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正しいケモノの育て方   [第二部/二期六巻原作より] 雑だけど完結!

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投稿 by レパードクロー Fri Feb 12, 2016 9:18 pm

しいケモノの育て方 

~Fangs and claws and voice~








☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆

足元の砂利は三日間降り続けた雨のせいでつるつると滑りやすかった。一歩足を踏み外せばたちまち坂を転がり落ちてしまいそうで、子猫は必死に爪を立てながら走っていた。子猫が追いかけているのはキラキラと光る星屑の散りばめられた道であり、ウサギの五歩先には真っ赤な瞳をした白猫が優しくこちらを見つめていた。

子猫を導くかのように、そっと道の先頭を歩く白猫は、不気味なほど瞳が赤かった。

夜空には三日月が浮かんでおり、いつも現れる無数の星たちは今晩に限って現れない。遠くのほうでフクロウの「ホーッ」という低い身の毛のよだつ声が聞こえたかと思えば、ハタネズミらしきものがカサコソと走り回る足音が聞こえてくる。夜の森は神秘的で何ともいえない魅力があったが、それと同様に静かな恐怖が渦巻いている場所でもあった。


白猫の光る尻尾を必死に追いかけながら、子猫は危うくつんのめりそうになった。慌てて顔を上げると、白猫はおかしそうに微笑んだ。

坂を上りきると、シダの茂みが生い茂っており、それをかき分けると光り輝く池が現れた。池には小波一つたっておらず、水は透き通っていたけれど、底のほうは水草が生えていてきれいなモスグリーンだった。子猫は慎重に一歩ずつ足を踏み出していく。

その桜色の瞳は池しか見えていなくて、吸い寄せられるように池へと歩み寄っていく。足元の白い砂がサラサラと音を立て、そよ風が体中を駆け巡った。

「その水を飲んでごらん。」


はじめて白猫が声を発した。高くも無く、低くもない、特別大きい声ではなかったが凛とした響きがあった。ほぼ無表情に近いと言った感じで子猫はこくんとうなずき、池のふちに身をかがめた。

フクロウがさっきよりも鋭く「ホッホッ」と鳴いていた。その声はまるで子猫に対する警戒音のような物だったが、子猫の耳を素通りしただけで子猫は止まらなかった。

白猫は満足げな顔で子猫が水を飲むのを見つめていた。


子猫の舌先に池の甘い水が触れたか触れないかの所で地面がぐらりとよろめいた。目をあげると大きな牙が自分を飲み込もうとしていて、思わず子猫は悲鳴を上げた。
体中が焼け付くようで痛いけれど、喉と喉が張り付いたかのように声が出てこなかった。たまらず閉じた瞼を開けようとしたが、ピッタリと閉じていてあかなかった。

何とかこじ開けて前を見た瞬間、白猫の絶叫が聞こえた気がした。


目をあけると、白猫の姿は無かった。目の前にあった池も消えており、温かな保育部屋の中にいると判断するまで数秒の時間を要した。隣には灰色のわき腹を上下させながら、リズミカルに寝息を立てる母のハイーナペルトが寝ており、その横には黄褐色の毛並みをした妹がうずくまっていた。

ほっと息をついて、ぐしゃぐしゃに乱れた毛をなめて落ち着かせる。夢だ、何の変哲も無いただの夢だ。

そう自分に言い聞かせ、再び丸くなって眠ろうとしたが、耳元で何かがうなり続けており、弱い衝撃波のようなものが絶えず自分の毛並みをかき回して言った。
何かが違う。あの夢を見てから何かが違う。

耳をピンとたてて意識を集中させてみる。何かが聞こえる........何かが.........。

子猫自信は気付いていなかったが、彼の柔らかな春の桜色の瞳は、秋の落ち葉が浮く紅葉の池のような、真っ赤な紅に染まっていた。

彼の何かが崩れ落ち、新たなものが鎌首を持ち上げた。



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原作のストーリーを思いっきり捻じ曲げてしまっている、オリジナルストーリーです。
勝手に設定を付け加えたり、師弟関係がおかしくなったり、原作ではまだ死んでいない猫が死んでいたりと色々とズレがあります。

舞台は第二期の六巻。このお話は「正×正=悪のケモノ方程式」の続編です。
第一部での謎を主人公であるウルフポーが紐解いていきます。

少しでも楽しんでいただければと思います。

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キャスト紹介






ウルフポー[狼の足]→ウルフストーム[狼嵐]
黒光りする銀色の毛並みの虎猫。元々瞳は桜色だったが、[ある夢]を境に紅に染まった。
「森の耳」の能力をもち、ブランブルスターの弟子。ラッシュポーの兄。母はハイーナペルト、父はタイガーストライプ。指導者はブランブルスター。
日々努力することを怠らず、誰かに先を越されることが大嫌いだが、普段は優しい。ベリーポーとは対立している。

ラッシュポー[ツグミの足]→ラッシュフット[ツグミの足]
耳の大きな黄褐色の虎猫。前足の先のみが雪のように白く、全体的に華奢な体つき。瞳はオレンジ色。
兄の能力を知るただ一人の存在であり、兄を陰で支えている。時々意固地にはなるが、兄と同じで優しく、明るくて活発な少女。
指導者はロビンフリーズだったが、看護猫の道を歩むこととなったので現在はリーフプール。

ウィンディーポー[風の足]→ウィンディーテイル[風尻尾]
とても小柄な焦げ茶色と白の三毛猫。瞳は柔らかなモスグリーン。尻尾の先は黒い。
ウィンド族のワンスターとホワイトテイルとの間に生まれたエリート候補。幼い頃から類まれな才能を発揮しており、エリートとしての自覚も持っている。
指導者はアッシュフット。兄妹はおらず、いつも孤独と戦ってきた。そのエリートぶりと冷淡な態度のせいで周りからは孤立している。
ひょんなことからウルフポーと仲が良くなり始める。





ブランブルスター[イバラ星]
不穏な表情を隠している、若き優秀な族長。スクワーレルフライトのつがいの相手。

タイガーストライプ[虎縞]
ウルフポー、ラッシュポーの兄。リヴァー族と聞くと急に落ち着きがなくなるが、普段は優しい良き父親。

レパードアイ[ヒョウ目]
エメラルドの瞳を持った、優秀なシャドウ族の副長。オークファーと絶賛リア充中。

サンドストーム[砂嵐]
今は無きファイヤスターの妻。

ブラクンファー[ワラビ毛]
賢く思慮深い戦士。サンダー族副長。

ベリーポー[ベリー足]ヘーゼルポー[ハシバミの足]マウスポー[ネズミ足]
飼い猫出身の三兄弟。

シンダーペルト[消し炭色の毛皮]
倒木の下敷きになり、今は無き賢い看護猫。リーフプールの元指導者。

リーフプール[葉の池]
サンダー族看護猫。ファイヤスターの死について何かを知っている様子。

アウルポー[フクロウ足]ウィーゼルポー[イタチの足]
ウィンディーポーの数少ない友達。

ワンスター[一つ星]
うら若きウィンド族の期待の星。ウィンディーポーの父親。

アッシュフット[灰足]
孤立するウィンディーポーを心配する指導者であり、クロウフェザーの母親。とある罪を犯す。

ロビンフリーズ[凍るコマドリ]
ファイヤスターの息子でラッシュポーの指導者。

ブラックウィスカー[黒いヒゲ]
ロビンフリーズの連れ合いでレイヴンポーの娘。




用語説明


森の耳

星の力の一つ。動植物は基本、[波動]とよばれるものを身体から出している。その[波動]を聞き取ることができるのは限られた能力を持つものだけである。
喋ることのできない植物などは特に強い[波動]を出している。
森の耳を授ける役割のものは[声の精霊]という。声の精霊はさまざまな容姿をしている。選ばれた子猫に森の耳を授ける。


最終編集者 ひょうつめ@陽だまりの陰で [ Mon Apr 11, 2016 10:06 am ], 編集回数 6 回
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投稿 by レパードクロー Sat Feb 13, 2016 7:27 pm

目次(すでに公開したものには*をつけています!)

第1章:森の声*

第2章:鶫の声*             第9章:子の声*
第3章:茨の声*             第10章:花の声*   
第4章:闇の声*             第11章:裏切りの声*
第5章:猫の声*             第12章:疑惑の声
第6章:風の声*             第13章:憎しみの声
第7章:ベリーの声*           第14章:消えた声
第8章:雨の声*                


最終編集者 ひょうつめ [ Wed Mar 30, 2016 4:58 pm ], 編集回数 3 回
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投稿 by レパードクロー Sat Feb 13, 2016 8:12 pm

第1章:森の声






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俺はまだ死んでいない__必ず喰いちぎってやる__あの猫共の前足を____


耳障りな音がウルフキットの体を貫いた。思わずビクンと飛び上がり、慌てて周りを見渡す。だが、空き地はのんびりとした雰囲気で、何も危険そうな感じはなかった。
ちらりと目を下にやると、獲物置き場の頂点に積み上げられている仕留められたばかりのネズミが目に入った。恐る恐る近づいてみると、ネズミのわき腹は微かに動いていた。

くすんだ黄色の目は宙に向けられていたが、実はウルフキットを睨んでいるのではないかと内心ビクビクしていた。

どすんと派手に何かがぶつかってきた。何だ__ネズミの怨霊か!?

そうではなかった。くりくりとした無邪気で綺麗なオレンジ色の瞳がこちらを見上げていて、薄い桃色の唇をにかっと開いた妹がいた。
ウルフキットはため息をつくと、「ラッシュキット、ビビったじゃないか.....」と文句を言った。

ラッシュキットはにやにやと笑うと、「ごめんごめん」と謝った。

「そのネズミがどうかしたの?食べたいなら食べれば?」


妹の不思議そうな問いかけに何と答えればいいか一瞬迷った。まさかネズミの復讐を誓う声を聞いてしまったなんて言えないし、かといって別に食べたいわけじゃないので食べたいとも言えない__。

「いや、ネズミ、生きてたんだ。虫の息だけどね。」

これで行こう。これなら本当のことだし。

「ふーん。でも、もう動いてないよ?」


ラッシュキットがつついているネズミはもうピクリとも動かなかった。だが、相変わらず黄色の瞳はこちらを睨みつけるようにして見開かれたままだった。
妹はずるずるとネズミを引き摺り下ろして、保育部屋の前まで持っていった。ウルフキットも慌ててついていく。

ネズミを見ると先ほどの声が思い出され、胸がむかむかした。だが妹は何も疑わずにいただきまーす!と叫ぶとネズミにかぶりつき始めた。いつ見ても妹の食べっぷりには感心を通り越して呆れてしまう。

「ほにーひゃん、たへないひょ?」

もぐもぐと小さな口を動かしながらラッシュキットは顔を上げて聞いた。ネズミは丸々と肥えていてとてもおいしそうだったが、食欲がわかなかった。ゆっくりと首を横に振って、尻尾を自分のほうへと引き寄せた。


飛ばされる、飛ばされる

不意に耳の中に声が入ってきた。顔を上げると大きなオークの葉がくるくると風に乗って空を飛ばされていた。オークの葉からは強い波動が波のように伝わってきて、思わずウルフキットはぐらりとよろめいた。

再び顔を上げたとき、オークの葉はもう無かった。

耳でキャッチしていた波動はすでに消えており、いつものようにいくつもの波動が重なり合った心地よいそよ風のような音が小さく耳の中で響いていた。

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投稿 by レパードクロー Sun Feb 28, 2016 3:56 pm

第2章:鶫の声





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午後は命名式だけど、あまり気持ちは乗らなくて、でも子猫時代最後の日になにか思い入れがあるわけでもなくて、結局何を言いたいのかはわからないけど、やっぱり見習いになるのに少しだけためらいがある。

ラッシュキットは大あくびをすると、隣で毛づくろいをしていた兄を置いて一人看護部屋へと向かった。

シダのカーテンをくぐると忙しそうに働くリーフプールを見つけた。薄暗い看護部屋の中で彼女の白い前足の先は一際強く映えていて、雌であるはずのラッシュキットでさえ見とれてしまいそうだった。

「あら、ラッシュキット。何か用?」作業をしていた前足を止め、リーフプールはこちらを向いた。

「何も無いの。ただ、遊びに飽きただけ。」

「そう。」

部屋の中に足を踏み入れると、足元の砂利のひんやりとした感じが伝わってきた。リーフプールは薬草の束を平たいオークの葉で包み、蔦を使って縛っていっていた。

隅にはたくさんの包みがある。なのにリーフプールの側にはあと十個ほどつくれそうな材料の山ができていた。

「そんなところに座ってないで、こっちにきなさい」リーフプールに促され、ラッシュキットは苔のベッドの上にどすんと座った。

「まだつくるの?もういっぱいあるよ。」

不思議そうに首をかしげながら聞いてみた。

「今は戦士が少ないでしょう?それに、戦いが起こったときのために準備をしておかなければ。」

そうだ。そうだった。

アッシュファーとスートファーがつい三ヶ月前に怪物に跳ねられ、命を絶っている。そしてその前も戦士ではないが、シンダーペルトが倒木の下敷きになってしまっている。

住人が一匹いなくなったこの部屋は妙にガランとしていて、リーフプールは指導者のいない不安を隠そうとするかのように忙しそうに働いている。

ブランブルスターが一族を収集する声が聞こえた。

「あら、ちょっと早めに命名式をするのかもよ?ほら、行きなさい、ラッシュキット。」

背中を鼻でおされ、ラッシュキットが空き地に出ると一族が期待のこもった眼差しでこちらを見つめてきた。母のハイーナペルトとウルフキットはすでに中央にいて、父はブランブルスターと何かを話していた。

「では今から新たな見習いを紹介しよう。ウルフキット、ラッシュキット。」

名前を呼ばれ、前に進み出る。兄の毛は綺麗にグルーミングされており、自分のボサボサの毛が少し恥ずかしかった。

「ラッシュキット。お前は今からラッシュポーとなる。お前の指導者はロビンフリーズだ。」

指導者の名前を聞いた瞬間サーッと喜びが消えていった。族長家の子息で優秀なことで有名なロビンフリーズはとても厳しいと評判だ。

慌てて指導者と鼻をつきあわせる。ロビンフリーズの表情はまるで顔に貼り付けたかのようにぎこちなくて、目をあわせたとたん体中に震えが走った。
 
「ウルフキット。お前は今からウルフポーとなる。お前の指導者は俺だ。」

兄の顔がパッと明るくなった。それはそのはず。族長に指導されるのはとても名誉なことで、普通は副長の子供や自分の親戚などしか指導しない。

ウルフポーと自分は族長であるブランブルスターの甥っ子姪っ子であるため、長男であるウルフポーが族長の弟子になるのはとても自然なことだった。

以前、ベリーポーが族長の弟子だったが、族長になると同時にベリーポーはクラウドテイルの弟子になった。

彼はそのことをひどく恨んでいる。

不安になって後ろにいるベリーポーを見ると、思ったとおり悔しがって唇を噛み締めていた。

「これで集会を終わる。ウルフポー、お前は今から縄張りを見に行くぞ。」

はい、とウルフポーは自信満々で答えた。

一族が解散していくのをぼんやりと見つめていると突然肩に誰かの尻尾が置かれた。振り向くと、ロビンフリーズの顔があった。

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投稿 by レパードクロー Sat Mar 19, 2016 1:25 pm

第3章:茨の声




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「この木はスカイツリー。森で一番大きな木だ。」ブランブルスターが尻尾で大きなオークの木を指しながら説明した。

ウルフポーはスカイツリーを見上げた。猫が何匹積み重なっても届かないような高さで、空に突き刺さりそうだった。雀が上のほうの枝に止まっていたが、猫では届かない高さにいる。

雀の馬鹿にしたような波動が伝わってきてウルフポーはサッと顔を背けた。

「おい!聞いているのか、ウルフポー?」

指導者の声に振り向くと、ブランブルスターはもう次の場所に向かおうとして数歩先にいた。怪訝そうな顔をしてこちらを見つめている。

「湖に行くぞといったんだ。ちゃんと聞いておかないとおいていくぞ。」

「申し訳ありません!」

イライラした様子で尻尾をくるっと高く上げるとブランブルスターは早足で歩き出した。慌てて指導者の後を追うが、彼は減速するそぶりなど見せない。

やっぱり厳しい__。族長の弟子も楽じゃなさそうだ。



☆★☆★☆★☆★☆★☆


キャンプに戻るともう日は沈みかけていた。ウルフポーは荒い息をしていて、くたくたに疲れ果てていた。今すぐに寝床に飛び込みたい気分だったが、そうはいかない。

腹はさっきから絶えず鳴っている。ラッシュポーはどこだろうと思い、あたりを見回す。いた。

朝のはしゃぎっぷりが嘘のようにしょんぼりとうなだれ、尻尾を引きずっている。

「おい。どうしたんだよ。」

ラッシュポーは大きなため息をつくと、座り込んだ。この様子だと初の訓練で何かあったようだ。尋常ではない落ち込みっぷりにこっちが動揺してしまう。

「あのね、失敗ばかりだったの。ロビンフリーズが捕まえようとしたハトを驚かしちゃったり、サンダー道でひかれそうになったり、こけちゃったり。」

「うわ。まあ大丈夫だよ。彼なら許してくれるはず_____」

そこまでいって、ふと後ろを見るとロビンフリーズがハイレッジの下からこちらをじっと見つめていた。

目が合うとロビンフリーズはそっと口だけを動かしてつぶやいた。

_俺は親父を殺した奴を許さない、気をつけろ、見習い_

ウルフポーにはそういっていたように聞こえたが、ロビンフリーズは空き地から出て行ってしまった。

ウルフポーはラッシュポーの肩をつついて立たすと、見習い部屋へと連れて行った。
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投稿 by レパードクロー Sat Mar 19, 2016 7:47 pm

第4章:闇の声




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ウルフポーはキャンプにいた。というより瞬きをして目をあけると空き地にいたのだ。ここに来るまで自分が何をしていたのかはわからない。ただ目をあけるとここにいただけなのだ。

不思議なことにキャンプには誰もいなかった。小鳥の囀り一つ、聞こえてはこない。

見習い部屋に妹はいるのだろうか?見習い部屋に行って確認するためくるりと方向を変えて向かおうとした。が、急にその足を止めた。

理由は戦士部屋からブランブルスターと見知らぬ黄金色の雄猫が出てきたからだ。二匹には自分の姿が見えていないようで話している。

姿が見えてないのをいいことにウルフポーはそっと指導者と雄猫の背後へ回った。

「お前は猫が死ぬ瞬間を見たこと無いだろう。」ブランブルスターが押す猫に言った。

「当たり前じゃないか!殺したことなんて無いんだぞ!」雄猫がむっとしたように怒鳴った。


「ならば、練習をしてみるんだ。ファイヤスターのときに備えて。マウスファーあたりがいいだろう。上級戦士だが、なんせ頑固だし邪魔になってきたところだ。」

ウルフポーの背筋に冷たくひやりとしたものが走った。ブランブルスターは何を言っているんだ?ファイヤスターの時に備えて?

雄猫がためらっているのがわかった。ウルフポーはハラハラした気持ちで二匹を見守っていた。

「ライオンシャドウ?怖いのか?」

「そんなわけないだろう!いいよ!それをして、ファイヤスターをするときも手伝えば副長の座に着かせてくれるんだな、兄貴?」

「ああ。約束する。川に突き落とすあたりがいいだろう。失敗はするなよ。」

「タイガーストライプやレパードアイも協力させるのか?」

「いいや。レパードアイは濡れ衣をかぶってもらう役だ。タイガーストライプはあいつは頭が切れて賢い。計画を教えればすぐに一族に伝えてしまうだろう。」

「わかったよ。」


一体この二匹は何の話をしているんだ_?

ライオンシャドウという名前は長老の昔話で聞いたことがあるけれど_____。

いきなり視界が真っ暗になって、ウルフポーは闇の中へと転がり落ちていった。



「裏切ったな兄貴!俺を利用したのか!」

「ああ。悪いなライオンシャドウ。お前には死んでもらう。」

最後にこの二言と喉を掻ききるような不気味なザシュッという音が聞こえた。

☆★☆★☆★☆★☆

「おい、ウルフポー!いい加減にしてくれ、前足を退けろ!」

バーチポーの不満げな鳴き声で目がさめた。

自分は夢を見ていたようで寝床はグシャグシャ、苔を脚で撥ね散らかし、おまけに前足はバーチポーの顔の上にのっけていた。

「ごめん。」

もごもごと謝ったがバーチポーはフンと鼻を鳴らしただけだった。

しょんぼりとした気持ちで苔を掻き集め、寝床を整えて再び体を横たえたが眠気はちっともやってこなくてそのままダラダラと朝まですごしていた。

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投稿 by レパードクロー Sun Mar 20, 2016 3:09 pm

第5章:猫の声



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狩りの訓練はまたもや失敗だった。捕まえようとしていたコマドリの羽をじーっと見つめて逃げられてしまったり、尻尾で茂みの草をはらっているとロビンフリーズのねらったウサギに逃げられたりと。

ロビンフリーズはむっとした顔でやっと仕留めたハタネズミを口からぶら下げでいる。それも二匹。対してラッシュポーは何も捕まえれなかった。

とはいえ獲物で指導者の口がふさがっているのはありがたい。小言を言われなくてすむからだ。

ブラクンファーとホワイトポーのペアと合流したが、どちらも獲物をくわえていた。ブラクンファーはリスを、ホワイトポーは自分の頭ぐらいあるカササギを捕まえていた。

「そろそろ帰ろうか、ロビンフリーズ。」

指導者たちは先にキャンプへ向かって歩き出していた。ラッシュポーはホワイトポーと並んで歩き出した。

何も捕まえられない悩みを話すとホワイトポーは慰めるように優しい声で話し出した。

「いいのよ。まだ訓練を始めたばかりじゃない。」

「でもほんっと何にもできないの。戦う訓練では足が絡まってこけるし、狩りでは獲物を逃しちゃうし、寝床の掃除もマダニの入った苔を持ってきちゃうし......」

「まあまあ焦らず頑張ってみなさい。」

ホワイトポーの励ましの言葉もラッシュポーには憂鬱をつのらせる言葉にしか聞こえなかった。


☆★☆




「午後は薬草を覚えましょう。基本的な使い方も。」

午後はリーフプールが教える基本的医療知識だった。ベリーポー、ヘーゼルポー、マウスポー、ラッシュポー、ウルフポーの五匹。

年長の見習いであるバーチポーとホワイトポーは最終テストにむけての訓練に取り組んでいる。

「これはマリーゴールド。出血が少ないときはこれで血を止めるの。そしてこっちはクモの巣。多いときはこっちを使うわ。」

リーフプールは数種類の薬草を準備していた。次々にその説明をしていく。

「で、最後にこれがイヌハッカ。今は乾燥させたものしかないけれどとてもいい香りがするのよ。」

ふわりと薬草の匂いが風に乗ってラッシュポーの鼻の中に運ばれてきた。何でだろう、とても懐かしいにおいがする。


全ての薬草の説明を終わらせたところでリーフプールはニッコリ笑った。

「じゃあ今から皆に薬草を取ってきてもらうわね。ケシの実とギシギシの葉、それから.......そうね、難しいかもしれないけどゼニアオイも。」

「僕が一番だ!」

「ベリーポーは黙っていろよ!」

「用意、はじめ!」

見習いたちはいっせいに走り出した。ラッシュポーは頭の中でそれぞれの薬草の生えている場所を正確に思い出そうとしていた。

えーっと、ケシの実は日向のあたりが良い場所、ギシギシの葉はスカイツリーの側にまとまって生えていたはず.....。

あれ?ゼニアオイはどこだっけ?



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投稿 by フェザーリーフ Sun Mar 20, 2016 3:40 pm

こんにちは!!

さっすがレパード姉さん!
私の小説とはわけが違((あ゛あ゛?お前の小説と比べるなんて、失礼にもほどがあるだろうがぁ!!(`Д´)

ええ、はい、分かっておりますよ!!

それにしてもラッシュポーはかわいらしいし、
ウルフポーはホントミステリアスですね~。

続き楽しみにしてます!!
(第1部も見てこなくっちゃ)
(そして私も頑張らなくっちゃ)

執筆頑張って下さい!!(紅茶とクッキー持っていきましょうか)
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投稿 by レパードクロー Fri Mar 25, 2016 1:40 pm

フェザーリーフ wrote:こんにちは!!

さっすがレパード姉さん!
私の小説とはわけが違((あ゛あ゛?お前の小説と比べるなんて、失礼にもほどがあるだろうがぁ!!(`Д´)

ええ、はい、分かっておりますよ!!

それにしてもラッシュポーはかわいらしいし、
ウルフポーはホントミステリアスですね~。

続き楽しみにしてます!!
(第1部も見てこなくっちゃ)
(そして私も頑張らなくっちゃ)

執筆頑張って下さい!!(紅茶とクッキー持っていきましょうか)


コメントありがとうございます!

羽っ葉さんの小説もミステリアスでおもしろいですよ!
ラッシュポーはおてんば娘なのです^^

一部を見てくださるとは嬉しい限りです!
羽っ葉さんも頑張ってください!紅茶とクッキー嬉しいです!←
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投稿 by ラッキークロー Sat Mar 26, 2016 7:58 pm

 前作に続き、更新を楽しみにしている小説です(#^^#)

 個人的にロビンフリーズが気になりすぎて仕方ないです。『親父を殺した奴を許さない』の言葉、そしてライオンシャドウとブランブルスターのただならぬ隠し事......。

 今作はどんな展開が待っているのか、全力で応援しています!
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投稿 by レパードクロー Sun Mar 27, 2016 7:18 pm

ラッキークロー wrote: 前作に続き、更新を楽しみにしている小説です(#^^#)

 個人的にロビンフリーズが気になりすぎて仕方ないです。『親父を殺した奴を許さない』の言葉、そしてライオンシャドウとブランブルスターのただならぬ隠し事......。

 今作はどんな展開が待っているのか、全力で応援しています!

コメントありがとうございます!

駒鳥くんは前作であまり活躍していないキャラですが今回は彼が結構重要な人物となります。
獅子影さんとイバラさんはかなりわかりやすいんですけどね、、、

いつも幸爪さんのコメントに支えられています((

応援ありがとうございます!
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投稿 by レパードクロー Mon Mar 28, 2016 9:32 am

第6章:風の声





☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★


ゼニアオイを探しているうちにウィンド族との境界線辺りまでやってきた。

ラッシュポーはもてる嗅覚をすべて使い、必死に看護部屋で嗅いだことのあるゼニアオイの匂いを探していた。

「あ.......」

ふわりと別の猫の匂いが風に乗って運ばれてきた。こちらは風下にいるのでその猫には気付かれていないと思う。思わず隠れている木の陰から顔を出してみた。

そこには誰もがハッと息を呑むほど美しい雌猫がいた。柔らかなモスグリーンの瞳には言葉では表せない煌きがあり、焦げ茶色の艶やかな毛並みの上では日光が踊っていた。

雌猫の口には体と同じくらいの大きさのウサギがくわえられていた。

(狩りの最中なんだ)

自分と同じくらいの大きさの猫なのに、あの猫はラッシュポーが一度も捕まえたことの無いような大きさの獲物を捕まえれる。

ラッシュポーは全身に蟻がたかっているみたいにムズムズして、少し自分のことが恥ずかしくなった。

「ウィンディーポー!そろそろ帰るわよ。」

慌てて木の陰に身を隠したのと同時に、茂みの中からは二匹の戦士ともう一匹、細い小柄な雄猫が現れた。雄猫のほうは戦士ではないらしく、薬草をくわえている。

「ホワイトテイル、あなたはクロウフェザーを呼んできて。終わりにしてキャンプに戻りましょうって伝えて。」

「わかりましたアッシュフット。」

ホワイトテイルと呼ばれた白い戦士は灰色の雌猫と雄猫に頭を下げると再び茂みの中に飛び込んだ。

灰色の戦士とウィンディーポーはそれぞれ獲物をくわえてゆっくりとその後を追っていく。アッシュフットが雄猫に話しかけた。

「ところでバークフェイス、お探しの薬草は見つかった?」

「ああ。湖はいいな。薬草がわんさか生えているよ。」

なんていう会話をしながら茂みをかき分けてキャンプに戻っていく。ラッシュポーはその様子をぼんやりと見守っていた。

列の一番後ろを歩いていたウィンディーポーが視線を感じたのかいきなり振り返った。

ふとラッシュポーと目が合い、その視線が鋭くなる。彼女の緑色の瞳にははっきりとした敵意と警戒の表情が浮かんでいた。

刺すような視線から逃げるようにしてラッシュポーは薬草をつかむと走り去った。

そして急にたちどまり、方向を変えるとまた一目散に走り出した。ゼニアオイの生えている場所を思い出したのだ。

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投稿 by レパードクロー Mon Mar 28, 2016 9:55 am

第7章:ベリーの声





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「あら、ラッシュポー。あなたとヘーゼルポーが最後よ。彼女も今来たばかりなの。さ、答え合わせをするわよ。」

リーフプールの側には雄猫三匹組、マウスポー、ベリーポー、ウルフポーが座っていた。いつもどおりベリーポーとウルフポーは言い会いをしている。

持ってきた薬草を彼女の前に差し出し、尻尾をきちんと前足にかけ座りなおす。だけれども心臓はドキドキと胸の中で暴れていた。

「残念だけどヘーゼルポー。これはゼニアオイじゃなくてただの草ね。猫が食べればお腹を壊すわ。」

ゼニアオイによく似た草を返されたヘーゼルポーはしゅんとうな垂れた。「私も若い頃は同じ失敗をしたものよ」とリーフプールに慰められる。

「次はラッシュポーね。あなたは全て完璧だわ。ちゃんとギシギシは茎から摘んでいるし、ゼニアオイもばっちり。完璧なのはあなただけよ。」

照れて身体中が火照ったが悪い気分ではなかった。むしろ.......嬉しいかも。

「どこで覚えたの?ゼニアオイの生えている場所は教えていないのに。」

「看護部屋によく遊びに行っていたから。薬草置き場にあったゼニアオイからは水の匂いがしていたし。リーフプールもゼニアオイの茎をよく洗っていたから。」

と答えるとリーフプールはわかっているはずなのにわざと不思議そうな顔をした。

「なぜ洗っていることが関係しているの?」

「それは...ゼニアオイが水の近くに生えていたら当然そこはぬかるんでいると思うし、泥がついていたから湖のそばかなって思ったんです。」

「すごいわ!」

薬草のこととなると考えなくても自然と答えが出てくる。

看護部屋も戦士たちの自慢を聞くことよりもそこにいたほうが楽しいから、毎日のように通っていた。リーフプールの話も楽しい。

それに、自分はいろんな猫の病気やケガがわかる。

今だってマウスポーの右足の二本目のかぎ爪にはトゲが入り込んでいるのがわかる。

「じゃあ、キャンプに戻りましょう。今日習ったこと、忘れないでね!」

解散の合図が出された後、こっそりリーフプールにマウスポーの足のことを耳打ちした。

彼女は驚いていたけど、マウスポーを呼んで治療を行った。治療を目の前で見られることはとても貴重な体験だ。

治療が終わり、マウスポーが帰ると、リーフプールはラッシュポーに向き直った。

「ラッシュポー、あなた、戦士の仕事はあまり上手ではないわよね。」

「はい。どうしたらいいですか?」

「私の弟子になってみない?看護猫になる気はあるかしら?」
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投稿 by レパードクロー Mon Mar 28, 2016 10:09 am

第8章:雨の声





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ラッシュポーが見習い部屋から消えて一ヶ月が過ぎた。妹が一緒にいないと少し寂しい。でもあいつは自分にあった仕事を見つけたからそれはそれでいいと思う。

兄として妹を応援してやりたくなる。ベリーポーにはシスコンとからかわれたがあいつはどうなんだ。

ヘーゼルポーが大集会でよその部族の雄の見習いと仲良くしていたらすぐにその見習いにつっかかっていくくせに。

ごろごろと寝床の中で考え事をしているうちに朝が来た。

誰よりも早く起きて訓練場へ行かなければいけない。族長の訓練はとても厳しい。なのに朝は一番早く訓練を始め、終わるのはいつも日が沈んだときだ。

寝癖を整えると見習い部屋を出た。

☆★☆

森の中を小走りで訓練場へと向かっていると、ふと最近は聞こえなかった波動が聞こえてきた。

_抱きしめさせて、触れさせて、ずっとあたしの中でとらわれていて_


その今まで聴いたことの無い声にギョッとして振り向くと、小さなオークの木に絡み付いている赤紫の毒々しい色の蔓が見えた。

肩をすくめ、聞こえなかったことにして訓練場へと向かおうとしたが再びギョッとした。

目の前にはいつかの白猫がたっていた。

赤い瞳で見つめられると動けなくなる。キュウッと心臓を掴まれたようになって、脈拍が速くなる。

『虎と獅子に気をつけて』

頭の中に凛とした特徴の無い声が流れてきた。一度聞けば忘れてしまいそうな声なのにどこか獲物を逃さないような鋭さがある。

白猫はフッと微笑むと森の奥に消えていった。

空を灰色の雨雲が覆い、パラパラと雨が降り始めた。

ウルフポーの頭の中では散らばった子猫のときの記憶のピースがつながれ、一つの大きなパズルが完成しようとしていた。
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投稿 by レパードクロー Mon Mar 28, 2016 1:26 pm

第9章:子の声




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訓練場について、一匹で技の練習をしていると冷たくて低い声がした。

「もっと腰を下げろ。体が安定していない。」

「おはようございます、ブランブルスター。」

「挨拶はいい。言われたことをしろ」

「はい。」

言われたとおり、腰をグッと落とし、前足を突き出す。そのまま敵が突進してきたとして、ひらりと身をかわすとよろめいた相手にかぎ爪の一撃をくらわす。
                               スキル
だが、ブランブルスターは厳しい。もっともっと技の技術を磨かなければいつまでたっても訓練は終わらない。

僕は狩りの訓練はソーンクローやサンドストームなどの今弟子のいない猫に教わっている。

ブランブルスターは戦いばかりを教える。僕もその高度な訓練についていけるだけの力があるらしいから。

彼が僕に何を求めているかはわからないけれど、僕は思う。ブランブルスターは僕の『何か』を警戒している。そんな波動が伝わってくる。

「よし。次は大勢の戦士に囲まれたときの対処を教える。」
                                        スキル
僕は多分最年長のバーチポーとホワイトポーよりも高度な戦いの技術がある。戦えばたとえ二匹同時に襲い掛かられても勝てる自信が会る。

だけれども、僕は何かが足りない。何かを教えてもらえていない。

「聞いているのか、ウルフポー!」

「すみません!」

日はもう高く昇り、一番熱い時間帯だ。だが僕の訓練は終わらない。

夕方になってやっと終わる。降り続いていた雨もいつの間にかやんでいる。

見習い仲間の誰よりも筋肉が発達していて、若い戦士の一匹や二匹なら倒せるまでになった。なんでわかるのかって?

それは、実際によその部族の境界線まで言って狩猟猫を襲ったりしてみたからだ。

ブランブルスターが僕を中々大集会に連れて行ってくれないのも、打ち負かした戦士に正体がバレるのを防ぐため。

だから僕も強い自信がある。僕は指導者を信じている。

訓練を始めて何ヶ月かですでに一人前の戦闘術を身に着けた。でもまだブランブルスターは満足していない。

もっと強く、もっと強く。誰よりも強く、誰よりも素早く、そして、誰よりも賢く。

僕は彼を信じている。

「ウルフポー。お前もあと数週間で戦士だ。今夜の大集会に参加しなさい。」

「わかりました、ブランブルスター。」
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投稿 by レパードクロー Mon Mar 28, 2016 2:37 pm

第10章:花の声





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久しぶりにラッシュポーと話す機会ができた。丘を下りながら妹の話に耳を傾けている。

ブランブルスターが尻尾を高々と上げて進めの合図を出した。

見習いになって数ヶ月がたつけれど、大集会に来るのは初めてだった。

ベリーポーにそのことをからかわれたが、彼の鼻をへし折る勢いで回し蹴りを見せたら逃げていった。やっぱり飼い猫は臆病者だ。

「見て、ウルフポー。見習い仲間のケストレルポーと、先輩のリトルクラウドとバークフェイスとモスウィング!皆看護猫なの!」

彼女が尻尾で指し示す方向には看護猫の集団ができていた。

スター族と対話する能力を持った特別な猫たち。だけどラッシュポーはその中の誰よりも看護の知識が豊富で誰よりも治療がうまかった。

彼女の腕前はリーフプールをもしのぐ。

先日、モウルキットがグリーンコフで死んでしまったけれど、妹はその死で新たなものを学んだらしい。

だが、僕の耳が感知するあたり、ラッシュポーはどの看護猫よりもスター族と対話する能力が無い。モスウィングはそもそもスター族への敬意が感じられない。

モスウィングを除いて、あの看護猫の中でスター族と対話する能力が著しく劣っている猫は多分ラッシュポーだ。

「ほら、行きましょう。ラッシュポー。」リーフプールに促され、妹は看護猫の集団へと混ざっていった。

さて自分も見習いのところへ行かなくてはと向きを変えたとき、刺すような視線が向けられた。

ふりむくと小柄な三毛猫がジッとこちらを見つめていた。

いや、違う。僕の後ろにいるラッシュポーを見つめているんだ。

「僕の妹に何か用でも?」僕の妹に恨みがあるとかならほうっておけない。と考えてしまうのもシスコンなせいだろう。

「別に。」三毛猫はフンッと鼻を鳴らした。

「あたしを境界線近くからジッと見つめていたのよ、あの子。」

「それはよその部族の猫に興味があったからじゃないかな。」

「ああ、そう。」

言葉の一つ一つに棘がある言い方だが、彼女からも強い波動が感じられた。

_あの子看護猫なのね。あの子もエリートなのかしら?_

「看護猫だから、エリートってわけじゃないよ。」

「そう。」

僕がこの子の心を見透かしたようなことをいっても何も動じずにラッシュポーを見つめている。

この猫はすごい猫だ。と、僕は思った。何事にも動じず、全てを淡々と受け流す。

「あたしの名前を教えてあげる。ウィンディーポーよ。」

「僕はウルフポー。よろしく。」

そういって僕はニッコリと微笑んだ。



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投稿 by レパードクロー Tue Mar 29, 2016 2:33 pm

第11章:裏切りの声





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どんなに時が流れても僕は一生見習いのままではないかと思う。訓練はますます高度になってきて、毎晩寝床にたどり着くのもやっとだ。

ラッシュフットはすでに正式な看護猫になってしまったのに、僕はまだポーの名前だ。

今日も朝早く起き、訓練場に行く途中でトガリネズミを捕まえて腹に押し込んだ。

新鮮なネズミの味もあまり感じられなかった。

訓練場にたどり着いた僕を待っていたのはブランブルスターではなく、ロビンフリーズとブラックウィスカーだった。

「お前に話したいことがあって来た。」

そういってつかつかと僕に歩み寄ると、氷のように冷たい眼差しで僕を見下ろした。

ウィンディーポーの瞳よりも鮮やかで冷たい緑の瞳は僕の体を真っ直ぐに突き刺す。ブラックウィスカーは側でじっとしているだけ。

「俺がファイヤスターの息子だということは知っているな?」

「はい、ロビンフリーズ。」

「なら、話は早い。」

ロビンフリーズはそう言うとブラックウィスカーに尻尾で合図した。

彼女はコクンと頷くと、茂みの中から苔の塊を持ってきた。それは蔓でほどけないようにまとめられていた。

「これはラッシュフット、つまりお前の妹が見つけたようだ。看護部屋の掃除の最中にな。それを俺がもらった。で、中を開けると......」

ロビンフリーズが連れ合いに促すと彼女はゆっくりと包みをあけていった。

オークの葉に包まれたものは、焦げ茶色と黒の毛の束だった。

「この二色の毛皮を持っている猫はこの部族で二匹だけ。誰かわかるな?」


誰かはわかる。タイガーストライプとブランブルスターだ。

「しかもこれにはリーフプールとファイヤスターのにおいも染み付いている。これはリーフプールが隠したと見て間違いない。そしてこの毛をちぎったのは元族長だ。」

「私たち二匹はずっとファイヤスターの死の謎を探してきた。彼の暗殺を企てたのは実は部族内のものではないかということも考えていた。」

「決定的証拠を見つけたんだ。犯人はあの二匹のどちらかだ。」

そこまで言うとロビンフリーズはグッと身を乗り出してきた。

「どうだ?心当たり無いか?お前の父親は不審な動きをしていなかったか?」

「いえ、特に............」

としかウルフポーは言うことができなかった。

すると彼は鼻を鳴らして疑わしげな目つきでこちらを睨みながら、訓練場から去っていった。

ブラックウィスカーも彼の後を追って出て行った。

ウルフポーの頭のパズルの完成はもうすぐそこだった。


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投稿 by レパードクロー Wed Mar 30, 2016 5:18 pm

第12章:疑惑の声




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「ねぇ、ちょっといい?」

キャンプに戻った僕を待ち受けていたのはラッシュフットだった。

まわりに目を向けながら看護部屋の中に僕を引っ張り込んだ彼女は僕を見上げた。

「リーフプールは?」

「今薬草を採りに行っているから。あと三十分は戻ってこないよ。」

いつにもなく落ち着きのない彼女はとても焦っているようだ。一体どうしたというのだろう?

「昨日の夜は看護猫の集会だったんだけど、そこでモスウィングから奇妙な話を聞いたのよ。」

「どんな話?」

ラッシュフットはそこから先を言いにくそうにしていた。だけど促すとやっと口を開いて話し出した。

「あのね、父さんとウールフラワー.....リヴァー族の戦士、がウィンド族の境界線のあたりで一緒にいたんですって。」

目の前が真っ白になった。

父さんがよその部族の猫と会ったりするわけがない。真面目な父さんが.........。

そう信じたいが、モスウィングの話が嘘だとも言いがたい。

「あと、これはウィンディーテイルから頼まれたんだけど、明日の正午に境界線あたりに来てだってよ。彼女、バークフェイスのあとをつけてきてたらしいわ。」

「は?ウィンディーテイル?」

「ええ。戦士に昇格したみたいよ。」

僕だけポー.........?

妹にも友達にもおいていかれてしまった。

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投稿 by レパードクロー Mon Apr 11, 2016 9:04 am

第13章:憎しみの声



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言われた通り、正午にウィンド族との境界線にやってきた。

しばらくまっていると軽やかに小川を飛び越え走ってくる三毛の雌猫の姿が見えた。

ゆっくりと尻尾をたなびかせ、優雅にこちらにあるいて来る。

「ありがと。ほんとにきてくれたのね。」

「ああ。話ってなんだい?」


ウルフポーがきくと、彼女は少し間をあけてゆっくりと話した。

「あのね、今、ウィンド族でとある話が持ち上がっているの。」

「え?どんな話?」

「それはサンダー族が今、族長もいなくなったりして不安定だから一気にキャンプへ攻め込もうってワンスターが.......」

「そ、それ、君が僕に教えてもいい話?」

「よくない!だけど、父さんが戦士の掟をやぶってまで縄張りを広げようとするのは許せなくて.........」

「僕にどうしろと?」

「皆に、サンダー族の戦士たちに危険だと伝えて!」

そんな話、ブランブルスターが聞くはずがない。そう思った直後、新たな声が割り込んできた。キンキンと強い憎しみの波動が襲ってくる。

「やっぱり敵に警告していたのね、ウィンディーテイル!」

「アッシュフット!?」

ウィンド族の副長、アッシュフットだった。

彼女は異様だった。見開かれた瞳は血走っており、尻尾は二倍の太さに膨らんでいた。

そしてそのまま一直線にウルフポーへと走りよると、カギ爪をむき出した前足で耳をガツンと殴った。

全身に強い衝撃がきて、ウルフポーは思わず目をつぶった。耳から血がたらたらと流れ落ちていくのがわかる。

「やめてアッシュフット!」

雌猫二匹が取っ組み合う音が聞こえる。

目をあけるとアッシュフットは高らかに笑っていた。

「いいわ。今からあなたたちのキャンプを攻めに行くわよ。ワンスターはいないし、あたしの命令で部隊を動かす!覚悟なさい!」

そういうとくるりと向きを変えて走り去っていった。

ウィンディーテイルがちらっとこっちを見てアッシュフットを追いかけていった。
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投稿 by レパードクロー Mon Apr 11, 2016 9:13 am

第14章:戦いの声




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「皆!ウィンド族が攻めてくる!」

キャンプに駆け込んで真っ先にウルフポーは叫んだ。

空き地で食事をしていた何匹かの母猫がギョッとしたようにこちらを向き、看護部屋からブラクンファーが慌てて出てきた。

「どこだ!敵はどこだ!?」尻尾を振り回して叫ぶ。

「ブラクンファー!アッシュフットが仲間をつれて攻めてきます!縄張りを乗っ取る気です!」

幸運なことにブラクンファーは僕の話を信じてくれた。

母猫と長老たちは子猫をつれて保育部屋へと逃げ込んだ。見習いたちは指導者といっしょに戦う構えをとり、ウルフポーもその列にくわわった。

ちょうどそのとき、ブランブルスターが狩りから戻ってきた。口には仕留めたばかりのネズミがくわえられている。

「なんだ、これは?」

「ウィンド族がせめて来るそうです族長!戦う準備を!」

「そうか。」

ウルフポーは目玉が飛び出そうになった。なぜ族長はこんなにも落ち着いているのだろうか?


どたばたと騒がしい音が聞こえ、ウサギのにおいがわっとキャンプに入ってきた。

たくましいウィンド族の戦士たちがどんどんキャンプに入ってきて、最後にアッシュフットがやってきた。

「ウィンド族!サンダー族を追い出しなさい!」

どっと戦士たちがなだれこみ、サンダー族もわっと動いていった。

もみあう戦士たちに押しつぶされそうになりながら必死にウルフポーはウィンディーテイルを探した。

ウィンディーテイルはハイレッジの下に追い詰められていた。

サンダー族の戦士にではない、アッシュフットとブランブルスターに。
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投稿 by レパードクロー Mon Apr 11, 2016 9:30 am

第15章:消えた声






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「ウィンディーテイル!ウィンディーテイル!」

ウルフポーは必死に叫びながら彼女の元へと近付いた。

ブランブルスターがキッとこちらを睨み、爪を出した。その瞳には強い思いが宿っている。

「来るなウルフポー!お前は見ているんだ。裏切り者が死んでいく様を。そして学べ!強者とは何かを!」

狂っている、族長は間違いなく狂っている。

突如、ウルフポーの脳裏にライオンシャドウという猫と、あの焦げ茶色の隠された毛皮。そして恐ろしい夢たちが浮かび上がってきた。

もしかして、ファイヤスターを殺したのは父さんではなくてブランブルスターなのではないか?

ウィンディーテイルの悲鳴が聞こえた。肩から血を噴出しながらアッシュフットと取っ組み合っている。

ウルフポーは友達を助ける為に道をふさいでいる族長に飛び掛った。不意をつかれた様でブランブルスターはよろめいた。

前足にガブリと噛み付き、かぎ爪をだした足をふりまわす。口の中に血の味が広がった。

「この若造がっ!」

どーんと投げ飛ばされてウルフポーは目を回した。

再び飛び掛ってきたブランブルスターをよけ、返しざまに前足を軸にぐるりと体を回して後ろ足で柔らかい腹をけった。

ゲフッとブランブルスターは血を吐き出した。

ウィンディーテイルを見ると、頭を押さえつけられ、今にも喉を掻ききられようとしているところだった。

「ウィンディーテイル!!!」

いきなりウルフポーの目の前を黄褐色の物体が横切った。そして、真っ赤な鮮血も。

「ラッシュ.....フット?」

ウィンディーテイルの代わりに血を流して横たわっているのは看護猫の妹だった。

状況は一変し、ウィンディーテイルはアッシュフットに飛び掛っていった。

ウルフポーが慌ててかけよったが、ラッシュフットはもう息をしていなかった。

悲鳴と金切り声が聞こえ、振り向くといつの間にかワンスターとブラクンファーがブランブルスターと戦っているところだった。

ウィンド族もサンダー族の戦士もみんなが動きを止め、こちらを見ていた。

やっとのことで押さえつけたブランブルスターをブラクンファーに任せ、ワンスターはくるりとこちらをむいた。

「どういうことだ?なぜ命令も出していないのにウィンド族が攻撃をしている?アッシュフット?」

「それは....ブランブルスターに、今襲って副長と看護猫を殺せば縄張りを一部分くれてやるといわれたので..........」

アッシュフットはうつむいてこたえた。ウィンド族の間に殺気が走り抜ける。

「俺らを騙していたのか、アッシュフット!命令は嘘なのか?」

「静かに!そして、なぜブランブルスター。お前はアッシュフットにそういった?まさか、自分の一族のものを暗殺しろと?」

ブランブルスターは何もこたえない。

ワンスターはとりあえずキャンプへ戻る、といって一族を引き連れてでていった。

ブランブルスターに向けられた一族の眼差しは冷たいものだった。

「裁判をはじめよう。」ブラクンファーがハイレッジに昇ってそういった。
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第16章:真実の声





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「まず.....ブランブルスター、あなたはアッシュフットに暗殺依頼をもちかけた、そこまではいいですか?」

「.........ああ。邪魔だからな、俺が森を支配するのに。」

一族はこれまで見たことの無い族長の素顔にただただ驚いていた。

「あなたは戦士の掟を破った。これは追放に値する罪です「まって!まだある!」

ウルフポーは叫ぶとハイレッジにあがった。

「どうした、ウルフポー?」

「この猫は__族長はファイヤスターも殺したんだ!マウスファーも!」

「なっ.......」ブラクンファーが絶句した。

ウルフポーはちらりと下を見たけれど、族長はあごを上げてこちらを睨みつけているだけだった。

「証拠もある!ファイヤスターが死ぬ間際に引きちぎった毛だ!でしょう、リーフプール?」

看護部屋のカーテンがサッとゆれて、奥から薄茶色の雌猫があらわれた。口にはあの毛をくわえている。

「ええ。見つかってしまったのね、ついに。そうよ。私は遺体を調べているときにこれを見つけたの。
あの夜タイガーストライプは看護部屋で風邪の治療を受けていたから.....。ブランブルスターしか犯人はいないと思った。
ごめんなさい、隠していて。怖かったの。」

どよめきがひろがった。みんなどんどん暴かれる真実に動揺するばかりだ。

「本当か、ブランブルスター。」

「ああ。ファイヤスターは穢れた飼い猫だ。それに、マウスファーが俺とライオンシャドウのしようとしていたことに気付いた。
だから二匹とも始末した。レパードアイは無実の罪で追放した。ライオンシャドウは用済みになったので処分した。それだけだ。」

「あなたがそんな猫だとは思わなかった。」

「黙れ若造。お前は何も知らない。俺の気持ちも何も。」

「それでも信じていたんです、ブランブルスター。あなたのせいで妹まで、命を失った。」

「もういいだろう、ウルフポー。」

僕の瞳に涙が浮かんでいることに気付いたブラクンファーが尻尾で口をふさいだ。

「ブランブルスター。あなたをもう族長とも戦士ともみなしません。あなたはいくつもの殺人を犯し、それを悔いていない。
あなたの戦士名を剥奪します。あなたはこれよりブランブルクローとなり、一生どの部族にも入れません。さあ、この森からでていってください。」

ブランブルクローはにたあっと笑うと、キャンプからでていった。そして出るときに「いつかお前たちを皆殺しにしてやろう」とつぶやいた。

キャンプは不気味なほど静まり返っていた。

「そして、勇気を出して指導者に逆らい、悪事を暴いたウルフポーを俺は戦士として認めたい。いいかな?」

キャンプに賛成の声が大きく響いた。

ブラクンファーはすらすらと決まり文句をならべ、こちらを見つめた。

「ウルフポー、お前はこれよりウルフストームとなる。その勇気と気高い心をたたえて。」

一筋の雫が僕の頬をつたった。
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投稿 by レパードクロー Mon Apr 11, 2016 10:00 am

第17章:星の声






☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★


「父さん。本当のことを話してほしい。」

ラッシュフットの埋葬のあと、彼女の墓の前でウルフストームはタイガーストライプを呼び出した。

「境界線でウールフラワーと会っていたんだろう?何をしていたの?」

父さんに問い詰めると、彼は下を向いた。

「いつか、話そうと思っていた。」ゆっくりと彼はかたりだした。

「俺たちはまだ若かった。若さゆえ、思いを止めることはできなかった。
 
それで、気付けば恋人同士になっていた。ウールフラワーは優しい雌猫だった。

そして、子供を授かった。二匹の子供を。だが、もちろん育てることは不可能だ。

だがそんなとき、ハイーナペルトが二匹で会うのをやめるなら、子供を引き取るといってくれた。

俺たちはその条件を承諾し、彼女に感謝した。

俺とハイーナペルトは見習い時代の思いが復活し、つがいになった。」


そこまで話すと、タイガーストライプはふーっと息を吐き出した。

「そして今、ウールフラワーには新しい子供がいる。シーウィードポーとルックポーだ。」

「なんで話してくれなかった?」

「怖かったんだ。拒絶されるのが。すまない。」

タイガーストライプはかがんで服従の姿勢をとった。

「頭を上げてよ。父さん。この秘密は隠し通そう。もう、いいよ。」

そうすれば、誰も傷つかないから。
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投稿 by レパードクロー Mon Apr 11, 2016 10:05 am

第18章:さよならの声





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三日月の、夜だった。

心地よい風が毛皮をかき乱していく。ウルフストームはそんな夜が大好きだ。

「なあ、ラッシュフット。今夜はどれが食べたい?」

獲物置き場で夕飯を選んでいると、ふわっと誰かが横に座った。

白猫。赤い瞳の、美しい白猫。子猫のときから夢にも現実にも現れる白猫。

「あなたは、何だったんですか?」

「さあ、ね?」

「僕の森の耳、あなたに返します。これは、僕が持っていていいものではない。」

「そう。正解。もうじき星の力の三兄弟がうまれる。だからあなたは普通の猫に戻るのよ。」

「ええ。かまいません。」

「ありがとう。」


白猫は最後にそっと感謝の気持ちをささやくとどこかに消えてしまった。

振り向くと、ファイヤスターとラッシュフットの幻影が見えた。

『ありがとう。君のおかげだ』

彼らはそれだけつぶやくと、白猫と同じように消えていった。

ウルフストームの耳からは波動が消え、かわりに普通の猫と同じようにフクロウの声が聞こえてきた。










                                                                        第二部、完
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投稿 by ラッキークロー Sun Mar 05, 2017 5:59 pm

 本当に今更のコメントですが、第二部かん結おめでとうございます。

 次々に明かされる真実に圧巻のラスト。どんでん返しの連続に、読む手が止まりませんでした。

 完結されてからも時折読み返してしまう小説です。今、改めて読み返し、レパードクローsの文才に感嘆しました。

 続編があるかはわかりませんが、いつまでもファンの一員として応援しています!
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