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松の製材所と世界の動向

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投稿 by Murre Sun Dec 18, 2022 4:22 pm

🟩16
「族長!どこへ行かれるのですか?」
ついこの間、初めての弟子を戦士にさせたライティングツリー【照明の木】が俺がハリエニシダの茂みに向かっているのを見かねて声を掛ける。
「大したことは無いよ、<二本足>の作業進捗を見に行くだけさ。ありがとうな」
雄猫は、分かりましたと頷くと、コールテイル【石炭尻尾】とスパークアイランド【火花の地面】と供に獲物置き場へ向かい、それぞれネズミとツグミ、クロウタドリを取ると、三匹お気に入りの切り株の場所取りをした。
「いってらっしゃい」
オリビングリーンが空気を察知して、看護部屋から顔を覗かせる。俺は感謝を込めて頷くと、キャンプを後にした。
信頼できる戦士にしか伝えていないが、俺の残る命はあと1つ。時が経ったものだなぁと感慨深くなる。
リヴァー族からサニングロックスを正式に取り返し、シャドウ族も何事もなく、穏健になっている今、サンダー族の脅威は松の林の開拓地のみだ。<二本足>の工事は次第に落ち着いてきていて、住宅建設ラッシュも歯止めがかかっている。
その代わり、飼い猫が増えた。俺たち部族の存在は彼らに知られるようになったが、今のところ被害は無い。
飼い猫が反乱を起こすことがないように、そう部族の安全と恒久の繁栄を祈る。
道が次第にぐちゃぐちゃとし始め、尻尾の地面側に泥が跳ねる。肉球に触れるべとつく泥は冷たさを持っていた。
松は半数が切り倒され、縦長の怪物に運ばれるか、住宅建設に使われるか、短く切られ、頑丈なアルミニウムの柵の内側に積まれるか、どれかの命運を歩んでいた。
耳を澄ませても怪物の作動音が聞こえない。
安堵の溜息が思わず漏れる。
足が自然とあの場所へ向かう。
「ハニーツリー、オーアポーをよろしく頼むよ。もう戦士になっただろうな?戦士名を早く教えてくれよ」
松の製材所付近で拾った黒曜石を備えた小さな盛土の傍に屈み、地面の命を感じる。
オーアポーを特別埋葬したところ。
長老に頼まず、全て自分一匹で弟子を埋葬した。
自然と涙が溢れる。
「もう二度と、事故が起こりませんように……」
<二本足>の開発により発生した倒木事故のせいで失われた命。
もう、あの事故が起こらないよう、我らの縄張りが破壊されないよう、心から祈る。
微笑みが漏れる。
健康に茂った松の枝の隙間に見える、青空。
「空が、綺麗だ」
仰向けになり、世界を感じ、身を地面に任せる。
目を閉じる。
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投稿 by Murre Tue Dec 20, 2022 5:25 pm

🟢エピローグ🟢

「フラッフィースター」
「何でしょう」
パインスノウスターの声に振り向き、反応する。
「あの子だよ、例のあの子」
俺は額にぐっと皺を寄せ、地面を透かすように見る。
あぁ、橙色の毛皮が見えた。
気付いたと族長に知らせるため、尻尾を振る。
「準備してきますね」
パインスノウスターは集中していたのか、唸り声だけ出した。
「フラッフィーテイル。子どもたちも戦士になれるって、グレーヘロンスターが言ってたわ!」
ハニーツリーが嬉しそうに駆け寄ってきて、俺と歩調を合わす。
「そうなのか!グレーヘロンスターも、直接俺に教えてくれても良いのにな。俺だって一応父親をしてきたつもりなんだが」
俺の反応に、ハニーツリーが可笑しそうに笑った。
「後で言うって言ってたわ」
俺は肩をすくめる。リヴァー族族長は最近からかいが多い。生きていた時には想像出来ない行動だ。
「どこか行くの?」
「お告げを降ろしてくるんだ。今回はサンダー族にとって、重要だって。なにせ、俺にしなくても良いのになぁ」
ハニーツリーは俺の頬に頭を擦り付けて、ウインクした。
「貴方は伝説の族長だもの。生き返った族長」
「分かったって。行ってくるよ」
黄色と茶色の雌猫は、美しい瞳を輝かせると、微笑んだ。
「行ってらっしゃい、偉大なる族長」

地上の叫び声がすっかり消えた。サニングロックスの戦いは再び行われ、数匹の猫の命が失われた。サンダー族では、マウスファーが怪我だけで済んだが、レッドテイルが俺達の仲間入りをした。
血が残るサニングロックスを後にして、サンダー族のキャンプへ向かう。
予想通り、半月の影が落ちるハイロックの上には、青い瞳を心配そうに影らす族長と、賢く、たった今兄弟を失った美しい看護猫が空を見上げていた。
俺は落ちるように、柔らかく弾力のある草原を駆けた。
残像が残るくらい。
空が、燃えるくらい。

「火が、一族を救う」
そう読み取ってくれるよう、願う。

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