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記憶の鱗片_______

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投稿 by ロビンフライト Tue Aug 10, 2021 12:58 am

こんにちは。

数年前にも確か小説を投稿していた気がしたので探してみると、なんと登場猫のみで終わっていました…(笑)作品名はあえて言いません(笑)
なので、初めましての方がいいかもしれませんね。
改めまして、数年越しに新たに小説を投稿してみようと思いました!構想や名前などこだわってみたので、読んでくださるととてもうれしいです!
何卒、よろしくお願いいたしますm(_ _"m)

*追記*
肝心のあらすじを書いていなかったので書きました!💦


あらすじ
サンダー族に暮らす二匹の兄妹。
ある日、妹にお告げが下りる。森全体の弱った力を取り戻すべく、各部族で選ばれた猫とともに旅をすることに…!
そこで明らかになる真実とは?


最終編集者 ロビンフライト [ Sun Sep 05, 2021 7:17 pm ], 編集回数 2 回

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投稿 by ロビンフライト Tue Aug 10, 2021 1:04 am

主な登場猫

サンダー族
族長 ブリーズスター(そよ風星)
   白黒の雄猫。目は琥珀色。

副長 ランニングウルフ(走る狼)
   すらっとした銀色の雄猫。目は緑色。

看護猫 アンバーストーン(琥珀色の石)
    淡いクリーム色の、手足が白い雄猫。目は琥珀色。

弟子  ミノウポー
    灰色の縞模様のある雌猫。

戦士猫
ボルトストライプ(雷の縞模様)
黄色い虎柄の雄猫。目は緑色。
弟子は片足が白い雄の黒猫のスターリングポー。

アッシュレイン(灰色の雨)
白黒のブチの雄猫。目は黄色。
弟子は黄金色の虎柄の雄猫ゴールデンポー。

ヘアクラウド(跳ねる雲)
白い斑点模様のある濃い茶色の雌猫。目は黄色。

ブルームーン(青い月)
青みが買った灰色の雌猫。目は青色。

ブッシュペルト(茂み毛皮)
真っ黒な雄猫。目は緑色。

シナバーファー(朱色の毛)
尾が長い三毛猫。目は黄色。
弟子は黄色い雌猫のサンドポー。

ペイルフット(青白い足)
片足が青白い、薄い灰色の雄猫。目は水色。

ティスルフレイム(アザミの炎)
オレンジ色の雌猫。目は緑色。
弟子は淡い茶色とクリーム色の混じった雌猫のヘーゼルポー。

バッドストーム(コウモリ嵐)
黒に近いこげ茶色の雄猫。目は薄緑色。
弟子は灰色と白の混じった雄猫のペブルポー。

シルヴァーファング(銀色の牙)
銀色の雌猫。目は薄緑色。

バーリーテイル(大麦しっぽ)
大柄な黄金色の雄猫。目は黄色。

パドルペルト(水たまり毛皮)
濃い灰色の雄猫。目は水色。

子猫
★ウィステリアキット(藤子猫)
灰色の縞模様のある雄猫。目は水色。ヘザーキットの兄。

★ヘザーキット(ヒース子猫)
緑色の目を持つ淡い茶色の雌猫。ウィステリアキットの妹。

母猫
リリーファーン(シダのかかったユリ)
灰色の雌猫。目は水色。ウィステリアキットたちの母親。連れ合いはいない。

ブロッサムテイル(花しっぽ)
ショウガ色の斑点模様のある雌猫。目は黄色。連れ合いはバットストーム。

長老
ミスティアイ(かすんだ目)
片目が見えない灰色の雄猫。目は濁った水色。最長老。

ラークファー(ヒバリ毛)
薄茶色の雌猫。目は琥珀色。

シャドウ族

族長 リザードスター(トカゲ星)
   大柄な赤褐色の雄猫。目は琥珀色。


副長 バジャーフェイス(アナグマ顔)
   大柄な白黒の雄猫。目は緑色。

看護猫 リトルブロッサム(小さな花びら)
    小柄な灰色の雌猫。目は琥珀色。

戦士猫
フローグフット(カエル足)
薄茶色の虎柄の雄猫。目は緑色。
弟子は水色の目を持つ白とショウガ色の混じった雌猫のサニーポー。

アイヴィーテイル(ツタ尻尾)
尾が長いほっそりしたオレンジ色の雌猫。目は緑色。

フォックスワイズ(賢いキツネ)
手足が黒い、オレンジ色の雌猫。目は水色。
弟子は黄色い目をした薄茶色の虎柄の雄猫ヴァイオレットポー。

サージウェーブ(うねる波)
毛深い灰色と白の混じった雄猫。目は青色。
★弟子は琥珀色の目をした雌の三毛猫フラワーポー。

バラストレイン(砂利の雨)
緑色の目をした淡い黄色の雌猫。
弟子は琥珀色の目をした片足が黒い白猫のナイトポー。

フォールンライム(落ちる氷花)
白い雄猫。目は水色。

マムペルト(菊毛皮)
黄色と白の雌猫。目は黄色。


リヴァー族

族長 レイクスター(湖星)
   青みがかった灰色の雌猫。目は水色。

副長 ローチウィスカー(ドジョウひげ)
   濃い灰色の大柄な雄猫。目は青色。

看護猫 ロビンフライト(飛ぶコマドリ)
オレンジ色と茶色の混じった、黄色い目をもつ雄猫。
弟子は緑色の目をした、背の高いこげ茶色の雄猫トールポー。

戦士猫
★ファウルウィング(鳥の翼)
薄水色の目をした大柄で真っ白な雄猫。

★スノウベリー(雪の実)
耳先が黒いほっそりした雌猫。目は水色。ファウルウィングの妹。

シンダースプラッシュ(消し炭色の飛沫)
斑点模様のある濃い灰色の雄猫、目は水色、

ストローファー(藁毛)
黄色い目を持つ黄色い猫。
弟子は水色の目をした銀色の雌猫フローポー。

スネークファング(蛇の牙)
こげ茶色のほっそりした雄猫。目は緑色。

マーシュテイル(泥沼しっぽ)
薄茶色の雄猫。目は青色。
弟子は黄色い目を持つ前震真っ黒な雄猫のコールポー。

トーニーフロスト(黄褐色の霜)
黄褐色の、白い斑点模様のある雌猫。目は黄色。


ウィンド族

族長 フィンチスター(フィンチ星)
   淡いオレンジイオの雄猫。目は水色。

副長 ヴァインテイル(つるしっぽ)
   尾が曲がった灰色の雄猫。目は緑色。

看護猫 オークファー(オークの毛)
こげ茶色の雄猫。目は緑色。
弟子は黄色の目をしたヒョウ柄の雌猫レパードポー。


戦士猫
フォールンタフト(落ちた房)
手足が白い茶色の雄猫。目は黄色。

アイスファング(氷の牙)
尾が黒い白の雄猫。目は水色。

ジンジャ―ペルト(ショウガ毛皮)
ショウガ色の斑点模様のある雌猫。目は黄色
弟子は黄色の目をした薄茶色の雌猫グースポー。

バブルクラウド(泡雲)
白い斑点模様のある薄茶色の雌猫。目は黄色。

★グロスフェザー(艶やかな羽)
艶やかな毛をした、腹部が白い雄の黒猫。目は黄色。
★弟子は水色の目を持つ、手足が白い黒の雄猫ドロップポー。


どの部族にも属さない猫
★ルークス
琥珀色の目を持つオレンジ色の虎柄の大きな雄猫。

その他の動物
ミッドナイト
星を読むアナグマ。

ざっくりりですがこんな感じです。
多すぎて覚えられんよ!という方、★マークの猫だけ覚えていただければ大丈夫です!
主人公はウィステリアキットとヘザーキットになります。

次回はプロローグになりますのでよろしくお願いします。


最終編集者 バンブルウィング [ Sun Aug 15, 2021 11:23 pm ], 編集回数 4 回

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投稿 by オーシャンフラワー Tue Aug 10, 2021 8:57 am

初めまして!かな
オーシャンフラワーです!
楽しみに更新待ってます
頑張ってください!
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投稿 by ロビンフライト Tue Aug 10, 2021 3:57 pm

プロローグ

「どこ行くんだよ!」
真っ白な一匹の雄猫がうなりをあげる。

あたりは争う猫だらけで、悲鳴とうめき声で溢れている。
「おい!」はもう一度目の前を走る雌猫を呼びかけたが、雌猫はその声を無視し走り続けた。

雄猫は雌猫の後を追いかけた。雌猫は、何かをくわえているようだった。
雄猫は目をこらした。雨が地面を打ち付け、風がとても強い。目を開けて走るのが精いっぱいだ。それでもよく見ると、雌猫がくわえていたのはどうやら二匹の子猫だった。

雄猫が必死で追いかけていると、雌猫の足がぴたりと止まった。
雄猫は急停止した。目の前には、雨で増水した小川が広がっている。
雌猫は、いったんくわえていた子猫を足元にそっと置くと、雄猫に振り返った。

「ごめんなさい。」その声は悲しみに満ちている。うつろな目を雄猫に向けた。雄猫は理解ができなかった。
「どういうことだよ?」雄猫は声を震わせて聞いた。少しの間があって、雌猫は再び口を開いた。
「もう、ここにはいられない。私の居場所はここじゃなかった。」
「説明してくれよ、母さん!意味が分からないよ」食らいつくように雄猫は訊ねる。雌猫は申し訳なさそうにこうべを垂れた。
「この子たちと川を渡るの。あなたの妹と弟よ。そしてこの川の向こうで暮らすことに決めたの。」

雄猫は胸に稲妻が走った衝撃を受けた。「どうして?このままここで暮らせばいいじゃないか・・・!」思わず声が震える。
「ごめんね。母さんの居場所は、やっぱり自分が生まれた場所だと思うの。」

雄猫の目に涙が浮かんだ。
「この裏切り者!」雄猫は怒りと悲しみに満ちた声をあげた。

雌猫の目は悲しみと葛藤に満ちている。
「こんなお母さんでごめんね。」
雄猫ははっとした。

「じゃあね。いつかの大集会でまた会いましょう。」
雌猫はそういうと、足元に置いていてた子猫を再びくわえた。雄猫の方を振り返り、小さく会釈すると川を渡ろうと身構えた。梅雨の季節に入り目の前の小川はいつもより増水しており、流れは尋常ではない。
「待ってくれ!この水の量じゃ渡れないよ!」雄猫は言ったが、雌猫は無視し川へ入り始めた。
「母さん、危ない!」雄猫は必死に止めようとするが、雌猫は戻ってこない。子を産んでばかりの雌猫は今にも倒れそうだが、雨風に負けず慎重に一歩一歩あるいていく。

岸まで残り数歩のところまで来ると、雌猫は最後にもう一度雄猫を振り返った。悲しそうに笑みをこぼし、次の一歩を出した。

その時、猛烈な突風が吹き荒れた。
雌猫はバランスを崩し、川の中で倒れてしまった。

「母さん!」雄猫は思わず川へ飛び込んだ。
雌猫はうなり声をあげ、息を吸おうとくわえていた子猫を離してしまった。
「ヘイルキット!ハートキット!」雌猫は苦しそうに子猫の名前を呼ぶ。
離された子猫たちは、ものすごい速いスピードで流されていく。雄猫はまず子猫を救助しようと、流されるまま一匹の子猫を救い上げた。
そして岸まで運ぶと、再び川へ飛び込んだ。

しかし、もう一匹の姿が見当たらない。
「ヘイルキット!」雄猫はもう一匹の猫の名前を呼んだ。しかし、生まれたばかりの小さな子猫の姿はなかった。
あたりを見渡し雌猫を探すも、雌猫の姿もなくなっていた。

「嘘だ…嘘だろ…」雄猫は小さくつぶやく。
雄猫は岸に上がり、唯一救い出した子猫の安否を確認した。
幸いなことにすぐ引き上げたので、息をしている。
雄猫は悲しみに打ちひしがれた。

しばらくして雄猫は一匹の子猫を茂の奥へ運んだ。
雄猫は子猫を下すと、冷ややかな目で子猫をじっと見つめた。
「お前はここで生きるんだ。」

雄猫は子猫にそういうと、自分の縄張りへ__争いが起きている地へ_戻り始めた。

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投稿 by ロビンフライト Tue Aug 10, 2021 3:59 pm

コメントありがとうございます!
頑張ります(*'ω'*)

ロビンフライト
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投稿 by ロビンフライト Tue Aug 10, 2021 5:31 pm

第1章

「起きなさい、あなたたち。」
日の光のような優しい声に、ヘザーキットは目を覚ました。母のリリーファーンがしっぽの先でヘザーキットのあたまをぽんぽんと叩いていた。
ヘザーキットはあくびをすると、隣で寝ているウィステリアキットを軽くつついて起こした。
「おはよ。」ヘザーキットは眠そうにあくびをする兄に言った。
「う~ん。眠いなぁ。」ウィステリアキットは目をこすり、背伸びをした。
そばで母親がおかしそうに笑っている。

「眠いかもしれないけど、今日はあなたたちにとって大切な日なのよ。」
その言葉を聞くなり、二匹の兄妹は飛び上がった。

「そうだ!任命式!」ウィステリアキットとヘザーキットの声が重なる。

「おまえ、そのぼさぼさな毛整えたほうがいいぞ!」
兄のウィステリアキットがからかう。
「そっちこそ、あたまの毛が爆発してるわよ!」
ヘザーキットも兄をからかうと、リリーファーンが水色の目を輝かせて二匹に言った。

「こらこら、ふたりとも落ち着いて。整えてあげるからこっちに来なさい。」リリーファーンはそういうと、ウィステリアキットを足で引き寄せ、頭の毛を舐め始めた。
「これくらい自分でできるもん!」ウィステリアキットは少しはずかしそうに言い母の足の中で暴れ出した。しかしリリーファーンはおかしそうに笑い毛づくろいを続けた。
「さすがにその爆発具合じゃ、自分で直せないんじゃない?」ヘザーキットは緑色の目をいたずらっぽく輝かせながら言った。ウィステリアキットはほおを膨らませ、されるがままという状態だ。
ウィステリアキットの毛づくろいが終わると、「さ、次はあなたよ。ヘザーキット。」とリリーファーンはヘザーキットを足で引き寄せた。
「ヘザーキットも直せないでやんの!」ウィステリアキットは水色の目を輝かせた。ヘザーキットはぷいと顔を背け、「私たちもう子猫じゃないのよ。」と母親に言った。
リリーファーンは優しそうな目でヘザーキットを見つめ、「まだ任命式は始まっていないでしょう?」というと、ヘザーキットの毛づくろいを続けた。

「いっそのこと、ヘザーキットじゃなくて、メシーキット(ぼさぼさ子猫)に改名したら?」ウィステリアキットがからかう。

ヘザーキットも負けじとからかう。「うるさいわね!シャギーキット(もじゃもじゃ子猫)!」

リリーファーンは笑いながら、「こら、やめなさい。」と二匹に向って言った。
隣で聞いていたブロッサムテイルはおかしそうに笑っている。「元気な子供たちね。」ブロッサムテイルはそういうと、ウィステリアキットとヘザーキットの額に鼻づらを押した。
「私はこの部屋から出られないから、先にお祝いするわね。おめでとう。」
ヘザーキットとウィステリアキットは元気に返事をした。
ヘザーキットのけづくろいが終わると立ち上がり、シダのカーテンを開けて奥を見渡した。
「いつ始まるの?」ヘザーキットはわくわくしながら聞いた。

リリーファーンは奥を見渡しながら答えた。「ランニングウルフだわ。きっと呼びに来たのよ。」

「お父さんにも見せたかったなぁ。僕たちの任命式。」ウィステリアキットが悔しそうに言う。
ヘザーキットはなだめるように、「大丈夫よ。きっと空から見てくれてるわ!」と兄をつついた。

そう、ヘザーキットとウィステリアキットの父親は、二匹が産まれる前にグリーンコフという病で亡くなってしまったのだ。

リリーファーンはうなずき、「そうよ。きっと見守ってくれているわ。」といい、空を見上げた。

見られていることに気が付いたランニングウルフは足を速め、保育部屋へたどり着くと、「そろそろ始まるぞ。」といいしっぽを一振りした。
「行きましょう。ついてらっしゃい。」リリーファーンはそういうと、部屋を出た。後ろにウィステリアキットとヘザーキットが並んで歩く。
ランニングウルフについていくと、大きな岩棚の目の前で足を止めた。
それと同時に、岩棚に族長が現れ、「自分で獲物を捕らえることができる者は集合しろ。一族の集会を始める!」と大声で招集をかけた。
瞬く間に、母親と二匹の猫は、大勢の猫に囲まれた。
「じゃあ、私はあそこで見守っているわね。」とリリーファーンはいうと、猫の群れの中へ戻ってしまった。

周りは、任命式を祝おうとする猫たちでざわついている。族長ブリーズスターはしっぽを大きく振ると、あたりは一瞬で静まり返った。

しばらく間があり、ブリーズスターは口を開けた。「枯葉の季節に入り、身も心も凍てつくような寒さだが、ここでいい知らせだ。サンダー族の二匹の猫が生後六か月に達し、今日見習いとなる!」

周りの猫が祝福の声を上げる。
ブリーズスターはもう一度しっぽを振り静けさを取り戻すと、再び口を開いた。
「ウィステリアキット。」
ブリーズスターはウィステリアキットの名前を呼んだ。ウィステリアキットは一歩前に出た。緊張しているのがヘザーキットにも伝わる。

「ウィステリアキット。本日よりお前は戦士名を取得するまで、ウィステリアポー(藤の足)という名前になる。」

周りから祝福の声が上がる。「ウィステリアポー!ウィステリアポー!」

「ランニングウルフ!」続いてブリーズスターは副長の名前を呼んだ。ランニングウルフは驚いた顔をしたが、すぐにウィステリアポーのもとへかけつけた。
「副長になって初めての指導を、ぜひお前に任せたい。これまでの経験と知識を、この子に授けてほしい。」ブリーズスターは言った。

ランニングウルフはこうべを垂れた。銀色の毛が太陽に照らされ輝いている。「光栄です。ブリーズスター!」
銀色の雄猫はそういうと頭をあげ、ウィステリアポーと鼻づらを合わせた。「よろしくな。」ランニングウルフは笑みをこぼした。

ウィステリアポーは元気よく返事をすると、ブリーズスターはヘザーキットの名前を呼んだ。ヘザーキットは緊張しながら一歩前に出た。
「ヘザーキット。本日よりお前は戦士名を取得するまでヘザーポー(ヒース足)という名前になる。」

「ヘザーポー!ヘザーポー!」周りからどっと声が上がり、ヘザーポーは嬉しくなった。

「ブルームーン!」ブリーズスターは指導者となる猫を呼んだ。
青みがかった綺麗な雌猫がはっと目を見開き、ゆっくりヘザーポーのもとへ来た。まさか自分が呼ばれるとは思っていなかったのだろう。
「ブルームーン。お前の知恵と戦闘力の高さは、一族に匹敵する。その知識を、ぜひこの子に授けてほしい」
ブルームーンはこうべを垂れた。緊張しているのがヘザーポーには分かった。「ありがとうございます。ブリーズスター。」
ブルームーンはヘザーポーの目の前に来ると、鼻づらを合わせた。
「一緒に頑張りましょう。」
ヘザーポーは大きな声で「はい!」と返事をすると、ブリーズスターは大きくうなずいた。

「どうか、スター族からのお導きがありますように。」空を見上げ、琥珀色の目を輝かせながらそういうと、「では、集会を終わりにする」と言葉を残し、奥へ消えていった。

本当に見習いになったんだ…!ヘザーポーは胸が高揚した。
すぐさま母親のリリーファーンが駆けつけてきた。「おめでとう!あなたたち!」リリーファーンはそういうと、兄妹の額をひとなめした。
「あなたたちは立派な戦士になるわ。私はこのあと狩りに出かけるから、またあとでね。」母はそういい、狩りの一団のもとへ走っていった。

その次に、ほかの見習い猫たちも祝いに来てくれた。
「おめでとう、ヘザーポーにウィステリアポー!」
黄金色の毛をした虎柄のゴールデンポ―と、その妹のペブルポーだ。

「ありがとう。」ヘザーポーは少しはにかみながら返事を返した。ウィステリアポーは嬉しそうにしっぽを振り返事をした。
今日から私たちは晴れて見習いになった。
ヘザーポーは兄を横目で見ると、兄は目を輝かせてウィンクした。ヘザーポーはやる気に満ちたまなざしで空を見上げた。

お父さん、見てるかしら。私たち兄妹は、一族で立派な戦士になるわ!

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投稿 by ロビンフライト Wed Aug 11, 2021 1:51 am

第2章

「よし。じゃあ早速なわばりの周りを一周するか。」
集会が終わりひと段落つくと、ランニングウルフがブルームーンと目を合わせていった。ブルームーンは青色の目を反射させてうなずいた。
「そうしましょう。」
「縄張りの周りを一周するって、どういうことですか?」すかさずヘザーポーがたずねる。
ブルームーンは水色の目をおかしく光らせていった。「各部族の境界線の近くまで行って、どこが境界線なのかとか色々覚えるのよ。」
ランニングウルフもくわえていう。「そうだ。もうお前たちは子猫じゃないんだからな。」
「じゃあ、すぐ行きましょうよ!」ウィステリアポーはいった。楽しみでそわそわする。
好奇心にあふれた二匹を、それぞれの指導者は微笑ましそうに見ていた。
「言われなくても行くさ。ついてこい。」ランニングウルフはそういうと、ついて来いとしっぽを一振りした。後ろにウィステリアポーとヘザーポーが並び、その後ろでブルームーンが歩いている。

浅い芝生の上をまっすぐ歩いていくと、目の前に大きな岩が現れた。その岩の境から奥は薄暗く竹や針葉樹が生い茂っている。どんよりしていて雰囲気は最悪だ。
ランニングウルフは足を止めた。同時にみんなも足を止める。
ウィステリアポーは言われなくても分かっていた。「この奥がシャドウ族の縄張りですよね。」
そうだそうだとヘザーポーもうなずく。「あんな不気味な雰囲気が漂う場所はシャドウ族以外に考えられない!」
ランニングウルフはうなずいた。「そうだ。シャドウ族の境界線は、この大きな岩が目印だ。見てもらえばわかるだろうが、この奥がシャドウ族の縄張りだ。」

ウィステリアポーは興味ありげに奥を見やった。「シャドウ族って、何食べるんだろう。」ぼやりと呟くと、ヘザーポーが返した。「キツネのふんとか食べてそう。」
「あー確かに!」納得したようにウィステリアポーもうなずく。
するとブルームーンが大きくしっぽを振った。「こら、あまりここで変なこと言わないで!」
びっくりしてヘザーポーは飛び上がった。ブルームーンは続ける。「それと、シャドウ族の食べるものはサンダー族と同じよ。リスとかネズミとか、カエルも食べるとか聞いたことあるわね。」
「うぇっ!カエルなんて食べるんですか?絶対まずいって!」ウィステリアポーはカエルの味を想像して気分が悪くなった。
「ブルームーンの言っていることは本当だ。シャドウ族はただでさえ厄介だからな。できれば関わりたくないもんだ。」ランニングウルフはやれやれというように緑色の目をぐるっと動かした。「シャドウ族のことは、ウィンド族の縄張りにつくまで話してやろう。」ランニングウルフはそういうと、行くぞと背を向けだした。
 確かに、シャドウ族が厄介でタチの悪い猫ばかりだというのは、いろんな猫から耳にしていた。でも、あまりぱっとしないなぁ。ウィステリアポーはそう考えながら歩き出した。

「実は半年前、シャドウ族とリヴァー族で縄張り争いがあったらしい。」
ランニングウルフは歩きながら言った。
「なんでですか?」ヘザーポーが不思議そうにたずねる。ランニングウルフは困ったように返した。
「ここ半年近く、獲物が乏しいんだ。リヴァー族に流れる小川を乗っ取ろうとしたらしい。」
「それでどうなったんですか?」今度はウィステリアポーが聞いた。ランニングウルフはちらっとこっちを見て答えた。
「なんとかリヴァー族が死守したそうだが、かなり被害が出たそうだ。リヴァー族の副長が殺されたり、ほかにも何匹か死んだらしい。」

残忍な部族だなぁ…。見習いになって初日に聞きたくない言葉だ。まあ、自分で聞いてしまったから仕方ないけど。横目でヘザーポーを見ると、どうやら自分と同じ気持ちのようだった。

しかしランニングウルフは続ける。「中でも不思議なのが、シャドウ族の副長の遺体が見つかっていないらしい。それでもリザードスターはバジャーフェイスを副長に選んだが、どうも府に落ちないんだ。」ランニングウルフはそういうと、足を止め見習い二匹を見つめた。緑色の目をぐっと細めている。

「いいか。我々サンダー族も油断はできない。なにせ今は枯葉の季節。これからどんどん獲物が乏しくなる。だから、何かあった時のために、常に体力を保つんだぞ。」
ウィステリアポーとヘザーポーは少し萎縮したが、わかりましたと返事をすると、ランニングウルフはふたたび歩きだした。

少しして、今度は目の前に大きな茂が見えた。ウィステリアポーたちは足を止める。

「ここから先は、ウィンド族の縄張りよ。」ブルームーンがいう。
「ウィンド族は木々がない荒れ地で暮らしているの。主な獲物はウサギよ」
二匹はうなずいた。ブルームーンは説明を続ける。
「木々もないし、風に乗ってウサギを追いかけるから、どの部族よりも足が速いのよ。」
ランニングウルフはうなずくと、二匹に言った。「ウィンド族はシャドウ族と違って温厚な猫が多い。だからといってむやみに仲良くするもんじゃないけどな。」
ウィステリアポーはヘザーポーにぼそっと言った。「ウサギおいしいのかな。」ヘザーポーは不思議そうに返した。「耳が長いらしいわよ。でも太ってるからおいしいんじゃないかしら。」
「じゃあ、最後はリヴァー族の縄張りね。」ブルームーンが言った。

ランニングウルフたちは茂を後にし、ふたたび歩き始めた。
「もう足がくたくただよ。」ウィステリアポーが言葉をこぼす。ヘザーポーも「あたしも疲れた。」とぶつぶつ言った。
「もう少しよ、頑張って。」ブルームーンは二匹を励まし、歩き続けた。

少し歩くと、ランニングウルフが足を止めた。疲れて前を見ていなかったウィステリアポーはランニングウルフにぶつかった。
「いてっ!」
ウィステリアポーは倒れるとランニングウルフを見上げた。銀色の副長は耳をそば立てて奥をじっと見ている。「何か聞こえるか?」

ウィステリアポーはよくわからないまま耳をじっとそば立ててみた。
すると、何か小さな音が聞こえてきた。

小川の水の音だ!

「川の音ですか?」ウィステリアポーは聞いた。同じようにヘザーポーも耳を立てている。
「正解。しばらくすれば川のにおいにも慣れるだろう。」ランニングウルフは言った。
ヘザーポーが口を開けた。
「ということは、この小川の先はリヴァー族?」目は好奇に満ちている。
ランニングウルフは再びうなずいた。「正解だ。ちなみにこの小川は、獲物を捕ることは禁止されているが水を飲むことは許されている。」
とたんにヘザーポーがしっぽをぴんと立てた。「飲みたい!」
「僕も!」とウィステリアポーもいう。

ランニングウルフはブルームーンと目を合わせてうなずき、「お前たちも疲れただろう。たっぷり飲んでいけ。」というと、茂みをかき分けて川のふもとまで来た。
「川の水はかなり冷たいからな。腹を壊すんじゃないぞ。」ランニングウルフは川に誰もいないことを確認すると、しっぽで来いと合図した。二匹の見習いは川のふもとまで来ると、すぐに水を飲み始めた。
「新鮮でおいしい!」ヘザーポーが嬉しそうに言う。
ウィステリアポーも同感した。生き返る!

少し休憩をはさみ、猫たちは自分のキャンプを目指して歩き出した。
キャンプにつくと、ヘザーポーはすぐに座り込んだ。「疲れたぁ。」
ブルームーンはうなずいた。「二匹とも、お疲れ様。初めてなのによくついて来れたわ。今日はぐっすり休みなさい。明日からは別々で訓練が始まるわよ。」暖かいまなざしで二匹を見つめる。
「俺はブリーズスターに報告してくる。今日はもう解散だ。お疲れ様。」ランニングウルフはそういうと、走って族長にいる岩棚を上り始めた。
「副長の身体能力高すぎ!」ウィステリアポーは小声でつぶやいた。

リリーファーンに報告し、ほかの見習い猫たちと一緒に獲物を食べたウィステリアポーは、寝床に入るなりすぐ横になった。

たくさん歩いてもうくたくた。今日はぐっすり眠れそうだ。
ウィステリアポーは次第に目を閉じ深い眠りに入っていった。

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投稿 by スパークリングムーン Wed Aug 11, 2021 10:19 am

はじめまして!
スパークリングムーンです
更新頑張ってください!

スパークリングムーン
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投稿 by ロビンフライト Sun Aug 15, 2021 6:11 pm

みなさんコメントやいいねありがとございます!(*'ω'*)
とても励みになります!更新頑張っていきます!!

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投稿 by ロビンフライト Sun Aug 15, 2021 9:23 pm

第3章

見習いになってから、二週間が過ぎた。単純に狩りをするだけでなくパトロールをしたり、長老の世話をしたりと忙しい毎日を送っている。
ヘザーポーは戦いの訓練を受けるために、キャンプの入り口で待つブルームーンのもとへ向かった。
それにしても寒すぎる!凍てつくような寒さの中、震えながら手足を動かす。

「おはようございます!」ブルームーンのもとへ着くなり、ヘザーポーは挨拶をした。ブルームーンは暖かい声で返した。「おはよう。ヘザーポー。」白い息がヘザーポーにかかる。
「今日はあたしたちで練習するんですか?」ヘザーポーはたずねた。
しかしブルームーンはかぶりを振った。「今日は、アッシュレインとゴールデンポ―たちと一緒に訓練をするの。もう来るはずよ。」ブルームーンがそう言うなり、後ろからこっちに向ってくる音が聞こえてきた。
振り返ってみると、白黒のぶち猫と黄金色の猫が全速力でこちらに向かってきているのが見えた。

「すまん!」アッシュレインはブルームーンのそばで急停止したが、ゴールデンポ―は止まり切れずにヘザーポーにぶつかった。
「いてっ!」ヘザーポーは声をあげて倒れこんだ。「ちょっと!危ないでしょ!」ヘザーポーは唸りながらゴールデンポ―を蹴った。
「ごめん!」ゴールデンポ―は謝りながらヘザーポーから離れた。
「いったいどうしたの?」ブルームーンが不思議そうにアッシュレインに聞いた。
アッシュレインはあきれたようにゴールデンポ―を見た。「お前の口から話せ。」

ゴールデンポ―は申し訳なさそうにちらっとアッシュレインを見たあとブルームーンに目を移した。「じ、じつは寝坊しちゃって…」
ブルームーンは小さくうなずいた。ヘザーポーがすかさず口をはさんだ。「ごめんなさい。私が起こせばよかったわ!」
アッシュレインは黄色い目をヘザーポーへ向けた。「そういう問題じゃない。」そういうと、ゴールデンポ―に目を移しにらんだ。「たのむから、もう少ししっかりしてくれ。立派な戦士が寝坊だなんて冗談じゃないからな!」
ゴールデンポ―は琥珀色の目を申し訳なさそうにブルームーンに向けた。「も、申し訳ありません。」思わず口ごもる。しかしブルームーンは怒るどころか「そういうこともたまにはあるわよ。怒っていたって仕方がないわ。」というと、「気を付ければいいだけよ。」と優しく付け加えた。ゴールデンポ―にたちまち笑顔が戻った。
「そろそろ行きませんか?」ヘザーポーはブルームーンに向って言うと、ブルームーンはうなずきしっぽを一振りしてキャンプの外へ向かって歩き出した。

ゴールデンポ―が小声でヘザーポーに話しかけた。「なあ、どうしたら寝坊しなくなると思う?」
ヘザーポーは一瞬ぽかんとした。「早く寝ることでしょ。」ヘザーポーは返す。
ゴールデンポ―は少し考えると、小さなため息をついた。ヘザーポーはため息を聞き逃さず「どうしたの?」と尋ねた。ゴールデンポ―は少し間をおいて返した。「いや、なんかさ。僕の妹と弟はもう戦士になってもおかしくないのに僕ときたら…なんでこんな間抜けなのかなって。」
「サンドポーとペブルポーのこと?」ヘザーポーは聞いた。ゴールデンポ―は小さくうなずいた。ヘザーポーは少し考えた。確かに、妹のサンドポーと弟のペブルポーは優秀な見習いだ。ゴールデンポ―の言う通り、もう戦士に昇格してもおかしくない。ヘザーポーはしっぽで軽くゴールデンポ―をつついた。「確かにそうかもしれないけど、あなたも負けてないわよ。」暖かい眼差しでゴールデンポ―を見る。ゴールデンポ―は「そうかなぁ…」とあまり納得していなさそうにつぶやいた。まあ…彼は少し天然なところがあるから仕方ないわね。ヘザーポーは心の中で呟いた。

すこし歩くと、訓練場にたどり着いた。「さぁ。ついたわ」ブルームーンが言った。
アッシュレインがくしゃみをした。「体を動かして温まろう。」声が寒さで震えている。
「今日はどんな訓練をするんですか?」ゴールデンポ―がたずねた。アッシュレインが答える。「今日は相手から攻められた場合を想定してどう動くか考えてを練習するんだ。」
「まずは私とアッシュレインでやってみるわ。」ブルームーンはそういうと、アッシュレインと分かれて位置についた。アッシュレインも位置につくと、ブルームーンはこちらに向かって喋った。「アッシュレインが敵の役をやるから、攻めてくる動きと私の動きをよく見てて。」
「わかりました」ヘザーポーとゴールデンポーは返した。
ブルームーンは初めの合図としてアッシュレインにうなずくと、間を置かずにアッシュレインはものすごい速さでブルームーンめがけて飛び掛かった。ブルームーンは腰を低くしアッシュレインに負けない速さで横によけると振り返ったアッシュレインの顔にパンチをしようとしたがアッシュレインにかわされてしまった。しかしブルームーンは見切っていたようで、かわした方向めがけて頭突きをくらわした。

「速い!」ヘザーポーは目を輝かせてつぶやいた。私も早くやってみたい!
横目でちらっとゴールデンポ―を見ると、少し不安そうに二匹を見つめているのが分かった。「不安なの?」ヘザーポーは聞いてみた。ゴールデンポ―は「できるかなぁ」と呟いた。

アッシュレインは立ち上がると、ブルームーンはうなずいて動きを止めた。「今さっきやったことで大切なことはなんでしょう?」見習い二匹にたずねる。
ヘザーポーはぱっと答えた。「相手の先の動きを読むことです!」
ブルームーンはゆっくりまばたきした。ヘザーポーは続けた。「かわされることを想定して動いているように見えました。」
ブルームーンは大きくうなずき「お見事!」というと、解説を始めた。
「私が殴り掛かろうとしたとき、本気じゃないのが分かったかしら?あの位置から殴っても、大したダメージにはならないの。だから相手をよけさせるように動いてよけたところを頭突きする。場所によっては頭突きじゃなく、自分がダメージを与えられる技があるならそれを利用してもいいわ。」ブルームーンは言い終わると、アッシュレインに目を移した。アッシュレインは言った。「俺がよけたあと、ブルームーンが頭突きをしただろう?その時、大きくジャンプしてブルームーンの後ろに着地できればこちらは反撃することができる。」アッシュレインは解説し終わるとしっぽで見習い二匹を招いた。
「次はお前たちでやってみろ。」黄色い目が鋭く光る。

ヘザーポーはそわそわした。「わかりました!」元気良く返事をする。ゴールデンポ―もそわそわしているようだ。二匹が各位置につくと、ブルームーンが言った。
「それじゃあ、ゴールデンポ―はヘザーポーに襲い掛かる役をやって、ヘザーポーはゴールデンポ―に反撃してごらんなさい。終わったら交代するから。」
見習い二匹はうなずいた。ブルームーンは「初め!」というと、アッシュレインのそばに座り二匹をじっくり観察し始めた。

さっきアッシュレインは、すぐに襲ってきたが、ゴールデンポ―はすぐに襲ってこずに様子をうかがっている。ヘザーポーはいつ飛び掛かってきてもいいように腰を低くし手足に力を入れた。その時、ゴールデンポ―はヘザーポーに飛び掛かってきた。ヘザーポーはブルームーンの動きを思い出し横によけた。
しかしゴールデンポ―は大きな後ろ足でヘザーポーの後ろ足を蹴りヘザーポーは地面にぶつかった。黄金色の毛が頭をかすめる。ゴールデンポ―はそのすきを見てパンチをくりだそうと前足を突き出した。
しかし間一髪でヘザーポーは避けると、ゴールデンポ―が次に後ろ足を出したので低くかがんでゴールデンポ―の腹部に体当たりをくらわした。
ゴールデンポ―は遠くに飛ばされ寝ころんだ。

「やった!」ヘザーポーは声を上げた。倒れたゴールデンポ―は立ち上がると、「すごいね!」とヘザーポーをほめた。「いい動きだ。」アッシュレインも言う。
ブルームーンは青色の目を輝かせてうなずいた。「ナイスな動きね。先の動きを読めれば、だいぶ優勢になる。」
「それじゃあ、交代しよう。」アッシュレインが言った。
見習い二匹は再び位置についた。ブルームーンの初めの合図とともに、ヘザーポーはものすごい速さでゴールデンポ―めがけて飛び掛かった。
ゴールデンポ―は前に飛び出てヘザーポーを避けた。ヘザーポーはゴールデンポ―を蹴ろうと足を突き出したが、ゴールデンポ―はヘザーポーの足を加えて力いっぱい振り払った。
ヘザーポーはバランスを崩しその場に倒れ、ゴールデンポ―の大きな前足で殴られた。
「お見事!」アッシュレインが言った。ゴールデンポ―の指導者の目が輝いている。
「よし!」ゴールデンポ―も嬉しそうに声をこぼす。
ヘザーポーは立ち上がり、ゴールデンポ―のもとへ駆け寄った。「なんだ、完璧にできたじゃない!」ヘザーポーは目をおかしく光らせた。
ゴールデンポ―は少しはにかみながら指導者を見つめた。アッシュレインは満足したようにうなずいた。「寝坊してしまったが、よく動けるじゃないか。」ゴールデンポ―は嬉しそうにしっぽを振った。
「ゴールデンポ―は体が大きいから、重量感のある戦いができそうね。」ブルームーンも付け加える。


その後も何度かいろいろな技の練習を繰り返した。終わったころにはもうへとへとだった。

 戦いの訓練をすると、なんだかそわそわする。もっと強くなりたい!ヘザーポーはそう思った。動いたので体が温まった気がする。
「それじゃあ、今日はこの辺にしておきましょう。」ブルームーンが言った。
「これからはみんなで分かれて、獲物を捕まえて帰ろう。」アッシュレインは伸びをして毛づくろいをしている。ブルームーンはうなずいた。
「そうしましょう。それじゃあ今日はこれにて解散。日が暮れる前には帰ってくること。」
ヘザーポーとゴールデンポーは分かりましたとうなずいた。
「じゃあ、あたしは来た道を戻って獲物を探してきます」ヘザーポーは言った。するとゴールデンポ―は「僕も一緒に行っていい?」と聞いてきた。ヘザーポーは「もちろん。」と返すと、訓練場を後にしようと背を向けた。そのとき、「あ!待って!」とブルームーンが声をかけた。
「なんでしょうか?」ヘザーポーは振り返る。ブルームーンはなんだか誇らしげに笑みをこぼしていった。

「明後日の大集会は、あなたたちも参加することになったわよ。」

大集会!ヘザーポーは急に興奮した。
大集会は森にすむ四つの部族が集まる日で、戦いをしてはいけない日でもある。

ずっと気になっていたので、参加できると言われてヘザーポーは嬉しくなった。
「ほんとですか!?」ヘザーポーは驚きと嬉しさの混じった声で言う。ブルームーンはおかしそうに笑った。「本当よ。」
「そっか、ヘザーポーは初めてなんだ。」ゴールデンポ―が呟く。「そうなの。ずっと気になってたから楽しみ!」ヘザーポーはしっぽを振った。「行ったらびっくりするよ。みたこともない猫ばっかりだからね!」ゴールデンポ―はまるで大集会を思い出すかのように言った。
「早く明日にならないかな。」ヘザーポーはわくわくした。
「たくさん獲物を捕まえれて寝れば明日になっているさ。」アッシュレインが言った。
「そうと決まれば、さっそく獲物捕まえてきます!」ヘザーポーはそういうと、「行きましょ、ゴールデンポ―!」とゴールデンポーを呼びすぐさま奥へ消えていった。

ヘザーポーは走りながら明日のことを想像した。
どんな猫がいるんだろう?ほかの族長はどんな猫なんだろう?ヘザーポーの胸が高鳴る。
早く明日になりますように!



*******鱗片メモ*******
今回から、ちょっとしたあとがき的な感想コーナー設けようと思います!

今回は訓練のところを書いてみました。
ゴールデンポ―は個人的にお気に入りキャラです。(今回登場したばかりですが)
ちょっと天然ぽいところが好きですね。これからも登場させたいので、天然描写できるよう頑張りたいです(笑)
次回は大集会ですねぇ。できればいろんな猫を出したいと思っています(*'ω'*)

ロビンフライト
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投稿 by スターリングクイーン Sun Aug 15, 2021 11:29 pm

面白いです!
いつも更新楽しみにしてます。
頑張ってください!

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投稿 by ロビンフライト Mon Aug 16, 2021 12:53 am

第4章 大集会

ヘザーポーは雪に囲まれていた。周りは山に囲まれ、雪が吹き荒れている。
「ここはどこ?」ヘザーポーはあたりを見回した。氷のような冷たい風がヘザーポーにあたる。あまりの強風に目が開けられない。
ヘザーポーはとたんに恐怖に襲われた。
「ウィステリアポー?どこにいるの?」ヘザーポーは兄の名を呼んだ。しかし返事はない。

寒い。冷たい。誰か助けて!

ヘザーポーはその場に座り込んだ。
あたし、死んじゃうの? 意識がもうろうとしてきた。温めようと手足を腹部にいれても、石のように冷たい手足が温まる気配はない。

「誰か…助けて…」

ヘザーポーは小さな声で呼んだ。
目の前がぐにゃぐにゃして見える。もうダメかも。そう思った瞬間、目の前に大きな白鷺のような鳥が
現れた。
「だれ?誰なの?」ヘザーポーは聞こえるかわからないくらいの小さな声でたずねる。
美しい白鷺は一声泣くと、翼でヘザーポーを覆った。
「だ…れ…?」ヘザーポーは目を閉じた。そのとたん、何か大きなものがヘザーポーの頭にあたった。

ヘザーポーは衝撃で目を開けると、目の前に兄のウィステリアポーがいた。
「やっと起きた!早くしないと怒られるぞ!」
「え?」ヘザーポーはねぼけて返す。
ウィステリアポーはあきれたように目を動かした。「今日は僕たち、夜明けのパトロール隊のメンバーに入ってるだろ!」

パトロール?
一瞬間があってから、ヘザーポーは思い出した。
「そうだ!やばい!」ヘザーポーはものすごい速さで見習い部屋を出ると、猛ダッシュしてブルームーンたちのもとへ向かった。
「おい待てよ!」後ろからウィステリアポーが追いかける。
ブルームーンの姿が見えた。他にランニングウルフと、見習いのスターリングポーに指導者のボルトストライプが見える。

まずい、このままじゃ怒られちゃう!

ブルームーンのもとへ着くと、すぐさま謝った。「遅れてごめんなさい!」
ウィステリアポーもすぐ駆けつけてきた。
「ひとつ言っておくけど、僕は起こしにきたんだからな!」ウィステリアポーは少しいらだった声でヘザーポーに向って言った。
「なんでもっと早く起こしてくれなかったのよ!」ヘザーポーが返す。
「早起きしないお前が悪い。」ウィステリアポーは目をいたずらっぽく輝かす。
ヘザーポーが言い返そうとすると、ブルームーンが大きくしっぽを振った。
「はい、そこまで!」声がいらだっているのが伝わる。
「この前ゴールデンポ―が寝坊したというのに、今度はあなたが…」何とも言えない感情にさいなまれているのか、少し残念そうだ。
「まあ、これくらい少しの時間なら問題ない。だからといって寝坊して言いわけじゃないがな。」ランニングウルフが口をはさむ。ヘザーポーはしぶしぶ頭を下げた。

「今日はどこをパトロールするんですか?」スターリングポーは訊ねた。「今日はリヴァー族とウィンド族の境界線のパトロールを行う。シャドウ族については別の一団が行ってくれた。」
「そろそろ行こうぜ。」ボルトストライプが声をかける。早く行きたくてうずうずしているようだ。「ただでさえ寒いんだ。さっさと任務を終わらせて休みたい。」
ブルームーンもうなずく。「そうね。今日は大集会もあるから、早く済ませて夜に備えて休みましょう。」
そっか!ヘザーポーはすっかり忘れていた。今日は大集会だ。兄のウィステリアポーも大集会に来ると言っていたので、すぐさまわくわくした。スターリングポーも行くのかな?と思いちらっと見ると「俺も行くよ!」と目を輝かせて言った。
「よし、じゃあ行くか」


正午までパトロールを続けキャンプにたどり着くと、さっそく寝床に入った。
「お兄ちゃん、今日の大集会楽しみだね!」ヘザーポーは兄に聞いた。ウィステリアポーはもちろんとうなずく。「初めてだもんな!いろんな猫とおしゃべりしてみたい。」ウィステリアポーも楽しみにしているのが伝わり嬉しくなった。

日が暮れると、母親のリリーファーンが起こしに来た。
「そろそろ大集会に行く時間よ。」相変わらず優しい声で呼ばれヘザーポーは心地よく目覚めることができた。
ウィステリアポーもこうやって暖かい声で起こしてくれればいいのに。

ウィステリアポーは大きく伸びをして立ち上がった。
ヘザーポーもあくびをして立ち上がると大きく伸びをした。「起こしてくれてありがとう。」ヘザーポーは母親にいうと、リリーファーンはどういたしましてと言い、一緒にキャンプの入り口まで来てくれた。入り口には族長のブリーズスターと副長のランニングウルフ、その他戦士や看護猫が数名いる。
「私は残るから、楽しんでらっしゃい。」リリーファーンはそういい戦士部屋へ戻っていった。
後ろからゴールデンポ―が走ってやってきた。「また遅れるところだった!」ぜいぜい息を吐いている。
「遅いよお兄ちゃん!」妹のサンドポーが兄にむかって言った。ゴールデンポ―はごめんねと謝ると、弟のペブルポーに話しかけに言った。
ランニングウルフは人数を確認すると、ブリーズスターに「全員揃いました。」と言った。
「よし。それでは向かおう。」ブリーズスターは威厳のある声で言うと、一団は進みだした。

「どんな猫がいるんだろう!」ヘザーポーは兄にいった。ウィステリアポーも好奇心に満ちた声で答える。「どうだろう?僕的にはシャドウ族の猫が気になる!」ヘザーポーは首をかしげた。「どうして?」
ウィステリアポーは答えた。「ほら、初めて一緒に縄張りを回った時にシャドウ族は危ないって言ってたろ?」ヘザーポーは納得したようにうなずいた。
「確かに!それならウィンド族も気になる。」ヘザーポーはウィステリアポーと会話をしながら、大集会が行われる場所まで歩いて行った。湖の周りを歩き、リヴァー族の縄張りを通りながら小さな島にたどり着いた。

月は煌々と輝いており、澄んだ空には輝く星が散らばっている。

島についてみると、いろいろな猫の声が聞こえてくるのがヘザーポーに分かった。
目の前はサンダー族の戦士ばっかりで、どの部族の猫が来ているのかわからない。
ブリーズスターはランニングウルフになにか呟くと、島の大きな木の枝に飛び乗った。
ヘザーポーはその姿を目で追い始めてほかの族長がいることに気が付いた。
ブリーズスターの横に青みがかった灰色の猫が静かに座っている。その隣には淡いオレンジ色の雄猫があたりを見回すように座っている。
「青みがかった灰色の猫はレイクスター。その隣にいるのはフィンチスターよ。」後ろからブルームーンの声が聞こえヘザーポーはびっくりした。「ちなみに、レイクスターはリヴァー族の族長。フィンチスターはウィンド族の族長なの。」
「へぇー!」ヘザーポーは興味がわいてきた。「あれ、シャドウ族は?」ヘザーポーはつぶやいた。
ブルームーンの隣にいたパドルペルトが答えた。「きっともうすぐ来るさ。お前たちも自由に話にいけばいい。」パドルペルトはそういうと、ウィンド族の猫に話しかけにいった。「僕も行ってみよっと!」ウィステリアポーもウィンド族の集団に向って行ってしまった。取り残されたヘザーポーはあたりを見渡しながら歩き出した。

小さな島はたくさんの猫たちで溢れかえっている。大きな木の下には、各部族の看護猫が集まって話している。ほんとにすごいなぁ。ヘザーポーは関心しながら歩いていると、大きな白い何かにぶつかった。
「ごめんなさい!」反射して言葉が出る。目を上げると大柄な白い雄猫がいた。
どうやら周りを見すぎてこの猫の足にぶつかってしまったようだ。
白い雄猫は、一瞬はっと青い目を見開いた。
しかし、ヘザーポーを無視してまっすぐ歩いて行ってしまった。「なによ、あの猫!」ヘザーポーは小さくうなった。

すると別の猫の声がした。「大丈夫かい?」声のした方を向くと、艶やかな毛をした黒い雄猫が立っていた。黄色い目が夜に反射して輝いている。
「あ、はい。大丈夫です。」ヘザーポーは思わず口ごもってしまった。
そしてさっきぶつかった猫を見やり「あの猫と同じ部族の方ですか?」とたずねた。しかし雄猫はかぶりをふった。「いや、違うよ。俺はウィンド族のグロスフェザーさ。」グロスフェザーは気さくに自己紹介をした。
「あの猫は…多分リヴァー族の猫じゃないかな。」グロスフェザーは言った。
「そうなんですね。」ヘザーポーは言葉を返した。「あたしはサンダー族のヘザーポーっていいます!」ヘザーポーは挨拶を返した。やっぱりウィンド族の猫は優しい!ヘザーポーは少し嬉しくなった。
「おっ。シャドウ族が来たんじゃないか?」グロスフェザーは少し遠くを見て言った。
ヘザーポーが振り返ると、大勢の猫がこちらに向かって歩いてきていた。先頭には大きな赤褐色の雄猫がどっしりとした足取りで歩き、その横を大柄な白黒の雄猫が歩いている。
猫を見るなり、グロスフェザーは説明した。「あの赤褐色の猫が族長のリザードスター。横の白黒の猫はバジャーフェイスだ。」

バジャーフェイス!
確か、ランニングウルフが言っていた猫のことだろう。リザードスターもそうだが、バジャーフェイスもたくさんの傷跡がある。ヘザーポーは思わずぞっとした。
「ランニングウルフから聞いたんですけど、あの部族の猫たちって危ないんでしょうか。」ヘザーポーは怪しげにグロスフェザーに聞いてみた。しかしグロスフェザーは微妙な反応を示した。「うーん、どうだろうね。みんなは悪い悪いっていうけど、話してみると意外に普通だったりするよ。」
ヘザーポーはへぇとうなずいた。「たとえば、どんな猫とお話されるんですか?」不思議そうにたずねると、グロスフェザー言った。
「そうだなぁ…。フォックスワイズとか、フローグフットとか。フォックスワイズはすごい賢い猫で、フローグフットと世間話すると盛り上がったりする。」というと、しっぽをぴんと上げた。
「よかったら一緒に行ってみるかい?シャドウ族も来たところだし。」ヘザーポーは好奇に満ちた眼差しでうなずいた。「ぜひ!」
少し不安もあるが、気さくで優しい猫と一緒なら大丈夫な気がする。ヘザーポーはそう思い、グロスフェザーの後をついて行った。

グロスフェザーは手足が黒いオレンジ色の猫を見つけるなり「あ、いた!」といい声をかけた。
「やぁ!」グロスフェザーは雌猫に向って挨拶をした。「あら、グロスフェザー。久しぶりね。」雌猫はグロスフェザーに言葉を返す。「この猫がフォックスワイズ。」
ヘザーポーはフォックスワイズにあいさつした。「こんばんは。私はサンダー族のヘザーポー。」フォックスワイズはヘザーポーに会釈した。「こんばんは。」
グロスフェザーは「フローグフットは?」と尋ねた。
フォックスワイズは「今日は来ていないの。足をくじいちゃったみたいで。」と返した。
グロスフェザーは「まじか!フローグフットによろしくと伝えておいてくれ。」というと、フォックスワイズはわかったとうなずいた。すると「ちょっと、あまり余計な事言わないでください!」知らない声が聞こえてきた。
「お、弟子を持ったのか。」グロスフェザーがフォックスワイズに聞いた。そばから薄茶色の雄猫が出てきた。「シャドウ族が弱いって思われたらどうするんですか。」不満そうな声で言う。
雄猫はヘザーポーを見るなり、あいさつした。「僕はヴァイオレットポー。君は?」ヘザーポーは自分の名を言おうとした瞬間、大きな声で遮られた。

「これより、大集会を行う!」ブリーズスターの威厳のある声であたりは一瞬で静かになった。
「まずはウィンド族から報告をする。」一番端に座っていたフィンチスターが声を上げた。

「凍てつくような寒さだが、ウィンド族は獲物に困らず生活ができている。また、<二本足>が犬を連れてきたが、我が優秀な戦士たちで退治した。」周りから賞賛の声が上がった。
グロスフェザーの方をちらっと見ると、少し照れくさそうに「実は俺、犬を追い払った猫たちのひとりなんだ。」といった。「すごいですね!」ヘザーポーは思わず感心した。
フィンチスターは言い終わると、レイクスターへどうぞと譲った。レイクスターは会釈すると、話始めた。
「リヴァー族は枯葉の季節の影響をあまり受けていません。リヴァー族のみんなは健やかに、元気に暮らせています。病気も一切流行っていません。」レイクスターはちらっとリザードスターを見た。リザードスターは動じない。
レイクスターは言い終わるとブリーズスターに譲った。
ブリーズスターはうなずき、話した。
「われわれサンダー族は、つい最近見習い猫が二匹増えた。この調子で寒さに負けずに乗り越えていきたい。」
最後にリザードスターが口を開けた。威厳のある、低い声だ。
「シャドウ族はここしばらく獲物には困っていない。」レイクスターがリザードスターをにらんだのが分かった。怒りで毛が逆立っているのが分かる。
「我が部族にも、新たに見習いになった猫がいる。ヴァイオレットポーとナイトポーだ。」
名前を呼ばれたヴァイオレットポーは誇らしげにブリーズスターを見ていた。

なんか、変な猫。ヘザーポーはそう思った。

各族長の報告が終わると、族長は散らばっていった。「もうお開きか。」グロスフェザーは少し悔しそうに言った。
フォックスワイズはじゃあねというと、リザードスターたちのもとへヴァイオレットポーをつれていっていしまった。「また今度の大集会で話そうな。」グロスフェザーはそういうと、ウィンド族のもとへ向かった。
ヘザーポーは「いっぱい話しましょう!」と返すと、サンダー族のもとへ向って行った。

ヘザーポーはウィステリアポーを見つけるとさっそく話しかけた。「どうだった?」
ウィステリアポーは余韻に浸っているかのようにうわの空で返事した。
「すごかったよ!シャドウ族のフラワーポーっていう猫と話したり、ヘーゼルポーと一緒にリヴァー族のシンダースプラッシュっていう猫と話したんだよ!」
声をきく限り、そうとう楽しかったことが伝わった。「あたし、リヴァー族の猫とはお話しなかったからうらやましいな!」ヘザーポーは羨ましそうに言った。

あのぶつかった雄猫はよくわからないけど!

ヘザーポーとウィステリアポーはお互いに話をして楽しんだ。

月は相変わらず煌々と輝いている。
大集会は思った通り楽しかった。このまま平和ならいいのになぁ。
ヘザーポーはそう思いながら自分のキャンプへ帰っていった。


***鱗片メモ***
今回、タイトルをつけてみました!(以前の話にもタイトルをつけていく予定です)
なんだか書くたびに長くなってる気がする…(笑)
また、登場猫で長老の名前を忘れていたので編集で加えておきました!

いろんな猫を書きたかったので、文章的にかなり長くなってしまったのだろう…(小声)
ちなみに、ヴァイオレットポーはフォックスワイズの弟子でございます。個人的に族長の中でフィンチスターはお気に入りだったりする。

コメントありがとうございます!嬉しいです(*'ω'*)
この調子で頑張っていきます!

ロビンフライト
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投稿 by ロビンフライト Sun Sep 05, 2021 6:11 pm

第5章 夜明け

凍える寒さが続く中、ウィステリアポーは日の光で目覚めた。大集会から二日が経ったが、いまだに余韻に浸っていたウィステリアポーは大集会のことをぼんやり思い出していた。

まずシャドウ族の猫たちと話して、そのあとヘーゼルポーと一緒にリヴァー族の猫と話した…。思いのほかどの部族の猫も親切だったなぁ。
そのあとにヘザーポーといろんな話を共有できたし、もっと他の猫とも話してみたい!

ウィステリアポーはそう思ったのであった。
横目でちらっとヘザーポーを見ると、ゴールデンポ―と身を寄せ合いぐっすり眠っていた。
起こしてやろうと一瞬ためらったが、まだ朝も早いので起こさなかった。

すると、奥の方でもぞもぞ動く音がした。目を向けると、ペブルポーが寒さのあまり身動きしていた。ペブルポーと目が合ったウィステリアポーは声をかけた。
「おはよう、ペブルポー。」

ぺブルポーは寝起きの声で返事をした。「おう。おはよう。」寒さで声が震えている。
「こっちに来なよ。」ウィステリアポーはペブルポーに言うと、ペブルポーは顔をぶるぶるさせながら横に来た。

「お前も寒さで目が覚めたのか?」ペブルポーは聞いた。
ウィステリアポーはかぶりを振った。「いや、日の光で目が覚めたんだ。」

ペブルポーはうなずいた。「そうか。実は俺、寒いのが苦手なんだ。」
灰色と黒の混じった猫は、寒そうに身を縮めている。
ウィステリアポーは少し驚いた様子でペブルポーを見つめた。

「なんだか意外だね。まぁ、この季節は誰だって寒いよ。僕も寒いもん。」
ペブルポーは返事代わりに鼻をならすと、ウィステリアポーの腹下に顔を突っ込んだ。
「ごめん、ちょっとこのままでいさせてくれ。」ごもごもと喋るペブルポーに、ウィステリアポーはいいよと返事を返した。

「やっぱり、こうして身を寄せ合っているとあったまるぜ!」ペブルポーがしゃべる。ウィステリアポーはくすっと笑って答えた。「身を寄せ合うというか、君が僕のおなかに顔を突っ込んでいるだけだけどね!」

「というか、ここ最近なんでいつも一人で寝てるんだい?」ウィステリアポーは不思議そうにペブルポーにたずねた。ペブルポーは短くうなると「見りゃわかるだろ。」と答えた。

ウィステリアポーはヘザーポーと一緒に身を寄せて眠っているゴールデンポ―を見た。「ゴールデンポーに嫉妬してるのかい?」ウィステリアポーはからかった。
咄嗟にペブルポーは腹の下から顔を出した。
「ちげーよ!こんな天然な兄貴のどこに嫉妬するっていうんだ。一緒に寝るやつがいないから一人で寝てるんだ!」

あまりの必死さに、ウィステリアポーは思わず笑いそうになった。
「なら今夜僕を誘えばよかったじゃないか。そうすればこんな朝早くに寒さで目覚めることなんてなかったのに。」
ペブルポーは水色の目を光らせた。
「俺が寝る前にお前が先に寝ちまったじゃんか!」

ウィステリアポーは我慢していたが、ついに笑いをこらえきれなくなってしまった。
それに対してペブルポーは相変わらず必死に訴える。「いや、お前が言いたいことは分かるぞ。他にスターリングポーを誘えばいいとか思ってるかもしれないが、あの猫は兄妹仲いいから一緒に眠ってるんだ。だから結局俺は一人で寝ることになるんだよ!」

ウィステリアポーは笑いながらたずねた。
「なぁ、なんでそこまでして一人で寝たくないんだ?」

ペブルポーは大声で答えた。
「寒いからだよ!」

たかがこんな質問にこれほどかと真剣に答えるなんて!
ウィステリアポーは大声で笑い始めると、その声で起きたゴールデンポ―が不思議そうに声をかけた。
「こんな朝早くにどうしたの?」寝起きで声がかすれている。

ウィステリアポーはゴールデンポ―に説明しようと話し始めた。「ペブルポーが寒そうにしてるから話を聞いたらさ、その…」思い出して笑いがこみ上げる。弟であるペブルポーの話に興味を持ったのか、目が覚めたようだ。
続きを話そうとしたとたん、ペブルポーがウィステリアポーの顔面をおさえた。「おい!言うんじゃない!」
ウィステリアポーは相変わらずおかしくて笑い転げた。
「なんなの?」ゴールデンポ―は興味津々で聞いてくる。

「なんか、寒さが苦手だからって僕の腹に顔突っ込んできてさ」
ウィステリアポーは続ける。ペブルポーはどこか恥ずかしそうにウィステリアポーの口をふさごうとしている。

「君がヘザーポーと一緒に寝てるから嫉妬してるんじゃないかって聞いたんだよ、そしたら」
「おい、やめろ!」すかさずペブルポーがうなる。

「身を寄せ合う猫がいないから一人で寝てるっていうから」ウィステリアポーは続ける。

ゴールデンポーはうんうんと話を聞いている。
「なんでなの?って聞いたら、寒いからって!」ウィステリアポーは大声で笑いながら言った。

聞こえていたのか、スターリングポーと一緒に寝ていたヘーゼルポーのくすくす笑う声が聞こえた。

状況が良く読めていないゴールデンポーは驚いたようにペブルポーを見つめた。
「違うんだ兄貴!俺は別にみんなと寝たいわけじゃないし、別に一人で寝ることに寂しさなんて感じてないからな!」
ペブルポーは必死に弁解する。

「おいおい、駄目じゃないか。そんなに僕と一緒に寝たいなら、今夜から一緒に寝よう!」
ゴールデンポーは起き上がってペブルポーのひたいを舐めた。

「か、勘違いすんな!俺はただ寒いだけなんだ!人肌恋しいとかじゃないぞ!」

どんどん騒がしくなってくると、次第に見習い部屋で眠る猫たちが次々に起き始めた。
ヘザーポーやサンドポーも起き始め、なにごとかと聞いてきた。

事情を簡単に説明すると、ヘザーポーは少し申し訳なさそうにペブルポーに言った。「なんだかあなたのお兄さんを取っちゃったみたいでごめんなさい。でもそんなつもり全くないのよ。」

誤解されたと思ったぺブルポーは顔を赤くして答えた。
「だから、俺は別に兄貴と一緒に寝たかったわけじゃない!」

「いや、いいの!兄妹仲良くしなくちゃ。ね?」ヘザーポーはウィステリアポーを見た。
さすが妹!よくわかってる!ウィステリアポーはおかしそうにうなずいた。

「ヘザーポーの言う通り。今日から一緒に寝よう!」ゴールデンポ―はそういうと弟を強く抱きしめた。

「やめろ!」ぺブルポーは拒絶しようと動くが、ゴールデンポ―の力強さには適わなかった。

気が付けばみんなが起きていた。
小鳥のさえずりが聞こえるのと同時に、見習い部屋は活気に満ちた笑い声で満たされていた。

「ほんと、うちのお兄ちゃんったら。」サンドポーが小さくため息をついた。しかしその声には愛くるしさも含まれているように感じた。


部屋中ににぎわう声を聞いたのか、戦士猫の二匹が顔を出してきた。
「やけにうるさいと思ったらお前たちか。」ランニングウルフがおかしそうに言った。
「朝から元気だなぁ。」パドルペルトは不思議そうにみんなを見つめながら言った。

「お前たち、そんなに元気があるなら正午のパトロール隊にでも入れてやろうじゃないか。」ランニングウルフは目をぐっと細めた。

「構いませんよ!特にペブルポーなんかすっごい元気なんでおすすめです!」ウィステリアポーは元気よく答えると、二匹の戦士猫は微笑みながらうなずいた。

ペブルポーはやめろとウィステリアポーをにらんだ。

「そうか。じゃあ、バッドストームにも言っておこう。」
ランニングウルフはそういうと、パドルペルトとともに部屋を後にした。

「おお、頑張れ!」ゴールデンポーはペブルポーの肩をつついた。
ペブルポーは「あのな…」と言いかけたが、呆れたのか、言葉を返さなかった。

ウィステリアポーはこのつんけんした雄猫のことを、面白く思った。
表面上たしかにぶっきらぼうなところはあるけれど、きっと根はやさしいんだろうな。
ウィステリアポーはそう思った。


ウィステリアポーは一日の訓練を終え狩りをした後にキャンプにつくと、ペブルポーを見つけた。まだみんなが戻ってきていないからなのか、一人でネズミを頬張っている。

お腹がすいていたウィステリアポーは、自分の仕留めたネズミをくわえてペブルポーの横へ来た。
「なんだよ。」ペブルポーは少し不機嫌そうに聞いた。
ウィステリアポーは「よかったら一緒に食べないか?」とペブルポーに聞き返すと、ペブルポーはふんと鼻を鳴らしただけだった。

「今朝あんなにいじったことは謝るよ。」ウィステリアポーはぺブルポーに言った。
「あんなすごい剣幕で言われたら、つい面白くなっちゃって。」

ぺブルポーはしっぽを地面にたたきつけた。
「その、僕は君に寒さで目を覚ましてほしくないし、暖かいところで一緒に寝たいしさ。今夜一緒に寝るかい?」
ウィステリアポーはしぶしぶ聞くと、ペブルポーは一瞬動きを止め、ペブルポーをじろっと見た。

「変な意味はないよ!」ウィステリアポーは言う。
するとペブルポーは、ふんと鼻を鳴らし「わかった。」と言った。

ウィステリアポーは一安心した。さすがに朝いじりすぎちゃったから、これで大丈夫かな。

日は沈み、ウィステリアポーはだんだん眠気に襲われてきた。
寝床につくと、ペブルポーも隣にやってきた。

それを見かねたゴールデンポーが、不思議そうに声をかける。
「あれ?お兄ちゃんと寝ないのかい?」

ペブルポーはゴールデンポーと目をそらした。
「俺はこいつと寝る。兄貴はいつも通り寝ればいいよ。」

ゴールデンポーは納得したようにうなずいた。
「そうか。もし僕と寝たかったらいつでも言うんだよ。それじゃおやすみ。」そういうとすでに眠っているヘザーポーのそばで眠り始めた。

「やっぱり、身を寄せ合って眠るのが一番だ。」ペブルポーが口を開けた。
そうだねとウィステリアポーも返す。

「今夜は僕の腹の下に顔はうずめないのかい?」ウィステリアポーはからかった。ペブルポーは一瞬爪を出したが、すぐにひっこめた。
「うるさいな。この季節をしのげれば十分なんだよ。」
ペブルポーはそういうと、次第に眠っていった。

ウィステリアポーは暖かい眼差しでペブルポーを見ながら思った。
やっぱり、ペブルポーはいいやつだ。

このまま楽しい日々が続けばいいな。



***鱗片メモ***
久しぶりの投稿になりますね!実はこの作品を練り直したり色々あって遅れてしまいましたm(__)m
また、諸事情により、自分の戦士名をロビンフライトに変更しましたm(__)m

今回はほかの見習い猫に焦点を当ててみました!
ゴールデンポーの弟であるペブルポー。あまり自分の気持ちに素直になれないツンツンタイプ。
兄のゴールデンポーは天然かつ兄妹のことは大切に思っているので、ちょっとギャグ回っぽくしてみました。
ゴールデンポーは兄妹二匹に劣ってると思っているけれど、サンドポーとペブルポーは特に兄に対して悪い印象はなく、ただ天然な兄といった感じですかね。

ロビンフライト
見習い
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投稿 by ロビンフライト Sun Sep 05, 2021 11:27 pm

第6章 月夜の侵入者

見習いになってから、約一カ月が経った。次第に日没は早くなり、寒さはより一層増していった。
見習いの仕事にも慣れてきたヘザーポーは今日の訓練を終えて寝床に入ったが、珍しく寝付けなかった。
今ではみんなで寒さをしのぐために、みんなで身を寄せ合って寝ている。ヘザーポーの右横にはゴールデンポーがおり、左横にはヘーゼルポーがいる。もうみんな寒さと疲れでぐっすり眠ってしまったようだった。

「いつもならもう寝ているのに。」ぼそっとヘザーポーはつぶやき、どうにか眠ろうと目を閉じた。

しかし、目を閉じると先日見た夢を思い出してしまう。
あの白鷺はなんだったのか?あまりに鮮明すぎて、ただの夢ではないような気がする。

それから、大集会の時にぶつかってきたあの大きな白猫のことも思い出した。
グロスフェザーは紳士に謝ったのに、あの猫ときたら…!
ヘザーポーは気が付けば色々なことを考えていた。

「これじゃ、いつまでたっても寝れないわ。」ヘザーポーは小さくつぶやくと、みんなを起こさないように立ち上がった。
外で体を動かせば、疲れで眠くなるはず。
ヘザーポーはそう思い、静かに歩いて見習いへを後にすると、キャンプの入り口まで誰にも気づかれないようこっそり歩いた。
入り口まで来ると、見張りをしている猫に見つかってしまった。
「あら、こんな遅くにどこに行くの?」ちらっと顔を上げると、雌猫のシナバーファーだった。
ヘザーポーはぎょっとした。が、見張り番がシナバーファーだとわかると、少し安心した。
この猫は優しいから、多分許可を出してくれるはず!

「全然眠れなくて。さすがにこのままだと朝まで寝れない気がするので、森の中を散歩しようかなと思ったんです。」ヘザーポーは少し不安そうに言うと、シナバーファーは少し何かを考え始めた。
「夜の森は危険よ。」三毛猫は言う。
「わかってます。でも、私はもう見習いになって一カ月たったんですよ。もし何かあっても対処できます。」
ヘザーポーは負けじと言った。どうか行かせてくれないかしら!
シナバーファーはまた少し考えると、ようやく口を開けた。
「わかったわ。でも、なるべくすぐ戻ってくるのよ。もし万が一何かに襲われたらすぐ__」
シナバーファーが言い終わる前に、ヘザーポーはすでにキャンプを後にしていた。
「シナバーファーは優しいけど、だからって私を子供扱いしないでほしいわね。」ヘザーポーはぶつぶつつぶやきながら、森の中を歩いた。

それにしても、夜の森は初めてだ。昼間と全然違う。
唯一の救いは、星と月が照らしてくれていること。
ヘザーポーは、一度だけミノウポーの薬草摘みで行った<古びた二本足の家>を思い出した。
家の中まで入っていなかったから、ちょっと探検がてら行ってみよう。
ヘザーポーはそう思い、<古びた二本足の家>へ向かった。


少し歩くと、その家は見えてきた。この家には<二本足>がかつて住んでいたが、今はもう住んでいない。手入れもされていないので、草が生えまくっている。
ヘザーポーは庭の方から周り、窓と呼ばれる出入口を見つけると、その隙間から入っていった。
目には見たことのない光景でいっぱいだった。というか、星や月の光が入ってこないので、ほとんど真っ暗といっても過言ではない。
目が慣れてくると、ヘザーポーは探検を始めた。

住んでいた<二本足>が荷物などを持って行ったのかもしれないが、まだ残っているものはある。ヘザーポーは大きな丸い分厚い何かを見つけると、近寄って行った。
踏んでみると、ふかふかでヘザーポーは思わず驚いた。
思わず座ってみると「なんて座り心地がいいのかしら!」と言葉が出たのと同時にほこりにむせた。
「なによ!」せき込みながら言うと、ヘザーポーは丸いふかふかする物体から離れた。

ヘザーポーはある程度散策すると、階段に目を付けた。
「これを上ったら、また何かあるかもしれないわね。」ヘザーポーはそう呟くと、一段一段静かに上った。
最後の階段をのぼると同時に、何か黒い影が部屋の方へ動いたがヘザーポーに見えた。

一瞬驚き、動きを止めた。
「誰かいるの?」ヘザーポーは声を放つ。

しかし返事は何もない。
ヘザーポーは考えた。
こんな夜中に、出歩く猫は私以外いないはず。シナバーファーは何も言っていなかった…。
もし誰かいるとしたら、それは不法侵入者ということになるわ!

ヘザーポーは緊張した。
ここで引き下がるわけにはいかない。サンダー族の立派な戦士になるためにも、侵入者くらい捕まえられなくちゃ!

ヘザーポーは深呼吸すると、音を立てずに影が向かった部屋へ歩き始めた。
廊下を進み、右手に大きな部屋が見えると、腰を落として部屋に入る。

部屋の中は<二本足>のガラクタで埋め尽くされており、嗅いだこともないようなにおいで鼻がうまく機能しない。

「そこにいるのは分かっているわ!」ヘザーポーはうなった。
影の主は、一向に姿を現さない。

もしかして、私の勘違い?

そう思った瞬間、大きな何かがヘザーポーの真上に飛んできた。
重さに耐えきれずヘザーポーは押しつぶされた。
この感触__もしかして猫?!

ヘザーポーはなんとか足をばたつかせ猫を振りほどくと、顔を上げた。
しかし、ほこりで目の前がかすんでよく見えない。
その瞬間、今度はわき腹に一撃をくらい、ヘザーポーは部屋の隅まで飛ばされた。
痛みにもだえ、もう一度目を開けた。

そのシルエットはヘザーポーよりかなり大きい。耳は長く、毛深い。

ようやく目が慣れてくると、その正体がはっきり分かった。

猫だ!
ヘザーポーははっとし、立ち上がった。
「誰なの?」声をしぼり出すと、その猫は馬鹿にしたかのように鼻で笑った。
「名乗るほどでもないな。」そういうと、その場を去ろうとした。
しかし、ヘザーポーは雄猫が後ろを振り向いた瞬間にしっぽにかみついた。
雄猫はおもいきりしっぽを振り回すが、ヘザーポーはかたくなに離さない。
雄猫は低くうなり、体をねじると、ヘザーポーはぶざまに横に振りほどされた。
「侵入者のくせに!」ヘザーポーは唸った。
その時、雄猫の目が月の光に反射して光った。
思わずヘザーポーはひるんだ。それと同時に、雄猫の肩が不自然な動きをしていることに気が付いた。
そこで、ヘザーポーははっとした。この猫は、どうやら右肩を骨折しているようだ!
大きな雄猫は疲れているのか、息をぜいぜい吐いている、それでも、あまりの威厳にヘザーポーは驚いた。少なくともこの前の大集会ではこんな猫はいなかった。

「どこの部族の猫なの?」ヘザーポーは慎重にたずねた。緊張で毛が逆立つ。
雄猫は低い声で答えた。「部族猫?俺は浮浪猫だ。」なんだか部族猫のことを馬鹿にするかの言い方だ。雄猫は続ける。「最近の森の猫はこんな弱っちいのか?」
雄猫の言い方に、ヘザーポーは腹が立ってきた。
「なんですって?」ヘザーポーの声に怒りが混じる。雄猫は相変わらず馬鹿にしたように鼻を鳴らした。
「いいか?俺は半年以上前からここにいる。これまで一度も見つかったことなどない。」ヘザーポーは雄猫を睨んだ。
「でも今夜、私に見つかったじゃない。弱っちいのはどっちよ!」
雄猫は一瞬黙ったが、再び口を開けた。

「お前のようなチビなんか鉤爪一本で充分だな。」
ヘザーポーは腹が立ち、雄猫に飛び掛かった。しかし雄猫は瞬時によけるとヘザーポーに頭突きをくらわした。ヘザーポーは廊下に吹き飛んだ。
「おぉ、頭突きで充分か!」雄猫はヘザーポーを笑うと、ヘザーポーの額の上で爪を出した。
「あんたみたいな薄汚い猫に負けるもんですか!」ヘザーポーは雄猫を睨みつけ、骨折している腕にパンチをくらわした。雄猫は驚き横に倒れた。

「サンダー族を舐めないで!」そういいながら、雄猫の腕にかみついた。雄猫はうなりながら腕を振り回した。「離せ!」雄猫はじたばたしながら声にならない唸り声をあげた。

ヘザーポーは思い切り噛みついたまま振り回し、雄猫は壁に頭をぶつけた。
「チビのくせによくやるな。」雄猫は目を細めた。
「チビじゃない。ヘザーポーよ!」ヘザーポーは大声で言うと、雄猫はくすっと笑った。
「おお。チビのわりに元気がいいな。俺はルークス。」ヘザーポーはチビといわれてむっとしたが、無視することにした。

「ここはサンダー族の縄張りなの。今すぐ出てって!」
ヘザーポーは言うが、ルークスは表情を一切変えない。「この家は誰も住んでいないし、おたくの猫も来ないじゃないか。」ルークスが返す。
ヘザーポーは耳を寝かした。「この家の庭には、貴重な薬草が生えているの。それを摘みに看護猫が使うのよ!」
「それは薬草を摘むためだろう?俺には何も害がないし、おたくの猫たちにも害はないじゃないか。」ルークスは反論する。いらいらしてきたヘザーポーは唸った。
「イヌハッカは確かにどの部族からしても貴重だけど、俺は薬草なんか盗まないよ。」

ん?イヌハッカ…?ヘザーポーは疑問に思った。なぜ、この浮浪猫がイヌハッカという名前をしっているんだろう?

「どうしてイヌハッカを知っているの?」ヘザーポーは思わず聞いた。ルークスは一瞬目を泳がせた。そして「そりゃあまぁ、色々うわさは聞いているぜ?」と言葉をにごした。
ヘザーポーはこの猫がごまかしで言った言葉だと瞬時に分かった。
同じように、ヘザーポーに様々な疑問が浮かび上がってきた。
浮浪猫にしては、動きが俊敏すぎる。力も強いし、どこかの部族の猫だと言われてもおかしくはない。それに、もしイヌハッカを知っているとしても、どうして庭に生えている薬草がイヌハッカだとわかったのだろう?
イヌハッカはそこら辺に生えるような薬草ではないし…。

勘づかれたのか、ルークスは咳払いした。
「おいおい、俺を疑うのはやめてくれよ。俺はただの浮浪猫で、半年以上前からここに居座ってるだけだって!」

ヘザーポーはじろっとにらんだ。「食事はどうしてるの?」
ルークスは、たしかに見かけは大きいが、腹や腕は痩せこけている。
「まぁ、その辺のネズミを適当に食ってる。」声に不安が混じっている。

「その辺って、どの辺?」ヘザーポーは問い詰めた。ルークスは間をおいてから「この家」と適当に答えた。「さすがに毎日ネズミが湧いてくるとは思えないわ!」ヘザーポーはそういいルークスに詰め寄った。
「たまに、庭にいるネズミとか、近寄ってきた鳥なんか食べるかな。」ルークスは声を細めた。ヘザーポーはふんと鼻を鳴らした。「鳥が自ら近寄ってくるわけないでしょ!」

ルークスはごめんと軽く謝った。その時、ルークスが肩を骨折していることを思い出したヘザーポーは訊ねた。「その肩、折ったの?」
ルークスはそっけなくうなずいた。「ちょっと高いところから落ちちまってな。」
「痛くないの?」
「もう慣れた。」ルークスはそう返すと、立ち上がり、話を変えた。「そういえばお前、サンダー族の見習いなんだって?」ヘザーポーは急に話題を変えられたので怪しんだが、しぶしぶうなずいた。「そうよ。それがどうしたの?」
「指導者は?」ルークスは聞いてきた。「あんたに言ってもわかんないわよ。」ヘザーポーは返す。
しかしルークスは目をいたずらっぽく光らせた。「もしかしたら俺も聞いたことある名前かもしれないだろ?」
ヘザーポーはぐっと目を細めた。ルークスは相変わらず馬鹿にするかのようにこちらを見ている。「ブルームーンっていう、青みがかった雌猫。」ヘザーポーはぼそっと言った。
「ブルームーン…」小声でルークスは名前をつぶやくと、ヘザーポーは馬鹿にされないように「とても素晴らしい指導者なのよ!冷静で知的で、常に公平に判断…」
「わかったわかった。」言い終わらないうちにルークスは何かを考えながらそういうと、ヘザーポーから少し離れ、再びヘザーポーに向き直った。

「お前、強くなりたいか?」
急に何なの?ヘザーポーはルークスのいい加減さに呆れてきた。
「そりゃあもちろん、立派で強い戦士になりたいわ。そのためにもブルームーン…」
「なら、これはどうだ?」またもルークスは遮ると、目にもとまらぬ速さでヘザーポーにとびかかり、後ろ足でヘザーポーの肩を蹴り上げた。ヘザーポーは衝撃で壁にぶつかった。
「なんなのよ!」ヘザーポーは唸った。
「甘いぞ、チビ。」ルークスの目はさっきと違って冷静だ。
ヘザーポーはよくわからなくなった。
「そんなんじゃ、戦士になれないぞ。」
「不意打ちで来るからよ!」ヘザーポーは返す。しかしルークスは低い声で返した。「敵がわざわざ『今から攻撃します』なんて言うと思うか?」
ヘザーポーはまたいらいらした。「何が言いたいの?」これ以上ばかにされたくない!

ヘザーポーは怒りのままルークスに突進していった。しかしルークスはかわすとヘザーポーの上に飛び乗った。ヘザーポーはじたばたすると、必死にルークスをふりほどいた。ルークスは次にパンチをしようと構えたが、ヘザーポーは瞬時に見抜き横へずれると、ルークスは勢い余って壁にぶつかりそうになった。ヘザーポーはふらついたルークスの骨折した肩に頭突きをくらわすと、バランスを崩しルークスは壁に思い切りぶつかった。ヘザーポーはルークスの首で爪を出した。

「どう?あまり私を__サンダー族を舐めないでほしいわね。」ヘザーポーは勝ち誇ったかのようにいうと、ルークスは鼻で笑い目にもとまらぬ速さで後ろ足をヘザーポーの腹に思い切り突き刺した。ヘザーポーは思わず腹を蹴られ思いきり奥へ吹き飛んだ。

「浮浪猫のことも馬鹿にしないでほしいもんだ。」ルークスは立ち上がった。
ヘザーポーはあまりの痛さに、しばらく動けなかった。
「心配いらない。一時的に痛いかもしれないが、死にはしない。」
ルークスはヘザーポーのそばまで来ると、その場で座った。

この猫はなんなの…?

「お前の指導者を馬鹿にしているわけじゃない。お前は、確かに戦士になる素質がある。少なくとも俺のパンチを見切った。まだ未熟なのにだ。」ルークスはいきなり語り始めた。

ヘザーポーは冷静になって考えた。
確かにルークスは肩を骨折しているし痩せこけているのに、まるで部族猫みたいに__なんなら、部族猫より強く素早い動きをしてくる。この猫は、今の私じゃ太刀打ちできなさそうだ。
「お前は先を読む力に長けている。しかし、まだ思うように自分の体を使えていない。」
ルークスは続けた。
「お前は俺のことをどうするつもりだ?」

ヘザーポーは一瞬きょとんとした。
そうだ、すっかり忘れていたけど、この猫は侵入者なんだ。

族長に言うつもりでいたが、ヘザーポーの気持ちに迷いが生じていた。
それをくみ取ったかのようにルークスは言った。「少なくとも俺はその辺の猫に負けない自信がある。」

ヘザーポーは目をぐっと細めた。「俺はお前に、ほかの指導者が教えてやれないような技なんかを教えてやれるぞ。」ルークスは低い声で言った。
「ただし、お前が誰にも話さなければの話だがな。」

ヘザーポーは考えた。
ルークスは確かに強い。肩を骨折しているけれど、それを悟らせないような技を使ってくる。しかも頭もいい。強くなれるためなら、いろんな技を習得したい…。
それに、痩せこけてケガをしている猫を、無理やり追い出そうとは思えない。いくら相手が強くても…。

「わかったわ。」ヘザーポーは言った。
「約束だ。」ルークスは目を細めていった。

窓から月の光が差し込める。ヘザーポーは目の前の雄猫に、誰にも言わないと約束を誓ったのであった。
強くなるためだもの、間違ったことじゃない…。ヘザーポーは必死に言い聞かせた。

私は、間違ったことなんかしていないわ。


***鱗片メモ***
ついに、浮浪猫ルークスの登場です(*´ω`*)
めちゃめちゃ長くなってしまった(笑)

骨折してるけどめちゃくちゃ強いし、なんなら薬草の知識もある…?
いかにも怪しい猫ですね!
ルークスはこの小説のカギを握る重要な猫の一人でもあるので、じっくり読んでみてください(*'ω'*)

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