月夜に誓ったある夏の日
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ヒースに好ましい小説の方針は?
Re: 月夜に誓ったある夏の日
サクライップニィ@NS wrote:今更ながら初コメです………
とっても面白いです!!
一番最初の『淡い光に導かれ…………」の文の私的に好きです!
その文才力を分けてください←
続きを今か今かと待っております!
コメありです!
あの文も作品も全て即興なのに、好きと言ってもらえて嬉しい限りです!
続きはモーントが腹いせにずったずたにしちゃったんで少々お待ちを(´・ω・`)
お互い頑張りましょう!
ヒーステイル- 副長
- 投稿数 : 282
Join date : 2015/05/17
Re: 月夜に誓ったある夏の日
4* 瞳の向こうへ
緑に生い茂る茂みの中を、しなやかな影が押し分けて進んでいく。甲高い声を上げたルリビタキが、美しい羽を広げて飛び立った。
びくり、とモーントは肩を浮かせ、怪訝そうに眉を寄せながら振り返った。
茂みが鳴り、すっと通った顔が現れた。
「誰?」
クーゲルが、サファイヤの瞳を怯えて光らす。
モーントは鮮やかな目を微かに見開き、口を薄く開けて呟いた。
「・・・ノワール?」
瞬間、黄金色の毛皮が波立ち、思わず頬が緩んだ。彼の伸びた影がゆらりと動く。
「えーっと・・・モーント?てことは、ここ、人間の住処か?」
ノワールは戸惑うように辺りを見回し、モーントに苦笑を見せた。
「まさか、迷ったんですか?」
モーントは驚く。その衝撃を隠すように、すんと澄まして静かにきいた。
ノワールは大きな肩を竦め、やはり困ったように笑った。
「まあ、そんなとこだ。妹を探しててね」
くいっと眉を上げ、口を曲げてこっちを見る。なんだかその表情が、自分を飼ってる人間に良く似てて、笑ってしまった。
「モーント、え?知り合い?」
クーゲルがおどおどと瞳を歪ませながらつついてきた。
「うるさいよ。別に、知り合いって程でもない」
ノワールはキシシと、まるで人事のように振る舞った。しかし、モーントが一瞥すると、わざとらしく肩を上げてクーゲルに向き直った。
「おっと、初めまして、丸いお顔のサファイヤ君?俺はノワール。別に喧嘩しようってんじゃあないから、安心してくれ」
丸いお顔のサファイヤ君ことクーゲルは、困ったように微笑してから、「クーゲルです。よろしく」と言った。
「妹さんを探してるんですか?良かったら私達も手伝いますケド」
モーントはノワールの瞳を覗く。淡い瞳と、何にも呑まれることのない毛皮が共鳴し、モーントの脳天を麻痺させた。
「ありがとな。でも、もうすぐ見つかるはずだから。友達同士で仲良くやってな」
ノワールは2,3回瞬きをすると、ふっと顔を曇らせた。
あの?とクーゲルが心配そうに身を乗り出す。とことんお人好しな猫だ、とモーントはぼんやり思った。
ノワールははっと目を見開いて顔を上げた。この涼しげな雄猫には珍しい、焦りに飲み込まれた、という表情だった。
「いや、何でも」
ぐるんと表情を回転させ、晴れの日のアサガオのように輝かしい顔を見せた。そのまま口を継ぐように、彼はきく。
「なあ、モーント、クーゲル。友達はいっぱいいるか?」
なんなんだ、この猫は。寂しいのか?モーントは眉を潜めてから、俺が友達1号だもんね!と嬉しそうに騒ぐ幼馴染を無視し、「まあ」と返事をする。
そっか、と黒猫は微笑んだ。心からの歓喜だった。
「・・・絶対、絶対大切にしろよ。失ったモンは、もう、戻らねえから」
ノワールは、ふと、真剣な眼差しを見せると、遠い目をした。
どきん、と心臓が跳ね上がる。
この侘びし気な顔も、どこかで見たものだ。今、この雄猫の中で、どんな感情が渦巻いているのか。彼の瞳には、何が映っているのか。
もどかしい。腹ただしい。この世界の上で、彼の瞳を通して自分を覗きたい。ノワールは、私をどう映しているのか。
ノワールはしなやかに尻尾を振った。
「じゃーな。また今度、妹と顔でも見せにくるよ」
黒のKnightはそう言い残し、一歩、盤上から姿を消した。
よく晴れた、初夏の午後のことだった。
ヒーステイル- 副長
- 投稿数 : 282
Join date : 2015/05/17
Re: 月夜に誓ったある夏の日
5* この胸に淡く
だん、だん、と鈍く響く音がした。
その振動はこちらに向かって来ていて、人間が自分を探しているのだと自動的に告げていた。
口を噤んだままのっそり立ち上がると、人間から逃げるようにして階段の上から飛び降りた。薄緑色のベットに体を落ち着かせ、細く息を吐く。
今は誰かに触れてほしくない。ちょっとでも構われたら、きっと癇癪を起こして大暴れするだろう。
人間が自分の名を呼ぶ声がするが、全て無視して、顔をベットに押し付ける。
あの黒猫の、真意は何なのか。何故、幼馴染の元へやってきたのか。
疑問と疑問がぶつかり合い、口から淡い息となって吐出されていく。しかし、その息は消えることもない。
これじゃあ、ずっと苦しいままだ。
分かっているのに、聞く勇気が湧いてこない。
情けないなぁ、と微苦笑し、静かに、静かに日が暮れてゆく様を眺め続けていた。
*
友達とは、一体何なのだろうか。時に煩わしく、でも無くてはならない存在?
友達なんて、いなければいないで それでいいと思う。
皆、口をそろえて「大切だ」と偉そうに語るのだ。特に冒険心も悩みもないくせに。根本的な理由がしっかりしてない限り、その話を信じる気にはなれない。
しかし、ノワールの口ぶりは違った。
まるで、自分の犯してしまった過ちを、子供も自分と同じ失態をしないように、優しく語りかけているようだった。
犯してしまった過ちとは、一体何なのか。
全ては彼自身の胸の中にある。彼の中にしかないのだ。
ヒーステイル- 副長
- 投稿数 : 282
Join date : 2015/05/17
Re: 月夜に誓ったある夏の日
ほんのり?してていいですね*章の題名が毎回センスがあるのも羨ましいですw
続き楽しみにしてます!お互い頑張りましょう!
続き楽しみにしてます!お互い頑張りましょう!
ライトハート- 族長
- 投稿数 : 525
Join date : 2015/05/15
所在地 : 日本
Re: 月夜に誓ったある夏の日
光鈴 wrote:ほんのり?してていいですね*章の題名が毎回センスがあるのも羨ましいですw
続き楽しみにしてます!お互い頑張りましょう!
コメありです!
そうですね、ちょっと日常系ですw新しい猫がどんどん出てくるのもなぁ、と思ったので、ちょっと間をw
センスを問われたら私はおしまいです(´・ω・`)
ライトsも頑張ってください!
ヒーステイル- 副長
- 投稿数 : 282
Join date : 2015/05/17
Re: 月夜に誓ったある夏の日
6* きっと叶わない理想なら
上には上がいる、とは、よく言ったものだ。たとえガムシャラに進んで行っても、終わりはない。何かで一番になっても、必ずその先がある。
数字に終わりがないように、自分たちの歩む道だって、終わりはないのだ。
もし、道の途中で疲れたらどうするか。答えは簡単だ。”諦める”。今引き返せば、遅くはない。まだ、スタート地点は見えるのだ。
あの猫の全てを知ろう、だなんて思わない。思ってはいけない。彼の一番にはなれないし、なる気もない。
彼の感情のゴールなんて、見えていないのだから。そう、スタート地点さえも分からない。終わりの分からない道なんて、私は選ばない。
___今ならまだ間に合う。
誰かが囁いた。風の音のように、広がる波紋のように。ゆっくりゆっくり、己の耳の中で響く。
でも、自然と足は動かなかった。
何で?私はここから立ち退きたいのに。もう、面倒な想いをするのは嫌なのに。
歯をぐっと噛み締め、足先に力を込めた。居たくない、という思いと、まだ知りたい、という思い。
「___どうしたんだい、モーント」
その声に耳をぴくりと動かし、目だけ上に向けた。濃い虎柄の模様が、月の光で銀色に輝いている。不思議と、あの日のような胸苦しさは感じなかった。
「なんでもないわ」
モーントはそっぽを向いて返し、尻尾をしなやかに靡かせて虎猫の前に出た。
「早く歩いてよ、そのノロマな足じゃ、間に合わないわ」
吐き捨てるように呟くと、伸ばしていた尻尾を雄猫の肩に乗せ、静かに歩みだす。胃の中で虫が暴れているようで、居心地が悪かった。
「おう、ありがとう」
雄猫は嬉しそうに、紫目を、うっとり輝かせた。それから尻尾に導かれるようにして、塀の上を連れ立って歩いた。
暫くして、腰を下ろして前かがみになり、ひょいと身軽に飛び降りた。
顎を上げて上を見ると、虎猫が困ったように足踏みをしていた。ぐぅっと不自然な程に後ろ足を曲げ、彼は飛び上がった。ピンと伸びた体が地面に近づいていく。
鈍い音を上げ、雄猫は危なっかしく立ち上がった。恐怖に歪んでいた瞳を、慌てたように瞬きをして落ち着かせていた。
「・・・」
モーントはそれを黙って見ると、「行くよ」と言って前を見た。後ろから焦ったような足音がついてくる。
今までつたっていた塀の角を曲がると、風に煽られ たくさんの猫の匂いが鼻の奥で広がった。
「また密集してる・・・!」
モーントは不機嫌そうに唸ると、虎猫の背中をぐいっと肩で押した。
「着いたよ。こっからは自分で行くことね」
いつものように言い聞かせると、身を翻して素早く猫達の間に体を捩じ込ませた。
なんだ、なんだ、と押しのけられた飼い猫たちが、ほっそりした美しい雌猫に視線を集める。ふん、とモーントは鼻を鳴らし、見慣れた灰色の雄猫の隣で急停止した。
「うわっ、あれ、モーント?」
モーントだ!と無垢に瞳を輝かせ、クーゲルは微笑した。
「またギフトを送ってあげたんだね。まったく、ギフトも目が見えなくなってきてるからって、モーントに迷惑かけるのはやめて欲しいよね」
クーゲルは丸っこい顔を少し、顰める。
「うるさいよ、クーゲル」
モーントは溜息をつき、腰を下ろして背中を丸めた。
その途端、騒がしい声が凄いスピードで近付いてくるのがわかった。
「あー、またヴァン走ってるよ・・・」
クーゲルが苦笑する。
いや、苦笑してる場合じゃない。なんたって、巻き込まれるのは私の方なんだから。
「なあクーゲル、モーント!!」
「うるっさい、ヴァン!少し静かにしてよね。このチビ馬鹿助」
モーントは喉の奥でぐるると低く唸る。それから小馬鹿にしたように、尻尾で友人の複雑な縞模様の頭を叩いた。
「まだ何も言って無えよ!」
ヴァンは怒ったように足を鳴らした。さらにモーントが、彼の頭1つ分上から嘲笑すると、ムキになって飛び上がる。
「チビ言うな!」
クーゲルがまあまあ、と仲介に入る。モーントは物足りなさそうに口を尖らせると、黙って一歩退いた。
「ヴァン、落ち着けって、ねえ、それより、僕達に話したいことがあるんじゃないの?」
ヴァンははっと顔を上げ、今まで忘れていたのか嬉しそうに笑った。「ホント単細胞」モーントの軽口を、ヴァンは聞き逃す。
「今日の集会って、凄いニュースの発表の為らしいぜ!すげえよな、ワクワクすんな」
彼は幼さの残る顔をパッと輝かし、2匹の友人を見上げた。
「それさ、悪いニュース?良いニュース?」
モーントは尻尾をぱたっと鳴らして訊く。問われたヴァンは、困ったように眉を寄せ、無言で俯いた。
「そんなのも知らないで喜んでたの?ホント馬鹿だよね、ヴァン」
モーントはヴァンの背中に前足を添わせて嘲笑った。
「なんだと!」
とヴァンは歯を向いて顔を上げる。しかし良い文句が浮かばなかったのか、またしょげたように目を細めた。
「違うもん!兄ちゃんは馬鹿じゃないわ!」
甲高く、幼い声に、ふっと視線を下へとずらす。
そこには、ふわふわした毛皮を少しだけ逆立て、人間が温めた熱い水のように、湯気が出そうなほど顔を赤くした雌猫が居た。
「いいからいいから、このお姉ちゃんは本当は優しいからさ。俺の友達だよ。だから、な?ボーネ」
ヴァンは優しい声で妹に言い聞かせ、なだめるように背中の毛を舐めながらモーントを尻尾で示した。
ヴァンのように、目の前でストレートに物を言う猫はいないだろう。
モーントはこそばゆい気持ちになり、身を捩らせて、嬉しくて光った瞳を見られないようにした。隣でニヤニヤと笑っているクーゲルを、後では羽交い締めにしようと心に留める。
「そっ・・・かぁ」
ボーネは淡く息を吐くと、けろっと表情を一変させて可愛らしく笑った。
「兄ちゃんやっぱり格好良い!ね、モーント、クーゲル!」
急に話をふられた2匹は驚いて目を丸くし、ボーネを見下ろした。
「そうだね、優しいしね」
クーゲルが微笑みを浮かべ、ボーネのふわふわした毛を撫でた。撫でられたボーネは満更でもなさそうに、笑みを浮かべて目を細めた。
「・・・うん。私と違って、素直で純粋で良い奴だよ。・・・馬鹿とも言えるけど」
モーントは優しくボーネを尻尾で撫で、ぽつりと言った。
ボーネが嬉しそうにモーントの足元で転がる中、ヴァンは目を白黒させて固まっている。
「お・・・お前、頭大丈夫か?人間の医者のとこ、行くか?」
「黙ってよチビ。それ以上何か言うと埋めるからね?」
*
闇夜の中に、ぼんやりと猫達の瞳が浮かび上がる。
緑と白の衣に身を包んだ人間は、その異様な光景を見て短く悲鳴を上げ、慌ててその場を後にした。
ダンボールの上に、ひげがダランとたれた、灰色の首輪をした老猫が腰を下ろしている。
彼は口を開け、嗄声で、ぽつりぽつりと語りだした。
「__若猫はまだ知らぬ、奴がやってきた、とワタリガラスが申しておった。本当かどうかは分からぬが、恐らく本当だろう。
1年前と同じことが起きぬよう、1匹たりとも、奴と関わるな」
1歳に少しばかり満たない猫達__モーント達の周りに、不穏な風が渦巻いていた。
ヒーステイル- 副長
- 投稿数 : 282
Join date : 2015/05/17
Re: 月夜に誓ったある夏の日
ちなみに*年齢情報(登場済み猫のみ)
モーント・クーゲル・ヴァン 生後9ヶ月と10週間ほど(人年齢で15歳くらい)
ノワール 1歳とちょい(17歳くらい)
ボーネ 生後6ヶ月(9歳くらい)
ヒンメル【天国】(超絶どうでもいいです。そんな出番ないですし)
淡い灰色の斑の入った、ふくよかな雄猫。
性格は意地悪く、そのへんに居そうな駄目なおっさんタイプ。
7歳(44歳くらい)
モーント・クーゲル・ヴァン 生後9ヶ月と10週間ほど(人年齢で15歳くらい)
ノワール 1歳とちょい(17歳くらい)
ボーネ 生後6ヶ月(9歳くらい)
ヒンメル【天国】(超絶どうでもいいです。そんな出番ないですし)
淡い灰色の斑の入った、ふくよかな雄猫。
性格は意地悪く、そのへんに居そうな駄目なおっさんタイプ。
7歳(44歳くらい)
ヒーステイル- 副長
- 投稿数 : 282
Join date : 2015/05/17
Re: 月夜に誓ったある夏の日
7* 菊の香りと
細く欠けた月が、藍色の空にぽっかり浮かび上がる。月の淡光で輝く屋根の上に、長い影が伸び上がった。
月は薄べったい灰色の雲に覆われる。影の根本から、一匹の雌猫が浮かび上がる。
雌猫はぐっと体を反らすと、飛び上がって空中で体を捻らせ、満足気な顔をして塀の上に降り立った。
雌猫は真っ赤な舌を口を割って覗かせると、ぺろりとヒゲを撫でた。赤い舌は一瞬、艶っぽく光り、笑みを浮かべた口の中へ戻っていく。
ああ、また誰かが私の噂を広めているわ。
情報網って、ほんと怖いわねぇ。去年のちょうどこんな生温い風の吹く日に、二晩顔を覗かせただけなのに。
あの日は最高の天気だったわ。新鮮な血のような、そんな熱い陽気、その熱気をさらっていった夏風は、私の匂いを消してくれた。
今日はあの日のような、最高のコンディションじゃない。
だからって、私が失敗するようなことはありえない。
雌猫は塀をつたって、とある民家の狭間にある、狭苦しい空き地を見下ろした。殆ど飼い猫だろう、猫達が色とりどりの模様を描いて座っている。
いやねぇ、あんな密集しちゃって。今をいつだと思ってんのかしら、暑苦しい。
あの綺麗な雌猫ちゃんだって、嫌そうにしてるわ。美しい顔を歪ませて・・・ますます私の美貌から遠のいてるわよ。
ああ、なんて笑える光景かしら。
きっと、弱いもの同士必死に集まって、なけなしの頭脳と情報をかき集めて、私を語っているんでしょう?
私の事に、悪夢でうなされ、一晩中ガクガク子鹿みたいに震えて、眠れないのね。可哀想に!
大丈夫よ、すぐに開放される日が来る。いいえ、私が開放してあげる。
雌猫は妖艶な瞳に、きらりと不敵な光を灯すと、身を翻して駆け出した。
頭を仰け反らせ、何も気にせず大声で笑う。
塀に沿った家の窓から、大きな顔を覗かせて人間が怒鳴った。雌猫は人間の顔に向かって砂を蹴りあげ、飛ぶように逃げる。
明日が楽しみ___今回も私が、このチェスゲームに勝たせてもらうわ!今回は誰を頂こうかしら・・・本当に待ち遠しいわね!
その長い影は、月明かりの向こうに消えていく。朗らかなような、菊の香りを残して、彼女の体は、闇夜に溶けこんでしまった。
ヒーステイル- 副長
- 投稿数 : 282
Join date : 2015/05/17
Re: 月夜に誓ったある夏の日
今更ながら初コメ・・・・
とっても面白いです!文章が素敵です!見習わなければ・・・
楽しみにしてます。
とっても面白いです!文章が素敵です!見習わなければ・・・
楽しみにしてます。
ムーンドロップ- 新入り戦士
- 投稿数 : 77
Join date : 2015/05/17
所在地 : 宇宙の向こう側
Re: 月夜に誓ったある夏の日
フェニックスメモリー wrote:いや~いいですねぇ。
素敵です。
これからも頑張ってください!
コメありです!
はい、頑張らせていただきます!w
ヒーステイル- 副長
- 投稿数 : 282
Join date : 2015/05/17
Re: 月夜に誓ったある夏の日
ムーンドロップ wrote:今更ながら初コメ・・・・
とっても面白いです!文章が素敵です!見習わなければ・・・
楽しみにしてます。
コメありです!
ムーンsの文章もすっごく素敵です!もっとちゃんとした文がかけるよう、頑張ります!
ヒーステイル- 副長
- 投稿数 : 282
Join date : 2015/05/17
Re: 月夜に誓ったある夏の日
8* 御伽話が語られる時
静かだった。いつもなら、ザワザワと木葉が戦ぐように、騒がしく声が上がっているだろう。だが、この丑三つ時の夜空の元、聞こえるのは、誰かが鋭く息を飲む音だけ。
代わりに、若猫たちが感じたこともない感情が、渦巻いていた。
「奴___とは、誰のことですか?」
どこからか、よく響く声が上がる。モーントが首を巡らすと、腰を浮かせている、華奢な黒猫の姿が見えた。
灰色の首輪をした、老猫は目を細める。
「お主、まだ若いようだな。首輪もしておらぬが、浮浪猫かの?」
黒猫は、浮かせた腰を振って足を伸ばし、完全に立ち上がった体勢で、ゆっくり老猫を見上げた。その顔が少し歪んだのは、月明かりのせいだろうか。
老猫は口を開こうとした彼を制した。
「無理に言う必要はない。・・・奴、とはな、可憐な菊のようで、実に傲慢で強い香りの女じゃった」
のろりくらりとした口調だが、モーントにはすぐ分かった。
この爺さんがしようとしている話は、こんな平坦な口調で語るべき穏やかなものではない、と。
どうやらヴァンもそれを感じ取ったらしい。丸い瞳を老猫に集中させ、いつも太陽な笑みを浮かべる頬は、ぐっと引き締まってる。
彼の野生の感も宛になるものだな、とモーントは横目で思った。
「去年の夏の始め__ある美しい雌猫が、この集落にふらりとやってきた。まさに花のような笑みでのう、雄猫と揉め事を起こし、出てきたというもんだから、皆よく面倒を見てやった。
彼女は尽くしてもらうことが嬉しいらしく、お礼と言って雄猫達にひっついて回った。雌猫達は彼女に反感を持っていたが、何故可愛らしい娘のため、何も言えんかった」
なんだか胸がむかつく話だ。モーントは、淡い毛皮を少し逆立てる。
老猫はうん、と一置きすると、くすんだ目を猫達の頭上で巡らせた。
「しかし、ある日、彼女はいなくなった。匿ってもらっていた軒下からぽっかり消えてしもうた。皆汗水たらして探しまわったが、見つからんかった。きっと、気を持ち直して帰ったのだろう。そう思ったのじゃ。
だが、同時に一部の雄猫たちもいなくなった。みな飼い猫で、人間たちも怒って探していたが、やがて諦めたように帰っていった」
老猫は険しい顔でひとり頷き、肩をいからせた。その日のことを思い出し、主人たちの不始末に苛ついているようだった。
質問した黒猫が、やや間を置いてきいた。淡々とした口調だ。
「__その雌猫と、雄猫達はどこに行ったんですか」
老猫は顔を上げずに、目だけで黒猫を見た。ふーと細く息を吐く音が、近くにいたモーントには聞こえた。
「・・・変わり果てた姿で発見された」
聞いていた猫達に動揺が走った。頭が波のように揺れ、ざわざわと騒がしくなる。
ヴァンがこの世のものではないものを見たように、緑の瞳を見開き、ボーネを守るように尻尾で引き寄せた。
ボーネは老猫の言葉の意味がわからないのか、困惑した顔をしながらも、兄を見て泣きそうになりながらその胸に飛びつく。
モーントは怯えているクーゲルをちらりと見た。彼がか細く「そんな」と呟くので、優しく尻尾で背中に触れてやる。話が始まると、すぐに尻尾を下ろした。
「集落から少し離れた林で、発見された。一匹は目を開いたまま、一匹はずたずたに引き裂かれ、一匹は怒った顔のまま、息絶えていてのう、それはもう・・・」
そこで老猫は、苦しそうに息を飲み、喉をごくりと鳴らした。
「一匹だけ、若い雄だけ、意識があったんじゃ。苦しそうに、潰れた右目から血を流しながら、『あいつがやった』と。
『奴は恐ろしい化物だった。可憐な身の振る舞いで、僕らを連れ出し、誘った。奴は僕らを自分のものにしたがった。
妻がいるから、愛するものがいるから、そう断り、非常識だと一括すると、奴は、変わった。本当に、化物みたいだったんです。皆が次々・・・こわい、こわいよ』
それだけ言うと、彼は命を手放してしまった。苦しい息の中、必死に伝えてくれたんじゃ。わしらは彼らを救えなかったことが、どうしても悔しくてのう・・・
面目ない」
老猫は消え入りそうな声で頭を垂れた。
クーゲルが老猫を見上げ、涙声で呟いた。
「かわいそう。可哀想だよ」
それは、心からの言葉だった。傲慢で、命を知らない、菊のような雌猫、愛したものを残し、去ってしまった雄猫達、それを救いたくても見逃してしまった、老猫。
「今、本当に、その雌猫が現れたのですか」
黒猫が、震えた声で訊いた。訊いた、というより、誰ともなく呟いたのだ。彼の目は、按ずるように揺れている。
老猫は重々しく頷いた。モーントが首を伸ばした時には、もう黒猫は猫達の中に紛れてしまっていて、姿をはっきり見ることは出来なかった。
「もう二度と、あんな悲惨な事件を生み出したくない。みな、よく頭にいれておくように!友人が彼女とあっていたなら___ 」
老猫は大声で言った。”悲惨な事件にあってしまった仲間”ではなく、”事件”と表すことで、モーントに老猫の思いが伝わってくる。
「__助けて、やりなさい」
助けれるなら助けたい。でも、無謀なら、犠牲者が増えてしまうなら___
その先は読み取りたくない。モーントは唸った。
遠くから、笑い声が聞こえてくる。誰かが「不謹慎だ」と言った。誰も、その言葉に反応しない。笑い声は、まるで怯える飼い猫達を嘲笑うかのように跳ね上がると、嘘のように、静かに消えていった。
ヒーステイル- 副長
- 投稿数 : 282
Join date : 2015/05/17
Re: 月夜に誓ったある夏の日
いろんな意味でぞくぞくです!
相変わらず文章がお上手で気が付いたら読み込んでましたー!
モーントの活躍が楽しみです!頑張ってくださいっ!そして文才わけてくださいっ!←蹴
相変わらず文章がお上手で気が付いたら読み込んでましたー!
モーントの活躍が楽しみです!頑張ってくださいっ!そして文才わけてくださいっ!←蹴
明日輝- 年長戦士
- 投稿数 : 182
Join date : 2015/05/15
Re: 月夜に誓ったある夏の日
明日輝 wrote:いろんな意味でぞくぞくです!
相変わらず文章がお上手で気が付いたら読み込んでましたー!
モーントの活躍が楽しみです!頑張ってくださいっ!そして文才わけてくださいっ!←蹴
コメありです!
じっくり読んでくださったとは・・・すごく嬉しいです!
寧ろください。
ヒーステイル- 副長
- 投稿数 : 282
Join date : 2015/05/17
Re: 月夜に誓ったある夏の日
9* 願いの道標
鋭い黄色の光がモーントを刺す。実態のない色に貫かれるとは、奇妙で釈然としなくて、不愉快な体験だ。
夜の月光のように、この体を包んではくれない。だから朝は嫌いなんだ。
でも、昨日の晩の月は、どこか冷たく浮かんでいた。モーントはつ、と顔を顰める。
包み込むでもなく、突き放すでもなく、ただただ、静かに見下ろしているだけ。傍観しているだけ。その淡光で、優しく手を差し伸べることはなかった。
朝も嫌い。夜も嫌い。何故そう思うのか。そう思ってしまうのか。
モーントは折った長い体をくんっと伸ばし、伸びてくる人間の前足を無視して歩いた。今は、こいつらに構ってる時間はない。
外に飛び出し、バルコニーを歩くと見える、濃い茶色で彩られた、木製の低い階段。大股2歩で軽快に降り、芝生の上に跳んだ。
異様に目立つほどに青々とした芝生からは、人工的な匂いが混じっている。短い草はちくちくと足を刺し、モーントは短く唸ってカバノキの根に飛び乗った。
しかし、改めて早朝の眩い光を全身に浴びると、夜が恋しくなる思いが身にしみて分かった。
私は、いつから夜がこんなにも好きになったのだろう。
私は、いつからあんなにも闇が恋しくなったのだろう。
モーントには、それが不思議で堪らなかった。幼いころは、朝昼の、あの賑やかな空気が好きだった筈だった。嬉々として漂う、あの独特の空気。
今では賑やかな光を、率先して避けるようになっている。自分がヴァンに一歩引くように、月のような自分と、太陽のような友人を比べてしまうように、時間でさえも、引けをとってしまっているのか。
そうじゃない、とモーントはひとりで首を振る。違う。淡い体を木陰へ押し込み、息を吐いた。
すると、不意に、頭上でがさりと枝が鳴った。
モーントは飛び上がる勢いで立ち上がり、警戒に染めた目を丸くして、木の上を見上げた。
ひょこり、と顔を出したのは、ギフトだった。少し濁った紫の瞳で曖昧にモーントを捉えると、口元に笑みを浮かべた。
「やあ、モーントだね。おはよう」
彼は太い枝の先端部分まで這い、上からモーントに声をかける。
モーントは挨拶を返すこともせず、黙ってギフトを見上げていた。見上げることしかできなかった。
「どうやって、登ったの」
やっと出てきたかと思えば、そんな言葉。
ギフトは照れたように顔を伏せ、弾んだ声で言った。それは、集会へと導かれる、厄介な雄猫の声ではなかった。
「感覚で、分かるんだ。ほんと、ちょっとね。でも、夜みたいな暗い場所は全然分かんなくってさ。夜は、嫌いなんだ」
いつもありがとうね、ギフトは少女のように体を窄め、丁寧に体を折ってお辞儀をした。
「別に」
モーントは無愛想に顔を背けると、逃げるように身を翻して駆け出した。ギフトの軽快な動きが、”夜は嫌いなんだ”と言った時の抑揚が、耳から離れない。
前は見ていなかった。只管、俯き、足を出し、走っていた。
「!」
どんっと音を立て、誰かにぶつかった。うめき声を上げながら、反動で後ずさる。顔を上げると、どこか懐かしく感じる、あの顔があった。
「よう、どうした?」
にんまり笑みを浮かべるも、すぐに真剣な表情に切り替わり、モーントを覗きこむ。
「ノワール、どうして」
モーントは掠れ声で呟いた。喉が、掴まれたみたいにきゅっと締まる。
歯をにかっと見せて、黒猫は笑った。どこから出た笑みかは分からない。とても、楽しそうだった。
「妹についてきたんだよ。で、そのまま散歩。もうそろそろ戻ってくんじゃねえかな」
ノワールは促すように顎をしゃくった。怖ず怖ずと首を巡らせると、そこにはヴァン兄妹の家があった。
「ああ、ボーネ・・・」
あの幼い雌猫と友達だというなら、納得出来る。彼女は兄ヴァンに似て、そそっかしく仲間思いで、社交性に優れている。
そういうこと、とノワールは頷いた。
モーントはふと黙りこみ、ちらりと横目で彼を見た。殆ど変わらない目線の高さ。しかし角ばった彼の肩は広く、華奢なモーントよりずっと大きく見える。
ああ_____
ただ声を交わしただけなのに。姿を見ただけなのに。
彼の、漆黒の毛皮が、モーントを包む錯覚に陥る。彼の淡い瞳が、モーントを照らした。闇に浮かぶ、淡光。光と夜は、月を包んでいるのだ。
だから私は、夜が、彼が好きなんだ。
月は自分を包む存在へと手を伸ばす。しかし、それはどう足掻いてもただの”存在”で、どれだけ焦がれても、手は空を掴むだけだ。
それを知らず、だたひたすらに救われることを祈っていた、あの頃はもう遠い。
begs the darkness
(闇を乞う)
ヒーステイル- 副長
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Join date : 2015/05/17
Re: 月夜に誓ったある夏の日
初めにコメントしてからもうかなり経ってしまいました……。今読み進めていますが、やっぱりヒースsはお上手ですね!
一人一人の性格や口調がとてもわかりやすくて、なおかつ読みやすいです。
陰ながら応援しておりますm(_ _)m
一人一人の性格や口調がとてもわかりやすくて、なおかつ読みやすいです。
陰ながら応援しておりますm(_ _)m
ウィンターリーフ@冬葉- 年長戦士
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所在地 : 北国
Re: 月夜に誓ったある夏の日
ウィンターリーフ wrote:初めにコメントしてからもうかなり経ってしまいました……。今読み進めていますが、やっぱりヒースsはお上手ですね!
一人一人の性格や口調がとてもわかりやすくて、なおかつ読みやすいです。
陰ながら応援しておりますm(_ _)m
コメありです!
キャラの性格は個性的なので、分かりやすいといってもらえてすごく励みになります!
ウィンターsも頑張ってください!
ヒーステイル- 副長
- 投稿数 : 282
Join date : 2015/05/17
Re: 月夜に誓ったある夏の日
10* 心の色
気付いてから自分の失態にどくんと鼓動がなった。口に出してはいない。ただ、胸の奥で、静かに自分の感情を見直しただけだ。
だが、自覚してしまったからには、”その感情” は体を蝕む細菌のように、己をかき乱していった。
「どうした?モーント・・・」
「違う!」
思わず叫び出た自分の声に、モーントは驚いて飛び退き、顔を火照らせながら体制を整えようとした。
ノワールは、モーントの焦る姿に首を傾げる。だが、そのきょとんとした顔は、たちまちのうちに子猫をからかうような表情に変わった。
「珍しいな、え?一体なにを隠してるのかな?」
本当に子猫をからかうように、彼はニヤニヤと笑ってモーントに迫った。
だが、それはモーントにとって拷問以外の何者でもない。彼女は恨めしげな目でノワールを睨み上げると、身を翻して走りだした。
向かうはヴァンの家。後ろからノワールの声が追ってくる。
モーントは、恥ずかしさに染めていた顔を、はっと上げて風を全身にうけた。初夏の風が心地よい。
心のうちは清々しかった。月が太陽と並んだように、モーントの金の瞳は眩しくなる。菌がなくなったようだ。すっかり身は軽かった。
きっと、私は夜が好きなだけ。ノワールがそれと対等なんじゃない!
でも、それが覆るのを知らない私は、心の隅に蟠りが残っていたことに、気づけやしなかった。
「!」
ぼふっと胸に小さなものがぶつかる感覚。その小さなものは、ノワールとぶつかったモーントのように、ちょっと後ずさって首を振った。
「ボーネ」
モーントは幼い雌猫に声をかけた。兄によく似た瞳のボーネは、はにかむように笑った。
「モーント・・・ごめんなさい。どうしてこんなとこにいるの?」
モーントは首をめぐらして、もうひとつの小さな影を探した。きっと、彼の妹もいるはずなのだ。
案の定、もうひとつ影があった。しかし、ボーネよりも大きい。あの兄妹は小柄だが、それよりも幾分かすらりと、上品に見えた。
黒白の雌猫。モーントの心臓が跳ねる。ああ、彼の肉親なのだ。
「ボーネ!大丈夫?」
すらっとした幼い雌猫は、モーントに気付いてにっと笑ってみせた。ノワールのしない裏のない笑みだ。目も輝かしく色づいている。
「初めまして。オルジュって言います!モーントよね?兄さんの言ってた通り、綺麗なひとですね」
彼女は身をくねらせ、モーントの傍で言った。
「えっ・・・?」
モーントの耳が熱くなる。悟られまいと顔を背けるが、オルジュは楽しそうに笑っていた。モーントは雌相手だとガードが薄くなる上、オルジュは鋭かった。
オルジュのこぼした笑みが、ノワールの顔と重なって顔が赤くなる。もう、彼の色に飲み込まれていると知った。
モーント面白い!とオルジュは目を細めて微笑した。兄が月を気に入ったように、その妹もまた、月が綺麗だと共鳴したのだ。
「オルジュ!」
ノワールが陽炎のように毛を靡かせて走ってきた。一瞬顔を恥ずかし気に歪め、咎めるように語尾を鋭くする。
ふふっとモーントは笑った。心の中がくすぐったい。
「モーント、嬉しそうね」
ボーネが首を傾げて呟いた。自分よりもずっと背高い雌猫の背中を見つめ、お宝を見つけた時のように嬉しそうに微笑んだ。
「とっても綺麗!」
ヒーステイル- 副長
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