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Road of love ~それぞれの恋の道~ 第七章~

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Road of love ~それぞれの恋の道~ 第七章~ - Page 5 Empty Road of love ~それぞれの恋の道~

投稿 by ジェードウィング Wed Nov 22, 2023 7:23 pm

第八十五章
闇。
闇。
それしかない。
ひとつの足音が、近づいてきた。
その音はだんだん大きくなってくる。
近くにいるようだ。
地獄へ…
なに、この声?や、やだ、やめて!
地獄へ…
「来ないで!」
その悲鳴とともに、ジェードフロストは目を覚ました。
打ち付けられた背中が痛い。
そっと手足を動かしてみたが、どこも問題なく動いた。
どうやら、けがはしていないようだ。
「ジェードフロスト、大丈夫ですか?」
ヘザーポーが、目を真ん丸にしてこちらを見つめている。
「みんなが来ましたよ。私たちを助け出そうとしています」
ジェードフロストは上を見上げた。
真っ暗な地下から見上げる木々や空は、まるで闇の中にぽっかり空いた穴のようだ。
上のほうでは、自分たちを助けようと案を出し合う猫たちの声が聞こえる。
「ジェードフロストが目を覚ましました!」
ヘザーポーが上に向かって大きな声で言った。
「けがはないようです」
複数の猫が安どのため息をもらすのが聞こえた。
次に聞こえたのは、弟の声。
「姉さん、こっちでは今姉さんとヘザーポーを助け出す方法を話しているから、そっちも行動を起こしてくれないか?」
「行動?」
「ああ。穴の中は真っ暗だと思うけど、トンネルが出ていないかとか、どこかにつながっていないかとか段がないかとか…」
ファイヤペルトは三つほど例を上げた。
「わかった。やってみるわ!大きな声を出すかもしれないけど、気にしないで!」
ファイヤペルトがうなずいたのがかろうじて見えた。
「さあ、ヘザーポー。一緒に何かないか探しましょう」
「はい」
ヘザーポーは右足を引きずったまま立ち上がった。
二匹は穴の中を歩き回った。
すると、半分も回らないうちにひとつのトンネルを見つけた。
「トンネルを見つけたわ!いきなり入るのは危ないと思うから、誰かいないか声をかけてみる!」
ジェードフロストは上にいる猫たちに向かって大きな声で話しかけた。
「気をつけろよ!」
ジェードフロストは見えないとはわかっていながらうなずいた。
そして大きく息を吸い、大きな声でトンネルの中に向かって叫んだ。
「助けて!誰かいない?」
その声はどんどんトンネルを進んでいった。
でも、誰にも届かないようだ。
「誰か!」
ジェードフロストはもう一度叫んだ。
しばらく待った。
待ち続けると、小さな足音が聞こえてきた。
まさか、本当に誰かいたの?
そんなつもりじゃ…
「トンネルから足音が聞こえます!」
ヘザーポーは上に向かっておびえ切った声で叫んだ。
上のほうでざわざわと驚いたような声が上がる。
「気をつけろ!いつでも戦えるようにしておけ!」
ライジングスターが言い終えるか言いぽえないかのうちに、一匹の猫が現れた。
「誰?助けを必要としているの?」
ジェードフロストは毛を逆立てた。
「あら、そんなに敵意を表さないで…!決してあなたたちを傷つけたりなんかしないから!」
雌猫は穏やかな口調で話しかけてきた。
「私はコメットアイ(彗星の目)。あっちの山に住んでいる高山猫よ」
「高山猫?」
「ええ。あなたは違うの?」
「ええ、私たちは部族猫。四つの部族に分かれて住んでいるの」
雌猫は瞳を真ん丸にした。
「私たちと一緒だわ!私たちも、一つの山に四つの部族がいるわ。でも、みんな呼び名は『高山猫』よ」
このメス猫は、ずいぶん親し気だ。
「あなたは…えっと、コメットアイ?はここで何をしているの?」
コメットアイは目を真ん丸にした。
「ここの探索に来たの。前まで行き止まりだったトンネルが、いきなり通じるようになったから見て来いって長が」
ジェードフロストは納得したようにうなずいた。
この割れ目ができたのはついこの前だから、前までなかったんだわ…!
「あなたたちはどんな助けを必要としているの?」
「地上に戻りたいのよ」
ジェードフロストは困ったように首をかしげた。
「ああ、そういうこと。ついてきて!」
雌猫はしっぽを振り、トンネルをくぐるように指示した。
二匹はついて歩くことにした。
ヘザーポーがだいぶしんどそうなので、途中からはジェードフロストが首筋をくわえて運んだ。
初めは嫌がったヘザーポーだが、このほうが二匹が楽に進めるのだと分かると、おとなしくくわえられた。
ずいぶん歩いた。
このトンネルは右。
次は左。
たくさんのトンネルを曲がり、ついに緩やかに傾斜したトンネルを見つけた。
「こっちよ」
コメットアイはそのトンネルを上った。
すると…
「まあ、外だわ!」
そこには、フォレスト族のなわばりのあたたかな森が広がっていた。
「コメットアイ、どうもありがとう!おかげで私たちはここに戻れたわ!一族に紹介させて!」
コメットアイは少し照れ臭そうに微笑み、「いいのよ」と礼に返した。
ジェードフロストは安心しながらも、頭の中は「高山猫」についての好奇心があふれ出すばかりだった。
気がかりなのは、「地獄へ」という言葉だけ。

ジェードウィング
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投稿 by ジェードウィング Thu Nov 23, 2023 1:54 pm

第八十六章
「ジェードフロスト?」
ファイヤペルトは穴の中に向かって呼びかけた。
返事がない。
さっき言っていた猫に案内してもらったのか?
「おい、ジェードフロストはどうしたんだ?」
サンダーフォレストが不安そうに聞いた。
「わかりません。さっき言っていた猫に案内してもらったのか    
「みんな!」
ファイヤペルトの言葉をさえぎって聞こえてきたのは…
「ジェードフロスト!」
そう、ジェードフロストの声だ。
「無事だったのか」
ライジングスターが駆け寄った。
「はい。このコメットアイが助けてくれたんです!」
茶色いトラ柄の毛皮に紺色の瞳をしたメス猫が、少し後ろからヘザーポーをくわえてやってきた。
「ヘザーポー!」
ファイヤペルトが急いで駆け寄った。
「兄さん、ちょっと待て!」
チャコールフェザーが群れをかき分けて前に出てきた。
「なんだ?」
「けがをしているんじゃないか?その子はまともに歩けないみたいだ」
アージャーウィングが小さな悲鳴を上げた。
チャコールフェザーがヘザーポーに歩み寄り、診察を始めた。
「おい、ヘザーポー?どこか痛いところはないか?」
「右足。動きません」
チャコールフェザーは急いでヘザーポーの反対側に回り、右足を見た。
そして足の後ろ側を肉球でそっとなでた。
そして、ぎょっと目を見開き、動揺したような声を上げた。
「どうしたの…?」
アージャーウィングが不安そうに目を見開き、言った。
少し間があり、チャコールフェザーが答えた。
「腱…腱が切れています…!」
猫たちが不安そうにざわざわと声を上げた。
「じゃあ、どうなるんだ?」
ファイヤペルトが恐る恐る聞いた。
「…もう一生、ヘザーポーは右足を動かせない」
アージャーウィングが悲鳴を上げた。
すかさずライジングスターがそばによる。
一生?
嘘だろ?
「その子はまだ見習いになったばかりなんだぞ?!何とかならないのか…?」
チャコールフェザーは悔しそうに首を振った。
「僕には何もできない…!」
ファイヤペルトの息づかいが早くなる。
僕のせいだ…!
「どうしたんですか?私の足はどうなっているんですか?…もう…治らないんですか?」
ヘザーポーが絶望したように目線を落とし、またチャコールフェザーを見上げた。
「はっきり教えてください。私は私の運命を知りたい。もう、戦士には慣れないんですか?」
チャコールフェザーはためらったのち、小声で言った。
「すまない…」
ヘザーポーの目が輝きを失った。
「やっぱり…」
ヘザーポーが歯を食いしばる。
「しかたが…ないのかもしれませんね。ファイヤペルトは悪くありません。私の不注意です…」
うなだれるヘザーポーに、父であり族長である父が歩み寄る。
「ヘザーポー、とにかくキャンプへ帰ろう。休養を取らねば」
そして、目を上げた。
「えっと…コメットアイといったな?礼を言うよ。娘と副長を助けてくれて助かった。だが、君はどこから来たんだ?どうしてここに?」
コメットアイは少しためらったのち話し出した。
「私はあっちの山から来た高山猫です。ここにいる理由は、前まで途中で行き止まりになっていたトンネルが急につながったからで…」
「トンネル?」
「はい。高山にひとつの洞窟があって、そこをたどるとたくさんのトンネルが通じていることが分かったんです。私たちがここに出られたのは、そのうちの一つのトンネルを使ったからなんです。おたくのなわばりに勝手に入って申し訳ありませんでした」
ライジングスター半分納得したような、でも少し不思議そうな表情で答えた。
「高山猫…か。覚えておこう。困ったときはここに来てくれ。きっと恩は返す。今日は本当にありがとう」
ライジングスターが頭を下げるとコメットアイも会釈し、さっき出てきたトンネルがあるほうへ戻っていった。
「助かりましたね」
ファイヤペルトはライジングスターに声をかけた。
「ああ」
「ヘザーポーのことは、本当に申し訳ありません。ぼくの不注意でした」
ライジングスターが少し表情を陰らせ、言った。
「お前のせいではない。気を取り直せ。もしかすると、ヘザーポーはほかに生きる道を見つけるかもしれない」

ジェードウィング
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投稿 by ジェードウィング Mon Nov 27, 2023 8:20 pm

第八十六章
『ほかに生きる道を見つけるかもしれない』
本当にそうかなぁ?
ブロークンポーは、ヘザーポーの応援のために森へ出ていた。
高山猫のコメットアイのおかげでジェードフロストもヘザーポーも戻ってくることができ、一族はまた自分たちのキャンプへ向かっていた。
だが、チャコールフェザーの診断によるとヘザーポーの足の腱が切れているということもわかった。
そんな症例、これまでにあったのかな?
チャコールフェザーは、ヘザーポーは戦士になれないと悔しそうに断言した。
いまだにそれが信じられない。
あんなに元気で戦いのわざも上達してきているヘザーポーが、戦士になれないなんて     
チャコールフェザーはうなだれ、ジェードフロストと並んで列の後ろのほうを歩いている。
どうしたんだろう?
何かおかしい気がする。
二匹はもちろん一族の猫で、ヘザーポーのことを気の毒に思う気持ちもわかる。
でも、それにしては絶望しすぎではないか?
もしかしたらチャコールフェザーは看護猫だからヘザーポーの足を直せないことをそこまで悔しく思っているのかもしれない。
とも思ったが、やはり何か違う気がする。
だって、なんだってジェードフロストもあんなに深刻な表情をしているんだ?



キャンプについてからだいぶ時間がたち、月が上ってきた。
戦士たちはほとんど寝床に戻り、空き地にいるのは小さな声で話す少数の戦士たちと見張り役だけだ。
ブロークンポーは寝床に潜り込んだ。
まだ、ヘザーポーのことが頭から離れない。
なぜだろう?
ヘザーポーのことを考えているはずなのに、ジェードフロストの悲しそうな表情が頭から離れない。
僕は、ジェードフロストにあんな悲しそうな顔をしてほしくない。
ジェードフロストには、いつもみたいに笑っていてほしいな      
いつの間にか、ブロークンポーは眠りに落ちていた。
ここはどこだ?知らない。
目を上げると、ヘザーポーの指導者がいた。
ファイヤペ      え?!違う!
そう、この猫はファイヤペルトではない。
目には星の光が輝き、炎の色をした毛には星がきらめいている。
その猫は緑の目に賢そうな表情をたたえ、こちらをじっと見つめている。
ブロークンポーは恐る恐る声をかけた。
「ど、どなたですか?スカイ族の方ですか?」
雄猫は表情を和らげ、口を開いた。
「よく声をかけてくれた。俺はスカイ族の前の時代の猫、スター族のファイヤスターだ。前の部族が滅亡する前の部族に努めた族長」
ブロークンポーは目を真ん丸にした。
スカイ族の前?部族が滅亡?
「どういうことですか、ファイヤスター?」
ファイヤスターは話し出した。
「お前たちの森には、四つの部族がいるな?」
ブロークンポーはうなずいた。
「だが、その部族の歴史はまだ浅い。お前たちが生まれるずっと前、ほかの森にほかの名前の部族が住んでいた。名前や住んでいる場所は違っても、戦士のおきてや暮らし方は変わらない。四つの部族の名前は、シャドウ族、リヴァー族、ウィンド族、そしてこの俺が率いたサンダー族だ」
ファイヤスターが一度言葉を切ったので、ブロークンポーが口を開いた。
「聞いたことがありません」
ファイヤスターはおかしそうにひげを震わせた。
「そうだろうな。知っていたら、それこそ驚きだよ。そしてある時族長になった者たちの野心が強く、何でも戦いで手に入れようとするようになった。運悪く、四つの部族全ての族長がな。そしてその四つの部族     族長を中心とした者たちは、森をめぐって戦いを始めた。スター族でたくさんの会議をし、やっと決まった道は部族の滅亡だった。すべての部族のすべての猫が死に、生き残った者は一匹もいなかった」
ブロークンポーは息をのんだ。
そんなことがあったなんて。
「じゃあ、なんで今部族があるんですか?」
ファイヤスターはうなずいた。
「その後、俺たちはまた話し合い、部族を復活させることにした。四匹の善良な心を持つ猫をこの世に生み出し、スター族が導きながら部族を復活させた。それが、フォレスト、グラス、ラーク、サンドという名前だったため、その名前がそのまま部族名になったんだ」
ブロークンポーは納得し、大きくうなずいた。
「そうだったんですね…」
ファイヤスターは、「わかったかい?私が誰なのか」と首をかしげた。
「でも、なんで僕の夢にいらっしゃるんですか?」
ファイヤスターは目に茶目っ気を浮かべ、「実によい質問だ」と言った。
「そう、私はお前に伝えることがあってきた。お前はジェードフロストとチャコールフェザーがどうしてあんなに悲しんでいるのか知りたいんだろう?」
ブロークンポーは目を輝かせた。
「はい!」
「教えてやろうと思ってな」
ファイヤスターは座りやすい姿勢に直り、また口を開いた。
「まず、お前が来る前のこの部族には、ヘザーリーフという看護猫がいた。あの猫は優秀だった。だが、ジャギッドクローの仲間に残酷に殺されたんだ」
「聞いたことがあります」
その話は、長老たちがよく聞かせてくれた。
「その猫と何か関係があるんですか?」
「ああ、大ありだ」
ファイヤスターがうなずいた。
「ヘザーポーは、ヘザーリーフの生まれ変わりだ。戦士になりたかったんだ」
ブロークンポーは目を見開いた。
「生まれ変わり?」
「ああ、生まれ変わり」
ファイヤスターは繰り返した。
そうだったんだ…初めて知った…!
でも…でも…
でも、ヘザーポーは、戦士になるための生まれ変わりだったのに?

ジェードウィング
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投稿 by ジェードウィング Tue Nov 28, 2023 6:29 pm

第八十七章
『私、今度は戦士になってみたいわ』
うれしそうに話すヘザーリーフの声が、頭によみがえる。
ジェードフロストは頭を振った。
あの子はヘザーリーフの生まれ変わりだけど、前世の記憶も何もない。
あの子はヘザーポーよ。
ほかの何でもない。
ジェードフロストは空を見上げた。
もう、太陽はだいぶ高い位置まで上っている。
空き地の端に目をやると、看護部屋から疲れ切ったチャコールフェザーが出てきた。
「ヘザーポーは?」
ジェードフロストの質問に、チャコールフェザーは首を振った。
「………何もしてやれないのかな?あの子は僕の指導者の生まれ変わりだ。どうにかして助けてやりたいのに…」
ジェードフロストは思い出した。
そうか。ヘザーリーフはチャコールフェザーの指導者だったんだ。
ジェードフロストは、疲れ切ったうつろな目をした弟がもっと可哀そうになった。
「さっき、兄さんが来たんだ。ヘザーポーの様子を見に」
ファイヤペルト!
そうよ、あの子は大丈夫なの?
ジェードフロストは水たまりのそばに目をやった。
ファイヤペルトはうなだれ、水をゆっくりと口に運んでいる。
チャコールフェザーもちらっとファイヤペルトを見やり、口を開いた。
「兄さんは相当がっくり来てるよ。昨日はまともに獲物を食べていない」
チャコールフェザーは心配そうに首をかしげた。
「ヘザーポー、大丈夫ですか?」
ふいに、新しい声がした。
「まあ、ブロークンポー」
急に現れたブロークンポーの翡翠色の目は真ん丸で、金茶色の毛は輝いている。
「ヘザーポーはすごく悲しんでいる。だが、歩けるようにはなるよ」
チャコールフェザーが優しく言った。
ブロークンポーはしばらく黙って地面を見つめていた。
が、とうとう勇気を出したように口を開いた。
「じゃあ…じゃあヘザーポーが看護猫になればいいんじゃないですか?前世でそうなったように」
それを聞いた二匹は目を見開いた。
「ど、どうしてあなたが…?」
「夢で、ファイヤスターというスター族の方に聞いたんです」
ブロークンポーが座りなおすと、チャコールフェザーがそわそわとしっぽを振った。
「お前はどこまで知っている?」
「ほとんど全部だと思います。ヘザーポーはヘザーリーフの生まれ変わりだということ、そして亡くなったときは「次は戦士になりたい」と言っていたこと。お二人は、他に知っていることはありますか…?」
「いや、お前が今言ったことだけだ」
しばらく間があった。
ようやく口を開いたのは、チャコールフェザー。
「あの子がこれから何になるかはあの子と族長が決める。俺たちに決める権限はない」
また、沈黙の時間。
ジェードフロストはファイヤペルトをちらっと見やり、言った。
「私、ヘザーポーを見てくるわ。どうしているか気になるもの」
そして小声であいさつをし、日向に寝そべるモリーに会釈してから看護部屋へ駆けて行った。
そう、モリーはまだ部族にいる。
モリーはその狩りの能力をかわれ、部族に迎え入れられた。
ライジングスターに戦士名を与えようと言われたが、モリーはこう言った。
「いいえ、ライジングスター。この名前は母や父がつけてくれた名前であり、愛した猫アルフィーが何度も呼んでくれた大切な名前です。この名前を捨てるわけには行けません」
この言葉に多くの猫が感心した。
亡くなってもなおアルフィーを慕い続けるその言葉が、部族猫の心に深く刺さったのだろう。
それから、モリーは戦士として部族で暮らしている。
ジェードフロストは小走りで看護部屋のある岩壁へ向かい、ツタのカーテンをくぐって中に入った。
「ヘザーポー?」
返事がない。
が、中には絶対いるはずだ。
よく見ると、ヘザーポーは寝床で小さな肩を震わせていた。
「ヘザーポー…」
「お願いです、来ないでくださいジェードフロスト…」
ヘザーポーの蚊の鳴くような声に、ジェードフロストは足を止めた。
「ヘザーポー、あなたにはまだ生きる道があるわ。簡単に諦め       
「無理ですよ!」
ヘザーポーはジェードフロストの言葉を激しくさえぎった。
ヒースの葉のような鮮やかな色をした目には、悔しさと涙が浮かんでいる。
「もう私に生きている価値なんてない!戦士になれず、一生一族の足を引っ張りながら生きていくの!」
ヘザーポーは痛む足を無理やり動かし、顔をしかめながら立ち上がった。
「もういや!こんなことになるなら、生まれてこなきゃよかった!」

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投稿 by ジェードウィング Thu Nov 30, 2023 7:59 pm

ヘザーポーが苦しんでいるところ大変申し訳ない
でも、ほかの部族の猫の更新が遅れているので猫紹介3
詳細違ったらすまん
あと、リーフポーの容姿は変更かも…

●フォレスト族
族長  ライジングスター(昇る星):黄金色の毛をした雄猫。目は薄青色。
副長  ジェードフロスト(霜がかかった翡翠):翡翠色の瞳をした白い雌猫。「足・しっぽ・耳」の先が銀色(追加情報です)。
    弟子はホワイトポー。
看護猫 チャコールフェザー(炭の風):茶色みがかった灰色の雄猫。目は水色。
戦士猫 アージャーウィング(紺碧の翼):紺色と琥珀色のオッドアイの白い雌猫。ライジングスターのつれあい。
    サンダーフォレスト(雷の森):薄めの金色の毛皮に青い目の雄猫。弟子はリーフポー。
    ミスティスカイ(霧がかかった空):青い目に灰色の毛皮の雌猫。弟子はアッシュポー。
    ファイヤペルト(炎の毛皮):炎のような色の毛をした緑の目の雄猫。弟子はヘザーポーだが…
    シンバズロア(ライオンの雄叫び):黄金色のトラ猫で、目は金色。弟子はブロークンポー。
    ジェードウィング(翡翠の翼):斑点模様のある銀色と、白の毛皮の雌猫。クリムソンハートのつれあい。
    クリムソンハート(深紅の心):珍しい、赤銅色の目をした白い雄猫。
    シルヴァークロー(銀色のかぎづめ):銀色と白の毛皮の雄猫。目は琥珀色。
    ブラックストーム(黒い嵐):真っ黒な雄猫で、目は青。
    スラッシュウィンド(ツグミの風):茶色と黒のしま柄に青い目をした雄猫。
    タイガーリリー(虎百合):緑の目をした銀色のトラ柄の雌猫。
    ヴァイオレットプール(スミレの水たまり):薄紫の目をした白い雌猫。
    リリーウィング(ユリの翼):琥珀色と薄桃色のオッドアイの白い雌猫。ヴァイオレットプールの妹。
    アイスブラッサム(氷の花):水色と薄桃色のオッドアイの白い雌猫。サンペルトのつれあい。
    サンペルト(太陽の毛皮):淡いショウガ色っぽい金色の毛皮をした薄青色の目の雄猫。
    クラウドウィング(雲の翼):青い目をした白い雌猫。ブラックストームの妹で、フォレストアイのつれあい。
    フォレストアイ(森の目):驚くほど鮮やかな緑の目をした茶色い毛皮の雄猫。
    ホーククロー(鷹の爪):こげ茶と白の毛皮に琥珀色の目をした雄猫。スラッシュウィンドの兄。
    シャイニングウィング(輝く翼):淡い黄金色の毛皮に緑の目をした雌猫。ミスティスカイの妹。
    スノウフォール(散る雪):青い目をした白い雌猫。ストームライトの姉で、ラセットウィンドの妹。
    ストームライト(嵐の光):緑の目をした灰色の毛皮の雄猫。スノウフォールとラセットウィンドの弟で、ジェードフロストの元弟子。
    ラセットウィンド(赤褐色の風):赤褐色の毛皮の、琥珀色の目をした雄猫。スノウフォールとストームライトの兄。
    スパロウペルト(スズメの毛皮):黒い斑点のある茶色の毛皮と白の毛皮の雄猫。目は灰色。
    モスペルト(コケの毛皮):白地に三毛柄の雌猫。目は緑色。
    スペックルバーク(まだらな樹皮):白地に茶色のぶち柄の雄猫。目は緑色。
    モリー:もと浮浪猫。ブロークンポーの母。淡い砂色で、目は水色。
見習い ホワイトポー(白い足):琥珀色の目をした、白い雄猫。
    リーフポー(葉っぱ足):緑の目をした三毛柄の雌猫。
    アッシュポー(灰色の足):青い目をした灰色の雌猫。
    ヘザーポー(ヒース足):薄茶色の毛皮の雌猫。目は薄緑。とても活発だったが、足の腱が切れてしまう。
    ブロークンポー(壊れた足):金茶色の毛皮に翡翠色の目をした雄猫。
                 昔母親に捨てられたことから自ら名前を選ぶ。
長老猫 ホワイトクロー(白いかぎづめ):琥珀色の目をした白いオス猫。
    スポッティドウィング(まだらな翼):三毛柄のメス猫で、目は琥珀色。
    ラシットストライプ(赤褐色のしま):緑の目をした、赤褐色のトラ柄のオス猫。最年長。

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Road of love ~それぞれの恋の道~ 第七章~ - Page 5 Empty ラーク族

投稿 by ジェードウィング Thu Nov 30, 2023 8:16 pm

こちらは一部だけね

●ラーク族
族長  クロウスター(カラスの星):琥珀色の目をした真っ黒なオス猫。右足の先だけ白。
副長  サマーネビュラ(夏の星雲):きらきらとした水色の目を持つメスの白猫。胸に淡いショウガ色の三日月模様がある。
看護猫 ペタルフォール(散る花びら):メスの三毛猫で、目は薄桃色。弟子はフラワーポー。
戦士  チェリーアイズ(桜の目):薄桃色の目をした白い雌猫。
    ピーコックフェザー(孔雀の羽):クジャクの羽のような青緑の目をした黒い雌猫。
    サンクロー(太陽のかぎづめ):金色っぽい薄茶の雄猫。目はオレンジ。
    スモークファー(煙の毛皮):濃い灰色の毛皮の、琥珀色の目をした雄猫。
    スコーチフォレスト(燃えさしの森):オレンジの目をした、こげ茶の雄猫。
    レインクラウズ(雨の雲):青い目をした灰色のオス猫。ブラクンペルトの兄。
    パインウィスカー(松のひげ):こげ茶のトラ柄のオス猫。目は青。弟子はモーニングポー。
    ブラッサムフロー(花の流れ):薄いクリーム色のメス猫で、目は薄桃色。
    ラスティハート(さびた心):オスで、水色の目をしたさび猫。
    スノウスワロウ(雪のツバメ):白と黒のメス猫。目は琥珀色。
    ヴォウルウィスカー(ハタネズミのひげ):薄茶で青い目のオス猫。弟子はペブルポー。
    クラウドリーフ(雲の葉っぱ):薄緑の目をした白いメス猫。ヴォウルウィスカーのつれあい。
    ブルーウィング(青い翼):青い目をした灰色のメス猫。ウィンドテイルのつれあい。
    ウィンドテイル(風のしっぽ):こげ茶の毛皮に琥珀色の目をしたオス猫。弟子はボウルダーポー。 
見習い フラワーポー(花の足):琥珀色の目をした、薄茶に白っぽい斑点模様のある雌猫。
    モーニングポー(朝の足):クリーム色の毛をした、黄色い目のメス猫。
    ペブルポー(小石足):灰色の毛の、緑の目をした雄猫。
    ボウルダーポー(石足):灰色に黒のまだら模様の雄猫。目は青。

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投稿 by ジェードウィング Fri Dec 01, 2023 5:59 pm

●グラス族
族長  ゴールデンスター(黄金の星):族長。緑の目に黄金色の毛のオス猫。
副長  グレースパーク(灰色の火花):副長。琥珀色の目に灰色の毛のオス猫。
看護猫 マグノリアファー(モクレンの毛):看護猫。金茶色の毛に薄緑の目をしたオス猫。
戦士猫 ティスルソーン(アザミのとげ):灰色の毛をした、赤紫の目の雄猫。弟子はゴースポー。
    リヴァーフロー(川の流れ):灰色と白の雌猫。目は水色。弟子はバードポー。
    リードウィスカーズ(アシのひげ):緑の目をした、少し薄い黒の雄猫。弟子はシャロウポー。
                    つっけんどんだが、襲撃の時にジェードフロストと協力したことから親しみを感じている。
    ストーンハート(石の心):琥珀色の目をした、灰色の雄猫。弟子はマウスポー。
    ペタルアンバー(琥珀の花びら):琥珀色の目をした、三毛柄の雌猫。
    スカイウィング(空の翼):空のような水色の目を持つ雌の白猫。耳・足・しっぽの先と鼻づらが淡いショウガ色で、美しい。
    サンダーペルト(雷の毛皮):黄金色の毛皮をした青い目の雄猫。
    リーフウィング(葉の翼):薄紫の目をした金茶色と白の毛皮の雌猫で、マグノリアファーの妹。
    ラセットクロー(赤褐色の爪):赤みがかった薄茶の毛皮に水色の目を持つ雄猫。
    シルヴァーウィンド(銀色の風):青緑の目を持つ銀色の雌猫。ウィロウクローのつれあい。
    ウィロウクロー(柳の爪):琥珀色の目をしたこげ茶色の雄猫。
    フロストモス(霜の蛾):青い目をした、白地に黄土色のまだら模様の雌猫。
    グラスウィング(草の翼):緑の目をした雌の三毛猫。ホワイトストーンのつれあい。
    ホワイトストーン(白い石):琥珀色の目をした白い雄猫。
    アイスヘア(氷の野ウサギ):白に近い、とても薄い茶色の毛皮に、澄んだ水色の目をした雌猫。ブレイズハートのつれあい。
    ブレイズハート(燃える心):赤っぽい濃いショウガ色の雄猫。目は青。
見習い バードポー(鳥の足):こげ茶のトラ柄の雌猫。目は緑で、前足と胸が白い。
    ゴースポー(ハリエニシダの足):ハシバミ色の目をした、灰色の雄猫。
    シャロウポー(浅い足):毛足の短い、淡い灰色の毛をした雌猫。目は水色とハシバミ色のオッドアイ。ゴースポーの妹。
    マウスポー(ネズミの足):薄茶色の雄猫。足先と耳の先が灰色。目は琥珀色。
    

ジェードウィング
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Road of love ~それぞれの恋の道~ 第七章~ - Page 5 Empty Re: Road of love ~それぞれの恋の道~ 第七章~

投稿 by リードテイル Sat Dec 02, 2023 3:00 pm

読んでます!
やっとここまで来ました〜! それと…その、この物語の中で出てくる猫の名前を、お借りしたいのですか…できれば色なども。 いいでしょうか?

リードテイル
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投稿 by ジェードウィング Sun Dec 03, 2023 10:21 am

わあ~リードテイルさんだ!
読んでくれたんだね
ありがと~(∩´∀`)∩

あと、名前はご自由に使ってください♪
わけわかんないのあったらごめんねw

ジェードウィング
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投稿 by ジェードウィング Sun Dec 03, 2023 12:48 pm

●サンド族
族長  トゥリクルスター(雫の星):緑の目に薄い灰色の毛皮のオス猫。
副長  アウルウィング(フクロウの翼):琥珀色の目で、茶色にこげ茶の斑点模様のある毛皮のメス猫。
看護猫 コーラルアイ(珊瑚の目):薄めの珊瑚色の目をしたメスの白猫。鼻づら、しっぽ・足・耳の先が灰色。
戦士猫 ライトクラウド(光の雲):琥珀色の目をした白い雌猫。弟子はベリーポー。
    レインナイト(雨の夜):薄い灰色の、水色の目をした雄猫。弟子はソーンポー。
    ブレイズスカイ(燃える空):青い目をした、金茶色の雄猫。弟子はウェブポー。
    ドーンムーン(夜明けの月):薄紫の目をした黒い雌猫。弟子はスポッティドポー。
    スパロウファー(スズメの毛):茶色い毛皮に琥珀色の目をした雄猫。弟子はグリーンポー。
    ブルースカイ(青い空):青い目をした雌の白猫。
    アッシュムーン(灰色の月):目が青い灰色の雌猫。
    サンドウェーブ(砂の波):薄紫の目の淡いショウガ色の雌猫。
    スカイクロー(空の爪):青い目をした、白に近い灰色の雄猫。
    ソーンウィスカー(とげのひげ):灰色に黒のしま柄の雄猫。
    ホワイトブリーズ(白いそよ風):灰色の目をした雌の白猫。
    ミスティムーン(霧がかかった月):白と灰色の毛皮の雌猫。目は琥珀色と青のオッドアイ。
    イーグルアイ(鷲の目):黒っぽい茶色と白の毛皮の雄猫。目は灰色みがかった琥珀色。
見習い ベリーポー(ベリーの足):毛足の長い、灰色の雌猫。目は透明っぽい赤。
    ソーンポー(トゲの足):茶色いトラ柄の雄猫。目は金色。
    ウェブポー(クモの巣の足):薄い灰色と白の雄猫。目は薄緑。
    スポッティドポー(斑点のある足):青い目をした三毛柄の雌猫。
    グリーンポー(緑の足):驚くほど鮮やかな緑の目をした雄猫。毛皮は白に近い、淡い灰色。少し濃い色の斑点がある。

ジェードウィング
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投稿 by ジェードウィング Sun Dec 03, 2023 1:12 pm

第八十八章
「ヘザーポー?」
返事がない。
ファイヤペルトは看護部屋の中に耳を澄ました。
すると、チャコールフェザーの優しい声と、ヘザーポーの元気な返事が聞こえてきた。
ファイヤペルトは何かと思って中に入ると、チャコールフェザーが肉球にトゲをさしてしまったホワイトポーの手当てをしていた。
「この薬草は何ですか?」
ヘザーポーが熱心に尋ねる。
「これはマリーゴールド。化膿止めだ」
チャコールフェザーはその質問に答えるとこちらに気が付き、「やあ、兄さん」とあいさつをした。
「ああ。ホワイトポーは大丈夫かい?」
ファイヤペルトがちらっとホワイトポーを見やると、ヘザーポーもこちらに気が付いたようだ。
「あ、ファイヤペルト!ホワイトポーはイバラの茂みと格闘しちゃったんですよ!よっぽど戦いの練習がしたいみたいで」
ヘザーポーの目がいたずらっぽく輝く。
「戦いたかなかったよ」
ホワイトポーがおかしそうにひげを震わせた。
「ヘザーポー、ベリーをとってきてペースト状にしてくれないか?塗り薬を作るから。こいつはかすり傷までつくってるよ」
ヘザーポーはうなずき、顔をしかめながら立ち上がった。
そして動かない足を引きずって薬草の貯蔵場所へ行った。
チャコールフェザーが目を上げた。
「あの子は記憶力がいい。治療に使う薬草の名前はもうほとんど覚えた」
ファイヤペルトは首をかしげた。
「あの子は看護猫になるのか?」
チャコールフェザーはしっぽを一振りし、「この前ブロークンポーにも同じことを言われたよ」といった。
「あの子が?」
「ああ」
少し間があり、チャコールフェザーが言った。
「なあ、兄さん。もしもヘザーポーが誰かの生まれ変わりだったら、どう思う?」
「どうって?」
ファイヤペルトの心臓がどくどくと音を立てる。
「例えば…ヘザーリーフとか      
「ほんとにそうなのか?」
ファイヤペルトは間髪を入れずに言った。
チャコールフェザーはしばらくためらった。
そして看護部屋の入り口にちらっと眼をやり、「実は、そうなんだ」と小さな声で言った。
嘘だろ?
あの子がヘザーリーフの生まれ変わり?
「このことを知ってるのはジェードフロストとブロークンポー、それと僕だけだ。かのじょは戦士になるために生まれ変わったんだが、不運にも足が動かなくなった」
ファイヤペルトは声が出なくなった。
ヘザーリーフの生まれ変わり?
でも足が動かなくなってしまって…
戦士になるための…?
もう何が何だかわからない。
「これですか?」
ふいにヘザーポーの明るい声が聞こえ、チャコールフェザーはさっきの暗い表情をした猫とは別の猫のような明るい表情に戻した。
「ああ、それだ。お前は覚えが早くて助かるよ」
ヘザーポーが目を輝かせた。
そのヘザーポーの表情を見て、ファイヤペルトは胸が熱くなった。
もう、この子は大丈夫かもしれない。
でもこの子の足が動かないなら?
戦士になれないなら?
思う存分に戦いの訓練や狩りができないとすれば?
その時、ヘザーリーフの願いはどうなってしまうんだろう?

ジェードウィング
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投稿 by ジェードウィング Mon Dec 04, 2023 8:16 pm

第八十九章
「じゃあ、ひとつは私が率いるわ。もう一つはホーククロー。頼めるかしら?そしてあとひとつはシャイニングウィングに任せるわ。パトロールの予定が入っていないものを選んでね」
ジェードフロストは、もう慣れてきた副長の指示をてきぱきと出し、狩猟部隊を率いる準備をした。
「ホワイトポー?行きましょう。さあ、誰を誘おうかしら?」
そこで、サンダーフォレストが歩み寄ってきて言った。
「一緒に行かないか?リーフポーに狩りの指導もかねて」
サンダーフォレストがやさしくウィンクした。
ジェードフロストは目を輝かせ、答えた。
「ええ、もちろんよ!一緒に行きましょう」
そう言って出入り口に向かおうとすると、弟のファイヤペルトが前に立ちはだかった。
「僕も一緒に行っていいかい?弟子がいないのでやることがなくて」
そう言ってファイヤペルトは、サンダーフォレストを挑戦するようににらみつける。
ジェードフロストはファイヤペルトの耳をしっぽではじいた。
「敵意をあらわにしない!どうしてわかってくれないの?」
ファイヤペルトはちらっとジェードフロストを見やり、目をそらした。
「僕は姉さんが心配なだけだ」
「どうして?かれはれっきとしたフォレスト族の猫なのよ?」
ジェードフロストの返事に、ファイヤペルトは鼻を鳴らした。
「なんでもいいよ。早く行こう」
ジェードフロストはファイヤペルトの言葉に困り、サンダーフォレストをちらりと見た。
が、サンダーフォレストには話の内容は聞かれていなかったようだ。
「何話してるんだ?早く行こう」
「ええ、そうね」
ジェードフロストは弟子と狩猟部隊のメンバーを連れてイバラのトンネルを抜けた。
本来ならここにヘザーポーもいたはずなのに…
ジェードフロストは首を振った。
もう、そのことはできるだけ考えない。
狩りに集中しなきゃ。
そう自分に言い聞かせ、森に出た。
森の木々には新しく若葉の季節がおとずれ、もう緑の葉が茂っている。
もうすぐ子猫も増えるかしら。
ジェードフロストは、最近よく一緒にいる妹のタイガーリリーとスラッシュウィンドのことを頭に浮かべ、心が温かくなった。
「どこに行く?」
ファイヤペルトがさっきとは全く違う猫のように、明るく親し気に話しかけてきた。
「そうね…オークフロクはどうかしら?日当たりがいいし、小川が流れているから」
「さすが、ジェードフロストだ。よし、オークフロクに行こう」
サンダーフォレストがのどを鳴らした。
「先輩、一つ言わせてもらいますけど、この狩猟部隊を率いているのはジェードフロストですよ!」
ファイヤペルトが口をはさんだ。
ジェードフロストはファイヤペルトをきっとにらみつけ、また耳をしっぽではじいた。
その様子を見たサンダーフォレストはおかしそうにひげを震わせ、「そうだったな」と返した。
そしてまた一行はオークフロクに向かって駆け足で進み始めた。
しばらくして、オークフロクに着いた。
すると、向こう側からパトロール隊が走ってきた。
ひどくあせり、おびえているのがにおいで分かる。
「どうしたの?」
ジェードフロストはパトロール隊の猫たちに駆け寄った。
パトロール隊を率いていたブラックストームが肩で息をしながらも話し出した。
「助けてくれ…!あっちのほうで、〈二本足〉が捨てた透明でかたいものから出た光が…」
ジェードフロストは不安げに目を見開いた。
それがどうなってしまっているというの…?
「…燃えているんだ!」
ジェードフロストは体中に駆け巡る不安を必死に抑え、すぐに指示を出した。
「アッシュポー、戦士を呼んできて。急いで!ミスティスカイはコケを集めてきてちょうだい。できる限りたくさんよ。ブラックストームとモリーはその場所へ案内してちょうだい!」
それぞれの猫がすぐに行動に出た。
ジェードフロストたち狩猟部隊は急いで駆けだし、燃えている場所へ向かった。
その場所に着いたのとほとんど同時に、ミスティスカイがたくさんのコケをくわえて現れた。
「ありがとう!」
ジェードフロストは草地に目を戻した。
本当だ!燃えている!
その透明のものに当たった光がそのまま向こうにつきぬけ、草を燃やしている。
炎はまだ小さいが、とんでもない事態だ。
「早く消さなきゃ!」
ジェードフロストが急いでコケをくわえ、炎に駆け寄ろうとした。
その瞬間、これまでごく小さかった炎が威嚇するように大きく燃え上がった。
どうしよう!山火事になってしまう!
ジェードフロストやほかの猫たちはおびえ切り、そのまま動けなくなった。
ほんの少し間があり、リーフポーが口を開いた。
「…どうしたんですか…?」
ジェードフロストはそちらを見やった。
「どうして早く消さないんですか、火事になっても構わないんですか?!」
「で、でも     
「誰もやらないなら、私がやります!」
リーフポーはジェードフロストの言葉を聞く前に飛び出し、大きなコケのかたまりをくわえて火の中に飛び込んだ。
「リーフポー!」
指導者のサンダーフォレストが大きな声で呼び、炎に駆け寄った。
リーフポーは必死になってコケで炎を押さえつけている。
その勇気にスカイ族が味方したのか、炎はたちまち消えた。
全ての猫がおびえ、目を見開いている。
と思ったその時!
再び炎が燃え上がり、最後に足掻くようにリーフポーの顏の右半分を襲った。
リーフポーは思わぬ事態に悲鳴を上げ、火から逃れようと必死にもがいた。
ジェードフロストは急いでリーフポーの顏に濡れたコケを押し付け、炎を消した。
とうとう炎がすべて消えたのだ。
だが、リーフポーはぜいぜいと肩で息をして動かない。
「リーフポー!」
ジェードフロストは必死に呼びかけた。
「リーフポー、目を開けて!」
ほかの猫たちは目を見開き、不安げに見守っている。
リーフポーはうなり声をあげ、地面に隠れていない側の、左目を開けたのが見えた。
「リーフポー…」
ジェードフロストは安どのため息をつく…と思ったが、そうはいかなかった。
その場にいる全員が息をのんだ。
体を起こしたリーフポーの顏の右半分は火傷で赤みがかった肌がむき出しになっている。
リーフポーは目に不安と痛みの涙を浮かべ、蚊の鳴くような声でたずねた。
「私、どうなっちゃったんですか…?」

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Road of love ~それぞれの恋の道~ 第七章~ - Page 5 Empty Road of love ~それぞれの恋の道~

投稿 by ジェードウィング Wed Dec 06, 2023 6:53 pm

第九十章
ブロークンポーは獲物の山を嗅いでいた。
今日はシンバズロアの訓練は昼からだし、もう少し時間がある。
何をして待とうかなぁと考えていると、イバラのトンネルのほうからおびえた猫の放つきついにおいが漂ってきた。
いったいどうしたっていうんだ?
気づいたのはブロークンポーだけでなかったようだ。
ヴァイオレットプールとリリーウィングは心配そうにイバラのトンネルに駆け寄り、タイガーリリーとスラッシュウィンドは身を寄せて話し合っている。
トンネルを抜けてきたのは…
「アッシュポー!いったいどうしたんだ?」
そう、アッシュポーだ。
アッシュポーは肩で息をし、おびえて目を見開いている。
「助けてください!〈二本足〉が捨てたものが燃えていて、ジェードフロストやブラックストームは火を消しに行きました!」
その言葉を聞くなりライジングスターが立ちあがり、戦士たちを集めた。
「ストームライト、ラセットウィンド、スノウフォール、シンバズロア、ブロークンポー、ジェードウィング、クリムソンハートは一緒に来てくれ!あとの者はキャンプを守れ!」
そう言ってアッシュポーに目を移し、「案内を頼む」と力強い声で言った。
アッシュポーはうなずき、今全力で走ってきたのにもかかわらず、またさっとイバラのトンネルを抜けた。
ブロークンポーもライジングスターの後に続き、風のように森の木々を抜けた。
その時嫌な予感がしたせいか、スカイ族の戦士が運んでくれるかのように早く走れた。
「この先です!」
アッシュポーは言うなり疲れで足が動かなくなって草地に倒れこみ、目を見開いてぜいぜいと息をした。
「よくやってくれた!俺たちに任せろ!」
ライジングスターは倒れこむアッシュポーに声をかけ、ハリエニシダの茂みを飛び越えた。
すると、そこにはこれより恐ろしいものはないというほどの恐ろしい状況が待ち受けていた。
「リーフポー!」
炎は消えているが、リーフポーの顏右半分が     やけどで赤くはれている。
ホワイトポーは妹であるリーフポーのそばにかがみこんで必死に呼びかけ、ほかの戦士たちはあまりの出来事に立ち尽くしている。
「何があったんだ…?」
ライジングスターが不安そうな表情でたずねた。
ジェードフロストがゆっくり顔を上げた。
その目は計り知れないほどの苦悩に満ちている。
「私のせいなんです」
「だから、どういうことなんだ?」
ライジングスターがもう一度繰り返した。
「私はコケで火を押さえつけようとしていました。でも…」
ライジングスターがごくりと生唾をのんだ。
「でもその火は大きく燃え上がり、近づけなくなりました」
ジェードフロストは、目をぐっと細める。
「そこで、動けなくなった私たちの代わりに火を消したんです。そしたら…」
ジェードフロストも生唾を飲み込んだ。
「もう一度火が燃え上がり、リーフポーの顔を襲いました。最後に足掻くように」
もとからいた戦士たちが、その時のことを思い出して身震いした。
しばらく沈黙が続き、口を開いたのはモリーだった。
「とにかくキャンプに帰りましょう。この子の手当てをしないと」
その声と同時に、まだ少し息が切れているアッシュポーがハリエニシダの茂みをくぐって出てきた。
「間に合いまし       
だがそこまで言い、息をのんだ。
「リーフポー…!」
リーフポーは首をかしげた。
「どうなってるんですか?何が起こっているんですか?顔がすごく痛いです…でも目は見えます」
「目が見える」という言葉に、ブロークンポーはいくらか安心を得ることができた。
だが、これからリーフポーはどうなるんだ?

一行はキャンプに着き、体を落ち着けた。
まだすべての猫の心臓がドクドクと音を立てているのが分かる。
空き地にいた猫は、リーフポーの火傷を見てはっと息をのむ者も多かった。
リーフポーはジェードフロストとブロークンポーに支えられ、看護部屋に向かった。
リーフポーはツタのカーテンをくぐり、その後ろからジェードフロストとブロークンポーも入った。
中にはヘザーポーとチャコールフェザー、それからファイヤペルトがいて、もう薬草の準備はできていた。
「ここにリーフポーを寝かせてくれ」
チャコールフェザーはそう言ってやわらかそうな寝床をしっぽで示した。
そして診察を始めた。
しばらく時間がたち、チャコールフェザーが口を開いた。
「痛いのは顔だけかい?ほかにけがはないか?」
「はい、顔だけです。でも、すごく痛い。あ、前足を少し火傷したかもしれません」
リーフポーの言葉を聞くなりチャコールフェザーは触診を始めた。
チャコールフェザーはリーフポーの前足に鼻を触れたままスーッと動かし、あるところで止めた。
「ここかい?」
「はい、そこです」
リーフポーが痛みに顔をしかめた。
チャコールフェザーが顔を上げた。
「ヘザーポー、あのベリーをとってきてくれ。塗り薬を作るから。それと、ジャコウソウを頼む。俺はヒレハリソウを試してみるよ。火傷の事例は初めてだが、何か効果がある薬草はあるはずだ」
ヘザーポーはうなずき、すぐに行動に出た。
ファイヤペルトは少し悲しそうな表情を見せたが、すぐにその表情は消え、誇らしさが沸き立っているのが分かる。
ヘザーポーはジャコウソウとベリーの包まれた葉をくわえてすぐに帰ってきた。
チャコールフェザーもすぐに帰ってきて、治療を始めた。
ヘザーポーはベリーをかんでペースト状にした。
そしてそこにチャコールフェザーがヒレハリソウとジャコウソウをかんでドロッとなったものをくわえ、そしてケシの実を二、三粒入れて混ぜ合わせた。
「全部食べろ」
チャコールフェザーがリーフポーに薬を差し出し、少し考えるような表情になった。
「あれが効くかもしれないな」
「何がですか?」
ヘザーポーがすかさず尋ねる。
「あの薬草だよ。前、とってきただろ」
「ああ、あの薬草ですか…たしかに。試してみる価値はあるかもしれませんね」
チャコールフェザーはヘザーポーの返事にうなずき、看護部屋の奥のほうから白い花びらが四枚付いた、嫌なにおいをした葉っぱをとってきた。
「これは、ドクダミだ」
リーフポーがぎょっとしたような表情を見せた。
「そんな嫌なにおいの葉っぱが、薬草?」
「ああ。もちろん、においは消してやるよ。ヒースの花をこすりつければいいだろう」
リーフポーはほっとした表情になり、チャコールフェザーは作業に取り掛かった。
ブロークンポーも一息つき、体制を直した。
ああ、スカイ族さま。
どうか勇敢なリーフポーをお救いください。

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投稿 by ジェードウィング Thu Dec 07, 2023 9:09 pm

第九十一章
リーフポーのようすを見に行こうと見習い部屋を出たブロークンポーの目に入ったのは、不自由な足を引きずって族長部屋へ向かうヘザーポーの姿だった。
ブロークンポーは急いで空き地を横切り、ヘザーポーのもとへ行った。
そしてヘザーポーを横から支え、少しでも足にかかる負担を軽減させようと心掛けた。
族長部屋の前まで来たヘザーポーは少し息を切らし、「ありがとう」と小声で礼を言った。
ブロークンポーはうなずき、付き添って中に入った。
「族長?」
ヘザーポーが小さな声で呼びかけた。
「なんだ?ヘザーポーか?」
「はい、そうです」
中から返ってきたのはなんと…チャコールフェザーの声だった。
ヘザーポーは少し困ったような、おびえたような表情になり、「入ってもいいでしょうか?」とたずねた。
今度は、族長の声が返ってきた。
「ああ、いいとも。どうしたんだい?」
ヘザーポーはゆっくり足を踏み出し、ツタのカーテンをくぐった。
ヘザーポーは大きく息を吸い、ゆっくり、はっきりとした声で確かにこう言った。
「私を見習い看護猫にしてください」
ブロークンポーは目を見開いた。
それは、自分の考えと全く同じだったのだ。
ライジングスターは少し目を見開き、驚いたような表情を見せたが、チャコールフェザーは少しも表情を変えない。
「どういうことだ?」
ライジングスターが冷静にたずねた。
ヘザーポーは少しためらい、そして言った。
「私、今は足が動かなくて一族の邪魔者になってしまった気分なんです」
ライジングスターがゆっくりとまばたきをした。
まるで、「そんなことはない」と安心させるような優しい瞳だ。
「で、私考えたんです。私の今の生きがいは、チャコールフェザーの治療を手伝うことだって。私、今それがすごく楽しくて、一番やりがいがあるんです。私一生懸命頑張ります…もう薬草や効果、使い方も少しならわかります…!」
ヘザーポーはすがるような目でチャコールフェザーを見つめた。
しばらく沈黙の時間が続いた。
ヘザーポーは、こんなことを考えていたんだ。
でも、日ごろのヘザーポーをもっとしっかり見ていたら、そんなことぐらい気が付いていたかもしれたい。
確かに、ホワイトポーの治療を手伝っていたヘザーポーは、足が動かなくなってからのどの時よりも楽しそうだった。
ずっと真剣な表情でヘザーポーを見つめていたチャコールフェザーが、とうとう口を開いた。
「本気か?」
ヘザーポーは間髪を入れずに行った。
「本気です」
チャコールフェザーは表情を和らげ、言った。
「後は族長に任せます。最終的に判断を下すのは族長ご自身ですから」
ライジングスターはうなずき、「もちろんだ」と返事をした。
「それが今、お前に必要なものならば、喜んで与えよう」
ヘザーポーはほっと息をつき、目を輝かせた。
「ありがとうございます。一生懸命頑張ります」
ヘザーポーをじっと見ていたチャコールフェザーが、ブロークンポーに目を移し、少しだけうなずきかけた。
ブロークンポーは少し頭を下げ、しっぽを一振りしてから族長部屋を後にした。
族長部屋をすぐ出たところにいるとき、命名式はいつにするかを話し合う三匹の声が聞こえた。
よかった。
これでヘザーポーも生きがいを見つけた。
ブロークンポーは、かつての見習い仲間が幸せになれることを祈った。
あとひとつ、気がかりなのは…
「道理でみんな、私を見たらあんな顔をするのよ!」
そう、リーフポーだ!
リーフポーは看護部屋を出て、空き地の端にある水たまりに映った自分の姿を見て絶望していた。
「リーフポー!」
すかさず母親のアイスブラッサムが駆け寄る。
「心配しないで…!あなたの火傷のせいで、私の愛情が薄れることは決してない。一族のみんなもそうよ!」
リーフポーは目を見開いたまま激しく首を振った。
「いいえ!きっとみんなが私を嫌がるわ!こんな顔の猫、一族のキャンプ内にいるだけで嫌がられるわ!そうに決まってる!」
族長部屋の中から音がし、すぐにチャコールフェザーとライジングスター、そして足を引きずったヘザーポーが出てきた。
「リーフポー!」
チャコールフェザーもアイスブラッサムと同じようにリーフポーに駆け寄った。
「どうして勝手に看護部屋を出た?ケガをしたら困るじゃないか」
チャコールフェザーはそう言いながらリーフポーを落ち着かせるように耳をやさしくなめる。
「それ以前の問題です!どうして言ってくれなかったんですか?」
「言っても仕方がないだろう?お前がもっと落ち着いてから、ちゃんと話すつもりだったよ」
リーフポーは下を向いた。
「目が助かったからってみんなは安心してるけど、私はそうは思いません…だって私…」
チャコールフェザーがリーフポーのわき腹に鼻を触れた。
「さあ、看護部屋に戻ろう。何か解決策がないか考えるんだ」
リーフポーはうなずかなかったが、チャコールフェザーに促されるがままに進んだ。
ヘザーポーとブロークンポーも二匹について進み、解決策をいろいろ頭に並べてみた。
チャコールフェザーは、とりあえず治療は終わったと言っているし、あとは精神的な問題だけだ。
ブロークンポーは、いい案が思い浮かんだ。
そうだ!
ブロークンポーはヘザーポーに声をかけ、キャンプを飛び出した。
リーフポーが心を病まずに済むには、きっとこれしかない!            

ブロークンポーは急いでキャンプに入った。
すると、いきなりジェードフロストに声をかけられた。
「あら、ブロークンポー。それは何?」
「こんにちは、ジェードフロスト。これはリーフポーのために作ったんです。…リーフポーは顔の火傷のことで心病んでいます。だから、これを使うんです」
「まあ、なんて良い考え!そんなのだれも思いついはしないわ。さすがね、ブロークンポー!」
ブロークンポーは体が火照るのを感じながら、そのものをくわえなおした。
そして駆け足で看護部屋へ向かった。
「リーフポー!いいものを持ってきたよ!」
そういってブロークンポーはくわえていたものを落とした。
「これは何…?」
リーフポーがうつろな声で答える。
ブロークンポーが持ってきたのは、きれいなツタで編んだ網のようなもの。
一番上のわっかには、リーフポーの緑の目にぴったりの黄色い小さな花が飾ってある。
「少し触ってもいいかい?」
ブロークンポーはリーフポーに許可を求め、耳にツタのわっかを引っかけた。
チャコールフェザーもはっとした表情になり、納得したようにうなずいた。
「これは…どうなっているの?」
「すごくいいわ、リーフポー!とってもかわいいわ!」
リーフポーはちらっとチャコールフェザーを見て看護部屋を出た。
あとから三匹も続く。
リーフポーは水たまりの前で止まり、のぞき込んだ。
そして、うれしそうな、声にならない鳴き声を上げる。
「まあ、ブロークンポーありがとう!」
リーフポーは感激のあまり黄色い声を上げた。
リーフポーの耳にかかった網はほどよく火傷した側の顔を隠し、また、透けているので前が見えなくなることはない。
おまけに、その黄色い小さな花。
やっぱり、ぴったりだ。
ブロークンポーはうれしくなった。
「いいんだよ。君が喜んでくれてよかった!」
空き地の向こう側からライジングスターとスラッシュウィンド、そしてタイガーリリーが歩いてやってきた。
「それで、ライジングスター         
スラッシュウィンドはうれしそうに話していたが言葉を切り、驚きと喜びの表情が顔に広がった。
「リーフポー、素敵だよ!誰が考えたんだい?」
「ええ、ものすごくいいわ!」
タイガーリリーも言う。
「これ、ブロークンポーが作ってくれたんです!」
リーフポーが元気に答える声に、ブロークンポーの体が火照った。
「君が喜んでくれるなら、そのくらいのことはするよ」
そのうち空き地のこの一画にたくさんの猫たちが集まり、リーフポーの顏飾りをほめた。
ああ、よかった!
これでヘザーポーもリーフポーも悩まずに済む。
いい見習い仲間の二匹を、悩ませたくはない。
これからも、みんなが幸せだったらいいのに         

だが、このときはまだ知らなかった。
三年後、この幸せな生活が一瞬にして奪われてしまうということを         

ジェードウィング
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Road of love ~それぞれの恋の道~ 第七章~ - Page 5 Empty Road of love ~それぞれの恋の道~

投稿 by ジェードウィング Wed Dec 13, 2023 9:20 am

第九十二章
「い、痛…」
まただ。
最近、よくお腹が痛くなる。
ジェードフロストはうずくまり、はずむ息を整えた。
少し痛みがマシになり、ジェードフロストはまた立ち上がった。
狩猟部隊やパトロールの役割をふろうと歩き出すと、誰かに呼び止められた。
「姉さん?」
チャコールフェザーだ。
「何?チャコールフェザー」
「お腹が痛いのか?」
「ええ、でも少しだけよ」
「最近、頻繁に痛くなるのかい?」
ジェードフロストは少しためらったのち、「ええ、そうよ」と答えた。
「看護部屋に来いよ。診察するから」
ジェードフロストはチャコールフェザーの言葉に首を振った。
「大丈夫よ」
チャコールフェザーは真剣な顔をしたままジェードフロストの目をじっと見つめ、言った。
「じゃあ、正直に言うよ、姉さん。姉さんは妊娠しているかもしれないんだ」
ジェードフロストは目を見開いた。
「だからちゃんと診察しないと」
ジェードフロストはしばらく言葉が出なかったが、じきに返事代わりに一声鳴いた。
そしてジェードフロストはチャコールフェザーについて看護部屋へ向かい、中に入ってやわらかい寝床に横になった。
すぐにヘザーポーがやってきて、どうしたのか尋ねるようにチャコールフェザーの目を見た。
チャコールフェザーは耳をぴくっと動かしてジェードフロストの腹を示し、ヘザーポーは納得したような表情になった。
チャコールフェザーはジェードフロストの腹に鼻づらを軽く触れ、腹に沿ってスーッと動かした。
「ひと月もしないうちに生まれそうだよ」
ジェードフロストはチャコールフェザーの返事に少し驚き、声を上げた。
「まあ、そんなに早いの?」
「ああ。もうだいぶ時間が立っているからね。戦士の仕事は控えたほうがいいけど、キャンプ内での仕事はしても大丈夫だ。それから大集会は…」
ああ、そう、大集会よ!
だって、その大集会は今日だもの。
「…参加していい。子供ができたことをみんなに話すといい」
ジェードフロストはほっとため息をついた。
「でも、副長が子供を持ったりしていいの?」
チャコールフェザーは少し驚いたように顔を上げ、「もちろんだ」と返事をした。
そしてジェードフロストに向き直り、言った。
「考えてごらん。サンド族のライトクラウドはアウルウィングの娘だ。アウルウィングだって、副長だろう?」
そういえば、そうだった。
「ありがとう」
ジェードフロストはしっぽを一振りした。
チャコールフェザーもうなずき、「もう行っていいぞ」とまばたきをした。
ジェードフロストは看護部屋を出て、アージャーウィングと獲物を分け合って食べるライジングスターのところへ行った。
「ライジングスター、アージャーウィング、おはようございます」
「おはよう、ジェードフロスト。どうかしたの?」
アージャーウィングが顔を上げ、あいさつを返してくれた。
「看護部屋へ行っていたな。具合でも悪いのか?」
「いいえ、ライジングスター。実は、子供ができたんです!」
ジェードフロストは改めて口にし、自分でもうれしくなった。
ライジングスターは一瞬、驚いたような顔をしたが、アージャーウィングの「おめでとう!」という声に我に戻ったようだ。
「そうか!それはよかった!貴重な戦士がまた増え、一族が絶えるなんて想像もできないな!」
ええ、もちろん!
一族は決して絶えないわ。
…でも、ほんとに絶えないのかしら?
ジェードフロストは頭を振った。
ダークヴァレイの襲撃はもう終わったもの。
あれ以上恐ろしいことは、もう起こらないはず。

ジェードウィング
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Road of love ~それぞれの恋の道~ 第七章~ - Page 5 Empty Road of love ~それぞれの恋の道~

投稿 by ジェードウィング Sun Dec 17, 2023 12:39 pm

第九十三章
「みんな、空き地に集まれ!一族の集会を始めるぞ!」
ライジングスターの召集がキャンプに響き渡り、猫たちが続々と集まる。
ブロークンポーは指導者のシンバズロアのとなりに座り、族長の言葉を待った。
みんなが静かになるのを待ち、族長は話し始めた。
「今日はうれしい知らせがある」
空き地中の猫たちが族長の言葉に熱心に耳を傾けた。
「うれしいことに…」
うれしいことに…?
ブロークンポーは族長に早く言ってくれと言いたいのをおさえるのに苦労した。
「ジェードフロストに子供ができた!サンダーフォレストとの子だ」
空き地が一瞬しんと静まり返ったのち、大きな歓声が上がった。
「おめでとう!」
「おめでとう、ジェードフロスト、サンダーフォレスト!」
サンダーフォレストもジェードフロストも誇らしげに胸を張り、目を輝かせている。
そうか…そうだよな。
ジェードフロストとサンダーフォレストに子供ができてもおかしくはない。
だって、あんなに一緒にいるんだから…
なぜだかわからないが、ブロークンポーの胸が痛む。
ブロークンポーは頭を振った。
ばかだな!
ジェードフロストと僕は年が離れてるし、ジェードフロストとサンダーフォレストは愛し合ってる。
それに、ハンサムなサンダーフォレストと美しい副長は、誰がどこから見てもお似合いだ。
ブロークンポーは、やっと自分の気持ちに気が付いた。
「一か月もしないうちに生まれそうだよ」
サンダーフォレストの言葉には、誇らしげな響きが混じっている。
「おめでとう」
族長の祝福の声を最後に、話が切り替わった。
「さあ、実にうれしい話だったな。次は、今夜の大集会に行く者を決める。まだ昼だが、今のうちに言っておいたほうが用意ができるだろう?」
みんなから同意の声が上がった。
「まず、ジェードフロストとホワイトポー。そして、シンバズロアとブロークンポー、ミスティスカイとアッシュポーは連れていく。そしてリーフポーも連れていくことにした。火傷はもう大丈夫そうだからな。そうなればもちろん、サンダーフォレストもだ。そしてヘザーポーとファイヤペルトだが…」
みんなが耳を澄ました。
「両方連れていく。しかし、ヘザーポーはチャコールフェザーの弟子としてだ」
ライジングスターの声には少し迷いが感じ取れたが、ファイヤペルトもヘザーポーもチャコールフェザーも、納得したようにうなずいた。
「そして、次は戦士だ。タイガーリリー、スラッシュウィンド、クリムソンハート、ジェードウィング。そして、ストームライト、ラセットウィンド、ホーククロー、ブラックストーム、ヴァイオレットプール、リリーウィングだ」
呼ばれた戦士たちはうなずき、見習いたちは目を輝かせた。
「そして…」
そして?まだいるのか?
「そして、モリーには来てもらいたい。説明しなければならないことは多くなると思うが、それを乗り越えれば君は真の戦士だ」
モリーは胸を張り、あごをくいっと挙げてうなずいた。
その姿は本物の部族生まれの猫であるかのように威厳があり、自信があるように見えた。

月が昇った。
大集会に行く猫たちはイバラのトンネルの前に並び、族長が来るのを待っている。
やがて族長が現れ、猫たちの先頭に立った。
「さあ、行くぞ!」
その声に、ブロークンポーはわくわくが止まらなかった。
族長はサッとイバラのトンネルに飛び込み、すばやく通り抜けた。
戦士たちもその速さについて走り、倒木や茂みを軽々と飛び越えていく。
わあ、なんて早いんだろう!
少しずつ遅れてきたブロークンポーを、シンバズロアが鼻づらでそっと押して早く走るように促す。
ブロークンポーはシンバズロアに遅れを取らないよう、必死になって走った。
しばらく走り、もうだいぶ息が切れてきた。
筋肉は悲鳴を上げ、もう動かせそうもない。
そう思ったとき、ライジングスターの声が耳に入った。
「着いたぞ。サンド族以外はもう来ている」
族長は言い終えるなりくぼ地を駆け下り、キラキラと輝くコケの密生した場所へ着地した。
こ、ここがスターモス!
初めて見るその美しい場所に感動し、ブロークンポーは思わず声を上げた。
リーフポーもその場所の美しさに感動したようで、ブロークンポーと同じように感動の声をもらしている。
ふいに、後ろからシンバズロアにつつかれた。
何かと思って振り返ると、シンバズロアは行ってこい、というようにほかの部族の見習いの集団を示した。
ブロークンポーは目を輝かせてうなずき、ラーク族とグラス族の見習いのところへ駆け足で近寄った。
「こ、こんばんは!」
ためらいがちに声をかけると、見習いたちが一斉に自分のほうを振り返った。
自分に注目が集まるのを感じ、体が火照る。
「こんばんは!」
見習いたちが返事をし、ブロークンポーは安心して話の輪に入った。
クリーム色の毛の、琥珀色の目をした雌猫が自己紹介をした。
「私はモーニングポー(朝の足)よ。ラーク族の猫。こっちは…」
となりの猫を紹介しようとしたモーニングポーの言葉をさえぎり、灰色に黒のまだら模様の毛をした雄猫が自己紹介をした。
「僕はボウルダーポー(岩の足)。モーニングポーと同じラーク族の猫だ」
ボウルダーポーは青い目をキラリと光らせた。
ブロークンポーが軽く会釈をすると、次の猫が自己紹介をした。
ハシバミ色と水色のオッドアイで、淡い灰色の毛をした雌猫だ。
「私はシャロウポー(浅い足)。グラス族よ。ゴースポー(ハリエニシダの足)っていうお兄ちゃんがいるわ」
自分の名前が聞こえたゴースポーであろう猫は、少し離れたところにいる集団からハシバミ色の目を輝かせて会釈してきた。
「あなたは?」
モーニングポーに尋ねられ、ブロークンポーはすこしどもりながらも自己紹介を始めた。
「ぼ、僕はブロークンポー。フォレスト族だ」
シャロウポーが首をかしげた。
「少し…変わった名前ね。お母さんは誰?名前を付けたのは?」
シャロウポーの質問に、ブロークンポーはためらった。
だが、この三匹の猫の好奇心に満ちた目からは逃れられないことを悟り、ブロークンポーは話し出した。
「名前は、自分でつけたんだ。名前がなかったから。…お母さんは浮浪猫なんだ。お父さんも」
三匹は息をのんだ。
ブロークンポーはひるみ、みんなから非難されることを覚悟した。
だが、みんなのまなざしはあたたかいままだった。
「親が誰かなんて、関係ないわよ。部族猫になったからには、お互い戦士になれるよう頑張りましょ!」
モーニングポーのその言葉とそれにうなずくほかの二匹の姿を見て、ブロークンポーは胸があたたかくなった。
「ありがとう…」
ブロークンポーが返事をすると、ふいに後ろで足音がした。
「浮浪猫の子供だって?そんなの、戦士になれるわけないよ!」
嫌味な物言いに、ブロークンポーは驚き、振り返った。
後ろにいたのは、鮮やかな緑の目をした、淡い灰色で灰色の斑点がある雄猫だった。
嗅いだことのないにおいからすると、サンド族だ。
とすると、サンド族も到着したのだろう。
「何よ!一族に受け入れられたってことは、もうブロークンポーは部族仲間よ!あなたは森を支配する王様にでもなったつもり?違うでしょ?!」
モーニングポーが歯をむき、ボウルダーポーは爪を出した。
シャロウポーが割って入り、言った。
「やめて、二匹とも!休戦の決まりを忘れちゃったの?スカイ族がお怒りになるわ!」
その言葉に我を取り戻したかのように二匹は威嚇をやめ、緑の目をした雄猫をにらみつけた。
「あっち行けよ、グリーンポー!」
グリーンポーと呼ばれる見習いは勝ち誇ったように鼻を鳴らし、堂々と歩いて向こうの集団へ行った。
「ふん!なんて嫌な奴なの?イライラするわ!」
モーニングポーは琥珀色の目をギラギラと光らせ、草をかぎづめでむしった。
「そういうやつなんだよ!誰もかれもいらいらさせる!」
ボウルダーポーも嫌そうに鼻を鳴らした。
「でも、お父さんがあのナイトシャドウだもの。部族の裏切り者なんだから」
シャロウポーがためらいがちに言った。
「だよな」
ちょうどボウルダーポーが返事し終えたとき、族長たちの召集がかかった。
さあ、大集会の始まりだ!

ジェードウィング
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Road of love ~それぞれの恋の道~ 第七章~ - Page 5 Empty Road of love ~それぞれの恋の道~

投稿 by ジェードウィング Wed Dec 20, 2023 5:07 pm

第九十四章
「誰か助けて!」
キャンプ中に悲鳴が響いた。
ジェードフロストだ!
ブロークンポーは飛び起き、真っ先に看護部屋へ走った。
「チャコールフェザー!」
中に呼びかけるのと同時にチャコールフェザーが姿を現し、ブロークンポーは危うくぶつかりそうになった。
「悲鳴は聞こえた。サンダーフォレストに知らせて、できるだけ太い枝を見つけろ。そして、リーフポーに頼んでコケに水を含ませてもってこい」
ブロークンポーはうなずき、次は戦士部屋へ飛んでいった。
「サンダーフォレスト!」
ブロークンポーが鋭く押し殺した声で呼びかけると、サンダーフォレストは耳をピンと立てて頭を起こした。
「どうした?」
「ジェードフロストのお産が始まりました」
サンダーフォレストはその言葉を聞くなり寝床を飛び出し、保育部屋へ向かった。
ブロークンポーは急いでリーフポーを呼びに見習い部屋へ走り、頭を突っ込んだ。
「リーフポー!手伝ってくれ!」
リーフポーが頭を起こした。
「一体どうしたの?」
リーフポーは少し眠そうな、そして不安げな声でたずね、見習い部屋を出てきた。
「ジェードフロストのお産が始まった。コケに水を含ませてもってこいと、チャコールフェザーが言っている」
リーフポーはうなずき、看護部屋へコケを取りに行った後空き地の端にある水たまりへ向かって走っていった。
ブロークンポーはイバラのトンネルを抜けて森に出て、そして太い枝を引きずってキャンプに戻った。
もうほとんどの猫がジェードフロストの声に気づいて体を起こし、空き地をそわそわと歩き回っているものも多い。
やはり、あれほど信頼できる副長の出産は、みんな不安なのだろう。
ブロークンポーは重い枝を引きずりながらもできるだけ早く足を動かそうと頑張った。
そこで、ふと枝が軽くなった。
「急げ。手伝ってやろう」
クリムソンハートだ。
クリムソンハートは急いで枝をくわえ上げ、娘のもとへと走った。
こちらもやはり、不安そうだ。
なんにせよ、自分の娘の初の出産なのだから、無理はない。
クリムソンハートの黒い足はせかせかと動き、ついて行くのに苦労する。
やっと保育部屋に着き、中に入ったころにはジェードフロストは息を切らしていた。
「枝です」
ブロークンポーはクリムソンハートと協力して運んだ枝を地面に落とし、一歩後ろに下がった。
「何をしている?ジェードフロストの口の近くに持って行ってくわえさせてやれ」
チャコールフェザーはサッと指示を出し、ブロークンポーはそれに従った。
「ありがとう、ブロークンポー」
ジェードフロストは翡翠色の瞳を苦しそうに輝かせながら礼を言った。
ブロークンポーも「頑張ってください」と声をかけ返し、指示はないかとチャコールフェザーを見やった。
「そろそろ生まれてくる。この様子だと、二匹だろう。ヘザーポー、おいで」
チャコールフェザーが弟子を呼び寄せた。
ここに立って、ジェードフロストの腹を優しくもんでやれ。生まれてきやすくなるから」
ヘザーポーはうなずき、言われた通りにジェードフロストの腹をもみ始めた。
「ああ、出産ってこんなに苦しいのね        ああ!」
ジェードフロストの言葉の最後が悲鳴に変わる。
やがてジェードフロストの尻尾の下から濡れた小さなかたまりがするりと滑り出て、柔らかいコケの寝床の上に横になった。
「ブロークンポー、袋をかみ切って子猫を出せ。毛を逆なでするようになめるんだ」
ブロークンポーはうなずき、袋を牙で優しく嚙み切った。
中から出てきた子猫の毛色は…金茶色!
そう、僕によく似た金茶色だった。
ブロークンポーはうれしくなり、子猫をなめて温めてやった。
やがて子猫は身を震わせ、小さなピンク色の口を大きく開いて「ミー」と一声鳴いた。
「雄だな。ねえさん、もう一匹生まれるよ      ほら」
チャコールフェザーの言うとおり、もう一匹子猫が出てきた。
今度はサンダーフォレストが子猫に歩み寄り、袋を牙で嚙み切った。
次の子猫は         ジェードフロストをそのまま小さくしたような子猫、そう、美しい白猫だった。
ブロークンポーは、その小さな体に力強さを感じ、ジェードフロストのあたたかいまなざしを思い出した。
当のジェードフロストは息を切らし、あえぎながら自分の子供たちを引き寄せている。
「私の子供たち…」
ジェードフロストの目が潤み、その目が自分の両親へと移った。
「わたしもこんな風に生まれてきた…お父さん、お母さん、ありがとう…」
ジェードウィングとクリムソンハートは身を寄せ合ってうなずき、ジェードウィングは「よく頑張ったわね」と声をかけた。
ジェードフロストはうなずき、頭を横たえた。
サンダーフォレストがぎょっと目を見開き、チャコールフェザーの様子をうかがった。
チャコールフェザーはゆっくりとまばたきをし、眠っただけだよとしっぽを一振りした。
ああ、やっとジェードフロストの子供たちが生まれた。
名前はどうなるんだろう?
どんな戦士になるだろう?
きっと、ジェードフロストみたいに勇敢で、サンダーフォレストみたいに賢くて…
そう、この子猫たちはきっと素晴らしい戦士になる。
これまでに戦って命を落とした、スカイ族の戦士よりも賢く勇敢に…

ジェードウィング
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Road of love ~それぞれの恋の道~ 第七章~ - Page 5 Empty Road of love ~それぞれの恋の道~

投稿 by ジェードウィング Sat Dec 23, 2023 12:02 pm

第九十五章
ブロークンポーはイバラのトンネルをくぐり、キャンプの中に入った。
口には、ジェードフロストのためのハトをくわえている。
ホワイトポーは産休に入ったジェードフロストのかわりに弟子を失ってしまったファイヤペルトに指導を受けている。
だが、二匹とも喜んで指導を楽しみ、ホワイトポーの力もこれまで通り伸びているので、ジェードフロストも安心していた。
と思っていると、ブロークンポーの足にふわふわとしたかたまりがふたつぶつかった。
そのふわふわしたものは金茶色と白。
       
ブロークンポーは少し時間をため、二匹に不意打ちするように優しくたたいた。
ふわふわしたものはびくっと飛び跳ね、それぞれ青と紺色の瞳をぱっちり開けた。
「うわ、ファールドキットとベリーキットだったのか!うっかり、巨大な毛玉が転がってきたのかと思ったよ!」
ブロークンポーがからかうと、二匹が反抗的な目でいいかえしてきた。
「僕ら、もう見習いになるんだよ!」
「そうよ!もう6か月なんだから!」
二匹の目がおかしそうに輝いているのを見て、ブロークンポーは胸があたたかくなった。
そう、この子たちは本当にもう6か月。
そして、僕は見習いになって1年だ。
戦士になりたいなぁと思ったその時、族長の尻尾が肩に触れた。
ブロークンポーはびっくりして振り向き、族長と向き合った。
「ど、どうされたんですか?」
「驚かせてすまなかったな。いま、見習いたちを全員集めているんだ。族長部屋の前に来い」
ブロークンポーが族長部屋の前に目をやると、見習いとその指導者が全員集まっていた。
そして、ブロークンポーはその集団の中に自分の指導者であるシンバズロアを見つけた。
ジェードフロストまで!
ブロークンポーは族長について歩き、指導者のそばに座った。
そして、族長は話し出した。
「お前たち見習いを、みんな一気に戦士に昇格させることにした。指導者たちも納得している」
見習いは全員目を真ん丸にした。
指導者たちは誇らしげに胸を張り、リーフポーは信じられないという顔をしている。
「ほ、本当ですか…?」
ホワイトポーが震える声で族長に尋ねた。
「俺が嘘をついたことはあるか?」
ホワイトポーは恥ずかしそうにうつむいた。
「本当だよ。子猫たちの命名とまとめてやろうと思って。ベリーキットもファールドキットももう6か月だ」
アッシュポーが納得したようにうなずき、悲しそうな顔をした。
「どうしたんだ?」
ブロークンポーがたずねると、アッシュポーが言った。
「ヘザーポーも一緒に戦士になるはずだったのに…」
みんなが身をこわばらせた。
中でも一番つらいのは、きっとファイヤペルトだろう。
だが、族長はこういった。
「アッシュポー、少し考えてみろ。今日の月は?」
アッシュポーが不思議そうな顔をし、答えた。
「今日は確か、半月の…半月!」
アッシュポーが顔を輝かせた。
「ヘザーポーは正式に看護猫になるんですか?」
「ああ。チャコールフェザーも認めている。きょう、集会で命名式があるだろう」
ブロークンポーはほっとした。
じゃあ、ヘザーポーは悲しまなくて済む!
族長が口を開いた。
「いまから命名式を始めるが、心の準備はいいか?」
四匹はいっせいにうなずいた。
「よし、ではグレートルートの前へ。みんな、集会を始める!空き地に集まれ!」
族長がお決まりの言葉を言った。
猫たちが次から次へと現れ、すぐに空き地は猫たちでいっぱいになった。
族長はみんなが静かになるのを少し待ち、話し出した。
「今日は6匹の猫たちの命名式を行う。見習いたちは全員前へ」
四匹は一緒に前に進み出て、族長の次の言葉を待った。
「わたくし、フォレスト族の族長であるライジングスターは、この四匹の見習いたちを戦士に昇格させることを宣言いたします!スカイ族のみなさま、どうかこの四匹を受け入れ、戦士として一族に仕えることをお認めください」
族長が見習いたちを見下ろした。
「まず、ホワイトポー」
ホワイトポーが堂々と前に出た。
「ホワイトポー、お前は今この瞬間からホワイトサン(白い太陽)という名前になる。お前のその心の温かさと誠実さをたたえて」
族長はホワイトサンの耳をなめ、ホワイトサンはお返しに族長の肩をなめた。
「次に、リーフポー」
リーフポーは震える足をゆっくりと動かし、族長の前に立った。
「リーフポー、お前は今この瞬間からリーフフェイス(葉っぱの顏)という名前になる。火傷に耐え、訓練をやりぬいたその忍耐力や強い意志をたたえて」
リーフフェイスは緊張を解き、族長の肩をなめた。
「次、アッシュポー」
アッシュポーはうれしそうに、ぴょんぴょん飛び跳ねるかのような軽い足取りで前へ出た。
「アッシュポー、お前は今この瞬間からアッシュローズ(灰色の薔薇)という名前になる。お前の忠実な心と力強さをたたえて」
アッシュローズは目をキラキラと輝かせ、自分の耳をなめた族長の肩を、お返しになめた。
「最後に、ブロークンポー!」
ブロークンポーはどうにか前に出たが、途中で足がもつれそうになった。
「ブロークンポー、お前は今この瞬間からブロークンハート(壊れた心)という名前になる。浮浪猫からりっぱな戦士となったその強さや素晴らしい心をたたえて。お前はもう、完全にフォレスト族の戦士だ」
ブロークンハートはうれしくて、飛び跳ねそうになった。
族長はブロークンハートの金茶色の耳をなめ、ブロークンハートは族長の淡い黄金色の肩をなめた。
戦士たちの元に戻ると、ただ仲間たちのあたたかいまなざしが迎えてくれた。

ジェードウィング
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Road of love ~それぞれの恋の道~ 第七章~ - Page 5 Empty Road of love ~それぞれの恋の道~

投稿 by ジェードウィング Wed Dec 27, 2023 1:39 pm

第九十六章
「ブロークンハート!」
一瞬、誰を呼んでいるんだろうと思ったブロークンハートは、七日ほど前に自分が戦士になったことを思い出した。
ブロークンハートは寝床の中で頭を起こし、返事をした。
「誰ですか?」
「俺だよ。ストームライト」
ストームライトか。
「何ですか?何かあったんですか?」
ブロークンハートは戦士部屋を出て、大きく伸びをした。
あたたかい朝日が、寝床で冷えた体に心地よい。
「いや、特に大変なことが起こったっていうんじゃないんだ。ただ、今から俺の弟子を連れてスノウフォールやベリーポーと一緒に狩りに行くんだが、一緒にどうかと思って」
ブロークンハートは体をしゃんと起こした。
「行きます。よろこんで」
ストームライトは目を輝かせ、今度はいたずらっぽく、からかうように言った。
「ベリーポーはえらくお前になついてるよな」
ブロークンハートは少し驚いたように口を開き、「そうですか?」と言った。
ストームライトはおかしそうにひげを震わせ、言った。
「だって、お前を誘おうと言ったのもベリーポーだし、ベリーポーはずっとお前について回ってるじゃないか」
ブロークンハートは首をかしげた。
「僕がジェードフロストの義理の弟だからじゃないですか?僕はほとんどジェードウィングに育ててもらいましたから」
ストームライトは肩をすくめた。
「俺はジェードフロストのもと弟子なんだけどな」
ブロークンハートはそうだった、とうつむいた。
「まあ、何でもいいよ。お前が来たら、きっとベリーポーの狩りの腕は二倍良くなるだろうから」
ブロークンハートの体が火照った。
「先輩!」
ブロークンハートはすこし恥ずかしくてストームライトを弱くたたこうとしたが、ストームライトは「おっと!」と声を上げてかわした。
「そんなパンチじゃ子猫だって倒せないよ」
ストームライトは軽い足取りでイバラのトンネル前の仲間の先頭に立った。
ブロークンハートはしんがりに着き、イバラのトンネルをすばやく通り抜けた。
少しすると、やはり見習いたちは遅れてきた。
ブロークンハートはファールドポーを鼻づらで軽くつついてもう少し早く走るよう促し、それからベリーポーも同じようにつついた。
ベリーポーはちらっとブロークンハートを見ると、頑張って後れを取らないように走り出した。
やがて一族が一番よく使う狩場であるオークフロクに到着し、見習い二匹は息を切らした。
ストームライトが振り返って一団に話しかけた。
「よし、全員いるな?まず、俺とファールドポーはあっちのシダの茂みのほうを探す。スノウフォール、ベリーポー、それからブロークンハートは、あっちの岩場のほうを探してくれ。あそこの岩の陰にはよく獲物がいる」
ストームライトはいたずらっぽくブロークンハートを見てウィンクをした。
ブロークンハートは何かいい返そうとしたが、ほかにも猫たちがいることを思い出して言葉を飲み込んだ。
ストームライトがみんなにうなずきかけたのを合図に、五匹の猫はそれぞれ指示された方向へ散った。
ベリーポーはブロークンハートのとなりを離れずについてくる。
『ベリーポーはえらくお前になついてるよな』
ストームライトの言葉が頭によみがえった。
が、ブロークンハートは頭を振り、狩りに集中した。
ブロークンハートはシンバズロアに習った技を次々と使い、復習するように獲物を捕った。
地面を蛇のように進む方法。
ある程度の距離から飛びつく方法。
すばやい前足の一撃で仕留める方法。
あらゆる方法が次々と飛び出し、獲物はあっという間にたくさん捕まった。
ブロークンハートがとったのは、ハタネズミ二匹、リス一匹、、そしてなんと、太ったカラスを一羽とったのだ。
これを見たストームライトは驚き、ブロークンハートをほめた。
「ブロークンハート、すごいな!シンバズロアの弟子なだけある。きっとみんなに褒められるぞ!」
ベリーポーもファールドポーも目を輝かせており、獲物の山の中では見たことのない獲物に興味津々だ。
当のストームライトもハトを一羽とネズミを二匹とっており、今日の獲物の山は大きくなることだろう、とブロークンハートは思った。
ベリーポーは太ったネズミを一匹、ファールドポーはリスを一匹、スノウフォールもハタネズミを二匹とっているのだ。
五匹は大量の獲物をくわえ上げ、キャンプへ続く道をたどり始めた。
その間ベリーポーは何度もブロークンハートを見ていた。
そしてベリーポーはブロークンハートと目が合うたびに目をそらし、うつむいてまた歩く。
それが何回も続いた。
ブロークンハートはベリーポーの紺色の瞳をとても美しいと思った。
その姿かたちは、目の色以外はジェードフロストそっくりだった。

ジェードウィング
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Road of love ~それぞれの恋の道~ 第七章~ - Page 5 Empty Road of love ~それぞれの恋の道~

投稿 by ジェードウィング Sun Jan 14, 2024 10:08 am

第九十七章
「ああ、眠れない!」
ジェードフロストは小さな声でつぶやき、体を起こした。
今日は月明かりがまぶしく、そんなに仕事が入っていなかったため疲れていない。
いっそのこと、私をキャンプの見張り番にしてくれればよかったのに…
ジェードフロストはほかの戦士を踏まないように慎重に戦士部屋を出て、月を見上げた。
今日はまだやせ細った三日月で、三日月と言われるとあの猫を思い出す          そう、クレセントクローだ。
あの猫は部族を裏切り、ダークヴァレイと協力して部族を襲撃した。
あの猫のやったことは許されず、スター族の群れの中では見たことがない。
悪事をはたらいた猫は、どうなるんだろう…?
ジェードフロストは頭を振り、嫌な思いを振り払った。
夜の狩りに行こう。
ジェードフロストはそう思い、イバラのトンネルのほうへ向かった。
「ジェードフロスト、どこへ行くの?」
見張り番のタイガーリリーだ。
「少し、夜の狩りに」
「わかったわ。気を付けてね、お姉ちゃん」
ジェードフロストは少しうなずき、イバラのトンネルをくぐった。
ジェードフロストは訓練場のそばにある小川の周りで狩りをしてみようと思い、そこへ向かった。
今日は雲が少なく、月明かり、星明りに照らされて草木が銀色に輝いている。
こんなに美しい景色を作り出すのは、スカイ族の方々?
いろいろと考え事をしているうちに小川のそばに着き、ジェードフロストは狩りをしようとした。
が、なぜか狩りをする気にならない。
どうして?私は狩りをするためにここへ来たのよ?
ジェードフロストは自分に言い聞かせるようにして強くそう思った。
なぜだろう?
すごく、あの小川をのぞいてみたい。
ジェードフロストは小川に歩み寄った。
そして、のぞいてみると          
「まあ!」
小川の水面には、信じられない光景が待っていた。
水面に色形が浮かび上がっている!
これは、何を意味するんだろう?
これは…
「壊れたハート…ブロークンハート?」
ジェードフロストは思わずつぶやいた。
だが、壊れたハートはどんどんと治っていく。
ハートにはつるが巻き付いており、そのつたには…ベリーが生っている!
これは、私の娘のベリーポーのこと?
ブロークンハート(壊れた心)を、ベリーポーが治していく…
ジェードフロストははっと顔を上げた。
二匹はつれあいになるということなのね?
スカイ族の猫たちはそれを伝えるために、このお告げを送ってくださったんだわ!
「それはどうかな」
ふいに、ほかの猫の声がした。
「誰!?」
ジェードフロストがきつい口調でたずねると、その猫が姿を現した。
「ジェードフロスト、まあ落ち着け。俺たちだよ。そんなに毛を逆立てることはないじゃないか」
あ…この猫は…!
「ファイヤスター!それに、ジェイフェザー!」
そう、その二匹の猫がいた。
「お久しぶりです!スター族の皆さんは元気に過ごされていますか?最近、夢に出てきてくださらなかったですね?」
ジェードフロストは一気に質問をした。
が、ジェイフェザーはしっぽを少し上げ、ジェードフロストを黙らせた。
「さっきの光景、しっかり覚えておけ。後々、大事になってくるからな」
「え?あれは、ブロークンハートとベリーポーがつれあいどうしになるってお告げじゃないんですか?」
「まあ、そういうお告げでもある。だが、その二匹が重要な存在となるだろう」
今度は、ファイヤスターが答えた。
「どういうことですか?この先に何が待っているというんですか?」
だが、二匹の姿はじきに薄れていった。
「お前の進む道は曲がりくねっている…」
ファイヤスターとジェイフェザーはその言葉を残し、やがて薄れて消えた。
「私の進む道は、曲がりくねっている…?」
ジェードフロストは思わず二匹の言葉を繰り返した。
いったい、この先に何が待っているというの?

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Road of love ~それぞれの恋の道~ 第七章~ - Page 5 Empty Road of love ~それぞれの恋の道~

投稿 by ジェードウィング Sat Jan 20, 2024 12:33 pm

第九十八章
「あら、ファイヤペルト!それはワレモコウ?運ぶの手伝いましょうか?」
スノウフォールが少しためらいがちに話しかけてきた。
ファイヤペルトはチャコールフェザーに頼まれ、口いっぱいにワレモコウをくわえてイバラのトンネルから出てきたところだった。
「お願いします」
ファイヤペルトはもごもごと答え、ワレモコウを半分落とした。
「たくさんとってきたのね…半分でも多いくらい!」
スノウフォールの目がいたずらっぽく輝く。
「なら、私も手伝いましょうか?」
ヴァイオレットプールだ。
薄紫の目をした雌猫はファイヤペルトに微笑みかけ、そのあと薄紫の目はスノウフォールをしっかりとらえた。
「大変でしょう?」
スノウフォールの目に、何かよくわからない表情が浮かんだ。
「あら、いいんですよ?このくらいなら運べます。それに、先輩は狩猟部隊を率いるのではないですか?」
ヴァイオレットプールの目に少し迷いの表情が浮かんだが、口調ははきはきとしていた。
「それを運ぶくらいの時間はあるわよ」
スノウフォールは首をかしげた。
「なら、三等分しましょう」
ファイヤペルトはうなずき、ワレモコウを落とした。
そして三匹で看護部屋へ向かい、ファイヤペルトが呼びかけた。
「チャコールフェザー!」
チャコールフェザーが部屋の入り口にかかったツタのカーテンをくぐって姿を現し、目を真ん丸にした。
「どうして、そんなに大勢で来てくれたんだい?」
「僕のくわえているワレモコウがいっぱいなのを見て、二匹が手伝ってくれたんだ」
すると、急いだ様子でスノウフォールが付け足した。
「はじめは私が見つけたのだけれど、ヴァイオレットプールも手伝ってくださると言われたから」
ヴァイオレットプールが、鋭い視線をスノウフォールに送る。
チャコールフェザーの目に、納得の表情が浮かんだ。
いったい、何に対して納得したっていうんだ?
「どうしたんですか、そんなに話し込んで」
奥から、ヘザーハートが右後ろ脚を引きずって出てきた       この前の半月の集会で、ヘザーハートは正式な看護猫として迎え入れられたのだ。
ヘザーハートはファイヤペルトの後ろにいる雌猫二匹に目をやり、チャコールフェザーと同じような納得の表情を見せた。
だから、なんなんだ?
ファイヤペルトには全く理解ができない。
とりあえず、お礼は言っておこう。
「スノウフォール、ヴァイオレットプール、手伝ってくださってありがとうございました。とても助かりました」
二匹は満足そうにうなずき、スノウフォールは「またね」と声をかけてから立ち去った。
チャコールフェザーはもう一度目を真ん丸にした。
「兄さん、やるじゃないか!」
「しかも、年上の優秀な戦士を!」
ヘザーハートが付け足す。
「だから、さっきから何なんだ?」
ファイヤペルトは疑問に満ちた声でたずねた。
「兄さん、鈍いんだね」
チャコールフェザーがあきれた声で言った。ヘザーハートもうなずく。
「今の二匹を見て何も思わないんですか、ファイヤペルト?あの二匹が交わした言葉は、少しピリピリしていませんでしたか?」
ファイヤペルトは目をつむって考えた。
「なんか、ワレモコウを運ぶとかヴァイオレットプールは狩猟部隊を率いるんじゃないかとか」
ヘザーハートがため息をついた。
「ファイヤペルト、ちょっと思考が鈍すぎますね」
「まったくだ」
チャコールフェザーが同意した。
ファイヤペルトは首をかしげた。
「二匹がファイヤペルトを好きだってことですよ!」
ヘザーハートがすこしイラっとした声で言った。
「そういうのにすぐに気づかない猫は、嫌われちゃいますよ?」
ファイヤペルトは目を真ん丸にした。
「そんなわけないだろ?あんな熟練した素晴らしい戦士が、僕のこと好きだなんてありえない…しかも二匹そろって!」
ヘザーハートのひげがおかしそうに動く。
「ヴァイオレットプールとかスノウフォールは、もっとこう…熟練した戦士が好きなんじゃないか?スラッシュウィンドとか…」
「スラッシュウィンドはタイガーリリーが好きなんです!二匹にはもうすぐ子供もできると思いますよ?」
「そうなのか!?」
全く気が付かなかった!
一緒にいることは多いが、戦士仲間としてだと思っていた。
「妹さんのこともよく見てないなんて…相変わらず驚かされます」
ヘザーハートがふざけて目を真ん丸にした。
「ん?子供ができる??」
ファイヤペルトはふいに気が付いた。
じゃあ、僕には…
「僕にはかわいい姪か甥ができるのか!」
ファイヤペルトが叫んだとたん、ヘザーハートとチャコールフェザーはそろってため息をついた。

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Road of love ~それぞれの恋の道~ 第七章~ - Page 5 Empty Road of love ~それぞれの恋の道~

投稿 by ジェードウィング Sun Feb 11, 2024 6:17 pm

第九十九章
「あら、ファイヤペルト。どこへ行くの?狩りなら私も一緒に行きましょうか?」
またいつものようなスノウフォールの声が聞こえてきて、ジェードフロストはファイヤペルトを見やった。
ファイヤペルトは目をクルッと回し、「狩りへは行きませんよ」と言った。
この前、ファイヤペルトが、弟であり看護猫であるチャコールフェザーとその弟子ヘザーハートからスノウフォールとヴァイオレットプール、そしてファイヤペルトの置かれた状況を教えられ、それからファイヤペルトはうんざりしているようだ。
ジェードフロストはその話をチャコールフェザーから聞いた。
ジェードフロストはそんな弟の姿を見て、心が温まった。
「もうすぐ若葉の季節ね…獲物も取れるようになるわ!」
ジェードウィングの声だ。
そして、ジェードウィングはシルヴァークローを見やった。
シルヴァークローはもうかなり年配だ。そろそろ…
ジェードフロストは祖父のことを思い、父や母のことも思った。
「みんな、空き地に集まれ!一族の集会を始めるぞ!」
ここで、ライジングスターの召集がかかった。
空き地中から猫が集まり、グレートルートの周りに集まる。
サンダーフォレストが横に来て、鼻を触れ合わせてきた。
そしてスノウフォールがベリーポーを連れて隣に座った。
ベリーポーはとなりが母であることに気が付き、うれしそうに短い尻尾を振った。
「今日は、大事な儀式がある。シルヴァークロー、前へ」
シルヴァークローが頭を下げ、前へ進み出た。
「彼は長老の仲間入りをすることを選んだ」
ライジングスターが言った。
シルヴァークローは堂々と頭を上げて座っている。
何匹かが息をのんだが、ジェードフロストは「やっぱり」と思った。
「シルヴァークロー、お前は長老の仲間入りをすることを自ら願い、受け入れるか?」
「ああ、ライジングスター」
シルヴァークローがゆっくりとまばたきをした。
そのまつ毛は白銀色で、シルヴァークローの年齢をはっきりと示しているようにも見えた。
ライジングスターが、少し悲しそうな目をした。
「お前はよい戦士仲間だった。全力で一族を支え、忠誠を尽くしてきた。私たちがまだ若かったころの族長、ウェーヴスターにも同じように仕えてきた。私たち一族はこれからもお前を尊敬し続けることを、誓う」
ライジングスターが大きく息を吸い、そして吐いた。
「お前のこれまでの活躍は忘れない。これからも、長老としてこの部族に忠誠を尽くしてくれると、うれしい」
シルヴァークローが深々と頭を下げた。
「ありがとう、ライジングスター」
そして空き地から、「シルヴァークロー、シルヴァークロー!」という歓声が上がった。
シルヴァークローは目を輝かせ、先輩長老猫たちのもとへと歩いて行った。
ジェードフロストはほうっと息を吐き、「ありがとうございました」とつぶやいた         

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Road of love ~それぞれの恋の道~ 第七章~ - Page 5 Empty Re: Road of love ~それぞれの恋の道~ 第七章~

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