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無色の世界で貴女は泣いた

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投稿 by Murre Mon Jan 30, 2023 10:22 pm

サンズドーナツ無色の世界で貴女は泣いた - Page 2 16565710
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投稿 by Murre Tue Jan 31, 2023 6:13 pm

グリーンシャドウ
シーサイドパールと弟、オリビンストーン
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投稿 by Murre Tue Jan 31, 2023 8:09 pm

✧10✧
「ハシュハシュキット!」
どこまでも続く暗闇の中にぼんやりと浮かぶ、淡い灰色の体。闇に支配されず、辛うじて生き延びていた命。
日食柄の雄猫は、そんな灰色の雌猫に音も無く近付いた。
     秘密
「何がハシュハシュなんだい?」
「ハシュ……」
小刻みに震えていた灰色の猫は、一度大きく痙攣したかと思うと、猫の声に驚き、目を見開いた。
「ミラージュファーだったかな?」
サンズドーナツは、驚く雌猫の表情をよそに、名前確認をした。
「え、えぇ……あなたは…?」
状況理解が追いつかない雌猫は、目をぱちくりとさせた。
「サンズドーナツ」
「何故生きてたの?」
ミラージュファーは、そう尋ねて後悔した。サンズドーナツと名乗った雄猫は、俯いた。
「ここにも生き残りがいる。弱ってる。母猫が必要だ」
サンズドーナツの視線の先には、闇の寒さに震える子猫。
「何故生き残ったか……」
サンズドーナツは、そう呟いてにやりと笑った。
「俺達のことを忘れたんじゃないかな、ジェットブラックは」
ミラージュファーは黒猫を直視せずに子猫に近づいた。
「大丈夫よ」
母猫は、毛並みと反対向きに子猫の背中を舐め、体温を上げ始めた。子猫の呼吸が次第に落ち着く。
「まだいるのかしら」
母猫の呟きに、サンズドーナツは耳をぴくりと動かした。その動作を見て、ありきたりな質問を投げ掛けたことにミラージュファーは再度後悔した。
「さあ。これからだな」
ミラージュファーは首を傾げる。
「まだ俺は、闇惑星を探索し始めたばかりだ。敵の影さえ見つけられないし、俺達が闇に飲み込まれなかった理由も解明出来てない」
灰色の母猫は、白い子猫を尻尾で温めながら頷いた。
「そうなのね、申し訳ないわ」
「俺は探索を再開する。貴女は来られるのか?」
「沢山歩くの?」
サンズドーナツは苦笑した。
「全ての縄張りを回るからな。他にも色を残した猫が生き潜めているかもしれない」
「そう」
ミラージュファーは考え込む表情になった。眉間に薄っすらと皺。
「私はサンズドーナツ、あなたについて行くわ。暗がりの中独りは正直怖いし、あなたが言った通り、この子には母猫が必要」
そう言ったミラージュファーの顔が曇った。
「私の子は…」
サンズドーナツは力無く首を振る。
「今のところは、見なかった」
微かな溜息が灰色の雌猫から漏れた。
「そうよね……」
サンズドーナツは、肩を落とす雌猫を一度見て、立ち上がった。
「俺は発つ。同じ場所で突っ立ってると、なんだか闇に呑まれた気がするからな」
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投稿 by Murre Tue Feb 14, 2023 6:52 pm

✧11✧
止まらない、止まらないー
脚を必死で動かしているけれど、何も掴む物が無く、目が乾燥するくらいの速さで体が移動していく。
彗星の速さを全身で纏ったかのような速さ。
止まらないー
「ぐへっ」
背中を強打し、目の前が真っ暗になる。脳みそ内は対照的な真っ白。
耳に久々聞いてこなかった“声”が飛び込んできた。
理解出来る。
もしかして、同種の猫?
眩みが次第に収まり、景色が分かるようになる。
私の身体は5本2分かれた細長い触手に包まれていた。触手はごわごわしていて、分厚くて、白い。
『死んでない?』
くぐもった声が再度聞こえた。触手の持ち主の体を辿ると、顔付近には、透明な、これまた分厚そうなガラスのようなものがはまっていた。ガラスの周りはごわごわしてそうな、ゴムのような素材。
「生きてる?」
私は謎の白に質問を質問で返した。
白は、驚いたような声を出すと、私の額を撫でた。
『生きてた!』
『それはよかった。直ぐにステーションに戻って来い』
がさがさという耳障りな音とともに、どこからか白の返事が聞こえた。白は了解、と誰かに言うと、背中に付いた紐を手繰り始めた。
ふわふわと微妙に浮かびながら、白は、宇宙に浮かぶ建物に近づいていく。手繰っている紐は、その建物に繋がっている。
「酸素足りてる?」
白は、室内に入ると、顔を前から後まで覆っていたマスクを外し、背中の箱を確認した。
それをどこかに繋ぐと、私の顔をじっと見た。
私は真っ黒い目を見つめ返し、頷いた。
室内に入って分かったことだが、随分と呼吸が楽になった。多分、彗星にしがみついていた時、急速冷凍された肺などの臓器が通常運転を再開したからだと思う。
「どこから来たの?」
黒髪の元白は、私に尋ねた。
私は首をひねる。
「惑星」
あそこの惑星は、月や太陽のように名称が無かった。ただ普通に存在していて、大地、や星レベルの通常名詞でしか呼ばれていなかった。
二本脚で立つ黒目黒髪は、困惑した表情になった。
「惑星?どの惑星を言っているの?」
私は分からず首を振る。黒目黒髪は肩をすくめると、私を抱き上げた。
「どこかから飛ばされてきた猫。不思議ね、こうして話せもするし」
狭い通路を曲がると、少し開けた広間に出た。その部屋には、ふわふわと浮かぶ黒髪黒目と同じ体のつくりをした生物が沢山、居た。
それぞれ、髪の色や目の色、背丈など個体差はあるが。
「どうしたの?その猫」
唖然と口を開けた金髪青目が言った。
「さっき無線で言った猫。彗星が通ったあと、物凄い勢いで飛んできたの」
金髪青目は目を丸くしながらも、私の額を五本の指付き前脚で撫でた。
「残ってる伝承のような出来事ね」
黒目黒髪がぼそっと呟いた。
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投稿 by Murre Sat Feb 18, 2023 10:39 pm

✧12✧
黒目黒髪は私を床に下ろすと(っていっても、ここの空間は宇宙と同じく、ふわふわ浮かぶので、私は床を触れることが出来なかった)、別室からぺらぺらとした薄い透明な物を持ってきて、前脚の平に貼り付けた。
黒目黒髪が分かれた前脚の先で、貼り付けたそれを操作すると、ゔぃんという音とともに、空気中に面が現れた。解読出来ないが、“文字”というものが浮かんでいる。
文字で埋め尽くされた画面が、ぱっと開き、出てきた面には黒目黒髪と同じ種類の生物の顔面が現れた。
ふわふわと移動していた私を、金髪青目が捕らえて、額を撫でた。
「伝承って何のこと?」
金髪青目は、黒目黒髪や緑目白髪など仲間に問いかけた。黒目黒髪は、画面の中の黒目黒髪と会話を終えると、前脚の画面を触って閉じた。
「貴方の国では聞いてない?惑星への打ち上げ伝説」
金髪青目は顔をしかめると、緑目白髪を見た。緑目白髪は、隣の茶目銅髪を見て頷いた。
「君は若い世代だから、廃れてきているのかな?」
この中で最も歳をとっている緑目白髪が、私から退きながら言った。
「確か、電子書籍に入ってたはずですよ」
黒目黒髪が、再度薄い物を着用して、前脚を忙しく動かす。
「ほら!」
私は再び宙に出され、茶目銅髪に抱かれる。
私も内容を覗き込もうと、首を伸ばす。茶目銅髪は、笑いながら私の顎の下を撫でた。
「おいおい、猫さん、君は話せるだけでなく、文字まで読めるのか」
笑い飛ばすような、軽い口調。私は茶目銅髪を横目で見、画面に視線を戻した。
「けど、この猫が伝承の猫だったら、それは容易なはずよ」
「何百年も前の話だが」
黒目黒髪の真剣な言葉に、緑目白髪が目を細めて呼応する。
黒目黒髪は画面を持ち歩き、金髪青目と茶目銅髪が見えるところに突きつける。
「読んで。記事の一部だけど、確かなの」
茶目銅髪は目を逸らすと、私の頭をぐりぐりと撫でた。
「知ってる。知ってるよ。国では学校に話が残ってた。紙の図書館の時代に」
「懐かしいなぁ、今じゃ紙を触れることさえ博物館で、だからなぁ」
茶目銅髪の、不機嫌な言葉に、緑目白髪が斜めの方向を見て頷いた。
「こんな話があったのね。この猫とぴったり一致してる」
読み終わった金髪青目が、黒目黒髪と私を交互に見て、何度も目を丸くした。
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投稿 by Murre Sun Feb 19, 2023 11:08 pm

✧伝承✧

これは、数百年前からの口承話を、文字に表し、再編集したものである。

宇宙が全面理解されてから数十年
最初から人間が行くのは危険だと人間は考えた。
行き先はどこかって?
太陽系の外側の、銀河系の端を通り過ぎた、別の銀河の恒星中心の天体空間。
望遠鏡以上能力を持つ、遥か彼方の光や熱を感じ取る、宇宙全解明時に使われた機器、名付けて“超鏡”を使い見つけられた、完璧環境の惑星。
しかし、そこへ行くには計り知れない程の時間と忍耐を持ち合わせる必要がある。また、月や周辺の惑星の移住は成功していたが、寿命を超えた距離での移住は、未だ行われていなかった。
つまり、実験が必要とされた。
我々は、安価で繁殖能力が強く、変化を捉えやすい鼠を、第一の実験生物として登用した。
だが、鼠が例の惑星に到達したとしても、この地球に伝える手段は無い。
そこで、複数科の科学者達が集まり、突飛な提案を可決した。
動物人工知能
これは、生物学の発展に繋がり、尚且この宇宙産業でも活用出来る、画期的な方法とされ、世界が盛り上がった。
そうと決まれば、自分の名声を手に入れるため、資本家がこぞって資金提供をし、研究は開始された。

不思議なことに、全てが順調だった。まるで、地球の環境破壊に恐れをなした、地球創造の神々が、運命の糸を繋ぎ変えたかのように。

第一実験者は二十日鼠だった
白鼠は人間と会話、までとはたどり着かなかったが、人間の会話を聞き、理解し、行動に移せるまでの遺伝子組換え等が行われ、成功した。
その鼠ら数匹は、春の太陽と反対側の方向へ送り出された。
最先端の、体を半永久冬眠状態に保つ、冷凍容器に入れられて。

燃料を最小限に抑えられた、白い小型ロケットから、信号が発信されることは無かった。

科学者は、実験台を間違えたと頭を抱えた。
次に、昔から賢いと一目置かれている犬に焦点が当てられた。
犬は人間に従順に動き、いつしか会話目前までの言語能力まで高められた。
命令に完璧に呼応出来るのは勿論、自らの意志を本能的に考え、動きで返答する段階まで成長したのだ。さらに、日が経つごとに、人間の要求に対する返事に、声が漏れるようになった。

犬の学習成功に、地団駄を踏んだ人間らが動き始めた。犬へ能力を教え込んでいた代表国と、永らく対立・競争てきた、こちらも資本を充分に兼ね備えた大国であった。

数匹の猫が用意された。
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投稿 by Murre Sat Mar 04, 2023 2:34 pm

✧13✧
私は、耳に流れてきた伝承の読み聞かせを聞いて、目眩を感じた。
私達、部族猫のルーツが分かってしまって、自分の血が気持ち悪くなるような、そんな不快感に底から襲われた。
私達は、この生物の祖先に教育されこまれた祖先を持つ。
そして、元々は、この窓から見える青緑黄土色星から放たれた祖先を持つ。
考えたことなかった、過去。
私達があちらの惑星で何気なく使っていたこの言葉たちは、時間の経つうちに、猫自身によって使われ始めたと、勝手に思い込んでいた。
遠い“故郷”から洗脳され手に入れたもの、と知らず。
洗脳主のこれらの生物から離れたくなるが、密閉空間のここ。爪を出しても出ることが出来ない。
直立の生物達は、私に何かを差し出した。丸い金属の容器に入った、ぐちゃっとしたもの。
ブルーミラーが好んで食べていた魚の匂いがした。
故郷の惑星の景色が心の中にぶわっと広がり、郷愁の念が噴水のごとく湧き上がる。
帰りたいー
そう思い、あの惑星にはもう住処がないことを思い出す。
耳を後ろから押さえ、頭を抱え込むような体勢になる。生物達は慌てふためくような声を出し合っている。
黒い宇宙に浮かぶ、真っ黒な惑星。故郷の惑星の末路に苦しくなる。
「食べて」
黒目黒髪が私の塞いだ耳元に囁いた。私は首を振る。
どれくらい蹲っていたのだろうか。多分、数分。
抱え込んだ顔に、温かな白い光が射し込んだ。
「おいで。気分が良くなると思う」
黒目黒髪の声が柔らかく、優しくなる。
私は重い腰を上げ、ガラスのはまった窓を覗く。
宇宙の神秘だった。
太陽の光が、目の前の惑星に遮られ、まるで、そう。
日食が起こっていた。
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