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私の宿命      

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投稿 by シャイニングナイト Sat Apr 24, 2021 12:32 pm

Twitterにあげたやつです。
シャイニングナイトとレッドピエロの話(if)。
めっちゃ頑張りました。でもその分めっちゃ長いです。
借りた猫さん↓
レッドピエロ ちゃん(ウルフちゃんから)
吉祥 さん(吉祥さんから)
フォナイフセイブル さん(ふささんから)


最終編集者 シャイニングナイト [ Sat Apr 24, 2021 12:33 pm ], 編集回数 1 回
シャイニングナイト
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投稿 by シャイニングナイト Sat Apr 24, 2021 12:33 pm

 月が煌々と輝く夜。フクロウが不吉な鳴き声を上げた。 空は見とれるほど美しいというのに、周りの風景はまるで地獄だった。辺りにはズタズタになった死体が散乱していて、ベタベタした血が大きく溜まった血溜まりの真ん中に小柄な雌猫がポツンと座っていた。下半身がどす黒い赤に染まっているし、辺りには吐き気がするような血の匂いに満ちているのに、雌猫は少しも動じなかった。鋭く黄色い澄んだ目は遠くを見据えている。感情は全く読み取れなかったが、ふいに、フッと笑った。馬鹿にした様な表情だったが、他人を馬鹿にしているようには、見えなかった。

 この間の黒い雌猫はまるで足を引きずるようにして歩いていた。目は虚ろで何も見えていないかのように見える。まだ下半身には血がこびりついていて落とそうともしなかった様だ。このみすぼらしい雌猫こそが、噂に聞く「閃光に駆ける夜の猫」のシャイニングナイトなのだが、誰も詳細を知りはしない。何故なら、会った猫は1匹残らず殺されているからだった。この雌猫は、ある日突然この辺りに現れ、平和な暮らしを脅かし始めたのだ。今までは、見かけるどころかこの辺りに住んですらいなかったのに。

 この前とは打って変わって血を落とし、毛並みも雑に整えた姿で、シャイニングナイトはフラフラ辺りをさまよっていた。何の目的も無く、ただボンヤリと歩いていた。その時、雌猫はふと足を止めた。とある〈二本足の住処〉の前で恐怖に目を見開き、毛を逆立てていた。だが、しばらくするとようやく毛を寝かせて警戒しながら近づいた。何を考えているのだろうか。その雌猫は憎しみと、微かに悲しみの浮かんだ目をして〈二本足の住処〉の窓に近づいて行った。

 私は〈二本足の住処〉に近づき、鼻をひくつかせた。そして、顔を引き、鼻にしわを寄せた。〈二本足〉のキツい悪臭がする。が、何か引っかかる匂いがあったので、私はもう一度神経を研ぎ澄ませて嗅いだ。そして、ビクッと身を引いた。血の匂いがしたのだ。私はヨロヨロと数歩後ずさった。〈二本足〉……血……。私の頭の中で色んな思いが渦巻く。脳裏に、血まみれで横たわる姉の姿が焼き付いて離れない。私のせいで……私を庇って姉は……。そして、慌ててその思いを振り払った。今は悔やんでいる場合じゃない。そして私は窓から中を覗いた。傷だらけの赤と黒のぶち柄の雌猫が横たわっている。私は死んでいるのかと焦り、肉球で窓を叩いた。雌猫は耳をピンと立てた。良かった……生きていた……。私は安堵のため息をついた。

 あの子、誰だろう?私は不思議に思って首を傾げた。でも、悪い子じゃなさそう。私はパタパタと駆け寄った。傷は痛かったけど、助かるかもしれないなら頑張らなくちゃ。私が窓に耳をピッタリをくっつけると、雌猫は冷静な声でたずねた。
「ねぇ、ここから出る?」
冷静で目も鋭かったが、声は少し震えていた。私は強く頷いた。もちろんだ。こんな所、1秒でも早く抜け出したい。
「鍵。開けて」
雌猫はそっけなく支持した。私は爪で引っかけてクルリと回し、鍵を開けた。抜け出そうとした事は何度もあったので慣れた手付きで動かした。雌猫が窓をこじ開けようとした。私も必死で手伝った。ようやく猫が1匹通れる隙間が出来た。私は大喜びで外へ飛び出した。その時だ。嫌な怒鳴り声がし、私は恐怖に目を見開いて振り返った。〈二本足〉が戻ってきた。

 私は小さく舌打ちをした。もう少しだったのに。私は窓の上に飛び乗った。雌猫が首を横に振って私を止めようとする。
「あんたは逃げて」
私は〈二本足〉から目を離さずに唸り声で答えた。雌猫は躊躇う。
「行けっつってんだろ!!!」
私は思わず振り返って大声で怒鳴った。雌猫は凄いスピードで駆けて行った。〈二本足〉が怒り狂って腕を振り回しながらこちらへ向かってくる。私は恐怖で足がすくんだ。〈二本足〉によって殺害された姉の姿が目に浮かぶ。嫌だ、嫌だ。今すぐに逃げ出してしまいたい。でも、今逃げたら、あの子はまた捕まってしまうかもしれない。他の猫が虐待されるかもしれない。猫の恐ろしさを見せつけてやらなければ。私は身構えで足に力を込めた。そして、〈二本足〉に飛びかかった。

 思い切り〈二本足〉の顔を引っ掻いた。〈二本足〉が怒って私を掴みにかかる。でも私はその手に噛みつき、腕を後ろ足で引っ掻いた。何度も蹴りつけ、何度も殴る。〈二本足〉は突然私を地面に叩き付け、銀色に光る鋭いものを持って現れた。ハモノだ。見た事ある。簡単に肉を切り落とす事が出来る恐ろしい道具。そのハモノが私に振り下ろされた。死ぬ。そう直感で感じ取った。まぁいいか。姉が死んだ時、本当は私が死ぬはずだったのだから。だが、〈二本足〉は私の後ろ足を引き裂いた。私はハモノを前足で弾き、〈二本足〉の腕を引きちぎらんばかりに噛み付いて逃げ出した。これで多分、あの〈二本足〉は猫を虐めない。私は足を引きずって無様に歩いて雌猫が走り去った方向へ向かった。何となく、いる場所がわかる気がした。

 意識が朦朧としてくる中、森の中へ入った。引き寄せられるような気がしたのだ。何故かは分からない。まるで、誰かがこっちだよと導いてくれているような……。すると、さっきの雌猫が茂みから飛び出してきた。心配した表情で私の周りをぐるぐる回っている雌猫の傷跡は痛々しいが、出血は止まっていたし、治りそうだと直感で分かった。私はその場にドサッと座った。足はズキズキ痛むし、血は後から後から吹き出してくる。雌猫はせっせと私の傷口を舐めている。人の心配してないで自分の心配すればいいのに。この子、姉にそっくりな事するのね……。
「あんた、名前は?」
私はため息混じりにたずねた。雌猫は困ったような顔をした。私は怪訝な顔をした。名前が無いのだろうか……?
「名前無いの?」
私はたずねた。だが、それもまた首を振った。声が出ないのか。でも、それでは呼び名に困る。
「仮の名前、私がつけていい?」
私は遠慮がちにたずねた。雌猫は目をキラキラさせて頷いてくれた。その愛らしく素直な姿は姉の姿とピッタリ重なり、胸が苦しくなった。
「レッドピエロ」
私はソっと呼び、雌猫の脇腹を尻尾で撫でた。雌猫は嬉しそうにピョンピョン跳ねた。
「私の名前はシャイニングナイト」
私は素っ気なく言うと立ち上がった。自分の名前はあんまり口にしたくない。レッドピエロが心配そうに足を見た。
「大丈夫だから。あんたは自分の心配だけしてればいいのよ」
私はそう言い放ち、森の奥へ向かった。この森からは猫の匂いがしたのだ。たくさんの猫の匂い。レッドピエロも仲間に入れてあげられないだろうか。私といても、この子は幸せになれないから。

 私はたくさんの猫のいる場所に堂々と顔を上げて入った。猫達が驚いて警戒した表情でこちらを見る。私はその猫達の住処を突き止めたのだ。
「お前は誰だ?」
私と同じぐらい真っ黒な雄猫が黄色い目で私をギロリと睨んだ。2本の尻尾を優雅に前足にかけて、私を見下ろしている。
「……シャイニングナイト。こっちはレッドピエロ」
私は躊躇った後ボソボソ答えた。レッドピエロはたくさんの猫に驚き、私の後ろに隠れている。私の名を聞いた途端、そこにいた全員の猫が恐怖に目を見開いた。
「シャイニングナイト、か。という事はお前は噂に聞く『閃光に駆ける夜の猫』か?」
黒い雄猫は落ち着いた声でたずねた。私も同じぐらい落ち着いた態度で返した。
「はい」
たったそれだけ。その一言を素っ気なく告げた。周りがヒソヒソざわめく。
「私のことはどうでもいいの。この子をあなた方の仲間に入れてやって欲しいんだけど。〈二本足〉に虐待されてた。1人じゃ可哀想だから、よろしくね」
私はそう言ってレッドピエロを引き剥がすと、その場を去った。猫達の冷たい視線と、レッドピエロの悲しみが波のように伝わってきた。

 私は自分の前足をソっと見た。ベタベタと血がまとわりついている。私はそれを舐めて落とした。私のすぐ側には、光の無い目を宙に向けている雄猫がいる。この雄猫は、森の猫の1番弱いのを腹いせに虐めてやるなどと呟いていたのだ。こんなの、野放しにしておけない。私は死体をそのまま放置し、その場を去った。

 私は、ウォリクラ族の縄張りに入るか入らないかの瀬戸際に座った。太陽が丁度真上に登ると、レッドピエロがこちらに向かって走ってきた。
「シャイニングナイト……!」
レッドピエロは嬉しそうに私の名前を呼んでピョンピョン跳ねた。私は笑みを浮かべてレッドピエロの頭を撫でてやった。無邪気で天真爛漫な姿はまるで姉のカインドウェイヴを見ているような気分になる。その度に胸が苦しくなるが、絶対にこの子を守る、絶対にこの子を姉に出来なかった分まで愛してみせると、私は誓った。

 私はいつものようにレッドピエロに会いに行った。私の毛は整えられて艶やかで、血の匂いは一切しない。私は殺しを辞めたのだ。今日は少し遅れてしまったなと罪悪感を覚えながらいつもの場所に行くと、私は凍りついた。レッドピエロが、虐めれていた。あの時私が殺した雄猫と似たような匂いがする。アイツらの仲間なんだ……。心臓を鷲掴みにされたような気分になり、吐き気がしてきた。私のせいだ。私のせいで……。雄猫達は勝ち誇った鳴き声を上げ、レッドピエロの喉を引き裂こうとした。私は稲妻のようなスピードで飛び出した。

 一瞬、何が起きたかイマイチ分からなかった。私の首元からどくどく血が流れている。雄猫達は驚いてはいるが、ざまあみろと言いたげだ。私は気力を振り絞ってそいつらに噛み付いて叩きつけた。レッドピエロが突然の出来事に唖然としている。私は雄猫達を全員殺すと、バタリと倒れ込んだ。もう息がほとんど出来ない。
「シャイニングナイト……!シャイニングナイト……!」
レッドピエロが私の名前を何度も呼んで、あの時のように傷口を舐めた。
「レッドピエロ……」
私はかすれた声で言った。喉で血がゴボゴボ音を立てる。
「あのね……。私の姉は、私を庇って死んだの」
私は囁くような声で言い続けた。レッドピエロが喋らないでというように首を横に振った。助けを呼ぼうとする。
「行かないで……。聞いて欲しいの……。どうせ私は死ぬんだから」
私はレッドピエロを引き止めた。レッドピエロは悲しみに満ちた目を向け、私のそばにたちょこんと座った。
「姉は、私を憎んでいると思った。私なんかのせいで、人生があまりにも早く終わりを告げたから」
私は体を震わせて息を吸い込もうと喘いだ。レッドピエロがまたオロオロし出す。
「でも、今分かった。きっと姉は私を憎んでなんか居ない。だって……私がそうだから」
声が出なくなりそうだ。でも、どうせ死ぬなら言いたい事を言わなくては。
「貴方を庇って私は死ぬけど、後悔はひとつもない。それどころか、嬉しいぐらいよ。貴方が生き延びられるんだから」
涙がレッドピエロの頬をつたう。私はそれを前足でソっと拭った。
「私はいつもそばに居るわ」
最後に言ったのはそれだった。絞り出すように言った後、私は笑った。レッドピエロに悲しまないでと伝えたかった。私はまるで眠るようにして、意識を手放した。

 真夜中。ウォリクラ族のキャンプの真ん中には、1匹の猫の遺体が置かれている。傷口も綺麗に洗われ、黒い艶やかな毛が月明かりに反射して輝いている。
「我が一族の者を守って死んでいったこの勇敢な雌猫を、スター族が受け入れてくださいますように」
族長の吉祥が、2本の尻尾でシャイニングナイトの毛をソっと撫でた。副長のフォナイフセイブルが思いやるようにレッドピエロの毛を舐めた。レッドピエロはずっとシャイニングナイトの遺体の傍でうずくまって動かない。
「レッドピエロ。シャイニングナイトはスター族から我々を見守ってくれている」
吉祥が空を見上げた。一点の星が、まるでシャイニングナイトの瞳のような輝きを放っていた。その時、レッドピエロは感じた。傍に寄り添ってくれるシャイニングナイトを。
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