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小説が書きたい!〜レイク族〜

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投稿 by Murre Sat Mar 19, 2022 5:04 pm

「そもそもマァーラー、お前は、何故海に行こうとしている?」
「えっ…?ウミガラスの羽?」
記憶の糸をたどってみる。そういえば、いつか、シンボルレイク族の縄張りで、シンボルインディゴに、海に行け、って言われた気がする。けれど、クレインボイスを見習いにもらった時、崖についたころには、湖は滅びる、っているイブニングレイクたちが言っていた気がする。
どちらが正しいの?
「マァーラー、知らないと思うが、レイク族やロック族は今、<シンボルレイク族に釣り糸を垂らす者達>に侵入され始めている。」
ブラックの言葉に息が止まった。侵入されている?
「私達は、何をすればいいの?この旅は、全て無駄足だったの?」
カラスは答えない。
「ブラック、レイク族は、滅びてしまうの?」
一瞬、いつかカープウィスカーが、シンボルレイク族を滅ぼす、と言っていたように思えた。いや、言っていた。兄は<シンボルレイク族に釣り糸を垂らすもの達>とカインドアイと手を組み、湖を枯らそうとしているの?
「ニンゲンの目的は、住宅地拡大だろう。ニンゲンは馬鹿だから、そこに住んでいる生物には目もくれず、ただただ破壊し、地震にも負けないような家を建てる。」
ブラックは悲しそうに、ケっと唾を吐いた。
「戻っても、私には何もできない。」
「もちろん何もできない。」
直ぐに否定されて少しだけ悲しくなった。少しだけでも何か言ってくれればよかったのに。心の中で苦笑いした。
「じゃあ…えっ?何を…。」
動揺で物も言えなくなってきた。カラスはファッっと嘲笑してきた。
「霧の猫が言うに、新しい場所を見つけて来い、だと。ニンゲンが侵入してこない、安全な場所を。」
霧の猫とは、シンボルレイク族の猫の事だ。カラスには、先祖の猫は霧を纏っているように見えるらしい。
「新しい場所。私達が見つける…?」
ブラックは頷き、嘴で羽を搔いた。
「お告げが下りているなら、私に直接教えてくれればいいのに。シンボルレイク族は、どうして最近姿を現してくれないの?」
事実だった。毎日下っていく川のすぐ横を歩いているのに、フェザーライトは一向に姿を現さず、声も聞こえない。
「忙しいんだろう。藍色が沈んだ、って騒いでいたぞ。」
嘴が私の僅かに膨らみ始めた腹をつつく。
「どっちがいい?湖に戻るか、海に向かう途中に新天地を求めるか。」
実は、まだ誰も気づいていないが、多分身ごもり始めた。鋭いカラスは直ぐに気付いたけれど。
本心、湖に戻り、辛い旅を止めたい。この旅の理由が最近見えなく、疲れてきた。湖になら仲間が居て、出産の手助けもしてもらえる。
「私は、戻りたい。」
あっさり海に行くことを止めたのには、少し気が引けたが、意味がなく、故郷に危機が迫っているとわかった今、戻る以外に決断はない。もしも新天地が必要ならば、一族全員で探せばいい。
もしも海に行かなかったら、ライトポーが見た恐ろしい夢も正夢にならない。あの夢は、ライトポーの予知夢でないことを祈るしかない。
「マァーラー、ついて来い。近道で湖まで戻ってやるよ。」
カァと一声啼くと、ブラックは飛び立った。
この旅は、もう終わりだ。私はウミガラスの羽が無くても泳げ、鳥と話せるし、レイク族は侵入に脅かされている。
しかし、シンボルレイク族が私に旅に出るよう言ったのは、何故だろう?
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投稿 by Murre Wed Mar 23, 2022 9:41 pm

ライトポーは驚きもせず、ただ頷いた。弟子は、それよりもブラックを気に入ったようだ。低空飛行をするカラスの後ろを走っては前足で羽をぱたんと叩いた。ブラックも期待に応えて傾いたりしていた。ブラック自身もライトポーを気に入ったらしく、会話はできないが、ライトポーの頭の上に、怪我をしない程度の強さでかぎ爪や足を使い止まったり、ライトポーと並行して飛んだりしていた。
シャドウトゥースはまた無反応に戻った。あの笑顔は何だったのだろう。
ウォーターシャドウは尻尾を高く上げ、喜んだ。妹であるハイドレンジアブルーの眠る土地に戻れることが、少なからず喜ばしいのだろう。
「ブラック、先導して。」
カラスは一声啼いて、進行方向を左に変えた。
ブラックは猫の少し上空を、翼を広げて飛び、私達は時々上を見上げながら走った。
木から降りた後、ハタネズミを捕らえ、皆が魚を食べている横で食べたから、体力は心配無さそうだ。
ブラックは、私達を怪物の通る道や、住宅街に導いた。何故だろう?こっちは、私達の敵の<シンボルレイク族に釣り糸を垂らす者達>の縄張りの方だ。
「ブラック、こっち…。」
「大丈夫。夜はニンゲン、も、イヌ、も多くは活動しないさ。ケッ。日が暮れるまで木の陰で休んだらどうだ?」
カラスは軽く嘲笑した。
シャドウトゥースが小さく唸り、ウォーターシャドウが不安げにちらっと目配せしてきた。
大丈夫、と喉を鳴らし、前を向く。
左を向くと雲を左右に従えた橙色と黄色、琥珀色の太陽が、高い家々の後ろに隠れ始めた。太陽は今、私達が訪れるのを断念した海に体が漬かり始めているだろう。
ブラックが背の高いオークの木に停まり、山へ返っていくカラスの群れを眺めた。
「マァーラーフェザー、日が沈んだら出発ですか。」
そうよ、と頷き、寝なさい、と合図する。父とウォーターシャドウは既に体を丸めていた。
「おやすみなさい。」
おやすみ、とライトポーの声に二匹が反応した。
「おやすみなさい。」
ライトポーの隣で声をかける。
妹の体は温かかった。
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投稿 by Murre Fri Mar 25, 2022 3:40 pm

ブラックは、怪物の通る道と並行に走る、<シンボルレイク族に釣り糸を垂らす者達>と、それらが乗る二輪の乗り物が走る用の道を通らせた。地面は固く、ざらざらと砂利が肉球につき、その肉球は擦り剝け、血が滲み出ている。
肉球の擦り剝けに、ベルポー達看護猫は、何を使っていたか、と考えたが、縄張りにいると二はそもそも肉球が擦り剝ける、なんてことが無かったから、分からない。
「もうすぐ、夜が明ける。」
ウォーターシャドウの言うとおり、進行方向の少量の雲がかかった空は、淡い光を帯びた灰色と紫色に変化しつつある。隣にずらりと並ぶ、家々も、ガラスにかけられていた布が振り払われ、直立歩行の生き物が顔を出す。
ブラックがカッと唾を吐くように啼き、片側の羽を重心に傾けて旋回し、ねぐらになりそうな隠れ場所を探し始めた。
塀のある家の庭からイヌの鳴き声がし、こちらに身を乗り出してきた。あいにく首に赤い締め付けるものが巻き付いていたから、襲われる心配はなかったが、一応足早に通り過ぎた。
<シンボルレイク族に釣り糸を垂らす者達>が起きだし、犬を散歩に連れ歩くのは、間もなく開始されるだろう。
ブラックが路地の奥に入り、高い家に遮られて日陰となっている小さな庭を見つけた。
シャドウトゥースが腰を振り、集っていたハトの一羽に音を立てず跳びかかった。
私もライトポーが観察できるようゆっくり忍び寄り、ネズミを捕らえた。
正直のところ、私の口に鳥は合わない。話せるのに食べるなんて、共食いしているようで悲しくなるからでもある。
サクランボの木の傍のバラの陰に潜む。水やりに来る<シンボルレイク族に釣り糸を垂らす者達>の良くない目から逃れるためだ。見つかったら毛を撫でられるか怒鳴られるかで、面倒なことになってしまう。
私とウォーターシャドウでネズミを、遠慮がちなライトポーと角が取れてきたシャドウトゥースでハトを分け合って食べた。勿論私は、父の黒い歯によって引き裂かれる仲間から背を向けた。
それから落ちたバラの棘に背中を刺激されながらも明るい時間帯を睡眠で過ごした。すっかり昼夜逆転した生活に様変わりしたが、こちらの方が夜に活発に動けるため、よっぽどいいと最近感じる。
あと何日で縄張りに帰還できるだろう。早く戻り、出産の準備を整えたい。
お腹の事は、初めに妹のライトポーが気付いた。
今お腹は膨らみ、日に日に重量が増えている。尻尾で子供を擦りながら頭を下ろし、眠りについた。
 
「シンボルインディゴの準備は、もうすぐ整う。新たな人生を歩み始めるのだ。」
石の広間に集まった八匹の猫に、一回り大きな、年を取った雄猫が言った。
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投稿 by Murre Sat Mar 26, 2022 5:51 pm

熱を感じて目が覚めた。そっと頭をもたげると、まだ夕方で綿雲の底はオレンジ色と灰色のグラデーションを描いていた。
ライトポーの方をそっと見ると、口を僅かに開き、浅く多く呼吸をしていた。
浅く、細かい呼吸…?
肉球で弟子の額を触れてみると、熱湯のように熱かった。
「ライトポー!体調…」
ライトポーは耳をぴくっと動かし、薄く目を開けた。とろんとした目の光はいつもより弱々しい。
「ぼんやりとします…。」
言葉にも力無い。
私の声にシャドウトゥースとウォーターシャドウも起き出し、ライトポーのぐったりした様子に目を見張る。
「ライトポー、大丈夫か?」
「大丈夫な訳ないでしょ!」
シャドウトゥースの言葉に思わず反論してしまう。黒猫はぎょっとすると、背を向けた。
熱のときには、何を使うべきだったかな…看護猫は何を使っていたかな…?
「ルリチシャ、じゃないかな?ルリチシャは用途が2つあって驚いた記憶がある。」
ウォーターシャドウが鼻をひくひくとさせる。
ルリチシャ?お乳の出を良くするだけじゃないのね!
「もしかして、これか?」
父がかがむ。
花が終わり、たわわに実をならした白い細かい毛で縁取られた植物が、日光がよく当たり、風通しの良い庭に固まって生えていた。
そうかもしれない。
クレインボイスが子猫のときに、フラワーカラーと会いに行ったら、(憎い)カインドアイが咥えて来たのを覚えている。
「これを、ライトポーに与えましょ!」数束もぎ取って、バラの茂みに戻る。
見つけたシャドウトゥースは、空を見上げている。
「ライトポー、これ…ウォーターシャドウ!苔に水を含ませて来てくれませんか?」
先輩は頷き、さくらんぼの木の陰に生えた苔をむしり取り、下っていく川のある方向に駆け出す。
ライトポーの意識は朦朧とし始めていて、ルリチシャを近づけても鼻をひくっとさせるだけだった。
「これ、食べて。」
口に近づけると、僅かに開いたので、半ば押し込む感じで食べさせる。後方で黒猫は顔を顰めている。目線を辿ると、ブラックがいた。
カラスは、ライトポーがぐったりしているのを気にせず、咥えていたミミズを飲み込んだ。
二匹の猫の目線に気づき、寝ているライトポーを見下ろすと、近くまで飛び降りてきた。
「この灰ぶち、死んだのか?」
「ライトポーは死んでないわ!寝てるだけよ!」
カラスが無礼な言葉を吐き捨て、私が反論した後、シャドウトゥースがびくっとバラの陰まで小走りした。家の方を見ると、がらがらと音がして、<シンボルレイク族に釣り糸を垂らす者達>のひょろ長い脚が伸び、全身を現した。急いでライトポーを死角に押し込み、身を隠す。ブラックはまたさくらんぼの木に戻った。何事も無かったように。
<シンボルレイク族に釣り糸を垂らす者達>は片手に携えた鼻の長い容器を傾け、手前のバラに雨を降らせた。
私達猫には気付かず、また暖かい家の中に戻った。
丁度良いタイミングでウォーターシャドウが苔から水を滴らせてやってきて、怯える私達の背中をそっと撫でた。
今日は先に進めない。
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投稿 by Murre Tue Mar 29, 2022 4:49 pm

ブラックが右に方向転換した。
黒く硬かった舗装が次第にぼろくなり、足の裏にひんやりとした冷たさが伝わる。数分歩いたら、肉球の表面に触れる感触は完全に変わり、さまざまな種類の雑草のにおいが鼻をくすぐる。
「あ、下っていく川だ!」
すっかり元気を取り戻し、跳ねるように道を進んでいたライトポーが、久しぶりに川興奮し、尻尾を高く上げる。歩調が早まり、それを見かねてブラックも高度を落とし、銀色の雌猫と並行して飛ぶ。
川の輝きを見て、私は思いだした。
私はレイク族とロック族、どちらに戻ればいいのだろうか?
レイク族にはまだ、私を不審な目で見、爪弾きにしようとする者が居るかもしれない。
ブラックロックは優しく温かく迎えてくれるだろうが、私の生まれ部族ではない。
どうしよう。
「ウォーターシャドウ、シャドウトゥース、私、レイク族とロック族、どちらに戻るべきでしょう?」
ウォーターシャドウは直ぐに答えてくれた。
「レイク族。一族もきっと許してくれているよ。クレインボイスだって、悪いこと言ってなかったんだろう?」
<二部族の椅子>での出来事を思い出す。
カープウィスカー、カインドアイと戦った時に会…。
カープウィスカーとカインドアイ!
そういえば、この地域には狂った危険人物が二匹もいる。川はまだいつも通り、何事もなさそうに流れている。けれど、湖がどうなっているかは分からない!もう、シンボルレイク族が住めないくらい小さくなっていたりして…!
「急ぎましょう。カープウィスカーとカインドアイによって、湖が、湖が…!」
「そんなに慌てて、カープウィスカーとカインドアイが、湖を滅ぼすとでも言いたいのかい?」
おっとりとウォーターシャドウが返してくるが、この猫は、あの猫達の狂気さをまだ、知らない。私とライトポーが聞かせただけだ。
「マァーラーフェザー!来てください…!」
一足先に湖を見に行っていたライトポーが叫ぶ。急いで追いつき、私達も絶句した。
湖など、以前からなかったかのように、一本化された川が、流れていた。
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投稿 by Murre Wed Mar 30, 2022 11:44 am

「湖が…!」
悲痛な叫びを上げたのは、ライトポーだ。
「皆は、一族の皆は!無事なの?」
私の問いかけにうん、と頷けるものはいない。川の横はべとべととした泥と化していて、猫の住めそうな草地や岩場は見当たらない。
「探そう!探しましょう!」
誰もが呆然としながらも私の意見に賛成した。
遅かった。
キャンプなど、跡形もなく怪物に踏み潰され、植物の命さえも感じられなかった。猫など生きられるはずもない。
ロック族側にも行ってみた。川を渡るだけで簡単に行くことが出来た。
「あぁ、旅に出たときには、乾いた、小石のばら撒かれた、場所だったのに…。」
ライトポーが悲しく呟く。シャドウトゥースも故郷の残骸に項垂れる。
「<二部族の椅子>。あそこなら、まだ侵入は、無いのかもしれない。」
ウォーターシャドウが希望を、微かな希望を込めて、山の上の、川の上流の、出っ張った崖を見上げる。
くたくただったが、他の皆も行くことに小さく賛成した。
途中、細くなった川で魚を獲ったが、どれも鱗の艶をなくし、一回りほど小さくなっていた。岸に揚げてもぴちぴちと威勢よく跳ねず、ぱくぱくと口を動かすだけだった。
「<ニ部族の椅子>」
シンボルレイク族は、本当に私達を見守ってくれているだろうか?避難したと考えられる看護猫や、族長達にお告げを降ろしてくれたのだろうか?
道のりは、辛かった。私達は、崖に猫の影もない、という事を想像しないように、出来るだけ縄張りが完全であったときの話に花を咲かせようとした。しかし、暗い雰囲気が纏わり付き、太陽の光が背中を温めても、明るくなることは無かった。
「カープウィスカー!」
不意にイブニングレイクのものらしき声が辺りをつんざいた。カープウィスカーと叫んだのは、もしかして…!
「お帰りなさい。」
憎々しげに言ってきたあの声は、昔と変わらずカープウィスカー、私の兄だった。
「湖を、シンボルレイク族の縄張りを細めたのは、あなた?」
尻尾を激しく振って兄と、隣りにいる、子供を三匹こさえたカインドアイに問いかける。私達の急な帰還に、一族は驚く力もない。行方を知ることのできなかった猫が、一度に六匹も目の前に現れたのだから。
「マァーラーフェザー…。」
「後で説明します!カープウィスカーは、カインドアイは、シンボルレイク族を滅ぼしたんです!」
「違う!」
イブニングレイクに怒鳴られて、毛を逆立てる。何が違うというの?<シンボルレイク族に釣り糸を垂らす者達>を唆して、この土地を開拓するように仕向けたのは、この狂った二匹ではないの?二匹なら、<シンボルレイク族に釣り糸を垂らす者達>に甘い声を出し、懐き、この奥に未開発の土地が有ることを知らせたのだろう。
「<シンボルレイク族に釣り糸を垂らす者達>が、全て、悪いんだ。俺達は多くの戦士を失い、土地まで失った。カープウィスカーは、カインドアイは、偶然ここに現れただけだ。濡衣だ。」
イブニングレイクが二匹を庇った。
「シンボルレイク族から、最後のお告げが降りた。」
ブラックロックが進みてて、オレンジ色の族長の横に並ぶ。
「「シンボルレイク族は滅びた。部族猫の生き残る術は、集団で残ることではなく、少数でこの地を、離れる事だ。」」
族長の声が重なった。
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投稿 by Murre Thu Mar 31, 2022 6:27 pm

「カープウィスカー、カインドアイ、本当に、シンボルレイク族を、滅ぼしたのね…。」
私の声は誰にも届かない。
「あの猫が湖を枯らしたの?」
レインクラウドの尻尾に抱きつき、じゃれあっていた一匹の子猫が母親に尋ねた。レインクラウドは答えない。
「そうだよ。俺が人間に懐いたふりをしてこの土地を開発させるように仕向けた。」
カープウィスカーはにやりと笑い、人間、と知らない言葉を出した。
「レイク族、ロック族の猫よ、俺の話を聞け!俺は、カインドアイと共にこの土地に住む猫を支配する。そのためには俺が一番上に立つ必要があるが、この場所には二匹の族長がいる。俺はまず、その猫を殺し、二番目に邪魔となる副長も殺す。いいことに、一匹は自ら消えてくれたけどな。」
よく見ると、レイク族副長のレッドリーフは<二部族の椅子>に来ていなかった。連れ合いのレインクラウドが悲しみに顔を曇らせ、二匹の子猫を一層近くに引き寄せる。
「イブニングペルト、ブラックロック!俺と戦え!」
「族長を戦士名で呼ぶなんて!名を授けたシンボルレイク族に対する侮辱よ!」
看護猫のクリサンセマムペタルが尻尾を振り動かし、反論する。
「クリサンセマムペタル、シンボルレイク族とは、先祖の猫が俺達の扱いを簡単にするため思いついた、妄想なんだよ。看護猫がお告げを受けるとき、キツネの巣穴が縄張り内にある、とか、アナグマが侵入してきた、とか、部族猫達でも気づくような簡単なことだろう?あれは全て、夢だったんだよ。」
カープウィスカーの無礼な言葉に、クリサンセマムペタルは弟子のウェザーポーを近くに引き寄せる。
「カープウィスカー!お前の指導者は何を教えたんだ!」
「嫌いだよウォーターシャドウ。見習い、いや、子猫の時から。真面目ぶって正論ばかりをぶつけてくる。おまけに弟子のマァーラーフェザーと子を作るなんて!」
ウォーターシャドウは怯み、毛を逆立てながら後方に数歩下がった。兄は、いや、カープウィスカーは私の指導者を侮辱した。許せない。
カープウィスカーはカインドアイにちらと目配せすると、尻尾で乾いた地面とだんと叩いた。
「やめて!」
私は並んだイブニングレイクとブラックロックに飛び掛かろうとした雄猫の体に飛びつき、崖の淵まで転がった。何年も一緒に育った猫の事だ。襲い掛かる前の癖など知っているは当たり前だ。
「マァーラーフェザー、放せ!」
カープウィスカーを下にして強く唸ったが、流石は雄猫。簡単に蹴り飛ばされ、私の体は一族の仲間が見つめている塊の中に飛ばされた。
「本当に、シンボルレイク族が最後に残した言葉に従うしかないのかも。」
ベルポーが呟いた。見習い看護猫の隣には青っぽい靄が見えた。それは次第に猫の形と化し、ベルポーの体に自分の体を押しつけたように見えた。顔は心なしか苦しそうだった。
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投稿 by Murre Fri Apr 01, 2022 5:30 pm

「カインドアイ、もう行こう。部族猫はどうせここで飢え死にする。」
カープウィスカーは崖の一歩手前で立ち上がり、カインドアイを招く。
「この子達は行かせないわ!」
ライトポーが三匹の子猫の前に立ち、驚くカインドアイに向かって唸る。ウォーターシャドウとベルポーも加わる。
「ベルポー!」
カインドアイの声にベルポーが反論した。
「私はもう、あなたに従わないわ!あなたは私の指導者ではないし、あなたは一族を裏切った!」
「子供達を返して!」
「あなた達の罪はこの子達に負ってもらいましょう。さぞ、両親を恨むでしょうね!」
ベルポーは元指導者に制裁を下した。
「カインドアイ!」
カープウィスカーに呼ばれ、カインドアイは悔しそうに坂を下って行った。大勢相手に戦えないと判断したのだろう。
「イブニングレイク、ブラックロック。あんなこと言ってしまいましたが、よろしいですか?」
遠くなった背中を見てベルポーが族長たちに意見を求める。
二匹は顔を見合わせ、より年長のイブニングレイクが話し出した。
「この子達に罪はないが、あの二匹は逃げて、正しい罪を負わせることが出来なくなったしまった。よって、この子達に罪を負わせるか、あの二匹が死んで償うしかないのかもしれない。」
黒い族長も頷いた。
「私達がお乳をあげましょうか?」
レインクラウドが集団の中から声を上げ、ロック族の母猫、ビューティフルオーキッドに頷きかける。ロック族の母猫も了承して、三匹の子猫はベルポーに促され、塊の中心部に連れていかれた。三匹はおとなしくついていく。
「あ、あれ…!」
叫び声に近い声を上げたのは、ウォーター・フェザーを抜け出したドーンウィングだった。彼の視線の先には、夕日と、開発を進めている変わった形の怪物がいた。怪物たちはまだ稼働を続け、川の周りを削ったり、黒くどろどろ重い粒上のような液体を流し込んだりしていた。
崖から身を乗り出すように湖のあった場所を見ていると、二匹の猫の影が長く伸びた。
どろどろ纏わりつく泥に一歩一歩足を沈めながら歩いていた。二匹はべたべたとくっつき、周りを良く観察していない。
あっと思った。空気を読めなかったり、観察眼がよくなかったりするのは、カープウィスカーの昔からの悪い癖だ。
悲劇は突然に起こる。それは、いつだって…。
怪物を操縦する<シンボルレイク族に釣り糸を垂らす者達>は高いところに座り、小さな猫達の姿が目に入るわけがない。
怪物はベルトのように延びた足を回転させ、前方に動いた。崖からでもはっきりと分かった。あの裏切り者二匹は、怪物に轢かれたのだ。耳に全身の骨が折れる音が届きそうだ。
「子猫達に罪は無くなった。」
誰かが目を背けながら言った。
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投稿 by Murre Sat Apr 02, 2022 2:52 pm

「マァーラーフェザー!」
私の掛け声にマァーラーフェザーは応えない。指導者はカインドアイの子猫をじっと見つめている。
早く伝えたい。あの、私がこの土地で最後に見た夢は現実になったということを。太陽のいたずらに目が覚めた。怪物も二匹の猫も逆光により黒くなり、夢の黒いシルエットと重なった。猫は咥えられてはいなかったが、怪物という点では一致していたと考えられる。
ウォーターシャドウが近づいてきて、そっと言った。
「ウォーター・フェザーより強力な悪が滅びた。ライトポー、苦しいかもしれないが、カープウィスカーは君の兄なんだろう?」
私はウォーターシャドウの指摘にどうとも思わなかった。ただ、笑顔でこう返した。
「私の姉に、マァーラーフェザーとフェザーライトがいます。」
ウォーターシャドウは悲しそうに笑い、さっと鼻づらを押しつけて、マァーラーフェザーのもとへ向かった。
「ライトポー。」
群衆の中から細い声がした。
「インヴァイロメントポー!スィンポー!」
私の兄姉だ。二匹とも不安げな目つきをしている。
「ライトポー、ごめんね。あなたがいなくなって、ウォーター・フェザーに囚われるように冷たくなった自分が馬鹿馬鹿しくなったの。」
スィンポーが目を合わせずに言う。インヴァイロメントポーも言う。
「ドーンウィングが教えてくれたんだ。血のつながりと絆ほど大切な物はない、と。お父さんも、妹も、腹違いの兄弟も、大切にしなさい、と。」
「常識の範囲でね!」
近くを通ったロック族副長がネズミを咥えながらウインクした。
「インヴァイロメントポー、スィンポー!私、二匹と居れて幸せよ!」
二匹の温かさに触れ、涙が出てきた。
「皆、聞いてくれ!」
ブラックロックが少し高い岩に登り、二部族を呼んだ。
「この子達を、正式に迎え入れようと思う。六か月となって、きちんと指導すれば、両親と同じことは、過ちは、起こさないだろうから。」
横のイブニングレイクが威厳たっぷりに頷く。
「ほら、行こう。」
インヴァイロメントポーとスィンポーの間に座り、久しぶりの三匹の時間を心の奥底まで感じた。
「インディゴキット、アイスィクルキット、ハイドレンジアキットだ。」
マァーラーフェザーが紺色の目の雄猫を見て微笑んだ。隣のアイスィクルキットにはさっと会釈したように見えた。
「ハイドレンジアキット!」
ウォーターシャドウが涙目で嬉しそうに大きく叫んだ。
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投稿 by Murre Sun Apr 03, 2022 4:50 pm

「ブラック、お願いね。終わったら、あなたも好きなところに住むといいわ。」
私の声にブラックは反応し、ぴょこぴょこ近づいてきた、と思ったら真っ直ぐライトポーの頭に飛び乗った。
「ウミガラス、青い霧は消えてなかった。」
カラスはそう言い、数十匹の戦士猫の塊を導いて小さくなった。もう、会うことは無いだろう。
「マァーラーフェザー、行きましょう!」
兄姉と再会し、幸せそうなライトポーー今はライトフェザー(光の羽)だーが一足先に<二部族の椅子>のもっと上へ向かった。スィンアイ(薄い目)とインヴァイロメントリーフ(環境葉)はライトフェザーと間に挟んで私達に向けて尻尾を振った。
もう、部族という大きな集団で生活するのは限界だと、結論に至ったので、これからはばらばらに生活することになった。ブラックに導かれて別の場所へ向かったもの、<シンボルー>いいや、ニンゲンに家を借り、飼い猫として一生を送ることにしたもの、下ってくる川(今はもう一本だが)の上流へ行き、静かに、ひっそりと暮らすことにしたものー。最後の別れとして、二匹の族長は全員の子猫と見習い猫に戦士名を与え、これから生まれてくる子猫にも戦士名をつけるよう、合意した。
私達、母猫や元見習い猫、族長や部族猫に誇りを持っている者達は下ってくる川を更に遡り、ニンゲンが決して侵入してこない場所に向かっていった。
「ウォーターシャドウ、フェザーライト、行きましょう。」
黒っぽい雄猫は頷き、私達の子を招いた。
「フェザーライト。」
呼ばれた子猫はみーと鳴いた。
 


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投稿 by आकाश प्रकाश Mon Apr 04, 2022 9:08 am

完結凄い!お疲れ様でした!
ウォータークラウドが湖に沈んでいく場面、切なくて一番印象に残っています!!
遅くなるかもしれませんが、その場面のファンアート描いてもいいでしょうか?
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投稿 by Murre Mon Apr 04, 2022 9:41 am

スカイライト wrote:完結凄い!お疲れ様でした!
ウォータークラウドが湖に沈んでいく場面、切なくて一番印象に残っています!!
遅くなるかもしれませんが、その場面のファンアート描いてもいいでしょうか?

ありがとうございます!
勿論です!ウォータークラウドの場面が印象に残っていると言ってくださり、嬉しいです!遅くなっても全然大丈夫です!
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投稿 by आकाश प्रकाश Tue Apr 05, 2022 8:57 am

ファンアートです!間違っているところがあったらごめんなさいm(_ _;)m
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投稿 by Murre Tue Apr 05, 2022 9:02 am

スカイライト wrote:ファンアートです!間違っているところがあったらごめんなさいm(_ _;)m
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間違ってないです!綺麗✨
波の感じとか、空の映り具合とか、地面とか…!
スカイライトさん、流石ですね(ちょっと上からになってるのはみません)
描くの早いし…!羨望です!!✨
保存してもいいですか?(あれ、BBSって保存出来るっけ?)
私もいつかスカイライトさんの物語のファンアート描いてもいいですか?
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投稿 by आकाश प्रकाश Tue Apr 05, 2022 12:48 pm

保存良いですよ〜!
私の物語のファンアート?!勿論大丈夫です!
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