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本家猫 二次創作 短編集

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投稿 by Murre Thu Nov 16, 2023 1:53 pm

ウォリ本家のオリジナル短編集(またの名を私の妄想ウォリ)です

そうそう、言い方ど忘れしてた
二次創作だ

説明はそれだけです

まず手始めに、オプチャの方で書いたジェイフェザー×シンダーハートのオリジナルストーリーを、どうぞ〜


最終編集者 Murre [ Sat Nov 18, 2023 9:46 am ], 編集回数 1 回
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投稿 by Murre Thu Nov 16, 2023 1:57 pm

『雨の日の看護部屋』

ピカッ

白い光が左方向から。

何が何だか分からず、 立ち止まる。

肉球に触れた地面が、ザラザラとしていて生温かい。
砂埃が舞った。


*** ***


「一!!大丈夫かい?」
深く鮮明だった夢から鋭い声で起こされ、わたしは不 機嫌に唸る。
「夢の続きが分からなかったじゃない!」
目を開けると、 わたしの横には薄汚れたグレーの虎猫が立っていた。
盲目の看護猫は、わたしよりも不機嫌そうに声を荒げた。
「何だよ、きみが高熱で唸ってるから呼び戻したの に、熱が下がった瞬間これか! まったくー」
ジェイフェザーに早口でまくし立てられ、さっきまでのわたしの不快感はもう飛んでいった。
「ごめんなさい。 いつも見てる夢が、 また同じところ で終わっちゃったから、 つい...」
わたしが小さく謝ると、 ジェイフェザーの目つきが少し和らいだ。
「どんな夢を見てたんだ?」
見えていないはずの目が、わたしの内部を貫くように探る。
ジェイフェザーには何が見えているの?
「決まって雨の日に見る夢なんだけど、 キャンプ... こ こじゃなくて、多分前のキャンプを最初は走ってるだけなの。 わたしはすごい急いでる。 そして、 縄張りの終わり、森が終わる瞬間―」
夢の最期のシーンがフラッシュバックして、思わずギュッと目をつぶる。
「シンダーハート、大丈夫か?」
わたしはジェイフェザーに大丈夫、 の意味を込めてうなずくと、 話を続ける。
「そして...森が終わってもわたしは走り続けて、 サンダー道に着いても走るの。 けど、ふと止まって、 黄色の目が後ろの陰の方に見えて、そこから...」
話し続けていても、 辛くなる。 ただの夢だと分かって いるのに、なんだかすごい大きな意味を持っていそう で、雨の日のたびに気になってしまう。
「光が、 光が...」
わたしの声は、震えていた。 胸の奥から悲しくなる。 わたしはこの夢の中で、いつ も怪物に轢かれかける時に、 目が覚める。 誰かがわたしをこの世へ引き止めておこう、とするように...
「分かった。 もういい。 シンダーハート、 無理して話さなくていい。 話してくれて、ありがとう」
ジェイフェザーのフサフサした尻尾が、 わたしの前足 を優しくなでる。 顔を上げると、ジェイフェザーは悲しげに微笑んでいた。
気難しいこの看護猫の笑った顔を、初めて見た。
自分の夢に、他の猫には意味があったんだ、と思えた気がして、 わたしは地面に落ちた涙の跡をこすり消した。
「ジェイフェザー! わたしはもう元気! 狩りに行ってくる! お腹空いたから!」
わたしはガバッと跳び起きて看護猫に告げると、 ジェイフェザーはサッと出口に塞がった。
「まだ病み上がり、 今朝熱がようやく落ち着いただけだから、 だめだ。 今日丸一日は寝てろ」
ジェイフェザーは、歯の間から唸り声を出してわたしを絶対に外へ出さないと無言で伝えた。
この看護猫に逆らっても、 何も良いことはないと知っているから、仕方なく湿気で湿った苔に、 また丸くなる。
「けど、お腹空いた」
雨が降ってても良いから、外へ出れる期待を込めてジェイフェザーを見る。
看護猫は苔のカーテンをくぐって外へ出ると、すぐに戻ってきた。 口には、雨のしずくが滴る冷たそうなハタネズミがくわえられている。
「きみがの母さんが、心配で心配で夜明けの見張りが終わるとすぐ捕ってきてくれた」
看護猫は、フルフルと首を振ってネズミと自分の身体から水気を落とすと、 ネズミを地面に置いた。 右前足で獲物をそっとわたしの方へ近づける。
「もうケシの実はいらないよな? これ食べて、どうぞ 寝ろ」
ジェイフェザーはネズミを残して、 看護部屋の脇の岩の割れ目に体を押し込み始めた。
「いただきまぁす」
「明日母さんに元気な顔でお礼言えよ」
ぶっきらぼうな看護猫は、口に薬草をくわえながらモゴモゴと言った。
わたしもネズミを一口頬張りながら、 「はぁい」 と返事をする。
雨の日が来るたび、 あの死ぬ直前の夢を見るかも、と恐れていたけど、 ジェイフェザーが真摯に聞いてくれたお陰で、スッと心が軽くなった。
そして、お腹がいっぱいになったから、なんだか眠くなってきた...


*** ***


ジェイフェザーは、シンダーハートが気持ちよさそうに寝息をたてているのを見て、 シンダーハートの横に寝そべった。
そして、シンダーハートがうなされていた時に夢の端から見た、あの景色を想像する。
ぼくも夢でしか行ったことが無い昔の縄張り。シンダーハートは今もそこの景色を、 無意識だがはっきり と思い浮かべることが出来ていた。 さらに、 シンダー ペルトが脚を悪くした日の、悲劇の出来事を夢という 無意識の空間で何度も繰り返し体験していて、 彼女自身も恐怖を感じていた。
シンダーハートがせめて、 前世が体験出来なかった“戦士”を存分に経験させてやりたい。
ジェイフェザーは目を閉じながら思った。
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投稿 by Murre Fri Nov 17, 2023 7:49 pm

『輪廻』

「イエローファング!」

目が灰色の猫を探している。
けれど、森の光は暗く深く黒い。
誰も居ない。
黒い深い暗い森。

「イエローファング…!」

わたしは光を求めて首を巡らす。

「あっ!」

あっちの方に、薄くぼんやりとした黄色い光が見えた。
「イエローファング!」


遠くから、舌打ちの反響が聞こえた。
「戦士になりたかったんだろ? そう簡単にはこっちに呼ばないよ」

「イエローファング? どこ?!」

かすれた笑い声が響いた。

「そう焦んなさんな」


*** ***


あたたかい、けれどざらざらしたものが、あたまをなでた。
くっついてはなれないあたまに、いっしょうけんめい、ちからをこめる。
「おはよう」
あたまのちかくでいわれた。
「おはよう!」
あたしのおとは、たかい。
「シンダーキット!ついに目をあけたのね!」
さっきよりやさしいおと。
これは、あたまじゃなくて、目っていうんだ!
あたしは目をくりくりとうごかす。
「おはよう! これはきいてたから、しってるよ」
あたしはえへん、とおなかをそらす。
「あなたは、えっと…」
さいしょにあたしに『おはよう』っていった、きいろいねこをみる。
「あたしはハニーキット!あなたはシンダーキット!こっちはポピーキット!あとはモウルキット!」
ハニーキットは、みじかいあしで4ひきをじゅんばんに、しょうかいした。
あたしはシンダーキット!
目を2かい、あけて、とじる。
あのねこは?
「母さんは、あたしたちの母さん!」
あたしの目をたどって、ハニーキットがおしえてくれた。
やさしいおとで、あたしをよんだのは、“母さん”っていうねこだったんだ!
またことばが増えた。
「あなたが目あけたのさいご」
ポピーキットが、あたしの目をのぞきこみながら、いった。
「わかった!」
母さん、が、おれんじ色の目をきらきらさせている。
あたしは母さんの目のきらきらをなめた。


*** ***


「シンダーポー!」

誰かの悲鳴が聞こえた。
高かったけど、それはきっと、あたしのじゃない。

あたしの下に、スカイオークは無かった。
もがいたあしは、何も掴まなかった。

遠くでムクドリが何羽か、飛び立った。


*** ***


「また来たのかい、おまえさんはまったく―」
毛の絡まった灰色の老猫が、あたしの顔を呆れたように、のぞきこんでいた。
「会ったこと、ありましたっけ…?」
灰色の猫はひゅっと音を立てて息を吸い込むと、悲しげな顔をした。
「そうだったね、おまえさんは、強い心を持っていたもんね」
ふっと温かいため息をつくと、灰色の猫は横を向いた。
「あなたはもしかして、スター族さまですか?」
暗い灰色の猫からは、微かだが黄色の光がにじみ出ている。
「怪我するんじゃないよ」
老猫は、あたしの質問に答えず、立ち去った。
ほんのりと古いイヌハッカの香りがした。
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投稿 by Murre Sat Nov 18, 2023 9:43 am

『侵入者①』

「見慣れない顔ね」
聞き慣れない声がした。
「誰だ?」
ジェイフェザーは辺りのにおいをよく嗅いだ。
においは薄い…かすかにイヌハッカのにおいがする。
「シャドウ族か?それとも浮浪猫か?サンダー族の縄張りで何してる?」
ジェイフェザーは見えない相手に鋭くうなった。
「やめてよ!怪しい者じゃないのよ!あたしがどこで息をしてたって、文句言われる筋合いは無いわ!」
確かに、息くらいなら許せるかもしれない。
「ところで、きみ、誰?」
目の前に多分いる猫が、一息ついて、尋ねた。
「きみこそ誰だ?イヌハッカを荒らしに来たのか?」
「これイヌハッカだったのね!甘い香りするとは思ってたけど」
ジェイフェザーは肩を落とした。
今のは自分からサンダー族の秘密を1つ、容姿も所属も何も分からない猫にばらしてしまった。
月の池で見たリーフプールの姿が脳裏をよぎり、歯ぎしりする。あの嘘塗れの猫と似たような行動をしてしまった。血を分けているなんてこんなところで感じたくもなかったのに。
               オーク
「あ、あたしはオーク【陰を縫う樫】よ」
ジェイフェザーは首を傾げた。
この猫は何者だ?四部族の猫の名前と言うよりは…そう、あの山のラッシング・ウォーター一門と似てる名前じゃないか!
「きみ、山から来たのか?」
「いいえ。ずっとここに住んでるわ」
ジェイフェザーはますます首を傾げた。
最初のパトロールのときからずっと、この元<二本足>のキャンプに住んでる猫は、目撃されてないはずだ。
「そういうあなたは?ここら辺に住んでるの?」
「おれはジェイフェザー。サンダー族の看護猫だ」
ますますおかしなことが起こった。
「サンダー族?あなたは一匹で生きてるんじゃないの?」
「何言ってるんだ、きみは?この辺りをサンダー族の戦士らが駆け回ってるのを、一度も見たことが無いのか?」
オークはあっけらかんとした声で言った。
「あたし、他の猫に会ったの初めて」
ジェイフェザーは混乱した。
このにおいも所属も無い猫は、いったいどこから湧いてきたんだ?
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投稿 by Murre Sun Nov 19, 2023 10:44 am

『侵入者②』

「ジェイフェザー、あなたはここら辺に住んでるの?あたしは川上から来たんだけど、あなたは川下に住んでるの?」
ジェイフェザーは、縄張りと接する湖を思い出して、うなずいた。
しばらく間があった後、再びオークが喋り始めた。生後3ヶ月の子猫よりお喋りだな、この猫は。
「そういえばジェイフェザー、あたし、他の猫とこうやって話すのは初めてだけど、姿なら何度か見たことあるわ」
ジェイフェザーは呆れて何も言わなかった。
縄張り不明の猫が、サンダー族の戦士を1、2匹目撃してたところで、雨が降るわけでもない。
「初めて見たのは、真っ黒い猫ね。けど、目は私とおんなじ色だった」
ジェイフェザーの背筋に何かが走った。虫ではない、温かい。
「その猫の目は、何色だった?」
ジェイフェザーは鋭く聞いた。
オークはうーんと声を出すと、のんびりと答えた。
「えっと…そうか、ジェイフェザー、あなたは目が見えないのよね」
「だからなんだ」
「いえ。私、自分の目の色を、上手く説明出来なくて…」
「なぜ」
「なぜって…自分の顔って、水をのぞく度変わるじゃない?晴れてる日は青っぽくて、雨の次の日は茶色っぽい」
ジェイフェザーはイライラと尻尾を振った。尻尾が膨れているのか、いつもよりわさわさと鳴った。
「じゃあなぜ黒猫の目が自分の目の色と同じだと、分かった」
オークはあっけらかんと答えた。
「その日の朝、魚を取ったときに見た自分の目の色と、同じだったから」
ジェイフェザーはさらにイライラと尻尾を振った。
この猫と会話していると、どうも神経に障る。
こんな時こそ、目が見えれば良かったのに。
スター族はなぜぼくには、他の猫は普通に持っている視力を、与えてくださらなかったんだ?
「ジェイフェザー!!」
オークがあっと声を上げた。オークの気配が退くのを感じた。
ジェイフェザーは、3者目の声がした方を向いた。
「どうした、ダヴウィング」
ダヴウィングは、息を切らしながらジェイフェザーの隣に立った。
「侵入者の音が聞こえたので!けど…」
ダヴウィングはきょろきょろと首を振った。
「キャンプに居た時は確かに、見慣れない者の姿が見えたんですけど…」
「その猫は何色の目をしていた?緑だったか?」
ジェイフェザーは、ダヴウィングに早口で尋ねた。
「緑でした」
ジェイフェザーは考えを巡らした。真っ黒い猫で、オークの緑色と同じ目をしている猫。
思い当たるのは、ラッシング・ウォーター一門の猫でも、遥か太古、ここに生息していた猫でも、今は無い昔の縄張りの猫でもなく、ただ1匹。
ぼくたちの前から姿を消した、本当に血の繋がった猫。
「オーク、その猫を…」
「ジェイフェザー、オークって誰ですか?」
いつの間にか、オークの気配も、薄いイヌハッカの香りも、消えていた。
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投稿 by Murre Sat Dec 02, 2023 7:28 pm

『AFTERNOON ①』

「ブルースター!!」
まだ声変わりしていない高音が、キャンプを突き抜けた。
「だぁれ?わたしはいま、食事中よ!」
呼ばれた雌猫はイライラと尻尾を振った。
「ブルースター!見てください!」
ツヤツヤと光をはじく炎色の毛玉が走ってきた。
「なに?ファイヤポー」
ブルースターは、午後のひとときを遮られた怒りを隠し、微笑んだ。
「見てくださいこれ!グレーポーとレイヴンポーと狩りに行ったら…!」
ファイヤポーの後ろから、灰色の厚い毛玉と艶のある真っ黒の毛玉も近づいて来た。何か大きなものを引きずっている。
「これは…!」
ブルースターは驚きで言葉を失った。

*** ***

「ファイヤポー!麗らかな午後に狩りにでも出掛けようぜ」
ファイヤポーは肩をすくめた。
「そんな言葉、どこで覚えたんだ?」
「ダプルテイルがワンアイに言ってた」
グレーポーはそう言い、胸を反らした。
「意味分かって使ってるの?」
切り株の後ろからレイヴンポーも顔を出す。
「もちろんさ!カッコイイ、だろ?」
グレーポーはウインクをした。
「カッコイイ午後って、なんだよ」
レイヴンポーがファイヤポーに耳打ちをした。

*** ***

「あなたたちの会話は分かったから、それについて、教えて?」
ブルースターは笑いを堪えながら言った。
自信満々に話していたグレーポーは、指導者のライオンハートも耳を傾けているのに気付き、前足をソワソワと動かした。
「すみません、ブルースター」
ファイヤポーがグレーポーの尻尾を踏んづけながら、謝った。
「あなたたちの仲が良いことは、十分分かったわ」
ライオンハートがかれらの獲物を見て、賞賛の眼差しを送った。

*** ***

「あたしは午後から、指導者のホワイトストームと、同期のダストポーと、サニングロックスで狩りをするの」
サンドポーは鼻をツンと高く上げて、ダストポーに目線を送った。
ダストポーは慌てて何度もうなずいた。
「あなたたちは、長老部屋のお掃除でも、どうぞ」
サンドポーはダストポーにニッコリと笑顔を見せ、3匹の前できびすを返した。
ダストポーは慌ててついていく。

「長老部屋の掃除、朝したよな?」
グレーポーがポカンとしながらつぶやいた。
「した。ハーフテイルに3回は苔を取りに行かされた」
ファイヤポーは同意した。
「じゃあ、何する…?」
レイヴンポーがそう言ったとき、灰色の腹が鳴った。

*** ***

グレーポーの話は、ようやく切り株での会話に戻る。
ブルースターがライオンハートと顔を見合わせ、笑いを噛み殺した。
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投稿 by Murre Sun Dec 03, 2023 5:24 pm

『AFTERNOON ②』

「ファイヤポー!麗らかな午後に狩りにでも出掛けようぜ」
ファイヤポーは肩をすくめた。
「そんな言葉、どこで覚えたんだ?」
「ダプルテイルがワンアイに言ってた」
グレーポーはそう言い、胸を反らした。
「意味分かって使ってるの?」
切り株の後ろからレイヴンポーも顔を出す。
「もちろんさ!カッコイイ、だろ?」
グレーポーはウインクをした。
「カッコイイ午後って、なんだよ」
レイヴンポーがファイヤポーに耳打ちをした。

この会話には、続きがあった。

「んで、どこで狩りするんだ?」
ファイヤポーは前足を切り株に添えながら言った。
「まさか、スネークロックスじゃないよね…?」
レイヴンポーの声が弱々しくなった。顔は青ざめ、前足はフルフル震えている。
「そんな馬鹿な!僕はタイガークローみたいな嫌がらせを君に仕掛けないよ!」
グレーポーは大声で冗談を飛ばした。
「オレのこと呼んだか?」
獲物置き場の近くから、どすのきいた低い声が飛んできた。
「いや!タイガークローみたいな狩りの上手い戦士になりたいなぁって」
グレーポーの慌てた言い様に、タイガークローははにかみながら言った。
「オレみたいに狩りだけじゃなく戦いも強い戦士になれよ」
タイガークローは、獲物置き場から小さめのカササギを取ると、口元を緩めながら立ち去った。
「きみの指導者、グリーンコフにでも罹ったんじゃないか?」
グレーポーが困ったように首を傾げた。
レイヴンポーは苦笑いしながら、目を逸らした。
「さあね」
ファイヤポーは、咎められなくて良かったな、とグレーポーの肩に尻尾を乗せた。
「んで、どこへ行くんだい?早くキャンプを出なきゃ、“麗らかな午後”も終わっちゃうよ?」
グレーポーは、ファイヤポーの言葉にはっとして、下を向いた。
「たまにはいつも行かない所行こうぜ!例えば…」

そうして辿り着いたのが、ここ、ある一本の木の根元である。
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投稿 by Murre Mon Dec 18, 2023 5:40 pm

『AFTERNOON ③』

「グレーポー!きみ、もしかして…」
ファイヤポーは、管理されていないにおいに顔をしかめた。
レイヴンポーは、大柄の虎猫を警戒するように、しょっちゅうきょろきょろしている。
「名案だろ?やっぱり、ボクほどになると、こういうの思いついちゃうんだろうな」
今日のグレーポーは、やけに機嫌がよい。しばらく雨が降っていないからだろうか。
「獲ろうぜ!フクロウ!」
グレーポーはフクロウの木の幹に、磨がれた爪を立てた。

*** ***

「それで仕留めたのが、このフクロウね。中々大きいものね」
ブルースターは、地面に置かれた大鳥を見て、感嘆したように口を開いた。グレーポーの指導者も、族長の言葉に何度も頷いた。
「とどめを刺したのは、誰なの?」
ブルースターは興味津々だ。
3匹はお互いに顔を見合わせた後、全員一歩下がった。
「実は…」

*** ***

「グレーポー!危ない!」
唐突にレイヴンポーが叫んだ。
ファイヤポーはレイヴンポーの視線を辿り、首の後ろの毛を逆立てる。
「グレーポー!」
かれらの頭上には、カラスでもフクロウでもない大きな鳥―ワシが旋回していた。
成猫よりはまだ体の小さい3匹の、順番を決めるようにぐるぐると舞っている。
「グレーポー!はやく降りてこい!掴まるぞ!」
ファイヤポーはレイヴンポーと並んで、木の幹にへばりつくグレーポーを急かした。
だが、グレーポーが降りる気配は無い。
「どうした?…まさか…!」
「…怖い…」
グレーポーは、いつもより高いところまで上っていた。
レイヴンポーはいつの間にか姿を消していて、ファイヤポーは戸惑った。
ワシは相変わらず旋回している。
ファイヤポーは考え抜き、グレーポーに向かって叫んだ
「グレーポー、うろまで登れ!」
グレーポーは、おびえた顔でファイヤポーを見下ろすと、意を決した表情で、木の高いところまで登っていった。
ファイヤポーは、自分の姿が鳥からよく見えるよう、その場で何度も跳ねる。
「ぼくを狙ってみろ!」
ファイヤポーが大声を出した時、枝をくわえたレイヴンポーと眠りを妨げられたフクロウが飛び出すのが、同時に起こった。
レイヴンポーは、くわえたうねる枝を空へ向かって、力いっぱい投げつけ、グレーポーが刺激したフクロウは、ワシを威嚇するように羽を広げた。

耳をつんざくような高温が響いた後、ワシはフクロウに蹴りを一発お見舞いしてから飛び去った。
ワシの口には、細長いものがある。

「グレーポー、降りてきていいぞー」
ファイヤポーが目を丸くしながら言った。
「お、おぅ…」
グレーポーは、落下するように着地した。
「フクロウ、くさい…」
グレーポーはその場で、うえぇと呻いた。

ファイヤポーは、戻って来たレイヴンポーと、落ちているフクロウの死骸を見比べた。
「レイヴンポー、一体どこに…」
レイヴンポーは耳を立てながら言った。
「スネークロックスで、ヘビ獲ってきた。鳥ってヘビ食べるから、去ってくれるかな、と思って…」
レイヴンポーは、フクロウをじっと見つめて、黙り込んだ。
「すごいよレイヴンポー!ヘビを捕まえたし、それでワシを追い払った!ぼくたちはきみに救われたよ!ありがとう!」
レイヴンポーは、ファイヤポーの盛大な賞賛にはにかんだ。

*** ***

「だから、これを捕まえれたのは、レイヴンポーのお陰なんです」
それを聞いて、ブルースターは、見習いの成長に嬉しそうに微笑んだ。
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投稿 by Murre Sun Dec 24, 2023 7:25 pm

『聖なる夜』

満月に近い丸めの月が、雲一つ無い紺色の空に浮かんでいる。
「リーフプール、お腹痛いです」
真っ黒い顔に緑の光が2つ輝く。
「ん?ホリーポー、どうした?」
ジェイポーが、雪を被ったシダのカーテンをくぐって来た黒猫に尋ねた。
「ジェイポー!いや、えっと、あの…お腹痛くて」
ホリーポーは、しどろもどろになりながら答えた。
獲物置き場の一番下に埋まってたネズミを食べた、なんて告白したら、
『やっぱりライオンポーと同じで、ホリーポーも食いしん坊なんだな。何日前のネズミなのか分からない獲物を気軽に口にできるなんて。まあ枯れ葉の季節だからみんな腹は減ってるか。それにしてもネズミがもし腐っててホリーポーが病気になってそれが長老とか子猫に移ったらどう責任をとるんだろう?……』
なんて少し小声でいつまでも“イヤミ”を言われてしまいそうだから。
「そうか。ちょっと待ってて。ちょうど腹痛に効く薬草を選り分けてたところだから」
ジェイポーは、あたしの心を読んでくるように鋭く言うのではなく、いつもよりずっと優しく言った。
明日ハリネズミでも降ってくるのかしら?と首をかしげながら待った。
ジェイポーは、岩の割れ目に身体を押し込んだきり、尻尾の先さえも出てこない。
「リーフプールはいないの?」
ホリーポーは、看護部屋にまで吹き込んでくる寒風に身を縮こませながら息を吐いた。白い息は掴めそうだった。
「リーフプールは今、イヌハッカの様子を見てるよ。マウスファーが咳をしてるって、ロングテイルが言いに来たからね。今日何度も。ぼくもリーフプールも起きる前から」
ホリーポーは座り込んだ。
「なんで今更イヌハッカを見に行ってるの?もう太陽は沈んじゃったのに」
ホリーポーは、最近太陽が早く沈むことに気付いていた。
「さあ。夜じゃないと会えない猫でもいるんじゃないか?」
ホリーポーは、猫一匹の気配も感じたことがない、イヌハッカの生えている家を思い出した。
まさか。あそこにわざわざ行く猫は、2匹の看護猫以外、誰もいない。
「はい、お待たせ」
ジェイポーは、ササの葉で丁寧に包んだ薬草をくわえて来た。
「ありがとう」
ホリーポーの頭から、看護猫の知識はとっくに抜け落ちていた。
「持ってくなよ、ここで食べな。食いしん坊なライオンポーが香りに誘われてやって来ちゃうから」
ジェイポーは、看護部屋から出ていこうとしたホリーポーを呼び止めた。
「そうね…!」
「呼んだか?」
噂をすれば。
ライオンポーが看護部屋に顔を出した。
「やっぱりライオンポーも来たかぁ」
ジェイポーは、呆れたように見えない目を回し、もう一つ小包を取り出した。
「ぼくからのプレゼントだ。今日は贈り物の日だ、ってリーフプールが教えてくれたからな」
ジェイポーは、蜂蜜の結晶を舐めて喜ぶきょうだいの声を思い浮かべ、やわらかく笑った。
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投稿 by Murre Tue Dec 26, 2023 8:46 pm

『嫉妬①』

サンドストームは、ある一箇所を睨んでいた。

「サンドストーム、一緒に…」
「あんたはファーンポーと狩りにでも行ってなさい!」
背後から話しかけてきたダストペルトを尻尾で払い、ぴしゃりと言った。
振り向くと、ダストペルトは尻尾を引きずってハリエニシダの茂みを抜ける瞬間を見てしまった。
サンドストームの良心がうずいた。
追いかけて一緒に狩りに行こうかな、と思ったが、看護部屋から話し声が聞こえて、全注意が岩壁に向いた。
「ファイヤハート、用が無いなら一族のために働いてください!看護部屋はもういっぱいなんですから、大きな子猫はいりません!」
まだ高い声が、岩壁に反響しながら届いた。
「ごめんごめん、後でまんまるいリスを持ってきてやるから、許してくれよ」
枯れ葉の季節でも輝きを失わない炎の色の猫が笑いながら言った。
「それはグリーンコフの猫たちに、ですよね?そうじゃなきゃ、あたしもイェローファングも青葉の季節のネズミより不健康に太っちゃいます!」
「いいんだよ、きみもイェローファングも、グレーストライプたちのことを、何も食べる暇なく看病してくれてるんだから、俺にそれくらい手伝わせてくれよ」
ファイヤハートは、澄んだ濃い青の瞳をじっと見ながら言った。
「俺の唯一の初弟子なんだからさ、受け取ってくれよ」
ファイヤハートは乞うように言った。
「シンダーポー!駄弁ってないで、早くこっちを手伝っておくれ!患者は待ってくれないんだよ!」
イェローファングの唸り声に急かされた見習い看護猫は、「はーい」と返事をした。
「ではあたしは戻ります。受け取るかどうかは、ファイヤハートが何匹獲物を捕まえてくるかによります」
シンダーポーは目をいたずらげにキラキラと輝かせて、看護部屋に戻った。

そのやり取りを見て、サンドストームは歯を食いしばった。
元弟子の見習い看護猫と話す彼は、とても楽しそうだったし、自然に笑っていた。
心の底から悔しさ?何か分からないけど、もどかしい気持ちが湧き上がってきて、シンダーポーに爪を向けたい気持ちが、一瞬、一瞬だけ、サンドストームを支配した。
「ファイヤハート!一緒に狩りに行きましょ!」
看護部屋の方をまだ向いていたファイヤハートに、サンドストームは声をかけた。
彼はトビシラミに襲われたみたいに飛び上がり、「サンドストームか、驚かせないでくれよ」と困ったように笑った。

――違う。私が見たい彼の笑顔は、これじゃない。自然の、太陽みたいな、明るい笑顔。

「狩りに行くのはいいよ。いつ行くの?」
サンドストームは、「今すぐよ」と即答した。
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投稿 by Murre Thu Dec 28, 2023 9:25 pm

『嫉妬②』

「ファイヤハート、明日の夜明けのパトロールに行くようタイガークローに言われたわ」
サンドストームは、戦士部屋の入口に顔を突っ込んだ。
「あら?ファイヤハートは?」
ダストペルトが気だるげに顔を上げ、部屋を見回した。
「さあ。ところでサンドストーム、今日こそ狩りに行かないかい?」
ダストペルトは目を子猫っぽく輝かせながらたずねた。
「あなたは弟子の訓練をしに行きなさい」
サンドストームは、尻尾を地面に打ち付けながらぴしゃりと言った。
「今度っていつだよ…」
ダストペルトがロングテイルと顔を見合わせながら言った。ロングテイルが肩をすくめていたのは、どういう意味だろうか。

「おはよう、サンドストーム」
「おはようございます、ゴールデンフラワー。そういえば彼見ませんでした?」
「“彼”って、ファイヤハートのことかしら?彼ならイェローファングのところへ行ってたわよ」
ゴールデンフラワーはにこにこ微笑みながら言った。サンドストームは顔を赤らめながら、感謝のまなざしを送った。
ゴールデンフラワーは去り際、さっとうなずいた。

「ファイヤハート?今日も看護猫たちの邪魔をしてるの?」
サンドストームは看護部屋の入口で声を張った。
看護部屋に毎日入り浸っている彼と同じ行動をとり、毎日忙しい看護猫の邪魔をしたくはない。
「サンドストームかい?ファイヤハートを連れてってくれるなら万々歳だよ」
看護部屋の暗がりから、眠そうなイェローファングの声がした。
そのさらに奥からは、2匹の話す声がする。今日もファイヤハートはシンダーポーにちょっかいをかけているのだろうか。
「ほらファイヤハート!恋猫さんから呼ばれてますよ。早く行かないと嫌われちゃいますよ!」
シンダーポーのからかいがここまで聞こえてきた。
「それは…嫌だな…」
ファイヤハートの小さな声も聞えた。
「んもうばかですね」
シンダーポーが言った。暗がりのファイヤハートは傷付いた表情をするかと思ったが、なんだか嬉しそうだった。
「サンドストームはそんな冷たくないですよ!看護猫のあたしが見てても分かるんですよ。大丈夫ですって、早く行ってください。じゃあ」
サンドストームは耳をそば立てていた。
ファイヤハートが一人でやって来た。
「おはよう。今日も狩りに行くかい?」
「いいえ、違うの…」
サンドストームは前足をそわそわと動かした。
どうしたらファイヤハートの気持ちを私に向けられるの…?
シンダーポーがファイヤハートを喜ばせていた言葉を思い出す。
「あっ…!」
ファイヤハートが不思議そうな顔をする。じっとサンドストームを見ている。
サンドストームは微笑んだ。
この言葉を言ったら、ファイヤハートは他の雌猫のところで楽しくお喋りしないはず。

「ばかね」
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投稿 by Murre Sat Dec 30, 2023 7:24 pm

『対岸』

「吐け!アイヴィープール!吐け!」
アイヴィープールは深く息を飲んだ。
「アイヴィープール!早く吐け!」
アイヴィープールは首を横に振るばかり。
「アイヴィープール!俺の言う事が分からないのか!」
アイヴィープールは顔を右に向けながら言った。
「分かりますよ言葉ぐらい。でもわたしは死ぬんです!暗黒の森に出入りしたわたしは存在しても意味が無いんです!」
アイヴィープールは口を看護猫から遠ざけながら叫んだ。
看護猫はわたしの命を救うため、少しの口の隙間にでもノコギリソウを突っ込んでくるに違いない。
「アイヴィープール!口を開けろ!」
ジェイフェザーはアイヴィープールの体を覆うように乗り、言い聞かせ続けている。
絶対口を開くもんか。
「アイヴィープール、このままだと本当に死ぬぞ!それでもいいのか!」
「いいんです!サンダー族にわたしは必要ありません!」
不意にジェイフェザーの重みが消えた。
「俺も死にたかったよ…出来るものなら、消えてしまいたかったよ…」
アイヴィープールは、看護猫が言っていることに耳を疑った。この頑固な看護猫も、自尊心を失うことがあったの?
「スター族は俺に視力をくれなかった!正統な血もくれなかった!普通の戦士になる機会さえもくれなかった!本当ならあの時、狐に襲われて死んでたはずなのに!」
ジェイフェザーは半狂乱になって叫んだ。
看護猫の変わりように唖然としたアイヴィープールの口の端から、赤い汁が漏れ出た。
「食え!」
ジェイフェザーは汁の滴る音を聞いたのか、アイヴィープールの口の中にノコギリソウを押し込んだ。直ぐに水を含ませ、喉をさすった。
アイヴィープールはむせながら、胃の中のものを吐き出した。
「ジェイ、フェザーも…死のうと…思った、の?」
アイヴィープールは息を切らしながら言った。顎にノコギリソウの屑が付いている。
「あるよ。毒の入ってる薬草なんていくらでもあるから、自殺し放題だよ。加えて、俺は目が見えないからね。原因なんて作り放題だ。水に溺れた、崖から落ちた、トンネルに脚を突っ込んだ…」
アイヴィープールは、自嘲するジェイフェザーを見て悲しくなった。看護猫にも、自分なんか必要ないなんて思う瞬間があるんだ……。
「ごめんなさい…ジェイフェザー、ごめんなさい。暗黒の森に行ったり、死のベリー食べたりして……ごめんなさい!」
アイヴィープールの濃い青い目から、大粒の涙がぼろぼろと溢れた。
「きみには出来ることがあるだろう。きみにしか出来ないこと」
アイヴィープールは震えながらうなずいた。
「暗黒の森のこと、教えます。一族のために、戦います…!」
ジェイフェザーは横を向いた。
「きみは体に不自由なく、正真正銘のファイヤスターの血族から生まれたんだから、大事にしろよ、体。悲しむ者がいるんだからな」
アイヴィープールは、ジェイフェザーが抽象的に言葉を紡ぐのを聞き流しながら、うなずいた。
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投稿 by Murre Sat Jan 27, 2024 9:22 pm

『悔い』

「大丈夫か?そろそろ元気出せよ」

「……大丈夫」

「大丈夫って言うやつは大体大丈夫じゃないんだよ。大丈夫は、確認するためにあるんじゃない」

グレーストライプははっと顔を上げて、ファイヤハートの顔を見た。

「分かるよ」

ファイヤハートは、グレーストライプと視線を合わせずに言った。

グレーストライプは何も答えない。

「ぼくたちはブルースターみたいに命を9つもってるわけじゃない。けど、ホワイトクローだって、部族のために戦ったんだ。絶対、スター族の縄張りで狩りをしてるよ」

ファイヤハートは、グレーストライプの濡れた毛を尻尾で撫でた。

「ホワイトクローの死も、ブルースターの命の一つも、同じだなんて全然思えないよ。だって、ブルースターは9個も命があるのに、ホワイトクローは、ホワイトクローは……!」

グレーストライプが早口で言い、言葉を、喉を、詰まらせた。

「仕方ないよ。命が一つなのは、ぼくもきみもホワイトクローも、何も変わらない」

「じゃあきみにとって、ぼくの死もホワイトクローの死も、全く同じなのかい?」

グレーストライプは、暗い黄色の目を伏せながら言った。

ファイヤハートは、首の後ろの毛を逆立てながら言った。

「いいや。きみはぼくにとって、かけがえのない親友だ。親友の死は、重い」

「ホワイトクローにだって、親友がいたし、指導者がいたし、おやきょうだいがいたんだ!」

グレーストライプは、言葉を吐き出しうずくまった。

「あぁ、そうだね」

「シルヴァーストリームは、ホワイトクローの姉妹だったんだよ。血は繋がってないけど……ぼけは、ぼくは……!ぼくの大切な猫の、大切な存在を奪ってしまったんだ!」

グレーストライプは、ぬかるんだ地面を何度も掻きむしった。彼の足元には、長い灰色の毛が散らばっている。

「じゃあきみは、ホワイトクローにきみの大切な猫を奪われても良いのか?違う部族の猫に情をかけて、自分の部族の猫が死ぬのを、見過ごすのか?それなら戦士の掟はなんのためにあるんだ?部族って本当に必要なのか?」

ファイヤハートは言いながら、自分が飼い猫に戻った気分を味わった。

自由の風が吹き付けるはずの首には、新品の青い首輪が付いていて、金属の味のする水がひげの先から滴っている。

「境界線なんて無かったら!境界線なんて無かったら、ぼくはシルヴァーストリームを後ろめたさなく愛せたし、こどもたちも睨めつけられなかったし、そもそもシルヴァーストリームは死ななかったはずだ!」

グレーストライプは、一歩身を乗り出して、滝に向かって叫んだ。キツネの尻尾一本分のその先には、深い深い谷がぱっくりと口を開けている。
ファイヤハートは、尻尾で地面を擦りながらグレーストライプを観察した。

このまま彼の感情を放置したら、シルヴァーストリームとホワイトクローのいる、境界線の無い狩り場へと自ら身を投げ出しかねない。

ホワイトクローの墓場のある、谷底へ。

「グレーストライプ、狩りに行こうよ。きみはちょっとイライラしすぎだ。今きみが死んだら、こどもたちはどうするんだい?シルヴァーストリームだってホワイトクローだって、良い顔しないよ?」

グレーストライプは沈黙を貫く。

いや、そもそも聞こえていないのか……?

「グレーストライプ?」

グレーストライプは、静かに振り向いた。

「ぼくが今死んだら、少なくともきみは、悲しんでくれるよね?」

ファイヤハートは駆け出した。

崖淵に立つグレーストライプの前の、僅かな隙間に潜り込み、全身で彼を内陸へと押す。

「嫌だ!きみまでいなくならないでくれ!
レイヴンポーは死んだ、
、、、、、、、
戦士を望んでたシンダーポーは消えた……
そして今きみまでいなくなってしまったら、
ぼくは、誰と共に生きていけばいいんだ?」

「きみはサンドストームがいるだろ」

「サンドストームときみは違う!グレーストライプ!やめてくれ、やめてくれ……!」

「そう言ってくれるのは、一体いつまでだろうな」

グレーストライプは、自嘲的な笑みを浮かべる。

グレーストライプの研がれた爪が、さらに地面に食い込んた。
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投稿 by Murre Fri Mar 01, 2024 8:03 pm

『畑』

「レイヴンポー! ネズミ、いたか?」
白と黒の大きな猫が、艶のある黒猫を呼んだ。
「バーリー……一匹も」
暖かい納屋には一匹もネズミがいなかった。

「サンダー族でもしょっちゅうこんな感じだったのか」
バーリーが体を丸めながら、納得するように言った。
「違いました……少なくとも、ぼくが居た頃は」
「……そうか……」
バーリーは相槌を打ったきり、押し黙った。
「やっぱり何か探して、来ますね」
レイヴンポーの提案に、バーリーは何も答えなかった。

丸々と太ったネズミが極端に減少してから、丁度太陽が3回沈んだ。
レイヴンポーもバーリーも、納屋の壁の穴という穴をほじくり回したが、ぼろぼろと壁が崩れるだけだった。
レイヴンポーは、サンダー族に居るときに、枯れ葉の季節を乗り越えた経験が少なからずあるので、空腹には何とか耐えられているが、バーリーは2日目から動き回る回数がめっきりと減少した。
そんなバーリーのために、レイヴンポーも辛うじて、痩せ細ったネズミや身のふっくらした大きめの幼虫を持ち帰っていたが、バーリーはほとんど口を付けなかった。
レイヴンポーも虫は好みではなかったが、腹と背中がくっついてしまったら、もうどうすることも出来ないので、顔をしかめながらでも、尻尾をばたばたさせながらでも、食べた。
「はあぁ。なんでネズミ消えちゃったんだろうなぁ」
レイヴンポーは、何もいない空間に向けて、ため息を放った。
疲れた目が、納屋の外をなんとなく眺める。
視界は、麦秋を迎えた黄金色の小麦と、とにかく背高のとうもろこしで埋め尽くされる。
と、不意に小麦が不規則に揺れた。
かさかさかさと、薄い葉が擦れる音が、レイヴンポーの耳まで届く。
レイヴンポーは、さっと獲物に近づく体勢になった。
『首を伸ばすな!』
『尻を上げるな!』
『尻尾を振るな!』
獲物の場所を捉えるために研ぎ澄ましていた黒猫の耳に、元指導者の怒声が蘇った。
レイヴンポーは反射的に耳を寝かした。
真後ろに大きな虎猫が忍び寄っているわけでもないのに、レイヴンポーはひどく怯えた。
そろそろと黒猫は振り向いた。
まるで、見てはいけないものを見てしまった時のように。
そう、あの日のように――。
レイヴンポーは、ふるふると頭を振り、嫌な過去を払った。
獲物を狙う体勢に戻すと、風とは異なる動きをする小麦畑の一点に集中した。
「――っ!」
レイヴンポーは強く跳躍すると、その不審な畑の部分に爪を立てた。
甲高い声も響かなかった。
レイヴンポーの狩りの腕は、たとえ納屋に長く住んでいても、衰えてはいなかった。

レイヴンポーは、丸々と太ったネズミをくわえ上げてから、鼻先に付いた麦のくずを満面の笑みで払った。
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