WARRIORS BBS
Would you like to react to this message? Create an account in a few clicks or log in to continue.

猫達は躍る 満月の下で

2 posters

Page 2 of 2 Previous  1, 2

Go down

猫達は躍る 満月の下で - Page 2 Empty Re: 猫達は躍る 満月の下で

投稿 by 吉祥 Thu Apr 19, 2018 12:19 am

「吉祥の両親ってどんな奴なんだ?」
グリフィンはふと思った疑問を投げかけるが、吉祥はビクリと動きを止める。
「そ、その話はよそう。」
「なんでです?」
「やめろ。掘り下げるな。…父親の話なら…」
「? 母親に何かあるのか?」
「そんなこと言っちゃったら…」

『お呼びかしら~?』

その場に似つかわしくない、とても優雅な女性の声がその場に響く。

「あぁ… 来ちゃったぁ…」
吉祥が地面にひれ伏す。
空から、ゆらゆらと炎が降りてきて、吉祥の背後まで降りてくると、それは突然巨大な炎になり、炎の中からキツネが現れた。
ただの狐ではない。美しい金色の毛色に、九本のもふもふの尻尾。そしてなにより…
「で、でかーーい!」
「説明不要!」
座った状態で少なくとも5メートルはある巨大な狐だった。

「吉祥さんがあんなに恐れるってことは。」
「…恐ろしく怖いとかか?」
「はじめまして~ わたくしは鍾狐(しょうこ)ですわ。」
おっとりとした声の狐は、見た目だけでなく喋り方も優雅だ。
「どうやらわたくしの息子が迷惑をかけたみたいで、ごめんなさいね?」
「いえいえ…」
「とんでもないです。むしろお世話になったっていうか。」
自然と2匹もこわばってしまう。
「そしてきっちゃんは… あらあらこんな所に!」
「きっちゃん?」
「きっちゃん…」
「はぁ…」
きっちゃんこと吉祥は、大きくため息をつく。
「母親が暇な数少ない時間に、わざわざ母親の話なんか出すからこうなるんだ…。」
「もうっ 久々に会いに来たのに、そんな態度だとママがっかりしちゃうわ!」
「「…。」」
これは、思っていたのと違う。
母親が怖いから恐ろしいのではない。
とてつもない子煩悩だから吉祥は恐れていたのだ。

「…そう見ると、吉祥って反抗期真っ盛りの子猫みたいなところありますね。」
「ぶふっ 言えてるな。」

グリフィンとジンジャーの目の前でも構わず、鍾狐と吉祥は親子喧嘩を始める。
構図としては、鍾狐が小さな吉祥をよく見ようと顔を伏せ、吉祥は巨大な鍾狐に向かって精一杯文句を言っている感じだ。
「だいたい、いつもそうやって絡みに来るなっていつも言ってるだろ!」
「そう言われてるから毎日来ないようにしてるのよ?今日だって2週間ぶりだし…」
「減らせって言ってるんじゃない!無くせって言ってるんだ!!」
「そんなの無理よ~ 大好きな息子のこと見に行かなきゃ私も働いてられないわ~」
「いいから子離れしろ!」
「きっちゃんのお願いばっかりじゃ釣り合わないわ。この前した私のお願い、ちゃんとできた?」
「…ああしたさ。猫の争いを解決することと、異形の猫に、猫の姿に化ける方法を教えること。やったさ!」
グリフィンとジンジャーは顔を見合わせた。実はこの一連の喧嘩は、鍾狐からのお願いがきっかけだったようだ。
「まぁ〜偉いわ!わたくし、自分の子供が誇らしくてたまらないわ!」
「だから俺の願いも聞いてくれないと…」
「もうきっちゃん大好き!」
「あぁ…」
吉祥の顔が青ざめた。
「…食べちゃいたいくらい♡」

「…今なんて言った?」
「…食べちゃいたいくらいって?」
「まさかな。」
「ええ… まさかねえ。」

「ちょっとそこのエクシードさんがた、あまりお見せできないシーンが流れるのでよそ見してて貰えないかな。」
「マジなやつじゃねえか!」
「…大人しく言うことを聞きましょう」

グリフィンとジンジャーはそっと背中を向け、耳を塞いだ。





しばらくして振り向くと、地面に寝転んだ鍾狐だけがいた。
「美味しい…♡」
どうやら吉祥は、彼女のお腹の中のようだ。
「助けた方がいいんでしょうか…」
「無理だろ。」

「それで?あなた達は?」
鍾狐が起き上がり、2匹に向き直った。
「吉祥さんに、角と翼の隠し方を教わった者です。」
「まあ!あなた達に教えてたのね?いまや私たち妖怪とかがとっても生きずらい世界になっちゃったから、色んなところで我慢しなきゃいけないところが出てくるわ。そのためにきっちゃんにお願いしたんだけど、ちゃんと使ってあげてね?」
「…その吉祥はどうなっちまうんだ?」
「あら、お腹の中が気になるの?」
「なりません。」
身の危険を感じて即答するグリフィン。
「…なんで自分の子供を食べちゃうんですか?」
「あら、よく言うでしょ?『食べちゃいたいくらい大好き』って。」
「それは表現じゃないんですか?」
「そんな事ないわよ~ 1度やってみたら分かるわよ?」
「結構です。」
ジンジャーも身の危険を感じた。

「…吉祥が誰かを齧ったりする理由、なんとなくわかった気がするぜ。」
「俺も…。」

「もちろん、消化とかは基本的にはしないわよ。お互いに愛を感じ尽くしたところで出してあげるの。」
鍾狐は立ち上がり、2匹に背を向けると、粘液にまみれた黒猫を吐き出した。

「ごちそうさま♡」
「…くそっ。せめて次は誰もいないところでやってくれ。」
「きっちゃんも大好きですものね。」
「うるせっ!」

吉祥は身体中の粘液を振り落とすと、グリフィンとジンジャーの元へ戻ってきた。

「…ん?なんか印象違うな。」
「あ? ああ。 僕って実は猫と狐のハーフなんだけど、」
「この現状見ればわかります。」
「普段猫の姿なんだけど、あいつと関わると徐々に狐寄りになっちゃうんだよ。」
言われてみれば、吉祥の顔はマズルが飛び出し、狐の顔に近づいていて、2本の尻尾もそれぞれが太くなっている。
湿っているのでもふもふとはいえなかったが。

「えぇ〜!きっちゃんまだ尻尾2本しかない!昇任試験受けてないの!?だいぶ前から言ってるじゃない!」
「俺は狐として生きていく気は無いの!尻尾もこれ以上増やさないから!」
「尻尾って昇任試験だったんだ。」
「そんな悲しいこと言わないでちょうだい!そんな事言う子は…」
「わー!わー!わかりました!明日!明日必ず受けに行きます!明日朝6時に起きて必ず行ってまいります!!」
突然礼儀正しくなる吉祥。
「偉いわ!それでこそきっちゃんよ!」
「ではこれから勉強に励みますので、今日のところはお引き取り下さい!」
「え〜!まだ話したいこといっぱいあるのに!」
「お母様があまり試験勉強に介入されますと、私にカンニングの疑いがかけられてしまいます!息子の試験合格のためにも、今日のところはお帰りください!!」
「うぅ… 仕方が無いわね… 明日の試験、必ず来るのよ!」

鍾狐は、グリフィンとジンジャーを見て、にっこりと笑った。
「手のかかる子だと思いますけど、決して悪い子じゃないのよ?良ければ仲良くしてあげてください。」
「あっはい」
「こちらこそ宜しくお願い致します…」

「それじゃ、きっちゃん!またねー!」

鍾狐は狐火へと姿を変え、空へと消えていった。


「…はぁーー。」
吉祥が、ここ一番大きなため息をついた。
体をブルブルと震わすと、顔と尻尾が猫のものに戻った。
そして、グリフィンの目の前まで行き、一言。
「もう二度と私の前で母親の話はしないでくれ!」
「お、おう…」


「鍾狐さんを悲しませると何が起こるんですか?」
ジンジャーがしれっと聞く。
「話すなって言ったじゃん!」
「俺には言われてませんので。」
「なんでそんな知りたがるんだ。丸呑みされるだけで辛いってのに。 …あいつを怒らせたり悲しませると、『産み直される』んだよ。」
「えぇ…」
「両親健在だからあまりどうのこうの言えないけど、とんでもない親を持つと子供は辛いんだ。」
「…いい親御さんを持ったな。」
「明日の試験、頑張ってくださいね!」
「くっそ。もっとグレてやる。」

吉祥
新入り戦士
新入り戦士

投稿数 : 55
Join date : 2017/02/24

トップに戻る Go down

Page 2 of 2 Previous  1, 2

トップに戻る


 
Permissions in this forum:
返信投稿: