世界は意外と狭かった。

[スパークリングムーン]

これは恐らく完結まで程遠いでしょう。
でも“いつか”は完結させますので。

[スパークリングムーン]

プロローグ

わたしは行くもん！最上階まで。兄弟もいるし。怖くなんてない。
「お姉ちゃん。もう降りようよ？」
「もう少しだけ登ってみない？」
「そうだよ。あと少しだけだから。さぁ。」
「ねぇ？危なくない？」
「危なくなんてないわ。食べられるものいっぱい出てくるし。」
「もっと先に行ってるけど後から追いついて。」
「「わかった！」私もしばらくしたら行くね！」

★ ★ ★

「わぁ！面白そーなお家！中には？どれどれ？ご飯だ！やったー！」
子猫は段ボールの中に走り込み，ご飯に飛びついた。
その時だった。
「急に何！やめて！出して！真っ暗だよ！」
二本足がやってきて段ボールの入り口を閉め，二本足の出てきたところへと段ボールを連れ去ったのだった。

★ ★ ★

「子供たちー？どこにいるのー？」
お母さん！
2匹の子猫は細い柵の隙間をくぐり抜け，ベランダの端に立った。
「ここにいるよー！おかーさんなんだかちっちゃいねー！今行く！まってて！」
そういうと，2匹の子猫はベランダの端から飛び降りた。
「だめよ！」
「お姉ちゃんなんか変だよ。」
「キャァァァ」

★ ★ ★

その日の夜10時，子猫は虹の橋を渡り，お星様になった。
一緒に落ちた兄弟も一緒に。　
ただし子猫はあるものを持っていった。
それは「ラッキー」と言う名前だった。
助かるように。9階から落ちても生きていけそうだったから。
1日だけだったけど子猫は飼い猫になった。


あの時捕まえられたら。ごめんなさい。ラッキーちゃん｡本当にごめんなさい。

あまりに短い一生だった。短すぎる一生だった。

[シャイニングムーン]

１話　

「子供たち！集まりなさい！茂みに行くわよ！」
「「「「わかった！お母さん！」」」」
お母さんの声を聞き、私は遊んでた兄弟から離れて走ってお母さんに駆け寄った。
「ねぇお母さん？なんでここらで暮らすの？」
ここなら安全だからよ、お母さんも小さい頃はここで暮らしていたことがあるの、と答えるお母さんはいつも暖かい尻尾であたしたちを守ってくれる。お母さんの言うことが間違うことはまずない。
「ここってどれくらい安全？」
「そうねぇ…とりあえずここから出なかったら、アスファルトや生垣の外に行かなければ安全よ。あとは二本足に注意するだけで大丈夫。」
「「「「わかった！」」」」

ここにはたまに、いや、毎日大きい二本足たちが通る。甲高い二本足の叫び声が生垣の向こうから聞こえたり、よくわからない大きな音がする。
それでもあたしはお母さんたちと一緒のここが大好きだ。
お母さんはもう少しあたしたちが大きくなれば他のところも見せてくれるらしい。
早く大きくなっていろんなところに行きたいな。
もちろんお母さんたちと一緒に。
他のところは行ってみたいけど、この暮らしには壊れてほしくないんだ。

───────能天気すぎるこの時のあたしは、未来の自分が引き金を引くことをまだ知らない。

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