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雪の結晶[完結]

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投稿 by ペタルドロップ Fri Jul 19, 2019 7:45 am

~クリアポー~

「あ、いけない!」

周りが一気に暗くなったのを感じた。月が地平線に沈んだのだ。もうすぐ朝日が登ってくるだろう。

「もうキャンプへ帰らなきゃ」

二匹は名残惜しそうに頬をすり合わせてから、クリアポーは駆け出そうと構えると、トードフットが呼び止めた。

「明日からも会わない?」ためらいがちに尋ねたのはトードフットだった。

クリアポーは目を輝かせた。「そうしましょう!」

「じゃ、また明日の夜な」

「えぇ。この場所でね!」クリアポーも返した。




クリアポーが走ってキャンプに着いた頃には、こぼれたミルクのように白い光が地平線をふち取りはじめていた。

急がないと!一族が起き出してきて、なにか聞かれても困る。


クリアポーはこそこそと見習い部屋へすべり込んだ。
よかった、みんなまだ寝ているみたいだ。

とにかく今は寝床の上に丸くなって寝たい。夜じゅう外にいて、体が冷えきっている。

クリアポーは寝床に座ると、一晩中寝ていたかのように急いで毛づくろいをすませた。
そして横になると、一気に眠気の波にのまれていった。
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投稿 by アイルステラ Sat Jul 20, 2019 7:48 am

~メモリーポー~

 メモリーポーはゆっくりと伸びをした。今日は少し暖かい日で、日の光に照らされた身体がぽかぽかと暖まる。ふと隣を見ると、体を丸めて寝ているクリアポーの姿が目に入った。昨日は狩りのテストをしていたようなので、疲れているのだろう。

「おはよう、メモリーポー!」

溜め息をついたメモリーポーの耳に、元気な声が飛び込んできた。

「ポピーポー!」

「何で朝から溜め息なんてついてるのよ!久しぶりに暖かい日なのよ!!!楽しまなきゃ!!!」

ポピーポーは柔らかい光の中で思い切り伸びをした。

「それより、ポピーポー、今日の訓練どうするの?指導者のソーンクロー、グリーンコフになっちゃったでしょ?」

「ソーンクローが治るまで、私はシンダーポーと一緒にクラウドテイルに指導してもらうことになったの。」

ポピーポーはクラウドテイルを探すかのように空き地を見回す。メモリーポーもつられて見回すと、戦士部屋から白い猫が出て来た。

「あ!クラウドテイルが来たわ!またね、メモリーポー!!!」

「うん!また後で!!!」

ポピーポーは見習い部屋でまだ寝ているシンダーポーを脚でつついた。

「お寝坊さん!指導者が来ちゃうわよ!!!」

シンダーポーが欠伸をしながら部屋から出て来る。



 メモリーポーも自分の指導者を探そうと辺りを見回した。

「レインウィスカー!!!」

看護部屋から出て来た指導者にメモリーポーは駆け寄った。

「メモリーポー。今日は延期していた狩りのテストする。準備はできているか?」

暗い表情を浮かべていたレインウィスカーだったが、弟子が駆け寄って来るのを見て、少し表情を明るくした。

「ソーレルテイルですか?」

メモリーポーは看護部屋を見てそっと尋ねた。

「ああ。ちょっと治りが遅くて心配なんだ。しかも、バーチフォールに続いてホワイトウィングまでもがグリーンコフになったみたいで...」

看護部屋から苦しげな咳が聞こえてくる。レインウィスカーは、気持ちを切り替えるように頭を振った。メモリーポーを見つめる目は、指導者らしいしっかりした目に戻っている。

「俺はお前から隠れて後を追い掛ける。俺のことは気にせず、狩りに集中しろ。」

メモリーポーが頷いたのを確認して、レインウィスカーはさっとしっぽを降る。それを合図に、メモリーポーはさっと駆け出した。キャンプの出入口の茂みを通り抜ける直前、スパイダーレッグの話を熱心に聞いている様子のマウスポーが目に入る。メモリーポーはそのままキャンプの外に飛び出した。

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投稿 by アイルステラ Sun Jul 21, 2019 11:21 am

~メモリーポー~

 キャンプを出て少し走った所でメモリーポーは足を止めた。辺りを注意深く嗅ぎ、獲物の気配を感じ取る。今は枯れ葉の季節で獲物は少ないかもしれないが、一族のためにも、戦士になるためにも、たくさん獲物を捕まえたい。

湖の方向へ少し下った所で、ハタネズミの匂いを感知した。ハタネズミは、落ち葉を掻き回して食べ物を探していて、メモリーポーが忍び寄ることに全く気が付かない。

しっぽ2本分まで近付いた所で、ハタネズミがふと顔を上げた。風向きが変わったのだ。メモリーポーは慌てて前に飛び出した。前脚の間から逃げ出そうとするハタネズミを必死に押さえてとどめを刺した。

メモリーポーはほっとして大きな溜め息をついた。捕らえることはできたものの、今の様子は他の猫にあまり見られたくない。後ろから微かにレインウィスカーの香りが漂ってきた気がする。メモリーポーはハタネズミをハンの木の下に埋めて、次の獲物を探し始めた。


***************


 メモリーポーは満足げに鼻面を舐めた。メモリーポーは足元に置いていたリスをくわえ上げ、獲物を埋めるために穴を掘り始める。その時、後ろからレインウィスカーが声をかけてきた。

「もう十分だ。メモリーポー。お疲れ様。」

得意げに振り返ると、茂みの中からレインウィスカーが出て来た。レインウィスカーはメモリーポーを誇らしげに見つめている。

「お前の狩りの腕前は本当にすごいな!途中のハトを狙う姿勢も良かったが、特に最後のリスを捕まえた時の狙い方は完璧だったぞ!!!」

「ありがとうございます!!!」

「最初のハタネズミも風向きがたまたま変わっただけで、上手く忍び寄れていたな。」

「ということは...?」

期待して目を輝かせたメモリーポーにレインウィスカーが力強く頷きかける。

「ああ。合格だ!!!」

「やった~!」

「キャンプに帰ろう。獲物を運ぶの、手伝うよ。」

「はい!ありがとうございます!!!」

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投稿 by ペタルドロップ Mon Jul 22, 2019 7:34 pm

こんにちは、ペタルドロップです!

突然ですが、私情でしばらく投稿をお休みさせていただくことになります(汗)
毎日読んでくださっている方には本当に申し訳ないです...
8月2日再開予定となっています。
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投稿 by アイルステラ Mon Jul 22, 2019 7:35 pm

アイルステラです。

そこで、その休みの投稿の日数分を、休む前後の日にまとめて投稿することにしました!

雪の結晶はそろそろ終盤へ差し掛かってきています。
最後までお楽しみいただけると幸いです♪

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投稿 by アイルステラ Mon Jul 22, 2019 7:36 pm

~メモリーポー~

 2匹が肩を並べてキャンプに帰ってくると、ダストペルトの率いるパトロール隊がキャンプの出入口から出て来た。ダストペルトの後ろには、弟子のヘーゼルポーが付いていて、リス1匹とハタネズミ2匹をくわえて立っているメモリーポーを見て目を丸くした。

「メモリーポー!!!すごいわね!」

メモリーポーはありがとう、というように、しっぽをさっと振った。誇らしい気持ちでいっぱいだったメモリーポーだが、ヘーゼルポーの後ろから出て来た猫を見て、体を固くした。

ヘーゼルポーの後ろから出て来たのはモウルポーを連れたアッシュファーだ。メモリーポーとクリアポーにハニーフラワーを殺した疑いをかけられて、逆にクリアポーを一族の前で問い詰めた猫。アッシュファーはメモリーポーを見て目をぐっと細めたが、何も言わずにパトロールに出て行った。



 メモリーポーは獲物置き場に獲物を落とし、キャンプの出入口を見つめた。メモリーポーの頭には、アッシュファーの凍りつくような目線がまとわりついている。肩に優しく触れた温もりに顔を上げると、レインウィスカーが心配そうな目をして覗き込んできた。

「大丈夫か?何か心配事でも?」

「大丈夫です...」

小さく呟いたが、まだレインウィスカーが心配そうにしているのに気付き、微笑んでみせた。

「無理するなよ。俺はいつでもメモリーポーの味方だ。なんでも相談しろ。」

レインウィスカーはそう言って、メモリーポーの額をそっと舐め、戦士部屋の方へ歩いて行った。

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投稿 by ペタルドロップ Mon Jul 22, 2019 7:38 pm

~クリアポー~

クリアポーは目を覚ますと、周りには他の猫のいる気配がなかった。

イチイの低木の枝の隙間から、強い日の光が部屋に入り込んでいた。外からは、一族の活動する活発な物音が聞こえてくる。

クリアポーはあわてて体を起こした。大寝坊だわ!

毎晩トードフットと会っていて眠いとはいえ、ここまで寝坊したことはなかった。

クリアポーは寝床のコケにつまづきながら、あたふたと出入口を抜けて空き地に出た。


外に出ると、日差しの眩しさに目を細めた。くぼ地には影という影がない。

地面に半分埋まった岩のそばで、クラウドテイルとブライトハートがグルーミングをしあっている。

そして、その岩の上では、暖かい日差しをうけて、うとうととひなたぼっこをしているマウスファーとロングテイルがいた。マウスファーが、生ぬるい長老部屋から出て、足を伸ばしに行きたい、とでも言ったのだろう。


ハイレッジのすぐ下では、ブランブルクローとブラクンファーが、なにやら話をしている。耳を澄ませてみると、最近戦士部屋が狭くなってきたから、どうにかして広げよう、と言っているのが聞こえてきた。

今、見習いは九匹もいる。もうじき見習い部屋で寝るようになるだろう、ブランブルクローの子猫たちもいる。

もしその子猫たちが見習いになるとき私たちもまだ見習いだったら、見習い部屋には十二匹の猫が寝ることになるのね......。その猫たちがみんな戦士になるとすると......多いわ!


考えにふけっているといきなり、茶色と黒の毛のかたまりがクリアポーの足元に転がってきた。

茶色い子猫が、黒い子猫のくわえているコケを、無理やりはぎとって言った。「はい!これでぼくのかち!」

灰色の子猫が、二匹に遅れてかけ足でやってきた。「ファーンクラウドがぼくらのことさがしてるよ」

その雄の子猫がすぐ近くにいるクリアポーに気づくと、驚いたようにしっぽをぴんと立てた。
クリアポーは、その深い青色の目を見て思った。あれ、この子、目の見えない子だっけ...?

そう考えていると、しっぽになにかがぶつかってきたのを感じた。

首を後ろにまわすと、左右に揺れる自分のしっぽを手で捕まえようとする、子猫たちがいた。
その二匹の子猫はコケで遊ぶのはもうやめて、クリアポーのしっぽの方に興味を持ち始めたようだ。

まだ小さな子猫だが、かみつかれるかもしれないとひやひやしながら、逃げるようにしっぽをあちこちに動かした。
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投稿 by ペタルドロップ Mon Jul 22, 2019 7:39 pm

~クリアポー~

そうこうしていると、近くで悲鳴があがった。灰色の雌猫が走ってくるのが見える。

「ちょっと、あなたたち!なんでこんな猫なんかと遊んでるのよ!」ファーンクラウドがものすごい剣幕で切り出した。「この猫は、部族の猫を殺したのよ!」

ファーンクラウドは、怒りでぎらついた目をクリアポーに向けた。

クリアポーはファーンクラウドの剣幕にひるんだ。私はハニーフラワーを殺したりしてないわ!と言いたいところだが、言っても無駄だとわかっていた。

ファーンクラウドは、驚いて目を丸くしている子猫たちを連れて、保育部屋へ入っていった。

クリアポーは寂しくなった。今、一族にとって私の存在は、危険とされているんだ......。


ちょうど、夜明けのパトロールに行っていた一団がイバラのトンネルをするりと抜けて、帰ってきた......。違う、昼間のパトロールだわ!

それに気がつき、上を見上げた。いつの間にか、太陽はもう真上にきている。きっと、ストームファーに怒られるんだろうな......。

ちょうど今、その猫がクリアポーの近くまでやってきた。

「お前、いつまでそこでぼんやりしてるつもりだ?たくさん寝たんだろ?今日も朝から戦う訓練をしようと思ってたんだが」ストームファーは、あきれたようにしっぽをひゅんと振った。

「ごめんなさい。昨日の戦いの訓練で疲れちゃったみたいで...。言い訳なのは分かってます」クリアポーは、トードフットと夜な夜な会っているのをストームファーにさとられやしないか、びくびくしながら返事を待った。

「......まあ、いいだろう。あともう少しで日が傾き始めるだろうから、今からすぐに訓練のくぼ地に行ってろ。俺はあとから追いつく」ストームファーは有無を言わせない口調で言った。

「食事は...?」昨日の朝以来、獲物を食べていないのでお腹がすいている。

「帰ってからだ」
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投稿 by アイルステラ Mon Jul 22, 2019 7:40 pm

~メモリーポー~

 メモリーポーと指導者のレインウィスカーが戦いの訓練を終えると、もう太陽は空の一番高いところを過ぎていた。ダストペルトとヘーゼルポーは既に戦いの訓練を終えて、一足先にキャンプへ戻っている。訓練場の奥では、少し前に来たクリアポーとストームファーがまだ戦いの訓練をしている。

「帰り道、獲物をちょっと捕まえようか。」

レインウィスカーが息を切らせているメモリーポーに話しかけた。

「わかりました!」

2匹は落ち葉の厚く積もった地面を嗅ぎ始めた。枯れ葉の季節の今、獲物の数は減り、捕まえた獲物も痩せたものばかりになっている。メモリーポーは倒木の横で虫をつついているクロウタドリを見つけた。メモリーポーはゆっくりと忍び寄り、あとふた跳びのところまで近付く。クロウタドリは全く気付いていないようで、次の虫を探し始めた。

メモリーポーが一歩踏み出した瞬間、頭上からリスの警戒の声が響いた。クロウタドリは慌てて頭を上げ、メモリーポーに気付くと、逆の方向に飛び立つ。メモリーポーは苛立たしげに唸り、クロウタドリに飛び付いた。しかし、クロウタドリはメモリーポーの脚をすり抜けて、茂みに向かって一直線に飛んでいく。

メモリーポーは地面にどすんと着地した。そして、飛んでいくクロウタドリを睨んだが、どうしようもない。その時、クロウタドリの飛んでいく先の茂みからレインウィスカーが飛び出した。クロウタドリは驚きの鳴き声をあげるが、レインウィスカーの脚の間に飛び込んでしまった。レインウィスカーはさっととどめを刺し、メモリーポーに視線を向ける。

「メモリーポーが獲物を逃すなんて珍しいな。」

「レインウィスカー!!!いつからいたんですか!?」

「メモリーポーがクロウタドリを狙い始めたのが見えたんだ。あそこはちょっと開けてただろ?だから、獲物に見つかる可能性が高かったんだ。メモリーポーが取り逃すってことはないとは思ったけど一応な。」

レインウィスカーはそう言って、メモリーポーにウインクをした。

「そしたら、私が上手い具合に取り逃しちゃったんですね...」

メモリーポーはそう言い、恨めしげに木の上のリスを見上げた。リスはあざ笑うかのように、木の一番上から2匹を見下ろしている。あそこまで上にいられると、捕まえることはできない。

「気にするな。捕まえたんだから。」

レインウィスカーはメモリーポーの肩にぽんとしっぽを乗せた。

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投稿 by アイルステラ Mon Jul 22, 2019 7:41 pm

~メモリーポー~

 2匹がキャンプに戻ってくると、一族のほとんどがグルーミングをしていた。2匹が獲物置き場に獲物を落とすと、ブラクンファーが近付いて来た。

「今年の枯れ葉の季節は獲物がいないわけではないから助かるな。」

「一族が飢えで苦しむ期間は短くなりそうですね。」

レインウィスカーがブラクンファーに頷きながら答える。メモリーポーは2匹が話しているのを横で聞いていた。ブラクンファーはハトを取って看護部屋に向かう。看護部屋の前では連れ合いが来るのをソーレルテイルが待っている。ソーレルテイルはだいぶ顔色が良さそうだ。あと数日で戦士部屋に戻るだろう。

メモリーポーは獲物の山からトガリネズミを取り、少し離れた岩の横で獲物を食べ始める。ふと顔を上げると、メモリーポーの横の岩の上で日向ぼっこをしていたマウスファーがロングテイルをしっぽで導きながら降りてくるところだった。メモリーポーはぱっと立ち上がり、長老達に駆け寄る。

「マウスファー、ロングテイル!何か食べ物を持って行きましょうか?」

「ああ、メモリーポーだね。私は大丈夫だよ。ロングテイルは?」

年老いた雌猫はそう言って、目の見えない雄猫を振り返る。

「少しお腹が空いたな。何かおいしそうな獲物をお願いしていいか?」

「分かりました!すぐ持っていきますね!」

メモリーポーはそう答え、身を翻して獲物置き場へと走る。そして、ロングテイルのためにハタネズミを選び取ると、長老部屋へくわえていった。



「ありがとう、お入り。」

メモリーポーが入口で声をかける前に、中からロングテイルの声が聞こえてきた。部屋に足を踏み入れると、ロングテイルが見えない目をこちらに向けている。

「おいしそうなハタネズミだね。この時期にしてはよく太ってる。」

毛繕いをしていたマウスファーがちらっとメモリーポーを見て呟く。その言葉にロングテイルが小さく笑った。

「マウスファーも一緒に食べるか?私達2匹分は充分ありそうだ。」

メモリーポーは、長老達の会話を聞きながら部屋を出た。食べかけのトガリネズミの元へ戻ろうとすると、その獲物の隣で食事をしているレインウィスカーが目に入る。メモリーポーが駆け寄ると、お帰り、と言うかのようにレインウィスカーがしっぽをさっと振った。



 メモリーポーがトガリネズミを食べ終わり、毛繕いをしていると、レインウィスカーが欠伸をしながらメモリーポーの背中に頭を乗せた。メモリーポーもふわっと欠伸をし、目を閉じる。

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投稿 by ペタルドロップ Mon Jul 22, 2019 7:42 pm

~クリアポー~

「サンダー族のみんな、ハイレッジの下に集まれ。一族の集会を始めるぞ!」

森に夕闇がせまっている今、空き地にいるクリアポーは、獲物を前足の間にはさんでうとうとしていた。いきなり一族の全員を集めて、族長はなにを言い出すんだろう...?

一族の長が崩れた岩を駆けおりてきた。少し強くなってきている風になびいているその毛は、夕日に照らされて、一層鮮やかになった炎色をしている。

なんだなんだ?と戦士、見習い、長老、母猫、子猫みんながハイレッジまで集まっていった。そして、クリアポーも獲物をほっぽり出してその集団の端っこに加わった。

ソーレルテイルが看護部屋から顔を出した。顔色は日に日に良くなっては来ているが、まだ病気の猫特有の匂いがしている。ブラクンファーが心配そうに駆け寄って行った。


ファイヤスターは、くぼ地にいる猫が全員空き地に集まったことを確認すると、一息ついて辛そうに話し始めた。
「知っているとは思うが、今このくぼ地にはグリーンコフで寝込んでいる猫が四匹もいる」

集まった猫たちは同情の声をあげた。クラウドテイルとブライトハートは、気もそぞろになっている。

「そこで、他にも感染者がいないかどうか、リーフプールに診察してもらおうと思う」

そういうやいなや、リーフプールが族長の部屋から出てきた。グリーンコフの予防に効く、ヨモギギクをくわえている。ここからでもにおいがするほど、匂いが強い。

「今から一匹ずつ診ます。キャンプにいる猫は、私が見終わるまで一歩もキャンプから出ないでください」

「え、狩りにも行かせてくれないの?」ハニーポーは驚いたように聞いてから、あわてたようにしっぽで口をふさいだ。

「あぁ、これ以上感染者を出されても困るだろ」ブランブルクローは、おかしそうにひげをぴくぴくさせながら答えた。

ファイヤスターはそれに同意するようにうなずくと、集会の終わりを告げた。

私は看護部屋に行って様子を見させてくれることはないだろう。病気の猫たちの様子を知りたかったので、クリアポーはリーフプールの心を読み取ろうと思った。


自分の診察の順番が回ってきたとき、目を合わせて心を探った。


────リーフプールの心には不安が渦巻いていた。そのうちグリーンコフで誰かが死んでしまうのではないか、と。


そう考えていると、リーフプールは一言もしゃべらずにクリアポーの体を見始めた。
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投稿 by シャイニングアイ Tue Jul 23, 2019 7:03 am

うまくないし設定的にもおかしいと思いますが
せっかく描いてみたのでどうぞ
クリアポーです雪の結晶[完結]                                      - Page 5 E1651210[/url]
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所在地 : 星ノ塔の最下層(オリ部族)

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投稿 by ペタルドロップ Tue Jul 23, 2019 8:37 am

シャイニングアイs!!! イラストをありがとうございます!!!!!

私たちの作品の絵を誰かが書いてくださるとは思ってもみなかったので、本っ当に嬉しいです!!!!!
特に目のところが私は好きです♡

小説の方はしばらくお休みとなりますが、これからもよろしくお願いしますm(_ _)m 本当にありがとうございます♪
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投稿 by アイルステラ Fri Aug 02, 2019 6:54 pm

~メモリーポー~

 「これで集会を終わる。リーフプール、頼んだぞ。」

リーフプールが頷いたのを確認して、ファイヤスターは族長の部屋に入っていった。

「ブランブルクロー、今日のパトロール隊のメンバーは誰ですか?その猫達から先に診た方がいいですよね?」

「ありがとうございます、助かります。今日のメンバーは───」

メモリーポーは一族のやり取りをぼんやりと聞いていた。空き地の空気が重苦しく感じる。空を見上げると、夕闇の色に染まった分厚い雲がすごいスピードで流れていた。強い風に乗って、雨が降ってきそうな気配がするが、空気が重い理由はそれだけではないような気がする。



 「メモリーポー!」

名前を呼ばれ、びくっとすると、目の前にリーフプールが立っていた。

「ちょっと!何回呼んだと思ってるの!まだ診断しなきゃいけない猫がたくさんいるんだから、ぼーっとしてないで!ただでさえ今は働ける猫が少なくなっているのに!」

リーフプールがいらいらとしっぽで地面を叩いている。

「すみません...」

「リーフプール、そんなにかりかりしないの。」

後ろから雌猫の声が聞こえた。濃いショウガ色の毛、スクワーレルフライトだ。

「時間がないのよ。薬草も全く足らないの。」

リーフプールはメモリーポーの身体を嗅ぎながら、小声で言った。

「私が採って来るわ。何が足らないの?」

スクワーレルフライトに言われ、リーフプールはようやく顔を上げた。リーフプールの目には悲しさと悔しさが入り混じっている。

「霜のせいでほとんどやられてしまっていて...イヌハッカはもう底を尽きそうだし、グリーンコフを予防するヨモギギクも今母猫と子猫と長老にあげたら無くなってしまうの。」

「別の部族からイヌハッカを分けてもらったらどう?」

スクワーレルフライトが尋ねる。

「多分無理よ...他の部族でもグリーンコフとホワイトコフが流行ってるらしくて...他の部族にイヌハッカを分けられる余裕はないわ。」

「でも、それでサンダー族の猫が死んでしまったらどうするのよ?」

スクワーレルフライトが少し語気を強め言った。

「とりあえず、今あるイヌハッカでなんとかする...」

リーフプールが俯きながら言った。



 「メモリーポー、大丈夫よ。でも、気分が悪くなったらすぐ看護部屋に来なさいね。」

「はい。ありがとうございました。」

リーフプールが軽く頷いて歩き出した。その時、見習い部屋からブライトハートが出て来て、リーフプールに合図した。リーフプールはさっと駆け出す。ブライトハートと二言三言交わしてから、リーフプールは見習い部屋に入って行った。

リーフプールの診察を受け終えたパトロール隊がイバラの茂みから出て行く。ブラクンファーが、連れ合いのソーレルテイルの肩をさっと舐めてから、パトロール隊を追ってキャンプを出て行った。まだグリーンコフが治りきっていないソーレルテイルは、看護部屋の前でキャンプを眺めている。

クラウドテイルが娘のホワイトウィングの様子を見に行く。ホワイトウィングは辛そうだが、クラウドテイルを見て少しだけ嬉しそうにした。

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投稿 by アイルステラ Fri Aug 02, 2019 6:56 pm

~メモリーポー~

「ヘーゼルポー、あなたは大丈夫なの!?気分悪くない?」

メモリーポーの耳にデイジーの言葉が聞こえてきた。この心配性な母猫は、キャンプでグリーンコフが流行り始めたと聞き、子供達が心配になったのだろう。

「大丈夫だってば!そんなに子供扱いしないで!!!私はもう見習いよ!」

ヘーゼルポーは強く耳を舐められ、母親をうっとうしそうに振り払う。

「そう?大丈夫ならいいんだけど...」

それでも心配でたまらないと言うように、デイジーは娘の身体をそっと嗅いだ。その時風向きが変わり、2匹の声は聞こえなくなってしまったが、メモリーポーには2匹がまだ喋っているのが見える。

ぼんやりとその様子を眺めていると、レインウィスカーが不意に近付いて来て、メモリーポーの隣に座った。メモリーポーがそっと身体を寄せると、レインウィスカーはメモリーポーにくっついて座り直した。

「どうかしたのか?」

レインウィスカーが小声で聞いてきた。

「...わかりません...」

「そっか。」

レインウィスカーは特に何も言わず、メモリーポーの毛を舐め始めた。リズミカルに舐められていると、心の中で最近少しずつ大きくなっていた、そして、デイジーとヘーゼルポーを見て強く感じた穴のような物が徐々に塞がれていく気がした。

「お母さんに会いたいです...」

メモリーポーはぽつりと呟いた。レインウィスカーは一瞬動きを止めたが、メモリーポーの耳の後ろを優しく舐めた。メモリーポーはレインウィスカーの毛に顔を埋めた。


***************


 「モウルポー!!!どうしたの!?」

悲鳴に近いソーレルテイルの叫び声でメモリーポーは少し顔を上げた。レインウィスカーの体温で温まっていた胸の毛に冷たい風が吹きつけ、メモリーポーは身震いした。ソーレルテイルは、見習い部屋からリーフプールと一緒に出て来たモウルポーに駆け寄った。

「ソーレルテイル。看護部屋に戻って。」

リーフプールがソーレルテイルを看護部屋の方向に鼻でつついた。ソーレルテイルはいらいらとしっぽを振ったが、厳しい表情を崩さないリーフプールを見て、看護部屋に戻った。

「レインウィスカー。」

看護部屋の方を見ていた2匹は後ろから声をかけられて振り返った。ショウガ色の斑点のある雌猫、ブライトハートが2匹の近くに立っている。

「リーフプールから言われたの。モウルポーを看護部屋に連れて行く間に、まだ診察が終わってない猫を診てほしい、って。」

「是非、お願いします。」

ブライトハートは頷いて、診察を始めた。レインウィスカーがブライトハートに診察してもらっている間に、メモリーポーは看護部屋に向かった。

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雪の結晶[完結]                                      - Page 5 Empty Re: 雪の結晶[完結]

投稿 by アイルステラ Fri Aug 02, 2019 6:56 pm

~メモリーポー~

 そっと部屋を覗くと、モウルポーの周りを落ち着きなく歩き回るソーレルテイルが目に入った。

「メモリーポー。そこで何をしているの?」

リーフプールがモウルポーの匂いを嗅ぎながら、顔を上げずに問い掛けた。

「えっと...ごめんなさい...モウルポーが気になって...」

「メモリーポー。僕は大丈夫だよ。」

申し訳なさそうに答えたメモリーポーに、モウルポーが声をかける。リーフプールも少し間を開けてから頷いた。

「モウルポーはホワイトコフにかかってる。でも、そこまでひどいわけではないわ。」

「本当に!?大丈夫なの?」

ソーレルテイルが心配そうにモウルポーの肩をしっぽでなでた。

「大丈夫よ。症状は軽いもの。」

「そんなに心配しないで。気分も悪くないし。」

リーフプールとモウルポーはソーレルテイルを安心させた。メモリーポーもそれを見てほっとした。モウルポー自身が言う通り、そこまで悪そうに見えない。



「でも、ソーレルテイル。あなたはモウルポーにあまり近付かないでね。」

反論しようと口を開きかけたソーレルテイルを遮って、リーフプールは続ける。

「いくら軽いとは言っても、モウルポーはホワイトコフなの。今免疫力が落ちてるんだから、あなたからグリーンコフをもらったらひとたまりもないわ。モウルポーのためだと思って、出来るだけ近付かないようにして。」

ソーレルテイルは心配そうにモウルポーをちらっと見たが、諦めたように頷いた。

「分かったわ。」

リーフプールは表情を和らげて、ソーレルテイルの肩にしっぽで触れた。

「あなただって治りかけているとはいえ、グリーンコフなんだから...大人しく寝てなきゃ身体に悪いわ。」

「あら、私が大人しくしてることなんてあったかしら?」

ソーレルテイルがいたずらっぽく目を輝かせて言った。

「何が何でも大人しくしてもらわないと!」



 2匹が楽しそうに話しているのを見て、モウルポーがそっとメモリーポーに囁く。

「今のうちに帰った方がいいよ。メモリーポーに移しちゃったら嫌だから。それに、メモリーポーがまだいるのに気付いたら、リーフプール、あんまりいい顔しないと思う。」

「そうね。もう帰るわ。お大事にね。」

「うん。来てくれてありがとう。」

ちらっと見ると、リーフプールとソーレルテイルはまだ楽しそうに喋っている。メモリーポーがそっとしっぽを振ると、モウルポーも振り返した。メモリーポーは外に出て、身体を震わせる。外は枯れ葉の季節の到来を告げるかのようなひんやりした風だ。

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投稿 by ペタルドロップ Fri Aug 02, 2019 6:58 pm

~クリアポー~

もうみんな寝たようだ。

そろそろ行こうか、と寝静まった中、一匹立ち上がったクリアポーは、イチイの枝をくぐって外に出た。

夜気に包まれた空き地に出た途端、くぼ地に吹き降りてきた風に吹きつけられる。クリアポーは寒さに身を震わせた。

地面には霜が降り、寝床で温まっていた足の裏もすぐに冷えてしまった。

いつにも増して、今日は寒い。おまけに空気もじめじめしていて重苦しい。

ここから寒いなか境界線まで歩くと考えると気が引ける。だが、歩けばトードフットと会えると思えば、足は自然に用を足す方角に向かっていた。

クリアポーは、用を足すところのトンネルを進み、着く手前で横に逸れた。
そうすれば誰にも気付かれずにキャンプを出れることを、前に知ったのだ。

ここから出て行けば、わざわざキャンプの見張りの猫の前を通らずにすむ。

秘密の出入り口がこんなところにあっただなんて!見つけたときは安堵したものだ。


と思ったのもつかの間、安心しきって歩いていると前方からサンダー族の猫の匂いがした────こっちに向かって来てる!────一匹だけのようだ。

外で何かをしていてキャンプに戻ってくるところなのだろう。誰?見つからないようにしなきゃ!

あわててクリアポーは隠れられそうなところを必死に探し、モチノキの根っこの陰に潜んだ。

が、隠れるときにガサゴソとシダの茂みが音を立てた。

しまった!猫の足音が途切れ、立ち止まったのがわかる。ばれちゃったようね......。

「そこにいるのは誰?」雌猫のくぐもった声が聞こえる。

リーフプール!……面倒なことになりそうだ。でも仕方ない。

「私です、リーフプール」クリアポーは意を決して、モチノキの根元の後ろから姿を現した。
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投稿 by ペタルドロップ Fri Aug 02, 2019 6:58 pm

~クリアポー~

「……あなたね。いったいキャンプの外で何をしているの?」リーフプールがくわえていたものを地面に落として、強ばった口調で聞いた。

リーフプールから不安な匂いが嗅ぎとれた。見つかったのはこっちの方なのに......。クリアポーは不思議に思った。

「そちらこそ、何をされていたのですか?」クリアポーは逆に質問で返す。

「......私はイヌハッカを取りに行っていたところよ。ホワイトウィングのグリーンコフが悪化したから」リーフプールは、クリアポーが質問で返したことには触れずに答えた。

「ほとんど霜でやられてしまっていたけど、少し掘り起こして芽を取ったの」リーフプールはうつむいて、地面に置いてある数少ない薬草を悲しげに見た。「でも、これも全部ホワイトウィングにあげてしまうから、イヌハッカはあとほんの少しだけになってしまうわ......」

「あなたはどこに行くの?こんな遅くに一匹でキャンプを出る猫なんて、そうそういないわ」リーフプールは怪しげにクリアポーを見た。

クリアポーはなんて答えればいいのか、わからなかった。なんたって、本当のことを言ったら一族を追放されてしまうかもしれないから。

「そんなこと聞いて、何になるのですか?もしかして、ハニーフラワーの件、あなたも私を疑っているのですか?」クリアポーは、看護猫が踵を返してキャンプに戻ってくれることを祈りながら、強く聞いた。

けれど、クリアポーはかたずを飲んで返事を待ってもリーフプールはなかなか口を開こうとしなかった。なんとしてでも、私がなにをしにいくつもりか聞きだそうとしているのだ。

クリアポーはとっさに頭を働かせた。「......外の空気を吸いに来ただけです、リーフプール。ついでに一族の獲物も取ってこようと思っていたんです」

リーフプールは表情ひとつ変えずにクリアポーをじっと見た。今言ったことが本当かどうか、考えているのだろう。

キャンプにいる猫たちを起こしてしまいそうなくらい、自分の鼓動が大きく感じられる。

しばらくすると雌猫はクリアポーに頷いて、気をつけて、とだけ言うとキャンプに帰っていった。そこでやっとクリアポーは解放された。


リーフプールと話している間は気づかなかったが、クリアポーは別れたあとそこに残るほのかに甘い香りを感じ取った。

この香りは何だろう……。なんだか、懐かしい香り
────ハニーフラワー?────
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投稿 by ペタルドロップ Fri Aug 02, 2019 6:59 pm

~クリアポー~

クリアポーはリーフプールにつけられてるといけないと思い、湖岸の方を通ってシャドウ族との境界線に向かった。こうすればリーフプールが追いかけてきても撒けるはず。

落ち合う場所には、すでにシャドウ族の猫は来ていた。「やあクリアポー。遅かったね」

「ごめんね。出かけてるところ見られちゃったから、遠回りしてこなきゃいけなかったの」謝りながら、クリアポーはトードフットに自分の頬をすり寄せた。

「いいよ。それより、何匹に見られたんだ?」トードフットがたずねる。

「いいえ、リーフプールだけよ。看護猫の。何とかごまかしておいたわ」安心させるように、トードフットに身を寄せる。

トードフットは幸せそうに低くのどを鳴らす。「それならよかった」

二匹は互いにしっぽをからめ合った。

静まりわたる森の中、木々のこずえの擦れる音と、二匹ののどを鳴らす音だけが響く。

トードフットが、クリアポーの頭に自分の頬をのせ、ぽつりとつぶやいた。「ずっとこのままでいれたらいいのにな」

クリアポーが顔を上げた。「部族が同じだったら夜に人目を避けて会わずに済むはずなのにね......」

思わずため息をつく。「あなたがサンダー族の猫だったらよかったのに」

「俺もおまえがシャドウ族の猫だったらいいのにって思ってるよ......」目が寂しげにうつろになる。

「......そもそも、部族なんてなければ、こんなことしなくてもいいのよ」

クリアポーがそう言ったそのとき、鼻の上にポツンっと水が落ちてきた。「雨?」

同時に二匹は空を見上げた。それは星の輝くいつもの空ではなく、黒い雨雲のうずまいた、不吉なことを予兆するような空だった。

また一粒、そして二粒と雨が降ってくると、クリアポーは言った。

「このまま雨がひどくなるとびしょ濡れになっちゃうわ」

トードフットは耳に落ちてきた大粒の雨を振り払った。「とりあえず、もう今日は帰ったほうがよさそうだな......」

「そうね......。じゃあ、また明日ね」

「明日な」




もう少し一緒にいれたらよかったのに。雨なんて降らなければよかったのに。リーフプールと会わなかったら......。

クリアポーはぶつくさ文句を言いながら、寝床でぐるぐる回った。キャンプに向かう最中、外は雨がひどくなってきてしまったので、体じゅうびしょ濡れだ。

落ち着いてコケの上に丸くなると、メモリーポーのすやすや息をたてて寝る音が聞こえてきた。


***************


「モウルポー!大丈夫?!」

ソーレルテイルの悲鳴に近い大声で今日は目覚めた。
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投稿 by ペタルドロップ Fri Aug 02, 2019 7:10 pm

こんばんは! 戻ってきました、ペタルドロップです!

BBSに来るのも久しぶりなのですが、過疎化しているのを見て驚きました(笑)

これからは毎日投稿する予定でいます! ご迷惑をおかけしました(汗)

物語はクライマックスに近づいてきています!
最後までお楽しみください!
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投稿 by アイルステラ Fri Aug 02, 2019 7:12 pm

お久しぶりです!
アイルステラです!!!

私用が終わったので、今日からまたペタルドロップと共に、毎日 "雪の結晶" を投稿しようと思っています♪
物語の最後に向けて、動き出している私達を暖かい目で見守っていただけると幸いです。

1度コメントをしたことがある方も、ない方も、コメントをお待ちしております!!!今後ともよろしくお願いします!

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投稿 by アイルステラ Sat Aug 03, 2019 8:14 am

~メモリーポー~

「モウルポー、大丈夫!?」

まだ日が昇る前のサンダー族のキャンプに雌猫の声が響き渡る。メモリーポーは飛び起きた。クリアポーが隣りでもぞもぞと動き、眠そうな顔を上げたが、メモリーポーはクリアポーに構わず、見習い部屋を飛び出した。その瞬間、メモリーポーは突風と大粒の雨に打たれ、思わず立ち止まって脚を踏ん張る。

「なんてひどい嵐なの...」

メモリーポーはそう呟いた。

族長の部屋からファイヤスターが顔を覗かせ、悪天候に顔をしかめる。戦士部屋から出て行こうとしたブランブルクローを後ろからブラクンファーが突き飛ばし、看護部屋へと走る。ブランブルクローが不満気な声をあげたが、ブラクンファーは気づかなかったようだ。

メモリーポーもブラクンファーの後を追い、看護部屋に飛び込んだ。すると、ぼさぼさの毛の塊を必死に舐めているソーレルテイルが目に入る。ブラクンファーがはっと息を呑み、連れ合いのそばに駆け寄る。

「モウルポー...?」

メモリーポーは微かに上下している毛の塊がモウルポーだと受け入れられなかった。一晩の間にモウルポーの病状はひどく悪化している。

メモリーポーとブラクンファーの後から、サンダー族の猫達が出入口に少しずつ集まってきた。モウルポーの姉妹は、慌てて弟の元に駆け寄り、他の猫達は心配そうにその様子を眺めている。

リーフプールは部屋の隅の壁の隙間に前足を差し込み、中の薬草を取り出している。しかし、その薬草の中にイヌハッカが無いことに気付き、メモリーポーの背中に震えが走った。リーフプールはやっぱり、というかの様に溜め息をついた。それでも、頭を振り、薬草を掻き分け、2種類の薬草を取り出す。



モウルポーを励ますように舐めているハニーポー達を、リーフプールが押し退ける。

「ヨモギギクとフキタンポポよ。イヌハッカは...夜体調が急変したホワイトウィングに全て使ってしまったの...」

その時、ファイヤスターが入口に集まっている猫達を掻き分けながら、看護部屋に入って来た。猫達は、雨に濡れて、毛の色が濃くなっている。族長はぐったりしたモウルポーを見て目を見開いた。それでも、冷静に看護猫を見つめる。

「リーフプール、何か必要な物はあるか?」

リーフプールはモウルポーから目を離さずに小さく答える。

「イヌハッカが必要よ。今すぐに。でないと、モウルポーはもたないわ。」

ソーレルテイルが悲鳴をあげ、ブラクンファーは必死に連れ合いを落ち着かせようとした。ソーレルテイルの悲鳴をかき消すかのように、大きな雷が鳴り響く。猫達はびくっと身体を引きつらせた。

「分かった。誰かに取りに行かせよう。それまで頑張ってくれ。」

ファイヤスターは心配そうに空き地を振り返る。この悪天候の中、戦士を送り出すのは不安なのだろう。キャンプは大雨のせいで水浸しになっている。

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投稿 by アイルステラ Sun Aug 04, 2019 6:34 pm

~メモリーポー~

「ファイヤスター、俺が取りに行きます。」

ブラクンファーが声をあげた。ソーレルテイルが涙でいっぱいの目で連れ合いを見つめる。

「待ってください!俺が行きます。」

メモリーポーの指導者、レインウィスカーが他の猫達を押し退けてファイヤスターの前に立った。

「行かせてください。ソーレルテイルは俺の妹です。妹の息子は俺が助けます。」

「いや、でも、レインウィスカー───」

反論しかけたブラクンファーをレインウィスカーが遮る。

「この天気だと、キャンプの外に出るのは危険です。それに、先輩には家族の傍にいて欲しいんです。」

ファイヤスターが目を閉じて考える。レインウィスカーの言葉を裏付けるかのように、再び大きな雷が鳴り響く。その青白い光に照らされたモウルポーは、とても小さく見えた。ファイヤスターがゆっくりと目を開く。

「レインウィスカー。イヌハッカを取ってきてもらえるか?」

「はい。」

メモリーポーは指導者の目に強い決意の色を見た。

「危険だと思ったらすぐ戻って来い。」

そう声をかけてきたファイヤスターにしっかり頷くと、レインウィスカーはモウルポーに近寄り、背中にそっと鼻をこすりつけた。そして、ソーレルテイルと顔をこすりあわせると、ブラクンファーに向き直る。

「ソーレルテイルをお願いします。」

ブラクンファーが頷く。レインウィスカーはメモリーポーの頭をさっと舐め、踵を返すと、看護部屋から出て行った。メモリーポーは、ファイヤスターが少し目を丸くしたのには気付かないふりをした。

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投稿 by アイルステラ Mon Aug 05, 2019 5:51 pm

~メモリーポー~

「メモリーポー、どこへ行くんだ?」

ファイヤスターの少し緊張した声に、看護部屋を出ようとしていたメモリーポーは振り返る。まだ、レインウィスカーがを嵐の中へ出て行って5秒と経っていない。それでも、メモリーポーは、レインウィスカーの後を追いかけなければならない、と強く感じたのだ。

「ファイヤスター。私にもイヌハッカを取りに行かせてください。」

「だめだ。見習いには危険すぎる。」

メモリーポーは、即答したファイヤスターの緑色の目を見据える。ファイヤスターは厳しい表情を崩さない。その瞳には、娘を心配する父親の色がありありと浮かんでいる。

「お願いです。行かせてください。」

副長はそっと看護部屋を出て行き、その他の猫は息を殺して2匹を見守っている。看護部屋の中には細いモウルポーの息遣いだけが響いている。何時間も何日も経っているように感じた。ついにファイヤスターが目を逸らす。

「お前の頑固さはサンドストームそっくりだな...」

メモリーポーは止めていた息を吐き出す。

「絶対に無事に帰ってくるんだぞ。」

ファイヤスターはメモリーポーの肩に尻尾を乗せる。メモリーポーは父の胸に顔を押し付け、父の香りを吸い込んだ。

「行ってこい!!!」



ファイヤスターにさっと頭を下げると、メモリーポーは嵐の中に飛び出した。強い風に吹き飛ばされないように、地面に爪を立てる。少し前の方でブランブルクローと話しているレインウィスカーが見えた。2匹とも、雨に濡れていつもより身体が細く見える。

「あ、来たな。」

ブランブルクローがそう言って、じゃぁ、と言うようにレインウィスカーに会釈した。

「まさかとは思っていたが...ファイヤスターを説き伏せるなんてな...」

副長はそう小さく呟いて苦笑すると、看護部屋へと駆け戻って行った。レインウィスカーはいぶかしげにブランブルクローの後ろ姿を見たが、すぐにメモリーポーを見つめる。

「メモリーポー、どうしてここにいるんだ?ブランブルクローはもう一匹イヌハッカを取りに行く猫が増えるかもしれない、と言っていたが...」

そこまで言ってから、はっと目を見開いた。

「まさか!メモリーポーか!?」

メモリーポーは力強く頷く。

「そうです。私も行きます。」

雷が2匹の頭上で鳴り響く。ものすごい音がメモリーポーの耳を突き抜ける。どうやら近くに落ちたらしい。

「だめだ。危険すぎる。メモリーポーを危険な目には遭わせられない。絶対に来るな!」

「私も行きます。そう決めたんです!もちろんファイヤスターから許しをもらっています。」

厳しい表情で突き放そうとするレインウィスカーの瞳をメモリーポーは見つめる。

「こんな嵐の中を一匹で歩くのは危険です。お願いです。行かせてください。」

とうとうレインウィスカーが根負けしたように頷く。

「絶対に俺の傍から離れないでくれ。」

そして、身体を振って雨水を振り落とし、メモリーポーに合図する。メモリーポーは不安を拭えなかった。何か───心に重苦しくのしかかってくる物───を感じる。

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投稿 by アイルステラ Tue Aug 06, 2019 7:00 am

~メモリーポー~

2匹は無言でサンダー族の縄張りを進む。頭上では雷鳴がとどろき、メモリーポーのひげを揺らす。嵐は今、最もひどい状態になっている。メモリーポーの頭に水を含んで重くなった葉が落ちてきた。メモリーポーは慌てて頭を払う。暗い空を見上げると、風に吹かれてたくさんの葉が舞っていた。

初めて見習いとしてキャンプを出た時、今と同じ場所を歩いていた。あの時、穏やかに流れていたウィンド族との境界線の小川は増水し、川の土手を力強い水流で削っている。あの中に飲み込まれたら、無事では済まないだろう。メモリーポーはぶるっと身体を震わせると、指導者の後を追う。

「メモリーポー!」

レインウィスカーに呼ばれ、メモリーポーは急いで指導者の横に駆け寄った。レインウィスカーは安心したように息を吐くと、メモリーポーの額を舐めた。

「この激しい雨音のせいで、メモリーポーが歩く音が聞こえないんだ。メモリーポーがついてきているか分からなくて不安だから、横を歩いてくれないか?」

指導者の不安が浮かんだ表情に頷きかけ、メモリーポーはレインウィスカーの隣に寄り添った。レインウィスカーはそっと鳴いて感謝を伝えると、再び歩き出す。

当たりでは草木がざわざわと揺れ、木がみしみしと音を立てている。2匹は足早に木々の間をすり抜けた。レインウィスカーが風上を歩き、体で風を遮ってくれたため、メモリーポーは嵐の中を歩きやすくなった。



「見えてきた。」

レインウィスカーが呟き、視界の悪い中で <二本足の住み家> を見据える。稲光に照らされて、普段から不気味な場所がいっそう不気味に見えた。

メモリーポーは<二本足の住み家>の周りをレインウィスカーに案内してもらったことはあるが、実際に入ったことは一度もない。今日は <二本足の住み家> の中に入ることはないが、庭に入ることになる。それだけでメモリーポーは大分緊張していた。

「大丈夫だよ。今、<二本足> はいないから。」

メモリーポーの不安を感じ取ったかのようにレインウィスカーが言う。

「急ごう。」

レインウィスカーが短くそう言って、2匹は庭に足を踏み入れる。その瞬間、あまりの光景に2匹は絶句した。<二本足の住み家>によって風が遮られ、庭はゴミの溜まり場と化していた。

大小様々な色とりどりの落ち葉、小枝や木の皮が水分を吸って地面に張り付いている。そして、庭の中央には、太い大木が横たわっている。根元の方を見ると、地面のすぐ上から折れているのが分かった。

2匹は恐る恐る倒木に近付く。幹の下から微かにイヌハッカの香りが漂ってきた。しかし、その香りもほとんど消えかけ、腐敗した臭いの方がはるかに強い。レインウィスカーが慎重に倒木に近付く。メモリーポーは指導者の後にぴったりと続いた。

レインウィスカーは倒木の周りを一周し、丹念に地面の匂いを嗅ぐ。一度立ち止まり、濡れて重くなった落ち葉を掻き分けたが、すぐに溜め息をついた。レインウィスカーは、後ろから覗き込んできたメモリーポーにも見えるように少し避ける。

「ここを見てみろ。もうイヌハッカは腐っているんだ...」

レインウィスカーは辺りを見回す。風が強く吹き荒れ、周りの木々が大きく揺れている。

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