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雪の結晶[完結]

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投稿 by アイルステラ Wed Aug 07, 2019 11:37 pm

~メモリーポー~

「ここは危険だ。いつまたもう一本木が倒れてくるか分からない。どちらにしろ、ここではイヌハッカは取れない...」

レインウィスカーは木の幹の下を覗き込んでいたメモリーポーに声をかける。

「メモリーポー、帰ろう。」

「でも...」

メモリーポーが地面をいらだたしげに引っ掻く。

「キャンプに帰ろう。そうしたら、ファイヤスターから許しをもらって、ウィンド族にイヌハッカをもらいに行けるかもしれない。」

その言葉を聞いて、メモリーポーは急いでレインウィスカーに駆け寄る。2匹は再び足並みをそろえて歩き出した。



強い向かい風に吹かれ、メモリーポーがバランスを崩す。レインウィスカーがさっと首をくわえ、メモリーポーを支えた。

「大丈夫か?あと少しだ。頑張れ。」

レインウィスカーはそう言い、寒さで震えているメモリーポーを心配そうに見やった。強風のせいで、歩くスピードがどうしても落ちてしまう。

その時、暗い空を裂くように稲妻が光り、それと同時にものすごい雷鳴がとどろく。稲妻は2匹の目の前の大きなモミの木に当たった。一瞬木が震えたように見え、次の瞬間、枝が吹き飛んだ。思わず伏せたメモリーポーの脇腹を、飛んできた枝がかすめる。

「メモリーポー!!!逃げろ!!!」

レインウィスカーの切羽詰まった声に顔を上げると、幹だけになった大木に大きな裂け目ができている。そして、風に吹かれてゆっくりと2匹の方へ倒れて来た。メモリーポーは慌てて立ち上がろうとするが、足元が滑る。木の下から逃げていたレインウィスカーは、メモリーポーが逃げ出せずにいるのを見て、目を恐怖の色に染めた。



世界から全ての音が消えた。雨の音、木が倒れていくミシミシという音、レインウィスカーの何かを叫んでいる声も。メモリーポーはぎゅっと目を閉じた。


バンッ!!!

ズズーン!!!


大きな音、地響きと共に、強い衝撃がメモリーポーの身体を襲う。あまりの衝撃に、メモリーポーは、身体から全ての空気が押し出されたような気がした。

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投稿 by アイルステラ Fri Aug 09, 2019 12:35 am

~メモリーポー~

メモリーポーは目を開け、ゆっくりと瞬かせる。ピントが合ってくるうちに、目の前に横倒しになった大きな木が見えた。そして、その下敷きになっているレインウィスカーの姿も。そのぴくりとも動かない姿を見ても、メモリーポーは一瞬何が起こったのか理解ができなかった。

しかし、───レインウィスカーはメモリーポーが逃げられないととっさに判断し、メモリーポーを助けるために、自分の身を犠牲にした───そのことを頭のどこかで理解した瞬間、メモリーポーは全身からサッと血の気が引いていくのを感じた。

「レインウィスカー!!!」

メモリーポーは我を忘れて駆け出そうとする。身体を起こした瞬間、自分の身体の下側だった左後脚に痛みを感じたが、そんなことは気にならないほど気が動転していた。

「レインウィスカー!!!目を開けてください!!!起きてください!!!」

メモリーポーは叫び、レインウィスカーの胸を強く舐める。レインウィスカーの腰から下は、木の下敷きになっていた。そして、木の幹の下からはレインウィスカーのものであろう血が、じわじわと滲み出ている。メモリーポーが強く胸を舐め続けていると、レインウィスカーのまぶたが微かに動いた。

「レインウィスカー!!!聞こえますか!?」

レインウィスカーがゆっくりと目を開ける。そして、メモリーポーの全身を見ると、安心したように溜め息をついた。

「よかった...メモリーポーが無事で...」

「よくないです!!!レインウィスカーなら逃げられました!どうして私を庇ったりなんか!!!」

「俺はメモリーポーを守りたかった...ただそれだけだ...」

「レインウィスカーが一緒じゃないとだめです!一緒にキャンプに帰りましょう!!!」

メモリーポーはなんとかしてレインウィスカーの上から大木をどけようと、モミの木を押したり噛み付いたりした。けれど、倒木は全く動かなかった。

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投稿 by アイルステラ Fri Aug 09, 2019 12:45 pm

~メモリーポー~

   「メモリーポー...」

その声にメモリーポーは急いでレインウィスカーに身体を押し付けた。

「大丈夫です。私はここにいます。」

「メモリーポー...好きだよ...愛してる...」

「何言ってるんですか...?最期みたいに言わないでください!レインウィスカーは、私と一緒にキャンプに帰るんです!!!」

「無理だよ...ここが俺の最期の場所さ...」

レインウィスカーは、君にも分かっているはずだ、と言うかのように、思慮深げで悲しげな眼差しをメモリーポーに向けた。メモリーポーの目から涙が溢れる。

───そんなこと言わないでください!!!

そう叫びたかったが、できなかった。

愛する者に残された時間がもう残り少ないと本能的に感じ取ったからだ。

「私もレインウィスカーが好きです...今までもこれからもずっとずっと大好きです!!!」

メモリーポーはレインウィスカーの肩に顔をうずめた。レインウィスカーの澄んだ青色の目からも涙がこぼれる。

「残していって...ごめん...これからもずっと見守ってるから...」

「嫌です!!!どこにもいかないでください!!!ずっと...ずっと...一緒に居たい...んです...」

嗚咽混じりに言葉を紡ぐメモリーポーの耳を、レインウィスカーは愛おしげに舐めた。

「メモリーポー...またスター族で逢おう...愛してるよ...」

まぶたが静かに閉じる。

レインウィスカーの胸の鼓動が

───止まった

───永久に



メモリーポーは空に向かって声にならない悲鳴をあげた。


いつのまにか、雨が止んでいた。

雲の切れ間から光が差し込み、愛する者を失い、嘆き悲しむ雌猫を照らした。

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投稿 by ペタルドロップ Sat Aug 10, 2019 3:02 pm

~クリアポー~

薄暗い空にまばゆい稲妻が、何度も走る。

サンダー族のキャンプには、雨が降っているのにも関わらず、猫たちが空き地に出てきていた。


まさかそんな......。

クリアポーは呆然としていた。

看護部屋で、さっき一匹の猫が息を引き取ったのだ。

その猫は、看護猫に空き地の真ん中まで慎重に運ばれた。今はその猫を中心に、こうべを垂れた一族の猫たちがいびつな円を描いている。


あまりにも早い死だった。

「かわいそうに......」ブライトハートは同情した。

「戦士になる前に亡くなってしまうなんて......」

「いい子だったのに......」

グリーンコフは、あまりにも大きな損害をもたらした。


とてつもなく大きな雷鳴が響き渡り、猫たちの同情の声をかき消した。

その大きな雷が止むとともに、黒い雲のすきまから一筋の光がもれ出し、まるで眠っているように安らかな表情をしたモウルポーを照らし出した。

静まりわたるキャンプに、家族のすすり泣く声だけが響く。

「モウルポー......」


***************


誰かがキャンプに駆け込んでくる音がした。────メモリーポーだ────


メモリーポーは空き地に駆け込んでくるなり、よろよろと崩れ落ちた。泣きくじゃり、目は赤く腫れている。

喧嘩している最中とはいえ、メモリーポーのことが心配になった。今までどこに行っていたんだろう......?

ハイレッジの下でこうべを垂れていたファイヤスターが、娘に気づいて駆け寄る。

「メモリーポー!......どうしたんだ?────レインウィスカーは?」

族長は、まさかと言うかのように目を見開いた。


「......レインウィスカーは────」メモリーポーが父親と目を合わせずに小さな声で言う。

「────<二本足の住み家>から帰る途中で木が倒れて来て...レインウィスカーだけなら逃げられたのに......!────」

「メモリーポー......」
ファイヤスターが小さな声でメモリーポーの言葉を遮ろうとしたが、メモリーポーは悲しみを吐き出すように話し続ける。

「───私があの時───」
「メモリーポー!」
メモリーポーの言葉の続きをファイヤスターの強い口調が遮る。ファイヤスターは強く言ってから口調を和らげる。

「もういいよ。メモリーポーがそんなに悲しんでいても、レインウィスカーは喜ばないだろう」
その言葉を聞き、再びメモリーポーの目から大粒の涙が流れ始める。

「ごめんなさい...ごめんなさい...ごめんなさい...!」
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投稿 by ペタルドロップ Sun Aug 11, 2019 11:38 am

~クリアポー~

ソーレルテイルは、息子と兄を失った悲しみで、呆然としている。ブラクンファーはソーレルテイルの背中にしっぽを置いた。


「......ブランブルクロー。クラウドテイルと一緒にレインウィスカーの遺体をキャンプまで運んでこい。<二本足の住み家>に向かっていけば、途中で見つけられるはずだ」ファイヤスターが指示を出した。

周りがざわつく中、二匹はトンネルに飛び込んで行った。

空き地にのしかかっている重苦しい沈黙を破って、メモリーポーが思い出したように言う。「......あと、<二本足の住み家>の薬草は、霜でやられてしまっていたので取ってこれませんでした。......ウィンド族の看護猫からイヌハッカを分けてもらいに行くのはどうでしょうか?」


そう......。メモリーポーは足りなくなったイヌハッカを探しに行っていたのだ。でも、もう────


申し訳なさそうな表情をして振り返ったメモリーポーは、辺りを見回し、目的の猫を見つけた。「ソーレルテイル?」

三毛猫に呼び掛けてから、メモリーポーは重い足を引きずって歩き出す。クリアポーはその時ようやく、メモリーポーが後脚を怪我していることに気付いた。

メモリーポーからは、うずくまっているソーレルテイルに隠れてモウルポーは見えないのだろう。不思議そうに近づくメモリーポーからは、微かな不安が感じ取れる。

そして、その視界にモウルポーが入った途端、メモリーポーは目を大きく見開いた。「そんな......」

モウルポーのそばにいたシンダーポーが小さな声で言った。「......もう、すでに、モウルポーはスター族へ旅立ってしまったの」

メモリーポーが信じられないという顔をして、リーフプールを見る。

リーフプールはうつむいている。
「できる限りのことはしたわ。でも、朝の時点でモウルポーはかなり危険な状態だったの......ごめんなさい」

メモリーポーは足の力が抜けたようにその場にくずおれた。「......嘘......。本当なの?嘘だと言って...」

そう聞いても、誰も下を向いたまま答えなかった。

メモリーポーはとても悔いた顔をして、下を向いて言った。「本当にごめんなさい......本当に────」
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投稿 by ペタルドロップ Sun Aug 11, 2019 11:39 am

~クリアポー~

空はだんだん暗くなりはじめ、月がうっすらと浮かび上がってきた。

空き地の真ん中には二匹の猫の遺体が横になっており、その周りでお通夜をしている猫たちが互いに慰め合い、すすり泣いている。

今夜はトードフットに会いにいくのはやめよう......。こんな状況でキャンプを抜け出すのは、気が引ける。

それに、あまりにもいろいろなことが起こりすぎて、遊びに行く気になれなかった。

クリアポーはネズミの最後の一口を無理やり飲み込むと、寝ようと見習い部屋へ向かった。


けれど、なかなか眠りにつくことはできなかった。

見習い部屋でひとりぼっちだったクリアポーは、寝返りをうってメモリーポーの寝床を嗅いだ。においは古い。朝から一度も寝床に入っていないのだろう。

メモリーポーはレインウィスカーとモウルポーのお通夜に出ている。クリアポーは急に心配になった。

体を起こし、首だけを部屋からのぞかせた。メモリーポーはレインウィスカーのそばに一匹座り、なにやら小さな声で囁いている。

メモリーポーはあまりにも大きな重荷を背負ってしまったのだ......。クリアポーは自分のことのように辛く、悲しくなった。

体は自然と動いていた。空き地に出て、メモリーポーの近くに行ったときに思った。怒られないかな......。

ゆっくりとそばへ行き、表情をうかがう。だが、メモリーポーから怒りの視線が向けられることはなかった。

クリアポーはそっとメモリーポーに寄り添った。
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投稿 by アイルステラ Mon Aug 12, 2019 10:30 am

~メモリーポー~

いつ日が沈んだのかわからないうちに日が沈み、キャンプの空き地は重い沈黙につつまれている。猫達は数匹ずつに分かれてキャンプの隅に集まっていた。キャンプには、たくさんの落ち葉や木の枝などが散乱している。

メモリーポーは強ばる脚を引きずりながら、レインウィスカーの隣に横になる。どこを見るともなくぼんやりしていたメモリーポーは、近付いて来ていた足音が隣で止まったのを聞く。ゆっくりとその猫を見上げたメモリーポーの目には、心配そうな表情を浮かべたリーフプールが映る。

「足の痛みはどう?」

「なんともないです。」

メモリーポーが小さな声で答えたが、リーフプールはくわえていた薬草を使って、メモリーポーの足を治療し始めた。

「私達看護猫には、心の傷を治すことはできないわ。でも、あなたが指導者を失って悲しんでる気持ちは私にはよく分かる。私の指導者は、私のせいで死んでしまったも同然だったから...」

最後にクモの巣をメモリーポーの傷口に巻きながら、リーフプールは話す。メモリーポーはその言葉を聞きながらも黙っていた。

「自分をあまり責め過ぎないで。」

リーフプールはそう言うと、しっぽでメモリーポーの肩にそっと触れると、離れていった。リーフプールと入れ替わるように、ソーレルテイル、ブラクンファーがモウルポーの近くに来た。後から、シンダーポー、ポピーポー、ハニーポーも歩いて来る。家族はモウルポーを囲んで立ち尽くす。



メモリーポーはいてもたってもいられなくなり、体を起こして5匹の方へ足早に向かう。メモリーポーが近付いて来るのを感じて、ソーレルテイルが涙の浮かんでいる目で振り返った。

「ごめんなさい...本当にごめんなさい...」

再び溢れ出した涙と共に、何度も謝るメモリーポーを見て、ソーレルテイルが涙を堪えて空を見上げる。そして、ぎゅっと閉じた目をゆっくりと開きながら、メモリーポーに歩み寄る。

「メモリーポー、誰のせいでもないわ...」

そう言いながら、震えているメモリーポーの背中をそっとしっぽでなでた。

「今頃、モウルポーとレインウィスカーは、もうスター族から私達を見守ってくれているはずよ。」

シンダーポー達がメモリーポーの元へぱっと駆け寄ってくる。そして、それぞれメモリーポーにほおずりをしたり、体を押し付けたりした。

「メモリーポー、もう泣かないで...」

「モウルポーのためにありがとう...」

「メモリーポーのせいじゃないわ...」

3匹はそう言って、メモリーポーと悲しみを分かち合うかのように、涙を浮かべながらメモリーポーに体をこすりつけた。

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投稿 by アイルステラ Tue Aug 13, 2019 11:55 am

~メモリーポー~

レインウィスカーとモウルポーの周りにいたサンダー族の猫達は、一匹、また一匹と部屋に戻って行った。モウルポーの指導者のアッシュファーの姿はなぜか無く、残ったのはソーレルテイル達、モウルポーの家族と、メモリーポーだけだった。

空に浮かんでいる半月は、雲に覆われ、微かな光を空き地に投げかけている。空き地の中央に横たわっているレインウィスカーとモウルポーの遺体は、柔らかい影に包まれ、まるで眠っているかのように見えた。

メモリーポーはもう一度レインウィスカーにしっかりと体をくっつける。もう動くことのない体に身を寄せるのは、親代わりになってくれたハニーフラワーのお通夜以来だ。あの時は傍で共に慰め合うクリアポーがいてくれたが、今は風の冷たさだけを感じる。

「レインウィスカー...

何故ですか?

私が泥に足を取られて動けなくなっていた時、レインウィスカーは───レインウィスカーだけなら───逃げられました...

私を木の下から突き飛ばして自分が犠牲になるなんて...

私はずっとレインウィスカーと一緒がいいんです...!

1人に...1人にしないでください...」

そう囁いてレインウィスカーの毛に鼻を埋めたが、もちろん答えはない。しかし、隣に嗅ぎなれた香りを感じた。クリアポーだ。ためらいがちにメモリーポーの隣に伏せたクリアポーが、様子をうかがうようにメモリーポーをちらっと見るのを感じる。

メモリーポーはありがとう、というように、クリアポーに身を寄せる。クリアポーが傍にいてくれることがとても嬉しかった。クリアポーは今まで喧嘩していたことを謝り、メモリーポーを慰めるかのように、耳をそっと舐めてくれた。メモリーポーも、クリアポーの耳をそっと舐め返す。

2匹の吐き出す白い息が風に巻き上げられて空気中に消えた。

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投稿 by アイルステラ Wed Aug 14, 2019 10:13 am

~メモリーポー~

一筋の光が空き地に差し込む。メモリーポーは、レインウィスカーとモウルポーのお通夜をするために地面に直接座っていたので、まだ毛が湿っている。途中でうとうとしただけで、ほとんど一晩中起きていたメモリーポーとは違い、クリアポーは隣で眠ってしまっている。

クリアポーを起こさないように、注意して立ち上がり、メモリーポーは少し離れた所で体を振った。金色の朝日に照らされて、クリアポーの青っぽい灰色の毛の先がキラキラと輝いている。

「クリアポー、ありがとう。友達に戻ってくれて。」

眠っているクリアポーにそっと囁きかける。その時、クリアポーがゆっくりと寝返りを打った。そして、眠そうに目を開き、メモリーポーがいることに驚いたように耳を立てる。しかし、すぐに穏やかな表情になり、はにかみながら口を開く。

「おはよ、メモリーポー。」

「おはよう、クリアポー。」

久しぶりに友達同士名前を呼ぶのはとても心地よかった。クリアポーは身体を起こすと、大きく伸びをする。そして、メモリーポーと額をこすり合わせた。



レインウィスカーとモウルポーの遺体がキャンプから運び出されて行った。昨日の嵐が嘘のように、青空が広がっている。

「メモリーポー。」

誰かから呼ばれ、メモリーポーは声の方向を振り返る。メモリーポーと並んで立っていたクリアポーも振り返る。メモリーポーを呼んだのは、クリアポーの指導者、ストームファーだった。ストームファーは、メモリーポーとクリアポーが一緒にいるのを見て驚いたような表情をしたが、少し嬉しそうな素振りを見せた。

「メモリーポーの指導は今日からクリアポーと一緒に僕が行う。と言っても、もうそろそろ戦士になってもいい頃だから、あと少しの間だとは思うが。」

メモリーポーが今日は訓練をする気分にはなれないのを察していたのか、ストームファーは、そわそわと地面を掻いているメモリーポーに更に言葉を続ける。

「だが、昨日のお通夜で疲れているだろうから...今日は狩りをするだけでいい、自由にしてろ。」

「ありがとうございます。」

そう言ったメモリーポーに軽く頷きかけて、ストームファーはクリアポーに合図する。クリアポーは素早くメモリーポーの肩にしっぽで触れると、ストームファーの後を追って駆け出した。

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投稿 by ナルシスフェザー Wed Aug 14, 2019 12:57 pm

毎日投稿お疲れ様です!
話が進むにつれて驚くことが沢山あり、毎日続きを楽しみにしています!

これからも無理のないように投稿していってくださいm(_ _)m
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投稿 by ペタルドロップ Wed Aug 14, 2019 3:48 pm

*ナルシスフェザー* wrote:毎日投稿お疲れ様です!
話が進むにつれて驚くことが沢山あり、毎日続きを楽しみにしています!

これからも無理のないように投稿していってくださいm(_ _)m

ナルシスフェザーs、コメントありがとうございます!!!
毎日お付き合いくださり、感謝です!今後の励みにしたいと思います♪

一日に二匹も猫を失ってしまい、途方に暮れたサンダー族。悲しみと後悔の渦巻くメモリーポーに、親友を心配するクリアポー。二匹はついに仲直りすることができました。

この先の展開はいかに...?
次回もお楽しみに!
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投稿 by アイルステラ Wed Aug 14, 2019 8:40 pm

*ナルシスフェザー* wrote:毎日投稿お疲れ様です!
話が進むにつれて驚くことが沢山あり、毎日続きを楽しみにしています!

これからも無理のないように投稿していってくださいm(_ _)m

ナルシスフェザーさん!
2度目のコメントありがとうございます !!!
以前と変わらずお楽しみ頂けているようでとても嬉しいです!

とうとうレインウィスカーを死なせてしまいました...メモリーポーごめんね...!
次は、クリアポーとトードフットに是非ご注目ください!笑

今後もよろしくお願いします!!!

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投稿 by アイルステラ Thu Aug 15, 2019 11:12 am

~メモリーポー~

一匹取り残されたメモリーポーは小さくため息をついた。サンダー族のキャンプに残っている猫達は、キャンプを綺麗にするために、落ち葉や木の枝を運び出している。しかし、仲間に混じって作業する気持ちも起きなかったメモリーポーは、キャンプの出入口に向かって歩き出す。

途中で、ふとグリーンコフにかかっている猫達の様子が気になったメモリーポーは、看護部屋へと行き先を変えた。看護部屋の周りに積もった落ち葉を、ソーレルテイルが片付けているのが見える。まるで、息子と兄を失った悲しみを忙しさで紛らわそうとしているかのようだ。

立ち止まっていたメモリーポーは、後ろからそっと鼻でつつかれ、慌てて振り向く。メモリーポーの前には、スクワーレルフライトが立っていた。

「大丈夫?何か看護部屋に用事でもあるの?」

「いえ...看護部屋にいる猫達が元気なのか、心配になっただけです。ただ...私を見て、ソーレルテイルがまたモウルポーのことを思い出したら...」

メモリーポーは言葉を濁す。

「大丈夫よ。みんな状態は安定しているわ。」

薬草をくわえて通りかかったリーフプールが優しく言う。

「リーフプール!」

「ね、だから安心して。」

スクワーレルフライトは、メモリーポーの顔をそっと舐める。リーフプールもメモリーポーにそっと寄り添い、しっぽで背中をなでた。



キャンプを囲んでいる茂みから出たメモリーポーは、鼻を上げて風の香りを嗅ぐ。辺りには強い土の匂いが漂っていた。暴風が木をなぎ倒し、地面にはたくさんの木の葉が散らばっている。

メモリーポーはどこかに向かうというわけでもなく、ゆっくりと歩き始める。一歩一歩前へ踏み出す度に、隣にレインウィスカーがいない寂しさを感じた。緩やかな坂を下ると、メモリーポーの前に広い湖が見えてきた。まるで、昨日の嵐が嘘だったかのように、湖面は静まり返っている。

メモリーポーは湖の前に座り、そっと目を閉じる。つい数日前、レインウィスカーに誘われ、2匹で湖の周りを歩いたのが、遠い昔のようだ。

あの日の湖には、たくさんの星が映っていた。優しく微笑みかけてくれたレインウィスカー。しんと静まり返った水辺に響く声。2匹だけで過ごした特別な時間。あの景色、あの香りをメモリーポーは思い起こし、涙を流した。

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投稿 by ペタルドロップ Fri Aug 16, 2019 11:14 am

~クリアポー~
 
森の中を歩き回るクリアポーの足元で、枯れたシダがかさこそ鳴る。
 
慣れたように川を飛び越えると、なんの躊躇もなく境界線を駆け抜け、大きな木の前で立ち止まった。
 
クリアポーはあたりを見渡し、耳を澄ませる。けれど、猫一匹見つけることはできなかった。
 
静けさを破っているのは、流れの速い黒い川が立てるさざ波の音と、向こうの森で木々がざわめく音だけ。
 
クリアポーは静かにため息をつくと、夜露でひんやりする草の上に体を落ち着けた。
 
早く打つ鼓動を無理やり押さえ、あの猫を信じて待った。
 

「早く来すぎちゃったかしら......」冷たい空気にクリアポーの声がそっと溶け込んでいく。
 
昨夜は二匹の猫の通夜が行われた。それに加え、指導者を失った悲しみで打ちひしがれたメモリーポーと一緒にいてあげたいという気持ちが強かった。
 
────キャンプを離れられなかったのだ。
 
きっと彼は、昨日ここに来なかった自分のことを怒っているのだろう。

考えれば考えるほど、不安はつのるばかり。
 
クリアポーはうなだれて草をかきむしった。
 

 
「クリアポー、いるかい?」
しばらくして、シダの擦れる音とともに後ろから聞こえてきたのは、待ち焦がれていたあの猫の声だった。
 
「トードフット!」
クリアポーは目を輝かせながら振り向いた。するとそこには、心底ほっとしたような表情をしたトードフットがシダの茂みの間から顔をのぞかせている。
 
「遅かったじゃないの!心配したわ」クリアポーは嬉しくて、すぐにトードフットに駆けよろうとした。
 
しかし、トードフットはそれをさえぎって言った。「心配したのはこっちの方だ。昨夜はどうして来なかったんだ......?昨日の嵐でお前に何かあったんじゃないかって、ずっと考えてたんだ」
 
トードフットは何とも言えない表情をしていた。
 
クリアポーはそんなトードフットの顔を見て、罪悪感にさいなまれた。トードフットは昨日、来ることのない私を信じて、ずっと待っていてくれたのだ。
 
「ごめんなさい、昨夜は行かなくて......。ずっと待っていてくれたのね......」クリアポーは言った。
 
「......でも、決して悪気があるわけではないの。昨日起こった出来事、聞いてくれるかしら......?トードフット」
しっかりと目をあわせて、クリアポーはトードフットに向かって話し始めた────
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投稿 by ペタルドロップ Fri Aug 16, 2019 11:14 am

~クリアポー~

「────そんなことがあっただなんて......。疑って悪かった、クリアポー」
話をひととおり聞き終わったトードフットは、同情のまなざしを向けて言う。
 
「私のことなんか疑って当然よ。昨夜行かなかったのは事実なのだし。心配かけてしまったわ。本当にごめんなさい......」
 
「もう気にしなくていいんだよ。こうやって今日、お前の気持ちを再確認できたことだし」トードフットはクリアポーに優しく微笑んだ。

「昨日は会えなくて、おとといは途中から雨が降っちゃったし......今日はその分を取り戻さなきゃな!」
 
そう陽気にいったトードフットの足を、クリアポーはいたずらな笑みを浮かべて、返事もせずに払い、転ばせてやった。

体勢を崩したトードフットに向かって、優越感漂わせながら喉を鳴らす。「そうね!」
 
「......やったな?」だが、すぐにトードフットに体勢を立て直され、クリアポーは飛びかかられ、二匹してじゃれ合った。
 

だが、そうした光景を唯一見守っていた夜空の星も、たった今、灰色い雲で見えなくなってしまった。
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投稿 by ペタルドロップ Sat Aug 17, 2019 10:35 am

~クリアポー~

「いいぞ、メモリーポー!その調子だ」
 

翌日の昼間、境界線の近くの空き地で、クリアポーとメモリーポーはストームファーから戦いの訓練を受けていた。
 
さきほどから二匹は戦っていて、今メモリーポーがクリアポーを地面に押さえつけたところだ。
 
二匹のつく荒い息が重なりあう中、最初に口を開いたのはクリアポーだった。
 
「......なかなかね」クリアポーは降参したように首を振る。「調子出てきたじゃない」
 
「ありがとう!......それにしても、クリアポーと戦うのなんて、久しぶり!」
メモリーポーははにかみながら、クリアポーを放した。
 
クリアポーはメモリーポーのこんな笑顔を見たのは、とても昔のことのように思えた。
喧嘩してから、もうこんなに時間はたっていたのね......。胸に熱いものがこみあげる。
 
メモリーポーがいてよかった......。
気づけばメモリーポーは、クリアポーにとっていつしか、かけがえのない存在となっていた。
クリアポーはいい親友にめぐまれて、こんなに幸せな猫がいるだろうかと、しみじみ思った。
 

「二匹とも、よくやった。完璧だ!」ストームファーが褒めた。「これから戦いが起きても、戦士並みに戦えるまでになった」
 
二匹を見たあと誇らしげにクリアポーを見ると、ストームファーはメモリーポーの方に向き直った。
 
「きっとスター族でもレインウィスカーはおまえのこと、誇らしく思っていると思うよ」
 
優しくそう言われたメモリーポーは、ゆっくりと空を見上げる。昼に星があるわけでもないのに空を見つめ続けるその瞳には、星が輝いているようにクリアポーの目に映った。
 
「今までご指導本当にありがとうございました」
 
クリアポーにはメモリーポーがそう言っているように見えた。
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投稿 by ペタルドロップ Sun Aug 18, 2019 8:13 am

~クリアポー~

「じゃあ、今度はアナグマがなわばり内に現れたときの戦い方を覚えているか?クリアポーはアナグ────」ストームファーはそこで話をやめた。クリアポーとメモリーポーの背後をまだたきもせずに見ている。
 
「......どうかしましたか、ストームファー?」クリアポーたち二匹は、不思議そうに後ろを振り返った。
 
すると、二匹もその光景に目が釘付けになってしまった。
 
彼女たちを唖然とさせたもの。それは、遠くの方からこちらの方に走ってくる、たくさんの猫たちの姿だった。
 
彼らはどう見てもサンダー族の猫には見えなかった。
 
シャドウ族の猫たちだわ......!認めたくなかったが認めざるを得なかった。彼らはサンダー族を襲撃しに来たのだ。三、四匹なら状況は違っていたが......。こんなに大勢の集団で来られると、そうとしか考えられなかった。
 
でもなぜ?なんでサンダー族に襲撃を?疑問が頭をよぎり、それが脳内を徘徊し始めた。
 
顔が見えるまで近づいてくると、ちらほらと知っている顔ぶれを見つけた。しかし、大集会のときの表情とは違って、彼らの目には闘志がみなぎっている。

シャドウ族の猫を見るのが初めてのように感じた。
 
クリアポーは頭からしっぽの先まで震え上がった。隣ではメモリーポーが毛を逆立てている。
 
シャドウ族の集団は、クリアポーたちがいるのにとっくに気づいているようで、まっすぐ三匹の方へ向かっていた。
 
敵との距離はどんどんせばまってくる。
 
ストームファーが慌てたように二匹に命令する。
「キャンプに帰って早くみんなに知らせるぞ!数では負けているんだ。これじゃ俺たちだけで太刀打ちできない!」
 
それを合図にクリアポーとメモリーポーも我に返り、踵を返してキャンプへ向かって走り始めた。ストームファーもその後を追った。
 

クリアポーとメモリーポーは先を争うようにして茂みを駆け抜ける。ストームファーの荒い息づかいがしっぽにかかる。
 
早くキャンプのみんなに伝えなきゃ!
 
シャドウ族の猫たちがすぐ後ろに迫るのを感じながら、友だちと指導者とともに走る。
 
それにしても、なんでシャドウ族はいきなりサンダー族に攻め入ろうとしたのかしら......?理由もなく攻めてくることはないはず。
 

まさか、私のせいだったりして......。大きな不安が体にのしかかった。
 
クリアポーはそんな不安を振り払うようにして、二匹とキャンプに向かってひたすら走り続けた。
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投稿 by フラワリングハート@ふらわり Mon Aug 19, 2019 4:14 am

初めてコメントさせていただきます…

ペタルドロップさんははじめまして!
アイルステラさんは以前私の小説にコメントを下さりありがとうございます…!お久しぶりになりますかね…?

まずお二人の継続力に尊敬します…スムーズに更新し続けられる計画力と精神力…見習いたい…

文章の至るところに原作で使われる表現が散りばめられていて、原作の延長線上のような気持ちでするすると読み進められました…原作への愛を感じます…!
2-6と3-1の間を補完する内容で、中でもメモリーポーの存在によりレインウィスカーの死に意味が生まれていて、よく練られているなと思いました!改めて悲しくなってきちゃいましたね…w
クリアポーとトードフットの関係性がどんな影響を与えていくのかも気になります…突如攻めてきたシャドウ族の真意も…

これからの展開も楽しみです!陰ながら応援いたしております…!
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投稿 by シャイニングアイ Mon Aug 19, 2019 4:37 am

レインウィスかーの死で泣きました
すごく丁寧に文を書かれていてすごく見習いたいです…
これからも頑張ってください
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投稿 by ペタルドロップ Mon Aug 19, 2019 7:41 pm

フラワリングハート@ふらわり wrote:初めてコメントさせていただきます…

ペタルドロップさんははじめまして!
アイルステラさんは以前私の小説にコメントを下さりありがとうございます…!お久しぶりになりますかね…?

まずお二人の継続力に尊敬します…スムーズに更新し続けられる計画力と精神力…見習いたい…

文章の至るところに原作で使われる表現が散りばめられていて、原作の延長線上のような気持ちでするすると読み進められました…原作への愛を感じます…!
2-6と3-1の間を補完する内容で、中でもメモリーポーの存在によりレインウィスカーの死に意味が生まれていて、よく練られているなと思いました!改めて悲しくなってきちゃいましたね…w
クリアポーとトードフットの関係性がどんな影響を与えていくのかも気になります…突如攻めてきたシャドウ族の真意も…

これからの展開も楽しみです!陰ながら応援いたしております…!

フラワリングハート@ふわらりs、コメントありがとうございます!!!
初めまして、ですね!

執筆するときは基本、原作に合わせて書いているつもりです(笑) そう言っていただけて、嬉しいです♡

物語が終結する最後の最後まで、お付き合いくださると感謝感激です...!
応援ありがとうございます!
今後ともよろしくお願いしますm(_ _)m
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投稿 by ペタルドロップ Mon Aug 19, 2019 7:44 pm

シャイニングアイ wrote:レインウィスかーの死で泣きました
すごく丁寧に文を書かれていてすごく見習いたいです…
これからも頑張ってください

シャイニングアイs、コメントにお褒めの言葉、ありがとうございます♪

私たちの書いた小説で涙を流してくれる方がいらっしゃるだなんて...! 嬉しさで思わず飛び跳ねる花びら雫でした(笑)

物語も終盤に差し掛かっています。
最後まで“雪の結晶”をお楽しみください♪
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投稿 by ペタルドロップ Mon Aug 19, 2019 7:46 pm

~クリアポー~

クリアポーとメモリーポは、肩を上下させながらキャンプに入っていった。

キャンプの中は、外と比べものにならないほど穏やかで、ますます二匹をあせらせた。この状態で敵の部族がたくさん襲撃しにきたら......。考えるだけで恐ろしかった。

けれど、みんなに危険がせまっていることを知らせたいのに、息を切らせているせいかうまく声が出ないのだった。

トンネルの前で毛を逆立てている二匹を不思議に思ったのか、近くにいたブラクンファーが声をかけた。「どうかしたのか?」

メモリーポーは、それに答えようと口を開きかけた。しかし、それは後ろからやってきたストームファーにさえぎられた。「シャドウ族が攻めてきたぞ!」

だが、その一声が部族のみんなの耳に届く前に、敵が空き地になだれこんできてしまった。

先頭にいる大きな白い雄猫がどすのきいた声で怒鳴る。「ファイヤスター!」

サンダー族の猫たちは驚き、ざわめきだした。「......!シャドウ族よ!」

「きっと、サンダー族を乗っ取りに来たんだ......!」看護部屋から飛び出てきたソーンクローは爪を出した。

「あの猫たちって敵の部族なの?父さん......」目を見開いて体を震わせる子猫たちを、ブランブルクローはすばやく保育部屋に押しこむ。

びっくりして空き地に出てきたサンダー族の猫たちを、シャドウ族の猫たちは取り囲むようにして威嚇し始めた。「俺たちのなわばりを簡単に奪えると思うなよ、サンダー族!」

「......どういうこと?それはこっちのセリフよ!」スクワーレルフライトは意味が分からず、毛を逆立てた。しっぽが二倍もの太さになる。

「何事だ!......ブラックスター」ファイヤスターが警戒した面持ちで、部屋からハイレッジに出てきた。

「久しぶりだな。ファイヤスター」ブラックスターは半ば上を見上げる形になって、ファイヤスターに憎々しげに言う。

「なにかあったのか?......そんなに戦士を引き連れて」

「......とぼけるな。サンダー族は俺たちのなわばりを簡単に乗っ取れると思っているようだが、それは違う!」

「ブラックスター!君たちはなにか誤解している!サンダー族は今まで一度たりともシャドウ族のなわばりを奪おうと思ったことなんかない!」

「それはどうかな?こっちには証拠があるんだ。毎日おたくの猫が一匹、俺たちのなわばりに侵入してきている」

サンダー族の猫たちがざわめいた。そんなこと、初めて聞いたのだ。

クリアポーは自分の体から一気に血の気が引いていくのを感じた。毎晩シャドウ族のなわばりにいたことがバレていたのだ。

「そして今日の朝、それに加えてサンダー族の数匹の猫たちのにおいを感知した......!これが動かぬ証拠ではないか?」

え?私以外にも侵入した猫が?クリアポーは拍子抜けした。
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投稿 by ペタルドロップ Tue Aug 20, 2019 8:07 am

~クリアポー~

一方、他のサンダー族の猫たちは怒ってわめきだした。
 
「どういうことだ?」

「そんな嘘、誰が信じるもんか!」

「サンダー族にそんな猫なんて、いない!いるわけないわ!」メモリーポーも負けじと横から叫ぶ。
 
メモリーポーの言葉を聞いて、自分は友だちを裏切ってしまったんだと感じた。
そうか......。私、とんでもないことをしでかしてしまったんだわ......。クリアポーは激しく悔いたと同時に、メモリーポーに申し訳なく思う気持ちがあふれ出た。

サンダー族の猫たちが立て続けに反論する中、クリアポーだけ、無言のままだった。しかし、みんな抗議していて誰もうつむいているクリアポーに気づかない。


「そう!みんなの言うとおりだ!」上の方からひときわ大きな声があがる。「言っている通り、サンダー族はおたくのなわばりに猫を侵入させてはいない」静かになった猫たちにファイヤスターはにらみを利かせる。
 
「いや、でも俺たちのなわばりにはサンダー族の猫がいたにおいがしっかりとついているんだ!それも同じ猫の」
 
サンダー族に大きなどよめきが走った。
「そんな......」
 
「裏切り者がこの部族にいるってことか?」
 
「ありえないわ」
 
「誰だ?」
 
「でもなんでそんなことしたのかしら」
 
サンダー族の猫たちの多くはこの話を信じたようだ......。
 
ふらつきそうになるのをこらえながら、シャドウ族の中からトードフットを探した。すると、自分と同じく顔を真っ青にした雄猫を見つけた。
 
どうしよう!知られずに済むと思っていたことが、今、明かされようとしている。クリアポーはパニックになった。
 
しかし、そのどよめきを止めたものがいた。ブラックスターだ。「誰かなんてどうでもいい。そう、偉大なるファイヤスター様が俺たちの部族にスパイでもよこしていたんだろう」
 
ファイヤスターは驚き、ブラックスターを穴が開くほど見つめた。「違う。俺はそんな卑怯な真似はしな────」
 
「もうこりごりだ!今にきっと、シャドウ族の力を見せつけてやる」ブラックスターがさえぎって唸った。
 
シャドウ族の戦士たちが爪を光らせて、サンダー族の猫たちにじりじりと近づいた。あぁ!私のせいで戦いが始まってしまうんだわ!
 
「待て。後悔するぞ、ブラックスター」ファイヤスターが慎重に言う。「無駄な争いは起こしたくない」
 
「......後悔するのはそっちのほうだ!」
 
その大きなブラックスターの声で、この戦いの火蓋は切られた。
 
クリアポーはやりきれない思いを抱えながらも、シャドウ族の波に飲まれて行った。
 
 
最初に飛びかかってきたのは、黒と白と三毛柄の混ざった雌猫だった。
 
だが、クリアポーは余裕だった。多分見習いになって間もないのだろう。クリアポーはすぐに背中に乗った雌猫を振り落とした。
 
脇腹に少し噛みつくと、見習いはギャッと悲鳴をあげ、クリアポーの手から抜け出した。
 
もう十分だろう、というようにその見習いに唸って見せると、その見習いはこそこそと戦いの渦に消えていった。
 
戦いは嫌いだ。猫どうしでお互いの体を傷付けあうのが辛い。
 

次の相手を探していると、クリアポーは横から体当たりを食らった。
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投稿 by アイルステラ Wed Aug 21, 2019 7:17 am

フラワリングハート@ふらわり wrote:初めてコメントさせていただきます…

ペタルドロップさんははじめまして!
アイルステラさんは以前私の小説にコメントを下さりありがとうございます…!お久しぶりになりますかね…?

まずお二人の継続力に尊敬します…スムーズに更新し続けられる計画力と精神力…見習いたい…

文章の至るところに原作で使われる表現が散りばめられていて、原作の延長線上のような気持ちでするすると読み進められました…原作への愛を感じます…!
2-6と3-1の間を補完する内容で、中でもメモリーポーの存在によりレインウィスカーの死に意味が生まれていて、よく練られているなと思いました!改めて悲しくなってきちゃいましたね…w
クリアポーとトードフットの関係性がどんな影響を与えていくのかも気になります…突如攻めてきたシャドウ族の真意も…

これからの展開も楽しみです!陰ながら応援いたしております…!

お久しぶりですね!
フラワリングハート@ふらわり さん!!!
コメントありがとうございます!
( ''空が裂けた日'' の更新、楽しみに待っています♪)

5月から投稿し続けて、今ではもう3ヶ月になるみたいですね... (我ながら、よくこんな長編になっているな、という印象です笑)

レインウィスカーは原作ではあまり目立たないキャラだったのですが、今回はメモリーポーの指導者として、活躍してもらいました!(←過去形なのが悲しいです...)

応援とても力になります!ありがとうございます♪
物語の最後までラストスパート!ペタルドロップと2匹(人)で頑張ります!!!

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投稿 by アイルステラ Wed Aug 21, 2019 7:18 am

シャイニングアイ wrote:レインウィスかーの死で泣きました
すごく丁寧に文を書かれていてすごく見習いたいです…
これからも頑張ってください

シャイニングアイ さん!
再び ''雪の結晶'' にコメント、ありがとうございます♪
( "あなたはすべてを壊してしまった'' 今日も読ませて頂きました!!!)

私達の小説で泣いてくださる方がいるなんて...!驚きと喜びでいっぱいです!!!

2人だからこそ、お互いの文章力と発想力にいい刺激をもらうことができています♪

応援ありがとうございます!
あと少し?ですが、頑張ります!!!
どうぞ今後ともよろしくお願いします♪

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