赤くなった顔を見られないためにふいっと横を見た私に、いつもの無表情に戻ったフリーズポーが言う。

「…顔が赤いぞ。熱があるのかもしれない、スワロウウィングに見てもらった方が良い」
おまえのせいだよ、この無自覚。

「大丈夫よ。狩りを続けましょ」

私は胸の動機を紛らわすように体を振って走り出した。

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投稿 by アイスレイク Wed Jun 03, 2020 2:12 pm

登場猫紹介その3

・リーフアイ
…エメラルド族の長老。明るい茶色の毛皮に、黒色の斑点がある雌猫。瞳の色は藍色。シャドウポーに何かを伝えたがっているようで…?

スワロウウィング
…エメラルド族の看護猫。足先が紺色の白い雄猫。スワロウウィングという名前の響きが何となく女々しいと感じていて、自分の名前が嫌いらしい。焼けた砂のように鮮やかな黄色の目を持つ。

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投稿 by アイスレイク Thu Jun 04, 2020 10:29 pm

「ふぉうのはひは大成功だったわね、ふぉうぞう!(今日の狩りは大成功だったわね、彫像!)ふぁなたが捕まえたふさぎ、ふぉっても美味ひほーだわ(あなたが捕まえたウサギ、とっても美味しそうだわ)」
フリーズポーと隣合わせでキャンプへと戻る私は、ネズミを三匹同時にくわえてもごもごと喋る。

すると、大きなウサギを引きずって歩くフリーズポーがちょっと立ち止まって目を瞬かせる。
「…一緒に食べるか?」

「ふぃいの!?(いいの!?)」
私が喜びの声をあげると、フリーズポーはゆっくり頷いた。

「…俺一人では食べれそうにないからな」

「ふぁったー!(やったー!)ありがとう、フリーズポー!」
飛び跳ねて喜びを表現すると、フリーズポーは

「…ネズミが落ちるだろうが。飛び跳ねるな」

と半ば呆れた顔、半ば笑った顔で言った。

キャンプに着いて、ネズミ三匹を少々乱暴に獲物置き場に置く。

「獲物を乱暴に扱うな。敬意を払え、敬意を」

「まったく。彫像のくせにぴーちくぱーちく煩いわね。あなた、このままだと私の三人目の母さんになるわよ」

「…ちなみに、第二の母さんは誰なんだ」

「兄さんよ!身嗜みとかどーでも良いことに煩いの。まあ、母さんよりは煩くないけどね——」
フリーズポーに対して、母の愚痴をぶちまけていると、

「あらあら、シャドウポー。随分と楽しそうな話をしているのね」

陽気な声が聞こえてきた。

「げっ」

ゆっくりと振り向くと、まったく目が笑っていない母、クラウディシャインが立っていた。

「…シャドウポー。葬式には出てやる」
フリーズポーがそう言い、少しずつ後退し始める。

「ねえ、シャドウポー。…ちょっと私の部屋で話をしましょうか?フリーズポー、あなたも来て良いわよ」
ドスの効いた声で母が言う。

「いいえっ!遠慮致します、族長!たまには親子水入らずで話したいでしょうしっ!」
え?
普段の無表情&口数少なめキャラは何処行った?
——と思うくらいに爽やかな笑顔とハリのある声で、フリーズポーは私を怒れる母の前に突き出した。

「ちょっ、彫像!?あなた私を見捨てる気!?このままだと母さんにめった切りにされるわ!
——ごめんなさい私が悪かったお母様許して!ぎゃあーー!!」
クラウディシャインに首根っこを掴まれ、引きずられていくシャドウポーを、フリーズポーは

「…すまない。だが、俺も自分の身が可愛いんだ」

と言いながらも、全くすまなそうな顔をせずに見送ったのだった。

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投稿 by アイスレイク Sat Jun 20, 2020 11:43 am

登場猫紹介その4

・クラウディシャイン
 エメラルド族族長。ウィンドポー、ウォーターポー、シャドウポーの母。
灰色がかった黒色の毛皮と暗い緑色の鋭い目が特徴的な雌猫。弟子はウィンドポー。

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投稿 by アイスレイク Fri Jun 26, 2020 10:44 pm

「で?それで精神的にぼろぼろにされて帰ってきたって訳?」

「…うう…!そうなのよペブルポー!彫像…!よくも見捨ててくれたわね!この仮は必ず返すわよ!」
涙目のシャドウポーはフリーズポーが取っておいてくれたウサギを食べている。

「あーらまあ。——それよりさ、あなたとフリーズポー、大分仲良くなったわね?」
シャドウポーの隣でムクドリをつまんでいるペブルポーがにやにやしながらシャドウポーを見つめる。

「…?そんなことないわよ」

「そう?今だってフリーズポーが口がつけた獲物を食べてるじゃない、あなた」
ペブルポーはそう言って、たくさんの雌猫に囲まれて迷惑そうな表情をするフリーズポーを尻尾で指す。

「フリーズポーを落とすのは中々難しいわよ、何せあのモテようだからね。——ま、私はどんな状況であろーがあなたの味方だけど」

「ありがとう…。でもフリーズポーのことは別になんとも思ってないのよ?

…あれ?

あなたフリーズポーが好きなんじゃなかった?」
私が問うと、ペブルポーはちょっと肩をすくめて答えた。

「馬鹿ね、あたしはフリーズポーのことをカッコいいな〜って思っているだけよ。恋情なんかじゃないわ。そうね…。どちらかと言うと、憧れ?的なものだから。

——それより、気を付けて。フリーズポーと過剰に親しくなるのは危険だわ。あいつが黙っていないでしょうから」
ペブルポーは鋭い目でフリーズポーに群がる雌猫の中の一匹を見る。

「メロディーポーのこと?メロディーポーがいくら彫像のことを好きだとしてもよ?ペブルポー、私達は部族仲間よ?危害を加えるはずないじゃない」
私は呆れたように目をぐるりとさせ、ウサギの肉を食いちぎる。

そんな私に、
「ちょっと良いかしら」
澄んだ高い声で誰かが声をかけた。
メロディーポーだ。

「あちゃー」
ペブルポーが小さく呻く。

「フリーズポーに馴れ馴れしくしないでくれるかしら。ちょっと獲物をわけてもらったからって調子に乗らないでよ、悪魔のくせに!」
可愛らしい声をつまらせてメロディーポーが叫ぶ。

「なっ、あなた——「あなたに魅力がないのを私の妹のせいにしないでくれる?メロディーポー?さもないとその煩い口を永久にきけなくしてやるわよ」
ペブルポーの声を遮っていつの間にこちらに来たのか姉のウォーターポーがメロディーポーに向かって威嚇する。

「はいはい、落ち着いて馬鹿妹。部族仲間に手を出さない。…まったく。まあ、気持ちは分からなくもないけど」
メロディーポーに飛びかかろうとするウォーターポーを、同じくいつの間に来たのか兄のウィンドポーが回収する。

「フリーズポーに近づかないで!」
メロディーポーは私は鋭く耳打ちをすると、素早く去っていった。

「災難だったわね、シャドウポー!ああいうのは気にしないのが一番よ!私もよく兄さんのファンに『妹の分際で調子に乗ってんじゃないわよ!!』って言われるのよね〜!
——ほんと、兄さんの何処がいいの?って感じ!性格悪いし、煩いし、怖いし!のしを付けて差し上げます、だわ!」
兄の前で兄の悪口をペラペラと饒舌に喋る姉。
兄の怒りを進んで買いに行けるその勇者っぷりには敬服するが…。

「ウォーターポー。ちょっと、良いかな?」

兄の前ではどんな勇者も尻尾をまいて逃げ出す。

「ぎゃあーー!!兄さんごめんなさい私が悪かった!許して!許してくださいませ、お兄様!シャドウポー!私の墓は大理石で建てて、時々ミズハタネズミを供えて——」「何馬鹿なことを言ってるの。僕はただ、妹と少し話をしたいだけだから、ね。
あ、シャドウポー。僕達が帰ってくるまでに看護猫にクモの巣とマリーゴールドをもらっておいて」

「え、それって切り傷に使う薬s——」
ペブルポーがボソッと呟くが、兄のそれはそれは美しい笑顔を見て黙る。

うわ、兄さんのこういうとこ母さんにそっくり。

「姉さん。陰ながらも武運を祈ってるわ」
私は引きつった顔で二人を見送ったのだった。

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光と闇が交差した時、世界は—— Empty Re: 光と闇が交差した時、世界は——

投稿 by アイスレイク. Mon Dec 28, 2020 5:11 pm

ウィンドポー、ウォーターポーが出かけてしまったので、急いでマリーゴールドと蜘蛛の巣をもらいにいった。
そして兄、姉が帰ってくるなり、飛びかかった。
「今回はやったけどねもう奴隷とは思わないで」

今度はシャドウポーの前であたふたしたりしない。

爪を出して攻撃した。兄の首の骨が折れる音がした。

そして3匹とも戦っているうちにスター族へいってしまった。


終わり。

アイスレイク.
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