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雪の結晶[完結]

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投稿 by ペタルドロップ Thu Jun 13, 2019 7:24 am

~クリアポー~

夜明けのパトロールは、クリアポーの他にホワイトポーとソーンクローだった。

「そうそう、彼ね、そろそろ見習い卒業らしいの!そしたら、私たち一緒に戦士になれるわ!」

ホワイトポーはさっきからずっとバーチポーの話をしている。

「あぁ...そうね...」


ソーンクローはキャンプを出てから舌打ちしかしていないような気がする。そんなに私のこと嫌い?

キャンプを出てから10回目くらいのため息をついたクリアポーは、リスがチョロチョロ歩いている音に気がついた。

「少しだけ狩りしてきていいですか?」これ以上この空気の中にいたくなかったクリアポーはとうとう言った。「近くにリスがいるようなので」

ソーンクローはめんどくさそうな顔をクリアポーに向けたが、勝手にしろとでも言いたげにしっぽをビュンと振った。



その後クリアポーはリスを捕まえれたので、また二匹のところに戻ろうとしたが、もう少し狩りをしたかったのでその場に残った。ネズミの匂いでもしないかとあたりを嗅ぎ回ったが、サンダー族の二匹の猫の匂いしかしない。

(枯れ葉の季節だしね…いくら狩りができてもこればかりはしょうがないわ)


パトロールに戻ろうとしたとき、クリアポーはあれ?と思った。

(さっきの二匹の匂い、ソーンクローとホワイトポーの匂いじゃない!もしかして、例のあの二匹...?)


***************


太陽が地上に顔を見せ始めたとき、パトロールから戻った三匹はキャンプに入った。クリアポーが最後にイバラのトンネルを抜けると、メモリーポーが待ちかねていたように走ってきた。

「クリアポー!今日は満月の日でしょ?私たち、初めて大集会に連れて行ってもらえることになったの!!!!!」

メモリーポーは本当に嬉しそうにぴょんぴょん飛び跳ねて言った。
ハニーフラワーを失ってからこんなに嬉しそうなのははじめてだ。

「本当??あの大集会に?!楽しみだけど......」

クリアポーは猫とあまり話さないので、猫のたくさん集まる大集会でうまくやれるかどうか自信がなかった。
それに、さっきのパトロール中の狩りで、例の二匹が密会をやっていることを知ってしまったので、そっちの方に気を取られていた。

「え〜クリアポーそんなに嬉しくないの??」

メモリーポーはなんで?といいたげにクリアポーに詰め寄った。

「ううん、そんなことないよ!すっごく楽しみ!なんだけど...」

クリアポーが返事に困っていると、メモリーポーが大変!と耳をピンと立てた。

「今日は朝早くから戦う練習をレインウィスカーとするんだったわ!大集会の直前は休みたいから早めに切り上げてくれるの!」

メモリーポーはレインウィスカーと言ったときに少し嬉しそうな顔をした。


じゃあねと言ってメモリーポーと別れたクリアポーは、そろそろ寝ようと思った。(体力つけておかないと!)
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投稿 by ペタルドロップ Thu Jun 13, 2019 7:25 am

~クリアポー~

クリアポーたちは大集会を開く島に上がった。サンダー族の猫たちは各自どんどん分かれて自由にしている。

(さっきのメモリーポーみたいなヘマはしないようにしなきゃ!というか、何をすればいいんだろ...誰と話せばいいんだろ...もう分からない...)


初めて来てよく分からない島のはじっこに一匹でぽつんと残されたクリアポーは、不安そうにせわしなくあたりをキョロキョロ見渡し始めた。
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投稿 by アイルステラ Fri Jun 14, 2019 6:55 am

~メモリーポー~

 ハニーフラワーがスター族の元へ旅立ってしまってから、数日が過ぎた。まだハニーフラワーを失った悲しさはまだ癒えていない。それでも、メモリーポーはとても興奮していた。

今夜は満月。メモリーポーが初めて大集会に参加できるのだ。もちろん、クリアポーも一緒だ。ずっと楽しみにしていた大集会に参加できると聞いたときは、伝えに来たブランブルクローを驚きで押し倒してしまったくらいだ。

ファイヤスターが自分の部屋から降りてきて、キャンプの出入口の方へ歩いて行く。メモリーポーは急いで最後のネズミの一口を頬張ると、隣でスズメをかじっているクリアポーを突っついた。

クリアポーもファイヤスターの姿を見た瞬間、目を見開いた。メモリーポーはクリアポーが食べ終わるのを待ち切れず、ファイヤスターの元へ走って行った。気付けば、周りにはもう大集会に行く猫達が集まっていた。



 「ファイヤスター、ちょっと待ってください。」

出発しようという所で、急にアッシュファーが言った。これは、ファイヤスターにも予想外のことだったようで、驚いた顔をしてアッシュファーを振り返った。

「なんだ?アッシュファー。今すぐ話さなくてはならない重要な事なのか?」

「はい。とても重要なことです。他の部族に会う前に、確かめなくてはならないことがあるんです...」

困惑した表情で、ファイヤスターが続きを話すように促す。

「あの...えっと...」

地面を引っ掻きながら、躊躇するアッシュファーを、ファイヤスターが急かす。



 「えっとですね...今回初めて大集会に参加する見習いが2匹いるじゃないですか。」

「だから何だって言うんだ?」

ファイヤスターがこちらをちらっとみて、少し強張った顔で聞き返す。

「あの浮浪猫の子供が見習いになった、と全ての部族の前で言うつもりですか?」

「クリアポーは幼い頃からサンダー族にいる。見習いになって何か問題があるか?」

ファイヤスターが目を鋭くした。

「浮浪猫を見習いにしたと他の部族に知られたら、サンダー族は弱い部族だと思われますよ?」

アッシュファーは族長と目を合わせずに続けた。

「確かに一理ありますよ、ファイヤスター。サンダー族はどの部族よりも外部の猫を受け入れています。そのせいで他の部族の恨みを買ったこともありますし...」

話し始めたスパイダーレッグだったが、ファイヤスターの目線を受けて、最後の方の声は小さくなった。メモリーポーは反論しようと口を開きかけたが、あることに気付いて言葉が出なくなった。

ほとんどの猫達が、ファイヤスターと視線を合わせないように下を向いている。(なんてこと!みんな、クリアポーが見習いになったことが不満だったってことなの!?)

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投稿 by アイルステラ Sat Jun 15, 2019 7:49 am

~メモリーポー~

ファイヤスターも一族があまりいい思いをしていないのに気付いたのか、溜め息をついた。

「分かった。仕方がない。クリアポーはサンダー族で産まれたということにする。」

一族からどっと不満げな声や、反対する声があがった。

「クリアポーについて他の部族に聞かれても、部族猫じゃないということは、決して話すな。」

ファイヤスターは一族の声を無視して続けた。隣を見ると、クリアポーが下を向いて震えている。メモリーポーはそっと耳をなめた。

「あなたは立派なサンダー族の猫よ。憧れの大集会に行けるんだから、泣かないで。」

クリアポーにしか聞こえない声でメモリーポーは囁く。

「行くぞ。遅刻する。」

ファイヤスターはそう言って、茂みに飛び込んだ。一族が次々に後へ続く。


***************


 メモリーポーは、興奮を必死に押し殺して大人しくスクワーレルフライトの後ろを歩いていた。横ではクリアポーが地面を見つめて歩いていた。しかし、大きな島の影とその島に続く長い倒木が見えてきた所で、ようやくクリアポーの顔が明るくなってきた。一団が倒木の前で止まった。シャドウ族の匂いと魚のような匂いがした。(これがリヴァー族なのかな?)

 メモリーポーは早く島に行きたくてそわそわしていた。ようやく前のクリアポーがホワイトウィングに続いて渡りきった。早速ぴょんっと橋に飛び乗る。

「ゆっくりでいいからな、メモリーポー。落ちるんじゃないぞ?」

レインウィスカーが後ろから優しく声をかけてくれた。最初の方は幹が細くて安定しなかったが、進むにつれて、だんだん太くなってきた。もう島まではあと少しだ。少し油断した瞬間、後ろ足がつるっと滑った。急いで橋の上に戻ろうとするが、幹が太くて掴みにくく、ズルズルと滑って行ってしまう。

もうしっぽの先が湖についてしまいそうだ。島ではメモリーポーが渡るのを眺めていたクリアポーが、息をのんだのが聞こえた。(もうだめ...落ちる...)と思った瞬間、首筋をふっと持ち上げられた。あっという間にメモリーポーは再び橋の上に立っていた。

「本当にありがとうございます!!!レインウィスカー!!!」

泣きそうになりながら、レインウィスカーを見上げる。メモリーポーの顔を見て、一瞬レインウィスカーの動きが止まった。少しの間、メモリーポーを見つめてから慌てて頭を振った。

「ほら、後ろが詰まるぞ。」

レインウィスカーはそっとメモリーポーを突いた。

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投稿 by アイルステラ Sun Jun 16, 2019 7:53 am

~メモリーポー~

 なんとか渡り終えると、クリアポーが駆け寄ってきた。

「危なかったね!大丈夫?」

メモリーポーは上の空だった。振り返ると、レインウィスカーがちょうど橋から降りて来た。メモリーポーの視線に気付いて、レインウィスカーが見返してきた。(なんだろう...この気持ち...)その時、クリアポーが2匹に気付かず、メモリーポーの前に飛び込んだ。

「メモリーポー?本当に大丈夫?」

「あ、うん。大丈夫。」

メモリーポーはまだぼーっとしながら答えた。

「島、探検に行かないの?メモリーポーなら、絶対探検しに行くと思ってたんだけど...」

クリアポーが心配そうに聞いてきた。

「うん...そうだね...行こ。」

クリアポーに連れられて、島の中央へ向かう。後ろを見ると、レインウィスカーがまだこっちを見ているのが見えた。

「ごめんね、やっぱり私、レインウィスカーのとこに行く。じゃぁね!」

後ろではクリアポーが何かを言いかけたようだったが、メモリーポーは聞こえないふりをして駆け出した。



 「レインウィスカー!」

レインウィスカーがぱっと目を輝かせて振り返ったのが見えた。

「メモリーポー!どうしたんだ?」

「あの...先輩といていいですか?」

レインウィスカーから返事が帰ってこなくて、メモリーポーは慌てた。

「えっと...その...初めての大集会で...どうすればいいかわからない───」

「もちろん!一緒においで!」

レインウィスカーが慌てたように言葉を遮った。

「やった~!どこ行くんですか!?」

メモリーポーは嬉しくなった。(レインウィスカーといると、とても楽しい。いつからこう思うようになったんだろう...)

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投稿 by アイルステラ Mon Jun 17, 2019 7:37 am

~メモリーポー~

 昨日の大集会の興奮を思い出して、メモリーポーは朝から気持ちが高ぶっていた。外を見ると、獲物置き場でクリアポーが一心にどこかを見つめているのが見えた。メモリーポーはクリアポーに声をかけようとしたが、逃げるようにクリアポーが行ってしまった。

クリアポーと入れ替わりのようにやって来たのがアッシュファーとスパイダーレッグだった。2匹はクリアポーが去って行った方を見て話しをしていた。メモリーポーは首を傾げた。(クリアポー、2匹が来たからどっか行っちゃったのかな...)

メモリーポーはお腹が空いて、考えることを止めた。(だめだ...お腹空くと、考えられなくなる!お腹が空いたら何もできなくなっちゃうなんて...)メモリーポーは自分で可笑しくなった。

早速獲物置き場に行って、ネズミを取る。(ん~!美味しい!!!)そう思いながら食べていると、隣で話しているアッシュファーとスパイダーレッグの声が聞こえてきた。

「────クリアポー────」

(ん?クリアポー?)クリアポーという言葉が聞こえて、メモリーポーは思わず聞き耳を立てた。

「最近、あの浮浪猫のクリアポーが俺達をよく見ているの、気付いてたか?」

「分かります!クリアポー、あのことがあってから、何か様子が変わったんですよね...」

「それを言うな!!!」

「あ、すいません、アッシュファー...」

「とにかく、最近あいつの様子がおかしい。始終見張られてる気しかしない。しかも、時々、あいつの目が紫色に見えることがあるんだ....」

「え!先輩も紫色に見えたことあるんですか?俺はてっきり光の加減なのかと思ってたんですけど...気付かれないように注意した方がいいですね。」

「だから!それを言うなって!!!」

アッシュファーは小声でスパイダーレッグを叱った。そして、2匹はこそこそ話しながら行ってしまった。



 あのこと、とは何のことなのか気になったメモリーポーだが、それよりも、クリアポーの目の色が紫色に見えるという所に一番興味を惹かれた。(クリアポーの目は、青色のはずだけど...本当に紫色に見えるのかな?)

そんなことを考えていると、クリアポーがまた戻って来た。何かに集中しているようで、メモリーポーがいることに気付いていないようだ。メモリーポーはクリアポーの目を見つめたが、どこからどう見ても、青色にしか見えない。(やっぱりあの2匹の思い込みだったんだわ。)

「ねぇ、クリア────」

言いかけて、メモリーポーは目を疑った。さっきまで青色だったクリアポーの目が紫色になっている。何度も瞬きをしてみるが、紫色だ。クリアポーの視線を追ってみると、あの2匹がいた。アッシュファーとスパイダーレッグだ。メモリーポーはとても迷ったが、思い切って、声をかけた。

「ねぇ、クリアポー...?」

ハッとしたクリアポーが慌ててメモリーポーを見た。それと同時に目が青色に戻っていく。

「え?な、何...?」

「クリアポー自分で気付いてる?」

「......本当に何...?」

「あなたの目の色、青色から紫色に変わってたよ...」

「.........え?」

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投稿 by ペタルドロップ Tue Jun 18, 2019 7:45 am

~クリアポー~

大集会はメモリーポーと一緒に探検しようと思っていたが、メモリーポーはレインウィスカーと一緒に探検に行ってしまった。
じゃあストームファーと一緒に回ろうかな、と思ってはみたものの、すぐにストームファーは大集会に来ていないことに気がついた。
ストームファーとブルックはいつも大集会には行かせてもらえないらしい...。


(ストームファーがいればなぁ......)


指導者と一緒に歩いてゆくメモリーポーの楽しそうな後ろ姿を見ていると、クリアポーはだんだんうらやましくなってきた。


一人で探検するのはつまらないので、クリアポーは狩りをすることにした。

(大集会の島では勝手に狩りしていいんだよね)



あまり他の猫の目が届かない島のはじっこあたりで獲物を捕まえようと考え、クリアポーは場所を移動してからあたりを嗅ぎ回った。


やっと、クリアポーは木に登ろうとしていたリスを見つけ、ひと飛びでリスの上に着地してしとめた。

(やっぱり島の中って獲物少ないのかな…まぁ、枯葉の季節だし、しょうがないわよね…)

木の根元の座り心地のいい場所を探して、そこに座ると落ち葉があたりに舞い上がった。
クリアポーはさっきキャンプでスズメを食べたばかりだったが、そこでリスを食べることにした。

そしてリスにかじりつこうとしたとき、近くから自分に話しかける声がした。「君、狩りうまいんだね!」

口を開けたまま、あわてて横を見ると、綺麗な緑色の目と目が合った。突然話しかけられたので、クリアポーはあまりに驚き、言葉が出なかった。

雄猫はクリアポーの反応に気づき、あわてて謝った。

「ごめんっ!突然話しかけちゃって!俺はトードフット。昨日戦士になったばかりなんだ!」
こげ茶色の猫は誇らしげに言った。

クリアポーは何が何だかわからず、ドギマギして答えた。「え、あ、は、はい...」

「君の名前なんていうの?」

「ク、クリアポー」

クリアポーはちょっぴり下を向いて答えた。

「そんなに緊張しなくていいよ。見習いってことは、今夜が初めての大集会?」

クリアポーがこくんと頷くのを確認すると、トードフットは続けた。

「俺が島を案内するよ!」

クリアポーは少し驚いたが、緊張が解けたように微笑んで答えた。「ありがとう」
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投稿 by ペタルドロップ Tue Jun 18, 2019 6:28 pm

閲覧数500越え......!ありがとうございます!!!!!

この話はまだ、続きます♪ぜひ、最後までご愛読してくださると嬉しいです♡
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投稿 by アイルステラ Tue Jun 18, 2019 9:55 pm

とうとう閲覧数500超えました...!!!本当に嬉しい限りです!!!今後ともよろしくお願いします!

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投稿 by ペタルドロップ Wed Jun 19, 2019 7:31 am

~クリアポー~

「ここら辺からは湖の全域を見渡せるよ」

クリアポーはトードフットに島のいろんな所を案内してもらった。

湖の水面は、雲のかかっていない冷ややかな月と、無数にきらめく星で輝いていた。


「なんてきれいなの......」

その美しさにクリアポーは今までずっと抱えていた悩みも忘れるほど感動して、言葉を失った。

「だろ?俺はいつも大集会に行ったらここ来てるんだ」
トードフットが自慢げに言った。

クリアポーは空を見上げて言った。
「私、この場所好き...」

クリアポーはしっぽを静かにゆらした。「ハニーフラワー、見守ってくれてるかな.........」




(この子、絶対過去に何かあったな...)

トードフットはクリアポーの背中に優しくしっぽをのせかけたが、何か良心のようなものがちくりと痛み、すぐに引っ込めた。

彼は静かに吐息を吐いた。

「じゃ、じゃあ、次行くよ」

「うん!次はどこ案内してくれるの?」




「わ...たくさんの猫の匂いでいっぱい...」

トードフットは「あれがグレートオークだ!あそこに族長たちが登って話すんだよ。副長は木の根元で座るよ」


ちょうどそのとき、ファイヤスターがグレートオークの真ん中あたりに登ってみんなに呼びかけた。

「すべての部族のみんな、ウィンド族もやってきたようだし、大集会を始めるぞ!」


***************


「......う、うーーん...」

クリアポーは眩しい朝日に向かって目を瞬かせた。

(今日は少しお寝坊をしちゃったみたいだわ...)

見習い部屋には、大きないびきをかいて寝ているバーチポーしかいない。


クリアポーは自分の寝床の上に座ってぼーっとしていたが、昨日の出来事が鮮明に思い出された。

(そうだ、トードフットっていう猫と友だちになれたんだった!友だちはメモリーポーしかいなかったけど、他の部族の猫となんて...考えてみもしなかった)

クリアポーは新しい友だちができたことを嬉しく思い、大集会へ思いを馳せていたが、あることを同時に二つ思い出し、混乱した。

(そういえばトードフット、大集会が終わったあと変なこと言ってた。『俺たち、ちょっとやばいかな?』って...?意味が分からないわ。
でもそれよりも、今はアッシュファーとスパイダーレッグの監視の方が大事だわ!午後の訓練が始まるまで追跡!)

クリアポーは決心した様子で、しっぽをピンと立て、見習い部屋を出た。
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投稿 by ペタルドロップ Wed Jun 19, 2019 7:31 am

~クリアポー~

「あなたの目の色、青色から紫色に変わってたよ...」

メモリーポーはクリアポーの目を見、驚いて口が閉じないまま言った。

「.........え?...ど、どういうこと?!?!私の目の色は青色のはずよ!青色から紫色になるのは、光のあたり具合によって見え方が変わっただけではないの?」

「ううん。アッシュファーとスパイダーレッグをじーっと見ているときだけ紫色になってたわ。あたしがクリアポーって呼んだら、紫色から青色にスーって戻っていったの……アッシュファーとスパイダーレッグも不思議がってたわ」

唖然としてメモリーポーの話を聞いていると、クリアポーにはピンとくるものがあった。


「それってもしかして...あれをしているとき......」

「クリアポー...?」

「あのね、実は───────」
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投稿 by アイルステラ Thu Jun 20, 2019 7:39 am

~メモリーポー~

 メモリーポーは、見習い部屋の中で大きなあくびをした。隣で寝ているクリアポーを朝日が優しく照らしている。数日前、クリアポーが話していた、心の中を覗く能力のこと。ハニーフラワーが殺されたのかもしれないということ。

それも、同じ部族の猫に。メモリーポーは、まだ信じることができていない。そもそも、他の猫の考えていることが分かる、なんて、聞いたことがない。


***************


 (お腹空いた。)メモリーポーはトコトコ歩いて行き、獲物置き場をじっくり眺めた。ネズミが3匹にズアオトリが1羽置いてあった。(落ち葉の季節だから、獲物も痩せてるのね。後で狩りに行っていいかレインウィスカーに聞いてみよっと!)メモリーポーはネズミにかじりついた。



 「そうだ!!!」

メモリーポーはさっと立ち上がり、見習い部屋に駆け出した。

「起きて!!!クリアポー、起きて!!!いいこと思い付いたの!」

「.....ん....メモリーポー....?こんな朝早くから....フワァ....どうしたの?」

眠りから覚めきっていないクリアポーを強く突いた。

「起きてってば!クリアポーの能力のことな────」

メモリーポーはさっと口を塞がれて、目をパチクリさせた。クリアポーに押されるようにして、メモリーポーは部屋から出た。後ろでは、バーチポーがうるさいなぁ、と呟いているのが聞こえた。



 「メモリーポーってば!言っちゃダメって言ったでしょ!?バーチポーに気付かれちゃったらどうするの?」

見習い部屋の裏側に来るなり、クリアポーはメモリーポーを睨んで言った。

「あ...えっと...ごめん。忘れてた...」

クリアポーは呆れて溜め息をついたが、もじもじしているメモリーポーを見て気持ちを切り替えた。

「それで?何の話をしたかったの?」

「あ、そうそう。それなんだけど、クリアポーって他の猫の考えてることが分かるんでしょ?」

「ん...まぁ、大抵はね...」

「それならさ!私の考えてること分かる!?」



メモリーポーに期待に満ちた目で見つめられて、クリアポーは戸惑った。今まで何度かメモリーポーの考えてることを覗こうとしたが、成功したことはない。(でも、やってみないと分からないわ。)そう自分に言い聞かせて、クリアポーは意識を集中させた。

時間が経つにつれて、メモリーポーの目から興奮の色が無くなっていくのが分かった。クリアポーは首を振った。(できない....どうして分からないんだろう...)

「そっか...残念....できる時とできない時があるの?」

「うん...そうみたい....アッシュファーとかスパイダーレッグの考えてることはすぐに分かるのにな....」

クリアポーは笑って見せた。

「先輩の心は覗けるのに、友達の心は覗けないの?あ、レインウィスカーが呼んでる!またね!」

メモリーポーがレインウィスカーと話しているのを見ながら、クリアポーはメモリーポーが冗談で言った言葉を真面目に考えていた。(もしかしたら、そうなのかな?そんなことがありえるのかな....でも、この能力は普通ではないのだから、何がきっかけでもおかしくないよね。)

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投稿 by アイルステラ Fri Jun 21, 2019 7:22 am

~メモリーポー~

 「今日でこの見習い部屋で寝るの最後だな!明日からは戦士部屋だ!」

メモリーポーはホワイトポーと苦笑した。バーチポーのこの言葉は、もう今日1日で嫌というほど聞いた。明日、ホワイトポーとバーチポーが戦士になるのだ。そして、デイジーの子供達が見習いになるらしい。(いいな~私も、早く戦士になりたい!)メモリーポーはうらやましさを隠し切れず、横目でバーチポーをちらちら見た。


***************


 「モウルポー!!!シンダーポー!!!ポピーポー!!!ハニーポー!!!」

一族がヘーゼルポーの後に続いて新しく見習いになった4匹に声援を送った。4匹の横では、ソーレルテイルとブラクンファーが誇らしげに子供達を見つめている。メモリーポーも新しく見習いになった4匹にお祝いの言葉をかけに行った。

 「おめでとう!!!モウルポー、シンダーポー、ポピーポー、ハニーポー!!!これで見習いが9匹になっちゃった!」

「見習い多すぎ!!!私も、追い越されないように頑張らなきゃ!」

隣でヘーゼルポーも笑いながら言った。



 「メモリーポー!!!」

遠くでレインウィスカーが呼んでいる。

「はい!なんでしょう?」

「あのさ、一緒に狩りに行かないか?その...訓練としてじゃなくて...」

「行きたいです!!!」

メモリーポーは目をキラキラさせて見上げる。レインウィスカーの表情もパッと明るくなった。

「今でいいか?」

「もちろんです!!!今すぐ行きましょう!!!」

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雪の結晶[完結]                                      - Page 3 Empty Re: 雪の結晶[完結]

投稿 by アイルステラ Sat Jun 22, 2019 7:50 am

~メモリーポー~

レインウィスカーがさっと立ち上がり、出入口に向かって歩き出す。メモリーポーも笑いながら駆け出す。軽くレインウィスカーの体をかすってキャンプを囲む茂みに飛び込んだ。

「おい!」

後ろからレインウィスカーが笑いながら追いかけて来るのが聞こえた。メモリーポーはキャンプを出た所でさっと立ち止まり、近くの茂みの下に隠れた。ドキドキしながら待っていると、急に後ろから重いものが乗っかってきた。

「先輩!!!ずるいですよ!!!」

笑いながらレインウィスカーを押し退ける。

「弟子が隠れている事に気付かなかったら、指導者失格だろ?」

レインウィスカーは楽しそうに言う。



 「レインウィスカー。私って、先輩の弟子ですか?」

メモリーポーは急に真顔になって、問い掛ける。

「突然どうしたんだ?」

レインウィスカーは首を傾げる。

「やっぱり、何でもないです。あ!あそこにいるネズミ、捕まえてみせます!」

レインウィスカーが少し後ろめたそうな顔をしたのにメモリーポーは気付かなかった。木の下で種をかじっているネズミを見据えてメモリーポーはゆっくりと前進する。



 「お見事!!!さすが、メモリーポーだ。」

得意そうに振り返ると、レインウィスカーが優しい目をしていた。

「今度は俺の番だな。」

レインウィスカーはそう言って、少し先にいるウサギに忍び寄って行く。メモリーポーが見つめる前で、レインウィスカーはウサギを捕まえた。

「すごい!落ち葉の季節なのに、大きなウサギですね!とっても美味しそう。」

「帰ったら一緒に食べるか?」

ウサギをうっとりと見つめるメモリーポーにレインウィスカーが言う。

「いいんですか!?」

「お前が、すごく食べたそうにしてるから!」

レインウィスカーが微笑みかける。

「あ、ばれちゃいました?」

2匹は大笑いした。

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投稿 by ドリームハート Sat Jun 22, 2019 7:28 pm

とても面白いです!

毎日更新するなんてすごいですね!


レインウィスカーとメモリーポーがどんな関係になっていくのか気になります。

これからも頑張ってください。応援しています!

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投稿 by ペタルドロップ Sun Jun 23, 2019 6:45 am

ドリームハート wrote:とても面白いです!

毎日更新するなんてすごいですね!


レインウィスカーとメモリーポーがどんな関係になっていくのか気になります。

これからも頑張ってください。応援しています!

ドリームハートs、コメントありがとうございます!!!

メモリーポーとレインウィスカー、どうなっていくのでしょうか...?お楽しみください♡

これからも頑張っていきます!応援ありがとうございます♪


最終編集者 ペタルドロップ [ Sun Jun 23, 2019 6:58 am ], 編集回数 1 回
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投稿 by アイルステラ Sun Jun 23, 2019 6:53 am

ドリームハート wrote:とても面白いです!

毎日更新するなんてすごいですね!


レインウィスカーとメモリーポーがどんな関係になっていくのか気になります。

これからも頑張ってください。応援しています!

面白いです、なんて本当にありがとうございます!今後も2匹に注目して読んでいただけると幸いです!!!

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投稿 by アイルステラ Sun Jun 23, 2019 6:55 am

~メモリーポー~

 口いっぱいに獲物をくわえてキャンプに帰る頃には、日が傾きかけていた。



 「ん~!やっぱり美味しいですね!!!」

あっと言う間に、自分の分のウサギを食べてしまったメモリーポーを見て、レインウィスカーが口を開く。

「良ければ、これ食べるか?」

レインウィスカーはウサギを鼻で押し出した。

「え、でも....」

「俺はもう充分食べたから。」

レインウィスカーは立ち上がる。

「じゃぁな。明日は狩りの腕前のテストをするぞ。」

そう言って、メモリーポーの頭を一舐めした。ハッと見上げるが、レインウィスカーは行ってしまった。



 去って行くレインウィスカーを目で追いかけていると、隣にクリアポーが来た。

「お熱いですね~。見ているこっちが熱くなっちゃうくらい!」

「え、クリアポー、何言ってるの!」

メモリーポーは真っ赤になって否定する。

「分かるわよ。レインウィスカーのこと、好きなんでしょ?」

「べ、別に、レインウィスカーはそんなんじゃない!指導者なだけ!」

「ふ~ん。」

クリアポーがクスクス笑いながらメモリーポーの目を覗き込む。耐え切れなくなって目を逸らすメモリーポーにクリアポーは囁く。

「私はあなたの恋、応援するわよ。」

言い返そうと思って振り向いたが、クリアポーはもう獲物置き場にいた。(違うわ。そんなんじゃない!レインウィスカーは....レインウィスカーは....)メモリーポーは首を振って目の前のウサギに視線を戻した。ウサギには、微かにレインウィスカーの香りが染み付いている。メモリーポーは耳の先からしっぽの先までブルッと震えた。

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投稿 by ペタルドロップ Mon Jun 24, 2019 10:41 am

~クリアポー~

凍える寒さの中、半月には毛布をかぶったように分厚い雲ががかかっている。

みんなが寝た後にクリアポーは起き出し、外に出ていた。


...こんなに寒いとあの時を思い出す。

そう、母親に捨てられていた私がサンダー族に拾われた日。なぜお母さんは私を捨てたのか、いまだにわからない。

私のお母さんは浮浪猫だ。そして、私を捨てた酷い母親。本当に憎い。

でも、なぜかとてつもなく会いたくなるときがあるのだ。

夢によく出てくる、お母さんの面影...。立ち去る音を聞くと、今でも苦しい。


メモリーポーがレインウィスカーと楽しくやっているところを最近よく見かける。
メモリーポーの恋を応援しているとは言ったが、実際メモリーポーが自分から離れていってしまうのがクリアポーは寂しかった。


(ハニーフラワー......)


今夜は一匹、コケの上に小さくなった。


***************


「起きろ」

朝になって、ストームファーからつつかれて、目を覚ました。外から光は差し込んできておらず、まだ朝は早いことがわかった。

「もうそろそろお前の実力を見せてもらうときが来た。パトロールが終わってから狩りの腕前を見せてもらう。まぁもう分かっているが!」

腕前テストと聞いて、クリアポーは飛び起きた。

「早くしたいです!」

クリアポーがとっさに大きな声を出してしまうと、さっきまでいびきをかいていたベリーポーは、頭を上げて不機嫌そうに目を細める。

謝ろうとしたが、言葉が声にならず、口をパクパクさせた。

ストームファーはあきれたように首を振って、クリアポーにしか聞こえないような小声で言った。

「楽しみなのは分かるが、大きな声を出すなよ...。みんなが目を覚ましちまうだろ」

「はい...でも本当に楽しみです!」

クリアポーは、あとで行う狩りの腕前テストに思いを馳せていた。
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投稿 by ペタルドロップ Tue Jun 25, 2019 9:29 am

~クリアポー~

クリアポーとメモリーポーと指導者たちは、四匹でシャドウ族との境界線の近くをパトロールしていた。

メモリーポーとレインウィスカーはキャンプの中にいるときからずっとおしゃべりをしている。

「クリアポー、何が匂う?」
ストームファーは確認した。

「はい。えーっと...、シャドウ族がついさっきマーキングした匂いがします。でも、なぜサンダー族の縄張りの中でシャドウ族がマーキングした匂いがするんでしょうね...」

クリアポーがそう答え、不思議そうに首を傾げると、ストームファーがはっとして急いで辺りの匂いを嗅ぎ、慌てて言った。

「僕たちの縄張りにシャドウ族のマーキングがしてある!」

ストームファーの声が聞こえたのか、やっとメモリーポーとレインウィスカーは驚いた表情を見せた。

「シャドウ族がサンダー族の縄張りに?!そんな、追い払わなきゃ!!!私たちの縄張りをシャドウ族に乗っ取られるなんて、考えられないわ!!!」

レインウィスカーも匂いを嗅いで納得した様子で言った。「急いでシャドウ族の猫たちを追跡しないと!」

「シャドウ族にこの土地はサンダー族のものだということを知らしめるんだ」ストームファーが先導し始めた。

シャドウ族の通った道はすぐ分かった。

クリアポーは呆れた。(こんなにシダを踏み倒して歩いていたら、こっちの追跡が簡単になるってことにシャドウ族はいつ気づくのかしら)


「あ!シャドウ族の猫たちよ!!!」

メモリーポーが茂みの向こうの空き地をしっぽで示した。

「準備はいいか?」

ストームファーが振り返って言うと、クリアポーたちはうなずいた。

ストームファーは前へ向き直ってジリジリと進み始める。クリアポーたちもそれに続いた。メモリーポーは腰を振って神経を集中させている。


「行くぞ!!!!!」
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投稿 by ペタルドロップ Wed Jun 26, 2019 7:41 am

~クリアポー~

「行くぞ!!!!!」

ストームファーのかけ声と同時にクリアポーたちは茂みを駆け抜けて、マーキングをしている最中のシャドウ族がいる空き地に躍り出た。

「ここはサンダー族の縄張りだ!!!!!」
レインウィスカーがシャドウ族の4匹に向かって堂々と言い放った。

最近、サンダー族がここ周辺をあまりパトロールしていなかったことに、シャドウ族は気付いていたようだ。

「あら?てっきりサンダー族はこの領地を手放したのかと思っていたわ!マーキングが長い間されてなかったようだけど。ねぇ、シーダーハート」
ショウガ色の雌猫が黒い猫を脇目に、顎でこちらを示した。

この雌猫は、この前の大集会でトードフットが教えてくれたのを覚えている。シャドウ族の副長のラシットファーだ。

「あぁ、二、三日前から俺たちはここにマーキングをしている。サンダー族には隙があるようだからな。だからここはもう俺たちシャドウ族の縄張りだ!サンダー族は出て行け!」
シーダーハートは、さも当然のように胸を張った。

「前に縄張りの境界線を決めたときに、ここはサンダー族のものと決めたはずだが?」ストームファーが前へ一歩踏み出した。「この土地が欲しければ戦って勝ち取れ!」

「枯れ葉の季節になってから、獲物は少なくなってきた。それでシャドウ族は新たな土地が必要になったんだ。俺たちはもらう土地をもらったまでだ」茶色い猫が言った。

おかしそうに鼻を鳴らす見習いも合わせて言った。
「サンダー族はいつになったら自分の縄張りを守れるんだろうね!ま、所詮飼い猫率いる飼い猫の集団、サンダー族には縄張りなんてどうでもいいんだろうけど!」

メモリーポーの目が吊り上がった。この猫は言いすぎた。

「まさか、ファイヤスターのことを言っているんではないんでしょうね?生意気なあなたとは違って、あたしの父は立派な族長よ!!!!!」自分の父親を侮辱されたメモリーポーは、とら柄の見習いに飛びかかろうとしたが、クリアポーの方が速かった。

「アウルポー!気をつけろ!」シーダーハートが言ったが間に合わず、意表をつかれたアウルポーは、クリアポーの攻撃を避けきれなかった。クリアポーの動きと同時に戦いの火蓋が切られた。

クリアポーは自分の攻撃で少しよろめいた敵を押し倒して、あお向けの状態にした。そして、前足で押さえ、先程のお返しをするように後ろ足で敵の柔らかいお腹を蹴りに蹴った。
それで最初に痛手を与えることはできたが、押さえつける力が弱かったのか、すぐにアウルポーはヘビのように体をくねらせて、クリアポーの手から逃れた。
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投稿 by ペタルドロップ Thu Jun 27, 2019 7:18 am

~クリアポー~

次は相手から攻撃を仕掛けてきた。キラリと前足の鉤爪を光らせ、左足と右足で交互にクリアポーの頬を殴った。クリアポーは憤慨し、敵の胸の毛をいくらかむしり取る。
そして、自慢の細やかな動きであちこちから爪の攻撃を敵にあびせた。あまり傷は残せなかったが、相手を混乱させることができた。その隙を見て、アウルポーの足をすくい取り、体勢を崩したところで背中に飛び乗った。

渾身の力を込めて敵の耳を思いっきり噛みつけながら周りを見た。ストームファーはラシットファーと戦っている。レインウィスカーはシーダーハートと戦っているけど、メモリーポーはどこ?

慌ててメモリーポーを探すと、小柄な茶色い戦士に地面に押さえつけられているのが空き地の端っこに見えた。(危ない!助けに行かなきゃ!)

アウルポーを置いてメモリーポーのところへ走って行こうとすると、レインウィスカーがシーダーハートを茂みに放り込み、茶色の雄猫のしっぽに噛みついているのが見えた。メモリーポーはレインウィスカーが助けてくれるから大丈夫だろう。

クリアポーは皆がまだ戦えているのを確認できてほっとしていると、敵が背後から襲いかかってきた。アウルポーのこと忘れてた!

仰向けに押し倒されたクリアポーは、しっかりと地面に押さえつけられてしまった。さっき相手の耳に噛み付いた傷口から、血が自分に降りかかってきた。
身動きを取れない中、シャドウ族の見習いはクリアポーの横腹に強く噛み付いた。鋭い痛みが走り、体の力がどんどん抜けていく。視界がだんだんぼやけていく......

敵が首筋に鋭い歯を立てた。ダメだ、もう逃げられない!

クリアポー最後の力をふりしぼって叫んだ。「助けて!!!!!」


「かかれ!!!!!」

目の端に元気なサンダー族の猫たちが空き地に走り込んでくるのが見えた。狩りに行っていた猫たちが気づいてくれたのかしら...。

すると、体がふっと楽になったのを感じた。頭を上げて見てみると、ブラクンファーがアウルポーを自分から引きずり下ろししている。

そしてブラクンファーは、アウルポーを地面に押さえつけて自身の爪を体に突き立てた。

シャドウ族は自分たちの縄張りにジリジリと下がり始めた。シャドウ族は数で完全に負けているのを知ると、ラシットファーはやっとの思いで声を絞り出した。「シャドウ族退却!」

ブラクンファーは最後にアウルポーの肩をがぶりと噛むと、突き立てていた爪を離して放してやった。

「あいつらが縄張りに戻ったかどうか確認してこい」ブラクンファーが命令すると、クラウドテイルとスパイダーレッグは走って行った。

「助けてくれてありがとうございます、ブラクンファー!先輩たちが来てくれて、本当に助かりました...」ストームファーは深々と頭を下げた。

「いやいや、当然のことをしただけだ!ところで、どうしてシャドウ族がサンダー族の縄張りに?」

「シャドウ族の猫たちが新しく境界線を引き直していたんです。今思い知らせてやりました!」

「シャドウ族め...。よし、さっそくファイヤスターに報告だ」
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投稿 by アイルステラ Fri Jun 28, 2019 6:37 pm

~メモリーポー~

 「アウルポー!気をつけろ!」

戦いが始まった。ファイヤスターを侮辱され、頭に血が上っていたメモリーポーは、近くにいた茶色い雄猫に飛び掛かった。相手は驚いた声をあげたが、すぐに身を翻してメモリーポーに前足を突き出した。メモリーポーはその攻撃をさっと避け、相手を睨んで毛を逆立たせた。

睨み合っていると、近くで怒りの声があがった。ストームファーがラシットファーに押さえ込まれている。メモリーポーはぞっとしたが、ストームファーはすぐにラシットファーを跳ね飛ばした。

「メモリーポー!前!!!」

レインウィスカーの声が聞こえて慌てて前を見ると、敵が突進して来た。なんとか身をかわしたメモリーポーの耳に、ストームファーの声が響いた。

「メモリーポー!キャンプに応援を呼びに行け!」



 メモリーポーは慌ててキャンプに向かって走り出したが、後ろから押し倒された。敵の匂いが鼻いっぱいに広がる。ありったけの力を出して転がり、なんとか戦士を押し退けたが、相手の方が速かった。急いで立ち上がったメモリーポーだが体当たりされ、横ざまに倒れた。

「キャンプに逃げ帰ろうっていうのか?所詮見習いだな。」

メモリーポーは後ろ足で蹴りつけたが、脚が届かない。自分より重い茶色の戦士の体に押さえ込まれて、メモリーポーは息ができなくなった。敵が腹を引き裂いた。メモリーポーの体から血が流れ出す。戦士を払い落とそうとするが、相手はびくともしない。意識が遠退いてきた。



 突然、体の上から重さが無くなる。目を開けると、怒りに満ちた目をしたレインウィスカーが敵の戦士を激しく引っ掻いているのが見えた。メモリーポーは急いで息を吸い、肺に空気を送り込む。

大きな悲鳴があがり、その方向を見ると、ストームファーがシーダーハートとラシットファーに埋もれていくのが見えた。(助けに...行かなくちゃ...)

「助けて!!!!!」

必死に体を起こしたメモリーポーに別の声が飛び込んできた。(クリアポー!)一歩踏み出しかけて、メモリーポーは脚がもつれて倒れ込んだ。クリアポーの首筋に敵の牙が迫る。

「かかれ!!!!!」

ブラクンファーの声が聞こえた。近くの茂みからブラクンファー、クラウドテイル、スパイダーレッグが飛び出してきた。ブラクンファーがクリアポーの上からアウルポーを引き剥がすのが見えた。クラウドテイルとスパイダーレッグは、ストームファーの元に駆けより、シャドウ族の戦士に噛み付く。



 「シャドウ族退却!」

少しの激しい乱闘の後、戦いの終わりを告げる声がした。メモリーポーはほっとして目を閉じた。(ようやく戦いが終わったわ....)

「メモリーポー?大丈夫か?」

頭上からレインウィスカーの声が聞こえてきた。

「はい....なんとか....」

「急いでリーフプールの所に行こう。立てるか?」

レインウィスカーは、メモリーポーが立ち上がるとすぐ、肩で支えてくれた。その様子を見ていたブラクンファーは、一団を導いて歩き出した。

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投稿 by ペタルドロップ Sat Jun 29, 2019 7:32 am

~クリアポー~

一団がキャンプに着くと、空き地にいた猫たちは怪我をした私たちを見て何事だろう?とざわめき始めた。
ブラクンファーはキャンプに入るなり、族長の部屋へ早足で向かった。

「メモリーポー、早く看護部屋でリーフプールに見てもらおう。クリアポーもな。俺たちは後でいいから」レインウィスカーは、足元のおぼつかないメモリーポーをしっぽでそっと導き始めた。

倒れ込みそうになったとき、クリアポーはあることを思い出した。「ストームファー、今日は狩りのテストはやらないのですか...?やりますよね?」重い頭を無理やり上げて、ストームファーを見た。

「いや!しばらくはできない...。そんな怪我してよくそんなこと言えるな...。お前も万全の体調でいい結果を出したいだろ?」
今、クリアポーは傷だらけの体ながら、なんとか立っているような状態だ。

「その様子じゃあ何日かはできないだろう。今日はゆっくり休め。二匹ともよく頑張って戦ってくれたからな」

ちょっぴり不満だったが、ストームファーに褒めてもらえてほっとしたクリアポーは、気が抜けてその場に崩れ落ちた。
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投稿 by アイルステラ Sat Jun 29, 2019 7:33 am

~メモリーポー~

 メモリーポーは、暖かい光が体に当たって目が覚めた。(昨日はキャンプに着いてすぐ、眠っちゃったんだっけ...)横を見ると、クリアポーが眠っていた。

「メモリーポー、目が覚めたのね。よかった。」

「あ、リーフプール。おはようございます。」

身を起こそうとして、メモリーポーは痛みで顔をしかめた。

「起きちゃだめよ!また傷口が開いちゃうわ!待ってて、今マリーゴールドを取って来るから。」

メモリーポーはため息をつき、再び頭を地面につけた。外をチラッと見ると、太陽は傾きかけていた。(てっきり朝だと思ってた...私、丸一日寝てたのね...)



 「クリアポーより怪我がひどいから心配してたのよ。シャドウ族の戦士相手に戦ったんですって?すごいじゃない!!!」

リーフプールはメモリーポーの体に薬を塗りながら言った。

「そんなこと全然なかったです...」

メモリーポーは悔しさで俯きながら言った。そんなメモリーポーの様子に気付いてリーフプールは言った。

「相手は戦士よ。あなたは見習い。まだ勝てなくて当たり前だわ。これからもっと訓練して、強くなればいいのよ。」

「そういえば、クリアポーは大丈夫ですか?」

メモリーポーは話題を変えた。戦いについて、もう話したくない。

「クリアポーはあなたに比べて怪我は軽いわ。大事を取って、私の近くで寝かせたかっただけよ。」

「そうですか...よかった...」

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