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戦士になりたかった、看護猫になりたかった、でも叶わない夢だった

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戦士になりたかった、看護猫になりたかった、でも叶わない夢だった Empty 戦士になりたかった、看護猫になりたかった、でも叶わない夢だった

投稿 by サーモンテイル Sat Oct 15, 2022 12:57 pm

わー!初めましてサーモンテイルと申します〜。
6年くらい前からうぉりあのホームページに小説を載せるのが憧れでした。
駄文ですがよければ読んでください〜

[設定]

森。中央に開けた野原がある。
森の中には単に森、湿地、岩場、人間の建物が崩落した地域があり、それぞれに猫の部族がいる。

春の一族(スプリング)
森に住む一族。
木登りや泳ぎを得意とするバランス型。
グレートエルムという大きなハルニレの木があり、一族の集まりなどはそこでする。

夏の一族(サマー)
湿地に住む一族。
泥と水に囲まれているため、足の力が強くしなやかで短毛の猫が多いスピード型。
ビッグイレックスという大きなモチノキがあり、以下略

秋の一族(オータム)
岩場に住む一族。
周りが岩のため、足腰が強く、がっちりとした体格の猫が多いパワー型。
クリフロックスという岩でできた崖があり、以下略

冬の一族(ウィンター)
人間の建物が崩落した地域に住む一族。
瓦礫から身体を守るため、毛足の長い猫が多い防御型。
モシーラブルという苔に覆われた大きな瓦礫があり、以下略

四季の一族(シーズン)
死んだ猫がたどり着く一族。
争いも無く、のんびり仲良く暮らしている。
「シーズン様」と慕われている。


族長 一族を束ねる長。
副長 族長を支える。
看護猫 怪我をしたり病気をした猫の世話をする。原作とは違い、つれあいを持てる。持てる子供は、1世代だけ。それ以上生まれた子供は殺さなければならない。
戦士猫 一族を守ったり、狩りをしたりする猫。
見習い 戦士や看護猫になる前の見習い期間の猫
子猫 見習いになる前の猫。生後6ヶ月で見習いになる。
母猫 子猫を身籠っている、または育てている猫
長老猫 戦士や看護猫を引退した猫。
浮浪猫 どこの部族にも属さない猫。少し離れたところに、浮浪猫の群れがある


ざっっっくりとした位置関係。地図は適当。地図記号は使ったけど適当すぎて気にしないでください、戦士になりたかった、看護猫になりたかった、でも叶わない夢だった 813afd10
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戦士になりたかった、看護猫になりたかった、でも叶わない夢だった Empty 主な登場猫紹介

投稿 by サーモンテイル Sat Oct 15, 2022 12:59 pm

春の一族

族長 メロンスター(スイカ星)
黒と赤の縞模様と斑をもつ、細身の雄猫。
顔の右半分の毛がない。

副長 シャドウペルト(暗がりの毛皮)
濃い灰色と黒の毛を持つ雄猫。大柄。
弟子は涙の様な斑点模様がある、黒い雄猫のティアーポー(涙の足)

看護猫 グラスフェザー(草の羽)
白い毛に青みがかった灰色の虎柄をもつ、華奢な雄猫。弟子は濃い灰色に黒い線が1本入った大柄な雄猫のパインポー(松の足)

戦士猫 ホワイトレオ(白いライオン)
ライオンの様なたてがみを持つ、大きな白猫。
弟子は小柄な三毛柄の雌猫のチェリーポー(桜の足)

メイプルリーフ(カエデの葉)
焦げ茶色の縞模様をもつ、オレンジ色の雄猫。

ウォンデッドフェイス(傷ついた顔)
顔と体に傷跡がある、黒い毛の雄猫。片耳と尻尾が無い。

ブライトフラワー(明るい花)
三毛柄の雌猫。チェリーポーとパインポーの母。

ナイトシャイン(夜の輝き)
黒い雄猫。チェリーポーとパインポーの父。

スパロウビーク(スズメのくちばし)
黒と白の雄猫。弟子は茶色と白のぶち模様の雌猫のスマイルポー(笑う足)

母猫 フラワープール(花の池)
淡いオレンジ色のとら柄の雌猫。
マダーキットとマロウキットの母親。
シャドウペルトのつれあい

リーフフロスト(霜のかかった葉)
白みがかった三毛柄の雌猫。
メイプルリーフのつれあい


夏の一族

湿地に住む一族。
泥と水に囲まれているため、しなやかで短毛の猫が多い。

族長 マッドスター(泥の星)
黒い脚を持つ、茶色の雄猫。

副長 ロングウィスカー(長いひげ)
青い目を持つ、ショウガ色の雌猫。

看護猫 レッドアイズ(赤い目)
アルビノの雄猫。弟子はウィロウポー(柳足)

戦士猫 ブルーペルト(青い毛皮)
青みがかった灰色の雄猫。

スクワーレルテイル(リスのしっぽ)
茶色の毛を持つ雌猫。


秋の一族

岩場に住む一族。
周りが岩のため、足腰が強く、がっちりとした体格の猫が多い。

族長 シャイニングスター(輝く星)
金色と濃いショウガ色の縞模様を持つ雌猫。

副長 タイガーファー(トラの毛皮)
緑の目を持つ、トラ柄の雄猫。
弟子はモンキーポー(猿足)

看護猫 ピオニーペタル(牡丹の花びら)
琥珀色の目をした白い雌猫。

戦士猫 ストーンクロー(石の爪)
灰色と濃い灰色のぶち柄の雄猫。

エレファントファング(象の牙)
灰色と白色の大柄な雄猫。


冬の一族

人間の建物が崩落した地域に住む一族。
瓦礫から身体を守るため、毛足の長い猫が多い。

族長 スノウスター(雪の星)
白に淡い灰色の斑をもつ雄猫。

副長 ポピーシード(ケシの実)
赤茶色とオレンジ色の縞模様の雌猫。

看護猫 グレーミスト(灰色の霧)
緑色の目をもつ、淡い灰色の雄猫。

戦士猫 フローズンクラウド(凍える雲)
淡い三毛柄の雌猫。

シャイニングテイル(輝くしっぽ)
琥珀色の目を持つ、サビ柄の雄猫。弟子はアップルポー(りんご足)


最終編集者 サーモンテイル [ Tue Nov 15, 2022 11:36 pm ], 編集回数 1 回
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投稿 by サーモンテイル Sat Oct 15, 2022 1:01 pm

プロローグ

「もう2度と、俺たちの縄張りに入るな!!」
メロンスターが唸りながら叫ぶ。だが、当の相手はフンと鼻を鳴らし、
「また来るさ、俺たちの想いは本物なんだから」
と言って踵を返して去っていった。
「メロンスター、あいつらは本当にまた来るんでしょうか」
一人前の名を貰ったばかりのうちに師を失ったグラスフェザーが不安そうに言う。
「でもあいつらの仲間も相当な痛手を負ったはずです。来るまでには、相当な時間がかかるでしょうし、それまでには俺たちも策を講じましょう」
耳が裂けたシャドウペルトが、自分に言い聞かすように、無理矢理落ち着いた声で言う。
「ああ、だが敵の数は計り知れない。いつ第二陣が来るか分からない。
——さぁ、先のことを心配するより、この戦いで失った仲間を弔おう。」
グレートエルムの前には、沢山の猫の遺体が並んでいた。戦士や見習い、看護猫、長老猫、老若男女様々な猫がそこへ並び、傷を負った猫たちがそこを囲んでいる。
新しく生まれた子猫——スマイルとティアー——にも名前を授けなければ。それに、ブライトフラワーの子供もじきに生まれるだろう。
指導者を失った見習いには、新たな指導者をつけなければならないな。悲しみに浸っている暇はない。
戦いの悲惨な様子を頭から締め出し、メロンスターは一族の元へと向かった。
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投稿 by ディノウィング Sat Oct 15, 2022 3:23 pm

はじめまして!ディノウィングです
よろしくおねがいします!

サーモンテイルさんの物語の表現?がわたし的にはけっこう好きです!
設定も細かくて、、すごいなぁ、、
続き、がんばってください!

ディノウィング
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戦士になりたかった、看護猫になりたかった、でも叶わない夢だった Empty Re: 戦士になりたかった、看護猫になりたかった、でも叶わない夢だった

投稿 by サーモンテイル Sat Oct 15, 2022 6:59 pm

ディノウィングさん、初めましてー!よろしくお願いします!!
そう言っていただけて嬉しいです〜!!!本当に、、ぶわっ。゚(゚´ω`゚)゚。(感動の涙)

ぼんや〜りとあらすじは出来てるので、完結できるように頑張ります!!
稚拙な文ですがこれからも読んでくれると嬉しいですーーー!
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投稿 by サーモンテイル Sat Oct 15, 2022 7:09 pm

第一章

「ねえパインキット!!命名式だよ!誰が指導者になるのかなあ?何するのかなあ?パインキットは看護猫になるんだっけ?わたしはねぇ、部族でいっちばんの戦士になるんだ!!それでね、部族の役に立ってね、メロンスターとか、シャドウペルトとかにね、褒められちゃうの!!」
目を輝かせながら喋り通すチェリーキットの隣に座るのは、弟であるパインキットだ。
「ぼくは、看護猫として一族の役に少しでも立てれば満足かな」
「もう、パインキットってば!!目標は高くって、お父さんも言ってたでしょ!」
「チェリーキット!パインキット!もう命名式が始まるわよ!!そんなお喋りな子猫はシーズン様も名前を授けられないわ」
母親のブライトフラワーの一言で、2匹の子猫はぴたりと黙った。もとより、うるさくしていたのは片方だけだが。

「これより命名式を始める!!自分で獲物を捕まえられる年齢のものは、グレートエルムの下に集まるように!!」
メロンスターの召集で、一族の猫たちはハルニレの大木の下へと集まる。
メロンスターの軽い挨拶があったが、期待と緊張で話がろくに入ってこなかったチェリーキットは、パインキットにつつかれてようやく我に返った。
「ねえ、チェリーキット、呼ばれてるよ」
「えっ?あっ、ああ!」
素っ頓狂な声を上げたあと、慌ててメロンスターの元へと駆け寄ると、メロンスターは穏やかに笑いかけてくれた。
ふっと緊張がとける。メロンスターの笑顔には緊張を緩ませる力でもあるのだろうか。
メロンスターは四季の一族を見上げ、もう一度チェリーキットに向き合うと、
「チェリーキット!お前は戦士になるまでの見習いの間、チェリーポーという名前になる。
指導者の教えをよく聞き、これから訓練を積むこと。無事に戦士になれるように、シーズン様も見守ってくれるだろう」
わっ、と歓声が上がる。やったね、チェリーポー!よろしく、チェリーポー!と真っ先に声をかけたのは、数ヶ月早く見習いになったスマイルポーとティアーポーだ。
「ホワイトレオ!!お前の経験と強さで、チェリーポーを導いてやってくれ。
チェリーポーの指導者に、ホワイトレオを任命する!!」
呼ばれたホワイトレオは、慣れた動きでチェリーポーの元へと近寄る。
「よろしく、チェリーポー。君の指導者になれて嬉しいよ」
「よ、よよよよよよろしくおねがいしますっっ!!!」
鼻面を触れ合わせ、暫く見つめていると、ホワイトレオに下がるように促される。
そうだった、パインキットもいるんだった。
指導者と共に少し後ろに下がると、メロンスターに呼ばれてパインキットもこちらへやってきた。
「パインキット!お前は看護猫になるまでの間、パインポーという名前になる。
指導者の話に耳を傾け、沢山の知識を身につけること。シーズン様も、沢山のことを君に授けることだろう」
再び歓声があがる。チェリーポーとは対照的に、落ち着き払った様子で指導者を待つパインポーだが、目には興奮の色がちらついている。
呼ばれるまでもなく前にでた看護猫に、メロンスターは嬉しそうに微笑む。
「グラスフェザー、お前もとうとう指導者だ。
君の知識と賢さで、パインポーを導いてくれ。
パインポーの指導者に、グラスフェザーを任命する!!」
ぱあっと目を輝かせたグラスフェザーは、パインポーよりも興奮している様子でパ駆け寄ると、挨拶もそこそこに鼻面を触れ合わせた。
「よろしくね、パインポー!はじめての弟子なんだ、すごく嬉しいよ!!」
「こちらこそよろしくお願いします、師匠」
2匹が後ろへ下がるとメロンスターは解散の言葉を話し、命名式は終了となった。

これからどんな事をするのだろう。期待で胸を膨らませながら、チェリーポーは指導者の後を追った。
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投稿 by サーモンテイル Sat Oct 15, 2022 7:20 pm

あ、1箇所誤字ありますね、、
「パ駆け寄ると」のパが要らないです。パ駆け寄るってなんやねん((
これからも誤字脱字あるかも知れませんが生暖かく見守ってください〜
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投稿 by Murre Sat Oct 15, 2022 8:42 pm

サーモンテイル wrote:あ、1箇所誤字ありますね、、
「パ駆け寄ると」のパが要らないです。パ駆け寄るってなんやねん((
これからも誤字脱字あるかも知れませんが生暖かく見守ってください〜
右下の……押すと編集できますよ〜
つぶやきにも書きましたが、マァーラーフェザーです!よろしくお願いしますm(__)m
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投稿 by サーモンテイル Sat Oct 15, 2022 8:59 pm

はわ、、本当だ、編集の項目ありますね!!説明見ないで成り行きでやってたので、、勉強し直してきます(
マァーラーフェザーさん、よろしくお願いしますー!
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投稿 by サーモンテイル Sun Oct 16, 2022 1:18 pm

第二章

「ホワイトレオ!!今日は何をしますか?訓練?狩り?パトロールですか???」
ホワイトレオの周りをうろちょろと駆け回るチェリーポー。ホワイトレオはそんな彼女を尻尾でたしなめ、穏やかに笑いかけた。
「そうだな、今日は縄張りの中を見て回ることにしよう。狩りの場所や境界線も知らなきゃならないしな。」
「やったあ!!!キャンプの外に出られるんですね!!もうずーーっと憧れてたんですから!!」
ホワイトレオは、ふっと笑って頷くと早々に歩き出した。慌てて追いかける。
暫く歩くと、ホワイトレオが歩く速度を緩め振り返った。
「さあ、ここら辺に何があるか分かるか?」
チェリーポーは首を捻り、知りませんと答えた。だって、キャンプから出るのは初めてなんだから、知らなくて当然じゃない?
ホワイトレオはかぶりを振った。
「匂いを嗅ぐんだ。此処がどういう場所か、他に猫はいるか、獲物はいるか、全て匂いに情報が詰まっているからね」
そうだ、これは訓練の一つなのだった。それに気づけなかったわたしって、何て馬鹿なんだろう!!
チェリーポーは顔を赤らめ、改めて空気の匂いを嗅いだ。辺り一面の森の匂いにまじり、かすかに水の匂いがする。
「小川、ですか?」
「正解だ、良くやった。少し行けば小川がある。魚もいるし、カワセミもよく来るから、狩場としては丁度いいんだ。」
説明を終え、再び歩き出すホワイトレオを追うと、説明通り小川が流れていた。
「ここから、夏の一族との境界線の方まで流れているんだ。そっちにも、行ってみよう」
サマーの近くまで行けるんだ!!他の部族がいるところと考えるだけで、心が弾む。
途中途中でホワイトレオの説明を聞きながら、縄張りのはじの方まで歩いて行く。
「ここら辺で、匂いが変わったろう?」
「はっ、はい!ええと、泥、、?あっ、サマーの湿地の匂いですか!?」
「その通り。もう少し下ってみようか」
もしかしたら、夏の一族の猫と会えるかもしれない!!期待に胸を膨らませながら、ホワイトレオの大きな体を追う。
その時、突然ホワイトレオが立ち止まった。
「は、春の一族の猫か!?大変なんだ!!!浮浪猫の集団が、またやってきて、俺の仲間が襲われてるんだ!!!」
灰色の猫が、少し先で叫んでるのが聞こえたのだ。
「浮浪猫の数匹がそっちの方に逃げてるんだ!!俺たちも他の猫で手一杯で、そっちで何とかしてくれ!!」
浮浪猫?そんなに手こずる相手なの?
「わかった!!伝えてくれてありがとう!」
ホワイトレオは灰色の猫に礼をいい、素早くチェリーポーに向き直った。
「チェリーポー、パトロール隊を呼びに行ってくれ。東、此処から左に真っ直ぐ行ったところにいる筈だ。できるか?」
初めての任務!!!しかも、命がかかってる!
「任せてください!!!!!」
そう言うや否や、言われた方向へ走り出した。
息ができないほどに全力で。
酸素が回っていない感じがする。視界が暗くなっていく。それでも構わず走り続けた。
「チェリーポー!?どうしたんだ、そんなに急いで!ホワイトレオはどうしたんだ?」
真っ先に気づいたスパロウビークが、目を丸くして訪ねた。よかった、パトロール隊に会えた!!
安心して、膝から崩れ落ちたチェリーポーを、慌てて支えに来てくれたのは、副長のシャドウペルトだ。
「何があったんだ?話せるか?」
そうだ、浮浪猫のことを伝えなくては。
「な、夏の一族の、縄張りに浮浪猫が入って、こちらへ逃げてくるそうなんです!!ホワイトレオが、応援を呼ぶように、って」
シャドウペルトの顔がさっと青ざめる。
不思議に思い、他の猫の方も見るが、一様に青ざめている。
どうして?何の訓練も受けていない浮浪猫が、そんなに怖いの?
「どうしたんですか?浮浪猫と、何かあったんですか?」
「いや、それは後だ。とりあえず急ごう。チェリーポー、一緒に来て、何かあった時に伝令を頼めるか?」
好奇心に耐えきれず訪ねたが、はぐらかされてしまった。
でも、また任務!!先輩たちの役に立ったら、早く戦士になれるかも!!
大きく息を吸い込み、パトロール隊と一緒に再び走り出す。

でも、どうして皆んなは浮浪猫をそんなに恐れるのだろう?
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投稿 by サーモンテイル Wed Oct 19, 2022 12:07 am

三章ちょい長くなるかもしれんので小分けで。前半。
この話自体二十五章くらい続きそうなんで気長に読んでください。原作も一巻で二十五章くらいなんでそこまでに収めたい、、!



第三章

「グラスフェザー!グラスフェザー!」
パインポーがグラスフェザーに薬草の種類を教わっていると、オレンジ色の猫が看護部屋に飛び込んできた。
「やあ、メイプルリーフか。またイバラの棘でもささったのか?」
グラスフェザーは揶揄うように言うが、メイプルリーフはぶんぶんと首を横に振る。
「ちがうんだ!パトロール隊と浮浪猫が今戦っているんだ!!きっと怪我して帰ってくるから、薬草の準備を頼めって、シャドウペルトが」
戦い?そういえば、チェリーポーが今日は縄張りの散策へ行くって言ってたっけ。鉢合わせていないといいけれど、、。
小柄な姉のことが頭をよぎる。浮浪猫がどれだけ強いのか知らないが、まあ戦士猫が沢山いるなら大丈夫だろう。
そう思い師を見れば、さっと青ざめていた。何でだろう?浮浪猫はそんなに強いのだろうか?
そう思ったのも束の間、
「パトロール隊が帰ってきたぞ!!!!」
その声の方を覗けば、チェリーポーが血を流しているのが見えた。
「チェリーポー!?」
パインポーが驚いて声を上げると、チェリーポーはバツが悪そうな顔をして、戦士たちの後ろへ隠れてしまった。
「パインポー、僕は戦士たちの治療をするから、チェリーポーの傷を頼めるかい?さっき教えた通りに、そうそう、その薬草を噛んで傷口に擦り込んでくれ。頼んだよ」
先程学んだばかりの薬草と治療法を思い出し、チェリーポーの方へ向く。
「どうしたの?傷だらけじゃないか。深くはないみたいだけど」
「茂みに隠れてろって言われて、飛び込んだ先がイバラの茂みだったの。はぁーあ。先輩たちが浮浪猫を追い払って怪我をしたっていうのに、私はイバラで怪我をしたのよ?戦いに加われないのは仕方ないけど、もう、やんなっちゃう」
一を聞けば十答えるお喋りな性格は、見習いになっても相変わらずだな。昔は見習いになったらおしとやかで勇敢になるんだ!なんて言っていたものだが、やはりうるさいほうが姉らしい。
パインポーはおかしくてひげを震わせた。
「いだっ!!」
「ごめん、染みるよね。でもこの傷なら、すぐに治ると思うよ」
一通り終わり指導者の方を見ると、最後の1匹の手当が終わるところだった。
「よし、と。皆んなほとんどかすり傷だね、安心したよ。あ、パインポーも出来たかい?どれどれ、、おっ、いいじゃん。お疲れ様、上出来だよ。」
「グラスフェザー、浮浪猫って何なんですか?何で皆んなこんなに恐れてるんですか?今回だって簡単に追い払えたじゃないですか?」
チェリーポーが単刀直入に質問する。確かに僕も気になっていたけれど、、。こんなにざっくりと聞けるのは姉の良いところでもあり悪いところでもあるな、と一人で納得していると、グラスフェザーが口を開いた。
「はは、直球だね。ううーん、僕はあんまり話を順序立てて話せないし。どう思う、ウォンデッドフェイス?」
グラスフェザーは同期であるウォンデッドフェイスに責任を転嫁した。いきなり話題を振られた彼は、「え、おれ?」という顔をしたが、すぐに立ち上がった。
「こんなところじゃなんだから、外に出よう。スマイルポーとティアーポーも呼んでくれ。話してやる」
チェリーポーと一緒に、獲物置き場にネズミを運んでいた2匹を呼びに行き、ウォンデッドフェイスの元へと駆けた。
「それで、何があったんですか?」
チェリーポーが再び尋ねる。
「お前たちが生まれる前の話だ。
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投稿 by サーモンテイル Wed Oct 19, 2022 11:37 pm

(続き)

ここから少し離れた所に、浮浪猫の集団がいるのは知っているか?そうそう、〈二本足〉の住処の近く。そこの猫が、縄張りを乗っ取りに攻め込んできたんだ。
戦士になる訓練も受けていない猫だから、さほど心配もしていなかった。
でも、部族と渡り合えるくらいには数が多く、更に強かった。ろくに栄養も摂れていないような、痩せた猫でさえ、戦士と互角に渡り合えるほどだったんだ。
戦いは長引いた。すぐ終わると、被害もないと、そう思い込んでいた。考えを改めなければならなかった。
時折、浮浪猫が撤退することがあったが、直ぐに戻ってきた。きっとその時に作戦でも立てていたんだろうな。
そして多くの猫が命を落とした。
おれはまだ見習いだった。同期のグラスフェザーも、浮浪猫が撤退した隙に一人前の名前を授かったばかりだった。
そんなまだ未熟な猫を沢山残して、指導者は死んでいった。おれの妹も、浮浪猫に殺されたんだ。
あいつ—おれの妹—はおれを見て言ってたんだ。お兄ちゃん、助けて、って。でもおれは逃げたんだ。だって、おれが戦うより、戦士を呼んできた方が良いと思ったから。でも遅かった。戦士は他の敵の相手で手一杯だったし、戻ってきた時には息絶えてたよ。
浮浪猫は重要な猫を知ってるみたいだった。つまり、看護猫とか母猫とか、今後部族を復興していくのに大切な猫を中心に殺していったんだ。本当に部族を滅ぼすつもりだったんだろう。
浮浪猫のリーダー格の猫たちがほとんど死んだ時に、戦いはようやく終わった。
だがあいつらは言ったんだ。また来ると、想いは本当だから、と。
いつかまた、もしかしたら近いうちに来るかもしれないんだ。
誰もがあの悲劇を覚えてる。
一面の血の海は目に焼き付いてるし、猫の悲鳴や断末魔は耳にこびりついてる。墓地の腐臭もまだ鼻に残ってる気がする。
ああくそ、上手く伝えられない。でも、恐ろしいことだったことに間違いはない。

グラスフェザーのやつ、おれもそんなに順序立てて話せないの知ってて任せただろ、、。まあ、でも、これでおれたちが浮浪猫を恐れる理由が分かったろ。満足か?」
ウォンデッドフェイスの話が終わった。見習いたちは静まり返っている。何せ、壮絶な話だったと共に、大人たちが浮浪猫を恐る理由、他の部族より春の一族が少し猫の数が少ない理由(昔初めて大集会に行ったスマイルポーたちに聞いた話だ)が暴かれたのだ。
最初に沈黙を破ったのは、もちろんお喋りな彼女だ。
「じゃあ、今日戦ったのも、その浮浪猫の仲間なんですか?もう魔の手は迫っているんですか?」
「そうかもしれないな。サマーの方から逃げてきたっていう猫だから、偵察に来た下っ端だったのかもしれない。強い奴らはきっとまだ戦ってただろうから。
だが、偵察が来ているんだ。戦いが近いことは間違いないだろうな」
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戦士になりたかった、看護猫になりたかった、でも叶わない夢だった Empty Re: 戦士になりたかった、看護猫になりたかった、でも叶わない夢だった

投稿 by サーモンテイル Sun Nov 13, 2022 1:08 pm

久々の更新です。
長いですが分けるのも面倒なので、お付き合いいただければと思います。

第四章

ウォンデッドフェイスから浮浪猫の話を聞いて、より一層やる気が出てきた。訓練をいっぱい頑張って、部族の役に立たなくちゃ!!
「おはようございます、ホワイトレオ!今日は何をしますか!?」
丁度寝床から出てきて顔を洗っていた指導者のところへ駆け寄る。
「おはよう、チェリーポー。早起きなんだな、偉いぞ。
今日はスマイルポーとティアーポーと一緒に狩りの訓練をするんだ。俺はスパロウビークを呼んでくるから、お前は見習い2匹を呼んできてくれ。」
「シャドウペルトはいいんですか?」
「彼は最近見つかった浮浪猫の形跡の件で忙しいんだ。だから、俺とスパロウビークで教える。
ほら、早く行きたいんだろ?きっとまだ寝てるから、叩き起こしてこい」
そう言ってにかっと笑う指導者に、こちらもにかっと笑い返して、もときた道を走って引き返す。
見習い部屋に飛び込んで、どうせパインポーとスマイルポーとティアーポーしかいないしと思い、お構いなしに大声で起こす。
「おきてーっ!!!!!!!!!!!!!!!!訓練の時間だよ!!!!!!!!!!!!」
ティアーポーは飛び起き、スマイルポーは目を丸くし、パインポーは眠そうな目を擦りながら欠伸をした。よし、みんな起きた。
「ホワイトレオに起こしてこいって言われたの。ほら、行くよ!!」
ティアーポーとスマイルポーを引きずり出し、指導者の元へと急ぐ。
ごめんパインポー。でも早起きはいいことだもんね。
「ホワイトレオ!!起こしてきました!」
「ありがとう、こっちも起こしてきたよ」
ホワイトレオの横には、眠そうなスパロウビークが立っていた。
「君たち、いくらなんでも早すぎだよぅ、、
ホワイトレオさんも何でそんな早く起きれるんすか、、」
「熟練した戦士は早起きが基本なんだ。ほら、行こう」
歩き出した指導者を追って、見習いたちも歩き出す。チェリーポーにとっては初めての狩りだ。
ワクワクして歩いていると、あっという間に狩場に着いた。
「よし、じゃあスマイルポー、狩りをする時のコツはなんだ?」
スパロウビークが自分の弟子に聞く。
「はいっ、ええと、姿勢を低くして、音を立てずに届く位置まで獲物を待つこと、、ですよねぇ」
「はいはい、風下にいるのも重要ですよね!」
スマイルポーが答え、ティアーポーが更に補足する。すごいなぁ、私も頑張らなきゃ!!
「正解だ、よくやった!じゃあチェリーポー、何で風下にいなきゃいけないのかわかるか?」
「はいっっ!えっと、えーと、、」
風下?ってことは、風が吹いている方の下で、正面から風を受けるってことよね?獲物の方が風の方にいる?じゃあ、
「獲物の匂いがよく届くように、ですか?」
「うーん、それもあるな。」
違うらしい。ううーん、難しい!
首を地面に突きそうなくらい捻っていたら、ホワイトレオが笑って答えを言ってくれた。
「俺たちの匂いが獲物に届いて、バレないようにするためだ。わずかな匂い、わずかな音でも気づかれるからな。覚えとくんだぞ」
「なるほど!!!!わかりました、絶対覚えます!!!!」
言われてみれば、確かにそうだ!!もう、何でわかんなかったんだろう!!
「じゃあやってみよう。ほら、スマイルポー、ティアーポー、チェリーポーに見せてみろ」
「「はいっ!!」」
2匹は鼻をひくひくさせた後、さっと屈んだ。
スマイルポーは木の根っこにいるハタネズミ、ティアーポーは茂みの近くにいるハタネズミをそれぞれ狙っているようだ。
音を立てないように息を潜めていると、2匹はじりじりと動き出した。ハタネズミとの距離はどんどん近づいていく。
木の根にいるハタネズミが顔を上げた瞬間、2匹は同時に飛び出した。
スマイルポーはハタネズミを掬い上げると、木の根に叩きつけて首を噛みとどめを刺した。
一方ティアーポーは、尻尾を鉤爪で掴もうとしたが逃げられてしまっていた。
「すごい!!」
「よくやったぞ!!!
スマイルポー、いい動きだった。
ティアーポーは躊躇いすぎだな。躊躇わずに掴むか、ネズミの上に着地して押さえ込め。」
2匹ともいい動きだと思ったのに、やっぱり磨くところはあるらしい。難しいのね!私にも出来るかな?
「じゃあ、チェリーポーもやってみようか」
「はっ、はいっ!!」
素っ頓狂な声を上げてしまい、恥ずかしさで体が火照る。
見よう見まねで、獲物を嗅ぎ分けて身を屈める。
確か、尻尾も腰も落としてたっけ。尻尾と腰が上がらないように注意する。
狙いは落ち葉の近くにいるネズミだ。
一歩、一歩、慎重にネズミに迫る。
まだ私には気づいていない様だ。
これくらいなら届くかな。
後ろ足に力を入れ、ネズミ目がけて飛び出した。
しかし、ネズミ1匹分届かず、着地した時には遠くに走って逃げていくネズミが見えた。
なんて難しいんだろう!!
失敗した恥ずかしさで耳が熱くなるのを感じる。
「惜しかったな。でも大丈夫、最初はそんなもんだ。もうちょっと待つのが大事だな。」
ホワイトレオが微笑む。
「惜しかったね!!すごいよ、初めてなのに!
僕なんて、何回やっても逃げられちゃう」
「ティアーポーは心配しすぎなのよぅ。やぁ、チェリーポーはすごいねぇ!きっと今日中には獲物を取れる様になるねぇ」
「ありがとう!でも、やっぱり2匹の方がすごいわ。だってとっても格好よかったもん!!」
「ほら、喋ってると日が暮れちまうぞ。3匹とも、もっかいやってみろ。それで今日はお終いにしよう。」
スパロウビークの注意を受け、3匹は獲物を探すことにした。もちろん、指導者は見える範囲で見守っている。
今度こそ、獲物を捕まえてかっこいい姿を見せなくちゃ。
狩場を探していると、どんぐりの木の根と木の根の間に穴があるのに気づいた。
中は暗くて行き止まりだ。
ここに獲物を誘い込めば、暗いとこでもよく見える猫の目なら楽々捕まえられるかも!
近くにはどんぐりが落ちている。きっとネズミはこれを取りにここに来るはず。この時期のネズミは危険を冒しても餌を探してるって、前に母さんが言ってたわ。
そうと決まれば、近くの茂みに隠れてネズミを待つ。
スマイルポーとティアーポーは遠くに行ったみたいだから、2匹の足音で逃げることもない。
静かになったからか、思惑通りネズミが1匹、穴の前まで来ている。
穴の中に追い込まなきゃ。違うところに逃げてしまったら、作戦失敗だ。
狙いを定めて飛びかかる。
さっきと同じ様に、わずかに手前に着地してしまったが、猫なら入れないと思ったのかネズミは穴の中へ逃げていった。
そうはさせないわ!
ネズミを追って穴に飛び込む。暗いが、ネズミの匂いはするし、何も見えない訳ではない。
奥の方にネズミが蹲ってるのが見える。
きっと気づいてないのね!
足音を立てずに近寄り、匂いに気づき逃げようとしたネズミを押さえ込み、とどめを刺した。
やったあ!!初めての獲物だ!!!!
獲物を咥えて、指導者のところへと駆ける。
穴から出ると、もう皆んな集まっていた。
「わあ、すごい!!チェリーポー、初めての獲物捕まえたんだ!!」
「上達がはやいのねぇ、チェリーポー!!初めて獲物、おめでとぅ!!」
ありがとうの意を込めて喉を鳴らす。
ホワイトレオが寄ってきた。
「見てたぞ、チェリーポー。すごいじゃないか!ネズミを穴に誘い込むとは、作戦勝ちだな」
「ありがとうございます!!」
それを聞いたスパロウビークが目を丸くする。
「すごいな!どの穴だ?そんな穴、この辺にあったかな」
「こっちです!!!」
踵を返して駆け出した私を追って、スパロウビークと他のみんなも走り出す。
「ここです!!暗くて、中も行き止まりだったから、ネズミを取るには絶好の場所かと思って」
「これは、、」
スパロウビークはまた目を丸くした。自慢げに話す私に指導者が微笑みかける。
「すごいな、チェリーポー。俺たちじゃあここには入れないから、君の特権だな」
あれ?
「ほんとうだ。走って入るって大変そうだね」
「ううーん。私も、ネズミを追って入るには躊躇うかなぁ」
成猫だけじゃなくて、私と大して歳も変わらない2匹も入れないの?
私はホワイトレオみたいに、大きくて強くて、立派な戦士になりたいのに。

もしかして、私って、皆んなよりずっと小さいの?
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投稿 by サーモンテイル Fri Nov 18, 2022 5:27 pm

第五章

「今日は半月だから、看護猫の集会に行くよ」
薬草の整理をしていた時に唐突に言われ、パインポーは目をぱちくりとさせた。
「集会、ですか?」
「あれ、知らなかったの?僕たち看護猫は、半月の夜に集まって情報交換したり、四季の一族からお告げをもらったりするんだ。
広場、、にも行ったことないんだっけ?大集会を行う広場にある一族の族長たちが乗る大きな岩の窪みに水が溜まってて、そこに月を映して、お告げを待つんだよ。
ここからずっと遠くにある、僕たち以外の猫の部族も、似たようなことをするらしいんだ。もっとも、あちらの方が先らしいけどね」
そんなものがあるとは知らなかった。満月に大集会があるのは知っていたが。
「だから今日は、必要なものだけ揃えて昼間は寝ちゃおう!仮眠仮眠、仮眠はたいせつー!」
そう言っていそいそと薬草の調合をし始めた。
「ぼくも手伝いますか?」
そう尋ねると、師匠は少し考えてから、君の手は必要ないかな、と言った。
「あ、じゃあ、コケを取ってきてくれないかな?水を含ませるためのコケが底をつきそうなんだ。近くに生えてるから、今のうちに行っとこう」
頷いて外へ出る。師匠も、少しお喋りなところが姉と似ているな、なんて考えながら歩いていると、すぐにコケの生えている倒木は見つかった。
早いとこ済ませようと、木にそっと爪を立て、コケを剥がしていく。
遠くで姉の声がする。きっと訓練だ。どんなことをするのかな。ぼくには想像がつかないけれど、すっごく楽しいと言っていた。きっと僕には向いていない。だってぼくはのろまで、子猫の時にじゃれあうときはいつも負けててー
はっ、とコケに意識を戻すと、コケは取れていたが、木の幹まで一緒にくっついている。
力は入れていないはずだ。
だって、ほかの見習いたちは綺麗にコケを取るじゃないか。
でも何で、
「やあパインポー、調合終わったから手伝いにきたよ」
ばっと振り返ると師匠が歩いてきていた。
何となく、幹が剥けた部分を慌てて隠すが、師匠はめざとくそれを見つけた。
「わ。コケとるのに幹はいらないけど、、確かに幹があった方が安定するかもね。これはこれでいいかもしれない!ナイスだよパインポー」
にこにことしているが、一瞬、ぼくの爪を見た時にかげった表情をぼくは見逃していない。
だって、ぼくが見つめる自分の手の先には、看護猫のものとは思えないくらい、黒光りしている、大きくて、鋭く尖った鉤爪があったのだから。
「じゃあ、帰って寝ようか」
歩き出す師匠を追って歩き出す。
果たして僕みたいな凶悪そうな爪を持つ猫を、シーズン様は看護猫として認めてくれるのだろうか?
そんなことを考えていたら、ちっとも寝れなかった。
「じゃあ行こっか」
「、、はい」
仮眠をとっていきいきとしている師匠とは反対に、とぼとぼと歩き始めるぼく。側から見たら、母猫にお仕置きをされる子猫みたいだろう。
もっとも、子猫の大きさとは程遠いのだが。
師匠が歌い出した鼻歌を聴きながらしばらく歩いていると、少し開けたところに出た。
真ん中辺りにある大きな岩の下に、淡い灰色の猫が座っている。暗がりの中で岩と毛が一体化して見えるが、緑色の目だけがらんらんと輝いていた。
「やあグラスフェザー!そちらは新入り?」
「やあグレーミスト!そうなんだよ、僕の初めての、可愛い可愛い弟子くんです!!」
じゃーん、と言いながら僕を前足としっぽで、身体をのけぞらせて示す。
「はじめまして、グレーミスト。ぼすはパインポーで、この前ようやく見習いになりました」
「そうか、パインポーか。よろしくパインポー、改めて、ぼくはグレーミストだよ。」
師匠の紹介は照れ臭かったし、ほかの部族の猫と話すのは初めてで、余り良い印象は与えなかったと思う。しかしグレーミストはにこにこして喉を鳴らした。
「俺も欲しいな、弟子。なんせウィンターの子猫はみんな戦士になりたいときてるんだ。確かにぼくの一族は、瓦礫の怪我が絶えないけど、、」
どうやらこの雄猫は冬の一族の猫らしい。
「ようグレーミスト、グラスフェザー。そっちは新入りかい?」
「こんばんは、レッドアイズ、ウィロウポー!そうなんです、僕の可愛くて優秀な初弟子くんです!!」
真っ白な毛をした猫と、焦茶色の毛をした猫がこちらに歩いてくるのが見えた。
「はじめまして、パインポーといいます。新入りです」
「初めまして、パインポー。おれはレッドアイズ、夏の一族の看護猫だ。こっちが」
「ウィロウポーだよ!!よろしく、パインポー!!見習いはウィロウ1匹だったから、仲間が増えて嬉しいよっ!!」
そうか、看護猫の見習いは少ないんだな。
ウィロウポーと挨拶を交わしていると、向かいの方から白い雌猫が走ってくるのが見えた。
「ごめんなさーい!遅れましたあ!!!」
「おれたちも今きたところだ。見ろ、グラスフェザーの初弟子だと」
「そうなの!!見てみて!!!うちの天才的に可愛い愛弟子!!!」
そろそろグラスフェザーの紹介にも苦笑いしか出来なくなったが、そういう猫なのだろう、誰も突っ込まない。
「はじめまして。ぼくはパインポーです。見習いになったばかりの新参者です」
「そっか!!初めまして、パインポー!私はピオニーペタル。よろしくね!!」
あとはオータムだけだったから、きっと秋の一族の猫なのだろう。
「揃ったところで始めようか。」
レッドアイズが岩に飛び登る。それに続いて、ほかの猫たちも登り出した。
師匠に続いて岩に乗ると、中央に水溜りがあるのが見えた。
「一口飲んで、目を閉じるんだ。シーズン様が君を導いてくれるからね」
師匠が耳元で囁く。ぼくはこくりと頷いて、言われた通りに水溜りの水を飲んだ。
冷たく澄んだ水はたちまちぼくの体を駆け巡り、まるでぼすまで水になったみたいだ。
ちらりと師匠を見ると、もう眠る体制に入っていた。それに倣ってぼすも丸くなり、目を閉じる。
水になった体は蒸発して、風になり、雨になり、土になって、また水に戻る、、
不思議な感じだ。ほんとじゃないのは分かってるのに、まるで、そう、夢の中にいるみたいだ。
夢だと分かっていても、本物みたいに感じる。
目まぐるしい変化が終わり、目をそっと開けると、そこは知らない景色だった。
四季の一族の縄張りだろうか。
暖かい風が吹き、足元の草がそよいでいる。どう見ても草だが、目を凝らすとぼんやりと透けている。
「はじめまして、パインポー。四季の一族は貴方を歓迎するわ」
はっと声をした方に顔を上げると、見たことのない雌猫がいた。
「はじめまして。未熟な新入りですが、よろしくお願いします」
慌ててそういうと、雌猫はおかしそうにひげを震わせた。
「まるで成猫ね、パインポー!貴方の師匠はここまで礼儀正しくなかったわ!
そうそう、自己紹介が遅れたわね。私はシードシャイン、昔に春の一族で看護猫をしてたの。」
そういって鼻を触れ合わせる。彼女は春の匂いがした。
「さて、と。シーズンは貴方を看護猫として認めるわ。今日はそれでおしまい、早く向こうへ戻りなさい」
言い終わるかどうかの内に、体が透けていくのを感じた。
何はともあれ、ぼくは看護猫として認められた。こんな爪でも看護猫になれるのだ。
この手は、爪で猫を傷つけるのではなく、猫を救える手になれるのだ。
キャンプに着いて、ぼくは安心した気持ちで眠りについた。
サーモンテイル
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投稿 by ジェードウィング Sat Aug 26, 2023 8:02 pm

こんばんは!ジェードウィング(翡翠の翼)です!はじめまして!
サーモンテイルさんの書いた物語、私はすごく好きで、このホームページ見つけたの昨日なんですけど、もう読むの二作目です。
わたし、昨日からずっと物語書いてるんですけど、よければ読んでみてください。今は第一章から第九章まで書きました。
「Road of love ~それぞれの恋の道~」って題名です!
本気で作った、5匹の猫の恋の物語です!よろしくお願いします!

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投稿 by サーモンテイル Sun Aug 27, 2023 4:56 pm

はわわ…!!
初めまして!!!改めましてサーモンテイルと申します〜。
好きって言ってもらえてすごく嬉しいです!!!!!!!!!!!!💕
完結したの一つしかなくてあと二つ未完成抱えてて更新も止まってたんですけど頑張れそうです。完結できるように頑張りますのでこれからも応援お願いします💪

テストとか試合とかで今忙しくて読み終わるのは先になりそうですが、読んでみますね!!一章読んでみましたがとても面白そうで楽しみにしてます☺昨日から書いて九章ってすごいですね!!尊敬です。
サーモンテイル
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投稿 by ジェードウィング Sun Aug 27, 2023 7:54 pm

返信、ありがとうございます!
すっごく嬉しかったです!
他の人たちにも送ったりしたんですけど、返信いただいたのこれがはじめてです!
なので、自分以外にもこのサイト使ってるひとがいるって実感できて嬉しかったです!
また他の物語も読んだりして返信します!
よろしくお願いします!

ジェードウィング
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投稿 by サーモンテイル Sun Oct 08, 2023 10:10 pm

第六章

「ホワイトレオ!今日の訓練は何ですか!!」
もう見習いの日々にも大分慣れ、日の出と共に目を覚まして指導者の元へ向かうのが日課だ。
いつも訓練の内容を話して、狩りに出てご飯を食べて、訓練に入る。
「今日は戦いの訓練をしよう。最初に俺とチェリーポーの2匹で基礎的なところをやって、最後にスマイルポーかティアーポーと実践的に戦ってもらう」
やったあ!ついに私も戦いの訓練ができるのね!
強い戦士になれるかな?才能あるって、褒めてもらえるかな?
期待に胸を膨らませて、森の奥のひらけた場所ー戦闘訓練場、ってみんなは呼んでるーへと歩きだす白い雄猫の背を追いかけた。


ゼエゼエと息が切れる。
砂埃で視界は遮られ、砂が目に入って痛い。
今にも崩れ落ちそうな足を踏ん張って、指導者を探し耳を立てる。
しかしそれも虚しく、チェリーポーは後ろからひっくり返されてしまった。
最初はぎゃっ、だのわあっ、だのと声を上げていたチェリーポーも声を出す力も無くなってしまったのをみて、ホワイトレオは追撃の手を止める。
「うん、一回休憩にしようか。小川の方で水を飲んで、何か食べながらさっきの話をしよう。歩ける?」
「あ、ああ、歩けま、す、っ!」
息を切らしながらもぱっと立ち上がったのを見て、白い雄猫はふっと笑った。
「疲れていてもそうやってすぐ立ち上がれるのは良いことだよ。そういうタフな戦士がこの先重要になるからね」
チェリーポーは照れくさそうにひげを震わして小川へと駆け出した。
速度は低いが、あれだけ訓練した後にも走れる見習いを指導者は満足げに眺め、後を追う。
しばらくして小川に着いた時、ホワイトレオは口を開いた。
「チェリーポー、スモールウィングという戦士の話は聞いたことがあるかい?」
チェリーポーは小川の近くにあった木のみを口いっぱいに頬張りながら首を振った。
「彼は俺の先輩だったんだが、君みたいにかなり小柄な戦士でね」
君みたいに、という言葉にチェリーポーは顔をしかめた。どうしてそう言うの?私は小柄だけど、まだ見習いだしこれから成長するんじゃないの?反論しようと開きかけた口をホワイトレオは尻尾でさえぎった。
「最後までききなさい。彼は小柄だったけれど、茂みや穴に隠れての奇襲で彼の右に出るものはいなかったし、戦いになっても大柄な戦士の腹の下に回り込んだりして自分の能力を最大限に発揮していた。
君はそういう戦士になるといいと思うよ。さぁ、それを踏まえて訓練を再開しよう」
チェリーポーは小柄な戦士が自分のひとまわりもふたまわりも大きい戦士を翻弄する様子を思い浮かべ、それを自分に重ねて微笑んだ。
そうよね、他の見習いよりちょっと小さいくらいで気にすることないわ。私は私らしい戦い方を身につけて、先輩と並んで戦えるような立派な戦士になるのよ!
小柄と言われてしかめていた顔が笑顔になったのをみてホワイトレオは喉を鳴らした。

そろそろ日も暮れようかというとき、チェリーポーとスマイルポーの実践訓練が始まった。
「友達だからって手加減はしないよぅ。私にこてんぱんにされたって、ティアーポーに泣きついても知らないんだからねぇ」
「ふふん、泣きつくのはどっちよスマイルポー。1日みっちり訓練した成果、見せてあげるんだからね!」
先手を打ったのはチェリーポーだった。正面から体当たりと見せかけ、勢いのまま身を低くしてスマイルポーの前足を払う。バランスを崩したスマイルポーのわき腹にパンチをお見舞いした。
決まった!!
そう喜んだのも束の間、スマイルポーの足払いが飛んできた。足元をすくわれてひっくり返ったところに、スマイルポーはすかさず飛び乗ってパンチを繰り出した。
そうして互角の戦いが続いたが、それに終止符を打ったのはスマイルポーだった。
体当たりをまともに喰らい、よろけたチェリーポーをスマイルポーが押さえつけたのだ。チェリーポーは力いっぱい抗おうとしてもびくともしないのを見てホワイトレオがそこまで、と合図をした。
「そこまで。今回はスマイルポーの勝ちだな。
だが無駄な動きがまだまだ多いし、相手との体格差や力の差をみて途中から必要以上に避けるのをやめただろう。確かに良い考えだが、戦いになったら不要な怪我を重ねるのは賢いとは言えないぞ、スマイルポー」
良かれと思ったことを否定されてしまったスマイルポーは不貞腐れた様子ではぁい、と返事をした。ホワイトレオはそれにムッとする様子もなく、平然としてチェリーポーに向き直った。
「チェリーポー、初めてにしては上出来だ。特に相手の関節を狙ってバランスを崩させるのはかなり良かったぞ。あれは体格が違う敵にも使える手段だからな。あとは力だな。押し負けない力をつけなきゃならない。明日は力をつけるトレーニングをしようか」
スマイルポーと違い褒められたチェリーポーだったが、不満げな様子ではい、と短く返事をした。
体格も、力も、分かりきってることなのにどうしても面白く思えない。だって、スマイルポーやティアーポーと大して歳に差はないのに。弟だって看護猫の割に身体も力も大きくて、爪も鋭いのに。

どうして、私だけこんなに小さくて弱いの?
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投稿 by サーモンテイル Sun Dec 17, 2023 8:32 pm

第七章

「そうそう、そうやって、薬草を包んだらそこを結んで…あっ」
「……。やっぱりぼく、向いてないんでしょうか…」
枯葉の季節に移ろうかという、涼しくなってきた昼下がり。パインポーは薬草を包む練習をしていた。手早く包んで植物の茎で結ぶグラスフェザーの動きを真似ているはずなのに、包む途中で中身をこぼしたり、包み終わってひっくり返したり、せっかく結べても結び目が弱かったりと散々だった。
「大丈夫!!練習すれば上手くなるって。得手不得手は誰にでもあるんだからそんな落ち込まないの!ほら、次いくよ!」
一生懸命励ましてくれる指導者に頑張ります、と微笑んだが、内心かなり焦っていた。
グラスフェザーのように細くて器用な手を持っていたら薬草を包むなどわざわざ練習を積む必要など無いだろうが、パインポーの手は大きくて不器用だった。鋭い爪は包みを掻き切ってしまうし、強い力は結ぶ茎を引きちぎってしまう。こんな、まるでアナグマのような手を持つ看護猫が、一体どこにいるというんだ?
自分が看護猫で、姉が戦士を目指すと言った時、驚きと戸惑いと哀れみが混じった目線でぼく達きょうだいを見られたことを思い出す。きっと姉は気づいてないだろうが。
だからこそ頑張って、ぼくだって看護猫になれることを証明するんだ。
パインポーは自分に言い聞かせ、もう一度目の前の薬草の包みに集中した。
「グラスフェザー!!ちょっと来てくれないか」
もう少しで成功しようかというとき、メロンスターが師匠を呼ぶ声がして勢い余って咥えていた茎を噛み切ってしまった。ああ、また失敗だ!
メロンスターを少し恨めしく思いながら、大丈夫なので行ってきてください、と頷く。グラスフェザーはすぐ戻るから続けてて、と言うと看護部屋の外へとかけていった。
でも、族長が看護猫を呼ぶなんて、何かお告げみたいなものがあったのかな?それとも緊急事態?いずれにせよ、あまり良いものではないだろう。
大したこと無いといいな、と淡い期待を持ちながら、もう一度練習しようとさきほど包んでいた薬草を取り出していると、入り口のつる草のカーテンを誰かがくぐる音がした。
「ねえ、グラスフェザー…って、なんだ、パインポーだけなの?グラスフェザーは?留守?」
「メロンスターの所に行ってるけど…どうしたの姉さん、怪我?」
声の主であったチェリーポーは顔をしかめた。
「いや…その、訓練の一環としてね?しばらく看護猫の手伝いもしなさい、ってホワイトレオとシャドウペルトが…」
もごもごと言うチェリーポーを見てパインポーはひげを震わせる。グラスフェザーの薬草畑に猫が荒らした跡があったと聞いていたが、大方チェリーポーが何かの拍子に畑に飛び込んで、その罰として手伝いを命じられたのだろう。全く、おてんばな姉らしい。
「戦場で薬草を使える戦士もいたら、きっとかなり役立つでしょう?それに今は風邪も流行ってきているし。看護猫も猫の手が足りないんじゃない?という訳でお世話になるね。みててよ、1週間もしないうちに、傷を自ら癒せる戦士になるんだから!」
早口で喋るその言葉はパインポーというより自分に言い聞かせているようだった。1週間、このおしゃべりな姉と仕事をするなんて考えただけでも疲れるが、猫の手が足りないのは事実だ。
部族に風邪が流行り始めていた。
グリーンコフとかの類じゃないと良いんだけど。これから忙しくなることを考えれば、手伝いがいるのは嬉しいけど、色々教える分師匠はもっと大変にならないかな。
「ねえパインポー!尻尾で薬草散らしてるけどだいじょうぶ?」
チェリーポーの言葉でパインポーは我にかえった。
「だいじょうぶじゃなさそうだね。大丈夫!片付けるの手伝うよ。それくらいなら、今の私にもできそう」
「ありがとう、助かるよ」
「じゃ、それ終わったら2匹に風邪薬作るの手伝ってもらおうかな」
振り返ると、師匠がにこにこしながら立っていた。
「嬉しいなぁ、短い間とはいえ2匹も弟子がいるんだろう?今は忙しい時期だから猫手が増えるのはありがたいし、何より弟子を2匹持てるなんて夢みたいだ!」
「今日からお世話になります、グラスフェザー!」
見習いが師匠にやるように鼻面を触れ合わせたあと、姉は受け入れてもらえて心底安心した様子でしっぽを揺らし、グラスフェザーはご機嫌そうにふんふんと歌い出した。
しかし、グラスフェザーの笑顔は少しぎこちなく、不安そうなにおいがぐっとパインポーに押し寄せていた。
姉が手伝いをするのが嫌なのか?でも、師匠はそんな猫じゃない。きっと喜んでいるのは本心だ。
そしたら、なんなんだろう?
族長に呼ばれたのに関係あるのかな?
風邪が蔓延していること?それとも、浮浪猫の形跡が見つかった?
もしかして、嫌なお告げでもあったのか?
グラスフェザーは不安げな目をするパインポーを見つけると、大丈夫だよ、と微笑みかけた。

君は何も心配いらない、大人でどうにかするから大丈夫だよ。
そんな意味にも思えた。
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