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月夜に誓ったある夏の日

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投稿 by ヒーステイル Mon May 25, 2015 6:12 pm

サクライップニィ@NS wrote:今更ながら初コメです………

とっても面白いです!!
一番最初の『淡い光に導かれ…………」の文の私的に好きです!
その文才力を分けてください←
続きを今か今かと待っております!



コメありです!
あの文も作品も全て即興なのに、好きと言ってもらえて嬉しい限りです!
続きはモーントが腹いせにずったずたにしちゃったんで少々お待ちを(´・ω・`)
お互い頑張りましょう!
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投稿 by ヒーステイル Tue May 26, 2015 5:33 pm

4* 瞳の向こうへ








 緑に生い茂る茂みの中を、しなやかな影が押し分けて進んでいく。甲高い声を上げたルリビタキが、美しい羽を広げて飛び立った。

 びくり、とモーントは肩を浮かせ、怪訝そうに眉を寄せながら振り返った。

 茂みが鳴り、すっと通った顔が現れた。

 「誰?」

 クーゲルが、サファイヤの瞳を怯えて光らす。

 モーントは鮮やかな目を微かに見開き、口を薄く開けて呟いた。

 「・・・ノワール?」

 瞬間、黄金色の毛皮が波立ち、思わず頬が緩んだ。彼の伸びた影がゆらりと動く。

 「えーっと・・・モーント?てことは、ここ、人間の住処か?」

 ノワールは戸惑うように辺りを見回し、モーントに苦笑を見せた。

 「まさか、迷ったんですか?」

 モーントは驚く。その衝撃を隠すように、すんと澄まして静かにきいた。

 ノワールは大きな肩を竦め、やはり困ったように笑った。

 「まあ、そんなとこだ。妹を探しててね」

 くいっと眉を上げ、口を曲げてこっちを見る。なんだかその表情が、自分を飼ってる人間に良く似てて、笑ってしまった。

 「モーント、え?知り合い?」

 クーゲルがおどおどと瞳を歪ませながらつついてきた。

 「うるさいよ。別に、知り合いって程でもない」

 ノワールはキシシと、まるで人事のように振る舞った。しかし、モーントが一瞥すると、わざとらしく肩を上げてクーゲルに向き直った。

 「おっと、初めまして、丸いお顔のサファイヤ君?俺はノワール。別に喧嘩しようってんじゃあないから、安心してくれ」

 丸いお顔のサファイヤ君ことクーゲルは、困ったように微笑してから、「クーゲルです。よろしく」と言った。

 「妹さんを探してるんですか?良かったら私達も手伝いますケド」

 モーントはノワールの瞳を覗く。淡い瞳と、何にも呑まれることのない毛皮が共鳴し、モーントの脳天を麻痺させた。

 「ありがとな。でも、もうすぐ見つかるはずだから。友達同士で仲良くやってな」

 ノワールは2,3回瞬きをすると、ふっと顔を曇らせた。

 あの?とクーゲルが心配そうに身を乗り出す。とことんお人好しな猫だ、とモーントはぼんやり思った。

 ノワールははっと目を見開いて顔を上げた。この涼しげな雄猫には珍しい、焦りに飲み込まれた、という表情だった。

 「いや、何でも」

 ぐるんと表情を回転させ、晴れの日のアサガオのように輝かしい顔を見せた。そのまま口を継ぐように、彼はきく。

 「なあ、モーント、クーゲル。友達はいっぱいいるか?」

 なんなんだ、この猫は。寂しいのか?モーントは眉を潜めてから、俺が友達1号だもんね!と嬉しそうに騒ぐ幼馴染を無視し、「まあ」と返事をする。

 そっか、と黒猫は微笑んだ。心からの歓喜だった。

 「・・・絶対、絶対大切にしろよ。失ったモンは、もう、戻らねえから」

 ノワールは、ふと、真剣な眼差しを見せると、遠い目をした。

 どきん、と心臓が跳ね上がる。

 この侘びし気な顔も、どこかで見たものだ。今、この雄猫の中で、どんな感情が渦巻いているのか。彼の瞳には、何が映っているのか。

 もどかしい。腹ただしい。この世界の上で、彼の瞳を通して自分を覗きたい。ノワールは、私をどう映しているのか。

 ノワールはしなやかに尻尾を振った。

 「じゃーな。また今度、妹と顔でも見せにくるよ」

 黒のKnightはそう言い残し、一歩、盤上から姿を消した。

 よく晴れた、初夏の午後のことだった。
 
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投稿 by ヒーステイル Wed May 27, 2015 9:19 am



5* この胸に淡く







 

 だん、だん、と鈍く響く音がした。

 その振動はこちらに向かって来ていて、人間が自分を探しているのだと自動的に告げていた。

 口を噤んだままのっそり立ち上がると、人間から逃げるようにして階段の上から飛び降りた。薄緑色のベットに体を落ち着かせ、細く息を吐く。

 今は誰かに触れてほしくない。ちょっとでも構われたら、きっと癇癪を起こして大暴れするだろう。

 人間が自分の名を呼ぶ声がするが、全て無視して、顔をベットに押し付ける。

 あの黒猫の、真意は何なのか。何故、幼馴染の元へやってきたのか。

 疑問と疑問がぶつかり合い、口から淡い息となって吐出されていく。しかし、その息は消えることもない。

 これじゃあ、ずっと苦しいままだ。

 分かっているのに、聞く勇気が湧いてこない。

 情けないなぁ、と微苦笑し、静かに、静かに日が暮れてゆく様を眺め続けていた。







 友達とは、一体何なのだろうか。時に煩わしく、でも無くてはならない存在?

 友達なんて、いなければいないで それでいいと思う。

 皆、口をそろえて「大切だ」と偉そうに語るのだ。特に冒険心も悩みもないくせに。根本的な理由がしっかりしてない限り、その話を信じる気にはなれない。

 しかし、ノワールの口ぶりは違った。

 まるで、自分の犯してしまった過ちを、子供も自分と同じ失態をしないように、優しく語りかけているようだった。

 犯してしまった過ちとは、一体何なのか。




 全ては彼自身の胸の中にある。彼の中にしかないのだ。





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投稿 by ライトハート Wed May 27, 2015 8:08 pm

ほんのり?してていいですね*章の題名が毎回センスがあるのも羨ましいですw
続き楽しみにしてます!お互い頑張りましょう!
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投稿 by ヒーステイル Wed May 27, 2015 11:03 pm

光鈴 wrote:ほんのり?してていいですね*章の題名が毎回センスがあるのも羨ましいですw
続き楽しみにしてます!お互い頑張りましょう!



コメありです!
そうですね、ちょっと日常系ですw新しい猫がどんどん出てくるのもなぁ、と思ったので、ちょっと間をw
センスを問われたら私はおしまいです(´・ω・`)
ライトsも頑張ってください!
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投稿 by ヒーステイル Sat May 30, 2015 5:01 pm



6* きっと叶わない理想なら










 上には上がいる、とは、よく言ったものだ。たとえガムシャラに進んで行っても、終わりはない。何かで一番になっても、必ずその先がある。
 数字に終わりがないように、自分たちの歩む道だって、終わりはないのだ。

 もし、道の途中で疲れたらどうするか。答えは簡単だ。”諦める”。今引き返せば、遅くはない。まだ、スタート地点は見えるのだ。

 あの猫の全てを知ろう、だなんて思わない。思ってはいけない。彼の一番にはなれないし、なる気もない。

 彼の感情のゴールなんて、見えていないのだから。そう、スタート地点さえも分からない。終わりの分からない道なんて、私は選ばない。

 ___今ならまだ間に合う。

 誰かが囁いた。風の音のように、広がる波紋のように。ゆっくりゆっくり、己の耳の中で響く。

 でも、自然と足は動かなかった。

 何で?私はここから立ち退きたいのに。もう、面倒な想いをするのは嫌なのに。

 歯をぐっと噛み締め、足先に力を込めた。居たくない、という思いと、まだ知りたい、という思い。

 「___どうしたんだい、モーント」

 その声に耳をぴくりと動かし、目だけ上に向けた。濃い虎柄の模様が、月の光で銀色に輝いている。不思議と、あの日のような胸苦しさは感じなかった。

 「なんでもないわ」

 モーントはそっぽを向いて返し、尻尾をしなやかに靡かせて虎猫の前に出た。

 「早く歩いてよ、そのノロマな足じゃ、間に合わないわ」

 吐き捨てるように呟くと、伸ばしていた尻尾を雄猫の肩に乗せ、静かに歩みだす。胃の中で虫が暴れているようで、居心地が悪かった。

 「おう、ありがとう」

 雄猫は嬉しそうに、紫目を、うっとり輝かせた。それから尻尾に導かれるようにして、塀の上を連れ立って歩いた。

 暫くして、腰を下ろして前かがみになり、ひょいと身軽に飛び降りた。

 顎を上げて上を見ると、虎猫が困ったように足踏みをしていた。ぐぅっと不自然な程に後ろ足を曲げ、彼は飛び上がった。ピンと伸びた体が地面に近づいていく。

 鈍い音を上げ、雄猫は危なっかしく立ち上がった。恐怖に歪んでいた瞳を、慌てたように瞬きをして落ち着かせていた。

 「・・・」

 モーントはそれを黙って見ると、「行くよ」と言って前を見た。後ろから焦ったような足音がついてくる。

 今までつたっていた塀の角を曲がると、風に煽られ たくさんの猫の匂いが鼻の奥で広がった。

 「また密集してる・・・!」

 モーントは不機嫌そうに唸ると、虎猫の背中をぐいっと肩で押した。

 「着いたよ。こっからは自分で行くことね」

 いつものように言い聞かせると、身を翻して素早く猫達の間に体を捩じ込ませた。

 なんだ、なんだ、と押しのけられた飼い猫たちが、ほっそりした美しい雌猫に視線を集める。ふん、とモーントは鼻を鳴らし、見慣れた灰色の雄猫の隣で急停止した。

 「うわっ、あれ、モーント?」

 モーントだ!と無垢に瞳を輝かせ、クーゲルは微笑した。

 「またギフトを送ってあげたんだね。まったく、ギフトも目が見えなくなってきてるからって、モーントに迷惑かけるのはやめて欲しいよね」

 クーゲルは丸っこい顔を少し、顰める。

 「うるさいよ、クーゲル」

 モーントは溜息をつき、腰を下ろして背中を丸めた。

 その途端、騒がしい声が凄いスピードで近付いてくるのがわかった。

 「あー、またヴァン走ってるよ・・・」

 クーゲルが苦笑する。

 いや、苦笑してる場合じゃない。なんたって、巻き込まれるのは私の方なんだから。

 「なあクーゲル、モーント!!」

 「うるっさい、ヴァン!少し静かにしてよね。このチビ馬鹿助」

 モーントは喉の奥でぐるると低く唸る。それから小馬鹿にしたように、尻尾で友人の複雑な縞模様の頭を叩いた。

 「まだ何も言って無えよ!」

 ヴァンは怒ったように足を鳴らした。さらにモーントが、彼の頭1つ分上から嘲笑すると、ムキになって飛び上がる。

 「チビ言うな!」

 クーゲルがまあまあ、と仲介に入る。モーントは物足りなさそうに口を尖らせると、黙って一歩退いた。

 「ヴァン、落ち着けって、ねえ、それより、僕達に話したいことがあるんじゃないの?」

 ヴァンははっと顔を上げ、今まで忘れていたのか嬉しそうに笑った。「ホント単細胞」モーントの軽口を、ヴァンは聞き逃す。

 「今日の集会って、凄いニュースの発表の為らしいぜ!すげえよな、ワクワクすんな」

 彼は幼さの残る顔をパッと輝かし、2匹の友人を見上げた。

 「それさ、悪いニュース?良いニュース?」

 モーントは尻尾をぱたっと鳴らして訊く。問われたヴァンは、困ったように眉を寄せ、無言で俯いた。

 「そんなのも知らないで喜んでたの?ホント馬鹿だよね、ヴァン」

 モーントはヴァンの背中に前足を添わせて嘲笑った。

 「なんだと!」

 とヴァンは歯を向いて顔を上げる。しかし良い文句が浮かばなかったのか、またしょげたように目を細めた。

 


 「違うもん!兄ちゃんは馬鹿じゃないわ!」

 甲高く、幼い声に、ふっと視線を下へとずらす。

 そこには、ふわふわした毛皮を少しだけ逆立て、人間が温めた熱い水のように、湯気が出そうなほど顔を赤くした雌猫が居た。

 「いいからいいから、このお姉ちゃんは本当は優しいからさ。俺の友達だよ。だから、な?ボーネ」

 ヴァンは優しい声で妹に言い聞かせ、なだめるように背中の毛を舐めながらモーントを尻尾で示した。

 ヴァンのように、目の前でストレートに物を言う猫はいないだろう。

 モーントはこそばゆい気持ちになり、身を捩らせて、嬉しくて光った瞳を見られないようにした。隣でニヤニヤと笑っているクーゲルを、後では羽交い締めにしようと心に留める。

 「そっ・・・かぁ」

 ボーネは淡く息を吐くと、けろっと表情を一変させて可愛らしく笑った。

 「兄ちゃんやっぱり格好良い!ね、モーント、クーゲル!」

 急に話をふられた2匹は驚いて目を丸くし、ボーネを見下ろした。

 「そうだね、優しいしね」

 クーゲルが微笑みを浮かべ、ボーネのふわふわした毛を撫でた。撫でられたボーネは満更でもなさそうに、笑みを浮かべて目を細めた。

 「・・・うん。私と違って、素直で純粋で良い奴だよ。・・・馬鹿とも言えるけど」

 モーントは優しくボーネを尻尾で撫で、ぽつりと言った。

 ボーネが嬉しそうにモーントの足元で転がる中、ヴァンは目を白黒させて固まっている。

 「お・・・お前、頭大丈夫か?人間の医者のとこ、行くか?」

 「黙ってよチビ。それ以上何か言うと埋めるからね?」





 闇夜の中に、ぼんやりと猫達の瞳が浮かび上がる。

 緑と白の衣に身を包んだ人間は、その異様な光景を見て短く悲鳴を上げ、慌ててその場を後にした。

 ダンボールの上に、ひげがダランとたれた、灰色の首輪をした老猫が腰を下ろしている。

 彼は口を開け、嗄声で、ぽつりぽつりと語りだした。

 「__若猫はまだ知らぬ、奴がやってきた、とワタリガラスが申しておった。本当かどうかは分からぬが、恐らく本当だろう。
1年前と同じことが起きぬよう、1匹たりとも、奴と関わるな」

 1歳に少しばかり満たない猫達__モーント達の周りに、不穏な風が渦巻いていた。

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投稿 by ヒーステイル Sat May 30, 2015 5:11 pm

ちなみに*年齢情報(登場済み猫のみ)


モーント・クーゲル・ヴァン  生後9ヶ月と10週間ほど(人年齢で15歳くらい)

ノワール  1歳とちょい(17歳くらい)

ボーネ  生後6ヶ月(9歳くらい)

ヒンメル【天国】(超絶どうでもいいです。そんな出番ないですし)
淡い灰色の斑の入った、ふくよかな雄猫。
性格は意地悪く、そのへんに居そうな駄目なおっさんタイプ。

  7歳(44歳くらい)
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投稿 by ヒーステイル Tue Jun 02, 2015 7:28 pm



7* 菊の香りと














 細く欠けた月が、藍色の空にぽっかり浮かび上がる。月の淡光で輝く屋根の上に、長い影が伸び上がった。

 月は薄べったい灰色の雲に覆われる。影の根本から、一匹の雌猫が浮かび上がる。

 雌猫はぐっと体を反らすと、飛び上がって空中で体を捻らせ、満足気な顔をして塀の上に降り立った。

 雌猫は真っ赤な舌を口を割って覗かせると、ぺろりとヒゲを撫でた。赤い舌は一瞬、艶っぽく光り、笑みを浮かべた口の中へ戻っていく。

 ああ、また誰かが私の噂を広めているわ。

 情報網って、ほんと怖いわねぇ。去年のちょうどこんな生温い風の吹く日に、二晩顔を覗かせただけなのに。

 あの日は最高の天気だったわ。新鮮な血のような、そんな熱い陽気、その熱気をさらっていった夏風は、私の匂いを消してくれた。

 今日はあの日のような、最高のコンディションじゃない。

 だからって、私が失敗するようなことはありえない。

 雌猫は塀をつたって、とある民家の狭間にある、狭苦しい空き地を見下ろした。殆ど飼い猫だろう、猫達が色とりどりの模様を描いて座っている。

 いやねぇ、あんな密集しちゃって。今をいつだと思ってんのかしら、暑苦しい。

 あの綺麗な雌猫ちゃんだって、嫌そうにしてるわ。美しい顔を歪ませて・・・ますます私の美貌から遠のいてるわよ。

 ああ、なんて笑える光景かしら。

 きっと、弱いもの同士必死に集まって、なけなしの頭脳と情報をかき集めて、私を語っているんでしょう?

 私の事に、悪夢でうなされ、一晩中ガクガク子鹿みたいに震えて、眠れないのね。可哀想に!

 大丈夫よ、すぐに開放される日が来る。いいえ、私が開放してあげる。

 雌猫は妖艶な瞳に、きらりと不敵な光を灯すと、身を翻して駆け出した。

 頭を仰け反らせ、何も気にせず大声で笑う。

 塀に沿った家の窓から、大きな顔を覗かせて人間が怒鳴った。雌猫は人間の顔に向かって砂を蹴りあげ、飛ぶように逃げる。

 明日が楽しみ___今回も私が、このチェスゲームに勝たせてもらうわ!今回は誰を頂こうかしら・・・本当に待ち遠しいわね!

 その長い影は、月明かりの向こうに消えていく。朗らかなような、菊の香りを残して、彼女の体は、闇夜に溶けこんでしまった。

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投稿 by フェニックスメモリー Sat Jun 13, 2015 8:06 pm

いや~いいですねぇ。
素敵です。
これからも頑張ってください!

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投稿 by ムーンドロップ Sun Jun 14, 2015 6:23 pm

今更ながら初コメ・・・・
とっても面白いです!文章が素敵です!見習わなければ・・・

楽しみにしてます。
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投稿 by ヒーステイル Wed Jun 17, 2015 5:35 pm

フェニックスメモリー wrote:いや~いいですねぇ。
素敵です。
これからも頑張ってください!

コメありです!
はい、頑張らせていただきます!w
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投稿 by ヒーステイル Wed Jun 17, 2015 5:36 pm

ムーンドロップ wrote:今更ながら初コメ・・・・
とっても面白いです!文章が素敵です!見習わなければ・・・

楽しみにしてます。

コメありです!
ムーンsの文章もすっごく素敵です!もっとちゃんとした文がかけるよう、頑張ります!
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投稿 by ヒーステイル Sun Jun 21, 2015 11:34 am

8* 御伽話が語られる時










 静かだった。いつもなら、ザワザワと木葉が戦ぐように、騒がしく声が上がっているだろう。だが、この丑三つ時の夜空の元、聞こえるのは、誰かが鋭く息を飲む音だけ。

 代わりに、若猫たちが感じたこともない感情が、渦巻いていた。

 「奴___とは、誰のことですか?」

 どこからか、よく響く声が上がる。モーントが首を巡らすと、腰を浮かせている、華奢な黒猫の姿が見えた。

 灰色の首輪をした、老猫は目を細める。

 「お主、まだ若いようだな。首輪もしておらぬが、浮浪猫かの?」

 黒猫は、浮かせた腰を振って足を伸ばし、完全に立ち上がった体勢で、ゆっくり老猫を見上げた。その顔が少し歪んだのは、月明かりのせいだろうか。

 老猫は口を開こうとした彼を制した。

 「無理に言う必要はない。・・・奴、とはな、可憐な菊のようで、実に傲慢で強い香りの女じゃった」

 のろりくらりとした口調だが、モーントにはすぐ分かった。

 この爺さんがしようとしている話は、こんな平坦な口調で語るべき穏やかなものではない、と。

 どうやらヴァンもそれを感じ取ったらしい。丸い瞳を老猫に集中させ、いつも太陽な笑みを浮かべる頬は、ぐっと引き締まってる。

 彼の野生の感も宛になるものだな、とモーントは横目で思った。

 「去年の夏の始め__ある美しい雌猫が、この集落にふらりとやってきた。まさに花のような笑みでのう、雄猫と揉め事を起こし、出てきたというもんだから、皆よく面倒を見てやった。

 彼女は尽くしてもらうことが嬉しいらしく、お礼と言って雄猫達にひっついて回った。雌猫達は彼女に反感を持っていたが、何故可愛らしい娘のため、何も言えんかった」

 なんだか胸がむかつく話だ。モーントは、淡い毛皮を少し逆立てる。

 老猫はうん、と一置きすると、くすんだ目を猫達の頭上で巡らせた。

 「しかし、ある日、彼女はいなくなった。匿ってもらっていた軒下からぽっかり消えてしもうた。皆汗水たらして探しまわったが、見つからんかった。きっと、気を持ち直して帰ったのだろう。そう思ったのじゃ。

 だが、同時に一部の雄猫たちもいなくなった。みな飼い猫で、人間たちも怒って探していたが、やがて諦めたように帰っていった」

 老猫は険しい顔でひとり頷き、肩をいからせた。その日のことを思い出し、主人たちの不始末に苛ついているようだった。

 質問した黒猫が、やや間を置いてきいた。淡々とした口調だ。

 「__その雌猫と、雄猫達はどこに行ったんですか」

 老猫は顔を上げずに、目だけで黒猫を見た。ふーと細く息を吐く音が、近くにいたモーントには聞こえた。

 「・・・変わり果てた姿で発見された」

 聞いていた猫達に動揺が走った。頭が波のように揺れ、ざわざわと騒がしくなる。

 ヴァンがこの世のものではないものを見たように、緑の瞳を見開き、ボーネを守るように尻尾で引き寄せた。

 ボーネは老猫の言葉の意味がわからないのか、困惑した顔をしながらも、兄を見て泣きそうになりながらその胸に飛びつく。

 モーントは怯えているクーゲルをちらりと見た。彼がか細く「そんな」と呟くので、優しく尻尾で背中に触れてやる。話が始まると、すぐに尻尾を下ろした。

 「集落から少し離れた林で、発見された。一匹は目を開いたまま、一匹はずたずたに引き裂かれ、一匹は怒った顔のまま、息絶えていてのう、それはもう・・・」

 そこで老猫は、苦しそうに息を飲み、喉をごくりと鳴らした。

 「一匹だけ、若い雄だけ、意識があったんじゃ。苦しそうに、潰れた右目から血を流しながら、『あいつがやった』と。

 『奴は恐ろしい化物だった。可憐な身の振る舞いで、僕らを連れ出し、誘った。奴は僕らを自分のものにしたがった。

 妻がいるから、愛するものがいるから、そう断り、非常識だと一括すると、奴は、変わった。本当に、化物みたいだったんです。皆が次々・・・こわい、こわいよ』

 それだけ言うと、彼は命を手放してしまった。苦しい息の中、必死に伝えてくれたんじゃ。わしらは彼らを救えなかったことが、どうしても悔しくてのう・・・

 面目ない」

 老猫は消え入りそうな声で頭を垂れた。

 クーゲルが老猫を見上げ、涙声で呟いた。
 
 「かわいそう。可哀想だよ」

 それは、心からの言葉だった。傲慢で、命を知らない、菊のような雌猫、愛したものを残し、去ってしまった雄猫達、それを救いたくても見逃してしまった、老猫。

 「今、本当に、その雌猫が現れたのですか」

 黒猫が、震えた声で訊いた。訊いた、というより、誰ともなく呟いたのだ。彼の目は、按ずるように揺れている。

 老猫は重々しく頷いた。モーントが首を伸ばした時には、もう黒猫は猫達の中に紛れてしまっていて、姿をはっきり見ることは出来なかった。

 「もう二度と、あんな悲惨な事件を生み出したくない。みな、よく頭にいれておくように!友人が彼女とあっていたなら___ 」

 老猫は大声で言った。”悲惨な事件にあってしまった仲間”ではなく、”事件”と表すことで、モーントに老猫の思いが伝わってくる。

 「__助けて、やりなさい」

 助けれるなら助けたい。でも、無謀なら、犠牲者が増えてしまうなら___

 その先は読み取りたくない。モーントは唸った。

 遠くから、笑い声が聞こえてくる。誰かが「不謹慎だ」と言った。誰も、その言葉に反応しない。笑い声は、まるで怯える飼い猫達を嘲笑うかのように跳ね上がると、嘘のように、静かに消えていった。
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投稿 by 明日輝 Sun Jun 21, 2015 12:02 pm

いろんな意味でぞくぞくです!

相変わらず文章がお上手で気が付いたら読み込んでましたー!
モーントの活躍が楽しみです!頑張ってくださいっ!そして文才わけてくださいっ!←蹴
明日輝
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投稿 by ヒーステイル Sun Jun 21, 2015 3:08 pm

明日輝 wrote:いろんな意味でぞくぞくです!

相変わらず文章がお上手で気が付いたら読み込んでましたー!
モーントの活躍が楽しみです!頑張ってくださいっ!そして文才わけてくださいっ!←蹴


コメありです!
じっくり読んでくださったとは・・・すごく嬉しいです!
寧ろください。
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投稿 by ヒーステイル Mon Jun 22, 2015 6:38 pm

9* 願いの道標








 鋭い黄色の光がモーントを刺す。実態のない色に貫かれるとは、奇妙で釈然としなくて、不愉快な体験だ。

 夜の月光のように、この体を包んではくれない。だから朝は嫌いなんだ。

 でも、昨日の晩の月は、どこか冷たく浮かんでいた。モーントはつ、と顔を顰める。

 包み込むでもなく、突き放すでもなく、ただただ、静かに見下ろしているだけ。傍観しているだけ。その淡光で、優しく手を差し伸べることはなかった。

 朝も嫌い。夜も嫌い。何故そう思うのか。そう思ってしまうのか。

 モーントは折った長い体をくんっと伸ばし、伸びてくる人間の前足を無視して歩いた。今は、こいつらに構ってる時間はない。

 外に飛び出し、バルコニーを歩くと見える、濃い茶色で彩られた、木製の低い階段。大股2歩で軽快に降り、芝生の上に跳んだ。

 異様に目立つほどに青々とした芝生からは、人工的な匂いが混じっている。短い草はちくちくと足を刺し、モーントは短く唸ってカバノキの根に飛び乗った。

 しかし、改めて早朝の眩い光を全身に浴びると、夜が恋しくなる思いが身にしみて分かった。

 私は、いつから夜がこんなにも好きになったのだろう。

 私は、いつからあんなにも闇が恋しくなったのだろう。

 モーントには、それが不思議で堪らなかった。幼いころは、朝昼の、あの賑やかな空気が好きだった筈だった。嬉々として漂う、あの独特の空気。

 今では賑やかな光を、率先して避けるようになっている。自分がヴァンに一歩引くように、月のような自分と、太陽のような友人を比べてしまうように、時間でさえも、引けをとってしまっているのか。

 そうじゃない、とモーントはひとりで首を振る。違う。淡い体を木陰へ押し込み、息を吐いた。

 すると、不意に、頭上でがさりと枝が鳴った。

 モーントは飛び上がる勢いで立ち上がり、警戒に染めた目を丸くして、木の上を見上げた。

 ひょこり、と顔を出したのは、ギフトだった。少し濁った紫の瞳で曖昧にモーントを捉えると、口元に笑みを浮かべた。

 「やあ、モーントだね。おはよう」

 彼は太い枝の先端部分まで這い、上からモーントに声をかける。

 モーントは挨拶を返すこともせず、黙ってギフトを見上げていた。見上げることしかできなかった。

 「どうやって、登ったの」

 やっと出てきたかと思えば、そんな言葉。

 ギフトは照れたように顔を伏せ、弾んだ声で言った。それは、集会へと導かれる、厄介な雄猫の声ではなかった。

 「感覚で、分かるんだ。ほんと、ちょっとね。でも、夜みたいな暗い場所は全然分かんなくってさ。夜は、嫌いなんだ」

 いつもありがとうね、ギフトは少女のように体を窄め、丁寧に体を折ってお辞儀をした。

 「別に」

 モーントは無愛想に顔を背けると、逃げるように身を翻して駆け出した。ギフトの軽快な動きが、”夜は嫌いなんだ”と言った時の抑揚が、耳から離れない。

 前は見ていなかった。只管、俯き、足を出し、走っていた。

 「!」

 どんっと音を立て、誰かにぶつかった。うめき声を上げながら、反動で後ずさる。顔を上げると、どこか懐かしく感じる、あの顔があった。

 「よう、どうした?」

 にんまり笑みを浮かべるも、すぐに真剣な表情に切り替わり、モーントを覗きこむ。

 「ノワール、どうして」

 モーントは掠れ声で呟いた。喉が、掴まれたみたいにきゅっと締まる。

 歯をにかっと見せて、黒猫は笑った。どこから出た笑みかは分からない。とても、楽しそうだった。

 「妹についてきたんだよ。で、そのまま散歩。もうそろそろ戻ってくんじゃねえかな」

 ノワールは促すように顎をしゃくった。怖ず怖ずと首を巡らせると、そこにはヴァン兄妹の家があった。

 「ああ、ボーネ・・・」

 あの幼い雌猫と友達だというなら、納得出来る。彼女は兄ヴァンに似て、そそっかしく仲間思いで、社交性に優れている。

 そういうこと、とノワールは頷いた。

 モーントはふと黙りこみ、ちらりと横目で彼を見た。殆ど変わらない目線の高さ。しかし角ばった彼の肩は広く、華奢なモーントよりずっと大きく見える。

 ああ_____

 ただ声を交わしただけなのに。姿を見ただけなのに。

 彼の、漆黒の毛皮が、モーントを包む錯覚に陥る。彼の淡い瞳が、モーントを照らした。闇に浮かぶ、淡光。光と夜は、月を包んでいるのだ。

 
 だから私は、夜が、彼が好きなんだ。



















 月は自分を包む存在へと手を伸ばす。しかし、それはどう足掻いてもただの”存在”で、どれだけ焦がれても、手は空を掴むだけだ。

 それを知らず、だたひたすらに救われることを祈っていた、あの頃はもう遠い。






begs the darkness
(闇を乞う)
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投稿 by ウィンターリーフ@冬葉 Sat Jun 27, 2015 1:25 pm

初めにコメントしてからもうかなり経ってしまいました……。今読み進めていますが、やっぱりヒースsはお上手ですね!
一人一人の性格や口調がとてもわかりやすくて、なおかつ読みやすいです。

陰ながら応援しておりますm(_ _)m
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投稿 by ヒーステイル Sun Jun 28, 2015 4:51 am

ウィンターリーフ wrote:初めにコメントしてからもうかなり経ってしまいました……。今読み進めていますが、やっぱりヒースsはお上手ですね!
一人一人の性格や口調がとてもわかりやすくて、なおかつ読みやすいです。

陰ながら応援しておりますm(_ _)m

コメありです!
キャラの性格は個性的なので、分かりやすいといってもらえてすごく励みになります!
ウィンターsも頑張ってください!
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投稿 by ヒーステイル Sun Aug 02, 2015 5:26 pm

10*  心の色











 気付いてから自分の失態にどくんと鼓動がなった。口に出してはいない。ただ、胸の奥で、静かに自分の感情を見直しただけだ。

 だが、自覚してしまったからには、”その感情” は体を蝕む細菌のように、己をかき乱していった。

 「どうした?モーント・・・」

 「違う!」

 思わず叫び出た自分の声に、モーントは驚いて飛び退き、顔を火照らせながら体制を整えようとした。

 ノワールは、モーントの焦る姿に首を傾げる。だが、そのきょとんとした顔は、たちまちのうちに子猫をからかうような表情に変わった。

 「珍しいな、え?一体なにを隠してるのかな?」

 本当に子猫をからかうように、彼はニヤニヤと笑ってモーントに迫った。

 だが、それはモーントにとって拷問以外の何者でもない。彼女は恨めしげな目でノワールを睨み上げると、身を翻して走りだした。

 向かうはヴァンの家。後ろからノワールの声が追ってくる。

 モーントは、恥ずかしさに染めていた顔を、はっと上げて風を全身にうけた。初夏の風が心地よい。

 心のうちは清々しかった。月が太陽と並んだように、モーントの金の瞳は眩しくなる。菌がなくなったようだ。すっかり身は軽かった。

 きっと、私は夜が好きなだけ。ノワールがそれと対等なんじゃない!

 でも、それが覆るのを知らない私は、心の隅に蟠りが残っていたことに、気づけやしなかった。

 「!」

 ぼふっと胸に小さなものがぶつかる感覚。その小さなものは、ノワールとぶつかったモーントのように、ちょっと後ずさって首を振った。

 「ボーネ」

 モーントは幼い雌猫に声をかけた。兄によく似た瞳のボーネは、はにかむように笑った。

 「モーント・・・ごめんなさい。どうしてこんなとこにいるの?」

 モーントは首をめぐらして、もうひとつの小さな影を探した。きっと、彼の妹もいるはずなのだ。

 案の定、もうひとつ影があった。しかし、ボーネよりも大きい。あの兄妹は小柄だが、それよりも幾分かすらりと、上品に見えた。

 黒白の雌猫。モーントの心臓が跳ねる。ああ、彼の肉親なのだ。

 「ボーネ!大丈夫?」

 すらっとした幼い雌猫は、モーントに気付いてにっと笑ってみせた。ノワールのしない裏のない笑みだ。目も輝かしく色づいている。

 「初めまして。オルジュって言います!モーントよね?兄さんの言ってた通り、綺麗なひとですね」

 彼女は身をくねらせ、モーントの傍で言った。

 「えっ・・・?」

 モーントの耳が熱くなる。悟られまいと顔を背けるが、オルジュは楽しそうに笑っていた。モーントは雌相手だとガードが薄くなる上、オルジュは鋭かった。

 オルジュのこぼした笑みが、ノワールの顔と重なって顔が赤くなる。もう、彼の色に飲み込まれていると知った。

 モーント面白い!とオルジュは目を細めて微笑した。兄が月を気に入ったように、その妹もまた、月が綺麗だと共鳴したのだ。

 「オルジュ!」

 ノワールが陽炎のように毛を靡かせて走ってきた。一瞬顔を恥ずかし気に歪め、咎めるように語尾を鋭くする。

 ふふっとモーントは笑った。心の中がくすぐったい。

 「モーント、嬉しそうね」

 ボーネが首を傾げて呟いた。自分よりもずっと背高い雌猫の背中を見つめ、お宝を見つけた時のように嬉しそうに微笑んだ。

 「とっても綺麗!」

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