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ブレイズソード【炎の剣】

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投稿 by Murre Mon Apr 25, 2022 8:24 pm

~13~
「やめて!私はアークキットとシュリンクテイルキットの母よ!」
雷のスピードでカーテンの前に走ってきた、狂気めいた雄猫は、一度踏みとどまった。私に価値があるのか、頭から足先までを順に見、首を振った。
「ファントムクランに必要なのは、子猫だ。」
私も彼のように、噛みつかれて殺される―そう思った時、大きな影が月光を遮った。
「ライフブロークンスピアー、お前が決定を拒んだから、お前の大事な一族が、こんな目に遭ったんだぜ?テアパターンは、さぞかしお前を恨んだだろうな」
「族長、やめてください!私が死にます!」
ライフブロークンライフスピアーはスコーピオンの目を目掛けて爪を出し、引っ掻いた。族長は乗っかるように体を倒した。
「俺の命は、一族を助けるためにある!」
腹を出させようと激しく脇腹を蹴りつけている族長がスコーピオンの喉に牙を出す。スコーピオンは顎を引き、首を守った。
「俺は、ディスルージャンメントの支配を受けない!族長は俺だ!」
スコーピオンがようやく裏返され、腹に集中攻撃を浴び始めた。
「デザードキャクタスは、死んだぞ」
スコーピオンが憎たらしく言った。
「族長!」
私の声に族長は声を上げ、細くなった瞳孔に間に当たった月光に目を眩ませ、大きな雄猫に倒された。
「キャニオン!アイススピアーを解放し…」
族長の喉は爪の出された巨大な足に潰されかけた。
「俺の話に乗ったのが、間違いだったな、ライフブロークンスピアー」
キャニオンは冷たく唾をかけると、右前脚で族長の喉を掻き切った。
ぼこぼこと音がし、何か言おうとした族長の口から血が溢れる。キャニオンは、これでもかというほど、晒された族長の濃灰の腹を引っ掻き、ずたずたにした。
キャニオンが一声啼いた。
「アイススピアーは俺の物だ!」
戦っていた猫達の動きが、一斉に止まった。
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投稿 by Murre Tue Apr 26, 2022 7:29 pm

~14~
キャニオンはまだ温かいライフブロークンピーススピアーの亡骸を一蹴し、族長が普段一族の集会を行っていた、ストーンサークルの内側に、威張った足取りで向かった。アイススピアーの猫はそろそろと後ろに下がり、ファントムクランはストーンサークルの手前側の石周辺に腰を落ち着けた。
残った足須スピアーの猫はイバラに踏み潰されている保育部屋周辺に集まり、子猫と長老を中心に固まる。ライフブロークンピーススピアーとデザードキャクタス、テアパターン達の遺体は、血に染められたままに月光に輝く。横目に短い方の足を引きずり、集団に向かうアンスティブルフット【不安定な足】の淡い灰色の体が見えた。
「元アイススピアーの猫ども、ライフブロークンピーススピアーは死んだ!」
丸かったり、尖ったり、形様々な石に囲まれたキャニオンは、勝ち誇ったように爪を出した。
「そして、俺は新たな部族、レボリューション【革命】を立ち上げ、族長となる。な?ウォームニュースプラウト」
ストーンサークル後方の、縦に平べったい岩の陰から、看護猫が姿を現した。口には小包を咥えている。
「はい」
口ごもるように頷いた時、看護猫の口の葉の隙間から、赤いふやけたような実が落ちた。
息が止まったかと思った。
ウォームニュースプラウトはそれに気づくと、落ちた実を踏み、実を隠し、包みは置いた。
もう、何も考えることが出来なくなった。
あの実はギャザーポイズン【毒集め】で、ブレイズソードは死のベリーと呼んでいた。
「副長を任命しよう。スコーピオン、お前に任命しよう」
キャニオンの命に、スコーピオンは恭しく頭を下げ、ウォームニュースプラウトが無表情で見つめた。口元が微かに動き、看護猫の目に生気が戻ったが、若葉色の目には血に飢えた狂気が宿った。横顔を見ていたので気付かなかったが、ゆっくりじっとりこちらを見た顔半分は、返り血でべっとりと塗りたくられていた。
殺猫未遂者となった元アイススピアー看護猫は、もう信頼できないと心から感じた。
もとからレボリューションメンバーの猫がもぞもぞと動き出し、真似集会が終わったと分かった。
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投稿 by Murre Fri Apr 29, 2022 6:46 pm

~15~
不意に、一匹無防備で亡き族長の傍らに立っていることが申し訳なく、そして襲われる恐怖がやって来たので、キャニオンが大きなストライドで近づくアイススピアーの集団に小走りで加わった。
アークキットとシュリンクテイルキットが怯え、目をぱちっと開けて、震えていた。
「今から呼ばれたものは、<大いなる川>に集まれ。グラァヴルが付く。」
威張ったように頷いたグラァヴルの体で一瞬月の光が遮られ、広い影が落ちた。
「ストゥリングテイル【弦尻尾】、オールドブライトネス【古い輝き】、シルクペルト【絹毛皮】、アンスティブルフット、フォーカスウォーター、【焦点水】、ディアウォーター【鹿水】、サンフラワールート」
呼ばれてぎくりとした。いったい何をされるのだろう?
呼ばれた長老、戦士、見習い二匹を見て、背筋に冷たいものが走った。
「お母さん…」
シュリンクテイルキットが尻尾を縮ませ、傷つき、年老いた猫の列を見て、目を背けた。
 
グラぁヴルが導いた先の、<大いなる川>とは、集会時の川で、元ブレイズソードとの境界線だった。
「こんばんは」
すっかり血が落とされ、清廉とした雰囲気を纏ったウォームニュースプラウトが、川に尻尾の先を浸して座っていた。魚が食いついてくるなどと考えているの?
そう思って、足元に並べられた魚を見た。そして、彼女に貼り付けられた顔の中身が見えた気がした。
私達が、魚だー。
「川周辺でとる薬草が大量に必要で、運べなさそうだったから、皆に来てもらったの」
見え透いた嘘だ。
アンスティブルフットが顔を顰め、ぼそっと言った。
「俺達は怪我してるんだぞ」
「ええ、知っているわ。まあ、魚を食べて。お腹、空いたでしょう?食べている間に診るわ」
看護猫の言葉に頷いた他の猫は、屈みこんで腹に切れ込みが入った魚に口をつけ始めた。
私もおずおずと近り、においを嗅ぐ。魚の生臭さが鼻の奥まで入り込み、鼻の通り道がむずむずした。
「うっ!」
一番体の小さい見習いの、ディアウォーターが最初に音を上げた。短めの尻尾は引きつり、目は白目をむいている。苦しそうに倒れ込み、藻掻き始めた。
それからドミノ倒しのように、族長に“不要”とされた駒の仲間たちがばたばたと倒れ、口からは魚の身と細かい骨の混じった泡が吹かれた。
「サンフラワールート?」
ウォームニュースプラウトの顔が次第に険しくなった。
ついに息絶えてしまったアンスティブルフットの琥珀色の目を見つめ、看護猫の闇に染まった、深い若草色の瞳に視線を移す。
一口かじった魚の切れ込みに爪を差し込み、キャニオンのように縦に切り裂く。
ぶちゅっと潰れる音がして、ギャザーポイズンの有毒な汁が魚の腹から血のように流れ出てきた。
「あなたはグレイシャークランを裏切った。けれど、私はグレイシャークランを信仰している」
若草色の目が陰り、ぐっと細くなった。
「サンフラワールート!生きて返さない!」
跳びかかって来た縞柄の雌猫は氷の水色に輝く猫の形をした水滴の集まりに跳ね返された。
「サンフラワールート、君は一時期看護猫の手伝いをしていたね」
氷のように美しく輝く霧に包まれたテアパターンは、私と毛が擦れあうくらい近くに立っていた。
「そうよ。けれど、それは…」
「この子を正してやれるのは、君だけだ」
「テアパターン!」
優しい澄んだ青の目は、閉じられた後、風に揺らめき、体ごと消えた。
そうだけど。私は一時期、毎日のように看護部屋に通っていた。けれどもそれは、初めての子供のニュースプラウトウォーター【新芽の水】が心配だったからだし、その頃はアイススピアーは戦士が午後十分にグルーミングできるくらい時間が余る、と言えるほど戦士を持っていたなどの条件が重なったからだ。
「テアパターン、教えて…」
「死んだ猫は戻らない!」
戦士猫と化してしまった娘の目は、かっと見開かれている。
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投稿 by Murre Sun May 01, 2022 3:02 pm

~16~
私だって、嫌だった。
戦士の掟を破らず忠実に生きていたはずなのに。
全て、あいつのせいだ。
ギャザーポイズンから奇跡的に免れた、年老い始めた母の顔をじっと見る。
私は、本当に、嫌だった。ただ、暴力で脅された。
何日かキャニオンと一緒に居る間に、私は妊娠した。
アイススピアーの看護猫が子を作ったなんて、まだ誰も知らないけれど、いずれは知ってしまう。
いっそ、話そうか。
それとも、私の手で、看護猫を絶やしてしまおうか。ほら、目の前に赤々としたギャザーポイズンが転がっている。キャニオンとの子を産むくらいなら、死んだほうがましだ。
どうせ、私はグレイシャークランの一員になど、なれない。
「ごめんね、母さん。私ね、キャニオンとの子を身籠ったの。だからー」
母には、これで伝わるだろう。母の向日葵みたいに黄金の目は、大きくなり、涙が湧いてきた。
「そう…」
私は母が怒ると思った。なにせ、母はとても厳格で、戦士の掟に忠実が支えとして成り立っている猫だからだ。
母は一言言った。
「おめでとう」
それは、皮肉でもなんでもなかった。ただ、娘の一つに成長に、心から喜んでいる様子だった。
安心した。
「ありがとう、母さん」
私は後方に重心をずらし、脚の力を抜いた。母の顔が水面の反対側に映り、母の涙が川となって流れた。
血のつながった母は、数少ない言葉で分かってくれた。
ありがとう、母さん。私は生まれてはいけないお腹の子と共に、死にます。
グレイシャークランの氷河の下で、父さんと一緒に待ってるよ。
「ウォームニュースプラウト、お疲れさま」
お腹から二つの魂が抜けだしたように軽くなった。その軽くなった体で歩く。
「ただいま、父さん」
グレイシャークランの猫は全員、私を温かく歓迎してくれた。
 
 
 
ウォームニュースプラウトの溺死が、ウォータークラウドのようになってしまったと後々感じた。
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投稿 by Murre Mon May 02, 2022 5:01 pm

~17~
一人っ子だったウォームニュースプラウトは、よく周りの見れる子で、いつも的確な判断をしていたから、私もあの子を信じる。
「父さんと一緒に待ってるよ」
そんな声が聞こえた気がした。
砂利が擦れる音がして、グラァヴルが肩でシダを押し分けながら、開けた殺戮場に、ただ一匹、生き残っている私を見、驚愕した。
「皆を、埋葬してやりましょう」
グラァヴルは一瞬爪を出したが、ウォームニュースプラウトが居ないことに気付き、低い声で尋ねた。
「あいつは」
「入水自殺したわ」
雄猫をその後、無視して冷えたアンスティブルフットの遺体を埋める。
今日はあまりに多くの猫の命が奪われすぎた。そして、これからもキャニオンのいじめは続くだろう。
グラァヴルは忠誠を心から誓うキャニオンのもとへ行くため、キャンプに戻ったようだ。役立たず、と悪態をつきながら川沿いの木陰に柔らかな体を埋めていく。
「かわいそうに。少し治療したら、すぐ見習いに復帰できたのに」
フォーカスウォーターとディアウォーターの怪我の程度を診て、黙禱する。多分、ウォームニュースプラウトの診断を、キャニオンは聞かなかったのだろう。
すっかり毒を取り除き、流れ、入れ替わる川の水で洗った、食べかけで放置されていた魚達を、今積んだ山の上に一つずつ置く。
「グレイシャークランの皆様が、お守りくださいますように」
私の呟きが、聞こえたか確かめたくなり、周辺を見回した。
少し、テアパターンのように現れてくれるのでは、と心の隅で期待したのだ。
氷河の無い森は変に静かで、川の向こうには、当たり前のように昇る朝日が、心配するように顔を覗かせた。
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投稿 by Murre Tue May 03, 2022 1:03 pm

~18~
アークウォーターの指導者はグラァヴルで、シュリンクテイルウォーターの指導者はスコーピオンになった。ヘイズレインファーの子供達、ラスターウォーターはキャニオン、ハィアスィンスウォーターはプラァトゥ【台地】、イクストゥリームパターンウォーターはサマソールト【宙返り】からそれぞれ指導を受けることになった。
全員生後六か月に達していないが、キャニオンの下した決定に一言でも異議を唱えようものなら、骨に到達するまで攻撃され、ディスルージャンメントの笑いの者にされるだろう。
私達、純な部族猫だった者達は、毎日奴隷として働かされている。全員、強くがたいの良い雄猫部族に勝てるわけもなく、反抗しようものなら、前述の通りにされてしまうだろう。キャニオンがいかに冷酷かは、もう誰もが分かり切っていた。
「サンフラワールート、ツグミを落とし、スコーピオン様のお食事に泥を被せた。よって、ひげ抜きの刑だ」
持って来たツグミの咥え方を直す行動が誇張され、今日四つ目の体罰が私に下されてしまった。
もう、元アイススピアーで、罰を受ける仲間に同情する者はいない。それどころではないのだ。全員、二倍の広さとなった自らの縄張りで何をすることもなく、下の者を動かし、いじめることに快楽を覚えたディスルージャンメントに従うだけで精一杯だ。
また、見習いは嘘を吹き込まれ、残酷な戦い方を教わっている。
それに、数少ない雌猫は無理やりと言っていいほどにべたべたされ、同意していない妊娠をしていたとの猫が二匹いる。-ヘイズレインファーとダンデライオンホワイト【タンポポの白】だ。ディスルージャンメントは、居もしない敵と戦うこと、子を残すことにやたらと執着している。
びん、と音がし、光に速さで痛みが駆け巡った。
今日は右を二本抜かれた。
こんなことが一か月、二か月と続き、元アイススピアーは全員ひげが右足で数えられるほどに減り、体や尻尾には所々毛に毟られた痕があり、目は睡眠不足でくまが出来ている。
いつまでこんなことをしていたらよいのだろう。
そろそろディスルージャンメントも飽きてよい頃だろう。
私のひげを抜いたスコーピオンは、面白そうに笑った。
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投稿 by Murre Wed May 04, 2022 4:01 pm

~19~
「ライフブロークンピーススピアー、助言をください」
前族長は、疲れたように首を振った。
「俺達は準備しておくから」
そう言い、消えた。
 
やがて半月は沈み、雪が強さを増した。
吹雪の中キャンプの戻ると、殆どの猫は部屋に籠っていた。しかし、アイススピアーの屋根付きの寝床は無い。
「ブレイズソードの方に行って、獲物を捕ろうか」
固まり暖を取っていたロッククラウド【岩雲】が頭を擡げ、提案した。痩せ細り、体力の欠片もない猫達は反対し、生温かい体温の中の潜り込んだ。
今日もまた、グレイシャークランからお告げは降りなかった。いや、降ろせなかった。私達が弱っているように、また、彼らも弱っていた。
「母さん、疲れた」
力なく擦り寄ってきたのは、二女のアークウォーターだった。生後六か月は超えているのに、栄養失調で体は小さい。近くのシュリンクテイルウォーターも力尽きたように短く喉を鳴らした。
「もう、生きるのが苦しいよ…」
フォールスカイ【落ちる空】がぼさぼさの空色の背中を更に、全体に押しつけた。
「サンフラワールート、アイススピアーを救えるのは、あなただけ」
不意に、柔らかい声と温かい息という命の動きを感じた。右を向くと、通常より薄いウォームニュースプラウトが、心配そうに私を見つめていた。
「スノウクリスタルは、母さんにも、正しい使い方、教えたよね?」
ウォームニュースプラウトの、氷の張った若草色の目が、燃えるような橙に変わり、毒々しい赤色に変色した。瞳のあったところは黒く、体は濃い緑と茶の植物の垣になった。瞬きをすると、お告げの像は消えたが、残像が目の端でちらついた。
私は、本来本物の族長の居るべきストーンサークルを回り、裏の植物が茂った一角に入った。この木は、雪が降っていても実を付けていた。
私は、息子と共に、ギャザーポイズンを一族に手渡した。
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投稿 by Murre Thu May 05, 2022 8:11 pm

~20~
手足が痺れ、その後冷たくなり、終いには感覚が無くなった。もう、目を開けることもできない。
暗闇でさえも見えなくなり、私の意識は消えたー
 
「母さん、母さん!」
懐かしい声と共に体を揺すられ、薄く開けた目に氷が輝いた。
「ウォームニュースプラウト!」
私は、氷ように淡く、美しい水色の光を纏った娘の体に脇腹を押しつけ、反対側からの押し付けに目を瞬いた。
「テアパターン!」
連れ合いは優しく瞬きをし、尻尾を絡めてきた。
周りを見ると、最期までレボリューションに従わせられていた猫達の姿が一匹、また一匹とはっきりしてきた。アークウォーターをシュリンクテイルウォーターもこちらに気付き、幼い足で近寄ってきた。生前の弱々しさは微塵にも感じられなく、見習いそのものの明るさと元気が宿っていた。
「母さん、臨時看護猫を務めてくれてありがとう」
「いいえ。レボリューションから逃れられたのよ。あなたも十分、頑張ったじゃないの」
「レボリューションは、自ら獲物を捕らえられないから、飼い猫になるか滅びるかだろう」
テアパターンが、アークウォーターの頭を撫でながら、そっと言った。
「ウォームニュースプラウト、準備できたよ」
ライフブロークンピーススピアーが、デザードキャクタスとともにやって来た。
「これから何するの?」
シュリンクテイルウォーターが跳ねた。族長はウインクすると、氷でできたストーン、いや、アイスサークルの内側に入り、決まり文句を唱えた。
「アイススピアーの者は全員、サークル周辺に集まってくれ!一族の集会を始めよう」
グレイシャークラン内での意識がはっきりし、レボリューションから解放されたアイススピアーの戦士らは、喜んで族長と、副長のもとに集まった。目は薄く氷が張り、煌めいている。
「レボリューションになど、俺らはもう、捕らわれない。それで、キャニオン達を受け入れた。俺を、どうか、許してくれ」
族長は目に涙を蓄え、深く頭を下げた。予想外の謝罪に、一族は言葉が出ない。
「すべてあいつらが悪い。族長は悪くない」
副長の緑色の目が輝き、族長の脇腹に鼻づらを押しつけた。それを合図に、族長に頭を上げるように言う声が、広く、青い世界に響き渡った。
「ありがとう…」
族長はもう一度礼をし、しばらく待った。
また静かになった。
「アイススピアーはじきに、復活するだろう」
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投稿 by Murre Fri May 06, 2022 4:48 pm

~21~
「カーバニックアスィッドスポッツ、遅い、俺達、運ぶ、手伝う」
片言な猫の言葉を使ったハクトウワシは、泣き叫ぶクールウィンドを見ると、一旦熱い砂の上に下した。クールウィンドは目を見開き、俺の後ろに隠れた。
「ハクトウワシは、イヴァポレイションサンド【蒸発砂】、トビはシルクストゥリング【絹の弦】という名で、猫科の言葉が苦手なのです」
カーバニックアスィッドスポッツは、ハクトウワシに比べて何倍も流暢な猫の言葉で、頭を下げた二羽のワシ科の鳥を紹介した。
「カーバニックアスィッドスポッツは、どうして私達の言葉が話せるの?」
族長の問いに、オジロワシはちょいと舌を出した。
「実は、フォレストキングダム内の巨木の森に居る、サーベルタイガーとよく話すのです」
「サーベルタイガー【刀虎】って、なんだと思う?ダウトフラッシュ」
シャイニングクローソードは困惑した表情で俺に説明を願ったが、俺だってその猫が、どんな模様をしているかなど、知らない。
「ワシの族長に、聞いてみましょうよ」
俺の提案に、族長は再びワシの目を見た。
「私達を、そうやって運ぶの?」
「あなた、エンペラー。俺達の背中、乗る、タイガー類、脚、掴む、二組に分かれる、”要塞“、行く」
「つまり背中に乗る者と足に掴まれる者に分かれて、私達の要塞まで飛んで連れて行く、という意味です。猫語はどうしても助詞が難しいのでね」
カーバニックアスィッドスポッツが通訳し、背中に乗るように示してきた。他の鳥も尾羽を下げ、坂道を作る。
「わーい」
一番に乗ったのは、水を飲み終え上機嫌のシャープシディアンキットだった。恨めしいルリカラーキットの視線を無視し、羽毛に覆われた背中に登り、翼の付け根に座った。ハードウッドリーフはちらっと族長を見ると、同じくカーバニックアスィッドスポッツの背中に登った。
「俺達は、脚に乗りましょう」
一族が順調に背中に乗るのを見ていた族長は、「そうね」と頷き、ワシがホバリングするのを待った。
鋭い爪の付いた、ごつごつした皮膚の脚が、俺達の胴を掴んだ。
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投稿 by Murre Sat May 07, 2022 4:10 pm

~22~
俺を掴んだイヴァポレイションサンドは、ブレイズソードを崩れた日干し煉瓦が積まれた、原形を留めていない四角錐の人工物の中まで颯爽と跳び、日陰に入るとゆっくりと下降し、まず俺を下ろした。
族長はもう着き、全員居るか、目視で確認していた。
「全員居るわね」
安心したような声の裏側には、未知の要塞に対する恐怖が隠れていた。さっと脇腹を擦り付け、小さく喉を鳴らす。シャイニングクローソードの瞳が輝いた。
「エンペラー、こっち、それ以外、付いてくる」
シルクストゥリングが、族長以外を、ワシ二羽の高さがある穴の中へ案内した。スィンアイスストレッチが一族に言葉をかけ安心させている。
「俺も行く」
カーバニックアスィッドスポッツは族長を見、俺を見た。シャイニングクローソードはおいでと尻尾を振った。
オジロワシに案内された間には、巨体一人分が縦に入れる木の箱があり、やけに天井が高かった。壁の塗装は剥げ落ち、所々に金色の斑点が残っているのみだ。木の箱の横を通ったとき、ちらと布に巻かれた巨体の干乾びた肌が見えた気がした。
「ブラックフォートエンペラー、例の旅猫でございます」
「カーバニックアスィッドスポッツ、お前は予定の太陽の傾きを、遅れた。サリテュードファイヤーワークス【孤独の花火】が罰を言い渡すだろう」
「すみませんでした。失礼します」
カーバニックアスィッドスポッツは、じっと族長の目を見ると、広間を出て行った。
「シャイニングクローソードと言ったね。夢で会ったきりだね」
「はい」
族長は怯み様子を全く見せず、相槌を打った。
「君は?」
「私はブレイズソード副長の、ダウトフラッシュです」
ヒゲワシは、ほほうと羽を撫でつけた。
「サボテン占い者の事だね。彼らは王が死んだら予言能力を捨て、王になる。私もまた、そうだった」
貫禄のある喋りをするが、このワシは見るからに若い。何故この鳥が”王”とやらに就任したのだ?黒い目からは何も読み取れなかった。
「スチールアウェイデザードキングダムについて、少し紹介しましょうかね。旅猫の王」
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投稿 by Murre Sun May 08, 2022 2:25 pm

~23~
つまり、こういうことだ。
ここら辺にはワシ王国のスチールアウェイデザードキングダム、タカ王国のフレキメデスフォレストキングダム、ハヤブサ王国のシャープクローグレイシャーキングダムの三つの王国があり、それぞれの族長は王で、エンペラーと名に付く。
三王国に一応境界線はあるが、前羽鳥な為、峡谷だろうとなんだろうと関係ない。
デザードキングダムの事しか教えてくれなかったが、ワシ達は砂漠に生えているサボテンを打ち壊して、先祖の部族であるオアシスからのお告げを読み取るそうだ。
そして、ブラックフォートエンペラーは、好きなだけぼブレイズソードの滞在を認めたが、一つ忠告を付け加えた。
「氷河に住むグレイジャーキングダムには近づかない方がいい。あそこのシャイニングホライズンエンペラー【輝く水平線の皇帝】は恐ろしいほど残酷で、猫をも食べる」
さっと目に怯えを横切らせたシャイニングクローソードにヒゲワシは笑いながら言った。
「ワシ仲間は猫を食べません」
族長は頷き、天井の高い部屋を出た。
 
「あれ、何だろう?」
ハイエナアイファイヤが妹のコールドウォーターフォールファイヤに耳打ちした。
ブレイズソードは今、天井の崩れた広い広間で、見習いとみられる比較的体の小さな雑用ワシ達の獲って来た、ウサギやミーアキャットを食べていた。
「どれ?」
看護猫見習いも空に目を細めるが、兄のように発見ができない。
二匹の見習いがわらわらやっているとき、また知らないワシが、煉瓦の階段に降り立った。頭の羽がぼさあと広がった不思議なワシで、それは一声啼いた。イヴァポレイションサンドが用件を聞いた。
「あれは、サリテュードファイヤーワークスです。ん、あれは冠羽というのですよ」
ハイエナアイファイヤのジェスチャーに目を細めながらカーバニックアスィッドスポッツが教えた。
「あいつは一羽でいることが好きで、よく空の監視をしているのですよ。あなた方をいち早く見つけたのも、実はあいつです」
オジロワシは心配事がもう降ってきたというように、せわしなく目を動かした。
「放っとけ」
あの部屋からブラックフォートエンペラーの声がし、直ぐに体が現れた。
「ステルスディザスターが、これまで以上な警告を発しているのですよ…」
カンムリワシが小さく言った。
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ブレイズソード【炎の剣】 - Page 2 Empty Re: ブレイズソード【炎の剣】

投稿 by Murre Sun May 08, 2022 2:49 pm

主な登場鳥
スチールアウェイデザードキングダム

ブラックフォートエンペラー【黒い要塞の皇帝】
デザードキングダムの王。ヒゲワシで全長が140㎝。頭が良く、力がとても強い雄。史上最年少で王になった。
 
奉仕者
カーバニックアスィッドスポッツ【炭酸斑点】
羽に白い斑点が入るオジロワシの雄。
 
サリテュードファイヤーワークス【孤独の花火】
冠羽が花火のように広がることと、目が橙色の近い濃い黄色で火を彷彿とさせること、巨体が、彼の生まれた晩に、ダイナマイトで爆発を起こしたことから名前が付けられた。家族は居ないカンムリワシ
 
イヴァポレイションサンド【蒸発砂】
水辺に住むはずなのに水はほとんど飲まず、砂漠を好む変わったハクトウワシの雄。
 
シルクストゥリング【絹の弦】
雄のトビ。翼の白い模様が細長く入り、目立つため。
 
フレキメデスフォレストキングダム

セイクリッドパァレスエンペラー【神聖な宮殿の皇帝】
フォレストキングダムの王。クマタカで全長は100㎝。巨木の森や山の事を誰よりも知っている、最年長の王。
 
予言者
ベイスメントグラウンド【地下室の地面】
オオタカの雄。黒っぽい色をしている。殆ど地下の宮殿に籠って、伝い流れてくる水の様子を見て、先祖のハニー【蜜】からのお告げを読むことをしている。
 
奉仕者
アンバーブライトネス【琥珀の輝き】
雄のアカハラダカで、目が赤褐色。巨木の森と岩場の境目付近でパトロールしていることが多い。
 
スウィフトウインドミル【素早い風車】
雄のツミ(ハトより小さいタカ)で勿論小柄に入る。アンバーブライトネスと仲が良く、よく一緒に飛んでいる。
 
ブルーライムストーン【青い石灰岩】
顔が全体的に青白い色のハチクマの雄。巨木の森に滞在していて、蜂の幼虫を主に食べる。
 
シャープクローグレイシャーキングダム

シャイニングホライズンエンペラー【輝く水平線の皇帝】
グレイシャーキングダムの王、チゴハヤブサ。全長30㎝。華奢な脚だが、脚力は強い。史上初の雌の王となった。
 
予言者
クリサンセマムアイ【菊の目】
シャイニングホライズンエンペラーの次に王国内で偉いハヤブサ。雌だが60㎝ほどの大きさ。
 
奉仕者
フロウスカイブルータイム【流れる空色の時】
雄のハヤブサで、成鳥になったばかり。スピードは王国内で一二を争うほど。
 
チャーコゥルスカー【炭の傷痕】
目を上から下に裂くような濃い灰色の模様が入るコチョウゲンボウの雄。
 
ビターローズ【渋い薔薇】
褐色の翼をもつ雌のチョウゲンボウ。チャーコゥルスカーよりも大きい。
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投稿 by Murre Fri May 13, 2022 5:05 pm

打ち忘れていた主な登場鳥
ステルスディザスター【隠れた災害】
ブロウブレイズドラゴンや、氷河の亀裂などを観察し、危険を察知するのが得意である雄のコンドル。どの王国にも属さず、点々と過ごしている。
 
マーキュリビーク【水銀嘴】
雄のノスリで、フォレストキングダムとデザードキングダムの間にある休火山に住んでいる。単独鳥で、休火山の裏の草地が気に入っている。ケアシノスリやサシバなどと一緒に暮らしている。
 
マーブルホワイトフェザー【大理石の白い羽】
ケアシノスリで、尾羽や顔など全体的に白っぽい雌。単独鳥の一羽。
 
レヴルライトニング【水平な稲妻】
目の上に横に白い線が入るサシバの雄。マーキュリビークやマーブルホワイトフェザーと共に行動する単独鳥の集まりの一羽。
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投稿 by Murre Fri May 13, 2022 5:26 pm

~24~
「ステルスディザスター?仲間の名前かい?」
俺は隣にいたカーバニックアスィッドスポッツにそっと尋ねた。
「仲間なんて、とんでもない!あいつはコンドルで、どの王国にも仕えず、ただ各地を転々としているのです。あいつの生きがいは、災害を警告することだけなんですよ…」
オジロワシは舞い上がりながらコンドルをピラミッドの脇に降ろすのに手を貸した。コンドルは、ピラミッドの壁を数か所引っ掻き、少々抵抗しながらもワシ王国の王を呼べと喚いた。
「お前の話を聞く筋合いはない!」
サリテュードファイヤーワークスは猫にもわかる言葉で言った。コンドルは飛び上がったから、猫の言葉も理解できるのだろう。
「災いは、訪れる…。ハヤブサの時季に、異常な高温で、滝が復活する…」
コンドルは大きな翼を広げ、要塞の屋根を一時的に作った。
「お?サーベルの仲間の訪問かい?」
ステルスディザスターは、俺達がピラミッドの崩れた段状の部分で鳥の舞う姿を見つめていたのを見つけ、垂れた頬を震わせた。
「おい」
カンムリワシはわざとらしく体をぶつけたが、コンドルは煉瓦を力強く掴んだ。
「我もサーベルの言葉を話せるのですよ。サーベルとよく話すのでね。今回はそなたらにも警告は当てはまるのですよ。滝が復活する…氷の屑となって…」
コンドルは日光が良く当たっていたサボテン付近に向け踏み切ると、上昇気流に乗ってソアリングを始めた。広い影は氷山の方に飛んで行った。
「あんな予言、気にすることないです。どうせ少しの変化を大げさにしているだけです」
カーバニックアスィッドスポッツは、ハイエナアイファイヤらに気にするなと強く言った。見習いの顔は気持ちと共に萎んだ。
シャイニングクローソードもワシらの言い分を取り、ピラミッドの内部に再び入った。俺は族長の背中の筋を目で追いながら、一族と、大勢のワシに目を配る。殆どのワシは、少し心配そうな顔でひそひそと話していた。
「ワシ以外の話して!」
ルリカラーキットが、サリテュードファイヤーワークスにせがんでいる声が反響した。猫語が話せるカンムリワシは、ブラックフォートエンペラーが満足そうに部屋に入っていくのを見届けると、シャープシディアンキットやトランスペアレントキット、グレイシャーキットを翼の中に収め、首を屈めて話し出した。
「この土地付近には、ワシの統治するスティールリーブデザードキングダム、タカの統治するフレキメデスフォレストキングダム、ハヤブサの統治するシャープクローグレイシャーキングダムが、川を境界として持ち場を分けている…」
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投稿 by Murre Sat May 14, 2022 10:33 am

使ってみたかった猫メーカーで作った
ルリカラーキット
ブレイズソード【炎の剣】 - Page 2 Screen12
シャープシディアンキット
ブレイズソード【炎の剣】 - Page 2 Screen11
ハードウッドリーフ
ブレイズソード【炎の剣】 - Page 2 16524911
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投稿 by Murre Sat May 14, 2022 12:41 pm

~25~
「また来たか、あいつめ…」
空を旋回していたイヴァポレイションサンドの言った、「ステルスディザスター」という言葉のみを俺は聞き取れたが、王は力強く足を踏み締めながら、ぶつぶつと愚痴をこぼした。
シャイニングクローソードが「ひっ」と声を震わせ、フットフーテップオブライフアンドデスの後ろに隠れた。足の不自由な猫が自分より族長に頼られたと感じ、少し心に隙間風が吹いた。
「こんにちは、族長」
カーバニックアスィッドスポッツも別の部屋から現れて、急いで翻訳にかかった。
「二度も来るな!失せろ!」
王の言葉を苦とせずステルスディザスターは続けた。
「滝の復活…」
先程も聞いた発言を、オジロワシは余韻まで真似して訳す。
「マーキュリビーク、マーブルホワイトフェザー、レヴルライトニング!」
カーバニックアスィッドスポッツは三羽分鳥語で名を呼ぶと、子猫への語りが終わったサリテュードファイヤーワークスが変わって翻訳してくれた。
「どなたかしら?」
族長はオジロワシとカンムリワシ、両方に尋ねた。
「ブロウブレイズドラゴンの横の休火山に住んでいる猛禽類の外れだよ。見習い鳥にも見下される」
サリテュードファイヤーワークスは蔑むように言った後、オジロワシを見て付け加えた。
「我は仲間だと思いますよ、ええ」
新たに訪れたノスリ、ケアシノスリ、サシバはコンドルに礼を言って、ブラックフォートエンペラーに向け、順に話し出した。
「ステルスディザスターは雪崩が発生すると言っています」
「今はまだ寒いですが、ハヤブサの時季ではありえない熱がやって来るのです」
「ドラゴンがそう申していた。」
一羽ずつ、一行ずつ話すと、最後は息ぴったりに不思議な言葉を放った。
「ここには火があるの?」
サリテュードファイヤーワークスの先程の言葉を考えていたシャイニングクローソードは、火山がようやく火の溢れる山だと記憶の正解に辿り着いた。
三羽の言葉を聞きながら、オジロワシは「ええ」と中途半端に答えた。
「ダウトフラッシュ、火よ!炎よ!この鳥たちが住んでいる山に行けば、ファウンダークランがお告げをくださるかもしれないわ!」
俺は「そうですね」と相槌を打ちつつ、反論気味を抑えて言った。
「しかし、外を見てください」
季節は季節だ。仕方ない。立ち話している鳥や、聞いている猫の、外側の部分は全て、雪に覆われ白くなっている。
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投稿 by Murre Sun May 15, 2022 2:44 pm

~26~
「雪が降っていろうとなんだろうと、関係無いわ!私達は…猫なのよ!鼻があるじゃない」
喚く族長の声に、カーバニックアスィッドスポッツが気になったようで、顔を覗き込みながら尋ねた。
「ブロウブレイズドラゴンに行きたいのですか?」
「そうよ」と頷き、シャイニングクローソードは俺に言った。
「私と、スィンアイスストレッチで行きましょう。あの三羽に案内してもらって」
興奮した族長の声に、三羽がようやく猫の存在に気付いた。
「サーベルタイガーか?」
「スミロドンにしては小さいな」
「サーベルの仲間かい?」
「私達は、猫よ。その…サーベルタイガーとやらは知らないし、私達は新たな安息の地を求め旅をしているの。こんな時こそファウンダークランのお力が!」
捲し立てるように言った言葉に、ブラックフォートエンペラーが反応した。
「君達は、好きで旅をしているわけではないのか?」
「ええ。アイススピアーっていうもう一つの部族と、頭のおかしい浮浪猫の集団に縄張りを追われたの」
王の目がきらりと光った。若いのに賢さを感じさせる…。このヒゲワシは、今思えばカーバニックアスィッドスポッツ達よりしっかりとした猫語だし、ノスリ達のような訛りのある鳥語も難なく理解している。鳥に囲まれているのに頭が変に冷静になっていることに、自分自身で驚いた。
「サーベルタイガーの仲間かい?」
翻訳された問いが再びぶつけられた。
「私達は猫って、さっきも言ったでしょう!」
多くの鳥と対峙していることで焦りを隠しきれない族長。
「ブラックフォートエンペラー、一度私と一対一で話してちょうだい」
「そうだな」
一匹と一羽はまた、天井の高い(この部屋は屋根なしだが)部屋に向かった。
数羽のワシが舞い降り、飛び出した煉瓦の段々に順に停まった。口には多くの獲物が咥えられている。
「カーバニックアスィッドスポッツ、食べないのか?」
「はい、太陽の傾きを遅れた罰です」
オジロワシは肩をすくめ、見張りのために羽ばたいた。
 
 
砂漠に雪が降っているのは、この世界は想像上の世界で、特殊だからです。笑
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投稿 by Murre Mon May 16, 2022 4:54 pm

~27~
日が再び昇っても、シャイニングクローソードは、仲間が寝ている大広間に顔を出さなかった。
カーバニックアスィッドスポッツが見張りの終わりにスナネコを捕らえて来て、俺を含めブレイズソード誰もが恐怖に慄いた。
「このスナネコは、死んでいたのです」
スナネコと猫は違うと説明しながら、オジロワシはブレイズソードの目を逃れようと大きな背中を向けた。弟子のブライトフラッシュファイヤが見習い仲間の近くに集まり、ルリカラーキットはスナネコに興味を持ち、大きな砂色の耳をちょいと引っ張った。
「あ、シャイニングクローソード」
ディープグリーンフレームが首を擡げ、くつろいでいた猫達も顔を上げた。族長の黄色の目は明るい月のように輝いている。
「私達、ワシの背中に乗って火山まで行けるって!」
急き立てるように言ったシャイニングクローソード。続けて指名した。
「私とスィンアイスストレッチ、二匹で行くわ」
俺は指名されなかった。当たり前だと感じたが、族長と離れてしまうことに少し心が寂しくなった。
「俺は、ブレイズソードを守ります。二匹が戻るまで」
俺の声に、族長を看護猫は頷き、二匹の顔がくっつく位の近さで相談し始めた。
「もうここから出られるの?」
ルリカラーキットが咀嚼された乾いたネズミの肉から顔を上げ、母親に聞いた。ハードウッドリーフは首を振り、族長に近づこうとしたシャープシディアンキットを尻尾で止めた。
「今から行くのはシャイニングクローソードとスィンアイスストレッチだけ」
えーとルリカラーキットは言い、余ったスノウクリスタルを見た。
「スノウクリスタルは居るのね!遊んで!」
看護猫はルリカラーキットに微笑みかけ、俺にそっと言った。
「私、グレイシャークランを信仰してるから」
美しい青い目は、遠くの壁に遮られた氷河の方を向いていた。
「二匹とも、おいで!」
スノウクリスタルは、はっと子猫に目を戻すと、尻尾を振って萎びた葉の小包まで招いた。もうそろそろ替えのダイオウがいりそうだ。
「いってきます!」
楽しそうな声がブラックフォートエンペラーの背中から聞こえた。ヒゲワシは窮屈そうに身をよじると、ピラミッドの遥か上空まで地を蹴った。壁の煉瓦が振動した。
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投稿 by Murre Tue May 17, 2022 5:17 pm

~28~
「あれ、まだ居たの?」
もうすぐ見習いになれそうな大きさに成長した子猫を母親のもとに返したスノウクリスタルが、コールドウォーターフォールファイヤの横で顔を上げた。視線の先には王の部屋ではない部屋から出てきたマーキュリビーク達が居た。
「少し休憩ですよ。それに、ブロウブレイズドラゴンはこの頃、騒がしいのでね」
サリテュードファイヤーワークスがレヴルライトニングの口を真似する。
「どういうことかしら」
看護猫は俺に尋ねたが、正直そういうのが得意なのは君だろ、と思う。
「つまり、振動が多いとのことですね。火山性微動。ステルスディザスターの言葉を借りれば、『火山が火を吹く』とかですかね」
「だからブロウブレイズドラゴン【火を吹く竜】と言うのね!格好いい!」
コールドウォーターフォールファイヤがブライトフラッシュファイヤに言い、弟子は恥ずかしそうに頷いた。
「ブレイズソードやアイススピアーには勝てませんよ」
カンムリワシは目を輝かせながら脚を振った。剣や槍を振り回しているつもりなのだろう。
「火を吹くって…シャイニングクローソード達は、大丈夫なの?」
言ったスノウクリスタルの目に浮かんだ物は、何だ…?
「ええ、ええ…心配ありません。あの山はふつふつと言っているだけで、被害は出ないでしょう」
カンムリワシは気にも留めない様子でケアシノスリに話しかけた。
「三羽はしばらく休火山に戻らず、巨木の森で過ごすそうです」
「巨木の森?」
俺は首を傾げる。スノウクリスタルも首を傾けていた。
「フレキメデス内にある、三十メートルくらいの木で構成されている、大きな森の事ですよ。ほら、お話しませんでした?」
「私は聞いたよ!」
寝てたと思われたルリカラーキットの目が大きく開いた。この子には早く指導者がついてほしいな、と苦笑いする。
「ほら、サーベルの居る森ですよ」
「私、サーベルタイガーに会いたい!ね?」
ルリカラーキットはうとうとしていたシャープシディアンキットに賛成を求めた。黒い子猫は耳をぴくぴく動かすと、半目で頷いた。
「案内しましょうか?私達はあなた方のように攻め込まれる危険が無いので」
この三国は平和でいいな、と少し羨ましく思った。
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投稿 by Murre Fri May 20, 2022 8:49 pm

~29~
「本当に良かったのか?」
俺は後ろを振り向けず、上に向かって尋ねる。サリテュードファイヤーワークスは風に負けないように大きな声で言った。
「良いんですよ。サボテン占いが目を光らせていますから」
眼下には砂が漠々と広がり、風と同じ速さでそれは過ぎていく。因みにワシ王国のサボテン占いは名前が無く、王になったら先祖のオアシスから名が与えられるそうだ。
「あれ何だろう?」
同じくカンムリワシに乗っていた(俺は掴まれているだが)トランスペアレントキットがボヘミアンワックスウィングフェザーの声を無視して身を乗り出す。子猫が言っているのは、多分あれだろう。
峡谷に架かる並ぶ板。風に煽られて不安定に、板同士の当たる音がここにいても聞こえてくる。
「あれは、吊り橋、と言います。あなた方の言う巨体が昔、砂漠の調査のために取り付けたのですよ」
「ダイナマイトの?」
「そうですよ」
カンムリワシは子猫と話しながら尾で舵を切り、吊り橋の向こう側の、フレキメデスキングダムの縄張り内に侵入する。ただし俺達と異なり境界線のマーキングは引かれていないし、侵入してもパトロール隊は居ない。よくピラミッド付近で旋回しているのは、見張りを含めた狩りだそうだ。
広々と広がる草原に小柄な影を作り、俺を放してからカンムリワシは着地した。その後にバーンアウルウィングが落ち、イヴァポレイション、シルクストゥリングが続く。
「わーい!」
トランスペアレントキットがグレイシャーキットを率い、久しぶりの草の感触を楽しみ駆け回る。族長と看護猫以外のブレイズソードメンバーも、久々の草の新鮮な香りに鼻腔を膨らませた。
「少し、歩きましょう。別に、重かったわけではありません」
サリテュードファイヤーワークスはちょっと笑い、不格好に歩き始めた。彼の進行方向を見、ブロウブレイズドラゴンと見られる山を見、えっと森を二度見する。
ここからでもわかるほど高い背丈で、幹も猫何匹入れる洞があるか分からないほど太く、何でも壊し、滅し、自らの建物で埋め尽くす巨体が見逃したことに目を疑うほどの森が、そびえていた。
「特殊なんですよ。よかった。猫にも見えた。あれは、巨体には見えない特殊なまじないをかけているんですよ。フレキメデスの王が代々。あそこは巨体が入り込まないから、他の土地で絶滅した生物の、最後の地なんですよ」
わちゃわちゃと固まった子猫を見ながら、カンムリワシは悲しそうな目をした。
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投稿 by Murre Sat May 21, 2022 8:37 pm

~30~
スノウクリスタルの目は自然と、そっちに向けられていた。足も次第にそちらを向き、猫の列から外れていく―。
と、クールウィンドが野ウサギを追ってスノウクリスタルの前を横切り、蝶を追うような看護猫の目は、巨木の森に引き戻されたーが、瞳はやはり氷河を見ている。
と、それだけスノウクリスタルを見ている自分に少々驚きながら、一族の自由な活動を見守る。
並ぶ板から巨木の森までの距離が長すぎ、子猫達はもう飛んでいた。時々降ろしてもらい、草と戯れるぐらいだ。
昼過ぎ、雪の季節なのに日は強く、耳の血液が冷やされているのが分かった。しかし、暑い。それもこの王国に入ってからだ。
低空飛行するカーバニックアスィッドスポッツに疑問を聞くと、頷きながら答えた。
「巨木の森のまじないと同じで、雪の降らない膜が張られているのですよ。タカたちはピラミッドではなく神殿を要塞としているので、その方向に長けているのです」
へーと隣を歩いていたブライトフラッシュファイヤが言った。
それからはまた、何事もなく各々久しぶりの開放を味わいながら出来るだけ集団で進んだ。時には、見習いに狩りの練習をさせたりした。
午後はあっという間に過ぎ、夕暮れが辺りを包んだ。橙色のベールは時経つごとに紫へと変わっていく。やがて太陽は氷山に隠れ、氷河に隠れ、氷河の輪郭は橙や桃色に縁取られ、それも薄くなった。
暗闇の中、シルクストゥリングが、彼らの言う”神殿”に伝言しに行った。鳥達の雰囲気は敵の縄張り内なのに穏やかで、緊張感が無い。逆に心配になってくる。
「今夜はここで夜を明かしましょう」
「俺ら、夜行性なんだけどな」
瞳孔をぐいと広げた、フロンタルウォーリアーが、オジロワシの決定にウインクした。カーバニックアスィッドスポッツは昼寝で元気を取り戻した四匹の子猫を見て言った。
「今日はあそこまで行きましょう」
翼で指された先は、巨木の森の右側、フレキメデスキングダムとグレイシャーキングダムを唯一陸で結ぶ崩れそうな岩棚の平らな場所で、また結構距離があった。
「まだ巨木の森に入らないのか?」
俺の問いにワシは首を振り、嘴を開いた。
「あそこの陸上は、既に他の種が支配していて、猫の夜を明かす場所は残されていないのですよ」
「そうか」
頷き、再び歩き始めた一族を見る。ハードウッドリーフはボヘミアンワックスウィングフェザーとスノウクリスタルと楽しそうに喋っている。
その近くにいたフットフーテップオブライフアンドデスが突然、金切り声を上げた。
「子猫が、あそこに!」
子猫達四匹の居る、支えの脆い岩棚は、氷河により振動している。
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投稿 by Murre Sun May 22, 2022 3:28 pm

~31~
フライトは、山に入ると急激に快適になった。雪は止み、気温が上がり息もしやすくなった。一つ山を越えると細々した煙を上げる白っぽい火山眼前に迫った。
「わーお」
シャイニングクローソードが見習い猫のような声を上げ、私にそっと言う。山から目を離さずに。
「スィンアイスストレッチ、ファウンダークランが、そこに居る」
私も感じていた。煙の発生源からは、巨体の炎と似た熱が伝わってくる。目に見えない、肌で感じられない形となって。
「ブロウブレイズドラゴン。もう何万年も噴火していない、眠れる竜」
「一度、噴火したの?」
ブラックフォートエンペラーの説明に、まだ興奮が収まらない族長が上ずった声で聞いた。
「した。その時に周辺の地面が割れ、辺りを覆っていた氷河がその時にできた峡谷に流れ落ちたといわれている。残りの氷河はあれのみで、境界は地割れの名残だ。」
ヒゲワシは高度を下げながら、もう一度口を開いた。
「その日、火山灰が太陽をも隠したそうだ」
降りた私達は、火山灰色の煙を見上げる。王は火口の少し下に着地していて、頂上までは少し歩く必要があった。足場は悪く、尖った石が乾燥した肉球に刺さる。
「ファウンダークランだ…」
一歩先に火口を覗いたシャイニングクローソードが、目を輝かせた。ブラックフォートエンペラーは頷き、この場を一歩離れた。
私の火口の端に足を掛け、できる限り身を乗り出した。
竜の大きな口の中、喉であるべき場所には、ふつふつと怒るどろどろした炎色の液体個体が詰まり、地球の力で煮えられていた。金属を熱したときの色をしたそれは、煙を上げ、淡い灰色となり、狼煙を上げている。
「あれ、聞いたことあるわ。巨体が言っていたもの…」
不思議な巨体が居るものだな、と思いながら族長の考えを聞く。
「あれは、マグマよ。地球の血なの…」
するとそれは突然に起こった。
一か所のマグマが弾け、それは空気を揺らし、高温の空気周辺が見せる、見慣れた現象を引き起こしたーその一か所は至る所で起こったがー熱を持った空気は姿を変え、空気が目に見えるようになった。
「久しぶりだね、シャイニングクローソード」
「お久しぶりです。ウォールストーンソード【壁の石の剣】」
先代族長は会えて嬉しいと喉を鳴らした。次々と他の猫も声を掛け始めた。
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投稿 by Murre Mon May 23, 2022 4:29 pm

~32~
「ウォールストーンソード、私達はここまで出てきて良かったのですか?」
シャイニングクローソードが、自らの行動に助言を求めた。前族長は青色の目を燃え上がらせた。私達は目を覗き込むようにして言いたいことを読み取ろうとする。
空気をたっぷり含んだ青色の炎は、昔の縄張りを空から映し出した。場面は山になり、砂漠、ピラミッドと変化する。
「見守っていたのよ、常に」
私の元指導者が尻尾を私の肩に置き、微笑んだ。
青い炎は緑色へと変色し、先程空から見た、とてつもなく高い森だと分かった。
炎が再び青くなり、氷山の塊が映った。氷河の麓の橋に向けて拡大され、黒い四の点が大きな影に覆われた。ウォールストーンソードの瞳が揺れ、炎は消えた。
沈黙が炎の熱を奪った。
「鋭い爪が差し向けられた。神の力を頼りに、森の奥へ進め」
低い声がぼわんと響き、マグマのぼこぼこいう音が復活した。
「炎はどこにでも存在する。けれど、巨体が居る所のみに…」
アクアマリンブルー【アクアマリンの青】の体も揺らめき、最後の言葉は姿と同じように消えた。
火山が震えはじめた。
私は族長と顔を見合わせる。
ファウンダークランは最後、急いでお告げを下した。この振動によりここにいられなくなったのだろうか。
ブラックフォートエンペラーが大きな翼の羽ばたきを徐々に遅くしながら火口擦れ擦れに足を掛けた。
「乗れ。氷河か崩れる。ブロウブレイズドラゴンも、その振動に反応するかもしれない」
ヒゲワシには、私達には見えない何かが見えていた。じっと氷河の方を睨んでいる。
私達は急いで体によじ登り、ブラックフォートエンペラーは山に沿って降下し、スピードを付けた。
「あれはやはり、君達の仲間じゃないか?」
炎の中にも見えた支えの弱い岩の橋の傍に、多くの猫が蹲り、数匹は氷河の崩れてくる振動に、金縛りにあったように固まっている。
「シャイニングクローソード、あれ!」
私の指摘に、族長も気づいた。
お告げが本物になろうとしている。
「子猫達だ!」
シャイニングクローソードは悲鳴を上げた。それはブラックフォートエンペラーの怒鳴り声にかき消された。
「シャイニングホライズン!」
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投稿 by Murre Mon May 23, 2022 4:42 pm

後半 “大地”
ダイアウルフムーンは、グラウンドに代々伝わる部族の成り立ちを子猫に聴かせた。ケインパープルの子達は真剣に話を聴き、最後には「はっ」と声を漏らした。グラウンドは無邪気さを受け止め、微笑した。
「さあ、寝る時間だろう?」
「いや!まだ聞く!”大地”の詳しい話して!」
一番大きなビターブラウンキットが、他の子を押しながらせがんだ。ダイアウルフムーンは緑色の目を光らせ、母猫の方に子猫をそっと押した。
「明日、また来るよ」
グラウンドの申し出に、ケインパープルは恐れ多いと頭を下げたが、遊び盛りのまだ幼い子猫にはそんなの関係なしだ。
「やったぁ!絶対来てね!」
「ありがとうございます」
母猫と子猫の言葉に尻尾で応え、何世代をも超えて使われて硬くなったイバラのクイーンルームを振り返る。”大地”にはもっとウルフが必要だ。そのためにはリトルウルフが必要だ。だが、子猫はまだ数か月も待たないとリトルウルフの訓練を受けられないだろう。
この寒々とした輝きは、史上最悪だろうと回想する。
ダイアウルフムーンは異常に雪の多い山を見、足元に目を戻す。感覚はっとくの前から桃色の花なのに、寒さはまだ周辺に居座り、口笛を吹いている。デンジャラスはキャンプを虫食み、今や半分のウルフは寝込んでいる。ムーンリーフも、リトルムーンウルフも、いつ病に倒れるか分からない。
病からどうにか立ち直ったさっきの子猫達の顔を思い出し、してやった話を頭の中で回す。
今こそ、オオカミが現れ、絶大なる薬をもたらしてはくれないか、と雪雲に覆われた空を、はっと見上げた。


なんか、混ざってた?!


最終編集者 マァーラーフェザー [ Fri Jun 10, 2022 4:50 pm ], 編集回数 1 回
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投稿 by Murre Tue May 24, 2022 6:50 pm

~33~
ハヤブサはとてつもない速さで降下し、一羽で四匹を一気に掴んだ。子猫の体に爪が刺さり、子猫の泣き叫ぶ声が大空に響き渡る―。
氷河の振動が大きくなり、近くにいたブレイズソードも内陸へ駆けた。
氷河か崩れた。巨大な塊が脆い岩の橋を打ち壊し、石屑と共に峡谷へ落ちた。氷河は白く不透明な煙と数か所の亀裂を残し、静かになった。
「シャイニングクローソード、あれ、もしかしてー!」
氷河の下の方は気温上昇により融け、細い、子供の滝が出来ていた。
「あれが、どうかしたの?」
「ステルスディザスターの!」
「「滝の復活」」
「あの鳥が言ってたことが、ファウンダークランの言ってたことが、本当になり、子猫は…」
族長は俯き、ブラックフォートエンペラーが下降するのにも黙っていた。
「シャイニングクローソード!スィンアイスストレッチ!」
ダウトフラッシュが一番に近づき、氷河の方に目をやった。
「あれは、何が…!」
急に多くの事が発生し過ぎ、副長でさえも混乱している。
「シャイニングホライズンが、子猫を攫ったんだ。氷河崩壊の、ごたごたに理由を付けて。あいつらは、子猫を”助けた”と言って、譲らないだろう」
ヒゲワシは目をぐっと細め言った。
「あいつらの性格というのは…!」
「シャイニングクローソード!ルリカラーキットとシャープシディアンキットが!」
ハードウッドリーフが泣くボヘミアンワックスウィングフェザーと共に取り乱している。
「スノウクリスタル!ケシの実を!」
私は叫び、看護猫を呼んだ。スノウクリスタルはコールドウォーターフォールファイヤを従えやって来た。
「スノウクリスタルも、私も見たの、ケシの実、探したんです…」
弟子は萎びた小包を震える足で開いた。
「あっ…」
思わず、声が漏れてしまった。
「ケシの実も、からからなの。いや、ケシの実に限らず」
元縄張りから持って来た薬草は例外なく萎びていた。砂漠の低湿度と高温で乾燥しきったのだろう。
「シルクストゥリング」
ワシと親睦を深めていたとみられるダウトフラッシュが巨大な森から矢のように飛び出してきてトビを見て顔を緩ませた。
「”神殿”でも揺れ、感じました」
シルクストゥリングはブラックフォートエンペラーが居ることにも驚かず、話しだした。何故か、私達も理解できる。
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