WARRIORS BBS
Would you like to react to this message? Create an account in a few clicks or log in to continue.

Road of love ~それぞれの恋の道~ 第七章~

Page 3 of 5 Previous  1, 2, 3, 4, 5  Next

Go down

Road of love ~それぞれの恋の道~ 第七章~ - Page 3 Empty Road of love ~それぞれの恋の道~

投稿 by ジェードウィング Sun Sep 24, 2023 10:09 am

ワーワー!!!!!!
心臓飛び出るかと思った!!!
ブレイズインフェルネスさん、ようこそ~!!!
返信くれたのブレイズインフェルネスさんだけだわ…(´;ω;`)カンテゲキ
もう泣いちゃう…(うれしすぎて)
ということは「POSTREPLY」見つけられたということですね!
よかったです(・∀・)イイネ!!
これからもぜひぜひヨロシクお願いします~!

ジェードウィング
未登録ユーザー


トップに戻る Go down

Road of love ~それぞれの恋の道~ 第七章~ - Page 3 Empty Road of love ~それぞれの恋の道~

投稿 by ジェードウィング Sun Sep 24, 2023 12:52 pm

第四十章
「紹介する。この二匹は俺の信頼できる仲間だ」
クレセントクローは後ろにいる二匹のオス猫をしっぽで示した。
それに合わせて、二匹のオス猫が会釈する。
「本当に信頼できるんだろうな?クレセントクロー」
ジャギッドクローの目がきらりと光る。
「もちろんだ、ジャギッドクロー。こいつらはフォレスト族のキャンプを襲いに行った時も迷わず俺についてきた」
「そうか。ならいい」
ジャギッドクローは大きなショウガ色の頭を前後に揺らした。
そして、クレセントクローのうしろから藍色の目をした黒いオス猫が出てきて、言った。
「俺はナイトシャドウ。クレセントクローの仲間だ。これからはお前たちダークヴァレイの仲間になるよ」
それに続けて灰色のオス猫が進み出てきた。
「俺はストーンクロー。おれも、クレセントクローやお前たちダークヴァレイの猫に忠実になるよ」
それを聞いたダークヴァレイの黒猫が鼻を鳴らし、「どうだか」とつぶやいた。
ジャギッドクローが言う。
「俺たち一族の猫は黒猫だ。雪解けの季節の真夜中に襲ったほうが有利だろう。そして俺たちの最大の強みは戦士の数と体の大きさだ」
クレセントクローはうなずいた。
「それを利用して部族をダークヴァレイのものにしようじゃないか」
クレセントクローの琥珀色の目が月にきらりと反射した。
「ジェードフロスト、ジェードフロスト!」
ジェードフロストが目を開けると、そこは眠る猫たちの体温であたたかい戦士部屋だった。
「ジェードフロスト」
サンダーフォレストがもう一度呼びかけてきた。
「大丈夫か?」
「ええ、大丈夫」
「寝ている間、ずっと毛が逆立ってたし、ときどきうなってたよ」
「嫌な夢を見てたの」
ジェードフロストはもうあの夢のことは考えたくなくて、戦士部屋を出て大きく伸びをした。
冷たい空気で冷えた体に朝の日の光が心地よい。
ジェードフロストは少しの間毛づくろいをし、立ち上がった。
空き地の真ん中に副長のスプリングストームがいる。ジェードフロストは大きな声で呼びかけた。
「ストームポーを連れて狩りに行ってきましょうか?スプリングストーム」
「ありがたいわ、ジェードフロスト!まだほとんどのものが起きていないから、みんなが起きだすまでに少しでも獲物を補充しておきたいの」
「わかりました!」
ジェードフロストは大きくしっぽを振り、見習い部屋のほうへ駆けて行った。
ジェードフロストは見習い部屋に頭を突っ込み、ほかの見習いたちを起こさないようにストームポーをつつき、小声で呼びかけた。
「ストームポー、狩りに行きましょ」
ストームポーが頭を起こし、すぐに見習い部屋から出てきた。片側のわき腹の毛に、寝ぐせが付いている。
ストームポーは寝ぐせのついたわき腹を二、三度なめ、大きく伸びをした。
「どこまで行きますか?」
「そうね。訓練用のくぼ地の近くに行ってみましょう。なにかいるかもしれない」
二匹は連れ立ってトンネルを抜け、訓練用のくぼ地の近くまで走った。口から白い息がもれる。
少しずつ体が温まってきたところで、目的地に着いた。
さっそく、木のみをかじる音がする。
リスだ!
ストームポーも気が付いたようで、サッと駆けだした。
リスはきっと、ストームポーがとってくるだろう。それより…
猫の気配!
ジェードフロストが振り向くと、茂みから一対の琥珀色の目が現れた。と思ったら、いきなり消えた。
なんなの!?
ジェードフロストは、目が見えた茂みの向こう側におそるおそる飛び込んだ。
だが、そこには危険そうな猫はいなかった。___代わりにか細い子猫の声がした!
「なんてことなの!」
足元に、血にまみれた子猫が横たわっている。わき腹は苦しげに上下し、あえいでいる。
そこで、リスをくわえたストームポーがやってきた。
「ジェードフロストが声が聞こえましたけど___」
ストームポーはそこで言葉を切り、衝撃のあまり獲物を落とした。
「早く連れて帰らないと!」
「ええ、そうね。この子は子猫だから私一人で運べるわ。あなたは獲物をしっかり持ってきて」
ジェードフロストは、言い終えると子猫をくわえ上げ、キャンプへと急いだ。
駆け足でイバラのトンネルを抜けると、一族は何か大変なことが起こっていると感じたらしく、みんながこちらに目を向けた。
そこで、白いメス猫のクラウドウィングがジェードフロストのくわえているものに気づいたらしく、急いで岩壁のほら穴にある看護部屋へ向かった。
ストームポーは獲物置き場にリスを落とし、族長部屋へ向かった。
ジェードフロストが看護部屋に入ると、ヘザーリーフはもう寝床を用意していた。
「ここに寝かせて」
ジェードフロストは言われた通りに寝床に子猫を寝かせた。
ヘザーリーフはしばらく子猫に触れたり、嗅いだりして診察してから顔を上げた。
「それほど深い傷はなさそう。傷の手当てをして、あたたかい寝床と食べるものさえあれば回復するわ」
ジェードフロストはヘザーリーフの言葉を聞いていくらかほっとした。
そしてストームポーのいる族長部屋へ向かった。
ツタのカーテンをくぐり、中に入る。
そこにはライジングスターとストームポーが座っていた。
族長はジェードフロストをしっぽで招き、「詳しく話してくれ」といった。
ジェードフロストは、ストームポーを連れて狩りに行ったこと。くぼ地の近くの茂みで一対の目を見たこと。そしてその茂みの向こうにあの子猫がいたことを詳しく話した。
ジェードフロスト話し終えたあたりでヘザーリーフが部屋に入ってきて、座った。
そして族長とジェードフロストに向かって、「子猫が目を覚ましました」と伝えた。
ジェードフロストはストームポーに、長老たちに獲物を持っていくように指示した後、看護部屋へ向かった。
子猫は体を起こし、ぞっとしたように宙を見つめている。
「何があったのか、話してくれない?」
子猫はジェードフロストに目を向け、つぶやいた。
「暗い、黒い波にのまれてるみたいだった。黒の中に光った三対の目。あっという間に僕を切り裂いたんだ」
ジェードフロストとヘザーリーフとライジングスターは、子猫の言葉を聞いて毛を逆立てた。
「三匹の大きな黒猫。あなたよりも大きかったです」
子猫は族長を見ていった。
しばらくの沈黙ののち、ジェードフロストが口を開いた。
「教えてくれて、ありがとう。さあ、毛をなめて血を落としましょう。あなたの毛皮が何色なのか、知りたいわ」
ジェードフロストが子猫の毛を優しくなめ始めたのを見て、ライジングスターとヘザーリーフは部屋を出ていった。
やっとこの子の毛の色が分かるようになった。
素晴らしい黄金色のトラ柄と、白の毛皮の猫だ。
まるでライオンみたいね、と、ジェードフロストは思った。
「あなたはどこから来たの?」
子猫が答える。
「砂地の向こう側の二本足の家」
「あなたの名前は?」
「…シンバ」
なるほど。「ライオン」の意味ね。
「いい名前ね」
シンバはうなずいた。
「あなたは、私たちがどういう集団なのか、知っているの?」
「うん、この近くに来たことがある単独猫に聞いたんだ。部族っていうんでしょ?」
「よく知っているのね。あなたは…あなたはどうしたいの?」
シンバはしばらく下を向いて黙っていた。だが、すこしして、こう答えた。
「ぼくが〈二本足〉のところから抜けてきたのは、あの暮らしに満足してなかったから。ここで暮らしてみたかったからなんだ」
シンバは思い切っていった。
またしばらく沈黙の時間が流れた。
「じゃあ…じゃあ、ライジングスターと相談してみましょ」
そう言って二匹は連れ立って族長部屋へ向かった。
これはなにかの前兆かもしれない!

ジェードウィング
未登録ユーザー


トップに戻る Go down

Road of love ~それぞれの恋の道~ 第七章~ - Page 3 Empty Road of love ~それぞれの恋の道~

投稿 by ジェードウィング Sun Sep 24, 2023 3:07 pm

第四十一章
「みんな、空き地に集まれ!一族の集会を始めるぞ!」
ライジングスターの声があたりに響いた。
それぞれの部屋からたくさんの猫たちが空き地に集まり、グレートルートの上にいるライジングスターを見上げる。
ライジングスターが話し始めた。
「みんな。もう知っているものもいるかもしれんが、今日の朝、ジェードフロストが狩りの途中でけがを負った子猫を見つけ、連れてきた。この子の話を聞くと、どうやらこの子を襲ったのはダークヴァレイの猫らしい。いいか?みんな。ダークヴァレイの猫は全員黒猫だ。黒猫ばかりの集団を見つけたら、すぐに逃げて俺に報告しろ」
一族の猫たちが同意の声を上げた。
少し間をおいて、ライジングスターが言った。
「この子はシンバという猫らしい。サンド族のなわばりの向こう側にある二本足の家の猫だそうだ。シンバは飼い猫の生活が不満で、単独猫から聞いた情報を頼りにここまでやってきたらしい」
みんなが同情の声を上げた。
「そして、このシンバはこの部族で暮らしたいらしい」
ジェードフロストは、ライジングスターの言葉を聞いた猫たちの間に不安と動揺が駆け巡るのを感じた。
「みんなの意見を聞かせてくれ」
そこで、年長の戦士のブラックストームが言った。
「サンド族のなわばりの向こう側からやってくるなんて、ずいぶん勇気がいったことだろう。それにこの距離を歩いてこられる子猫なんて、そういない。俺はこの子を部族に迎え入れることに賛成する」
ブラックストームの言葉を引き金にしたように、同意の声が上がった。
シンバはうれしそうに目を輝かせている。
歓声がおさまるのを少し待ったのち、ライジングスターが言った。
「では、みんなはシンバを一族に迎え入れることに賛成するんだな?」
賛成の声が聞こえる。
ジェードフロストはうれしくなった。
「では、子猫の命名式を始める。これを行うのは、私は初めてだ」
ライジングスターはみんなを見回した。
「では。シンバ、前へ」
シンバは、まるで生まれつき部族猫であるかのように堂々と前へ出た。
金色の目は輝いている。
「シンバ。お前は飼い猫から部族に入ることを望んだ。お前はまだ生後六か月に達していないため、まだ見習いにはなれないが、名前を与えよう」
ライジングスターはそこでいったん言葉を切った。
シンバは興奮で震えている。
「シンバ。お前は今この瞬間からシンバズキット(ライオンの子猫)という名前になる。見習いになるまでの一か月間で、部族の習慣を覚え、身に着けるように努力しろ」
「シンバズキット!シンバズキット!」
一族から歓声が上がった。が、少し不満そうな顔をしている猫たちもいる。飼い猫を部族猫にすることが不安なのだろう。
だがそんなことは気にせず、ジェードフロストもみんなと一緒に歓声を上げた。
どうかスカイ族がこのシンバズキットを受け入れ、一族にも受け入れていただけますように…。

ジェードウィング
未登録ユーザー


トップに戻る Go down

Road of love ~それぞれの恋の道~ 第七章~ - Page 3 Empty Road of love ~それぞれの恋の道~

投稿 by ジェードウィング Sun Sep 24, 2023 5:56 pm

第四十二章
「ナイト!ダーク!クロー!いったいどういうつもりだ!?」
怒りのあまり叫ぶ声が聞こえた。そう、「聞こえた」のだ。
うそ、ここは私の見ている夢に過ぎないんじゃないの?
ジェードフロストはぎょっと目を見開いた。
また、声が聞こえる。
「一匹も殺さずに部族猫どものなわばりから帰ってくるなんて、頭がどうかしちまったんじゃないか!?」
「しとめたと思ったんだ!」
「愚か者め!お前の足に付いたその血の匂いは、ばかな飼い猫のにおいじゃないか!」
立ったままその会話を聞いていると、ジェードフロストの耳に誰かの息がかかり、ジェードフロストは凍り付いた。
だが、聞こえてきたのは知っている声だった。
「安心しろ。ぼくが仲間だということはわかっているはずだ」
「ジェ、ジェイフェザー!」
「静かに!」
ジェイフェザーは、しっぽでジェードフロストの口をふさいだ。
「もう少し近づこう」
ジェイフェザーが小声で言ったのを聞いて、ジェードフロストは黙ったままうなずいた。
二匹は大きな岩の影に隠れ、話している猫たちの姿が見えるところから話を聞いた。
さっきあの黒猫たちが「しとめたと思った」と言ったのは、きっとシンバズキットのことだわ!
そう思い、ジェイフェザーの顔を見ると、ジェイフェザーは小さくうなずいた。私が考えていることが分かるんだわ。
ジェイフェザーは昔の予言の猫の一匹だ。
「なんてばかな猫なんだ!あそこまで案内してやったのが全部無駄になっちまったじゃないか!」
いつも夢で見る、クレセントクローだ。
まって、見たことある!ええ、そう、現実の世界で!大集会のときにこちらをにらんできていたのは、間違いなくあの猫だわ!
「黙れ!」
ダークというらしい猫がうなった。
それを見た大きなショウガ色のダークヴァレイのリーダー猫、ジャギッドクローがダークをにらんだ。
「お前たちがしとめそこなったのが悪いだろう?」
ふいに、ジャギッドクローが恐ろしいほどに優しい声で言う。
ナイト、ダーク、クローの三匹はすくみあがった。なんて恐ろしいの!
「もう知っているだろうが、あのキツネのふんみたいなやつらがダークヴァレイの猫だ。そしてあの部族猫はクレセントクロー、そして取り巻きのナイトシャドウとストーンクローだ」
ジェイフェザーが耳打ちをしてきた。
「お前が今まで夢で見てきたことは全て現実で起きていたことなんだ。クレセントクローはわけがあって憎んでいる部族猫がいる。だからあいつらの仲間になって、部族を滅ぼしたいと思っているんだ」
クレセントクローが憎んでいる部族猫がいる理由は気になるが、いまは恐ろしすぎてうなずくことしかできなかった。
「だいたい近況はわかったろう?帰ろう」
ジェイフェザーがそう言うと、背景が流れるように変わり、部族のキャンプへ戻ってきていた。みんなの穏やかな寝息が聞こえる。
「ああ、なんて恐ろしかったの!」
ジェードフロストが言うと、ジェイフェザーはうなずいた。
「この先、あのシンバズキットも重要な存在になる。さっき見たものを心にとめておけ。頑張れよ」
言い終えると、ジェイフェザーの姿がだんだん薄れてきた。
「朝になる。起きても疲れ果てているかもしれない。だが、今の時期だ。頑張って一族につくしてくれ。今日見たことはまだほかの猫には話すな。族長にもだ。それと、忘れるな。襲撃があるのは雪解けの季節の真夜中だ」

ジェードウィング
未登録ユーザー


トップに戻る Go down

Road of love ~それぞれの恋の道~ 第七章~ - Page 3 Empty Road of love ~それぞれの恋の道~

投稿 by ジェードウィング Wed Sep 27, 2023 6:46 pm

第四十三章
『それと、忘れるな。襲撃があるのは雪解けの季節の真夜中だ』
ジェイフェザーのその言葉を聞いたのを最後に、ジェードフロストは夢から覚めた。
『今日見たことはまだほかの猫には話すな。族長にもだ』
どうしてかしら?
まあ、ジェイフェザーががそういうのには必ずわけがあるはず。だって、スター族の猫なんだもの。
そう思いながら、ジェードフロストは大きく伸びをした。
すると、保育部屋から毛のかたまりのような生き物が四匹、ジェードフロストの足元に転がってきた。きょうだいたちと、シンバズキットだ。
ファイヤキットが目をぱっちり開けると、ジェードフロストは言った。
「あら、あなたたちだったの?てっきり大きな毛のかたまりが転がってきたのかと思ったわ」
「ぼくたち、毛のかたまりじゃないもん!りっぱな戦士になるためにいる子猫だよ!」
ファイヤキットがいうと、タイガーキットは「まだね」とつけくわえた。
「看護猫もいるよ!」
チャコールキットがかん高い声で言った。
「早く見習いになりたいなあ」
シンバズキットが言った。この子が一族に入ってからは、ジェードウィングがシンバズキットの面倒を見ている。
「ええ、きっとあなたたちは一族に忠実な素晴らしい猫になるわね」
ジェードフロストは優しく言った。
すると四匹の子猫たちは目を輝かせ、保育部屋へ走っていった。
それを見届けた後、ジェードフロストは、自然とキャンプを出ていた。
くぼ地を過ぎ、ヒースの茂みをよけ、細く流れる小川のわきに座ると、フォレスト族の猫ではない猫のにおいがした。このにおいは___
「ジェイフェザー?それから、ダヴウィングとライオンブレイズですか?」
木の陰から思っていた通りの猫が三匹現れた。
「よくわかったな」
ライオンブレイズが言った。ダヴウィングもうなずき、「よく覚えていたわね」といった。
ジェイフェザーがしっぽを一振りし、話し始めた。
「お前の力が発揮される時が来た」
いきなりすぎて意味が分からず首をかしげると、ジェイフェザーがゆっくりとまばたきをした。
「お前の体内には石が三つ入り込んでいることを覚えているか?それと、あの雷も」
ジェードフロストがうなずくと、ジェイフェザーが続けた。
「お前は何よりも強い力を授からなければ。まず、お前は現実で起きていることを夢に見、そしてその場所に行くことができる力を持っているな?
お前は雷の力も授かることになる。一時的なものだがな」
ジェイフェザーはそこでいったん言葉を切り、ライオンブレイズが続けた。
「お前は雷の力を授かる。お前がこれまでにないほどの怒りを覚えたとき、スカイ族とスター族の猫が団結し、お前に力を貸す」
ダヴウィングが続ける。
「その時あなたは、雷をあやつることができるようになる。何よりも大きな、強大な力」
「その時が来ればわかるよ」
ジェイフェザーが最後に言った。
そしてジェードフロストがまばたきをすると、目を開けたときには三匹は消えていた。
一時的に雷の力を授かる?私が?
ジェードフロストは必死に気持ちを落ち着けようとした。
心臓がドクドクと音を立てる。
あたしにそんな大きな力があやつれるのかしら?

ジェードウィング
未登録ユーザー


トップに戻る Go down

Road of love ~それぞれの恋の道~ 第七章~ - Page 3 Empty Road of love ~それぞれの恋の道~

投稿 by ジェードウィング Thu Sep 28, 2023 8:29 pm

第四十四章
「ジェードフロスト、サンダーフォレスト、アージャーウィング。お前たちの弟子の三きょうだいももう戦士になっていいと思うんだ。シャイニングウィング、ミスティスカイ、ホーククロー、スラッシュウィンドは去年戦士になったろう?」
ライジングスターの言葉を聞いたジェードフロストは、目を真ん丸にした。
確かに、もういいころかもしれない。あの子が私の弟子になったのは若葉の季節の初めのほう。今はもう枯葉の季節のど真ん中だ。あのきょうだいは訓練したことは忘れないし、戦闘技術や狩りの技を身に着けるのが早かった。
しかも今、部族にはたくさんの戦士猫が必要だ。
「本当ですか?」
隣にいたサンダーフォレストも目を真ん丸にし、族長に確認した。
「本当だ。こんなにたくさんの猫たちを一気に命名するのは初めてだ」
ライジングスターがのどを鳴らした。
「命名式はいつ行うんですか?」
アージャーウィングはうれしそうに目を輝かせながら聞いた。
「今日、今からやろうと思っているんだが、三匹に伝えてくれないかい?」
ライジングスターがそう言うと、サンダーフォレストとアージャーウィングがうなずいた。ジェードフロストも一緒に行こうと立ち上がると、ライジングスターが言った。
「ジェードフロスト、お前は残ってくれ。話したいことがある」
ライジングスターに呼び止められ、ジェードフロストはギクッとした。族長はあの夢のことを知っているのかしら?
「わかりました」
族長がサンダーフォレストとアージャーウィングにうなずきかけると、二匹は連れ立って族長部屋を出た。
ライジングスターが座りやすい体制に座りなおし、それから言った。
「お前はストームポーの訓練を終えたばかりだが、次の弟子をとってもらいたい」
ジェードフロストは、ほっとするのと同時に、誇らしさやうれしい気持ちが込みあがってきた。
ライジングスターが続ける。
「ジェードウィングの子たちとシンバズキットが見習いになるんだ。お前にはファイヤキットの指導をしてもらいたい」
弟の指導をすると聞いて、ジェードフロストのうれしい気持ちは二倍に膨れ上がった。
だが、族長の次の言葉を聞き、ジェードフロストの心の中は驚きの気持ち一つになった。
「それから、シンバズキットの指導は俺が引き受けたい」
「ぞ、族長が、ですか?!」
「ああ、俺が、だ」
すごい!族長が指導するのは副長の子供くらいなのに…!
「俺が生まれてから、飼い猫が一族に仲間入りしたことはなかった。だから、生まれが飼い猫でもりっぱな戦士になれるのか、この目で確かめたいんだ」
「シンバズキットも、きっとすごく誇らしいと思います!」
ジェードフロストは、本心からそう言うと、ライジングスターがうなずいた。
「では、始めよう。命名式を」
ジェードフロストはゆっくりとまばたきをし、族長の後に立って族長部屋を出た。
ライジングスターが招集をかける。
「一族のみんな、空き地に集まれ!一族の集会を始めるぞ!」
各部屋部屋から猫たちが続々と現れ、空き地を埋め尽くしていく。
「今日は命名式の日だ。たくさんの猫を命名する。まず、ストームポー、ラセットポー、スノウポー、前へ」
三匹が、興奮したようすで前へ出る。
「わたくし、フォレスト族の族長であるライジングスターは、この三匹を戦士に昇格させることを宣言いたします。ストームポー、お前は今この瞬間からストームライト(嵐の光)という名前になる。お前のその輝くような成長や、広く、仲間を思いやる心をたたえて」
空き地から歓声が上がり、ジェードフロストは胸があたたかくなった。
「スノウポー、お前は今この瞬間からスノウフォール(散る雪)という名前になる。お前のそのゆっくり散る雪のような優しさをたたえて。そしてラセットポー、お前は今この瞬間からラセットウィンド(赤褐色の風)という名前になる。お前の熱心さや、素晴らしい技術力をたたえて」
ライジングスターが言い終えたその瞬間、空き地から歓声が上がった。
新しく戦士になった三匹は、誇らしげに目を輝かせ、胸を張っている。
空き地が静かになると、ライジングスターが続けた。
「次は見習いになる猫の命名式だ。そこの四匹、前へおいで」
ライジングスターが優しく呼びかけると、四匹は我先にとちょこちょこ走ってやってきた。
「よし、お前たち。命名式だ。準備はできているか?」
子猫たちがうなずくと、ライジングスターが話し出した。
「ファイヤキット。お前は今この瞬間から戦士名を獲得するまでの間、ファイヤポーという名前になる。お前の指導者はジェードフロストだ」
ファイヤポーは、姉に指導してもらえると聞き、うれしそうにこちらを向いた。
ジェードフロストも目を輝かせ、ファイヤポーと目を合わせた。
「そして、タイガーキット。お前は、タイガーポーという名前になる。お前の指導者は、スラッシュウィンドだ。チャコールキットには、安全な道を進ませることにした。チャコールキットは看護猫になりたいそうだ。お前は今この瞬間からチャコールポー。そして、指導者はヘザーリーフだ」
チャコールポーは、うれしそうにヘザーリーフのほうを見て、目を輝かせた。
「そして、シンバズキット」
ライジングスターは、少し間をおいてから言った。
「お前は今この瞬間からシンバズポーという名前になる。お前の指導は、俺が引き受ける」
シンバズポーは大きく目を見開き、空き地中が一瞬にして静まり返った。
しばらくの沈黙ののち、とうとう副長のスプリングストームが歓声を上げた。
そこから広がる波のように歓声があがり、空き地が喜びに満ちた声でいっぱいになった。
ライジングスターも、満足げに目を輝かせ、シンバズポーにうなずきかけた。
その時!
地面が揺れ始め、やがて大きな音がすると同時に、キャンプ、いや、森全体が揺れ始めた。
猫たちはおびえて目を見開き、つめを立てて必死に地面にしがみついた。
だが、次の瞬間、ジェードフロストの立っている場所のそばの、キャンプの本の端の岩壁がぱっくりと割れ、そのままジェードフロストの立っている場所まで広がった。
ジェードフロストは、地面の割れ目にぱっくりとのまれてしまうかのように落ちたが、必死でがけのへりにしがみつき、体が引きずり込まれそうになるのをこらえた。
その時、緊迫した状況の中でもある言葉が、それもジェイフェザーとライオンブレイズとダヴウィングの声が重なったような声で頭の中に響いた。
そして、叫ぶ。
「これは〈大地のうなり〉よ!」

ジェードウィング
未登録ユーザー


トップに戻る Go down

Road of love ~それぞれの恋の道~ 第七章~ - Page 3 Empty Road of love ~それぞれの恋の道~

投稿 by ジェードウィング Fri Sep 29, 2023 7:11 pm

第四十五章
〈大地のうなり〉!
「助けて!お父さん、サンダーフォレスト!」
食いしばった歯の間から、かすれた声で助けを求める。
サンダーフォレストや父、族長たちがここへ向かって走ってくるのが、地面の振動で分かった。
何とかよじ登ろうと必死に足を動かすが、後ろ足は、空をかくだけだった。
すると、後ろ足のかぎづめが壁をかすったその瞬間。
ジェードフロストのつかまっていた部分の地面が崩れ落ち、ジェードフロストも力なく落ちていくのを感じた。
必死に体をよじる。必死に足を動かす。そして、悲鳴を上げる。だが、何も変わらない。ただ落ちていく。ただ暗闇にのまれる。
ああ、わたし、死ぬんだわ。ジェイフェザー、ごめんなさい。
ジェードフロストは死を覚悟し、目を閉じ、もがくのをやめた。もうすぐ底に着くのが分かる。
だが、予想していたような結果にはならなかった。
誰かが自分の首筋をくわえている。
誰なの?
ジェードフロストが目を上げると、そこには淡い茶色とこげ茶のトラ柄と白の毛皮の年老いたオス猫が座っていた。
老猫はジェードフロストの首筋を放して地面に下ろすと、賢そうな青い目をこちらに向けた。
「わしはアース(大地)。大地をつかさどる、大昔からいる猫だ」
ア、アース?大地をつかさどる猫?
「〈大地のうなり〉を起こしたのはこのわしだよ、ジェードフロスト。お前は一族に伝えなくてはならないことがある」
アースはしっぽで招くようなしぐさをし、ついてくるように示した。
はじめは暗闇で見えなかったが、目が慣れてくるとこの地面の割れ目の底から一本のトンネルが出ていることが分かった。
アースはそのトンネルに入り、しばらく進んだ。
しばらくすると、広い場所に出た。天井からとがった石が無数に伸びている。
ジェードフロストは驚き、目を見開いた。こんな場所があったなんて!
その部屋のすみに、アースは座った。しっぽを前足にかけ、耳をピンと立てている。
「お前たち一族が生き残るには、この場所が必要だ。いずれ、使うことになるだろう。ついておいで」
老猫は、再び歩き出した。
また、一本のトンネルの続きを歩き、やがて光の差し込む場所へ出た。
石が、段になって積み上げられ、上ることができるようになっている!
ジェードフロストは驚いてアースのほうを見ると、アースは耳をピクリと動かし、「上ってごらん」といった。
ジェードフロストは、不安になりながらも石の段を上った。
しばらく上り続けた。
ふいに石の段が終わり、穴から這い出た。すると、そこがどこかわかった。
訓練用のくぼ地の近くにある、なにかの巣穴だと思われていた場所だ。
ここは地下に通じるトンネルだったのね!
後ろからアースが出てきた。
「わかったかい?これをお前さんに伝えたかったんだよ。かならず一族に伝えるように。そして、ほかの部族には絶対に教えるな」
そう言うと、アースの姿は薄れ、ふと消えた。
ジェードフロストは一度だけ振り返り、そしてからキャンプへと急いだ。
キャンプに着くと、たくさんの猫たちが地面の割れ目を嗅いだり、のぞき込んだりしていた。
ジェードフロストが帰ってきたのを見たライジングスターが、喜びと驚きの混ざった大きな声を上げた。
みんなが押し寄せてくる。
「どうやって、帰ってきたの?」
「割れ目の底はどんなだった?何かあったか?」
「誰かに導いてもらったの?」
たくさんの質問があったが、ジェードフロストは落ち着き払ってしっぽを一振りし、みんなを黙らせた。
そして、しっかり、はっきりとした声で言った。
「これは大地をつかさどる猫、アースからのメッセージです」

ジェードウィング
未登録ユーザー


トップに戻る Go down

Road of love ~それぞれの恋の道~ 第七章~ - Page 3 Empty Road of love ~それぞれの恋の道~

投稿 by ジェードウィング Sat Sep 30, 2023 2:08 pm

第四十六章
地下にトンネルや洞窟があると分かったあの日から、もう5日立つ。
ジェードフロストが落ちた地面の割れ目には、ツタで編んだ丈夫な編みがたらされ、足を引っかけて下に降りることができるようになっている。
万が一落ちたときのために、底にはやわらかいコケが敷き詰められている。
これなら、危険な時に子猫でも降りることができる。
一族の猫たちは、あの洞窟を「とがり石の洞窟」と呼んでいる。
天井からたくさんのとがった石が突き出ているからだ。
とがり石の洞窟にはコケやシダが敷き詰められ、一時的な避難場所にできるようになっている。
ジェードフロストはファイヤポーの指導者になった。
それを思い出し、わくわくする。
「ファイヤポー!」
ジェードフロストはファイヤポーを呼んだ。
「なんですか?」
「狩りに行きましょう。もう獲物置き場はほとんど空よ」
ファイヤポーは獲物置き場をちらっと見てからうなずいた。
「わかりました」
二匹は連れ立ってイバラのトンネルを抜けた。
まず、二匹はオークの木がたくさん生えたオークフロクへ向かった。
なかなか獲物は見つからなかったが、木の根元で木の実をかじるネズミを見つけた。
「見ていなさいね」
ジェードフロストはファイヤポーにそう言い、ストームライトにも教えたあの技をやって見せることにした。
獲物に気づかれないよう、蛇のようにくねりながら進み、獲物のすぐ近くまで来ると、すばやくあごを突き出して獲物を捕らえた。
ひと噛みで仕留めた獲物をファイヤポーのところへ持っていくと、ファイヤポーは目を真ん丸にしていた。
鮮やかな緑色の目が輝いている。
「ぼくにも教えてください!」
「ええ、もちろん!」
二匹は日が暮れるまで狩りをした。
捕まえたのは、ハタネズミ二匹、ネズミ二匹、ウサギ一匹、そして、カラスを一羽だ。
カラスはファイヤポーが捕まえたもので、太っていて一族のたくさんの猫の腹を満たせそうだ。
五日にしてこんなにたくさんの獲物を捕まえられるようになるなんて、この子はきっと優秀な猫になるわ。ジェードフロストはそう思った。
「境界線の近くに埋めた獲物をとってくるから、先に帰っていてちょうだい」
ジェードフロストはファイヤポーにそう指示し、境界線にあるスターモスの一番端っこまで行った。
すると、グラス族のなわばりとラーク族のなわばりの境界線にある空き地から、スカイウィングのにおいがしてきた。
目を凝らすと、空き地にスカイウィングがいた。
声をかけようと身を乗り出すと、ジェードフロストが声を発する前にほかの猫が空き地に入ってきた。
トラ柄の茶色と白の毛皮の、薄緑の目をしたオス猫だ。
ラーク族の猫ね!
どうしよう!境界線のあんなに近くにいるところを見られちゃ、スカイウィングとあの猫はケンカになるわ!
だが、オス猫発した言葉を聞いたとたん、ジェードフロストは驚きで目を見開いた。
「会いたかったよ、スカイウィング!」

ジェードウィング
未登録ユーザー


トップに戻る Go down

Road of love ~それぞれの恋の道~ 第七章~ - Page 3 Empty Road of love ~それぞれの恋の道~

投稿 by ジェードウィング Sun Oct 01, 2023 12:40 pm

第四十七章
「私もよ、ブラクンペルト。会いたかった」
な、なに?どうして?その猫はほかの部族の猫なのよ!
「忙しくてしばらく君と会えていなかったから…」
「そうよね。枯葉の季節だもの」
二匹はしっぽを絡めあい、スカイウィングはブラクンペルトのほほに自分のほほをおしつけた。
「獲物には困っていないかい?」
「寒くなってきて、取れる獲物も少ないわ」
「そうか」
二匹はしばらく見つめあい、そしてから鼻を触れ合わせた。
「すごく残念だけど、もう帰らなくちゃばれちゃうかもしれないよ」
「そうね。私も狩猟部隊に参加しなくてはならないの」
「じゃあ、またな」
「ええ」
そして二匹は自分のなわばりのほうへ駆けて行った。
ジェードフロストは驚き、ぼうぜんとしたまま立ち尽くした。
ス、スカイウィング…。あなたはグラス族の猫でしょう!しかも、たしかゴールデンスターの娘でしょ!
そう考えながらも本来の目的であった、埋めておいた獲物を掘り出し、キャンプへと急いだ。
キャンプへ向かう間も、ジェードフロストの頭の中はスカイウィングとブラクンペルトのことでいっぱいだった。
キャンプへ戻ると、ちょうどライジングスターの召集がかかったところだった。
ファイヤポーがジェードフロストのほうを振り返り、「ちょうどいいタイミングでしたね!」と言い、しっぽで招くようなしぐさをした。
ジェードフロストはファイヤポーのそばに腰を下ろした。
ライジングスターが話し始める。
「クリムソンハートの率いたパトロール隊がキツネに出くわした。メスのキツネだ。乳のにおいがしたらしいから、きっと子供がいるはずだ」
空き地から不安そうな声が上がった。
となりにいるファイヤポーも、全身の毛を逆立てている。
「そのメスのキツネはクリムソンハートたちパトロール隊が撃退してくれたが、子ギツネがどこにいるのかわからない。みんな、キャンプの守りをかたくし、普段から注意して周りを見るように。そして子猫は絶対にキャンプから出すな。見習いは一匹で出歩かないこと。今注意したことを忘れないように。では、解散!」
空き地にいた猫たちは散り始め、寒い寒いと言いながら部屋へ戻っていった。
だが、ペタルムーンは空き地に残ったままだ。
どこを見るでもなく、光の映らない目を空に向け、何かつぶやいた。
すると獲物置き場へ立ち寄ってから、戦士部屋へと帰っていった。
ジェードフロストはペタルムーンのつぶやいた言葉を聞いた。
ペタルムーンはたしかにこう言っていた。
「ああ、私のスカイウィング!私と同じ間違いを犯さないで!」
その時分かった。ペタルムーンもあの場にいたのだ。
でも、「私の」スカイウィング?私と同じ間違い?
ペタルムーンはいったいどんな秘密を隠しているというの?

ジェードウィング
未登録ユーザー


トップに戻る Go down

Road of love ~それぞれの恋の道~ 第七章~ - Page 3 Empty Road of love ~それぞれの恋の道~

投稿 by ジェードウィング Sun Oct 01, 2023 5:18 pm

第四十八章
「大集会に行くものを発表する!空き地に集まれ!」
ライジングスターの呼びかけで、たくさんの猫たちが空き地に集まる。
「まず、新しく戦士になったストームライト、ラセットウィンド、スノウフォール。それから、スプリングストーム、ペタルムーン、ジェードフロスト、サンダーフォレスト、スパロウペルト、ミスティスカイ、ホーククロー、スラッシュウィンド、タイガーポー、ファイヤポー、シンバズポー、ヘザーリーフ、チャコールポーだ」
名前を呼ばれたものが、どんどんイバラのトンネルの前に並ぶ。
ジェードフロストはファイヤポーをしっぽで招き、となりに並んだ。
ライジングスターが先頭に立ち、一声鳴いた。
それを合図に、大集会を行う場所であるスターモスに向けて出発した。
ジェードフロストは、ファイヤポーが少し遅れるたびに鼻づらでつつき、前へ行くよううながした。
しばらく走った。
だいぶ息が切れてきたところでスターモスに着いた。
もう、ほかの部族の猫は全員集まっている。
フォレスト族のみんなはいっせいにくぼ地に駆けこんだ。
少しでも寒さが防げるくぼ地に早く入りたかったのだ。
ファイヤポーは初めて来るスターモスに感動し、目を真ん丸にしている。
そして見習いの集団を見つけ、一度ジェードフロストを振り返ったのちそちらへ駆けて行った。
ファイヤポーと別れたジェードフロストはあたりを見回し、前の大集会で仲良くなったブラッサムフローを探した。
すぐに見つかった。
ブラッサムフローは、薄紫の目をした、金茶色と白の毛皮のメス猫と話している。
「こんばんは!」
ジェードフロストは二匹に声をかけた。
「こんばんは」
二匹が答えてくれる。
すると、薄紫の目のメス猫が言った。
「はじめまして、ジェードフロスト。私はリーフウィング。グラス族の看護猫、マグノリアファーの妹よ」
「はじめまして!」
ジェードフロストは、リーフウィングもブラッサムフローも友好的なことがうれしかった。
「そうそう、私の弟子のピーコックポー、戦士になったのよ!」
「え!おめでとう!実は、私の弟子のストームポーもよ!ストームライトって言う名前になったの」
「ピーコックポーは、ピーコックポーウィングって名前になったわ」
「二匹とも、おめでとう」
リーフウィングが祝ってくれた。
「わたし、新しい弟子をもらったの。弟のファイヤポーよ。毛が炎のようなオレンジ色なの」
「あなたの弟なら、きっと優秀な戦士になるわ!」
それから三匹はしばらくおしゃべりを楽しんだ。
すると、ライジングスターが開会を告げ始めた。
「みんな、今日も素晴らしい満月だ。そして、私たち族長は、すべての部族の猫たちを歓迎する」
そう言うと、少し間を開け、言った。
「私から始めさせてもらっていいかな?フォレスト族には、戦士になった猫が三匹いる。ストームライト、ラセットウィンド、スノウフォールだ」
歓声が上がり、三匹の新米戦士が胸を張るのが見えた。
「そして、新しく見習いになったもの四匹。ジェードフロストのきょうだいのファイヤポー、タイガーポー、チャコールポーだ。チャコールポーは、看護猫になることを望んだ。そして、シンバズポー」
シンバズポーという名が挙がった瞬間、「誰だ、それ。誰の子供だ?」という声が上がった。
ライジングスターが大きく息を吸い、言った。
「話そう。我々の部族のなわばり内で、シンバズポーが血まみれになって倒れているのが見つかった。猫にやられた傷だ。だが、やったのは部族猫ではない。シンバズポーは飼い猫の生まれだ。だが、飼い猫の暮らしに満足しなかったシンバズポーは二本足のすみかから抜け出し、我々と暮らすことを望んだ。この子の指導者は俺だ。飼い猫の生まれでもりっぱな戦士になることができるのか、この目で確かめようと思う」
ライジングスターが話し終えるなり、抗議の声が上がった。
「飼い猫だと?ふざけるのもいい加減にしろ!」
「飼い猫生まれが戦士になれるわけがない!」
「飼い猫なんかがいる部族なんか、きっとそのうち弱っちまうぜ!」
とうとうライジングスターの怒りが頂点に達し、大声を張り上げた。
「シンバズポーが戦士になれないなんていうことはやってみなければわからない!我々の部族は弱くはならない、ふざけてもいない!」
くぼ地が静まり返った。
シンバズポーは自分が悪いと思っているかのように地面にうずくまり、うなだれている。
やがてうなり声が聞こえ、ジェードフロストが目を上げると、うなっている猫はクレセントクローだということが分かった。
「飼い猫をたやすく受け入れる部族なんて、真の部族とは呼べない。族長はどうかしているんじゃないのか?」
だが、ライジングスターは落ち着いた声で返した。
「俺は正しいと思ったことをしているだけだ。俺の部族は真の部族だ」
二匹の言い合いを引き金に、すべての部族が混ざり合って座っていたのが散り散りになり、部族同士でかたまった。
四つの部族のすべての猫が、背中の毛を逆立てている。
すると、看護猫のマグノリアファーが声を上げた。
「月に雲がかかっています!」
猫たちは月を見上げ、顔をしかめた。
「今日の大集会は解散のようだな。スカイ族がお怒りになった。大集会では争ってはいけないのに、その言いつけを破ったからだ」
トゥリクルスターのその言葉を合図に、四つの部族の猫たちはくぼ地を出ていった。
二匹だけ、まだ話している猫がいる。
ゴールデンスターとペタルムーンだ。
二匹は何言か言葉を交わすと、鼻を触れ合わせて一族を追いかけた。
ジェードフロストは二匹の話す内容を聞いた。
そして、今、そのことが嘘であることを願った。そして、できれば夢であってほしいとも思った。
二匹はこう言っていた。
「私のスカイウィングはどうしている?ああ、会いたくてたまらない」
「元気だよ。俺だってジェードウィングに会いたい」
「私たちが同じ部族だったらよかったのに」
「せめて、あんな間違いを犯さなければ」

ジェードウィング
未登録ユーザー


トップに戻る Go down

Road of love ~それぞれの恋の道~ 第七章~ - Page 3 Empty Road of love ~それぞれの恋の道~

投稿 by ジェードウィング Mon Oct 02, 2023 8:13 pm

第四十九章
ジェードフロストは、大集会の帰り道もゴールデンスターとペタルムーンのことで頭がいっぱいだった。
もう、考えを放棄したい!
ジェードフロストはそんなことを思うくらいにどうしたらいいのかわからなかった。
冷静になって、考えてみる。まず、頭の中を整理し始めた。
スカイウィングとブラクンペルトは愛し合っている。二匹があっているところをペタルムーンも見た。ペタルムーンとゴールデンスターはつながりがあり、なぜかそれぞれの子供たちに会いたいと言っている。それに、「同じ間違い」。それってもしかして…
ジェードフロストの足が止まった。
「スカイウィングとジェードウィングは、ペタルムーンとゴールデンスターの子供なんだわ」
ジェードフロストは、枯葉の季節の冷たい空気に混ざり、消えてしまいそうな小さな声で言った。
だが、思い直す。
そんなわけないじゃない!ばかね!
ペタルムーンはシルヴァークローのつれあいだし、ゴールデンスターの娘はスカイウィングだけよ。だいいち、ゴールデンスターは「グラス族の」族長でしょう?戦士のおきてを破るわけがないわ!
_______
でも、「族長なんだから」って、何になるのかしら?

あたたかい日差しの中で、ジェードフロストは目覚めた。
そばでサンダーフォレストが寝息を立てているのが聞こえる。
まだ、足が痛い。
昨日大集会のためにスターモスにいったからだ。
まあ、仕方がないわね。
そう思い、戦士部屋から出た。
外の空気は冷たく、戦士部屋から出た瞬間に全身の毛が逆立つ。おもわず耳を寝かせてしまうような寒さだ。
ふと、昨日のペタルムーンの言葉を思い出した。
『ああ、スカイウィングに会いたくてたまらないわ!』
すでに逆立っていたジェードフロストの毛が、いっそう激しく逆立った。
ペタルムーンの姿とスカイウィングの姿を重ね合わせてみる。
考えてみると、そっくりだ!
鼻づらや耳、しっぽと足の先だけが淡いショウガ色の白い毛皮。それに、全体的に短い毛足とふさふさとしたしっぽ。違うのは、目の色だけだ。
ジェードフロストは頭を振った。
そのことは、できるだけ考えないようにしなきゃ!集中しなきゃ!今は大変な時なのよ!
「そうだ、ジェードフロスト!今は頭からしめ出しておけ!」
この声は…
「ジェイフェザー?」
「ああ、おれだ。姿は見えないだろう?この声が聞こえているのはお前だけだ。さあ、本題に入るから、森に出ろ!」
ジェードフロストは、ジェイフェザーに言われた通りに森に出た。
しばらく歩き、来たのはオークフロク。
ジェードフロストは、一本の大きなオークの根元に座りやすい体制で座った。
「よし、本題だ!」
その声とともに、ジェイフェザーが現れた。
「もうすぐ、雪も解け始める季節になる。もう、族長に話せ。戦闘態勢に入るんだ。ほかの部族にも警告しなければ。それぞれの先代族長に伝えておこう。ジェードフロスト、何のためにアースが〈大地のうなり〉を起こしてあの場所を見つけさせたのかはわかっているな?」
ジェイフェザーに聞かれ、答える。
「あそこが…あそこが避難用の場所になるんですね?」
ジェイフェザーがうなずいた。
「そのとおり。アースはそのことを伝えたかったんだ。お前は、クレセントクローがダークヴァレイ側についていることも知っているな?そのことはみんなが知っておいたほうがいい。もちろん、クレセントクローの属するサンド族も。だが、そう簡単には受け入れないだろう」
「じゃあ、どうするんですか?」
ジェイフェザーはしっぽを一振りし、言った。
「自分たちの目で見てもらう。お前が夢を見たとき、誘い込むんだ。おれもいく。いいな?」
「はい!」
ジェードフロストの背中の毛が、興奮で逆立った。
「あのう、ジェイフェザー?」
ジェードフロストは恐る恐る訪ねた。
「なんだ?」
「ペタルムーンとゴールデンスターのことなんですけど、あの二匹はスカイウィングとジェードウィングの親なんですよね?」
ジェイフェザーがうなずいた。
「あのことについては、私はどうしたらいいんですか?」
「時が来るのを待て。その時が来たら、おれが伝えに来る」
「わかりました。ありがとうございます」
ジェードフロストの言葉を聞いた直後、ジェイフェザーの姿が薄くなっていき、消えた。
ひとまず、気にかかることの一つが少し軽くなった。
これで少し、楽になった。
ああ、私は一人ではないんだわ。
ジェイフェザーがいる。ダヴウィングもライオンブレイズもいる。
スター族の方々だって、スカイ族の方々だって、みんな私のことを見守ってくださっている。

ジェードウィング
未登録ユーザー


トップに戻る Go down

Road of love ~それぞれの恋の道~ 第七章~ - Page 3 Empty Road of love ~それぞれの恋の道~

投稿 by ジェードウィング Tue Oct 03, 2023 5:47 pm

第五十章
「ジェードフロスト!ジェードフロスト!」
ジェイフェザーの呼ぶ声がする。
ジェードフロストは頭を起こした。ここは…
「スカイ族の狩場ですか?」
「ああ、その通り。今日、族長たちをダークヴァレイに連れていく。族長たちを起こしに行くぞ」
そう言って、ジェイフェザーは美しい草や花の上を進んだ。
間もなく、ライジングスターの姿が見えてきた。
ジェイフェザーが呼びかける。
「ライジングスター!来てくれ。話さなくてはならないことがあるんだ。ほかの三部族の族長のことも呼びに行く」
ライジングスターはジェイフェザーとジェードフロストのことを見て目を丸くしたが、黙ってうなずき、ついてきた。
しばらく歩くと、クロウスターとトゥリクルスターが一緒に歩いていた。
二匹の族長は、ジェードフロストたち三匹を見ると驚いた顔をし、お互いの顔を見合わせた。
「どうしたんだ、ライジングスター?」
「ジェイフェザーからお話があるというんだ」
トゥリクルスターの質問にライジングスターが答えると、クロウスターが言った。
「スカイ族の前の時代のスター族…?の方ですね?」
「ああ、そうだ。おれはサンダー族で看護猫として仕えたジェイフェザー。さあ、ゴールデンスターのことを呼びに行くぞ」
一行は、再び歩き出した。
ほどなくゴールデンスターも見つかった。
ゴールデンスターのことを見ると、ペタルムーンやジェードウィング、スカイウィングのことが頭に浮かぶ。
だが、そのことを読まれたのだろう。ジェイフェザーがちらっとこっちを見た。
「ゴールデンスター、ついてきてくれ。すべての部族にかかわる重大なことなんだ」
ゴールデンスターもうなずき、一行はダークヴァレイに向かった。
「おれたちが今から行くところは、現実の世界だ。夢でも、何でもない。音を立てれば、おれたちはそこでおしまいだ」
ジェイフェザーに警告され、ついてきている五匹の背中の毛が逆立つ。
ふいにジェイフェザーは足を止めた。
ジェイフェザーがぎゅっと目をつむると、景色は流れるように進み、やがて現実の世界とつながった。ダークヴァレイだ。
「着いた。現実の世界、ダークヴァレイだ。今から見ることは、今実際に起きていることだ。そのことを忘れないように」
ジェイフェザーが言った。四匹の族長がうなずく。
一行は進み、大きな岩の陰に隠れて会話を聞いた。
今日もまた、声が聞こえる。
「おい、クレセントクロー。どの部族から攻めるのが賢明だと思う?」
ジャギッドクローの声だ。
「何を言っているんだ、ジャギッドクロー。俺たちのほうが部族猫より数が多いんだぞ。すべての部族を一気に攻めるんだ」
その会話を聞いた族長たちが、毛を逆立てて目をギラつかせた。
「どういうつもりだ、クレセントクロー!お前は俺の一族の猫だろう?」
トゥリクルスターが悲しそうな、とても小さな声で言った。
また、ジャギッドクローの声がする。
「ほう、一気に、か。それは思いつかなかったな。確かに俺たちは数が多い」
ジャギッドクローは、大きなショウガ色の頭を前後に揺らした。
「おい、ナイトシャドウ、ストーンクロー!」
クレセントクローが呼んだのを聞き、トゥリクルスターの表情がさらに曇った。
「俺の部族には裏切り者が何匹いるんだ?情けない!俺の指導不足だ、すまない」
トゥリクルスターがうなだれたのを見て、ライジングスターが言った。
「トゥリクルスター、お前は悪くない。ただ、あいつに邪な心があったから、そうなってしまっただけだ」
「そのとおり、お前は悪くない」
ジェイフェザーもうなずいた。
ゴールデンスターはトゥリクルスターに身を寄せて座り、クロウスターはトゥリクルスターの体にしっぽを回している。
部族猫って、なんてきずなが深いの!
ジェードフロストは感動した。が、すぐにダークヴァレイの猫に注意を戻した。
「もうすぐ、雪解けの季節だな。どの日の真夜中にする?」
ジャギッドクローの質問に、クレセントクローが答える。
「部族猫は、満月の夜に大集会というものをする。その日の前はどうだ?」
「それはいい。やつらを恐怖のどん底に落としてやろう!森は部族猫の血で染まるぞ!ああ、楽しみだ、早く見たいよ。部族猫がおびえて逃げる様子をな!」
ジャギッドクローは喜びを隠せない様子で鋭い牙をむき出し、笑った。
クレセントクローが言う。満足げだ。
「では、襲撃は輝く丸い月の下。森は部族猫の血で美しく彩られることになるだろう」

ジェードウィング
未登録ユーザー


トップに戻る Go down

Road of love ~それぞれの恋の道~ 第七章~ - Page 3 Empty Road of love ~それぞれの恋の道~

投稿 by ジェードウィング Thu Oct 05, 2023 5:38 pm

第五十一章
ジェードフロストははっと目を覚ました。
毛皮がぐっしょり濡れて体に張り付き、気持ち悪い。
ジェードフロストは毛をなめ始めた。
しばらくするとサンダーフォレストも起き上がり、寝ぼけ眼のままジェードフロストの毛をなめるのを手伝い始めた。
しばらく体をなめて乾かした後戦士部屋を出ると、ライジングスターが待っていた。
「ジェードフロスト!」
「はい、族長。夢のことですね」
ライジングスターが不安そうに耳をぴくっと動かした。
「来てくれ」
ライジングスターがイバラのトンネルに入ったので、ジェードフロストもついて行った。
訓練用のくぼ地のそばの小川のわきまで来ると、ライジングスターが腰を下ろした。
ライジングスターが切り出す。
「昨日見た夢のことなんだが、本当にあれは全て現実で起こっていることなのか?その…クレセントクローのことや襲撃のことは」
ライジングスターはしっぽをソワソワ動かした。
「ええ、現実で起こっています。ジェイフェザーもそう言ったでしょう?」
「あ、ああ」
族長がそんなに心配するわけもわかる。もうすぐ雪解けの季節になるうえ、サンド族の中に三匹も裏切り者がいるのだから。
「もうすぐ雪解けの季節です、ライジングスター。そろそろみんなにも話したほうがいいのではないでしょうか。フォレスト族だけじゃありません。すべての部族に話すよう、族長たちに伝えておきます」
ライジングスターの目が不安そうにきらりと光ったが、何も言わずにうなずいた。
しばらく族長の姿が見えていたが、やがて視界から消え、足音も聞こえなくなった。
ジェードフロストはため息をついた。
全てはクレセントクローのせいよ!裏切りなんかなかったら、こんなことにならなかったのに…
そう考えた瞬間、ゴールデンスターとペタルムーンのことが真っ先に頭に浮かんだ。
ある意味、あの二匹も裏切り行為をしたと言えるのかしら?戦士のおきてを破ったのだし…
ジェードフロストは頭を振った。
何を考えてるの、ジェードフロスト!あれは裏切りではないわよね?きっと…きっと、そう、よね…?

辺りはもう真っ暗。
狩りから帰ってきたジェードフロストは、美しく輝く月を見上げた。
月はあんなに美しいのに…
そう思いながら、ジェードフロストは戦士部屋にある自分の寝床で丸くなった。
目を閉じ、ゆっくりと息を吸う。
今日は夢を見なくちゃいけないのよね。族長たちに伝えなきゃならないことがあるのだから。
だが、ジェードフロストが目を開けると、そこは望んでいた場所ではなかった。
ここはどこ?
雪が降ってるわ!なんて寒いのかしら!
ジェードフロストはあたりを見回した。
ふいに足音がして、そばにあった茂みに隠れた。
そこから様子を見る。
二匹の若い猫と、二匹の子猫だ。
なんで、こんなに寒いところを歩いているの?しかも、あの子猫たちは…生まれたばかりだわ!
黄金色のオス猫は白い子猫を、白いメス猫は斑点模様のある銀色の子猫をくわえている。
もしかしてあの二匹は…
「お、おかあさん?」
すぐそばで声がした。
横を見ると、そこには白猫にくわえられた銀色の子猫をそのまま大きくしたような成猫がいた。
あれは、ジェードウィングだ。

ジェードウィング
未登録ユーザー


トップに戻る Go down

Road of love ~それぞれの恋の道~ 第七章~ - Page 3 Empty Road of love ~それぞれの恋の道~

投稿 by ジェードウィング Fri Oct 06, 2023 5:03 pm

第五十二章
「ジェ、ジェードウィング?」
「ジェードフロストなの?どうしてここにいるの?しかも、あの子猫は私にそっくりだわ!」
正直言って、ジェードフロストも自分がどこにいるのかわからなかったし混乱していた。
「わ、わからないの。お母さんこそ、どうして…?」
「眠っていて、目を開けたらここにいたの」
これは夢だということは決定ね。これは今起こっていることではない。なら、誰かの記憶…?
そう思ったとき、自然とこういっていた。
「ジェードウィング、追わなきゃ見失っちゃうわ!あれが誰なのか突き止めないと!」
「そ、そうね!」
二匹は猫たちの後を追った。
しばらく見ていてわかった。
あの二匹と子猫たちは、若い時のペタルムーンとゴールデンスター、それからスカイウィングとジェードウィングだわ!
ジェードウィングも気が付いてしまったようだ。
「あれは、私だわ!でも、一緒にいる猫は誰…?」
そう言ったとき、後ろの茂みがカサコソと音を立て、猫が出てきた。
出てきた猫を見て、ジェードフロストは体をこわばらせた。
ゴールデンスターとペタルムーンとスカイウィング!
「ここはどこだ?どういうことなんだ?」
ゴールデンスターは戸惑っているように見えるが、実はここがどこかを知っていて、自分たちの秘密がばれてしまうのを恐れているのだろうかとジェードフロストは思った。
ペタルムーンもゴールデンスターと同じようで、不安そうに目が光った。
スカイウィングは本当に困惑している。
「どうして二匹がここにいるの?」
「ほんとに、どうしてかしら?」
ペタルムーンの耳がぴくっと動いた。
「とにかく、あの猫たちを追わないと!見失っちゃうわ!ここはきっと誰かの記憶の中なのよ!」
ジェードウィングが言った。
それを聞いた三匹はうなずき、四匹の若い猫たちを追って歩き出した。
ゴールデンスターとペタルムーンは列の後ろを歩き、不安そうに顔を見合わせている。
これは、気づいているな。ジェードフロストは心づいた。
しばらくして、スカイウィングも言った。
「あの子猫は、私よ!もう片方はジェードウィングだわ!それにあの二匹は…」
スカイウィングは言いかけて体をこわばらせ、ジェードウィングの顔を覗き込んだ。
ジェードウィングも気が付き、息をのんでから叫んだ。
「ペタルムーンとゴールデンスター!でも、どうして!」
ああ、もうどうしよう!スカイ族の猫は、二匹の出生の秘密がばれてもいいと思っているのかしら?
ペタルムーンは下を向き、ゴールデンスターもしっぽをソワソワと動かした。
「どういうことなの?お母さん、話してちょうだい!」
ジェードウィングがきつい口調で聞いた。
「お父さんもよ!どうして二匹が一緒にいるの?」
スカイウィングも言った。
そんなの、わかりきったことじゃない。二匹はあなたたちの親なのよ!
ジェードフロストはそう叫びたかったが、二匹が話し出すのを待った。
しばらくの沈黙ののち、ペタルムーンがぽそっと言った。
「愛していたの」
スカイウィングは目を丸くし、ジェードウィングは驚きのあまりかぎづめを出した。
「お前たちは…」
ゴールデンスターは言いかけてごくりと生唾をのんだ。
「お前たちは俺たちの娘だ、スカイウィング、ジェードウィング」
その言葉を聞いた瞬間、二匹の目に怒りが燃え上がった。
「そんなことはあり得ない!私のお父さんはシルヴァークローよ!あなたじゃない!」
ジェードウィングが激しく言うと、スカイウィングも言った。
「そうよ!私のお母さんはブラッサムハート!お父さんはゴールデンスターよ!」
二匹はうなだれた。
「すまない」
ゴールデンスターがあやまったが、二匹の怒りはそんなことではおさまらない。
「あやまってすむ話じゃないでしょう!私たちは戦士のおきてが破られることによって生まれてきた罪の子なのね!」
ジェードウィングが怒りと悲しみの混じった、絶望した声で叫んだ。
「違うわ!罪を犯したのはあなたじゃない!私たちよ!悪いのは私たちだけ!」
「ええ、悪いのはあなたたちよ!もちろんね!」
スカイウィングが怒った声で言った。
ジェードフロストはどうすればいいのかわからずに見ていると、やがて景色がぼやけ始め、もうすぐ朝になることを知らせた。
「待って!今争っても意味がない!もう朝になるわ!明日、境界線で会いましょう。それぞれの…ゴールデンスターとペタルムーンのつれあいを連れてくること。絶対よ」
ジェードフロストの言葉に二匹の荒い声が止まり、同意の声を上げた。だが、二匹の目はしっかりと親たちを捕らえ、にらんでいる。
ああ、どうしよう。
ばれてしまう時が来るのはわかっていたけれど、こんな形で明かされることになってしまうなんて!
ジェードフロストは絶望した。
ダークヴァレイに狙われているときとこの時が重なってしまうなんて、なんて不都合なの!
やがて景色は真っ白になり、ジェードフロストは夢から覚めた。
もうキャンプは活気にあふれ、ライジングスターの召集がかかった。

ジェードウィング
未登録ユーザー


トップに戻る Go down

Road of love ~それぞれの恋の道~ 第七章~ - Page 3 Empty Road of love ~それぞれの恋の道~

投稿 by ジェードウィング Sat Oct 07, 2023 7:41 pm

第五十三章
戦士部屋に差し込むやわらかい朝日。
太陽の光を受けて輝く真っ白な毛皮。
もうキャンプは活気にあふれている。
「みんな、空き地に集まれ!緊急の集会を始める!」
空き地に響くのは、ライジングスターの声だ。
ジェードフロストが部屋から出ると、もう空き地はフォレスト族の猫たちで埋め尽くされていた。
その中でも、ジェードフロストは、炎の色をした弟かつ弟子の姿を見つけ、そばへ行った。
「今、みんなに明かす。大変動が起こるぞ!我々部族猫たちはダークヴァレイに狙われている!」
空き地にいる猫の何匹かが息をのみ、数匹は爪を出した。
全てを知っているジェードフロストは、特に驚かない。
だが、事実を伝えられておびえる部族仲間の顔を見ると、心配せずにはいられなかった。
「どういうことですか?わ、私たちが狙われている…?」
副長のスプリングストームがたずねる。
「言葉通りの意味だよ、スプリングストーム。そして、ジェードフロストはやつらの動きを探るために夢でダークヴァレイに行っていることがある」
空き地中の猫たちの視線が自分に集まり、毛皮が焼けこげるかと思うほど熱くなった。
「やつらにはスパイがいる。サンド族のクレセントクロー、ナイトシャドウ、ストーンクローだ」
その名前を聞き、何匹かが身をこわばらせた。
「前に襲撃に来た猫たちじゃないですか!」
クラウドウィングが叫ぶ。
スラッシュウィンドは弟子であるタイガーポーの体にしっぽをまわし、アイスブラッサムはサンペルトに体をおしつけた。
ライジングスターがしっぽを上げ、みんなを黙らせてから言った。
「その通り。襲撃に来た三匹だ。クレセントクローは自分のことを愛してくれなかったジェードウィングを憎み、襲撃を企てた。あのときかたずけておけばよかったのだが、サンド族にどう説明しろというのだ?」
フォレストアイがうなったので、ライジングスターが付け足した。
そして、続けた。
「ダークヴァレイの襲撃があるのは雪解けの季節の真夜中だ!大集会の前の日。みんなは戦闘態勢に入らなければ!」
空き地から歓声が上がった。
「あの、発言させていただいてもいいでしょうか、ライジングスター」
ジェードフロストがたずねた。
「なんだい?話してみろ」
ライジングスターはグレートルートから降り、ジェードフロストに場所を譲った。
「みんな、聞いてください!」
みんなが目を真ん丸にしてジェードフロストのことを見上げた。
「私が落ちたあの〈とがり石の洞窟〉は、このために開かれたものなんです!避難場所になります、あそこは広いですから。コケやシダが敷き詰めてあるし、地上より少し暖かいので過ごしやすいです。全員が下りられるように準備しておいてください!」
空き地から賛成の声が上がった。
「子猫もか、ジェードフロスト?」
クリムソンハートが聞いた。
「ええ!もちろん!子猫と長老だけでも隠れられるようにしなきゃ!」
ジェードフロストは、言い終えるとグレートルートから飛び降りた。
ライジングスターが再びグレートルートに飛び乗り、「解散!戦闘態勢に入るため、狩りをして来い!あと一か月もすれば雪解けの季節だぞ!」といった。
そこで、ジェードフロストは思い出した。
重要な用事がある!
そう、血筋の問題だ。グラス族との境界線に行かなきゃ!
ジェードフロストは駆けだし、ジェードウィング、ペタルムーン、そしてシルヴァークローを呼びに行った。
シルヴァークローには、「重要なことだからとにかく来てください!」と説明し、境界線へと急いだ。
境界線に着くと、もうスカイウィングとゴールデンスターとブラッサムハートは来ていた。
ブラッサムハートは、駆けてくるフォレスト族の四匹を見て目を真ん丸にした。
「まったく。本当に、どういうことだ?」
シルヴァークローが息を切らしたまま言った。
ブラッサムハートがうつむいて困惑した表情をしているところを見ると、この猫もグル(仲間)なのだろう。
顔を合わせた、シルヴァークローとジェードフロスト以外の猫たちが気まずそうな顔をした。
しばらくして、ブラッサムハートが言った。
「血筋の…、出生の秘密のことよね?そうでしょう?」
シルヴァークローの目が丸くなる。
「ええ、そのとおりよ!」
ジェードウィングが牙をむき出し、激しく言った。
「おい、ちょっと待て、出生の秘密って、なんのことだ?」
シルヴァークローが言った。
「は、話しましょう」
ペタルムーンが答える。
「昔、私たちがまだ戦士になりたてだったころ、私が境界線でキツネに襲われたのを知っているわね?あの時、当時戦士だったゴールデンスターとブラッサムハートが助けてくれたの。私はゴールデンスターと恋に落ちた」
シルヴァークローの顔が、驚きからどんどん怒りの顔に変わっていった。
ペタルムーンはひるみ、ゴールデンスターに身を寄せた。
ゴールデンスターが代わって話す。                                           
「俺たちは三日に一度会った。しばらく会い続けると、子供ができてしまったんだ。それで、ばれてはいけないからペタルムーンは偽りのつれあいを作ることになった。子猫は枯葉の季節の雪が激しい日に境界線で生まれた。当時俺たちがあっていたことを知っていたブラッサムハートが出産を手伝ってくれた」
シルヴァークローの目は怒りに燃えている。
「二匹から同時に離れるなんて、俺達にはできなかった。そこで、俺たちは子猫を一匹ずつ引き取ることになったんだ」
スカイウィングはうなり、ジェードウィングは牙をむいた。シルヴァークローは地面にかぎづめを立てている。
「君は俺のことをだましていたのか?!そのことを何とも思っていなかったのか?俺は本気で君のことを愛していたのに!」
ペタルムーンの目が潤み、ペタルムーンは涙声で言った。
「愛してはいたわ。でも…でも私にはゴールデンスターを忘れるなんてできなかった。しばらくしてゴールデンスターは族長になって、会いにくくなってしまったの。でも、それでよかったのかもしれないわね。私たちが戦士のおきてを破って会うことはなくなったのだから。会うことができるのは月に一回の大集会だけ。その大集会でも会えない時があるわ」
「いいや!俺やジェードウィングやスカイウィング、一族にうそをついてだまし続けただけでも戦士のおきてを破ることになる!俺は君を許さない!」
そう言い残すと、シルヴァークローは走ってキャンプへ戻っていった。
ペタルムーンの目から涙がこぼれ落ちる。
「ごめんなさい…」
「謝ってすむことじゃないわ!あんたたちのせいよ!シルヴァークローや私たちを裏切るなんて!」
ジェードウィングが言った。
スカイウィングもうなり、歯をむき出した。
「困るのはお前たちだけだとでも思っているのか?俺たちだって大いに苦しんだんだぞ!」
ブラッサムハートは困った顔のまま小さくうなずく。
しばらくの沈黙ののち、スカイウィングが絶望した声でぽつりと言った。
「破られたおきてはもう戻らない。時も戻らないのよ」
みんなが黙り込んでいる。
ほどなく新しい声がした。
「お前たち、こんなところで何をしているんだ?」
声の主は、ライジングスターだった。

ジェードウィング
未登録ユーザー


トップに戻る Go down

Road of love ~それぞれの恋の道~ 第七章~ - Page 3 Empty Road of love ~それぞれの恋の道~

投稿 by ジェードウィング Sun Oct 08, 2023 1:19 pm

第五十四章
ライジングスターは首を傾げ、繰り返した。
「何をしているんだ?こんなところで」
そこでグラス族の三匹を見つけ、毛を逆立てた。
「どういうことだ?グラス族ともめごとか?」
「ええ、そのとおりです!血筋のことでね!」
スカイウィングが激しく言い、ジェードウィングとスカイウィング以外がひるんだ。
ジェードウィングは歯をむき、ペタルムーンとゴールデンスターに目を据えたままうなずいた。
「血筋だと?説明してくれないか、ゴールデンスター?」
ゴールデンスターは困った顔をしたが、ほどなく話し始めた。
「ジェードウィングとスカイウィングは俺とペタルムーンの子供なんだ」
ライジングスターの顔に驚きの表情が広がる。
「ゴールデンスターがまだ戦士だったころ、キツネに襲われたところを助けてくれて、恋に落ちてしまったの」
ペタルムーンがぽそっとつけくわえた。
「で、でも、シルヴァークローは?ど、どうして…ありえないだろう?」
ライジングスターは困惑しきっている。
それを見たジェードウィングは憎しみに満ちた目をしたままライジングスターに言った。
「言葉通りの意味です、ライジングスター!この二匹…いや、三匹は、ずっと私たちをだましていたんです!」
「違うわ!だましていたのではない!私たちは秘密を守っただけ。私たちは本当にあなたたちのことを愛していた!」
ペタルムーンが絶望した声で言った。
「愛してたって?傷つけてるだけじゃない!その秘密のせいで、私たちがどれだけ苦しむことになるのかしら?」
スカイウィングが冷たく言い放った。
ライジングスター、ブラッサムハート、ペタルムーンはたじろぎ、下を向いた。
「本当なのか?」
ライジングスターがたずねる。
三匹はそろってうなずいた。
ライジングスターがため息をつく。
「どうしたものか」
ライジングスターのその声は、冷たい空気の中に溶け込むように響いた。
「秘密がばれてしまったわ…。私たちはどうするべきなのかしら?」
ブラッサムハートが言った。
「わかりきったことでしょ?罪をつぐないなさいよ」
ジェードウィングが三匹に向けて冷ややかに言った。
スカイウィングもうなり、鼻にしわを寄せている。
その様子を見たライジングスターが全員に向けていった。
「今は争ってもしかたがない。ゴールデンスター、ダークヴァレイのことはもう一族に話したか?」
「ああ」
「なら、できることをしないと。今は血筋のことでもめている場合ではない」
全員が下を向き、うなずいた。
「さあ、ダークヴァレイの襲撃はもうすぐだ。イバラのトンネルの補強、避難場所の確保…そうだ、避難場所!」
ライジングスターはふいに大きな声を出した。
「ゴールデンスター、覚えておいてくれ。フォレスト族のキャンプ内に避難場所が見つかった。地下にある〈とがり石の洞窟〉という場所だ。襲撃の日までに下見に来てくれ」
ゴールデンスターがうなずいた。
「ひとまずキャンプに帰らなければ。長い間外にいたら心配されてしまう。じゃあ、また襲撃の日に」
ライジングスターはそう言い、しっぽを大きく振ってジェードウィングとジェードフロスト、そしてペタルムーンに合図した。
ペタルムーンは最後にちらっとグラス族の三匹を振り返り、歩き出した。
グラス族の三匹はしばらく下を向いていたが、やがてゴールデンスターを先頭に歩き出した。
血筋、ダークヴァレイ、戦闘準備。
たくさんの問題が一気に重なり、混乱する。
どれもこれも、すぐに解決することはできない。
それに、今度の戦いで部族はたくさんの戦士を失うことになるかもしれない。

ジェードウィング
未登録ユーザー


トップに戻る Go down

Road of love ~それぞれの恋の道~ 第七章~ - Page 3 Empty Road of love ~それぞれの恋の道~

投稿 by ジェードウィング Mon Oct 09, 2023 1:50 pm

新しく戦士や見習いになった猫も多いので、また猫紹介~!
●フォレスト族
族長  ライジングスター(昇る星):黄金色の毛をしたオス猫。目は薄青色。弟子は元飼い猫で、黄金色のしま柄のオス猫、シンバズポー。
副長  スプリングストーム(泉の嵐):薄いクリーム色の毛に水色の目のメス猫。
看護猫 ヘザーリーフ(ヒースの葉):薄茶と白の毛皮に薄緑の目をしたメス猫。弟子は、茶色みがかった灰色で、琥珀色の目をしたチャコールポー。
戦士猫 ジェードフロスト(霜のかかった翡翠):翡翠色の目をした白いメス猫。弟子は、炎の色をした緑の目のオス猫で、弟でもあるファイヤポー。
    サンダーフォレスト(雷の森):薄い金色の毛皮に青い目のオス猫。ラセットウィンドの元指導者。
    ジェードウィング(翡翠の翼):斑点模様のある銀色と、白の毛皮のメス猫。クリムソンハートのつれあい。
    クリムソンハート(深紅の心):珍しい、赤銅色の目をした白いオス猫。
    ペタルムーン(花びらの月):鼻づらやしっぽの先、足先が淡いショウガ色の白いメス猫。シルヴァークローのつれあいだが…
    シルヴァークロー(銀色のかぎづめ):銀色と白の毛皮で目は琥珀色。
    ブラックストーム(黒い嵐):真っ黒なオス猫で、目は青。
    スラッシュウィンド(ツグミの風):茶色と黒のしま柄に青い目をしたオス猫。弟子は、緑の目をした銀色のトラ柄のメス猫、タイガーポー。
    ヴァイオレットプール(スミレの水たまり):薄紫の目をした白いメス猫。
    リリーウィング(ユリの翼):琥珀色と薄桃色のオッドアイの白いメス猫。ヴァイオレットプールの妹。
    アイスブラッサム(氷の花):クリムソンハートの妹。水色と薄桃色のオッドアイの白いメス猫。サンペルトのつれあい。
    サンペルト(太陽の毛皮):淡いショウガ色っぽい金色の毛皮をした薄青色の目のオス猫。
    クラウドウィング(雲の翼):青い目をした白いメス猫。ブラックストームの妹で、フォレストアイのつれあい。
    フォレストアイ(森の目):驚くほど鮮やかな緑の目をした茶色い毛皮のオス猫。
    ホーククロー(鷹の爪):こげ茶と白の毛皮に琥珀色の目をしたオス猫。スラッシュウィンドの兄。
    ミスティスカイ(霧がかかった空):青い目に灰色の毛皮のメス猫。
    シャイニングウィング(輝く翼):淡い黄金色の毛皮に緑の目をしたメス猫。ミスティスカイの妹。
    スノウフォール(散る雪):青い目をした白いメス猫。ストームライトの姉で、ラセットウィンドの妹。
    ストームライト(嵐の光):緑の目をした灰色の毛皮のオス猫。スノウフォールとラセットウィンドの弟で、ジェードフロストの元弟子。
    ラセットウィンド(赤褐色の風):赤褐色の毛皮の、琥珀色の目をしたオス猫。スノウフォールとストームライトの兄。
    スパロウペルト(スズメの毛皮):黒い斑点のある茶色の毛皮と白の毛皮のオス猫。目は灰色。
    モスペルト(コケの毛皮):白地に三毛柄のメス猫。目は緑色。
    スペックルバーク(まだらな樹皮):白地に茶色のぶち柄のオス猫。目は緑色。
長老猫 ホワイトクロー(白いかぎづめ):琥珀色の目をした白いオス猫。
    スポッティドウィング(まだらな翼):三毛柄のメス猫で、目は琥珀色。
    ラシットストライプ(赤褐色のしま):緑の目をした、赤褐色のトラ柄のオス猫。最年長。

ひとまず、フォレスト族だけでも…許してください (m´・ω・`)m ゴメンナサイ…

ジェードウィング
未登録ユーザー


トップに戻る Go down

Road of love ~それぞれの恋の道~ 第七章~ - Page 3 Empty Road of love ~それぞれの恋の道~

投稿 by ジェードウィング Mon Oct 09, 2023 2:20 pm

アージャーウィング忘れてた!足しときます。
あと、ダークヴァレイとかも!

戦士猫     アージャーウィング(紺碧の翼):紺色と琥珀色のオッドアイの白いメス猫。


ダークヴァレイ ジャギッドクロー(ギザギザなかぎづめ):猫とは思えないほど大きな赤褐色のオス猫。
                           ダークヴァレイのリーダー。
        スパッターブラッド(飛び散る血):ジャギッドクローについで大きな黒いオス猫。目は赤。
                        ダークヴァレイの副リーダー。
        ナイト〈暗闇の夜〉:青い目をした黒いオス猫。
        クロー〈鋭いかぎづめ〉:琥珀色の目をしたオス黒猫。
        ダーク〈心の闇〉:氷のような水色の目をした黒いオス猫。
        ワウンド〈裂けた傷〉:わき腹に大きな傷跡のある、琥珀色の目をした黒いオス猫。
        シャドウ〈割れた影〉:薄緑の目をした黒いメス猫。
        デッド〈森の死〉:緑の目をした黒いオス猫。
        ホロー〈闇の穴〉:淡い琥珀色の目をした黒いオス猫。
        and so on.(まだまだいます)

大地の猫    アース(大地):こげ茶のトラ柄の年老いたオス猫。目は青で、〈大地のうなり〉を起こす。
天空の猫    エーテル(天空):灰色のトラ柄の年老いたオス猫。目は水色で、〈天空の雄叫び〉を起こすことができる。
                後々登場する。
また増やすかもしれませんが、いったんこれでよろしくお願いします。

      

ジェードウィング
未登録ユーザー


トップに戻る Go down

Road of love ~それぞれの恋の道~ 第七章~ - Page 3 Empty Road of love ~それぞれの恋の道~

投稿 by ジェードウィング Mon Oct 09, 2023 3:28 pm

第五十五章
ジェードフロストは、ファイヤポーを連れて森に出た。
その時、猫が走り抜ける音と、うめき声が聞こえた。
二匹は走って声が聞こえたところまで行った。
なんということなの!
ジェードフロストは、今見ているこの光景が夢や幻覚であることを願った。
そこには、血にまみれたヘザーリーフと、傷だらけのチャコールポーが横たわっていた。
ダークヴァレイのにおいがする!
とうとうやられた。
部族猫は看護猫を一匹、いや、二匹失ったのかもしれない!
許せない!
みんなに尊敬されるヘザーリーフ。愛されるヘザーリーフ。子猫に優しく返事をするヘザーリーフ。一生懸命に看護をするヘザーリーフ。
たくさんのヘザーリーフの姿が頭に浮かび、地面がぐらりと揺れた気がした。
「うわああああ!ヘザーリーフ、いやだ!チャコールポー、返事をしろよ!」
ファイヤポーはヘザーリーフの遺体に飛びつくように駆け寄り、血だらけの毛皮に鼻づらをうずめた。
ジェードフロストも震える足を無理やり動かし、チャコールポーのそばにかがみこんだ。
チャコールポーをつつく。
うめき声が上がった!まだ、生きている!
「ファイヤポー、チャコールポーはまだ生きているわ!キャンプに連れ帰らなくては!」
ファイヤポーはヘザーリーフの毛に顔をうずめたままうなずいた。
ヘザーリーフの体からまだゆっくりと血が流れているところを見ると、殺されたのは今さっきだろう。
ファイヤポーのほほが、血で真っ赤に染まっている。
まだ、ダークヴァレイの猫はこのなわばり内にいるかも!
ジェードフロストはファイヤポーに早口で伝えた。
「まだいるかも!やつらは森の中を歩きなれてないわ!」
ファイヤポーがぎょっと目を見開いた。
「待って!ひとりじゃ危ないです!」
ジェードフロストはファイヤポーが言い終えないうちに走り出した。
ダークヴァレイの猫のにおいをたどる。一匹だ。
しばらく走る。
近い!
もうすぐ追いつくわ!
もうしばらく走ると、一匹の大きな黒猫の姿が見えた。
岩場を歩きなれている黒猫は、柔らかい土の上をぎこちなく走っている。
ジェードフロストは黒猫に飛びついた。
この黒猫は…
ダーク!
見覚えのあるこの黒猫は、前にも部族のなわばりに来ていた。
いきなり飛びつかれたダークは半狂乱になってかぎづめを振り回し、大きく体を振った。
ジェードフロストは地面にたたきつけられ、うめいた。
こんなことで戦いはやめない。私たちは大切な猫を一匹失ったのだから!
許さない、許せない!
ジェードフロストはダークののど目がけて大きく飛んだが、簡単に払いのけられた。
ダークはジェードフロストに向かって大きく飛び、背中の上に着地した。
背中をかぎづめでひっかかれ、苦痛の叫び声をあげる。
ジェードフロストは背中にダークを乗せたまま後ろざまにひっくり返り、ダークを下敷きにした。
すぐに飛びのき、顔を二発殴った。
だが、ダークもそんなことではあきらめない。
もう、殺さなくてはならないのかもしれない!
ジェードフロストはまたダークに向き直った。
でも、ダークのほうが反撃が早かった。
もうダークの前足は突き出され、ジェードフロストの両前足をはらい、倒した。
ジェードフロストは立ち上がろうとした。が、押さえつけられ、激しく身をよじった。
まず、一発目。
ダークの前足はジェードフロストの首筋に命中した。
二発目。
今度は頭の後ろを引っかかれる。
もう、だめだ。
だがそのとき、いいアイデアが浮かんだ。
こんな手に引っかかるかは心配だが、やってみる価値はある。
ジェードフロストはふいに抵抗するのをやめ、降参したかのように地面にうずくまった。
次の動きに備えて体中に力をこめる。
ダークは勝ち誇ったように一声鳴き、前足を大きく振り下ろした。
その瞬間、ジェードフロストは飛び上がり、ダークの腹に頭突きをくらわした。
ダークは不意を突かれて驚き、苦痛の叫び声をあげた。
だが、逆効果だったようだ。
ダークの氷のような水色の目が怒りに燃え、完全にかぎづめをむき出した状態の前足を大きく振りかぶった。
体勢を立て直す暇もなかったジェードフロストは目をぎゅっとつむり、死を覚悟した。
大きな叫び声をあげると同時に、頭の中で苦痛が爆発した。
ダークの勝ち誇った大きな雄叫びが遠くのほうにいるみたいに聞こえる。
ジェードフロストはどんどん力が抜けていくのを感じた。
瞳が光を失っていくのが自分でもわかる。
ジェードフロストは抵抗もできず、ただじっと横たわった。
落ちていく。落ちていく。
ジェードフロストは、ただ何もない暗闇に飲み込まれるかのような感覚を覚えた。
ジェードフロストは落ちていった。
何もない、ただ暗い闇の中に。

ジェードウィング
未登録ユーザー


トップに戻る Go down

Road of love ~それぞれの恋の道~ 第七章~ - Page 3 Empty Road of love ~それぞれの恋の道~

投稿 by ジェードウィング Thu Oct 12, 2023 12:30 pm

第五十六章
ぼやける視界、痛む頭、知らないにおい。
ジェードフロストはうなった。
「ジェードフロスト、目を開けろ!」
誰かの声がした。
遠くのほうにいるみたいにぼんやりと聞こえる。
「ジェードフロスト!」
また、同じ声だ。
「ジェ、ジェイフェザーですか?ライオンブレイズ?ダヴウィング?」
「いいや、その誰でもない」
ジェードフロストが目を開けると、ぼやける視界に映ったのは、弟とそっくりな炎の毛の色のオス猫。
だがその猫は弟のような自分より小さな体ではなく、ジェードフロストよりも大きな成猫だった。
「どなたですか?スカイ族の方ですか?」
ジェードフロストは体を起こし、言った。
「いいや、俺はスター族の猫だ。スター族のファイヤスター。ジェイフェザーたちと同じ、予言の猫だ」
ジェードフロストは目を真ん丸にした。
「ここは…ここはどこですか?」
「どこでもない場所だ。生きる猫の世界でもなく、スター族の狩場でもスカイ族の狩場でもない。お前は死んではいないが、生きてもいない」
不安でジェードフロストの背中の毛が逆立った。
そして、蚊の鳴くようなか細い声でたずねた。
「私はどうなるんでしょうか?」
「よし、よく聞け。最近、初めの予言の三匹の力が弱くなってきている。特に、スカイウィングとジェードウィングだ。親にだまされたと思い、信じる力が弱くなってきている。クリムソンハートの力はまだ大丈夫だが…。まあ、ほかの猫を見つけなくてはならないかもしれない。新しい予言の猫の一匹は、お前の弟のファイヤポーだ」
ジェードフロストは驚き、声が出なくなった。
「お前たちは俺の子孫なんだ、ジェードフロスト。もともと、予言の猫は俺と血のつながった者だ。それを踏まえて、しっかり新しい猫を見つけなくてはならない。新しい猫のもう一匹は俺も知らない。誰にもわからないんだ」
ジェードフロストがうなずくと、ファイヤスターが続けた。
「さあ、お前はどうしたい?」
思いがけない質問に、ジェードフロストは聞き返した。
「ど、どうしたい?」
「ああ、お前はどうしたいんだい?ここで死に、スカイ族の狩場からみんなを見守り助けるか、一族のもとへ帰るか。ヘザーリーフは亡くなったが、ヘザーリーフが死ぬのは少しの間だけだ」
ジェードフロストは頭がこんがらがってきた。
「ヘザーリーフが死ぬのは少しの間だけ?どういうことですか?」
「ヘザーリーフは生まれ変わる。族長の娘として」
ぞ、族長の娘?
つまり、ライジングスターの?
「襲撃の一週間後くらいに生まれてくるだろう。アージャーウィングとの子供だ」
アージャーウィング?
ジェードフロストはふいにピンときた。
そういえば、アージャーウィングは最近、よくライジングスターと一緒にいたわ!
ああ、もう、気づいたってよかったのに!
「何度も話がそれてしまうが、お前はどうしたいんだ?」
ファイヤスターが返事を促した。
ジェードフロストは考えた。
ここで死ねば、本当に星の力が備わるわけだ。
ファイヤポーに予言を送り、新しい猫を見つけてもらえるかも。
でも、もう一族とは会えなくなるのね。
けれど、私が戻ったら、治療の時間や薬草が無駄になるだけ。
帰ったって、役に立てないかも。
それなら    
ジェードフロストはファイヤスターに向けての返事を決めた。
私は、私は
「私は       
次の瞬間、視界が真っ白になり、また一度暗くなった。
目を開けると、そこには血まみれのジェードフロストにかがみこみ、涙目で見つめる一族のみんなの顔があった。

ジェードウィング
未登録ユーザー


トップに戻る Go down

Road of love ~それぞれの恋の道~ 第七章~ - Page 3 Empty Road of love ~それぞれの恋の道~

投稿 by ジェードウィング Thu Oct 12, 2023 1:50 pm

第五十七章
「ジェードフロスト!」
ああ、みんな…!
ジェードフロストの目にヘザーリーフの遺体が映った。
「ヘザーリーフ…」
救えなくて、ごめんなさい…
ジェードフロストの目はうつろだが、死んだ時よりは輝きを取り戻していた。
「ジェードフロスト!」
ライジングスターの声だ。
まだ視界はぼやけているし、頭を起こす力もないが、アージャーウィングと身を寄せ合って座るライジングスターの姿がぼんやり見えた。
ヘザーリーフ…もうそこにいらっしゃるんですか?
まだお若かったのに…
ジェードフロストは頭を少し起こし、またおろした。
ああ、もう力が残っていない。
ジェードフロストの体は傷だらけだ。
真っ白だった毛皮はぐっしょりと血の赤に染まり、わき腹は長く裂けている。
痛みに肩で息をしていると、後ろのほうからクモの巣や薬草をくわえたチャコールポーが出てきた。
自分の傷の手当は、もうすんだようだ。
チャコールポーも疲れ果てたうつろな目をし、毛もぐしゃぐしゃになってはいるが、ジェードフロストの傷の手当てをする手つきはしっかりとしている。
やがてサンダーフォレストも出てきて、血に染まったジェードフロストの毛皮をなめ始めた。
チャコールポーが指導を受けたのは、タイガーポーやファイヤポーと同じ約四か月。
もう力はついているのかしら?
残りの指導はどうするの?いろいろなことを考えているとだんだん眠くなってきた。
チャコールポーに手当てをされ、サンダーフォレストがリズミカルになめてくれているのを感じながら、ジェードフロストは心地の良い眠りに落ちた。
 ここは、スカイ族の狩場だ。
小川のそばに座っているのは…
「ヘザーリーフ!」
ヘザーリーフはこちらを振り返った。
「ジェードフロスト…?」
ヘザーリーフの薄茶色の毛や薄緑の瞳は星の光をまとって輝いている。
「ヘザーリーフ、かたきをとれませんでした!あなたがダークと戦っているのを聞きつけられなかったのも、全部全部、本当にごめんなさい!」
ジェードフロストの背中の毛が不安で逆立つ。
だが、自分に注がれるヘザーリーフの太陽のようなあたたかいまなざしを見て、ほっと力を抜いた。
「あなたのせいじゃないわ。安心して。それに私は、運命を伝えられたばかりなの!」
ヘザーリーフの薄緑の瞳がぱっと輝いた。
「あの子は…チャコールポーはどうしている?」
「疲れ果てています」
ジェードフロストは答えた。
「でも、しっかりとした手つきで私の傷の手当てをし始めました。あの子の指導は、誰が引き継げるというのでしょうか…?」
ヘザーリーフも不安そうな目をしてはいるが、ジェードフロストにこう答えた。
「ジェイフェザー…?って方が指導を引き継いでくださるそうよ、夢で」
ジェイフェザー!
ああ、よかった!
「私は一度しか見たことがないのだけれど…」
ヘザーリーフが不安そうに言った。
「大丈夫です、ヘザーリーフ!私は何度もあっていますから」
ジェードフロストがそう言うと、ヘザーリーフはちょっと驚いたように目を見開いた。
「そうなの。じゃあ、安心したわ。では、また会いましょうね。今度会う時にはもう生まれ変わっているかもしれないのだけれど!」
ヘザーリーフのその言葉を最後に視界がぼやけ始めた。
そしてヘザーリーフの姿は見えなくなり、ジェードフロストは再び自分のなわばりの森の中に引き戻された。

ジェードウィング
未登録ユーザー


トップに戻る Go down

Road of love ~それぞれの恋の道~ 第七章~ - Page 3 Empty Road of love ~それぞれの恋の道~

投稿 by ジェードウィング Sat Oct 14, 2023 7:12 pm

第五十八章
ジェードフロストは、ファイヤポーとサンダーフォレストに両脇から支えられてキャンプへと足を運んだ。
傷の手当はもうすみ、毛皮についていた血もだいぶ落ちている。
ジェードフロストはとなりを運ばれていくヘザーリーフの遺体にちらっと眼をやった。
もうすぐ会えますよね、ヘザーリーフ…?
そう言っていたんだもの。
ジェードフロストはまた前方に注意を戻し、ふらつく足を前へ前へと動かした。
キャンプに着き、ジェードフロストは寝床へ行こうと戦士部屋に向かった。
足を踏み出しかけたとき、目の端に、しっぽを引きずりうなだれて歩くチャコールポーの姿が映った。
「チャコールポー!」
ジェードフロストが呼び止めると、チャコールポーはうつろな目を上げた。
「何?姉さん」
「話したいことがあるの。来て」
チャコールポーはくわえていた薬草の束を下に置き、駆け足でこちらにやってきた。
半分埋まった平らな岩の上にはヘザーリーフの遺体が寝かされ、長老たちがグルーミングをしている。
族長部屋のわきからその様子を見つめているのは、アージャーウィングとライジングスターだ。
フォレストアイとスパロウペルトは頭を寄せ合って話し込んでいる。
ここで話すのは、無理そうね。
「森に出ましょう」
チャコールポーは目を上げずにうなずいた。
二匹は連れ立ってイバラのトンネルを抜け、キャンプから離れた訓練用のくぼ地まで来た。
「チャコールポー、よく聞きなさい。ヘザーリーフからの伝言よ」
チャコールポーが顔を上げ、目を真ん丸にした。
「あなたの指導は、ジェイフェザーという方が引き継いでくださるわ。私も何度もあっている、信頼できる猫よ。そして…」
ジェードフロストはそこでふいに言葉を切った。
チャコールポーの目が興奮で輝いている。
まだヘザーリーフがなくなった悲しみは癒えないだろうが、話に興味が出てきたそうだ。
「そして、ヘザーリーフが亡くなるのはほんの少しの間よ」
チャコールポーが首を傾げた。
「どういうことですか?」
「ヘザーリーフは生まれ変わるの。族長の娘として。アージャーウィングとライジングスターの子供よ」
チャコールポーの背中の毛が興奮で逆立った。
「きっと、記憶は消えてしまうと思う。だから、あなただけに伝えた。いい?絶対に誰にも言っちゃダメなのよ。もちろん、本人にも」
途中でチャコールポーが口を開こうとしたので、最後の言葉を付け足した。
「わかった。でも、僕のことは忘れちゃうんだよね、きっと。次は戦士になられるのかもしれないし」
チャコールポーの目がさみしそうにきらりと光った。
「そうね…」
ジェードフロストは、なんとかしてチャコールポーを元気づける言葉を探そうとしたが、どんな言葉でも慰めにならない気がした。

「さあ、狩猟部隊を組みましょう!クリムソンハート、率いてくれる?ヴァイオレットプールも。それぞれ三匹連れて行ってちょうだい」
スプリングストームが指示を出す声に、はっと目を覚ました。
明るさに慣らそうと、目をしばたく。
大きく伸びをした後、ジェードフロストは戦士部屋を出た。
空き地の端のほうでチャコールポーが毛づくろいをしている。
「姉さん、後で薬を塗りに来てね。化膿したら困るから!」
「ええ、わかったわ!」
チャコールポーの呼びかけに、大きな声で返事をする。
「おはよう、ジェードフロスト。傷の具合は?大丈夫か?」
「ありがとうございます、シルヴァークロー。昨日よりはましです!」
シルヴァークローにあいさつされてそう答えると、戦士部屋からペタルムーンが出てきた。
それを見たシルヴァークローはあからさまにそっぽを向いた。
そしてジェードフロストに目を戻し、「無理するなよ!」と言って狩猟部隊に加わりに行った。
裏切られたら、みんなあんなふうになるのかしら?
どんなに仲が良くても      
「…………それから、ジェードフロスト!」
スプリングストームに名前を呼ばれたジェードフロストは、あわててそちらに注意を戻した。
「はい!」
「あなた、傷は大丈夫?もう少ししないと戦いの訓練はできないでしょうから、しばらくの間クリムソンハートに手伝ってもらいなさいな」
「ありがとうございます!」
ジェードフロストは、スプリングストームの厚意に心から感謝した。
獲物置き場に行く途中、半分埋まった平らな岩が目に入った。
あそこにあったヘザーリーフの遺体は、長老たちとチャコールポーによって丁重に埋葬された。
長老部屋の前の日向から、長老たちの話声が聞こえてきた。
「やつらは岩場を歩きなれているんだろう?土のやわらかい森の中で戦ったほうが有利じゃないか?」
ラシットストライプが言った。
続いて聞こえてきたのは、スポッティドウィングの声だ。
「ええ、そうかもしれないわね」
そしてホワイトクローは、
「確かにな。それに、キャンプの中は避難所になっている」
ダークヴァレイの襲撃の話をしている長老たちを見たジェードフロストの背中の毛が不安で逆立った。
「あら、盗み聞き?だめじゃないの、ジェードフロスト!」
陽気に話しかけてきたのは、モスペルトだ。
「そんなに心配しなさんな。みんな不安なのはわかっているわ。でも、私は準備ができている。たとえ自分の命に代えてでも、自分の子供や一族を守るわ」
そう言ってモスペルトは、空き地の端で獲物を分け合うストームライトとラセットウィンド、それからスノウフォールのことをちらりと振り返った。
たしかに、そうだ。
私も準備はできている。
一族のために戦う準備が。
     命を     捨てる準備が       

ジェードウィング
未登録ユーザー


トップに戻る Go down

Road of love ~それぞれの恋の道~ 第七章~ - Page 3 Empty Road of love ~それぞれの恋の道~

投稿 by ジェードウィング Sun Oct 15, 2023 2:02 pm

第五十九章
襲撃まであと二週間ほどしかなくなった。
ジェードフロストの傷の生々しさは消え、だいぶふさがってきた。
チャコールポーも気を取り直して薬草の準備に励んでいる。
クラウドウィング、スペックルバーク、ラセットウィンドの三匹はイバラのトンネルの補強をし、スノウフォールとブラックストームは、長老たちと避難の再確認をしている。
アイスブラッサムとサンペルトはにらみ合ったままぐるぐると円を描いてゆっくりと回り、その様子をスラッシュウィンドが見ている。
襲撃の日は、近いわ。
ジェードフロストは弟子を呼びに見習い部屋へと歩いて行った。
「ファイヤポー!」
見習い部屋に頭を突っ込むと、ジェードフロストが呼びかける前からもうファイヤポーは起き上がっていた。
「訓練に行きましょう」
「わかった、姉さん」
この前、敬語で自分に話すファイヤポーに、訓練の時以外は敬語を使わなくていいといった。
きょうだいなのだから、いいだろう。
ファイヤポーが出てきて、「ほかに誰か、一緒に訓練をする猫はいませんか?」といった。
「そうね…」
答ようとあたりを見回して目に留まったのは、タイガーポーだ。
「スラッシュウィンド!タイガーポーを連れて訓練に来ない?」
呼びかけると、サンペルトとアイスブラッサムの訓練を見ていたスラッシュウィンドが顔を上げた。
「行きます!くぼ地ですか?」
「ええ、そうよ。今からいける?」
「はい!」
スラッシュウィンドは立ち上がり、小走りでこちらにやってきた。
それを見たタイガーポーも目を輝かせてかけてきて、「訓練ですか?」と元気よく聞いた。
四匹は連れ立ってイバラのトンネルを抜け、くぼ地へ向かった。
ふいに、知っている声がした。
「ジェードフロスト!」
声の主は…
「アース!アースじゃありませんか?」
たずねると、思っていた通りの年老いたオス猫が木陰から出てきた。
ほかの三匹は、驚いてかたまってしまっている。
「大丈夫よ。この方はアース。前に話したでしょう?大地をつかさどる猫、大昔にもう亡くなった猫」
三匹はいきなり納得した顔になり、スラッシュウィンドは軽く頭を下げて会釈した。
と思ったら、アースの後ろから知らないオス猫が出てきた。
ゆっくりと歩いて出てきた灰色のトラ柄の猫を見たジェードフロストは、これこそさっきの三匹のようにかたまってしまった。
灰色のトラ猫は会釈してから言った。
「こんにちは。そして、初めまして、ジェードフロスト。それから皆さんも。わしはエーテル。アースと同じく大昔に死んだ猫だ。わしは天空をつかさどる猫だがな」
エーテルが味方だと分かった四匹は力を抜き、次の言葉を待った。
「わしらは伝えることがあってきたんじゃ。襲撃の日は近い。森には四つの部族がなくてはならない。ダークヴァレイがその一つでも欠かしそうになったとき、わしらも協力する」
エーテルはそこで言葉を切った。
「このことを心にとめておいておくれ」
アースが付け足す。
四匹がそろってうなずくと、二匹の姿はぼやけ、消えた。
「今の方がアースですか?!エーテルはジェードフロストもあったことがないんですね!」
タイガーポーが興奮しきった声で言った。
「ええ、そうよ。思いがけないところで会ったけど、襲撃前に会えてよかったわ」
ジェードフロストは心からそう思った。
「行きましょう」
三匹に呼びかけ、一行はまた駆けだした。
くぼ地に着き、まずはスラッシュウィンドとジェードフロストで手本をやって見せることにした。
「上に飛び乗られてしまったときに使える技を教えましょう」
そう言いながらスラッシュウィンドをしっぽで招き、ジェードフロストの上に飛び乗るように指示した。
スラッシュウィンドが背中に飛び乗ってくると、ジェードフロストはひょいと首を引っ込め、スラッシュウィンドを背中に乗せたまま転がった。
下敷きになったスラッシュウィンドの腹に飛び乗りなおし、つめを引っ込めた前足でのどを攻めた。
「まあ、こんな感じね」
座ってみていた二匹の目が真ん丸になっている。
ジェードフロストはスラッシュウィンドが起き上がれるように後ろに下がった。
「やってみてもいいですか?」
ファイヤポーが目を輝かせて言った。
「ええ。タイガーポーと組んでやってみなさい」
二匹が組んで練習を始めると、ジェードフロストはスラッシュウィンドと話し始めた。
「相手は私たちよりも一回り大きいわ。それも踏まえて練習しないと」
「そうですね。でも、きっと勝てますよ。ダークヴァレイの邪な心より、部族猫たちの忠誠心のほうが強いはずです」

ジェードウィング
未登録ユーザー


トップに戻る Go down

Road of love ~それぞれの恋の道~ 第七章~ - Page 3 Empty Road of love ~それぞれの恋の道~

投稿 by ジェードウィング Wed Oct 18, 2023 8:55 pm

第六十章
戦士部屋に差し込んだ一筋の光に、ジェードフロストは目を覚まされた。
枯葉の季節の冷たい空気を吸い込み、肺が痛くなる。
ジェードフロストは大きく伸びをし、毛づくろいをしてから立ち上がった。
となりにあるサンダーフォレストの寝床は、冷たくなっている。
もう起きているのだろう。
戦士部屋を出ると、思っていた通り、サンダーフォレストが獲物置き場へ向かっていた。
「サンダーフォレスト!」
声に気づいたサンダーフォレストは振り向いて目を輝かせ、「一緒に食べないかい?」と、大きなネズミをくわえ上げて見せた。
二匹は食事の場所に平らな岩の上を選んだ。
背中に当たるやわらかい太陽の光が気持ちいい。
二匹はダークヴァレイのことなど忘れて楽しい食事の時間を過ごした。
「ああ、おいしかった。ありがとう、サンダーフォレスト」
「いいんだよ。ぼくも楽しかった」
サンダーフォレストがしっぽをからめてきた。
ジェードフロストが身を引かないかが心配だったようだが、そうでないことが分かってほっとした様子だ。
と思ったら、足音が近づいてきてジェードフロストたちの近くでピタッと止まった。
ファイヤポーだ。
ファイヤポーは、嫉妬するような目でサンダーフォレストを見たままジェードフロストに言った。
「姉さん、今日は訓練ある?」
「ええ。狩りか戦い、どっちの訓練がしたい?」
「戦いの訓練かな」
「わかったわ。少ししたらいきましょ」
ファイヤポーはうなずき、獲物置き場からカササギをとってからチャコールポーのいる看護部屋に言った。
………チャコールポー!!!
「そう、チャコールポーよ!」
ジェードフロストがいきなり叫んだので、サンダーフォレストが驚いてびくっと身を引いた。
「チャコールポーがどうしたんだい?」
「聞かなくちゃならないことがあるの!楽しい食事の時間をありがとう!」
そう言い終わらないうちにジェードフロストは走り出した。
「チャコールポー!」
ジェードフロストは看護部屋に飛び込んで挨拶もなしに叫んだ。
ファイヤポーと獲物を分け合って食べていたチャコールポーは驚き、獲物をくわえたまま飛び上がった。
ファイヤポーも何があったのかと目を真ん丸にしている。
「それ食べ終わったら来て!空き地にいる!」
そう言ってまた看護部屋から飛び出した。
ジェードフロストが部屋を出てから、ファイヤポーがチャコールポーに言うのが聞こえた。
「お前姉さんになんかしたの?」
「いや…」
ああ!違うの!怒ってなんかないわ。
私はジェイフェザーの指導がどうなってるかを聞きたいだけなのに!
ヘザーリーフがダークに殺されてから、一族には見習いのほかには看護猫がいない。
チャコールポーには一刻も早く一人前の看護猫になってもらわないと!
しばらくすると、チャコールポーが看護猫から出てきた。
さっきのファイヤポーの言葉を聞いたせいか、不安そうな顔をしている。
「大丈夫よ、怒ったりしてないから!」
ジェードフロストが慌てて言うと、チャコールポーはほっとした様子でうなずいた。
「何?姉さん」
「最近のジェイフェザーの指導についてよ。どんな感じ?」
チャコールポーは納得したような表情になり、うなずいた。
「毎日来てくださるよ。素晴らしい指導をしてくださるし。たまにヘザーリーフも来てくださるんだけど、最近来ないんだよな」
チャコールポーは表情を曇らせたが、言ってからはっとしたように目を上げた。
「もうアージャーウィングのおなかの中にいるのかも!」
ジェードフロストもあたたかい気持ちでうなずいた。
「そうね」
「ああ、それともうひとつ。今日は半月の日の、看護猫の集会があるんだ。ジェイフェザーにも行って来いと言われた。あと、ライジングスターには避難場所のことをみんなに伝えてくれと言われたから」
「わかったわ」
チャコールポーはしっぽを一振りし、看護部屋へ向かって歩いて行った。
もう襲撃まであと五日。
早く準備をしないと。

ジェードウィング
未登録ユーザー


トップに戻る Go down

Road of love ~それぞれの恋の道~ 第七章~ - Page 3 Empty Road of love ~それぞれの恋の道~

投稿 by ジェードウィング Thu Oct 19, 2023 2:21 pm

第六十一章
「やったあ!じゃあ、もういいんですか?」
あの食事の後、ライジングスターがファイヤポーとタイガーポーに昇格試験を受けさせろと言った。
今ちょうど終わり、二匹は戦士になることが決定した。
間に合ってよかった…
ジェードフロストが薄暗くなってきた空を見上げると、星が一つ輝いていた。
「そうだよ。さあ、帰るぞ」
スラッシュウィンドにうながされ、二匹の見習いは獲物をくわえ上げて歩き出した。
ジェードフロストも三匹の後ろについて歩き出した。
イバラのトンネルを抜け、族長部屋へ向かった。
「ジェードフロストです、ライジングスター!」
「お入り」
ライジングスターの声が帰ってきた。
ツタのカーテンをくぐって部屋に入ると、ライジングスターはやわらかそうな寝床に座っていた。
「二匹の成績は?」
「完璧です。獲物をしっかり捕まえ、戦いのわざも器用にこなします。タイガーポーは戦略的に攻め、ファイヤポーは実力で攻めている感じがします」
「そうか。では、始めよう。シンバズポーも、もう用意はできている」
そう言ってライジングスターは立ち上がり、部屋を出ていった。
ジェードフロストも後に続き、空き地の真ん中に座る。
「みんな、空き地に集まれ!一族の集会を始めるぞ!」
ライジングスターが呼びかけると、各部屋部屋から猫たちが出てきた。
「戦士の命名式をはじめる。タイガーポーとファイヤポーとシンバズポー、前    
イバラのトンネルがかさっと鳴ったので、ライジングスターは言葉を切り、みんなが振り返った。
ジェードフロストも後ろを向くと、そこにいたのは…
「チャコールポー!」
ジェードフロストが叫ぶと、茶色みがかった灰色の弟はうなずき、「集会は始まったばかりですか?」と聞いた。
ライジングスターはうなずいた。
「看護猫の集会はどうだった?」
「報告してもいいでしょうか?」
ライジングスターはタイガーポーとファイヤポー、シンバズポーにちょっとうなずきかけ、チャコールポーが乗れるようにグレートルートの端によった。
チャコールポーがグレートルートに飛び乗り、言った。
「一人前の看護猫として名前をもらってきました!ぼくはチャコールフェザーという名前になりました!」
一瞬の沈黙ののち、空き地から歓声が上がった。
「おめでとう、チャコールフェザー!」
きょうだい二匹とシンバズポーも駆け寄り、鼻づらを押し付け合った。
「襲撃に間に合ってよかったよ。おめでとう。よし、次はお前たちの命名式だ」
ライジングスターの声がすると、チャコールフェザーはグレートルートから飛び降りた。
「ファイヤポー、タイガーポー、シンバズポー、前へ」
二匹は胸を張って堂々と前に出た。
「わたくし、フォレスト族の族長であるライジングスターは、この三匹の見習いを戦士に昇格させることを宣言いたします。どうか、スカイ族のみなさまが受け入れ、この三匹もスカイ族のみなさまがおさめられた戦士のおきてに従って一族につくしますように」
そして、ちょっと間をおいてから言った。
「ファイヤポー、タイガーポー、シンバズポー。お前たち三匹は自分の命を捨ててでも一族につくすことを誓うか?」
二匹は大きく息を吸ってから言った。
「誓います」
「では、タイガーポー。お前は今この瞬間からタイガーリリーという名前になる。お前のユリの花のような優しさや力強さをたたえて」
空き地から歓声が上がった。
タイガーリリーは胸を張り、感動で身を震わせている。
しばらくするとタイガーリリーはたちあがり、元指導者であるスラッシュウィンドのとなりに座った。
「シンバズポー。お前は私に弟子として楽しい時間をくれた。そして、飼い猫でも素晴らしい戦士になれることを証明した。お前は今この瞬間からシンバズロアという名前になる。お前のライオンの雄叫びのような力強さをたたえて。そして、ファイヤポー。お前は今この瞬間からファイヤペルトという名前になる。お前のその炎のような毛の色に敬意を表して」
またも空き地から歓声が上がり、シンバズロアとファイヤペルトは目を輝かせた。
「三匹はこれからもしっかり一族につくしてくれるだろう。では解散    
「や、やっぱり…待ってください!解散にしないで!」
ライジングスターの声をさえぎってそう叫んだのは、チャコールフェザーだ。
みんなは目を丸くし、驚いた様子でチャコールフェザーを見つめた。
「みんな、聞いてください!最初の予言の三匹の力が失われつつあります!とくに、スカイウィングとジェードウィング!クリムソンハートはまだ大丈夫です。新しい猫は、ジェードフロスト、ファイヤペルト、シンバズロア、それと     
みんなが毛を逆立て、緊張した様子でチャコールフェザーの次の言葉を待った。
「それと、僕です」

ジェードウィング
未登録ユーザー


トップに戻る Go down

Road of love ~それぞれの恋の道~ 第七章~ - Page 3 Empty Re: Road of love ~それぞれの恋の道~ 第七章~

投稿 by Sponsored content


Sponsored content


トップに戻る Go down

Page 3 of 5 Previous  1, 2, 3, 4, 5  Next

トップに戻る

- Similar topics

 
Permissions in this forum:
返信投稿: