WARRIORS BBS
Would you like to react to this message? Create an account in a few clicks or log in to continue.

松の製材所と世界の動向

Page 1 of 2 1, 2  Next

Go down

松の製材所と世界の動向 Empty 松の製材所と世界の動向

投稿 by Murre Sun Apr 03, 2022 6:44 pm

ウォーリアーズ初期の土地にあった、製材所が出来た頃の話です。昔のため、キャラクターはオリジナルですが、部族は本家と同じです。
多分短編になります。
Murre
Murre
スター族
スター族

投稿数 : 967
Join date : 2021/12/08
Age : 16
所在地 : 4月1日に雪降りました(本当)

サンウィング and आकाश प्रकाश like this post

トップに戻る Go down

松の製材所と世界の動向 Empty Re: 松の製材所と世界の動向

投稿 by Murre Sun Apr 03, 2022 7:52 pm

登場人物
サンダー族
族長
パインスノウスター【松の雪の星】
頭頂部と背中、尻尾が白く、その他は焦げ茶色の雄猫。目は松葉のように濃い緑色。

副長
フラッフィーテイル【毛羽立った尻尾】
この話の主人公。若くして副長になった。ソマリで、尻尾はばさばさと毛羽立っている。琥珀色の目の雄猫。

看護猫
オリビングリーン【カンラン石緑】
カンラン石の緑の目の雌猫。淡い灰色の尻尾以外は白い。弟子は三毛猫の雌猫オウカポー【黄土色足】

戦士猫
ホライズンフェイス【水平線顔】
上は濃い灰色、下は白い顔の雄猫。体も背中側は濃い灰色、脚など腹側は白。尻尾は縞模様。目は水色。

リフレクティドムーン【映る月】
背中の上に丸い淡いレモン色の模様が入る飛び三毛の雌猫。カッパーの目。

シャイニングオウス【輝く誓い】
スター族への信仰心が最も強い雌猫。煌めく黄金色の毛並みで長毛。黄緑色の目。

アフロウトフェザー【海上羽】
空色かかかった灰色の雌猫。銀色に近い濃い青の目。弟子は濃い橙色の目で濃いしょうが色の毛皮の雌猫であるスパークポー【火花足】

ハニーツリー【蜂蜜木】
背中は黄色で、蜂蜜が垂れるように色の境目の模様。腹側は茶色で足先と尻尾の先も黄色。若葉のような黄緑色の目。弟子はキジトラでゴールドの目の雄猫ライティングポー【照明足】

ゴーススィケット【ハリエニシダの茂み】
黄色の目の黒と白のぶち猫の雄猫。

ナイトインヴィテイション【夜の誘い】
真っ黒い雌猫。目の下に泣きぼくろのような白い丸がある。サファイアブルーの目。弟子は桃色に近いオレンジ色の目のしょうが色の虎猫の雌猫のチェリーブラッサムズポー【桜の足】

メインストリームフィッシュ【主流の魚】
銀色で白い斑点が入る雄猫。淡い青の目。

ダヴスカイ【鳩の空】
藍色鳩羽の目で首の周辺以外は青みのかかったグレーの雌猫。首の周辺は緑かかかったグレー。弟子は足周辺だけ白く、体は真っ黒い雄猫のドゥリフトポー【漂う足】琥珀色の瞳。

リーフシュレッダー【葉を刻む者】
サンダー族一素早い雌猫。黄色と白の毛皮に焦げ茶の縞が入る虎猫。深緑色の目をしている。弟子は脚と尻尾、口の周りが黒く、体はベージュの青い目の雄猫コールポー【石炭足】

母猫
ミラークリスタル【鏡水晶】
色素の薄い水色の目のハチワレ猫。ホライズンフェイスとの子を身籠っている。

クラウンテイル【冠尻尾】
長毛の尻尾をもつ真っ白い雌猫。珍しい赤い目をしている。シンメトリーキット【対象子猫】、タイドキット【潮子猫】、グレーキット【灰色子猫】の母猫。

長老猫
ナースィサスリーフ【スイセン葉】
緑色の目でクリーム色の体をしている雌猫。

アジャーウィングドマグパイ【オナガ】
青みの強い尻尾と白と灰色の体を持つ雄猫。顔は黒く、目は青い。

ファースィールペルト【オットセイ毛皮】
焦げ茶の虎柄の雄猫。アクアの目をしている。


最終編集者 マァーラーフェザー [ Mon Apr 04, 2022 8:45 am ], 編集回数 1 回
Murre
Murre
スター族
スター族

投稿数 : 967
Join date : 2021/12/08
Age : 16
所在地 : 4月1日に雪降りました(本当)

サンウィング and आकाश प्रकाश like this post

トップに戻る Go down

松の製材所と世界の動向 Empty Re: 松の製材所と世界の動向

投稿 by Murre Mon Apr 04, 2022 8:45 am

フラッフィーテイル
松の製材所と世界の動向 16490410
Murre
Murre
スター族
スター族

投稿数 : 967
Join date : 2021/12/08
Age : 16
所在地 : 4月1日に雪降りました(本当)

サンウィング and आकाश प्रकाश like this post

トップに戻る Go down

松の製材所と世界の動向 Empty Re: 松の製材所と世界の動向

投稿 by Murre Mon Apr 04, 2022 12:59 pm

🌲プロローグ
オイルと<二本足>の混ざった臭いにおいが鼻を突いた。うぃーんと音がしたと同時に錆びた金属と新鮮な木くずのにおいが風に乗り、鼻がおかしくなりそうだ。ばきばき、みしっとの大きな音とともに高い原生の松がスローモーションで動いた。
「逃げろ!」
ばたんという音と土埃によって俺の声は掻き消された。下を見ると、足元には泥がはねかかり、毛の奥までひんやりとした。
ぬかるみと乾いた土の混合した地面を慎重に歩き、近くを見る。
「オーアポー!【鉱石足】」
緑と青の光沢を持つ白い雄猫はか細く鳴いた。
「フラッフィーテイル…」
オーアポーの下半身は今さっき倒れてきた太く、歪に曲がっている松の大木の下敷きになっている。
「オーアポー!」
オーアポーは激しく咳き込み、血を吐いた。肺など内臓が潰れたのだろう。
俺は松を退かそうとするが、重い木の幹が新米戦士一匹で動くはずもない。
「パインスノウスターを呼んでくる!」
数回オーアポーの方を振り向き、俺は走った。走り慣れた松の木を避けながら最速スピードで走る。
毛羽立った毛が擦れるのも気にせず、ハリエニシダの茂みをくぐる。
「パインスノウスター!ブラックジェットフット【漆黒の脚】!オリビングリーン!オーアポーが松の下敷きに…!」
族長も、副長も、看護猫も、キャンプにはいなかった。
「族長達は、松の下敷きになったレインブリーズ【雨のそよ風】を助けに行ったぞ。」
ファースィールペルトが長老部屋から出てきて言った。
あの事故は、別の場所でも起きていたのか…!
Murre
Murre
スター族
スター族

投稿数 : 967
Join date : 2021/12/08
Age : 16
所在地 : 4月1日に雪降りました(本当)

サンウィング and आकाश प्रकाश like this post

トップに戻る Go down

松の製材所と世界の動向 Empty Re: 松の製材所と世界の動向

投稿 by Murre Tue Apr 05, 2022 12:19 pm

🟩1
「フラッフィーテイル、狩猟部隊は俺が率いていいのか?」
はっと目を開けると、不機嫌そうに俺をつついたホライズンフェイスがじとっと見ていた。がばっと起き上がり、戦士に返答する。
「先輩、お願いします。俺は夜明けのパトロール隊を率いますね」
灰色と白の雄猫は頷き、アフロウトフェザーを起こしにかかった。
またあの夢に魘されていた。オーアポーが倒木によって命を奪われる記憶。本当にスター族はオーアポーが死ぬことを望んでいたのだろうか。
オーアポーは、俺の弟子だった。
「リーフシュレッダー、コールポーを連れてリヴァー族との境界線にパトロールしてもらえませんか?俺も行きますので」
リーフシュレッダーは寝てる間についた苔くずを舐め落としていた。
「すぐに呼んでくる」
戦士の尻尾は戦士部屋の出入り口の外へと消えた。
外に出ると、思っていた以上に日が高くなっていた。夜明け、というより早朝のパトロールというほうが正しいのかもしれない。
「おはよう、フラッフィーテイル」
ハイロックの上には族長であるパインスノウスターが早めに起きた一族の猫達に挨拶していた。これは彼の習慣だ。
「おはようございます、パインスノウスター。俺達はリヴァー族との境界線をパトロールしてきます」
「まだリヴァー族の猫が近くにいるかもしれない。喧嘩を売られても反撃するなよ」
族長は忠告下さったが、俺は族長が思うほど戦い好きではない。むしろ、獲物を獲って、一族の健康を維持している方が好きだ。
ハイロックの前で会釈して、出てきたリーフシュレッダーとコールポーに尻尾で合図する。
「リヴァー族、今日は侵入してないと良いですね」
コールポーが鼻をひくひくしながら指導者に向かって言う。リーフシュレッダーは尻尾を弟子の口に当てて、指導した。
「静かに歩いて。リヴァー族が侵入していても逃げられるよ」
コールポーは大人しくなった。
サンダー族は数日前、リヴァー族に侵入された。向こうの言い分は、サニングロックスは昔からリヴァー族の物だ、と言っていたが、一族が始まった時からサンダー族が所有している。族長は、また戦いがあるかも、と先程注意してくださったのだ。
「何のにおいがする?」
リーフシュレッダーがコールポーの鼻と注意力を試す。コールポーはサニングロックスの小石を嗅ぎながら川まで近づいた。
「サンダー族のマーキングのにおいと、古くなったリヴァー族のにおい、あと…」
コールポーはかがみ、木の実を水の側で噛じっているリスに意識を向けた。小石を少しもずらさずに近づく。
リスが気付いたとき、もう遅かった。コールポーの黒い足はリスに逃がす暇も与えず一撃で仕留めた。
「お見事!」
リーフシュレッダーが喉を鳴らした。
「ターコイズアイ!【トルコ石目】」
俺の叫び声に、コールポーはリスを取り落とした。
Murre
Murre
スター族
スター族

投稿数 : 967
Join date : 2021/12/08
Age : 16
所在地 : 4月1日に雪降りました(本当)

サンウィング and आकाश प्रकाश like this post

トップに戻る Go down

松の製材所と世界の動向 Empty Re: 松の製材所と世界の動向

投稿 by Murre Wed Apr 06, 2022 12:25 pm

🟩2
ターコイズアイ、アイヴィーステム【ツタの茎】、パストフレッドスパー【過去の長石】、ストリームストーン【小川石】の四匹が川の向こうから睨んでいた。戦う気が漏れ出ているどころではない。
「おやおやフラッフィーテイル。見習いの監督で威張り散らしてるのかい?」
ターコイズアイがにやにやしながら言ってきた。挑発に乗ったら負けだ。しかし、目の前で堂々とマーキングすることもできない。
「違うよ、ターコイズアイ。狩猟部隊を率いていたんだ」
コールポーがはっと顔を上げる。リーフシュレッダーは空気を読んだ。
ターコイズアイは、鼻を鳴らし、川の直ぐ側までマーキングし始めた。リヴァー族副長に倣い、他の猫たちも行う。
「コールポー、他に何かにおう?」
リーフシュレッダーに小さく、鋭く唸られて、コールポーは片足でリスを抑えながら口を僅かに開け、嗅覚に神経を集中させる。
「あっちにハタネズミのにおいがします」
コールポーは小石を鳴らさないように慎重に歩き、森の方へ歩いていった。指導者も続く。
今回のマーキングは諦めよう。後で誰かを来させればいい。
「フラッフィーテイル、大人しく降参かい?」
ターコイズアイが川の中に入ったのを見逃さなかった。リーフシュレッダーの肩を尻尾でつつく。
後ろから勝ち誇ったような高い雄叫びが聞こえてきた。ばしゃばしゃと水をかく音は増え、体から水が滴り落ちる音が近づいてくる。
「リーフシュレッダー」
俺の合図に彼女は理解し、サンダー族一速い脚でキャンプに戻った。ネズミを捕えたコールポーはリヴァー族の侵入に驚き、反射的に爪を出した。
「ターコイズアイ、サンダー族の縄張りに侵入するなとこの前思い知らせたはずだが?」
俺の唸り声にびくともせず、間合いを詰めてくる。
いつの間にか、リヴァー族の猫は増えていた。アイヴィーステム、パストフレッドスパー、ストリームストーンの他にも毛を濡らした猫が威嚇してくる。
ターコイズアイが俺目掛けて跳び、戦いの火蓋は切られてしまった。
「ホライズンフェイス!」
俺の叫びに狩猟部隊が加わる。俺達だけだと思っていたリヴァー族は驚いたが、攻撃を止めない。
サンダー族は、リヴァー族にいつ侵入されてもおかしくないと、パトロール隊の付近に必ず狩猟部隊を置いておいたのだ。
俺はターコイズアイの攻撃を避け、コールポーの足を払ったパストフレッドスパーに飛び掛かり、見習いに比べると何回りも大きな体を引っかき、避けさせる。数回目を引っ掻くと、パストフレッドスパーは後退した。
猫の波は止まることなく押し寄せてくる。
背中にじんと痛みを感じ、振り向くとハードウォール【硬い壁】が俺に噛みつこうと牙を光らせていた。首をひょいと屈め、伸ばされ、無防備となった相手の首に噛み付いてやる。血の味が口の中に広がり、相手が藻掻いたのが分かった。
流石に死んでしまうので、血の雫を撒き散らしながら相手を突き放し、唸る。俺の口から地面に血の糸が引かれ、切れた。
助けが必要な仲間がいないか小高い岩に登り、戦状を、覗う。
ホライズンフェイス、アフロウトフェザー、ハニーツリー、ライティングポー、メインストリームフィッシュが狩猟部隊に加わっており、加勢してくれた。リヴァー族の集団は傷だらけ、血塗れになりながらも川を泳いだり、少し走って飛び石伝いに川渡りするなどして帰っていった。
「重症の者はいないか」
最後に残っていたアイヴィーステムに威嚇していたホライズンフェイスが首を振る。コールポーはライティングポーに近づき、弟の体を嗅いだ。
「アフロウトフェザー、メインストリームフィッシュ、マーキングを手伝ってくれ。他の者はキャンプに戻ってオリビングリーンに見てもらえ。リーフシュレッダーを手配しているから、すぐに見てくれるはずだ」
指名した二匹はかすり傷程度で済んでいた。他の猫は痛みに顔を顰めながらも獲物を拾い上げ、収穫に喜んだ。
Murre
Murre
スター族
スター族

投稿数 : 967
Join date : 2021/12/08
Age : 16
所在地 : 4月1日に雪降りました(本当)

サンウィング and आकाश प्रकाश like this post

トップに戻る Go down

松の製材所と世界の動向 Empty Re: 松の製材所と世界の動向

投稿 by Murre Thu Apr 07, 2022 2:27 pm

🟩3
族長は身動き一つせず、俺の報告を聞いた。幸いなことに俺軽傷だった。
「リヴァー族の侵入に、<二本足>の縄張り拡大…俺達はどうすればいいんだ」
「…分かりません」
族長は頭を抱える。そう、今サンダー族には悩みの種がいっぱいなのだ。しかも、うかうかしていたらこの危機を嗅ぎつけてシャドウ族も乗っ取ろうとやってくるかもしれない。
今が青葉の季節の真っ盛りだが、落ち葉や枯れ葉の季節になってしまうと、年中沢山の魚が捕れるリヴァー族に襲われたらひとたまりもない。
「月の石に行ったらどうでしょう」
振り向くと、苔のカーテンの向こうからオリビングリーンがこちらを覗いていた。
族長が頷くと、会釈して入ってきた。
「スター族なら、<二本足>はまだしも、リヴァー族を何とか出来るかもしれません」
パインスノウスターが少し考え、「そうだな」と同意した。
「明日の朝、発つ。アフロウトフェザーとスパークポーみ護衛にしよう」
「二匹に伝えてきますね」
俺は同じく軽傷だった戦士と、その見習いに声をかけるため腰を浮かした。
「挑発に乗らなかったのは、よくやった」
褒め言葉が飛んできたが、正直もやもやしていた。なぜ、リヴァー族はそんなに躍起になってサニングロックスを奪おうと、サンダー族を襲うのだろう?
戦士部屋と見習い部屋に、順に顔を突っ込んだ。初めての月の石に、スパークポーは目を輝かせた。
Murre
Murre
スター族
スター族

投稿数 : 967
Join date : 2021/12/08
Age : 16
所在地 : 4月1日に雪降りました(本当)

サンウィング and आकाश प्रकाश like this post

トップに戻る Go down

松の製材所と世界の動向 Empty Re: 松の製材所と世界の動向

投稿 by Murre Sat Apr 09, 2022 1:36 pm

🟩4
キャンプから三匹が出ていき、一瞬辺りが静まった。
「リフレクティドムーン、シャイニングオウス、ゴーススィケット、針葉樹林の方をパトロールしてくれ。スネークロックスまでの道でナイトインヴィテイション、チェリーブラッサムズポー、ダヴスカイ、ドゥリフトポー、狩りに行ってきてくれ。残りの者は、キャンプを守る。」
指名された猫も、されてない猫も、了解の声を上げた。
朝日は雲に負けることなく強く輝く。それにつられて気温が青葉の季節特有の状態に変化する。
そして、数日後には大集会が控えている。パインスノウスターとオリビングリーン、オウカポーは体力を回復させる期間が必要だが、十分間に合うだろう。
俺は一族に指示を出し終えたため、昨日の残りの獲物を朝食にしようと獲物置き場に脚を進める。
「フラッフィーテイル」
甘い蜜の香りがし、ハニーツリーがこっちへ来た。弟子のライティングポーはコールポーとグルーミングしていた。
「私も一緒に食べていい?」
ツグミを咥えた俺の横でハニーツリーがカササギを咥え上げる。
「勿論」
顔が火照った気がした。ライティングポーとコールポーがくすくすと笑う。
切り株のそばで俺とハニーツリーはグルーミングしながら丸々太った獲物を腹に詰め込んだ。
「ねえ、フラッフィーテイル」
目を不自然に左右に動かしながら呼びかけてきた。
「なんだい?」
頬張っていた羽が少なめの部分を飲み込む。ハニーツリーの先の黄色い尻尾が彼女の腹を擦る。
「私ね、子供ができたみたいなの」
おめでとう!と声を掛けようとしたら、先程パトロール隊が擦ったハリエニシダの茂みが揺れた。
「フラッフィーテイル!来てください!」
Murre
Murre
スター族
スター族

投稿数 : 967
Join date : 2021/12/08
Age : 16
所在地 : 4月1日に雪降りました(本当)

サンウィング and आकाश प्रकाश like this post

トップに戻る Go down

松の製材所と世界の動向 Empty Re: 松の製材所と世界の動向

投稿 by Murre Sun Apr 10, 2022 10:30 am

🟩5
がばっと立ち上がり、ストライドを狭くし近づく。シャイニングオウスの黄金色の毛皮には花の終わったハリエニシダの葉がほろほろと付いている。
「シャイニングオウス、他の二匹は」
「スター族様は、スター族様は、サンダー族にお怒りよ!」
星の見えない午前中の空を見上げ、雌猫は体を震わせた。
「説明してくれ。なぜ君しか戻ってこなかったんだ?」
瞳孔をきゅっと縮めた戦士は、俺についてくるように背を向けた。
「ホライズンフェイス、ハニーツリー、キャンプを頼む!」
「私も行くわ!」
頷いた年長戦士はハニーツリーの申し出に驚いた。俺はトンネルに向かいながら、説得する。
「駄目だ。君は母猫になるんだろう?それに、キャンプは手薄なんだ。シャドウ族やリヴァー族の侵入の恐れは、消えてはいない。どうか、残ってくれ。」
ハニーツリーの黄緑色の目はふるふると動き、目が潤み始める。
「俺は針葉樹林にいます!」
ハニーツリーの脇腹にそっと自分の横腹を押し付け、落ち着けようとしたホライズンフェイスは、頷き、行け、と促した。
「シャイニングオウス、案内してくれ」
雌猫は怯えながら走り出した。恐怖に追い立てられ、通常より何倍も脚が速い。これならウサギも数秒で音を上げるだろう。
キャンプを出て、いくらか走っていたら、木が疎らになってきた。遥か昔からの原生林で覆われていたこの森は、今、<二本足>の開発によって姿を消しつつある。走っていて避けるべき木々は数えるほどしかなく、辺りの地面は<二本足>の怪物の足と同じ成分でできた、二本で地を支える足にくっついている衣服の一部に踏み固められ、雑踏の道となっている。さらに、空気は淀み、薄っすらと排気ガスの悪質な灰色に変色しつつある。
「スター族様!」
シャイニングオウスが急に止まり、空を見上げた。つられずに進行方向を見る。
「フラッフィーテイル!リフレクティドムーンが…!」
ゴーススィケットが俺に気づき、叫んだ。視線の先には、怪物のごつい足の下に見え隠れする、ぴくぴくと動く白と茶色の尻尾があった。
「助けてやりたい…」
ゴーススィケットはこちらに近づき、言った。リフレクティドムーンはゴーススィケットの連れ合いで、チェリーブラッサムズポーとドゥリフトポーの母親だ。
「ゴーススィケット、君はシャイニングオウスの恐怖をてきるだけなだめてくれ。俺は、怪物の様子を見てくる。」
雄猫は頷き、恐怖で佇む雌猫の横に立った。心配そうな目が一刻もあの尻尾から離れない。
そろそろと這うように近づき、主人の居ない怪物の足を確認する。
もう少しで溝の中が見えるー。
俺の思考は遮られた。
首に鋭い痛みが走った。
Murre
Murre
スター族
スター族

投稿数 : 967
Join date : 2021/12/08
Age : 16
所在地 : 4月1日に雪降りました(本当)

サンウィング and आकाश प्रकाश like this post

トップに戻る Go down

松の製材所と世界の動向 Empty Re: 松の製材所と世界の動向

投稿 by Murre Mon Apr 11, 2022 7:00 pm

🟩6
「フラッフィーテイル」
柔らかい声が耳を掠った。俺は薄く目を開け、状況を確認する。リフレクティドムーンは無事だろうか。
目をしっかりと開け、驚いた。金色の煌めきに縁取られた草、雲、木が、当たり前のように自然のまま自らの動きをしていた。
そして、俺を見つめるように立っていた猫達も、黄金色に輝き、二対の目には星が宿っていた。
「ドーンデュー?」
先程、俺を呼んでいた猫に喉を鳴らす。灰色の雌猫は頷き、近付いてきた。
「フラッフィーテイル。あなたの居場所はゆっくり用意しとくわ」
ドーンデューが他のスター族の猫達に頷きかけ、尻尾で背中を擦った。
「<二本足>に怯えないで。あれが生活に関わるのは、もっと先の未来のことなの」
露のような色素の薄い水色の目の星が揺れ、灰色の姿も歪み始めた。
「ドーンデュー!」
リヴァー族との戦いでスター族に仲間入りした、元指導者ともっと話をしたかったのに、瞼が重しのように伸し掛かり、開けられそうにない。
瞼の裏の暗闇に吸い込まれ、スター族の狩り場は消えた。

「フラッフィーテイル!」
高い声がした。さっきの柔らかい声とは違う。
まだ重いまぶたを開け、首を動かす。
「痛っ」
首を擡げようとしたら、激しい痛みがした。まるで首がもげてしまいそうな脆さだ。
「動かないで。フラッフィーテイルのうなじはぱっくりなのよ!」
オリビングリーンの顔がはっきりと形を作った。それからー
「リフレクティドムーン!」
三毛猫は、夢ではなかった。生きていた。
Murre
Murre
スター族
スター族

投稿数 : 967
Join date : 2021/12/08
Age : 16
所在地 : 4月1日に雪降りました(本当)

サンウィング and आकाश प्रकाश like this post

トップに戻る Go down

松の製材所と世界の動向 Empty Re: 松の製材所と世界の動向

投稿 by Murre Thu Apr 14, 2022 5:09 pm

🟩7
三毛猫は視線を逸らし、前足をもぞもぞと動かした。後ろから押し退けるようにゴーススィケットがやってきて、小声で話すと、リフレクティドムーンは後ろに下がった。
「リフレクティドムーンは、ショックで混乱してるの」
看護猫がそっと耳打ちして、苔のそばから離れた。
「俺が話す」
ゴーススィケットはリフレクティドムーンに頷いた。一緒にパトロールしていたシャイニングオウスは看護部屋にはいない。
「俺の、早とちりだったんだ。怪物が掘り起こしたどろどろの土に、彼女のような尻尾がちらちらと見えて、埋まった、と思ったんだ。直ぐにシャイニングオウスを向かわせ、君を呼んでもらった。それから恐る恐る近づいて、確かめて見ると、あの尻尾は、三毛の飼い猫のものだった」
白黒の雄猫は少し連れ合いの方を見た。
「その飼い猫は、溝に足を滑らせて、窒息したんだと思う。確認しても息は無かった。処理は<二本足>に任せることにした。流石に引っ張り出せない」
「ごめんなさい」
リフレクティドムーンは、ゴーススィケットが話し終えたのを横目で確認すると、頭を深く下げて謝った。上げた顔に付いている二つの銅色の目は、潤んでいる。
「いいよ、リフレクティドムーンは、ただ別場所でパトロールしてただけなんだろう?次回からは、はぐれないよう、徹底してくれ」
ゴーススィケットは、注意されたのが悔しいのか、顔を歪めた。
「もう一度パトロールにいった方がいいか?」
俺より少し年長の戦士が尋ねる。俺は首を振る。
「別の者に行かせよう。大変な目に遭って、疲れただろう?今日は休むといい」
三毛猫は胸を撫で下ろした。
「俺が率いよう」
動かせない首を動かさず、目だけを横にすると、白と焦げ茶の族長が苔のカーテンのくずを肩に付けてやってきた。
「お願いします」
白い尻尾が振られ、リフレクティドムーンとゴーススィケットが、毛が擦れる近さでべたべたしながら看護部屋を後にした。深緑の目が光の多い方から、こちらの暗い方に動く。
「フラッフィーテイル、記憶を鮮明に」
ふわふわの尻尾で俺の額を擦ると、族長は部屋を出ていった。ただ、それを言っただけで。
待てよ…その前に、パインスノウスターとオリビングリーンは、なぜここにいるんだ?
Murre
Murre
スター族
スター族

投稿数 : 967
Join date : 2021/12/08
Age : 16
所在地 : 4月1日に雪降りました(本当)

サンウィング and आकाश प्रकाश like this post

トップに戻る Go down

松の製材所と世界の動向 Empty Re: 松の製材所と世界の動向

投稿 by Murre Sat Apr 16, 2022 7:46 am

パインスノウスター
白い斑点は雪
松の製材所と世界の動向 16500610
Murre
Murre
スター族
スター族

投稿数 : 967
Join date : 2021/12/08
Age : 16
所在地 : 4月1日に雪降りました(本当)

サンウィング and आकाश प्रकाश like this post

トップに戻る Go down

松の製材所と世界の動向 Empty Re: 松の製材所と世界の動向

投稿 by Murre Tue Apr 19, 2022 6:28 pm

ゴーススィケットとリフレクティドムーン
全国学テの余った時間に下描きし、家で塗った
松の製材所と世界の動向 Dsc_0026
Murre
Murre
スター族
スター族

投稿数 : 967
Join date : 2021/12/08
Age : 16
所在地 : 4月1日に雪降りました(本当)

サンウィング and आकाश प्रकाश like this post

トップに戻る Go down

松の製材所と世界の動向 Empty Re: 松の製材所と世界の動向

投稿 by Murre Wed May 04, 2022 4:24 pm

🟩8
月が銀色に輝き、時々川で横歩きしている蟹の影がくっきりと表れている。
俺は、どうにか立ち上がり、オリビングリーンに許しを漕いた。
「大集会に、行かせてくれ。副長が不在だと、リヴァー族に、サンダー族が弱ったと思われてしまう。もう、負傷者を増やしたくないだろう?」
橄欖石色の目が、カーテンの奥の月を見た。
「パインスノウスターは、許可を出したわ」

族長は、あの日、母なる口に行けなかった理由を、声を潜めて語った。
「川の水位が異常に低く、しかも汚染されていた。赤土が、川が変色するくらい流れ込んでいたんだ。リヴァー族は、それでとても弱っていたが、頑として通してくれなかった」
「族長、何故リヴァー族の縄張りを通る必要があったのですか?」
松葉色の目は、僅かに傾いた。
「サニングロックスは、リヴァー族に奪われた。グレーヘロンスター【アオサギの星】が自らパトロール隊を率いていて、彼らの目には、何としてでも生きてやる、と、血に飢えた目をしていた」
「パインスノウスター!サニングロックスは、そのままリヴァー族に明け渡してきたのですか?」
族長は、いらいらと尻尾を振り、オリビングリーンに向けて唸った。看護猫は驚き、弟子を連れて部屋を後にした。
「大集会で、リヴァー族の言い分も聞いてみよう。数日は、サニングロックスで日光浴ができなくても、文句を言うなよ」
族長は、冗談と受け取っていいのか分からない程に激怒し、立ち上がった。俺は、即座に言った。
「一族はまだしも、俺はこんな状態なんで、サニングロックスなど到底行けそうにありません」
パインスノウスターは、苦しそうに顔を顰めた。
サンダー族、パインスノウスターの悩みがまた一つ、増えてしまった。
Murre
Murre
スター族
スター族

投稿数 : 967
Join date : 2021/12/08
Age : 16
所在地 : 4月1日に雪降りました(本当)

サンウィング and आकाश प्रकाश like this post

トップに戻る Go down

松の製材所と世界の動向 Empty Re: 松の製材所と世界の動向

投稿 by Murre Thu May 05, 2022 3:37 pm

ドーンデュー【夜明けの露】
松の製材所と世界の動向 16517310
Murre
Murre
スター族
スター族

投稿数 : 967
Join date : 2021/12/08
Age : 16
所在地 : 4月1日に雪降りました(本当)

サンウィング and आकाश प्रकाश like this post

トップに戻る Go down

松の製材所と世界の動向 Empty Re: 松の製材所と世界の動向

投稿 by Murre Sat May 07, 2022 8:43 am

オーアポーとフラッフィーテイル
オーアポーの命名式の場面
松の製材所と世界の動向 16518210
Murre
Murre
スター族
スター族

投稿数 : 967
Join date : 2021/12/08
Age : 16
所在地 : 4月1日に雪降りました(本当)

サンウィング and आकाश प्रकाश like this post

トップに戻る Go down

松の製材所と世界の動向 Empty Re: 松の製材所と世界の動向

投稿 by Murre Sat May 07, 2022 10:40 pm

🟩9
「サンダー族がビリみたいだ」
俺の前のホライズンフェイスがぼそっと言った。俺聞いていない振りをする。
「サンダー族!」
パインスノウスターが白い尻尾を一振りし、張り詰めた空気を破って声を上げた。族長先頭に選ばれた戦士がまん丸い月の明かりの下、四本木に向けて駆け抜けた。ホライズンフェイスの言うとおり、他の三つの部族は既に集まっていて、遅れたサンダー族を、汚らわしいものを見るような目で会話を止め、見た。
族長はすぐにグレートロックに跳び乗り、他の族長に頭を下げた。リヴァー族族長のグレーヘロンスターは、蔑むように顎を上げ、サンダー族族長を見た。
開会の宣言は、ウィンド族族長のモーニングスター【朝の星】が行い、境界線を越えた交流は一度、止んだ。
「ウィンド族の縄張り内では、北の方に怪物が侵入してきた。しかし、獲物は減っていない」
モーニングスターは、最後の言葉を強調し、元から痩せているウィンド族が決して弱っていないと、遠回しに忠告した。
シャドウ族の方から鼻で笑った音が聞こえた。
朝の太陽の色をした族長が座ると、シャドウ族の族長が立ち上がった。
「シャドウ族は、衰えていない。青葉の季節ということで、獲物も充分にある。シャドウ族は毎日爪を研ぐことを徹底している」
ダークネススター【闇星】は琥珀色の目をぎらつかせ、高い岩の上から集まった猫の顔を見渡した。俺には、毎度優越感に酔いしれているんだな、という目でしか見えない。
「グレーヘロンスター、どうぞ」
猫撫で声で細い目を向け、呼ばれた猫は頷いた。リヴァー族族長は、パインスノウスターから目を離さない。
「リヴァー族は先日、サンダー族が長年不当に領有していたサニングロックスを、取り返した!」
リヴァー族の猫から、祝福の雄叫びが上がり、サンダー族の戦士は悔しく唸った。
「サンダー族に警告しておく。サニングロックスは、これまでも、これこらも、リヴァー族の縄張りで、一歩たりとも侵入を許さない」
グレーヘロンスターが卑しく顔を近づけた。パインスノウスターは顔を背けた。
「マーキングはもう、変更した!」
リヴァー族副長ターコイズアイが、俺の耳元で叫んだ。耳が割れるかと思ったが、憎いリヴァー族の見ている前では、弱った素振りを見せてはいけない。
「リヴァー族の縄張り内に<二本足>の侵入など、埃一つ見つからない。くれぐれも、<二本足>に侵入されて、縄張りが狭くなったからといって、リヴァー族の縄張りを欲しがらないように」
グレーヘロンスターの言葉に、リヴァー族とシャドウ族の戦士が固まって笑った。ウィンド族は無表情で、サンダー族の戦士は苛立ち、唸ったり、牙をむき出したりした。
「リヴァー族の報告は以上かい?」
パインスノウスターの問に、アオサギのような色の族長は、微かに頷いた。
「サンダー族は、前述の通り、サニングロックスを奪われた」
シャドウ族の戦士とダークネススター、リヴァー族が嘲るように笑った。
Murre
Murre
スター族
スター族

投稿数 : 967
Join date : 2021/12/08
Age : 16
所在地 : 4月1日に雪降りました(本当)

サンウィング and आकाश प्रकाश like this post

トップに戻る Go down

松の製材所と世界の動向 Empty Re: 松の製材所と世界の動向

投稿 by Murre Sat May 14, 2022 2:56 pm

ドーンデューとオーアポー
松の製材所と世界の動向 Sketch11

松の製材所と世界の動向 Screen13

猫メーカーが楽しくて、つい…笑
しかもこの二匹既にイラスト化した
Murre
Murre
スター族
スター族

投稿数 : 967
Join date : 2021/12/08
Age : 16
所在地 : 4月1日に雪降りました(本当)

サンウィング and आकाश प्रकाश like this post

トップに戻る Go down

松の製材所と世界の動向 Empty Re: 松の製材所と世界の動向

投稿 by Murre Sat May 14, 2022 10:07 pm

🟩10
「パインスノウスター!」
茂みが揺れ、大集会に来ていなかったリーフシュレッダーが飛び出してきた。話が中断され、空き地は一瞬静まり返る。
「リーフシュレッダー!」
族長は他の部族の目を気にしながら鋭く尋ねた。戦士は息をつき、おずおずと前に進み出る。
シャドウ族の戦士の誰かが、再び鼻で笑った。
「おやおやぁ。サンダー族はそんなにお困りなのかい?」
ダークネススターの研がれた爪がきらりと光った。
「リーフシュレッダー、話してくれ」
シャドウ族の発言を無視して、パインスノウスターはグレートロックを降りた。虎猫は、舌をもつれさせながら話しだした。
「パインスノウスター、戻ってください。キャンプに、<二本足>が…!」
大集会に来ていた長老のファースィールペルトが、長老の塊の中で不安そうに小言を言う。
「大集会は、お開きにしようか?」
どの部族間の問題にも面していないモーニングスターが、間に立つように声を掛けた。グレーヘロンスターが陸に上げられた魚を見るような目で、サンダー族族長の背中を嘲った。
「頼む。リヴァー族どの件は、次回話す」
リヴァー族の猫が勝ち誇ったように叫び、モーニングスターの声で大集会は終わった。
サンダー族一速いリーフシュレッダーが、後ろを見ずに再びトップスピードで走り出す。族長は後につき、俺をリーフシュレッダーの次に走らせた。見習い猫が長老の側に付き、後をつける。
「フラッフィーテイル、先に!」
ハリエニシダの茂みの前で横滑りで止まった雄猫は、キャンプの惨状を俺に一番に見せた。
ハリエニシダに体を擦らせ通常の倍の速さで葉を落とす。
キャンプの変わらない姿を確認し、鈍い痛みとともに意識がいつかのように、途切れた。
Murre
Murre
スター族
スター族

投稿数 : 967
Join date : 2021/12/08
Age : 16
所在地 : 4月1日に雪降りました(本当)

サンウィング and आकाश प्रकाश like this post

トップに戻る Go down

松の製材所と世界の動向 Empty Re: 松の製材所と世界の動向

投稿 by Murre Fri May 20, 2022 9:33 pm

🟩11
「俺は、スター族に…?」
思ったことが口に出てしまった。目の前には星の煌めきに輪郭を任せた草や猫の姿が、ある。
「そうね。でも…」
目の前の白猫は言葉を濁した。その目には星屑が散りばめられていたが、その奥に覗えるのは、あの時も見た、橄欖石色だ。
「私達、戻らなくちゃいけないみたい」
オリビングリーンは悲しく笑った。
俺は少し周りを見、状況を把握したいと心から願う。
「フラッフィーテイル」
パインスノウスターの毛一本一本に一等星の明るさが付いて纏い、歩く恒星となっていた。
「パインスノウスター、俺達は?」
「そう、一度死んだ。けれど君とオリビングリーンは、サンダー族に戻る必要がある」
族長は目を軽く閉じる。そして、再び言った。
「俺達、殺されたんだ」
深緑色の瞳に吸い込まれ、内臓がぎゅっと縮まる。黒がはっきり分かるまで広げられた瞳孔の中は、今の物だと思われる血に塗れた俺達のキャンプの姿が、そこにあった。ふわふわと浮上しながら移動すると、キャンプの入り口で倒れた俺の遺体や看護部屋の苔のカーテンの前に横たわるオリビングリーン、そして、黒い猫に踏みつけられた族長の姿があった。
その黒猫は返り血で汚れている三毛猫と共に目を輝かせている。
「ゴーススィケットと、リフレクティドムーン!」
族長と、その隣の看護猫はそろって頷いた。
「俺は死んだ。しかし、命はあと二つ残っているんだ」
「なら戻ってください!俺達はスター族のもとで見守ってますよ!」
パインスノウスターは俺の提案を尻尾で制した。松葉色の目には反論は許さないとの表示が表れた。
「俺は考えた。俺の命を君とオリビングリーンに渡そうと思う。そして君は族長になり、九生を授かる。オリビングリーンはオウカポーを最後まで訓練する」
俺は族長の話を聞き、族長の合図を無視することにした。
「族長があの二匹を罰すればいいじゃないですか!わざわざ族長の命を犠牲にして俺が九生授かる必要が…」
族長は起こらず、目尻を下げた。
「君は偉大な族長になる必要があるのだ。寛大で、賢くー生き返った族長」
言葉を返せなかった。俺は、俺には、どんな未来が待っているとでも言うのだ?
「これも全て、<二本足>のせいだ」
パインスノウスターの星の光が弱まり、松葉色の宝石が視界から消えた。
体が激痛に襲われた。
Murre
Murre
スター族
スター族

投稿数 : 967
Join date : 2021/12/08
Age : 16
所在地 : 4月1日に雪降りました(本当)

サンウィング and आकाश प्रकाश like this post

トップに戻る Go down

松の製材所と世界の動向 Empty Re: 松の製材所と世界の動向

投稿 by Murre Sat May 21, 2022 8:04 pm

🟩12
ゴーススィケットとリフレクティドムーンの手を逃れた者は保育部屋を守るようにして固まり、どこかしらから血を流している。
意識がはっきりとしてくると、二匹の勝ち誇った声が鼓膜を震わせた。
「パインスノウスターの最後の命も、俺の一撃で尽きた!サンダー族族長は、俺だ!」
黒猫は動かなくなった焦げ茶と白の雄猫の体を楽そうに足で転がし、更に残った者の恐怖を煽り立てた。
しかし、黒猫も三毛猫も保育部屋の方を見ているため、キャンプ入り口で一番に倒れた、しかも死んだ俺の方を気にするわけがない。
生き返るとは、こんな感じなのか、と感じながら地に足を着け、立ち上がる。塊の端でゴーススィケットを睨んでいたホライズンフェイスが、亡骸が立ち上がったことに気付き、目を丸くした。
「フラッ…」
「黙れ!」
威張り散らすゴーススィケットが怒鳴り、彼の視線を辿った。同時にリフレクティドムーンも看護部屋の白い体に目が釘付けになる。
「フラッフィーテイル?」
黒猫はぽかんと口を開け、俺が首の、塞がった傷を触るのを、呆気にとられてみていた。三毛猫の方も言葉が出ず、ただ固まるばかりだ。
保育部屋の猫の塊の方で歓声が上がった。俺はオリビングリーンと共に、動かない二匹の姿を睨みつけながらゆっくりと歩き、残された猫達を守るような格好で立った。二匹はようやく正気を取り戻した。
「フラッフィーテイル、俺はお前を…」
ゴーススィケットは、ちらりと爪を確認し、アナグマを見るような目で睨んできた。俺は煽りにも何に乗らず、ただ整然と立つ。
「俺は、副長だった。そして、族長が亡くなった―いや、殺された。今、サンダー族の族長は、俺だ」
「フラッフィーテイル!」
ダヴスカイがコールポーと共に声を上げ、次第に大きくなった。俺は勇気づけられ、更に口がよく回るようになる。
「ゴーススィケット、リフレクティドムーン、君達はパインスノウスターと俺、オリビングリーン、そして…」
はっと身をこわばらせる。戦った猫達がざっと脇に避けた。彼らが守っていたものは、保育部屋の中にいる母猫と子猫ではなかった。他の母猫を守ろうとして部屋の前で戦死した、ハニーツリーだった。
「ハニーツリー…」
近くにいたオウカポーが慈悲の目をこちらに向け、小さく言った。
「亡くなりました」


最終編集者 マァーラーフェザー [ Sun Nov 13, 2022 9:34 pm ], 編集回数 2 回
Murre
Murre
スター族
スター族

投稿数 : 967
Join date : 2021/12/08
Age : 16
所在地 : 4月1日に雪降りました(本当)

サンウィング and आकाश प्रकाश like this post

トップに戻る Go down

松の製材所と世界の動向 Empty Re: 松の製材所と世界の動向

投稿 by Murre Wed May 25, 2022 9:31 pm

ハニーツリー
松の製材所と世界の動向 Dsc_0042
Murre
Murre
スター族
スター族

投稿数 : 967
Join date : 2021/12/08
Age : 16
所在地 : 4月1日に雪降りました(本当)

サンウィング, आकाश प्रकाश and ファイヤウィング like this post

トップに戻る Go down

松の製材所と世界の動向 Empty Re: 松の製材所と世界の動向

投稿 by Murre Sun Nov 13, 2022 9:51 pm

🟩13
愕然とした。
彼女にはもう残る命は無い。
あの時のオーアポーの姿が瞼の裏に蘇る。
鼻を刺す、きついオイルの匂いと、耳障りな油の差されていない金属音。
「やめてくれ!もう俺から大切な猫を奪うのはやめてくれ!誰であっても、スター族であっても!」
塩味のする大粒の水滴が頬をつたり落ちる。心が虚無感に支配される。
「フラッフィーテイル、あなたは今族長。サンダー族を率いるのです」
以前俺のように見習いを亡くしたことのある看護猫が耳元で囁いた。
……そうか……。サンダー族は、<二本足>の開発にも、部族内の裏切りにも負けず、大切な仲間の死にも押し潰されず、生き残る必要があるんだ。例えリヴァー族に縄張りを狙われていたとしても、強い力を持たなくては。
俺はオリビングリーンに頷きかけ、ちらっとハニーツリーを見て、目を閉じた。彼女とは、将来、スター族の狩り場で会えるだろう。必ず。ただそれが今でないだけだ。
俺はハイロックに登り、一族を招集する。
「一族の者は全員、このハイロックの下に集まれ。一族の緊急集会を行う」
傷付いた身体を動かし、精一杯一族の仲間が集まる。項垂れながら、ゴーススィケットとリフレクティドムーンも群れの後ろの方に座った。俺と目を合わせない。
「ゴーススィケット、リフレクティドムーン」
二匹はおずおずと顔を上げた。目に映るものは、反省?
「お前たちは族長のパインスノウスター、俺、オリビングリーン、そして母猫のハニーツリーを殺した」
一族が哀悼の声をぼそぼそと上げる。ゴーススィケットはすっと目を上げ、反対にリフレクティドムーンは目線を反らした。
「反逆罪として、二匹を永遠にサンダー族から追放する。賛成する者は声を上げよ」
小さかった賛成の声が次第に大きくなり、やがて一族ほとんどが賛成の意を示した。
俺は静まるのを待ってから、再び口を開く。
「二匹を、サンダー族から追放する。明日の夜明け以降、二匹を縄跳び内で見たものは、問答無用、二匹を殺して良い」
罰を言い与えられた二匹は身を寄せ合った。
「分かった、フラッフィーテイル」
ゴーススィケットが静かに言った。リフレクティドムーンも僅かに頷く。
俺は頷いて二匹を見ると、もう一度口を開いた。
「同時に、副長も任命する」


漁り出して更新
Murre
Murre
スター族
スター族

投稿数 : 967
Join date : 2021/12/08
Age : 16
所在地 : 4月1日に雪降りました(本当)

サンウィング, आकाश प्रकाश and ファイヤウィング like this post

トップに戻る Go down

松の製材所と世界の動向 Empty Re: 松の製材所と世界の動向

投稿 by Murre Mon Nov 14, 2022 7:37 pm

🟩14
少し張り詰めたような、一族同士の緊張。俺の喉も僅かに余計な震えが加わる。
「リーフシュレッダー」
呼ばれた猫は、はっと顔を上げると、少しの沈黙の後、顔を綻ばせた。
「副長に、任命する」
「分かりました」
リーフシュレッダーは恭しく深く礼をして、ハイロックの近くまで歩き、ホライズンフェイスの横に腰を下ろした。
「これで、一族の集会を終える。リーフシュレッダーはパトロール隊を組んで、<二本足>の家の近くを見てきてくれ」
新たなる副長は頷き、数匹の戦士に声を掛けた。
「ゴーススィケット、リフレクティドムーン、別れだ」
俺はハイロックを飛び降りた。長らく共に生活してきた戦士に礼をして、四つの瞳を見つめる。
「フラッフィーテイル、この償いはー」
ゴーススィケットの言葉を制止する。
「二匹とも、スター族の狩り場で再び会おう」
俺の言葉に、リフレクティドムーンが、何か詰まったような顔をする。
「スター族が行路を照らしてくださいますように」
ゴーススィケットが悲しそうに頷いた。リフレクティドムーンは彼の頷きに応え、俺に、キャンプに、サンダー族に背を向ける。
ハリエニシダの茂みの揺れが止まった。
サンダー族の多くのものを殺めた二匹の夫婦は、サンダー族を永遠に追放された。
彼らを再び目にするときは、きっと、周りに星が散っているだろう。
元部族仲間が追放者を手に掛けることのないように、ただそれを願う。
ハリエニシダの揺れは、他の要因もあった。
リーフシュレッダーが集めたパトロール隊は、既にキャンプを立った。
「明日の早朝、立ちますよ」
背後から、復活した看護猫が明日の予定を口にした。
Murre
Murre
スター族
スター族

投稿数 : 967
Join date : 2021/12/08
Age : 16
所在地 : 4月1日に雪降りました(本当)

サンウィング, आकाश प्रकाश and ファイヤウィング like this post

トップに戻る Go down

松の製材所と世界の動向 Empty Re: 松の製材所と世界の動向

投稿 by Murre Sat Dec 17, 2022 7:41 pm

🟩15
「誰も開発地の側へ行ってはいけない」
ハイロックの上で、一族の集会で、一族全員に呼び掛ける。岩の下にいるリーフシュレッダーが頷く。
「開発が終わったかどうかは、俺自身でのみ確認する。怪物が全て消え失せて、安全だと確認したら、この制限を解除する」
ダヴスカイが安堵の溜息をつく。あそこは怪物侵入前は、豊富な狩り場だったからだ。
「もう二度と、悲惨な事故が起こらないことを願う。これで一族の集会を終える」
集会の宣言の後、副長がパトロールと狩りの司令を出す。
「フラッフィースター」
高い声がハイロックの下から聞こえた。
「ライティングポー、心配することはない」
声を掛けても、見習いの不安げな表情は消えない。
「ここだけの話だが、もうすぐ命名式を行おうと思うんだ。君の同期たちと」
指導者を亡くした見習いの目が輝く。
「本当ですかっ?!」
「本当だよ。スター族に誓うよ」
見習いは飛び跳ねんばかりに喜んだ。
「試験の日は俺が見るから、リラックスして行え」
途端にかしこまった表情になるライティングポー。
「大丈夫だよ、厳しくして戦士を減らそうとは思わないから」
「ライティングポー!!リーフシュレッダーが狩りに行くぞって!!」
キャンプの向こう側から、ライティングポーの同期のコールポーがぴょんぴょん跳ねながら彼を呼ぶ。
「いってらっしゃい」
ライティングポーはぺこりと一礼して俺の前を後にした。歩きながら副長が、任せてくださいと頷いた。
すっきりとした晴天の下、穏やかな雰囲気がサンダー族内を漂う。このまま、何事もなく、俺の九星が星に昇ると良いのに、そう願う。
キジトラの見習いの尻尾がハリエニシダの茂みの向こうへと。
ハニーツリーの元弟子。
ライティングポーは俺よりも傷ついていたのかもしれない。深い悲しみにより。
「族長」
看護猫が横から声を掛けてきた。
「オリビングリーン?」
俺は彼女を部屋に招く。
「穏やかですね」
微笑んだ彼女は、何を差してそう言ったのだろう。
空の事だけなのか、俺は彼女の橄欖石色の目を探る。
Murre
Murre
スター族
スター族

投稿数 : 967
Join date : 2021/12/08
Age : 16
所在地 : 4月1日に雪降りました(本当)

आकाश प्रकाश and ファイヤウィング like this post

トップに戻る Go down

松の製材所と世界の動向 Empty Re: 松の製材所と世界の動向

投稿 by Sponsored content


Sponsored content


トップに戻る Go down

Page 1 of 2 1, 2  Next

トップに戻る


 
Permissions in this forum:
返信投稿: