MAGIC☆WORLD~未来を取り戻す旅~【完結】
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それぞれのお話(過去の話など)をどういう風に見たい?
Re: MAGIC☆WORLD~未来を取り戻す旅~【完結】
【第十六章 シャイニングの想い】
ようやく外へ出た時は、旅をしてから三日が経った頃だった。
外は暗く、夜になっていた。月明かりのおかげでまわりがよく見えた。
ここはもう無人島になっており、使われていない建物、すくすく育った植物たち。
姿は変わったが、何もかも懐かしい景色にホクは思えた。
ホクは目を見張った。昔を思い出す。嫌な記憶が一気によみがえった。
『逃げて!ホク!生きのびて!』
『父さん!母さん!姉さん!嫌だ!』
『お願い。私達のためよ』
姉の顔は思い出せなかったが、確かあの時、安心させるように微笑んでいた。
「大丈夫?」ルフィーナが傍に来て、ホクを慰めた。
「俺………わかった気がする。あの時、生きのびた理由」
ホクは<シャイニングスター>を取り出した。
「そして、これをお守りにしていた理由………俺は未来を救う為に、生きのびた…………?」
「そうだ、ホク。お前は未来を救う為に生きのびたんだ」
低い声に、ホクはぎくっとした。新しい声が、どこからか聞こえてくる。
カール博士が近づいてきて、興味深そうに<シャイニングスター>を見つめた。
「まさか……」
「ふっ。よくわかったな、カール博士。そのまさかだ」
「シャイニング!?」
一同は大きな声をあげた。
「しゃ、シャイニング!?あ、あの伝説のヒーロ!?」ファイトが感激した声をあげた。
「そんなにはしゃぐな。俺は伝説のヒーロ―なんかじゃない」
シャイニングは少し悲しそうな声で言った。
「シャイニング、<シャイニングスター>に意識を飛ばしておるのか?」
「察しがいいな、カール博士。その通りだ。星の猫から許可を……俺も星の猫だが……もらった。だがあんまり長い事喋れねーんだ」
シャイニングはそういうと、苦しそうに咳をし始めた。
「大丈夫ですか?」クラルテがおどおどした。
「心配いらない。ところで、ホク」
「俺?」
「……お前はな、昔は独りだった。独りで生きのび、独りで____」
「やめてくれ、シャイニング。いくらあんたでも過去の話は………」
「最後まで聞け__お前は独りだったが、こうして仲間が出来た。お前は独りで生きていける、強い奴だ。
だがな、仲間が出来、ある感情を手に入れた。それが何か知りたいか?」
ホクが答える間もなく、シャイニングは続けた。
「優しさだ」
「この俺が……?」
「お前はこいつらと出会って、たくさんの猫を助けた。国から追い出されたルフィーナを助けた。<ダークホール>に吸い込まれそうになったアイビス達、
ファイトにいじめられていたクラルテを………」
ルフィーナ、アイビス、ファイト、クラルテが視線をかわした。
「今のお前に一番必要なのは優しい心だ。この感情を忘れるな。そうすれば、必ず____」
シャイニングは言葉が途切れ、さっきよりも激しい咳をした。
「俺にはその優しさなんてなかった。だからその罪を償い、未来の英雄に託したかった__そろそろ時間みたいだな。俺の身体も…限界だ。
もっと伝えたかった事があったんだが」
シャイニングはとぎれとぎれに咳をしながら言うと、これきり喋らなくなった。
「シャイニング!」ホクは<シャイニングスター>にむかって叫んだ。
「ホク……」
「絶対、未来を救ってみせる。シャイニングの想いは無駄にできない」ホクの目つきは真剣になった。「急ごう、虹の城へ!」
虹の城は、光の島の中央で、虹色に輝いていた。
☆
「間に合ったようだな」
白い雌猫が、虹の城の入り口を見あげた。
「残念だな。もうこの世界は終わりだ。未来はもう、存在しない」
白い雌猫は不気味な笑みをうかべ、虹の城へ入っていった。
いつもよりも強い負のオーラをまとっていた。
白い雌猫が虹の城へ入ったのと同時に、満月はだんだん、赤色に染まっていった。
ライトハート- 族長
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Re: MAGIC☆WORLD~未来を取り戻す旅~【完結】
【第十七章 黒い光と赤い月】
虹の城の階段をひたすら登り続けた。カール博士が言うには、頂上に<精霊の石>を収める精霊の像があるらしい。
窓から見えた月を見て、ホクはあっと声をあげた。
「月がいつの間にか赤くなってる………?」
「嘘っ!?」ルフィーナも目を丸くした。
少し上にいたファイトが深刻な表情をした。「おい、見て見ろよ。様子、おかしくないか?」
じっとよく目を凝らすと、<水の国>のところが黒い光で光っていた。その光はだんだん強くなり、じわじわとこちらの方へやってきている。
「もうすぐこの世も<暗黒の世界>になるんだ……」
「そんなっ」ルフィーナが半泣きになった。「嫌よ、そんな事」
「ああ。はやく急ごう」
「カール博士、大丈夫ですか?」アイビスが歩けなくなったカール博士を心配そうに見ていた。
「悪いが、お前さんたち……先に行っててくれ。ジジイにはもう無理じゃ」
ファイトが困った顔をした。
すると、クラルテがカール博士のところへやってきた。
「博士、カフェ屋さんで売っている、これ、食べてください」
「それは、元気飴じゃな?」
「はい。体力がつき、疲れが吹き飛ぶんです。皆さんも、食べてください」
ホクはその飴を食べた。「凄いぞ、クラルテ」
「必要かと思って、こっそり持って来たんです」クラルテは少し照れたように言った。
「よし、先を急ぐぞ!」
ホクは気合を入れ、階段を駆け上がった。
☆
ホク達はついに頂上にたどり着いた。
階段を登りきると、ステンドグラスがたくさんある部屋についた。
火の精霊、草の精霊、水の精霊をイメージしたステンドグラスが輝いていて、豪華なシャンデリアがぶら下がっていた。
部屋の中央に、精霊の像とみられるものがあった。
ホクは鞄から<精霊の石>達を取り出し、選ばれし者達に渡していった。
「いよいよね」ルフィーナが言った。「これで本当に未来を救えるの?」
「当たり前だろ」ファイトが言った。
ホク達は精霊の像に近づこうとした。
すると、急にシャンデリアの光が消え、部屋が薄暗くなった。
「何事ですか?」アイビスが怯えた匂いを発した。
ホクはごくりとつばをのみ、<シャイニングスター>を取り出した。
「お前達、ご苦労だった」
声がどこからとなく聞こえてきた。不気味な笑い声が、聴こえてくる。
「何……?」
目の前に、黒い煙があがったかと思うと、一匹の白い雌猫が現れた。
顔に傷が入ったが、それでも恐ろしいほど美しい雌猫だった。オッドアイの目は濁り、どんよりとしている。
その雌猫は負のオーラをまとっていた。
「あの時のッ!」
ルフィーナが声をあげた。
「覚えていたのか」雌猫が鼻で笑った。
「あの時って……?」ホクは戸惑った。
「ほら、<精霊の石>をホクが勝手に持ち込んだ時よ。あなたはこいつに操られていたの!」
「……ッ………!!」
「ご機嫌いかが、ホク?あれから随分と時間が流れたわ。でも、ここで時間は止まる」
「あいつが<闇の精霊>じゃ……!」
「ふふっ。当たり。まあ、精霊の博士なら、当然の事よね?」
見下すような表情をしながら、彼女は喋った。
「クソッ……」
「みんな、精霊の像に行くわよ」
ルフィーナがそう言い、ぱっと駆け出した。
「そうはさせない!」
<闇の精霊>は叫び、呪文を唱えずに攻撃をしようとした。
危険な植物が地面から飛び出し、ルフィーナを捕まえようとした。
ホクはルフィーナを守り、植物に捕まった。
「うっ……」
「ホク!」
ルフィーナの泣き叫ぶ声が聞こえた。
「ちょうどいい。唯一私を倒せる相手を一番に懲らしめてやる」
<シャイニングスター>を取り出し、呪文を唱えようとするが力が入らない。
巻きつく力が強くなり、ホクは悲鳴をあげた。
「もうおしまい?」
「負けてたまるか………」ホクは無理やり力を入れた。
「光の精霊よ、我に力を与えよ!ライトソード!」
<シャイニングスター>の杖が剣に変わり、ホクはどうにか植物を切り裂いた。
ホクは<シャイニングスター>を構えた。
地面に着地する前に、こいつをライトソードで引き裂く。
前足を振り上げたその時、シャイニングの言葉を思い出した。
『今のお前に一番必要なのは優しい心だ。この感情を忘れるな。そうすれば、必ず____』
『俺にはその優しさなんてなかった。だからその罪を償い、未来の英雄に託したかった__そろそろ時間みたいだな。俺の身体も…限界だ。
もっと伝えたかった事があったんだが』
ホクは<シャイニングスター>をしまいこんだ。
するとその時、雌猫の身体の中に黒い宝石が見えた気がした。
ホクは黒い宝石に意識を集中させた。
ホクは植物にまた捕まったが、気にしなかった。
「ホクッ!」
ルフィーナは叫び、ホクを助けだそうと駆け出したが、カール博士に止められた。
「彼に任せるんじゃ、ルフィーナ。<闇の精霊>を倒せるのは、彼だけじゃ」
ライトハート- 族長
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所在地 : 日本
Re: MAGIC☆WORLD~未来を取り戻す旅~【完結】
【第十八章 心の中】
ホクは目をつぶり、黒い宝石に前足をゆっくりとあてた。
その時身体がしびれたが、ぐっと歯を食いしばってこらえた。
「<闇の精霊>は本来存在してはならない精霊だった。だが、俺は違うと思う。お前がいるから、俺たちも成長できる………。
辛かったんだろ?負の感情自信も。独りで居場所なんてなくて。その感情は俺にはわかる。でも、もう大丈夫だ。俺が居場所を見つけてやる。
その居場所は、心の中だ。猫達は時には負の感情も必要だ。もう、独りになる必要なんてない。
共に成長すればいいんだ。そうすればそのうち心は負の感情も受け入れる」
黒い宝石が割れる音がした。痛みもなくなっていき、植物から解放された。
ホクは雌猫とゆっくりと地面に降りた。
雌猫にはもう負の感情はなかった。
黒い宝石の光は、空高く登っていき、穏やかに消えた。
ホクはそれを完全に見送った。
雌猫はどさりとホクにもたれかかった。
ホクは雌猫を支えた。そして雌猫の顔を見た瞬間、ホクの奥底に眠っていた記憶が蘇った。
「もしかして…………」
「ホクっ!大丈夫?」
「ルフィーナ!」
仲間達がホクのまわりにやってきた。
「やったね、ホク!<闇の精霊>を倒せたわ!」
「これで世界も平和になりましたね」アイビスがにっこりと笑った。
クラルテとファイトが嬉しそうにほほ笑みあった。
「お前さんたち、喜ぶのはまだはやい。その<精霊の石>を」
「わかってるって」ファイトはそう言い、<精霊の石>をもった三匹を呼び寄せた。
そして三匹は精霊の像の前にいき、くぼみにはめこんだ。
すると、今まで輝きのなかった虹の城が、虹色に光輝き、満月も元通りに戻った。
マジックワールドもまた、ゆっくりと光を取り戻し始めた。
英雄たちは嬉しそうに笑った。
「これで未来を救えたね!」
はしゃいでいると、さっきの雌猫がゆっくりと目を開けた。
「大丈夫か?」
「………ここは………」
その声を聞いたホクは思い出した。
この雌猫は、ずっと前にあの事件で別れた
「姉さんッ!」
「姉さん!?」
姉さん__アルバニアだった。
ライトハート- 族長
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Re: MAGIC☆WORLD~未来を取り戻す旅~【完結】
【第十九章 再開、そして・・・・】
アルバニアは起き上がり、ホクを抱きしめた。
「ホク、生きていたんだな……両親の最後の望みを、叶えてくれたんだ」
「姉さんだって………でも、あれからどうして生きのびたんだ?」
「実験室から逃げて、<水の国>行きの船に乗り込んで光の島から逃げたんだ」
「とりあえず、無事でよかった………」
ホクの目に涙があふれた。
アルバニアはホクから離れた。「<シャイニングスター>も愛用しているんだな」
ホクはうなずき、<シャイニングスター>を取り出した。「もちろんだ」
仲間達が微笑ましそうに姉弟の再開を見つめていた。
アルバニアは悲しそうな顔をした。
「迷惑をかけてすまなかった、みんな。私はいつの間にか、<闇の精霊>に取りつかれていたんだ」
誰もがアルバニアを許すように、安心させるように微笑んだ。
「大丈夫ですよ。世界は平和になったのですから」
「ホク、言い忘れていた事がある」
急に<シャイニングスター>が喋り出し、ホクはぎくっとした。
「シャイニング?」
「お前は………未来へ帰らなくちゃいけない。未来を救ったら、未来は変わる。そしてお前は………」
喜んでいた空気の中、誰もが黙り込んだ。
「すまない。言いたかったのだが、この事実のせいで世界を救うのを拒むと思って」
「ホク、せっかく会えたのに」アルバニアが涙を流した。
ルフィーナ、アイビス、ファイト、クラルテ、カール博士が集まった。
「楽しかったよ、ホク。ホクに会えなかったら、魔法学校になんていけなかった。全部、ホクのおかげ!」
ルフィーナは涙を浮かべたが、にっこり微笑んだ。
「私も、まだまだ恩返ししきれていないのに………ホクさんの事は一生忘れません」とアイビス。
「その、喧嘩とかしたけどよ………お前の事、正直好きだったぜ。友達になれてよかった」ファイトは少し恥ずかしそうに言った。
「あの時は、助けてくださりありがとうございました……僕、ホクさんに出会って頑張ろうって、思えるようになりました」
クラルテが言った後、カール博士は言葉にもできないのか、何度もうなずいた。
「俺も、みんなの事、感謝している。未来に行っても、またどこかで会えるって、俺は信じている。本当にありがとう」
ぶっきらぼうで素直ではなかったホクも、この時は素直に言えた。
アルバニアがホクの前足を握った。
「今回はさよならって言えるから……寂しいけど。ホク、元気で」
「アルバニアもな」
「__そろそろ時間のようだな」シャイニングがかすれた声で言った。
ホクの足先から順に、どんどん光となって消えていく。
「みんなに出会えて、よかった」
ホクはつぶやき、白い光につつまれた。
ホクがいたところに、<シャイニングスター>が地面にぽつんと置かれていた。
<シャイニングスター>は、永久に失う事心配もなくなった満月の光に照らされて、輝いていた。
END
ライトハート- 族長
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Re: MAGIC☆WORLD~未来を取り戻す旅~【完結】
【あとがき】
こんにちは、ライトハートです。
MAGIC☆WORLDは無事、完結することができました!
未来へ帰ったホク。ホクと共に未来を救った仲間たちは、また自分の目標へ向かって突き進みます。
最初のページやアンケートでスペシャルエピソードなどを書こうと思うといいました。
内容が思いついたら、また投稿させていただきます。
今までMAGIC☆WORLDの応援ありがとうございました!
そして他の小説もまた、応援よろしくお願いします!
ライトハート- 族長
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