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雪の結晶[完結]

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投稿 by アイルステラ Sun Jun 30, 2019 9:53 am

~メモリーポー~

 「あら、私に獲物を持って来てくれたの?」

メモリーポーは、部屋の外でリーフプールが誰かと話しているのが聞こえた。だが、まだ疲れで体が重たく、目を開けることができない。

「─────。」

「冗談よ!メモリーポーにでしょ?今寝てるから、起こさないであげてね。」

リーフプールが笑いながら離れて行くのが聞こえた。(誰だろう?薬草の匂いが強すぎて、誰が来たのかわからない...)自分のすぐ横に誰かが座ったのを感じた。



「メモリーポー...ごめんな────」

(レインウィスカー!?)メモリーポーは、自分の胸が急に高鳴り出したのに気付いて恥ずかしくなった。(聞こえちゃったらどうしよう!)

「────俺がもっと早く助けられてたら...」

メモリーポーは自分の鼻先に雫が落ちてきて驚いた。(涙!?なんで?レインウィスカー、泣いてるの!?)メモリーポーの胸に温かいものが込み上げてきた。

「メモリーポー?泣いてるのか?...もしかして、起きてるのか?」

メモリーポーは自分が泣いていることに気付いた。(なんでだろう?レインウィスカーが優しかったから?安心したから?)メモリーポーはゆっくり目を開けた。



「なんだよ!起きてたのかよ!」

レインウィスカーは笑い泣きしながら言った。

「よかった...無事で....本当に...」

「私、そこまでひどい怪我じゃないですよ!先輩、涙もろすぎです!」

メモリーポーは笑いながらゆっくり体を起こした。レインウィスカーはメモリーポーの瞳を見つめながら、ゆっくり近づいて来た。

「本当によかった...スートファーみたいに...いなくなってほしくないんだよ...お前が...俺にとって大切な猫だから...」

メモリーポーはレインウィスカーの香りに包まれながら、幸せな気持ちでレインウィスカーを見上げた。

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投稿 by アイルステラ Mon Jul 01, 2019 7:34 am

~メモリーポー~

 隣でクリアポーが寝返りを打った。メモリーポーははっとして、照れたように俯いた。その頭をレインウィスカーが優しく舐める。

「.........ん?メモリーポー?起きたの!!!よかった~!」

クリアポーが目を瞬かせながら嬉しそうに言った。

「おはよ!クリアポー!よく眠れた?」

「うん!メモリーポーも良くなったみたいでよかった!昨日、メモリーポー倒れたから、すごく心配だったの!!!」

グゥゥゥー

「「あ....」」

「お腹空いちゃった!」

メモリーポーは恥ずかしそうに言った。

「これ、持って来たから、一緒に食べたらどうだ?」

レインウィスカーがウサギを持ち上げて見せた。レインウィスカーが意味ありげにメモリーポーを見てウインクした。(レインウィスカー、私がウサギが好きなの知ってるから...)

「ありがとうございます、レインウィスカー!!!メモリーポー、食べよ!落ち葉の季節なのに、大きなウサギよ!!!」

「うん!」

「それじゃぁ、またな。よく寝て休むんだよ。」

レインウィスカーは看護部屋を出て行った。メモリーポーは名残惜しそうに先輩の後ろ姿を目で追った。(先輩。私もです。)


***************


 「ねぇ、メモリーポー...私、ファイヤスターの部屋に行こうと思うんだけど...」

あの戦いから4日後のことだった。

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投稿 by ペタルドロップ Tue Jul 02, 2019 7:43 am

~クリアポー~

もうそろそろ頃合いなのかもしれない…。族長に言わなきゃ...!

あの日から四日が経ち、看護部屋では怪我がほとんど回復したメモリーポーが大きく伸びをしている。その横でクリアポーがずっと言おうと思っていたことを話し始めた。

「ねぇ、メモリーポー。私、ファイヤスターの部屋に行こうと思うんだけど...」

クリアポーがおずおずと話を切り出すと、メモリーポーはキョトンとしたように顔を向けた。

「戦いの日から訓練とか狩りとかパトロールとかしてないでしょ?暇だったから私、空き地を眺めていたんだけど、あのことを思い出したの...」

「クリアポー?なんの話...?」

「────ハニーフラワーが誰かに殺されたかもしれないということについてよ。グルーミングの時間に一族の戦士たちの動きを見ていたら、アッシュファーとスパイダーレッグだけいつも影でコソコソ話しているの。まだはっきりとはしないけど、やっぱりあの二匹が怪しいわ」

「まさかクリアポー、あの二匹を疑っているの?先輩たちは部族に忠実なはずよ!」メモリーポーが目を見開いた。そして、考えるような顔をして、メモリーポーはクリアポーの顔をのぞきこんだ。「もしかして、あの能力でなにか分かったの...?」

「ハニーフラワーのことは能力ではわからなかったわ。前からずっとあの二匹を監視していたのよ。だけど、時間がたつうちに私も忘れていて...。それで何回も二匹の過去を覗こうとしているんだけど、そこは暗黒の闇で、それ以上先は分からないの...」クリアポーは困ったように首をうなだれた。

「それならダメじゃないの!ファイヤスターははっきりとした証拠がないと認めてくださらな────」

「だけど、証拠があるの」クリアポーは思い出したように顔を上げた。「見れば分かるわ」



「メモリーポー、私、行くね」

「まさか、一人で行こうと言うんではないでしょうね?私も行くに決まってるじゃない!」メモリーポーが一歩前へ踏み出した。

「いいの...?ありがとう、メモリーポー!」
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投稿 by ペタルドロップ Wed Jul 03, 2019 7:26 am

~クリアポー~

「......メモリーポーとクリアポーか?入れ」中からファイヤスターの声が響いてきた。

クリアポーは先に族長の部屋に足を踏み入れた。ここに入るのは初めてだ。

族長の部屋は他の部屋と打って変わってしんとしている。端の方にはぺしゃんこになったコケのかたまりがあった。
ファイヤスターは痩せたウサギを前足でつついていた。「枯れ葉の季節はもうすぐそこだな。今年はグリーンコフ患者が出ないといいが」

クリアポーとメモリーポーはファイヤスターの前で横に並んだ。

「何の用だ?」ファイヤスターはおだやかに尋ねた。

「お食事中すみません。実は、族長にお話しなければならないことがあるのです」

話を振ると、ファイヤスターは先を促した。

「私たちが見習いになってからしばらくたったとき、ハニーフラワーはある事故で死にました。ハニーフラワーは、わたしたちを育ててくれた、優しい優しい恩人でした…」

クリアポーは足元を見つめると、ファイヤスターはなだめた。「辛かったよな...で、それがどうかしたのか?」

「でもファイヤスター、よく考えてみてください。ハニーフラワーは年長戦士で、最後の子どもを産んでからは保育部屋にずっといましたよね。そのころから、ハニーフラワーは一匹でキャンプから出ることはあまりなかったはずです。ではなぜ、その事件当日にハニーフラワーは一人で出かけたのでしょうか?それも真夜中に」

ファイヤスターは重い話だと思ったようで、考えるような顔をしている。「確かにそうだな…。だが、その日だけ出かけたのではないとしたら?もしかしたら、真夜中にいつも散歩に出かけてたのかもしれないぞ」

「けど、父さん!待って!その頃に、ハニーフラワーが真夜中にキャンプの外を出回るのをあたしは一度も見ていな......」メモリーポーはあわてて言ったあと、口を押さえた。

「メモリーポー、何か知っているのか?」ファイヤスターは自分の娘を見つめた。

「う、ううん...。な、なんでもないわ!ただ、ハニーフラワーは、真夜中に一匹で出かけることはないと思って...忘れて!」メモリーポーは焦っている。クリアポーはどうしたんだろうと不思議に思った。

「みんな寝ているから気づくことはないはずだ。ハニーフラワーがいつも夜に散歩に行っていなかったという証拠はない」
ファイヤスターが軽く首を振ると、また尋ねた。「まだ言いたいことがあるようだな、クリアポー?」

「はい、ファイヤスター。お通夜のとき、私はハニーフラワーとの最後のグルーミングをしていました。そのとき、あるものを発見したんです」

クリアポーは、自分のお腹の下に隠していた物を前足で押し出して、族長にさらし出した。

「...これがハニーフラワーの爪に引っかかっていました」

それを見ると、ファイヤスターは険しい顔をして匂いを嗅いだ。「コケの匂いしかしないようだ」

「すいません...…早く伝えられていなくて。それは自分の寝床に隠していたので、犯人の匂いは消えてしまっています。でも、犯人の見当はついています」

クリアポーがきっぱりとした表情で言うと、ファイヤスターの顔が、ネズミ一匹分の距離まで迫ってきた。「そいつは誰なんだ?名前を言ってみろ」

「......この部族の中にいます!」
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投稿 by ペタルドロップ Thu Jul 04, 2019 7:27 am

~クリアポー~

「......この部族の中にいます!」

ファイヤスターは目をぐっと細めた。「このサンダー族の中に裏切り者がいるはずがない!それに、こんな、灰色と黒色の毛をどっちも持った猫なんてこの部族の中にいるか?」

「族長。犯人は一匹であるとは言い切れますか?もし、犯人が複数いるとしたら?灰色の毛の猫と、黒の毛の猫」クリアポーはここで一息つき、息を深くすってその名を言った。「アッシュファーとスパイダーレッグ、だと考えられます」

ファイヤスターは信じられないという顔をした。「そんなはずはない!あの二匹はいつも一族に忠実だ!そもそもどうしてサンダー族に犯人がいると考えられるんだ?!」

「グルーミングの時間のみんなの動きを見てみてください。あの二匹だけいつもコソコソしてます!そして、サンダー族が将来、その二匹によって脅かされるかもしれないのです!」クリアポーは必死に訴えた。

「...あまり言いたくはないが、クリアポーはあの二匹に特に嫌われているからそう思うだけなのだろう。それに、ハニーフラワーを殺す理由なんて、あるのか?......メモリーポー、そこに突っ立っているだけでは何も伝わってこないぞ」

クリアポーが、メモリーポーに何か言って、とつつく。「え、えーっと...私もそうだと思います...」

ファイヤスターは大きくため息をつくと、クリアポーに向き直った。「それに、どうして一族が危険にさらされていると分かるんだ?」ファイヤスターはイライラしたようにクリアポーをじっと見つめた。

「.........」

クリアポーが何も言えずに下を向いていると、ファイヤスターがまた言った。「それなら、アッシュファーとスパイダーレッグに直接聞け」

ファイヤスターが部屋の出口に向かって歩き出したので、クリアポーはあわててついていった。メモリーポーも後ろからついてくる。
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投稿 by アイルステラ Fri Jul 05, 2019 7:21 am

~メモリーポー~

 部屋から出てハイレッジに駆け登ったファイヤスターの毛が、日の光に照らされて、炎色に輝いている。

「自分で獲物を捕まえられる年齢の者は全員、このハイレッジの下に集合しろ。一族の集会を始めるぞ。」

前を歩くクリアポーが目を見開き、慌ててファイヤスターの横に走って行った。

「あ、あの...ファイヤスター...サンダー族の皆の前で言うのですか...?」

クリアポーは不安げに耳を動かした。

「当たり前だろう。」

そっけなく返され、クリアポーが俯いたのがメモリーポーに見えた。



 長老達の部屋から、ハニーポーとポピーポーが大きなコケのかたまりを押しながら出て来る。保育部屋からは、ライオンキット、ホリーキット、ジェイキットが転がり出て来た。しかし、デイジーに戻るように言われたんのか、しぶしぶ保育部屋に入って行くのが見える。

地面に半分ほど埋まった岩の近くでブルックと食事をしていたストームファーがファイヤスターの隣に立っている自分の弟子を見て、驚いたような顔をした。集まって来る猫達も、ハイレッジの上に見習いが2匹いるのを見て、互いに顔を見合わせた。

ほどなく一族が全員集まり、ファイヤスターを見上げた。メモリーポーはクリアポーに近づき、勇気付けるようにそっと体をかすった。ちらっとクリアポーを見ると、首の毛を逆立て、足元を見つめていた。

「ファイヤスター、なぜその2匹がハイレッジの上にいるのですか?」

ソーンクローが軽蔑したような目でクリアポーを睨みつけながら聞いた。

「ハニーフラワーの死について、クリアポーが言いたいことがあるらしい。」

ファイヤスターはそれ以上は何も言わず、クリアポーに向けてしっぽを振った。



 「ハニーフラワーはとても優しい猫でした。」

クリアポーが震える脚で前に進み出て、話しはじめた。

「姿が見えなくなってしまったハニーフラワーをブランブルクロー率いる捜索隊が捜しに行きましたが、見つけた時にはすでに、ハニーフラワーは亡くなっていたそうです。ブランブルクローは誤って脚を滑らせてしまったのだろう、と言っていましたが、私は違うと思います。」

それをきいたブランブルクローが琥珀色の目をぐっと細めたが、クリアポーの次の言葉を待っている。一族から不安げなざわめきが聞こえ始めたが、クリアポーは言葉を続けた。

「ハニーフラワーはサンダー族の何者かに殺されたのです!」

その一言で空き地が静まり返り、次の瞬間一族から動揺と怒りの鳴き声がいっせいにあがった。

「何を根拠に!!!」

「サンダー族の猫が犯人だと!!!???」

「証拠はあります!!!誰が犯人かもわかっています!!!」

クリアポーは声を張り上げて言った。キャンプに静寂が訪れた。さえずっていた鳥達さえも鳴き止んだ。静寂を破り、ブランブルクローが震える声で尋ねた。

「それは...誰なんだ...?」

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投稿 by アイルステラ Sat Jul 06, 2019 7:24 am

~メモリーポー~

 「アッシュファーとスパイダーレッグです!」

その言葉を聞いた瞬間、アッシュファーとスパイダーレッグがぱっと立ち上がった。

「はぁ!?本気で言ってるのか!?」

「どうして俺達が殺したと言えるんだ?」

スパイダーレッグが逆上して叫んだ。アッシュファーは馬鹿にしたように鼻を鳴らした。

「証拠があるといいました。」

クリアポーは落ち着きを払って足元に置いていたコケのかたまりをくわえあげた。そして、中に入っている毛を取り出した。

「お通夜の最中、私はこの毛がハニーフラワーの爪に引っ掛かっているのを見つけました。この毛は灰色と黒です。捜索隊には、灰色と黒の毛をした猫は行っていません。つまり、これは犯人の毛です!サンダー族には灰色と黒の毛をした猫はいません。よって、複数の猫が協力してハニーフラワーを殺したのでしょう。なの────」

「冗談だろ?皆まさかこの浮浪猫が言っていることを信じるのか?」

アッシュファーが氷のように冷たい声で言った。メモリーポーはぞっとして体中の毛を逆立たせた。

「毛が引っ掛かっていたと言うが、毛ぐらい、キャンプのイバラの壁にいくらでも引っ掛かっている。やろうと思えば、そこから取って来ることは可能だ。そもそも、今頃になって犯人扱いするのはおかしくないか?なんで黙っていた?」

アッシュファーの自信に満ちた声を聞いていた一族は、次第に疑いの目をクリアポーに向け始めた。メモリーポーはそれに気付き、落ち着かない気分でつばを飲み込んだ。(一族は、あの2匹じゃなくて、今度はクリアポーを疑いはじめたわ...どうすれば...)



 「おい!答えろよ!俺を犯人扱いしておいて、黙るのか?もしかして...お前がハニーフラワーを殺したんじゃないのか?」

一族がざわめき始めた。何匹かは憎々しげにクリアポーを睨みつけている。

「裏切り者!!!」

スパイダーレッグが叫んだ途端、猫達は喚きだした。

「ハニーフラワーはお前を育てたんだぞ!その猫を殺したのか!?」

「サンダー族から追い出せ!!!」

「いや!八つ裂きにしちまえ!!!」

「やめて!!!!!!」

メモリーポーは叫んだが、一族の声で掻き消されてしまった。

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投稿 by アイルステラ Sun Jul 07, 2019 9:17 am

~メモリーポー~

 「そこまでだ!!!いい加減にしろ!!!」

ファイヤスターが怒鳴った。

「でも────」

異議を唱える声がいくつもあがりかけたが、ファイヤスターが睨みつけると、鼻を鳴らしながらも、黙った。

「この件についてはもう終わりだ!!!集会を終わる!!!」

ファイヤスターは怒りも冷め切らない様子で体をぶるっと振り、大きく深呼吸をした。そして、リーフプールに部屋に来るように合図し、自分の部屋に入っていった。



 一族は周りの猫と低い声であれこれ言い合いながらも、くぼ地に散らばって行った。メモリーポーは今起きたことにショックを受けながらも、クリアポーをちらっと見た。

「まさか...こんな風になるなんて...わ、私...」

クリアポーは目に大粒の涙を溜めていた。

「クリアポー...とにかく、ハイレッジから降りよう?ね?」

メモリーポーは、放心状態のクリアポーをしっぽで導きながらハイレッジの下まで来た時、クリアポーがぴたりと脚を止めた。

「あのさ...クリアポー...上手くいかないこともあるよ...」

メモリーポーが慰めようと、肩にかけたしっぽをクリアポーは振り払った。












「あなたに何が分かるのよ...」

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投稿 by シルヴァーミスト Sun Jul 07, 2019 12:29 pm

この小説毎日楽しみにしてます!
これからも頑張ってください!
応援してます😊

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投稿 by ペタルドロップ Sun Jul 07, 2019 7:17 pm

シルヴァーミスト wrote:この小説毎日楽しみにしてます!
 これからも頑張ってください!
応援してます😊

シルバーミストs、コメントありがとうございます!!!

毎日楽しみにしていてくださる方がいるだなんて!
顔がほころびます(笑)

応援ありがとうございます♪ これからもよろしくお願いします(ˊᵕˋ )
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投稿 by アイルステラ Mon Jul 08, 2019 7:25 am

シルヴァーミスト wrote:この小説毎日楽しみにしてます!
 これからも頑張ってください!
応援してます😊

シルヴァーミストさん!コメントありがとうございます♪

毎日楽しみにしている、なんてありがとうございます!!!
感激で泣きそうです...!

今後も頑張りますので、是非継続して読んで頂けると幸いです♪

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投稿 by ペタルドロップ Mon Jul 08, 2019 7:42 am

~クリアポー~

どうしよう...。絶対上手くいくと思っていたのに......。

目からあふれ出てきたものが頬を伝う。こんなことになるはずがなかった。まさか、私が犯人扱いされるだなんて...。

悲しみのあまり、ピタリと歩みが止まった。下を向き、涙がポタポタと落ちて、岩にじわじわと染み込んでいくのを見つめる。

「あのさ...クリアポー...上手くいかないこともあるよ...」メモリーポーは慰めようと、クリアポーの肩にしっぽをのせた。

上手くいかないこともある、ですって?
クリアポーはその言い方にカチンときて、そのしっぽを振り払った。

「あなたに何がわかるのよ…」ゆっくり顔を上げ、震える声で言った。「なに、そんな、呑気に言ってられるの...。ハニーフラワーは本当は身近な猫に殺されたということがわかったのに、皆に認めてもらえなかったのよ...!!!」

メモリーポーは目を丸くした。「クリアポー......?」

クリアポーは目に盛り上がる涙を思い切り振り落とした。「そりゃ、あなたは親しい猫たちに囲まれてぬくぬく育ってきたから分からないだろうけど、私にとってハニーフラワーは、優しくしてくれる数少ない猫だったのよ…...」

「私がいるじゃない!一緒に乗り越えてい──」

「あなたにはレインウィスカーもいるでしょ!!!!!」クリアポーはメモリーポーの話を遮って言った。「こんな浮浪猫と一緒にいなくたってもいいじゃないの!」

メモリーポーのふさふさのしっぽはさらに二倍大きくなった。「もういいわ!!!!!クリアポーなんて...!!!!!」


メモリーポーはそれだけ言うと、一度も振り返らずに見習い部屋へ走って行った。


***************


一族の活発なあわただしい声が聞こえてくる。

「...う、うーん...」

見習い部屋に朝日がさしこんで、あたりはすでに明るくなっていた。

(メモリーポーを起こさなきゃ!)

隣を見ると、すでに冷たくなっているぺしゃんこのコケのかたまりしかなかった。そうだ、私たち喧嘩していたんだったわ...。


あの日喧嘩してから数日たったが、メモリーポーとはまだ一言も言葉を交わしていない。指導者たちも気を使っているのか、バラバラで指導をしている。

そして、クリアポーは一族の猫たちの視線に耐えられなくなってきていた。
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投稿 by アイルステラ Tue Jul 09, 2019 7:25 am

~メモリーポー~

 「もういいわ!!!!!クリアポーなんて...!!!!!」

メモリーポーは、ぱっと身を翻して見習い部屋に向かった。(クリアポーの馬鹿!馬鹿!馬鹿!もう知らないんだから!!!!!!)



 見習い部屋に飛び込もうとしたメモリーポーは、中から出て来たモウルポーにぶつかりそうになり、慌てて止まった。メモリーポーはさっと顔を背けて、目を見開いて固まっているモウルポーの横を通ろうとした。

「ねぇ、どうしたの?」

思いがけず、モウルポーが声をかけてきた。

「もしかして、クリアポーと喧嘩した?」

黙って下を向き、目を合わせないようにしていると、モウルポーは見習い部屋に戻り、隣に座るようにしっぽで招いた。メモリーポーは少しためらってから、モウルポーとしっぽ1本分空けて座った。

 「ほら、僕には姉が3匹もいるからよく喧嘩してるの見るんだ。特にシンダーポーなんか、勝ち気だからさ。」

唐突にモウルポーは話し出した。可笑しそうに話していたが、メモリーポーが沈んだ顔をしているのに気付いて、気遣うような表情を見せた。

「シンダーポーはポピーポーとよく喧嘩してたけど、ずっと仲良しだろ?つまり、喧嘩しても大丈夫。仲直りしたら、前よりもっと仲良くなれるよ、ってことさ。」

そういうと、メモリーポーの肩にそっとしっぽを触れて部屋から出て行った。(シンダーポーとポピーポーは姉妹。私とクリアポーとは違うわ。)メモリーポーは大きく溜め息をついて、寝床で丸まった。

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投稿 by アイルステラ Tue Jul 09, 2019 7:26 am

~メモリーポー~

 メモリーポーが一眠りをし、見習い部屋から出て来た時には太陽が真上で輝いていた。微かに暖たまった空気で満たされている空き地で、猫達は思い思いにくつろいでいる。ぎこちなく空き地の端に座ってゆっくり毛繕いをしていたメモリーポーの耳に、レインウィスカーとソーレルテイルの会話が飛び込んできた。

「看護部屋に行った方がいいんじゃないか?」

「いいえ。大丈夫よ。心配しないで。」

レインウィスカーが心配そうに妹に言う。ソーレルテイルは否定しながらも咳をした。

「大丈夫じゃないだろ。もう落ち葉の季節も終わるところだ。その風邪が悪化して、グリーンコフになったらどうするんだよ。」

レインウィスカーが語気を強めて言うと、ソーレルテイルは諦めたように頷き、レインウィスカーに付き添われて看護部屋に向かった。メモリーポーはソーレルテイルが気になり、そっと看護部屋を覗く。

「ソーレルテイル!!!なんでもっと早く来なかったのよ!!!」

リーフプールの大声にメモリーポーは思わず飛び上がった。

「リーフプールってば。そんなに大袈裟に騒ぎ立てないで。そこまでひどいわけじゃないわ。」

ソーレルテイルはそう言うと、咳をした。リーフプールは首を振って寝床をしっぽでさした。ソーレルテイルは辛そうに横になる。メモリーポーはいても立ってもいられなくなり、薬草を混ぜ合わせているリーフプールに声を掛けた。

「リーフプール、あの...何かお手伝いしましょうか?」

「ああ、メモリーポーね。今のところは大丈夫よ。それに、あなたは近づかない方がいいわ。隣のレインウィスカーもよ。ソーレルテイル、ホワイトコフにかかってるから...」

リーフプールはそう言って、辛そうに目を閉じている友達を見やった。

「もう枯れ葉の季節が近いから...いつ悪化してグリーンコフになっても...とにかく、2匹とも、十分に気をつけてね。」

リーフプールは言いながらも薬草を混ぜ続ける。ふと顔を上げて、まだ2匹が立っているのに気付くと、部屋を出るようにしっぽで合図した。レインウィスカーは心配そうにちらっと妹を見て、看護部屋をあとにした。

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投稿 by アイルステラ Wed Jul 10, 2019 7:40 am

~メモリーポー~

 今日は大集会の日!...だけど...クリアポーとはまだ口をきいていない。メモリーポーは憂鬱な気分で溜め息をついた。

「メモリーポー、狩りに行くぞ!そろそろ、延期していた狩りのテストを行うから、練習しておいた方がいいだろう?」

見習い部屋の外からレインウィスカーが声をかけた。

「はい。今行きます。」

メモリーポーは体を弓なりに曲げて伸びをし、コケのくずを払いながら部屋から出る。そして、冷たい風にぶるっと身を震わせた。日に日に寒さが厳しくなってきている。外に出ると、レインウィスカーは胸の毛を舐めながら待っていた。

「ようやく来たか。じゃ、行こう!」

メモリーポーは頷くと、重い脚を引きずりながら歩き出した。


***************


 「大丈夫さ。すぐ仲直りできるよ。」

不意に前を歩くレインウィスカーが呟いた。驚いたように指導者を見つめるメモリーポーにレインウィスカーは微笑みかけた。

「そんなに気にしてるということは大切な猫ってことだろ?メモリーポーが大切に思ってること、クリアポーも心の隅で分かってるよ。ただちょっと素直になれないだけで。時間はかかるかもしれないけど、ゆっくり解決していけばいいよ。」

メモリーポーはふっと心が軽くなったのを感じた。さっと先輩の横に駆け寄ると、レインウィスカーは優しく微笑んでくれた。2匹はしっぽを絡めあいながら、森を歩いて行く。木々の上では鳥がさえずっていた。

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投稿 by アイルステラ Wed Jul 10, 2019 7:41 am

~メモリーポー~

 大きな満月が木立の上で輝いている。キャンプの端でうとうとしていると、ファイヤスターが部屋から駆け降りてきた。その様子を見て、すでに空き地にいた猫達は族長の元にさっと集まる。メモリーポーの近くに目をいたずらっぽく輝かせたシンダーポーが駆け寄ってきた。

「ねぇ、メモリーポー。バーチフォールが看護部屋に行ったって知ってる?」

「え、そうなの?」

メモリーポーは驚いて聞き返した。シンダーポーはちらっと後ろを振り返ってから声を潜めて言った。

「バーチフォールって、最近咳をしてて私、心配だったの。ほら、ソーレルテイルがグリーンコフになっちゃったらしいじゃない?もしかしたら、バーチフォールに移っちゃったんじゃないかと思って。」

メモリーポーは何度も頷いた。

「それでね、私が看護部屋に行って、リーフプールに診てもらった方がいいですよ、って言ったの。そしたら、俺は病気なんかじゃない!って怒られちゃって。」

シンダーポーの物真似があまりにも上手く、メモリーポーはくすくすと笑った。

「バーチフォールって、ファイヤスターに言われても、看護部屋行かない気がする!」

「私もそう思ったの!!!それなのに、隣からホワイトウィングが行った方がいい、って言うと、結局看護部屋に行ったのよ!」

「ホワイトウィング?バーチフォールって、もしかしたら、ホワイトウィングのこと好きなんじゃないの?」

メモリーポーが笑いながら言うと、シンダーポーはひげをピクピクさせながら答えた。

「絶対そうだと思う!!!」

シンダーポーはしっぽをさっと振った。その時、2匹の近くをブライトハートとクラウドテイルが通り過ぎる。2匹は慌てて口をつぐみ、必死に笑いをこらえた。クラウドテイルが少し顔を強張らせてブライトハートに話しかけたが、ブライトハートは笑いながらこちらをちらっと見た。

「聞こえちゃったかな?」

「そうかも。」

メモリーポーが小声でシンダーポーに囁くと、シンダーポーも囁き返した。

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投稿 by アイルステラ Thu Jul 11, 2019 7:03 am

~メモリーポー~

 2匹が通り過ぎた所で、メモリーポー達はは再び話し始める。

「ホワイトウィングはバーチフォールのこと好きだと思う?」

「まんざらでもない感じはするけどね。でも、バーチフォールって、戦士になった次の日に、私に長老のノミ取りしろ、って言ったの。だから私はあんまり...」

シンダーポーの言葉に、メモリーポーは少し顔をしかめて答える。シンダーポーはおかしそうに鼻を鳴らした。

「ホワイトウィングはバーチフォールのどこに惹かれたのかな?バーチフォールっていいとこ───」

「ちょっと!」

メモリーポーはシンダーポーの口をしっぽで押さえた。周りで聞いていた猫はいないようだ。メモリーポーは溜め息をついて、シンダーポーの口からしっぽを離した。

「ごめんごめん。でも、バーチフォール、大集会に行けなくて悔しがってるわ!」

今度はメモリーポーが鼻を鳴らした。

「大丈夫よ。落ち込んでたら、バーチフォールの愛するホワイトウィングが慰めてくれるもの!」

メモリーポーは愛する、を強調して言った。シンダーポーは笑っていたが、目の前を厳しい目をしたブランブルクローが通り、さっと神妙な顔をした。

「大丈夫よ、シンダーポー。そんなことで大集会に行けなくなったりしないわ!」

メモリーポーは笑いながらシンダーポーに囁く。

「そうかな...」

シンダーポーは少し不安そうな表情を浮かべながらも、目には興奮の色を浮かべている。前回の大集会は、シンダーポーの兄弟のモウルポー、ハニーポー、ポピーポーが行き、シンダーポーはメモリーポーとクリアポーと共に留守番だったのだ。兄弟を笑顔で送り出していたシンダーポーだったが、内心とても羨ましかったに違いない。



副長はメモリーポーとシンダーポーの前を通り過ぎ、リーフプールと話していたファイヤスターの方に歩いて行く。

「ファイヤスター、そろそろ出発しないと集会に遅刻してしまいます。」

「みんな集まったか?」

ブランブルクローが頷いたのを確認して、ファイヤスターはしっぽをあげて茂みに飛び込む。シンダーポーと小走りで走るメモリーポーの視界にクリアポーの後ろ姿が入った。

メモリーポーには、ストームファーと走るクリアポーの足取りが、心なしか軽いように見えた。小さく溜め息をついたメモリーポーだったが、島の輪郭が見えてくると、期待で胸が高鳴った。

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投稿 by ペタルドロップ Fri Jul 12, 2019 7:50 am

~クリアポー~

一族は大集会の島に到着した。
雲一つない夜空の真ん中に輝く満月をクリアポーは見上げる。

(今日はトードフット来てるかしら...)


においからしてウィンド族はまだ来ていないようだ。リヴァー族とシャドウ族の猫たちの影が動いているのが木々の間から垣間見える。

サンダー族の最後の一匹が倒木を渡り終え、すべての部族の集う島に降り立つと、ストームファーはクリアポーに声をかけた。
が、ちょうどクリアポーは前の大集会で友だちになったトードフットのことを考えていて、ストームファーの声が聞こえなかった。

「おい、クリアポー聞いてるか?」ストームファーはクリアポーをしっぽでぴしぴし叩く。「今からミスティフットのところに行こうと思っているんだが、クリアポーも一緒に来るか?」

「は、はい、行きます」
うわの空で答えたクリアポーはストームファーについて行った。



ストームファーとミスティフットはとても仲睦まじく話していた。

特に話せる話題もなく、ストームファーの横で視線を宙に浮かせていたクリアポーは、会いたいと思っていた猫のにおいが近くからするのに気がつく。トードフットだわ!

クリアポーはとっさに機転を利かせて指導者にたずねた。「先輩、今から狩りしに行ってきてもいいですか?キャンプを出発するときに食べそびれていたので」

ミスティフットとの会話に夢中になっていたストームファーは、クリアポーに声をかけられてびっくりした。「あ、あぁ。もちろん構わないよ」


指導者に許しをもらったクリアポーは、近くの茂みを抜けた。すると、予想通りそこにはトードフットがいた。

トードフットはついて来てと小声で言うと、早足で猫のいないところへ向かった。


「久しぶりね!トードフット!」
猫たちの話し声が遠ざかり、クリアポーは地面の柔らかいところに座った。

「一ヵ月ぶりだな、クリアポー!会いたかったよ!」
トードフットも嬉しそうに言う。

「戦士になってからの生活はどう?」

「あぁ、充実してるよ。雑用を頼まされることもなくなったしな!まぁ見習いのときよりは忙しくなったけどね」

「へぇー!私も早く戦士になりたいわ!」

「クリアポーは見習いの生活、充実してるか?」

とても楽しそうに話していたクリアポーは、さっとトードフットから目をそらし、むっつりと黙り込んだ。

トードフットは不思議そうにクリアポーの目を下からのぞきこんだ。
「...どうしたのか?指導者から怒られたとか?」

首を振り、なおも目を背けたままクリアポーは声を発さなかった。

真上では葉のすっかり落ちた木の枝が重なり合って、さらさらと音を立てる。

「なんでも聞くから。何があったのか言って」
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投稿 by ペタルドロップ Sat Jul 13, 2019 7:01 am

~クリアポー~

「なんでも聞くから。何があったのか言って」

クリアポーはトードフットを見ると、じっと自分を見つめる視線と合う。包みこむような優しい瞳に見つめられ、その雄猫から目をそらせなくなった。

クリアポーの頬を何か熱いものが伝ったのがわかった。

「トードフット.........」

気がつけば、クリアポーはトードフットにすべてを打ち明けていた。

自分が浮浪猫の生まれであることから、部族内で猫を殺した疑いをかけられていることまで。

自分の能力のことも。

全部、全部。

大丈夫、この雄猫は信用できる、と本能が言っていた。

トードフットは黙って聞いてくれた。

すべてを話し終わると、目に溜まっていた涙がどっとあふれ出て止まらなくなった。

トードフットはクリアポーに寄りそう。

クリアポーはトードフットの焦げ茶色の胸に顔をうずめた。毛が涙でビショビショになっても、トードフットは何も言わなかった。

そしてその猫は、クリアポーを守るように自分のしっぽを震える背中にそっとのせた。


クリアポーは顔をなおもうずめながら、小さなくぐもった声で聞いた。「今の話聞いて、私のこと嫌いになったりしない...?」

「いや、むしろお前の話、聞けて嬉しいよ...」

クリアポーは顔を上げて目をピタリと合わせた。「ありがとう...。大好き、トードフット」

「俺も。愛してるよ、クリアポー」


二匹はどちらからともなく体をぎゅっと寄せ合い、しっぽを絡め合った。


互いに幸せを感じていると、トードフットが切り出した。「あのさ、クリアポー、────」

















クリアポーとトードフットは最後にグルーミングをし終わり、空き地に戻るころには、とっくに大集会は終わっていた。

慌ただしく動き回る灰色の影が見えた。ストームファー...かしら?私を探しているのかも!行かなきゃ!
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投稿 by アイルステラ Sun Jul 14, 2019 10:07 am

~メモリーポー~

 満月の光に照らされて、大集会の島の木々が風でなびいているのが見える。大集会に初めて参加するシンダーポーは、指導者のクラウドテイルに導かれながら、一足先に倒木を渡っている。

「メモリーポー、今日は落ちるなよ?」

レインウィスカーが声に笑いを含ませながら言った。

「心配しないでください!今日も!落ちませんから!!!」

メモリーポーは ''も'' を強調して言い、慎重に倒木の上に立った。後ろからレインウィスカーがピッタリと着いてきてくれている。最初は幹が細く、安定していなかったが、島に近づくにつれて幹が太くなってきた。島まであとしっぽ2本分の所でメモリーポーはほっとしながら飛び降りた。



 「メモリーポー!」

橋から降りたレインウィスカーに駆け寄ろうした時、メモリーポーは後ろから呼び止められた。メモリーポーがくるっと後ろを振り返ると、ファイヤスターがしっぽで招いていた。メモリーポーが首を傾けながら近づく間に、ファイヤスターはサンダー族に島の中心に行くように合図した。

「ファイヤスター、何ですか?」

「今日はまだ2回目の大集会だろ?前回はあまり他の部族と関われなかったんじゃないか?」

父でもあり、族長でもある猫に聞かれ、メモリーポーは頷く。確かに、前回はずっとレインウィスカーと話していた。他の部族と交流することが目的の大集会だが、まだ他の部族の猫と大集会で喋ったことはない。

「一緒においで。他の部族猫と関わることも大切だ。」

そう言われて、メモリーポーは堂々と歩くファイヤスターの後ろについて行った。



 「あら、ファイヤスター。こんばんは。」

ストームファーと話していたミスティフットが声をかけてきた。

「ミスティフット。リヴァー族は問題ないか?」

「ええ、何も。落ち葉の季節の終わりにしては獲物も多いし、川では魚がたくさん捕れるわ。」

ファイヤスターは頷き、メモリーポーを連れて通り過ぎた。行く手には、ラシットファーと話しているブラックスターがいて、その隣には、2匹の会話を聞いている若い雌猫がいる。

メモリーポーは、ラシットファーを見て、シャドウ族と縄張り争いをしたことを思い出してしまった。恐怖と怒りで毛が逆立ちそうになるのを必死でおさえる。その様子に気付いたらしいファイヤスターが耳打ちしてきた。

「今夜は大集会だということを忘れるな。休戦中だぞ。」

「わ、分かっています。」

そう言いながらもメモリーポーは不安げにファイヤスターを見上げた。

「いいか。シャドウ族も生きるために必死で縄張りを守っているんだ。以前の戦いでは、マーキングを怠っていたサンダー族にも非はある。」

そう言い聞かせるように言い、ファイヤスターは3匹に向かって会釈した。

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投稿 by アイルステラ Mon Jul 15, 2019 6:59 am

~メモリーポー~

 「こんばんは、ブラックスター。シャドウ族は健在か?」

「ああ。何も問題はない。」

ブラックスターは答える。その隣にいるラシットファーは少し顔を歪めたが、何も言わなかった。

「ねぇ、あなたって、ファイヤスターの娘さん?」

ファイヤスターが2匹と話しはじめたのをぼんやり眺めていると、若い雌猫に声をかけられた。驚いて横を見ると、メモリーポーよりやや年上の雌猫が立っている。

「あ、は、はい。」

「ふ~ん。ってことは、メモリーポー?」

「はい...メモリーポーです...」

「私はアップルファー。シャドウ族の戦士よ。」

メモリーポーは知らない猫に話し掛けられたのと、その猫が自分の名前を知っていたのとでおどおどしながら答えた。

「メモリーポーってもっとすごい猫だと思っていたけど、そうでもないみたいね。」

黙ったままのメモリーポーの様子を見て、気位の高そうな雌猫は言った。メモリーポーはその言葉にむっとして言い返す。

「なんで私のこと知ってるんですか?」

「あなた、シャドウ族のパトロール隊と戦ったんでしょ?見習いなくせしてオークファー相手に戦ったって聞いて。ちょっと会って話してみたいなって思ってたの。」

雌猫は肩をすくめて答える。からかうように言いながらも優しく笑っているアップルファーにつられて、メモリーポーも微笑み返す。(ちょっと皮肉屋だけど、根は優しいのね。)



 アップルファーと少し話していたところで、集会の開始を告げる声がした。高いオークの木の中ほどに4匹の族長が座っているのが見える。その中に自分の父がいることに、メモリーポーは誇らしくなった。

4つの部族の猫を月の光が穏やか照らしている。メモリーポーが隣に座っているアップルファーをちらっと見ると、雌猫はウインクを返してくれた。(今夜の大集会では新しい友達が出来た!)

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投稿 by ペタルドロップ Tue Jul 16, 2019 7:16 am

~クリアポー~

「ふぁぁ...」

クリアポーは大きなあくびをして見習い部屋を出た。朝のさわやかな空気を吸いこむ。太陽はすでにくぼ地の向こうの森から顔をのぞかせていて、くぼ地を金色に染めている。

空き地には、自分以外誰もいなかった。他の猫たちは、みんなまだ寝ているようだ。大集会のあとで、みんな疲れきっているのだろう。

クリアポーは空き地で一匹、地面に爪を立てて、長くなった。


地面を引っかいてついた爪の線の跡をぼーっと眺めていると、クリアポーは寝て忘れかけていたあのことを思い出して心が踊った。

(あそこの境界線の近くに行けばいいのよね!)

クリアポーは今夜の約束のことで頭がいっぱいになり、誰かが隣に座ったことに気がつかなかった。

「おはよう、クリアポー」ストームファーが下を向くクリアポーの顔をのぞきこんだ。

ストームファーの声によって我に返ったクリアポーは、びっくりして目を丸くした。「お、おはようございます、ストームファー」

頭を横に振り、脳をはっきりさせた。いけないいけない、今は夜のことを考えちゃだめ!

「今日は何をするのですか?」

「今朝は狩りのテストだ」ストームファーはそう言った。「食事をすませたら、キャンプのすぐそこの坂を登ったあたりに来てくれ。いいな?」

狩りのテスト!興奮で足がうずく。前は怪我しててできなかったけど、今日は思う存分できるわ。それに、今日は普段よりも暖かく、狩り日和だった。
「獲物たくさん捕まえてみせます!」思わずうわずった声で言う。

ストームファーはうなずくと、戦士部屋からちょうど出てきたブルックの方へ行った。
クリアポーは獲物の山へ足を向けた。


そこで獲物の山を見て驚いた。獲物はあと二、三匹しか残っていない。
今日のテストでたくさん捕ってこなきゃ。今は一族のみんなに食べさせることだけに集中しないと。

でも、今日はいつもよりも狩りを頑張れるような気がする。








────なんたって、今夜はトードフットと会えるんだもの。
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投稿 by ペタルドロップ Wed Jul 17, 2019 7:35 am

~クリアポー~

狩りのテストを終え、モリバトを一羽くわえたクリアポーは、あたたかい真昼のキャンプに戻ってきた。ストームファーは、ハタネズミ二匹とリスを一匹くわえている。

たくさん獲れたので、ストームファーにも運ぶのを手伝ってもらったのだ。

獲物の山にそれらをのせると、二匹は安堵した。「今日はよくやったな。思ってた通り上手くできてた、合格!」ストームファーは満足げにのどを鳴らした。

「合格ですか?よかった!」クリアポーはほっと胸をなでおろした。「あともう少しで戦士になれますよね?」ストームファーにたずねる。

枯れ葉の季節を告げる冷たい風が、二匹の間を吹き抜けた。

ストームファーは表情を曇らせ、クリアポーにただこれだけ言った。「今日は晴れててよかった。おかげで獲物もたくさん獲れていたようだし」

「......そうですね」

そう、もしかしたら私は戦士になれるかどうか、わからないのだ。一族の誤解が解けるまでは────。
クリアポーは俯いた。

ストームファーはそんなクリアポーを見ていた。「僕は、君が犯人だなんてちっとも思ってないからな」

クリアポーは視線を上げると、ストームファーの真剣なまなざしと目が合った。

部族内で、メモリーポー以外でも信じてくれる猫がいたんだ...。クリアポーは微笑んだ。「そう思っていてくださり、嬉しいです」



ストームファーに食事の許可を与えられたクリアポーは、さっき自分の捕ったやせ細ったリスを獲物の山から引きずり下ろした。

自分を見る一族の視線が痛いので、空き地の端っこで獲物を食べていた。最近はいつもここで食べている。


────自分の獲物の骨をかみくだく音の合間合間に、心なしか、咳がたくさん聞こえる気がするのは、気のせいだろうか...…。

ふと、食べる口を止めると、数日前よりも、たくさん咳が聞こえてくるようになったことに気がついた。
そういえば、最近ホワイトウィングがホワイトコフにかかったんだっけ...?バーチフォールにうつされちゃったのかも...。


「今すぐ看護部屋に来なさい!」
リーフプールの声が、クリアポーの考えをさえぎった。

声のする方を向くと、キャンプの出入口の前で、リーフプールがパトロールに行こうとするソーンクローを、目を吊り上げて引き止めていた。

「なんで今まで言わなかったのよ...。もしグリーンコフだったら...」リーフプールは、疲れたような表情を見せた。「ただでさえ今は病気の猫が多いのに」

ソーンクローは大きく咳をしていた。
「これくらい大したことな...い」げほげほと苦しそうに話した。「今から、ウィンド族との境界線上のパトロールを率いないといけないんだ」

リーフプールが心配そうに返す。「......どう見ても大丈夫には見えないわ。ほかの猫にうつされても困るし、パトロールは違う猫に率いてもらってください」

「そういうことなら、俺がそのパトロール隊を率いますよ、先輩」体格のがっしりした副長が、いつの間にか近くに来ていた。

「先輩は看護部屋で休んでてください」ブランブルクローは、有無を言わせない口調で言う。

ソーンクローは不満げに鼻を鳴らしたが、返す気力はないらしく、大人しくリーフプールの後についてイバラのカーテンをくぐって行った。


クリアポーは一瞬、悪い予感が頭をよぎった。しかし、そんなはずがない、とそれを認めたくない一心で考えを頭から押しやった。
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投稿 by ペタルドロップ Thu Jul 18, 2019 7:30 am

~クリアポー~

夜になった。

真っ黒い空には銀河がかかり、少しだけ欠けた月が雲の隙間から顔をのぞかせている。

猫たちはみな寝静まり、あちこちから微かないびきが聞こえてくる。


だが、クリアポーはまだ目をぱっちりと開けていた。体を起こして、メモリーポーのそばを通る。

猫たちの寝息でぽかぽかする見習い部屋から、見習いたちを起こさないようにそっと外へ這い出た。


冷たい夜気が鼻を刺し、キャンプのはしを歩きだすと、霜の降りた地面で脚の裏が痛くなった。

森から獲物のにおいが漂ってくる。遠くの方で、鳥が警戒の鳴き声をあげた。

クリアポーは誰にも見つからないように、暗がりを通った。こんな夜遅くに歩き回っていたらあやしまれるからだ。

キャンプの出入口をふさいでいるイバラの壁ぎわをじわじわ進む。心臓が一族を起こしてしまいそうなくらい大きな音を立てている。

トードフット、待ってるかな。

イバラのトンネルを見ると、見張りがいるのがわかった。暗くて誰だかわからない。

クリアポーは足音ひとつ立てずに近づいてみると、その正体はクラウドテイルだった。見事に熟睡していて、いびきまでかいている。これでは見張りの意味を成していない。

(よかった!でも今度誰にも見つからない抜け道を探しとかなきゃ!)


思っていたよりも楽にキャンプから出られたクリアポーは、シャドウ族の境界線へ向けて、まっしぐらに駆け出した。
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投稿 by ペタルドロップ Fri Jul 19, 2019 7:45 am

~クリアポー~

森を抜けて、クリアポーは見習いが戦いの訓練をする空き地に着いた。
この空き地を横切って、川を越えれば、そこはもう、シャドウ族のなわばりだ。

川の岸にたどり着くと、境界線の手前で息を切らして走る足を止めた。ここら辺は獲物が少ないので、獲物の動く気配がない。

見渡すと、川の向こう岸で動く影が目についた。誰かしら...。隠れなきゃ!

でも、間に合わないことがわかっていた。月の光が差すところにその猫は出てくる。あれ...?

「......トードフット!!!!!」

その正体は、自分の最も会いたいと思っていた猫だった。クリアポーは川をひと飛びで飛び越え、その猫のもとへ駆け寄った。

銀色の猫と茶色の猫のしっぽとしっぽがからみ合う。

クリアポーは、トードフットの脇腹にすりよった。会いたかったわ…と静かにのどを鳴らす。

「......一日中クリアポーのことを考えてた......」トードフットはクリアポーの耳の後ろを舐めた。「今日は何したの?」

「今日は狩りのテストをしたわ。ストームファーから合格をもらえたのよ!」

「おめでとう!君の狩りの腕前は人並みじゃないもんな」

「あなたが狩りのテストをしたときは、どうだったの?」

「よく覚えてるよ。木の幹にいるリスばかりに気をとられて、目の前にいるネズミに気づかなかったんだ!」トードフットはさほど昔でもないのに、遠い目をする仕草をした。「でも、ぎりぎり合格したよ」

「で、そのリスとネズミは獲れたの?」上目遣いに聞く。

「いや、どっちも獲れなかったよ。ネズミが大きな声出して逃げちまうから、リスも驚いて木の上にスルスル登っていっちまった」

「あら!残念ね!」クリアポーは笑いだした。

トードフットも、赤面しつつも上を向いて笑った。「あのとき、本当に不合格になると思った!」


ふいに、トードフットが笑うのをとめて、穏やかなまなざしでクリアポーを見つめた。

クリアポーも、それにつられて静かに視線を合わせた。

.........トードフットの緑色の瞳には、自分の姿しかうつっていなかった。

クリアポーは、その綺麗な瞳に自分が吸いこまれていくような感覚を覚えた。クリアポーの心は、優しいトードフットの色で染まっていった。

長い沈黙のあと、先に口を開いたのはトードフットだった。「クリアポーの銀色の毛並み、月の光を反射してる」

トードフットが、クリアポーの頬をしっぽでなでた。「......綺麗だよ」

クリアポーは、そのしっかりとしたトードフットの肩によりかかった。「......愛してるわ、トードフット」

そのまま自分のしっぽをクリアポーの背中にまわしたトードフットは、俺もだよ、と言っているようだった。
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