WARRIORS BBS
Would you like to react to this message? Create an account in a few clicks or log in to continue.

雪の結晶 ~外伝~[随時更新]

2 posters

Go down

雪の結晶 ~外伝~[随時更新]                             Empty 雪の結晶 ~外伝~[随時更新]

投稿 by アイルステラ Mon Jan 13, 2020 3:11 pm

~はじめに~

お久しぶりです。
アイルステラです!


ペタルドロップとの交換小説、"雪の結晶" を投稿してからもう半年以上が経ちました。
3000以上の閲覧数には、2匹とも感激しています♪
現在は"雪の結晶"の続編を2匹で話し合っていますが、いつの間にか裏話?を書きたい、という話も出てきて...笑笑
そんなこんなで、今回は "雪の結晶" の裏話を外伝、という形で投稿させて頂きます!

"雪の結晶 ~外伝~" は、短編集の予定です。
2匹で思いついた時に順次更新していくつもりなので、気長にお待ち頂けると幸いです♪

もちろん、"雪の結晶" の本編を読んでから見ることをオススメします。
(ネタバレの可能性があるので笑)


それでは、どうぞ!!!

アイルステラ
副長
副長

投稿数 : 247
Join date : 2018/12/27

トップに戻る Go down

雪の結晶 ~外伝~[随時更新]                             Empty Re: 雪の結晶 ~外伝~[随時更新]

投稿 by アイルステラ Mon Jan 13, 2020 7:32 pm

【第1章】

「サンドストーム!!!」

保育部屋に悲痛な叫び声が響き渡る。今、一匹の雌猫がスター族へと旅立ってしまったのだ。保育部屋の外には星が瞬いていた。

サンダー族の族長であり、サンドストームの連れ合いでもあるファイヤスターは茫然としている。ファイヤスターの隣では、娘のリーフプールとスクワーレルフライトがショックと悲しみで身体をふるわせている。看護猫のシンダーペルトは悔しそうに俯いている。

ハニーフラワーは抱いていた真っ白の雄猫、クリスタルキットの頭に鼻を乗せ、固く目を閉じた。そして、子猫を産んだばかりで命を落としたまだ若い母猫に囁きかける。

「サンドストーム...あなたは素晴らしいサンダー族の仲間。そして、素晴らしい母猫だったわ。あなたのこと、決して忘れない...」

まだ目が開いたばかりのクリスタルキットは、母猫の鼻面を鬱陶しそうに振り払おうとする。ハニーフラワーはクリスタルキットをなだめるようそっと鳴くと、子猫の頭に頬を擦りつけた。

(この子だけは───私の最後の子供になるであろうこの子だけは───失うわけにはいかない...なんとしてでも守ってみせる。)



サンドストームの遺体が保育部屋から運び出されていった。まだ子猫のクリスタルキットも、いつもと違う雰囲気を感じ取ったのか、落ち着かなげにもぞもぞ動いている。

ハニーフラワーは、シンダーペルトがファイヤスターとサンドストームの子供の様子を確かめているのを見守っていた。サンドストームにメモリーキット、と名付けられたその子猫は、産まれたばかりにも関わらずふわふわとした毛を揺らして眠っている。

「シンダーペルト...?大丈夫?」

看護猫の険しい顔を見て、ハニーフラワーは思わず声をかけた。シンダーペルトがはっとしたように微笑みを浮かべたのを見て、ハニーフラワーはそっと眉をひそめた。

「メモリーキットのことなら大丈夫よ。」

そう呟いたシンダーペルトは再びメモリーキットに向き直る。

「いいえ、シンダーペルト。私が心配しているのはあなたよ。」

メモリーキットを舐めていたシンダーペルトは一瞬戸惑うように動きを止める。そして、続きの言葉を待つかのようにハニーフラワーを振り返った。ハニーフラワーはシンダーペルトの深い青色の瞳を見つめる。

「私...?」

「ええ。昔のことを...思い出しているみたい...」

その言葉でシンダーペルトはびくりと身をすくませ、俯いた。

「昔も今も、あなたの判断は間違っていない。だから大丈夫。」

ハニーフラワーは静かな口調で看護猫を励ます。しかし、シンダーペルトは俯いたままだ。

「シルヴァーストリームを助けられなかった...サンドストームも助けられなかったわ...救えなかったのが悔しい...」

シンダーペルトそう言って唇を噛む。

「でも、あなたのおかげで助けられた猫もたくさんいるわ。」

その言葉に応えるかのように、シンダーペルトの足元のメモリーキットが小さな鳴き声をあげた。驚いたように子猫を見つめるシンダーペルトに、ハニーフラワーは微笑みかける。

「その子もそう。あなたが助けた命よ。」

シンダーペルトの目から雫が落ちた。



「ありがとう、ハニーフラワー。」

シンダーペルトの目にいつもの輝きが戻ったのを見て、ハニーフラワーは微笑みながら頷いた。

「シンダーペルト、少しいいですか?」

リーフプールが保育部屋を覗き込み、声をかけた。その目にはまだ母を失ったことによる涙で潤んでいたが、リーフプールは気丈に振舞っているようだ。リーフプールに先に外に出るように合図し、シンダーペルトはハニーフラワーを振り返る。

「ハニーフラワー、少しの間だけメモリーキットをお願いしてもいいですか?」

「ええ。わかったわ。」

ハニーフラワーはそう答え、眠っている子猫をシンダーペルトから受け取る。クリスタルキットは自分よりも小さな子猫を見て驚いたようだ。白い子猫はメモリーキットの匂いを恐る恐る嗅いで、不安そうに母猫を見上げる。

しかし、ハニーフラワーがメモリーキットを優しく舐めたのを見ると、安心したように毛を寝かせ、メモリーキットの横で体を丸める。ハニーフラワーの毛に顔を埋めたクリスタルキットは眠そうに欠伸をすると、隣のメモリーキットの小さな耳をそっと舐めて眠ってしまった。

ハニーフラワーはその様子を愛おしそうに見守ると、保育部屋のすぐ外で話すシンダーペルトとリーフプールの会話に耳を澄ませた。



「────」

「そのつもりです。本来は父親のファイヤスターが言うべきでしょうけれど...」

リーフプールが辛そうに言ったのが聞こえて、ハニーフラワーはメモリーキットの話題だと知った。しばらくの間二匹の看護猫は押し黙っていたが、シンダーペルトが重苦しい沈黙を破った。

「ハニーフラワーは心優しいからきっと引き受けてくれるけど、私達もできる限りハニーフラワーのサポートをしなくてはいけないわ。彼女はもう若くはないから、子猫が二匹に増えて負担にならないといいけど...」

その言葉を聞いてハニーフラワーはふふ、と笑った。ハニーフラワー自身、自分が歳をとっていることは自覚している。クリスタルキットを育て終わったら長老部屋へ移ろうか考えていたくらいだ。けれど、ハニーフラワーのお腹の横で安らかな寝息を立てる子猫は負担になるどころか、ハニーフラワーの幸せだ。

それに、とハニーフラワーは考える。クリスタルキットもメモリーキットも兄弟、姉妹がいなかったため、二匹はいい遊び仲間にも、仲の良い兄弟にもなるだろう。くっついて眠る二匹の子猫の頭をそっと舐め、ハニーフラワーは看護猫が保育部屋に入って来るのを待った。一年で最も寒い今、外では白い雪が降り始めたようだ。

アイルステラ
副長
副長

投稿数 : 247
Join date : 2018/12/27

トップに戻る Go down

雪の結晶 ~外伝~[随時更新]                             Empty Re: 雪の結晶 ~外伝~[随時更新]

投稿 by ペタルドロップ Tue Mar 03, 2020 2:14 pm

【第2章】


雨がぬかるんだ地面にじんわり染み込んでいく。大振りだった雨は今や小雨に変わり、くぼ地は湿気と冷気に包まれていた。

「クリスタルキット...! 頑張って...!」

土と草の匂いで充満した看護部屋では、苦しい咳が立て続けに反響している。その声はか細く、とても頼りなく聞こえた。横たわるクリスタルキットの周りには、たくさんの薬草の欠片が散らばっている。

「母さんがずっとついていてあげますからね...」励ますようにクリスタルキットの体を舐めるが、子猫は反応することがなく、ただ体が揺れるだけである。

ハニーフラワーは絶望的な声を漏らした。このまま息子は死んでしまうのだろうか。

グリーンコフに効くイヌハッカは他の患者で使い切ってしまい、今残っているクリスタルキットに使える薬草は、咳に効くヨモギギクしか残されていなかった。しかし、少し前にシンダーペルトが噛んだヨモギギクを与えようとしても、クリスタルキットは食べることができなかった。それほど衰弱しているのだ。

それでもハニーフラワーは声をかけ続けた。クリスタルキットは私の最後の子供。かけがえのない息子なのだ────






「ハニーフラワー! ハニーフラワー! 産まれましたよ...」

ハニーフラワーはぎゅっと瞑っていた目を薄く開ける。視界には自分のすぐ近くでリーフプールが一つの白い塊を必死に舐めている様子が映る。


これまでに何匹も子猫を産む場面は体験してきたが、今回に関しては特に辛かった。歳もとり、体力も落ちてきていたため苦痛を要すのはわかっており、ハニーフラワーも出産はこれで終わりにしようと考えていた。

「リーフプール、子猫をハニーフラワーのお乳に寄せてあげて」ハニーフラワーの身の周りを整えていたシンダーペルトが指示すると、リーフプールは白い子猫を横になっているハニーフラワーのお腹の近くに置いた。「雄ですよ」
白い子猫は体をもぞもぞさせ、探し求めていたものを見つけると必死にお乳を吸い始めた。

子猫は一匹しか産まれなかった。ハニーフラワーは息子の暖かい小さな体を優しく舐め、幸せを噛み締めた。


この子は私にとっての最後の子供となるのだ。程なくして眠りについた子猫を見る。「本当に綺麗な白色をしているのね...」
子猫の毛皮は眩しいくらいに輝いており、ハニーフラワーは水晶のようだと思った。

考え事をしていると、シンダーペルトがチャービルをひとかたまり咥えて保育部屋に入ってきた。
「この子の名前、もう決めたかしら?」

「えぇ、決まったわ。クリスタルキットよ。水晶の子猫」クリスタルキット、と言うだけで、ハニーフラワーは愛おしさを覚えた。

「綺麗な名前ね、ハニーフラワー。この子にぴったりよ」
ハニーフラワーとシンダーペルトは目を通い合わせると互いに微笑みを漏らした。


シンダーペルトが看護部屋から出ていくと、ハニーフラワーはクリスタルキットを守るようにしっぽで囲って目を閉じる。

大切に育ててあげるからね。

あなたは私の宝物。




クリスタルキットはすくすくと育ち、くぼ地で走り回れるようにまでなった。枯葉の季節で空気は凍るように冷たいのにも関わらず、今日も白い子猫はぴょんぴょんとはしゃいでいる。

「かあさんかあさん! ぼく、ネズミ捕まえたよ!」保育部屋の外でソーレルテイルと話していたハニーフラワーの元に、クリスタルキットは白い毛玉のように転がり込んできた。

クリスタルキットはハニーフラワーの前足の前にネズミを置くと、満面の笑みで言った。「これ、かあさんにあげる」

クリスタルキットの後方にはさっき狩猟部隊から帰ってきたバーチポーが苦笑いしていたが、ハニーフラワーはおいしくバーチポーの取ってきたネズミをいただくことにした。「ありがとう、クリスタルキット」

まだ温かい獲物に口を付けると、クリスタルキットは嬉しそうにハニーフラワーとソーレルテイルの周りを一周した。

「ソーレルテイルもいる? 鳥にする?」

無邪気に尋ねられ、ソーレルテイルはうふふ、と笑うと頷く。「じゃあ、ズアオアトリをいただくわ。ズアオアトリ、どんな鳥だったか覚えてる?」

「えーっとね、ずおあとりは...」クリスタルキットは必死に考えるような顔をすると、獲物置き場へ急いで駆けていった。

「あの子はいつも元気よね。見ているだけで私も若い頃に戻った気分になれるわ」ハニーフラワーは白い子猫の後ろ姿を見てしんみりと言う。「私も無邪気で何も考えなくていい、あの頃に戻りたいわ」

ソーレルテイルはおどけた様子でヒゲをピクピクさせる。「あら、私は子猫の頃には死のベリーで死にかけたわよ?」

「そうだったわね! あの頃は本当に大変だったわ...」子猫だったソーレルテイルはダークストライプに死のベリーを食べさせられ、一度死にかけたのだ。その頃見習いだったハニーフラワーはその事件をよく覚えている。

「戻ってきたわよ」ソーレルテイルがそう知らせると同時に、彼女にも獲物が渡された。

「ずおあとり、ってこれ?」ソーレルテイルの前に置かれた鳥はズアオアトリではなく、コマドリだった。

「この鳥はね、ズアオアトリじゃなくて、コマドリっていう鳥なの。ほら、お腹の下の方が白いでしょ?」ソーレルテイルの話にクリスタルキットは熱心に相槌を打つ。「ズアオアトリはお腹の上から下まで全部オレンジ色なの。獲物置き場に行って一緒に見てみましょうか」

「うん! 見に行く!」

クリスタルキットが跳ねながらソーレルテイルに着いていく様子を後ろから眺め、ハニーフラワーはふっとため息をつく。自分の子供と過ごせる、こんな一瞬一瞬が幸せだ。
クリスタルキット、あなたは将来、どんな戦士として生きていくの?────






「クリスタルキット...」

気づけばそう口にしていた。母親の声に気づいたのか、しばらくして開けた涙に濡れた綺麗な水色の瞳が、母猫である自分に助けを求めるような目付きで見つめてきた。

ハニーフラワーは必死な面持ちで看護猫を振り返るが、シンダーペルトはただ悲しげに首を振っただけだった。「できる限り手は尽くしたわ。もう私たちもこれ以上のことはできない。奇跡でも起こらない限り、クリスタルキットは...」

「母さん」
蚊の鳴くような声でクリスタルキットがハニーフラワーを呼んだ。

「クリスタルキット...!」

必死に聞き耳立てるが、その後クリスタルキットの言葉が紡がれることはなかった。クリスタルキットはハニーフラワーの顔を見つめながら、口から深く長い吐息をつく。

目の輝きが失われたのがわかった。

私の子供────クリスタルキット────「誰か...嘘だと言って...! 早く目を覚まして!」ハニーフラワーは現実を受け入れたくなかった。

リーフプールがゆっくりと近づいてきて、焦点の合わない息子の目を舐めて閉じさせた。ハニーフラワーは震えながらそれを見つめる。

リーフプールが後ろへ下がると、ハニーフラワーはその場に伏せ、自分の鼻面をそっとクリスタルキットの体に乗せて目を閉じた。辛い病気に耐え、今安らかに眠った小さな身体がそこにはあった。
ペタルドロップ
ペタルドロップ
年長戦士
年長戦士

投稿数 : 185
Join date : 2018/03/02

トップに戻る Go down

雪の結晶 ~外伝~[随時更新]                             Empty Re: 雪の結晶 ~外伝~[随時更新]

投稿 by Sponsored content


Sponsored content


トップに戻る Go down

トップに戻る


 
Permissions in this forum:
返信投稿: