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『FATE』刻まれた宿命         【原作第三期第三巻から】【第二章まで更新】

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一番お気に入りの猫はどなた?

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投稿 by ラッキークロー Tue May 26, 2015 9:03 pm



最新話リンクはこちらから!






F A T E 』


           刻まれた宿命 



★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆


       その宿命が悲運で残酷なものだったら__

                あなたは乗り越えることができるのでしょうか?




 全くのオリジナルに近い第三期です。

 第三期の三巻の初め、ベリーポーたちが戦士になったころから物語は始まります。(プロローグを除く)そのため、ここで死んでいるはずのキャラクターが生きていたり、また死んでいたり、あるいは原作と反したキャラがつがっていたりすることが多々あります。

 あらすじは簡単です。族長の子・フェイトポーが、レインウィスカーの隠し子クロウヴァ―ポー、族長と副長の息子ナイトポー、星の力を持つライオンポー、そして物語のキーキャラクターとなる猫・ジェイポーたちと一緒に成長し、自らの宿命に立ち向かっていきます。

 また、原作とは違う要素が出てきます。原作のイメージをそのままに、少しばかり変更をくわえて、各猫たちの生き様を書いていくつもりですが、どうしても原作とは異なる感じになると思います。

 オリジナルキャラは部族内で四匹。物語が進行するにつれ、増えていくかもしれません。

 暇つぶしにでもなってくれればうれしいです。そして、キャラの感情を少しでも感じて頂き、物語を楽しんでいただければ、本当に幸せです。どうぞ、よろしくお願いします。






登場猫紹介 ※◆はオリジナルキャラ。




 ◆フェイトポー【宿命の足】
  主人公。蒼い目に、夜空のごとく美しい黒色の毛をした雌猫。右前脚が白い。
  父はファイヤスター、母はサンドストーム。兄はセロウポー。指導者はストームファー。
  明るく快活で、並外れた好奇心の持ち主。不正をそのままにしておくことを許せないが、心の奥底では、野心家タイガースターを尊敬している。そのことに本人は気づいていない。

 ◆クロウヴァ―ポー【クローバー足】
  斑点のある灰色の雌猫。煌めく琥珀色の目をしているが、左目は醜くつぶれている。理由は誰にも話さない。
  父は亡きレインウィスカーで、母は浮浪猫のクリーバー【断ち切る者】。
  物静かで冷静で無邪気だが、その声はこの世に疲れた老猫の様な響きを持つ。戦士になることに異常に執着している。

 ◆ナイトポー【夜の足】
  シャドウ族。真夜中の夜空よりも冷たい漆黒の毛に、星の光のような黄色い目の雄猫。
  父はブラックスター、母はラシットファー。指導者はロウワンクロー。
  淡々と物事を受け止め、自分の生きるための選択を第一に優先させる。そのことに反論されると正常な判断ができなくなるほど動揺するなど、細いつららのような危うさを持つ。

 ライオンポー【ライオン足】
  指導力、判断力に優れた雄猫。父ブランブルクローのカリスマ性を引き継ぎ、早くも次期副長の候補になっているほど。
  おおらかで面白い、明るい性格。しかし、自分の大切なものに関しては、恐ろしいほどの凶暴性を見せ、何を犠牲にしても守ろうとする。族長の座を夢見ており、タイガースターとホークフロストの密会を続ける。ヘザーポーへはいまだ愛情を抱いている。

 ジェイポー【カケス足】
  冷めた見方でものを見る雄猫。目が見えないことの劣等感、自らのはかり知れない力への執着、それによって自意識過剰な面もみられる。
  フェイトポーと似た好奇心の強さを持ち、どんな出来事へも探求心を持つ、ある意味完璧主義者。星の力を失うことにすさまじいほどの恐れを持っている。フェイトポーを自分の兄弟より信頼し、二匹だけで共有する秘密も多くある。

 ホリーポー【モチノキ足】
  前向きで元気な雌猫。家族への愛情は人一倍強い。
  誰から見てもわかるほど、戦士のおきてや決まり事を守ろうとし、それが自分たちの生活を支えてくれるのだと信じている。地位の無い自分を認めることはできない。


 
サンダー族

 ファイヤスター;戦士の心を持った、素晴らしい族長。フェイトポー、セロウポーの父。

 ブランブルクロー;父親タイガースターのしがらみを乗り越えた副長。ライオンポー、ホリーポー、ジェイポーの父。

 リーフプール;看護猫。弟子はジェイポー。

 ダストぺルト;年長の戦士。

 サンドストーム;ファイヤスターの連れ合い、フェイトポーとセロウポーの母。弟子はハニーポー。

 ブラクンファー;落ち着きを持った戦士。弟子はセロウポー。

 ◆セロウポー【カモシカの足】
  濃いショウガ色と茶の雄猫。目は赤色。指導者はブラクンファー。
  強さと権力にあこがれているが、それを隠そうとせず、周りに認めさせるほどの力がある。ライオンポーをライバル視している。フェイトポーの兄で、妹のことは信頼している。
 

 ソーンクロー;弟子はポピーポー。

 クラウドテイル;弟子はシンダーポー。

 ブライトハート;クラウドテイルの連れ合い。

 アッシュファー;弟子はライオンポー。

 ソーレルテイル;ブラクンファーの連れ合い。弟子はホリーポー。

 スクワーレルフライト;ブランブルクローの連れ合い。弟子はフォックスポー。

 スパイダーレッグ

 ストームファー;弟子はフェイトポー。

 ブルック;ストームファーの連れ合い。

 ホワイトウィング;弟子はアイスポー。

 バーチフォール

 グレーストライプ;弟子はクロウヴァ―ポー。

 マウスウィスカー・ベリーノウズ・ヘーゼルテイル;新米戦士。デイジーの子供たち。

 ファーンクラウド;ダストぺルトの連れ合い。クロウヴァ―ポーに理解がある、優しく強い母猫。クロウヴァ―ポーを育てた。

 デイジー;スパイダーレッグの連れ合い。母猫として子猫の面倒を見る。

 ミリー;グレーストライプの連れ合い。妊娠している。

 ロングテイル;目が見えないが嗅覚は鋭く、ファイヤスターにいくつもの助言を与える。年若き長老。

 マウスファー;高齢の雌猫。短気で誇り高い長老。


ウィンド族

 バークフェイス【樹皮顔】
  年輩の看護猫。弟子はケストレルポー。
  一見おおらかで頼もしい雄猫だが、とてつもなく賢く、常に部族のことを気にかけている。秘密を持つことは部族を救うため、という考えを持っており、誰も知らないある禁忌を知っている。

 また更新します(∩´∀`)∩




世界説明




 ※基本は原作と一緒だが、登場する猫や起こる出来事が異なる。また、以下のオリジナル設定がある。

 これらは原作でもどのようなものか明かされていないため、作者が解釈し、考えました。原作で明かされても、多分この物語と異なる力になります。あらかじめご了承下さいm(__)m


 星の力
  その猫が持つ長所を最大限に引き延ばしてくれる能力。が、過度に使えば使うほどに体力の消耗がある。

 前世の猫
  その猫の前世の猫のこと。(原作で言えば、ジェイフェザーの前世の猫はジェイズウィング)

 意識
  猫が生活しているとき、考えたり、思ったりしていること。心の中。個人によってさまざま、それこそ星の数ほどある。

 魂の代理人
  ある猫の前世の記憶を持つ猫のこと。(ジェイフェザーは、ジェイズウィングが前世の猫である、魂の代理人)

  猫が亡くなりこの世にすさまじい遺憾、やり残した、果たせなかったことなどがある場合、その猫の記憶が他の猫に宿ることがある。宿られた猫を魂の代理人といい、自分と前世の猫、二つの記憶、意識を持つ。宿れる猫がいなかった場合、他の猫へ記憶を託すケースもある。(フォールンリーヴスがジェイフェザーに記憶を見せたときのように)
  魂の代理人にいつ前世の記憶を甦るのは分からない。きっかけが必要。一生蘇らないケースもあれば、生まれたその瞬間から記憶を持つケースもある。一般の猫には知られていない。極秘の力。(ちなみに前世の猫の記憶は、各部族スター族代表者が扱い、管理する。)

  ひとたび記憶を取り戻せば、それを成し遂げようという逆らい難い衝動に駆られる。無意識のうちに駆られてしまうこともある。衝動に打ち勝つには、よほど強い精神力が必要、また前世の猫のことを知りつくしていれば打ち勝つこともある。前世の猫の記憶がよみがえらないのに、成し遂げようという衝動だけが働くこともある。

  そして、もう一つ、魂の代理人は、相手の意識に潜り込む力を持つ。意識に入り込まれた相手は、壮絶な苦痛、不快感を感じる。意識の潜入を防ぐには、自分の意識や記憶で相手の意識を破壊するしかない。ただ、これには相当な集中力、精神力、忍耐力を使う。

 流星予知
  看護猫が持つ、スター族と対話したり、お告げを受けたり、部族の危機を察知したりする能力。
  普通は看護猫しか持たないが、まれに戦士でも力を持つ者がいる(ファイヤスターがその例。が、今は力はかなり弱まっている)。個人差があり、ほとんど働かないものもいれば、かなり強い流星予知を持つ者もいる。

  サンダー族で最も強い流星予知を持つ者はスポッティドリーフだった。ジェイポーは流星予知と同時に星の力も有しているため、力のレベルが段違いで強い。(スポッティドリーフ>イェローファング>シンダーぺルト≧リーフプール)
   


最終編集者 ラッキークロー@サクラサク [ Thu Mar 17, 2016 7:31 pm ], 編集回数 15 回
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投稿 by L ͛k ͛ Tue May 26, 2015 9:10 pm

1ファンとして、再開、更新楽しみにしています!
L ͛k ͛
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年長戦士
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http://nekoryou-seikatsu.jimdo.com/

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投稿 by ラッキークロー Thu May 28, 2015 9:46 pm

ライトニングキットs
 コメントありがとうございます!
 新BBSでもこの小説を呼んでくださってとてもうれしいです!この話の更新を頑張っていきますのでよろしくお願いします!
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投稿 by ラッキークロー Thu May 28, 2015 9:49 pm

目次


 
    プロローグ;誕生__前奏曲        ★    第十六章;私は何者なのか
                      ☆ 
 第一章;夢                ★    第十七章;宿命の戦争
                      ☆ 
 第二章;小さな秘密            ★    第十八章;慟哭
                      ☆
 第三章;バークフェイス          ★    第十九章;衝撃の戦い
                      ☆  
 第四章;目覚め              ★    第二十章;地獄の螺旋
                      ☆
 第五章;荒野と風の道           ★    第二十一章;ライオンブレイズ
                      ☆
 第六章;魂の依存             ★    第二十二章;掟と魂
                      ☆
 第七章;揺らぎ              ★    第二十三章;償い
                      ☆
 第八章;裏切り              ★    第二十四章;襲撃
                      ☆ 
 第九章;血で刻まれた誓い         ★    第二十五章;片割れ
                      ☆
 第十章;悲劇の決意            ★    第二十六章;この世の絶望
                      ☆
 第十一章;ソルを探して          ★    第二十七章;最後の希望
                      ☆
 第十二章;悪魔の息吹           ★    第二十八章;ホリーリーフとカケス
                      ☆
 第十三章;真実と虚構           ★    第二十九章;覚醒
                      ☆
 第十四章;衝撃              ★    第三十章;時を超えて巡り              
                      ☆ 
 第十五章;貴の記憶よ廻れ         ★    第三十一章;獅子の叫び
    




最終編集者 ラッキークロー@サクラサク [ Thu Mar 17, 2016 7:25 pm ], 編集回数 7 回
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投稿 by ラッキークロー Thu May 28, 2015 9:52 pm


 第三十二章;願い事

 第三十三章;全ての終わり

 第三十四章;誕生と別れ

 第三十五章;愛と宿命

 第三十六章;遙かなる世界

 エピローグ;終了曲



??



最終編集者 ラッキークロー [ Tue Nov 03, 2015 4:32 pm ], 編集回数 1 回
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投稿 by ラッキークロー Tue Sep 01, 2015 7:01 pm

プロローグ

          
誕生




★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆

 __前奏曲

 月の冷たい光の中を貫いて、一陣の風が唸りを上げる。荒々しく冷たい風は、あちらこちらにうずくまる猫たちの毛並みをかき回し、自由奔放に消えていく。

 疾風は嘲笑うかのように吹き荒れ、幾重にも生い茂る茂みを抜け、漆黒の夜空へ消え、月のもとへと駆ける。

 うずくまっていた一匹の雄猫が立ち上がった。もつれたとら柄の毛並みが月明かりのもと、黄褐色色に照らされている。長く伸びたかたい毛と、赤くぎらつく双眸を除けば、外見はたくましい雄猫と変わらない。雄猫、ブロークンテイルはひげを動かし、風にのるにおいを感じ取ろうとした。

 雄猫の目が興奮できらめいた。奴のにおいだ__役立たずのダークストライプが持ってきた情報は、本物だったのだ。奴は間もなくこの草原を通る。無防備な状態、護衛もない一匹だけの状態で。

 そこでブロークンテイルはためらった。罠か?スター族のおいぼれどもが、自分をはめようとしている可能性は十分にある。雄猫はしばらく考え込み、配下の猫たちに告げた。「茂みに隠れて見張るんだ。もし奴らがわなを仕掛けているのなら、そのままやり過ごせ。だが、奴が一匹なら__手を抜くな。失敗は許されない。......命はないものと思え」

 猫たちが再び茂みに隠れると、あたりには再び踊り狂う風の音しか聞こえなくなった。雄猫はシダの葉の下に体を伏せ、固くひんやりとした地面に顔を押し付けた。

 枯れた草木の薄っぺらいにおいと、強い乾いた土のにおいに包まれ、一団は待った。数分とも数時間とも思われる時間がたったが、何も変化はない。時折響くフクロウの鳴き声だけが、いつまでも耳の奥にこだましてはなれようとしない。

 月が傾き始めたころ、ついに待ち望んだ時がやってきた。片目だけを開けていたブロークンテイルは喜びに震え、自分の心臓の鼓動が奴にまで聞こえてしまうのではないかと馬鹿なこと思った。手下の猫たちが身動きし、茂みにこすれて微かな音を立てるのを聞き、ブロークンテイルは歯を食いしばった。音を立てるな!気配を消せ!

 そして十数秒後、細く柔らかい草を踏み分けて、一匹の雌猫が現れた。すべて氷細工のように端正な猫。強い意志の宿ったサファイアの瞳が、青白い星の光を反射して、銀の輝きを放っている。つややかな波打つ青灰色の毛は、凍える風にかき乱され、さざうつ野のごとくうねりをあげている。それが雌猫の美しい容姿と相まって、傲然とした威圧感、鉄の壁よりも強いプライドを感じさせた。

 ブロークンテイルは今すぐ手下に命令し、雌猫の首を押さえつけたいのを我慢した。今この時を迎えるまで、いったいどれほどの努力と作戦が必要だっただろうか。賢い戦士に何よりも必要なものは忍耐力だ。はるか昔、まだ保育部屋で柔らかなこけを追いかけていたころに父から聞かされた言葉が脳裏によみがえり、心の片隅を鋭い不快感が突き刺した。

 雌猫は歩みを止め、いぶかしげにあたりを見回した。強風に運ばれてきたのか、厚く塗りこめられた雲が銀河の一部__青色に輝く星の渦__を覆い隠している。その両眼に暗い影が差し、雌猫の尾がピクリと動いた。

 ブロークンテイルは唸った。「かかれ!」雄猫たちが一斉に現れ、雌猫に飛びかかった。

 が、雌猫の方が素早かった。電光石火のスピードで、飛びかかってきた茶色の猫の前脚を払いのけ、頭突きをくらわして敵三匹をまとめて叩き付けた。力強い後ろ足で地を蹴りあげると、そのまま勢いで駆け抜け、逃げ出そうとした。

 逃がしてたまるか!ブロークンテイルは雌猫の目の前に立ちふさがると、牙をむき出してすさまじい咆哮を上げた。木々が震えるかのようなその声にも雌猫は怯まず、ブロークンテイルをにらみつけ、逃げ道を捜そうとした。が、そのころには手下の猫たちは皆、円を描いて雌猫を取り囲んでいた。

 逃げ道はないと悟った時、雌猫は命乞いも逆上もせず、ただ四肢を伸ばし、月の光のもと、空を舞う尾鷲のごとく構えた。誇りと威厳に満ちたその姿を、ブロークンテイルは笑みを浮かべてあざける。「さあ......」元族長はかぎ爪を突き出し、雌猫を指した。「押さえつけろ」

 クローフェイスがパッと飛び出し、雌猫の肩を押さえつけた。雌猫は激しく唸って抵抗を試みたが、たくましい雄猫に勝つことは不可能だった。すかさずブロークンテイルは雌猫のもとへ近づくと、その記憶の中へと意識を滑り込ませた。

 雌猫が苦痛と恐怖に満ちた悲鳴を上げた。迫りくる意識にあらがおうと意識の中でのたうち回り、目の前の雄猫に記憶を読み取られまいとありとあらゆる防護を試みた。が、ブロークンテイルはその全てを払いのけると、探し求めていた『それ』を、乱暴に抉り取った。

 スポッティドリーフの記憶。

 雌猫はよろけながらも立ち上がり、懇願した。「返して!それはあの子の魂よ!」偉大なる雌猫、ブルースターは、忌々しい敵に仲間の記憶を奪わせまいと叫んだ。「あの子には、ふさわしい代理人の子がいるの!!」

 ブロークンテイルは鼻で笑った。「こいつは本当に厄介だ」__スポッティドリーフの記憶のことを指して言う__「俺が監視する。俺にはまだやり残したことがある......タイガースターのようにちんけな方法はとらない」こみ上げる笑いを抑えることができず、おぞましいざらついた笑い声を上げた。「俺が四つの部族を支配するんだ!」

 ブルースターは再び何か言おうとしたが、横からくわえられたクローフェイスの一撃にふきとんだ。なお立ち上がろうとする族長を、今度はジャギットトゥースが殴りつけ、地面へと押さえつけた。ブルースターは絶望に満ちたうなりをあげ、闇へと消えた。

 ブロークンテイルはそのまましばらく笑い続け、風の音に負けないうなりをとどろかせた。暗雲が完全に銀河を覆い尽くすと、あたりは闇と静寂に包まれた。

 記憶も野望も怒りも消え去り、後には横たわるブルースターだけが残されていた。




★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆




 __前奏曲

 コケのカーテンの向こうから聞こえた微かな音に、フェイトポーはぼやけた淡い夢から目覚めた。

 東の空はもう乳白色色に色づき、枯れてかわいた木の葉を白く照らしている。カーテンから朝露が滲み、朝日をおぼろげに映しだし、そして跳ねた。

 フェイトポーはつややかな黒色の毛皮を震わせ、ゆっくりと伸びをした。蒼い、形の良い瞳が差し込んだ僅かな日差しに反射して煌めく。兄のセロウポーも両親の緑色の目__ファイヤスターとサンドストームの、深いあの瞳__をうけつかず、燃える赤い双眸をしている。二匹が両親から譲り受けたのは、尋常でない忠誠心と信仰心の強さ、そして鉄よりも固い意志の強さだ。

 再び眠りにつこうとしたが、自分を夢から起こした微かな音が、いまだ耳の奥で響いていた。それはフェイトポーの体の中をそよ風のように駆け抜け、昨日起こった出来事を思い出させた。フェイトポーは目を開け、寝床からそろそろと立ち上がった。昨日見習いになったばかりのライオンポーの尾をよけて進み、露で湿ったこけを鼻面で押し上げると、冷たい空気の立ち込める外へ出た。

 枯葉の季節の霜が、足の下でひそやかな音を立てた。見張りをしているソーンクローの金茶色の姿が見え、息をひそめて歩みを進めた。ハイレッジに背を向けると、獲物に近づくときのように静かに目的の場所へと向かう。夜明けのパトロールの一団が帰ってきたらすぐわかるだろうが、指導者のストームファーは、雪の中にいるクロウタドリを見つけるのと同じぐらい早く自分を見つけてしまうだろう。

 そうなることを恐れ、フェイトポーはすばやく空き地を突っ切った。保育部屋の前を通る時、匂ったファーンクラウドの匂いにヒヤリとしたが、母猫が姿を見せることはなかった。ファーンクラウドは、昨日現れたあの少女、に寄り添っているのだろう。

 先日五感すべてで感じた、少女の情報を再び思い出す。銀色にも見える灰色の姿は、さながら森を渡り歩く女鹿のように美しい。昨日はかっと怒りに見開かれた瞳は澄み切った琥珀色。ふわふわした毛並みが上下するたび、フェイトポーの鋭敏な耳は、少女の吐息を捕らえていた。

 その少女__クロウヴァ―キットが現れた時の衝撃を、フェイトポーはありありと思い出した。

 まだ生後二か月に満たない小さな子猫が、たった一匹でキャンプにやってきたとき、太陽はもう高く昇っていた。見習いになったばかりのライオンポーと一緒に縄張り内を探索していたら、突然見知らぬ猫の匂いがし、かのじょは現れた。痩せて薄汚れたその姿に、一瞬、大きなアカネズミかと思ったのだ。

 その子猫は二匹に気づくなり、目を光らせ、羨望と敬意と敵意を浮かべながら、一族に衝撃の事実をもたらした。

 
 「......おい。何してるんだよ?」

 不意に聞こえたその声に振り向き、声の主を尻尾で招き寄せる。「気づかれちゃったか。来いよ、ライオンポー」

 見習いになって一日目の雄猫はそろそろとこちらへ近づくと、フェイトポーの座っている、露に濡れた倒木に飛び乗った。黄金色の毛皮が目の前をかすめ、日の光にきらりと光る。「こんなところで何してるんだ?」

 「早起きはいいものだよ?」茶化すように答えると、見習いはひげをぴくぴく動かした。「大体、昨日あんな大事件があった後に、ゆっくり眠れる方がおかしいよ」フェイトポーは言った。

 ライオンポーは顔を上げ、真剣なまなざしになった。「クロウヴァ―キットのことか?子猫が縄張りにやってくる__それも月の池に住んでいた浮浪猫の子が来るなんて、それだけでも驚きだよな」

 それだけならどんなにいいか。フェイトポーは目を閉じた。「レインウィスカーの子」フェイトポーはささやいた。「先輩に隠し子がいたなんて」

 しかもその子猫がサンダー族のキャンプにやって来て、戦士になりたいというなんて、前代未聞の大事件だ。子猫は名をクロウヴァ―と名のり、そして微かに笑みを浮かべてこう言ったのだ。「でも、今日からは違います。私の名前はクロウヴァ―キットです。私はサンダー族の一員の猫なんですから」

 当然ながら、戦士たちは皆困惑した。クロウヴァ―は父は今は亡きレインウィスカー、母は浮浪猫のクリーバーという猫だと説明し、自分にはサンダー族の戦士に血が流れていると主張した。母がキツネに襲われて死に、自分には行くところもない。だから戦士になりたいと、族長ファイヤスターに訴えた。

 その時の少女の様子を、フェイトポーは一生忘れないだろう。

 子猫とは思えないほどに美しい顔には戦士への果てしない憧れが深く刻み込まれ、何が何でもその願いをかなえたいという思いがあふれでていた。

 そのあまりの気迫に何かを感じ取ったのか、それともサンダー族の血を継ぐ猫を仲間にすることには何の抵抗も感じなかったのか、ファイヤスターはしばらく年長の戦士たちと話し合い、クロウヴァ―をサンダー族の一員として認めると発表した。すべて、昨日の話だ。

 が、浮浪猫の子を仲間として迎え入れるのに明らかに不満を持つものもいたし、それなりの悪意を抱く者もいた。デイジーの住んでいた牧場へ連れて行ったらどうかという提案も出たが、クロウヴァ―はその提案をしたバーチフォールに向かって牙をむいたのだ。「私は軟な飼い猫なんかじゃありません!戦士にならなくちゃいけないんです。それ以外に道はないんです!」

 フェイトポーはその瞬間、この愛らしくも、冷たい星の光のような感情を持つ少女に、多大な興味を抱いた__もしかするとその好奇心は、同じ部族の戦士たちに向けられたそれよりも大きかったかもしれない。

 「放浪猫の子猫」ライオンポーのその言葉は、石にぶつかって砕けたつららの欠片の様に鋭く響いた。「いったいどんな人生を送るんだろう?僕には想像がつかないよ」雄猫は半分のぼりかけた朝日に目を凝らした。その方角に、いくつかの猫の影が見える。夜明けのパトロールの一団だ。

 フェイトポーは立ち上がり、倒木から飛び降りた。「ストームファーが戻ってきたみたい。早く部屋に戻らなくちゃ__ここからデイジーの牧場まで走らされて、寝床の掃除をこの先三日間やらされる」

 「それはいいな。僕たちが掃除をしなくて済むからさ」ライオンポーは明るく言った。

 フェイトポーは軽く雄猫の肩をつつき、冷えた地面に足を振りおろした。ちらりと後ろを見ると、霜できらきら光る保育部屋が目に入った。

 私がここに来たのはどうしてだろう。理由は分からなかったが、ただ一つだけ、理解している確かなことがあった__自分はかのじょのとりこになるだろう。煌めく蜘蛛の巣に引っかかった蝶は、どうあがいてもそこから抜け出すことはできないのだ。

 



______________
 ようやくプロローグ二篇を書き終えました。長く険しい道のりでした。プロローグからこんなに時間がかかりましたが、一章からは構成がしっかり決まっているので、ここまで時間がかかる事はないと思います。

 フェイトポーとライオンポーの密かな朝の出来事。何の変哲もないこのお話が、物語に絡みつくことになるかもしれません。

 また、悪の親玉ブロークンテイルのその悪しき心。彼はタイガースターよりも残酷だったのではないでしょうか。あまり原作では取り上げられていない彼の物語を書きたくて、プロローグから濃い目に絡ませてみました。.


最終編集者 ラッキークロー [ Sat Dec 19, 2015 4:05 pm ], 編集回数 2 回
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投稿 by ラッキークロー Tue Sep 01, 2015 7:03 pm

第一章
       


★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆


 フェイトポーが目を開けると、そこは闇だった。

 煌めく黄金色の星が空に一つ輝き、瞬く間にいくつもの星が夜空を覆い始めた。フェイトポーは連なる銀河の星の流れを赤色の瞳で見つめた。前脚をそこに伸ばせば冷たい光を、顔を上げて下をちらりと覗かせればすっと溶けるような味を、体中で感じることができそうな気がする。

 「スター族さま」フェイトポーはささやき、黒い尾をゆっくり振った。「そこにいるのですか、スター族さま?」闇の上に散らばる光の欠片が、決してその問いに答えてくれないとわかっていながら、そっとつぶやく。

 フェイトポーは父、ファイヤスターそっくりの整った顔を曇らせた。私は今、夢を見ているのだろうか?だとしたら、これはすべて偽りの情景だ。雌猫は伸び上がって叫ぶ。「スター族さま!」

 星屑の一つがその声に呼応し、ほのかな青色に光った。フェイトポーは目を見張り、若葉の季節の湖面のようにまっすぐな青い星を見据えた。星は今にも消えそうに、頼りなさげに揺らめいている。息を吹きかければ、夜の闇に溶けてなくなりそうだ。

 星は何かを訴えるように、ちらちらと瞬いている。


 フェイトポーは言い知れぬ恐怖に襲われた。自分を作り上げているもの、その土台となっているかたくて大きい枠組みが壊されていくような、奇妙で不快な感覚だ。フェイトポーは後ずさり、早くこの夢から目覚めてくれと祈った。銀河には何も変わったことなどないのに、本能は恐ろしさに震えている。

 
 「フェイトポー」不意に誰かが自分の名前を呼び、フェイトポーの体がひきつった。「フェイトポー、見て」誰?必死にあたりを見回すが、誰もいない。空には星しかない。陸地は永遠に続く草原だ。

 「見なさい、目を見据えなさい」声はしつこくフェイトポーに呼びかけた。それはフェイトポーの恐怖をますます膨張させた。雌猫は悲鳴を上げた。

 「誰!?」

 さっと一陣の風が吹き、同時に甘い匂いと塩辛い味を感じた。ぽつ、ぽつと星の明かりが消えていき、あっという間に夜の闇が舞い戻る。

 フェイトポーはぶるりと震え、口の中の塩辛い味を取り除こうと前足に舌をこすりつけた。ネズミをかじる時に味わう血の味覚とよく似ている。彼女は身震いし、もう一度空を仰いだ。

 その瞬間、口から叫び声が漏れた。夜空が赤く染まっている。いや、よく見ると、夕日が放つ光、橙色の空だ。それがじわじわと空を侵食していく。

 ありえない空のコントラストに目をつぶると、突如咆哮が聞こえ、耳の奥で獣の唸りが響いた。瞼の裏にさっと光景が浮かび上がった。


 『.......グ、......ウィング』耳に聞こえるのではなく、直接心の中に響くような声だ。『あなたも行くのでしょう?あなたには聞こえるもの』

 『さあ、わからないよ』別の声が答え、黒い猫の影が浮かんだ。灰色のとら柄の、美しい雄猫だ。フェイトポーはぞっとし、瞬きをした。私は変になってしまったのだろうか。いや、この猫なら知っている!『......ン...。君には...聞こえ...ないのか?』

 何を言っているの?フェイトポーは思わず目を開けた。はるか彼方から地響きが聞こえ、ぐらぐら体が揺れ始めた。ぎょっとして爪をむき出すと、地面がどろどろした沼地にかわっているのに気付いた。

 刹那、視界が暗転した。


 
 「おい、フェイトポー!」とげとげしいその声に、フェイトポーは目覚めた。寝床に敷き詰めた羽毛が鼻孔をくすぐり、ムズムズする。暖かな日差しが歯の隙間から差し込んでくる。

 無理やり起き上がると、灰色の毛皮にぶつかった。短い唸り声に顔を上げ、琥珀色の瞳と視線がかち合う。「おはよう、フェイトポー。朝飯には目が覚めるハリネズミなんてどうだ?」ストームファーが冷ややかに言い、フェイトポーはばっと立ちあがった。指導者はじろっと自分を見降ろし、ひげをぴくぴく動かしている。

 フェイトポーはもぞもぞ動き、__わかってはいたが__ぐるりと回りを見回し、見習いが一匹もいないことを確かめた。当たり前だ。もう、朝のパトロール隊が戻ってくる時刻だ。「申し訳ありません」フェイトポーは謝罪した。

 灰色の雄猫はぴんと耳を立てた。「過ぎたことはもうしょうがない」トントンと尾で地面を二度たたく。「が、朝寝坊はもうこいつで最後にしてもらいたいな。戦士には常に強い責任感が必要だ」

 「はい、わかってます」フェイトポーは痛む頭を振った。「すみません、ストームファー」

 ほっとしたことに、ストームファーはもう怒ってはいなかった。雄猫はうなずき、くるりと向きを変えてきびきび言った。「狩りに行くぞ。ライオンポーとアッシュファーも一緒だ」

 フェイトポーはうなずいた。指導者の行動はいつも無駄がなく、すばやい。

 小さく伸びをすると、再びずきんと頭が傷んだ。フェイトポーはぎりぎり歯を鳴らし、不愉快な夢を意識の外へ追い出そうと努力した。悪い夢はさっさと忘れてしまうに限る。じゃないと、他人の不快な感情や痛みまで、感じてしまうのだ。

 私は看護猫じゃないんだけど。フェイトポーはため息をついた。まあ、一種のアレルギーのようなものだよと、あの生意気な見習い看護猫には言われた。

 __あの見習いを、どこかで見た気がして、フェイトポーは首をかしげた。

 それにしても変な夢だった。寝床から出て、改めてそう思う。あんなわけのわからない夢、厄介なわけのわからない出来事を暗示しているかのようだ。


______________
 今回、明確な猫の名前はほとんど出ていませんが、「あの猫かな?」と想像してみて頂ければ、嬉しい限りです。
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投稿 by L ͛k ͛ Mon Sep 07, 2015 8:38 pm




王国の暗殺者レイルの物語を彷彿とさせられる展開ですね。

作品のレベルがものすごいものになっていて、猫でなく人間の物語も読んでみたいとふと思いました。

ハイクオリティなこの物語の次の更新、心から楽しみにしています!
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投稿 by ラッキークロー Thu Sep 24, 2015 4:18 pm

ライトニングキットs

 コメントありがとうございます!
 レイルのような手に汗握る展開に少しでも近づけるよう、努力しますp(^^)q クオリティ......高めようと奮闘中です。一章の仲に伏線や展開に繋がる出来事を入れるのが難しく...悪戦苦闘してます。
 はい、実は猫のハイファンタジーより、人間の方が書きやすいです。でも、野生の猫たちの物語を書くのはとても楽しいので、こつこつかきたいと思います。

 はやく二章をお届けできるよう頑張ります!
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投稿 by ラッキークロー Sat Jan 16, 2016 7:18 pm



第二章

小さな秘密 



 金色の日差しが木立の隙間を潜り抜けて、嬉し気に地表を踊る。青葉の季節のみずみずしい空気が猫たちの鼻をくすぐり、
あたり一面に新鮮な獲物の香りが充満している。


 フェイトポーはでっぷり太ったハタネズミを置くと、一息ついた。狩りを始めてからまだ一時間もたっていないのに、もうすでに三匹もの
獲物__それも皆丸々と肥えた__を捕まえていた。朝の失態をうめるためにいつもよりさらに神経を張りつめて仕事に熱中していたせいか、
体のあちこちがこわばっている。軽く伸びをすると、暖かな日光が黒毛の上で跳ねた。

 一年で最も恵まれた季節の今、フェイトポーは生命の息吹を体全体で感じていた。だからだろう、今彼女は心の底から森の中で狩りをする
ことを楽しんでいた。冬の木枯らしが吹き荒れる中、骨と皮ばかりの獲物を一心に探している時には、こんな穏やかな気分になれない。環境と
いうものはそこにいる猫の心をも作るのだと、フェイトポーは改めて感じた。

 もう一仕事しようと立ち上がった時、ストームファーが血と肉のにおいをぷんぷんさせて、茂みから姿を見せた。めくれ上がった薄い唇から
白い牙がのぞいている。力強い顎をした口には、巨大なウサギがくわえられていた。それ一羽で保育部屋にいる猫全員の腹を満たせるほど、
肉付きがいい。指導者は地面にウサギを落とすと、鋭い琥珀色の瞳をこちらに向けた。「もう狩りはこれくらいでいいだろう。よくやった、
フェイトポー」

 もう機嫌は直ったらしく、優しく暖かな口調だった。フェイトポーは嬉しくなり、頭を下げた。ストームファーは真面目で堅物な猫で、弟子を
指導する時もそれは変わらない。そのストームファーに褒められるなんて、かなり珍しいことだ。「わかりました、ストームファー」


 獲物をまとめてくわえあげようとすると、かぎなれた匂いがした。目だけを動かして見やると、二匹の雄猫が盛り上がった木の根を飛び越えて
現れた。アッシュファーに、その弟子のライオンポーだ。二匹とも大量の獲物をくわえている。ストームファーが狩りを終わりにしようと灰色の
戦士に告げると、アッシュファーはそっけなく頷いた。

 「よし、いい腕前だったライオンポー。たいした出来栄えだ」獲物をくわえなおしたアッシュファーがそう褒めたが、顔に張り付けた笑みは
ぎこちなく、獲物の血で濡れた頬はわずかにひきつっていた。称賛されたライオンポーもそこまで嬉しそうでなく、小さく返事をするだけだ。
あの二匹の間には常に、見えない壁のようなわだかまりがあり、それが弟子と指導者という本来なら深いはずの関係を、ひどく薄っぺらいものに
していた。ただ、その壁はまるで湖面に張った氷の膜のように薄く見えづらく、彼らは傍から見れば優秀で模範的な師弟関係を、見事に作り
上げていた。二匹の関係性をよく知るフェイトポーさえもが、二匹をこれ以上ない素晴らしい師弟だと思ってしまうほどに。
             
                     ・・・
 だが、あの二匹からは常に張りつめた感情を感じる。


 この特異な能力を持つのは自分だけなのだろうか? フェイトポーは改めてそう思った。彼女にしてみれば、周りの戦士たちが彼らを何一つ
問題のない戦士たちだと信じて疑わないことが、逆にとてつもなく不思議だ。訓練中にかわすアイコンタクトも、何気ない日常の会話も、いつも
ぎくしゃくしている。自分のように異質な力を持っていなくても、ともに生活している仲間のことぐらい、すぐに分かるんじゃないのか?

 小鳥が甲高い声で鳴き、フェイトポーを底なし沼のように終わりのない思考から連れ出した。ストームファーがさっと合図をして駆け出し、
慌ててフェイトポーはその後を追った。キャンプへ向かう間中、フェイトポーはアッシュファーからこぼれるどろどろとした感情を感じていた。



 その日は森へ出かけた狩猟部隊のどれもが、十分な成果をキャンプに持ち帰っていた。獲物置き場にはすでに山のような獲物が積まれており、
自分が捕ってきた獲物がやけにちいさい気がする。ストームファーとアッシュファーが獲物をとったのを見届けると、フェイトポーは自分の
食事を選んだ。肉付きがよいリスをくわえ、どこで食べようかとあたりを見回した。

 すると、口いっぱいにマリーゴールドをくわえてよろよろ歩いている雄猫の姿を見つけ、思わずニヤリとした。相手に気づかれないよう静かに
忍び寄り、一気に飛びかかる。雄猫は甲高い悲鳴を上げたかと思うと、地面に倒れた。マリーゴールドの花がパッと散らばった。

 これはまずい。フェイトポーはそろそろと立ち上がり、雄猫の顔を覗き込んだ。「大丈夫、ジェイポー?」返事はない。うつぶせの顔から低い
唸り声が聞こえてくるだけだ。

 「この野郎!!」突然ジェイポーは跳ね上がり、鼻息も荒くフェイトポーににじり寄った。「僕を獲物と間違えたか? 『ああ、青葉の季節の
獲物は美味しいわ、だけどたまには筋張ったかたい獲物も食べてみたいわ......』」口をすぼませて言い、乱暴に散らばったマリーゴールドを
かき集め始める。が、本気で怒ってはいないことがわかる。

 「悪かった、本当」フェイトポーは笑いをこらえた。「お詫びの印に、向こうで食事しない?あなたの分のリスも取ってきてあげる」

 見習い看護猫はまだぶつぶつ文句を言いながらも承諾した。「いっとくけど、僕は毛深いリスは好きじゃない。ハタネズミかツグミがいい」
再びマリーゴールドの束をくわえ、ひげに触れたそのうちの一本をうっとうしそうにずらす。

 フェイトポーはうなずき、見習い部屋のわきの茂みで待ってると雄猫に言い、さっそく獲物置き場に向かった。ジェイポーが好きそうな、
ふっくらしたハタネズミを取り、前脚でたたいてならした地面に腰を下ろす。ふーっと深く息をつくと、ふと頭の中に今朝の奇妙な夢のことが
思い浮かんだ。ちょうどいい、ちょっとあいつに聞いてみよう。どうせいつものように生意気な返事しか返ってこないだろうが、もしもあれが
何かの前兆だったらたちが悪い。毎晩毎晩悪夢に悩まされるのはごめんだ。

 看護部屋から雄猫がやってくると、フェイトポーはハタネズミを彼の前に押し出した。ここでもし、獲物を前足に優しく触れさせたりしたもの
ならば、今後一週間は機嫌が悪いだろう。


 彼は目が見えないことよりも、それに同情されることを嫌う。それはフェイトポーが誰よりもよく知っていることだ。

 ジェイポーは鼻をひくつかせてハタネズミをくわえ、柔らかなもも肉を一気にかみちぎった。フェイトポーもリスを見つめ、頭から齧りつく。
太ったリスは栄養たっぷりの木の実の味がし、とてもおいしかった。あっという間に食べ終え、顎に残った肉片を丹念になめとると、まだ
ハタネズミを食べている雄猫の方を向く。ジェイポーは飲み込んだ肉を嚥下すると、さっとこちらを向いた。「今日、夢を見ただろう」

 あまりにも唐突なその言葉に、フェイトポーは息をのんだ。雄猫の青い瞳はこちらを向いていない。まるでフェイトポーではない誰か、ここ
ではないどこかを見据えているようなその瞳に、思わずどきりとする。「どうして知っているの?」

 「僕を見くびっているだろ」ジェイポーは得意げに耳を動かし、残りのハタネズミを平らげた。その間も、フェイトポーはまだ驚きから
覚めなかった。まさか、ジェイポーはついに自分の夢にまで入り込むことができるようになったのだろうか?

 ほっとしたことにフェイトポーの予測は外れていた。が、直後彼が言った言葉は、フェイトポーをその何倍も仰天させるものだった。「お前に
飛びつかれた瞬間、一気に映像が流れ込んできたんだよ。わけのわからない真っ赤な夜空と、どぎつい血の沼の映像がな。大方、またいつもの夢
だろうけど。それにしてはずいぶんときついな」ジェイポーはすっと目を細め、前足でハタネズミの骨を折った。

 フェイトポーは気難しい雄猫をまじまじと見つめた。今、ジェイポーが口にしたことは、にわかには信じがたいが、彼が自分に対して絶対に嘘を
つかないことは、百も承知している。

 「私の心の中を読んだの?」自然ときつい口調になってしまったことを隠すように、フェイトポーは耳をぴくぴく動かした。見えない青い目が
こちらを向く。その瞳の湖の底のような蒼さに、フェイトポーは身震いした。

 ほっとしたことに、ジェイポーは機嫌を損ねなかった。雄猫は気まずそうにネズミの骨を爪ではじいた。「読み取ったわけじゃない。さっき
言っただろ? 勝手に映像が流れ込んできたんだよ。それも音声やにおいは全く感じなかったから、一瞬何が見えたのかわからなかった」

 「ふーん」フェイトポーは生返事をした。「じゃあ、いったい今日の夢は何を表してると思う?」

 骨が指の間から滑り落ち、ジェイポーは唸って鼻をひくつかせた。「それがすんなり分かれば苦労はしない。もう身にしみてわかってるだろ?
スター族は僕たちに危険をほのめかして、うろたえる姿を見るのが大好きなんだよ」縞柄の前脚が骨に触れる。「だから看護猫でもないお前が
変なお告げを見て苦しんだり、ご立派な族長たちが、年中頭を悩ませなくちゃいけないのさ」

 フェイトポーは慌てた。この猫の辛辣な物言いには定評があるが、いくら何でも口が過ぎる。しかし、ジェイポーは全く悪びれた様子もなく、
ふんと鼻を鳴らした。「本当のことだろ。お前は本来なら、見習いの仕事に没頭するべきなんだよ。それなのに、毎夜毎夜、理解しがたいお告げを
聞かなくちゃならないんだ。精神的にも体力的にもきつすぎる」

 彼女は思わず顔を上げた。まさか、ジェイポーが自分を気遣ってくれるとは思いもしなかった。フェイトポーは嬉しくなった。素直じゃない
この雄猫が誰かを心配するなんて、ストームファーがブルックと口喧嘩をするぐらいに珍しい。それが自分でもわかったのか、ジェイポーは
照れ隠しで唸った。「お前に倒れられたら困るんだよ!」

 「どうして?」

 「どうしてって? もしお前が倒れたらファイヤスターがどうすると思う? 看護部屋から一歩も動きやしないさ。リーフプールの虫の居所が
悪くなるのは目に見えてるだろ。僕が迷惑だ」

 そうだろうか? フェイトポーは首をかしげた。父は兄のセロウポーにも自分にも、甘い態度をとったことがない。もちろんそんな父が彼女の
憧れであり誇りであるのだが、そんなに過保護な父親では無い気がする。

 が、ジェイポーはもう会話を続ける気はないようだった。やっとのことで拾い上げた骨を呑み込むと、さっと立ちあがる。フェイトポーは慌てて
声をかけた。「ちょ、ちょっと待て。私の夢はどうなるの?」あの気色悪い夢の正体がわからないまま、今日一日を過ごすのはごめんだ。すると、
ジェイポーはぶっきらぼうに言った。

 「......あの映像だけじゃ、いったい何を表しているのか僕にもわからない。僕が見た夢ということにして、リーフプールに聞いてみるよ。けど、
これから背後には注意しろよ。怪しいものには近づかないように」

 「わかった」フェイトポーは感謝を表して雄猫の額をなめた。ふと目と目があい__視線が交わることは決してないとわかっているが__一瞬
ぎくりとする。もしこの縞猫に正常な瞳が与えられていたら、どんな猫になったのだろうとちらりと思う。一緒に森の中を駆け巡り、夜は見習い
部屋の中で、悪戯の計画を話したりしただろうか?


 だが、もしジェイポーが看護猫でなかったならば、彼とこんな親密な関係を築くこともなかっただろう。

 だから私は今のままでいい。フェイトポーは心の中で言った。看護猫でないのに奇妙な夢を見てしまうのは困りものだが、もしそうでなければ、
私はあいつと仲良くなることはなかったのだから。不思議な力を持つ者同士築かれたこの関係が、このままずっと続いてくれればいいとぼんやりと
思った。



______________
 たいへん長らくお待たせしました、第二章です。

 そしてこんなにお待たせした(何と一年です。一年。ウサギの寿命の一割です)わりにはクオリティーが低くなりごめんなさい。
 だって受験がぁ......

 三章はもっと早く投稿します。気長にお待ちしてくだされば感無量です。
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